(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126397
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】バッテリ冷却装置
(51)【国際特許分類】
H01M 50/204 20210101AFI20240912BHJP
H01M 50/249 20210101ALI20240912BHJP
H01M 50/271 20210101ALI20240912BHJP
H01M 50/207 20210101ALI20240912BHJP
H01M 50/24 20210101ALI20240912BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20240912BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20240912BHJP
H01M 10/6567 20140101ALI20240912BHJP
【FI】
H01M50/204 401H
H01M50/249
H01M50/271 S
H01M50/207
H01M50/24
H01M50/204 101
H01M10/625
H01M10/613
H01M10/6567
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034751
(22)【出願日】2023-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】内田 雅之
(72)【発明者】
【氏名】石山 浩司
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 大介
(72)【発明者】
【氏名】上田 悠太
(72)【発明者】
【氏名】大石 将人
(72)【発明者】
【氏名】相川 史壮
【テーマコード(参考)】
5H031
5H040
【Fターム(参考)】
5H031AA09
5H031KK02
5H040AA28
5H040AS07
5H040AT06
5H040AY05
5H040CC01
5H040NN01
(57)【要約】
【課題】車体が傾斜した場合であっても、バッテリを均一に冷却することが可能なバッテリ冷却装置を提供する。
【解決手段】バッテリ冷却装置1は、複数のバッテリモジュール3を有するバッテリ2と、バッテリ2及び冷却液Lを収容するバッテリケース10と、を備え、バッテリモジュール3は、複数の電池セル4が電気的に接続された状態で一体化されており、バッテリケース10は、バッテリ2を載置する載置部13と、一対のサイドフレームと、バッテリカバー12と、サイドフレームと直交した状態でサイドフレームに固定され、夫々のバッテリモジュール3を仕切るように載置部13から立設した仕切フレーム15と、を有し、仕切フレーム15は、サイドフレームと共に車体フレームの一部を構成しており、冷却液Lの車両前後方向の流動を抑制する流動抑制部材として機能する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、バッテリを冷却液に浸漬させて冷却するバッテリ冷却装置であって、
複数のバッテリモジュールを有する前記バッテリと、前記バッテリ及び前記冷却液を収容するバッテリケースと、を備え、
前記バッテリモジュールは、複数の電池セルが電気的に接続された状態で一体化されており、
前記バッテリケースは、前記バッテリを載置する載置部と、前記載置部の両側方に配置されて車両前後方向に延在する一対のサイドフレームと、前記載置部及び前記バッテリの上面を覆うバッテリカバーと、前記サイドフレームと直交した状態で前記サイドフレームに固定され、夫々の前記バッテリモジュールを仕切るように前記載置部から立設した仕切フレームと、を有し、
前記仕切フレームは、前記サイドフレームと共に車体フレームの一部を構成しており、前記冷却液の前記車両前後方向の流動を抑制する流動抑制部材として機能するバッテリ冷却装置。
【請求項2】
前記仕切フレームに隣接する前記電池セルの収容空間の前記車両前後方向の長さをD(mm)とし、前記バッテリケースの前記車両前後方向における最大傾斜角をθ(度)とした場合、前記仕切フレームは、tanθ・D/2以上の高さを有する請求項1に記載のバッテリ冷却装置。
【請求項3】
前記仕切フレームは、前記載置部に載置された前記電池セルの高さ以上の高さを有する請求項1に記載のバッテリ冷却装置。
【請求項4】
前記仕切フレームのうち少なくとも1つは、前記バッテリカバーに密着している請求項1又は2に記載のバッテリ冷却装置。
【請求項5】
前記仕切フレームは、一対の前記サイドフレーム及び前記載置部との間がポッティング材を介して封止されている請求項1又は2に記載のバッテリ冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリを冷却液に浸漬させて冷却するバッテリ冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、走行駆動源としてモータを備えた車両(例えば、ハイブリッド車両や、プラグインハイブリッド車両や、電動車両等)(以下「電動車両」とする)が普及している。電動車両には、モータに加え、当該モータを駆動させるためのバッテリが搭載されている。このようなバッテリに関する技術として、例えば下記に出典を示す特許文献1に記載のものがある。
【0003】
特許文献1には、電池パックについて記載されている。この電池パックは、複数の電池セルが筐体内に収容され、筐体内の冷却水の水位を調整する第1開閉弁と第2開閉弁と第3開閉弁とが設けられている。電池セルの温度に応じて、第1開閉弁と第2開閉弁と第3開閉弁との開閉制御が行われ、電池セルの温度が高くなる程、電池セルが冷却水に浸漬される量を増大させるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の電池パックには、上記のように第1開閉弁と第2開閉弁と第3開閉弁との開閉状態を制御して、筐体内における冷却水の水位を調整している。例えば、車両が上り坂や下り坂を走行している際には、車体(車体フレーム)と共に電池パックも傾くため、電池セルにおける冷却水の浸漬量(浸漬水位)に差異が生じる。これにより、電池セルが均一に冷却されず、冷却不足となる電池セルが発生し、電池セルの寿命にバラつきが生じることになる。
【0006】
そこで、車体が傾斜した場合であっても、バッテリを安定的に冷却することが可能なバッテリ冷却装置が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るバッテリ冷却装置の特徴構成は、車両に搭載され、バッテリを冷却液に浸漬させて冷却するバッテリ冷却装置であって、複数のバッテリモジュールを有する前記バッテリと、前記バッテリ及び前記冷却液を収容するバッテリケースと、を備え、前記バッテリモジュールは、複数の電池セルが電気的に接続された状態で一体化されており、前記バッテリケースは、前記バッテリを載置する載置部と、前記載置部の両側方に配置されて車両前後方向に延在する一対のサイドフレームと、前記載置部及び前記バッテリの上面を覆うバッテリカバーと、前記サイドフレームと直交した状態で前記サイドフレームに固定され、夫々の前記バッテリモジュールを仕切るように前記載置部から立設した仕切フレームと、を有し、前記仕切フレームは、前記サイドフレームと共に車体フレームの一部を構成しており、前記冷却液の前記車両前後方向の流動を抑制する流動抑制部材として機能する点にある。
【0008】
このような特徴構成とすれば、車両が上り勾配の場所を走行したり駐停車している際や、車両が下り勾配の場所を走行したり駐停車している際においても、バッテリケースの内部において仕切フレームによって冷却液の車両前後方向の流動が抑制される。これにより、バッテリケースにおいて仕切フレームに仕切られた空間に収容された夫々のバッテリモジュールは、冷却液による浸漬状態をある程度維持できる。しかも、流動抑制部材として機能する仕切フレームが車体フレームを構成するため、車体フレームとは別に仕切フレームを設ける場合に比べて、車体重量を低減しつつ強度の高い仕切フレームによってバッテリを適切に保護することができる。その結果、バッテリ冷却装置は、冷却液によってバッテリを安定的に冷却できる。
【0009】
他の特徴構成は、前記仕切フレームに隣接する前記電池セルの収容空間の前記車両前後方向の長さをDとし、前記バッテリケースの前記車両前後方向における最大傾斜角をθ(度)とした場合、前記仕切フレームは、tanθ・D/2以上の高さを有する点にある。
【0010】
冷却液は、バッテリケースの上面から供給されてバッテリケースの下面から排出されて循環利用され、バッテリケースの下面に設けられる冷却液の排出溝が電池セルの収容空間の車両前後方向の中央に配置されることがある。そこで、本構成では、電池セルの収容空間の車両前後方向の長さDと、バッテリケースの車両前後方向における最大傾斜角θとに基づき、仕切フレームは、tanθ・D/2以上の高さを有する。その場合、車両(車体)が前後方向に最大限傾斜した場合であっても、冷却液は電池セルの収容空間の車両前後方向長さDの半分の領域に存在する。これにより、バッテリ冷却装置は、バッテリモジュールの底面の半分を冷却液に浸漬できる。また、冷却液は電池セルの収容空間の下方から排出でき循環が可能になる。その結果、バッテリ冷却装置は、冷却液によってバッテリを安定的に冷却できる。
【0011】
他の特徴構成は、前記仕切フレームは、前記載置部に載置された前記電池セルの高さ以上の高さを有する点にある。
【0012】
本構成によれば、仕切フレームは、載置部に載置されたバッテリモジュール(電池セル)の高さ以上の高さを有するので、車両(車体)が前後に傾斜した場合であっても、バッテリモジュールを浸漬する冷却液が仕切フレームを越えて車両前後方向の流動し難い。これにより、バッテリ冷却装置は、バッテリモジュールが冷却液に浸漬した状態を維持し易くなる。その結果、バッテリ冷却装置は、冷却液によってバッテリをより安定的に冷却できる。
【0013】
バッテリケースは、例えば、載置部に電池セルの高さよりも低いリブが設けられることがある。こうしたリブは、バッテリモジュールの位置決め等に用いられる。一方、本構成におけるバッテリ冷却装置は、上記のリブに代えて電池セルの高さよりも高い仕切フレームを設けて構成される。したがって、バッテリ冷却装置は、部品点数を増やすことなく構成できる。また、バッテリ冷却装置は、電池セルよりも高い仕切フレームによってバッテリケースの強度を向上できる。
【0014】
他の特徴構成は、前記仕切フレームのうち少なくとも1つは、前記バッテリカバーに密着している点にある。
【0015】
本構成によれば、仕切フレームのうち少なくとも1つがバッテリカバーに密着しているので、車両が前傾姿勢(及びは後傾姿勢)になっても、バッテリモジュールを浸漬する冷却液は仕切フレームによって他のバッテリモジュールへの移動が完全に遮られる。その結果、バッテリ冷却装置は、車両の前後姿勢の変化に関わらず、個々のバッテリモジュールを冷却液によってより安定的に冷却することができる。
【0016】
また、複数の仕切フレームが設けられる場合に、バッテリカバーが一つの仕切フレームのみに密着する構成にしてもよい。例えば、バッテリケースにおいて、バッテリマネジメントシステム(BMS)や電気配線のインターフェースを当該仕切フレームによって仕切られた空間に配置することで、バッテリ冷却装置は、バッテリマネジメントシステム(BMS)等に冷却液を流入させずに構成できる。これにより、バッテリ冷却装置は、バッテリモジュールを冷却する冷却液の浸漬量を確保しつつ、バッテリケースに収容される冷却液の液量を低減できる。その結果、バッテリ冷却装置によって、車両重量を低減でき、電費の向上にも寄与できる。
【0017】
他の特徴構成は、前記仕切フレームは、一対の前記サイドフレーム及び前記載置部との間がポッティング材を介して封止されている点にある。
【0018】
本構成によれば、仕切フレームと一対のサイドフレーム及び載置部との間がポッティング材によって封止されているので、仕切フレームの側方及び下方を介した冷却液の車両前後方向における漏洩を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第1実施形態に係るバッテリ冷却装置の平面図である。
【
図3】第1実施形態に係るバッテリ冷却装置の部分切欠斜視図である。
【
図4】車両が水平姿勢のときのバッテリケース内の冷却液の状態を示す側断面図である。
【
図5】車両が後傾姿勢のときのバッテリケース内の冷却液の状態を示す側断面図である。
【
図6】参考例のバッテリケースに設けられるリブの形状を示す図である。
【
図7】第1実施形態における仕切フレームの形状を示す図である。
【
図8】第2実施形態のバッテリケースの側断面図である。
【
図9】仕切フレームの最小高さを示すバッテリケースの側断面図である。
【
図10】仕切フレームの最小高さを示すバッテリケースの側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明に係るバッテリ冷却装置の実施形態について、図面に基づいて説明する。ただし、以下の実施形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【0021】
本発明に係るバッテリ冷却装置は、車両に搭載されたバッテリを冷却液に浸漬させて均一に冷却することができるように構成される。したがって、バッテリ冷却装置は、車両に搭載される。ここで、バッテリ(「バッテリパック」ともいう)は、複数の電池セルからなるバッテリモジュールを備えている。セルとは、バッテリを構成する最小単位の電池であって、複数の電池セルを直列に接続して1つのバッテリモジュールが構成される。更に、複数のバッテリモジュールを直列に接続し、この直列に接続されたバッテリモジュールを直列及び/又は並列に接続して1つのバッテリが構成される。バッテリ冷却装置は、各バッテリモジュールを冷却することで、バッテリを冷却する。以下、本実施形態のバッテリ冷却装置1について説明する。
【0022】
〔第1実施形態〕
図1は、本実施形態のバッテリ冷却装置1の平面図である。
図2は、本実施形態のバッテリ冷却装置1の分解斜視図である。
図3は、本実施形態のバッテリ冷却装置1の部分切欠斜視図である。
図4は、バッテリケース内の側断面図である。
図1~
図4に示されるように、車両の進行方向(車両前後方向)をX方向とし、車両の幅方向(車両左右方向)をY方向とし、車両の高さ方向をZ方向とする。また、特に、
図1に示されるように、進行方向前側をX1側、進行方向後側をX2側とし、車幅方向右側をY1側、車幅方向左側をY2側とする。
【0023】
図1~
図4に示されるように、バッテリ冷却装置1は、バッテリ2と、バッテリケース10と、を備えて構成されている。
【0024】
バッテリケース10は、バッテリ2及び冷却液L(
図4)を収容するバッテリ収容部11と、バッテリカバー12と、を有する。本実施形態におけるバッテリケース10は、
図1に示されるように、平面視が長方形状に構成されている(もちろん、バッテリケース10は、平面視が正方形状に構成されていてもよい)。バッテリ収容部11は、バッテリ2を載置する載置部13と、載置部13の周囲の4つの壁部14によって構成されている。具体的には、4つの壁部14は、前壁部14A及び後壁部14Bと、一対のサイドフレーム14C,14Dとによって構成されている。一対のサイドフレーム14C,14Dは、車両右側のサイドフレーム14Cと、車両左側のサイドフレーム14Dである。一対のサイドフレーム14C,14Dは、載置部13の両側方に配置されて車両前後方向に延在する。
【0025】
図2~
図4に示されるように、バッテリカバー12は、載置部13及びバッテリ2の上面を覆う。バッテリケース10は、さらに、一対のサイドフレーム14C,14Dと直交した状態で一対のサイドフレーム14C,14Dに固定される仕切フレーム15を有する。仕切フレーム15は、夫々のバッテリモジュール3を仕切るように載置部13から立設されている。これにより、バッテリケース10は、複数のバッテリモジュール3を個別に収容するように構成される。このようなバッテリモジュール3の夫々を収容する空間が、上述したバッテリ収容部11に相当する。上述したように
図1の例では、バッテリ2は、4つのバッテリモジュール3を備えていることから、バッテリケース10には複数(4つ)のバッテリ収容部11が設けられる。夫々のバッテリ収容部11は、仕切フレーム15とバッテリモジュール3との間に隙間を有する状態でバッテリモジュール3(電池セル4)を収容する。
図4に示されるように、この隙間に冷却液Lが供給される。これにより、バッテリモジュール3(電池セル4)は冷却液Lに浸漬されて冷却される。
【0026】
本実施形態では、バッテリ2は、X方向に沿って複数(本実施形態では4つ)のバッテリモジュール3が設けられており、4つのバッテリモジュール3の夫々は、Y方向に沿って配置された複数(本実施形態では12個)の電池セル4を有する。冷却液Lとは、ロングライフクーラント(LLC)等の冷却水、パラフィン系等の絶縁油、又はハイドロフルオロカーボン(HFC)やハイドロフルオロオレフィン(HFO)等の液状冷媒にあたる。
【0027】
本実施形態では、バッテリ2は、バッテリマネジメントシステム(以下、「BMS」と称する。)5を有する。BMS5は、バッテリケース10において複数の仕切フレーム15によってX方向に仕切られた領域のうち、最もX2側(後側)の領域に装備されている。BMS5は、ECU(Electronic Control Unit)によって構成されており、バッテリモジュール3の充放電制御、過充電保護、過放電保護、SOC(State Of Charge)またはSOH(State Of Health)等のバッテリ2の状態の監視等の制御を行う。本実施形態では、BMS5についても、バッテリモジュール3と同じく、その収容空間に冷却液Lが供給されて当該冷却液Lに浸漬されて冷却される。
【0028】
図2~
図4に示されるように、バッテリケース10には、上方にバッテリカバー12が設けられる(
図1では、バッテリカバー12を省略している)。図示はしないが、バッテリモジュール3には、このバッテリカバー12を介して上方から冷却液Lが噴射されるように供給される。また、バッテリケース10は、バッテリ収容部11において所定の高さまで冷却液Lが貯留されると共に、載置部13側から冷却液Lが排出されるように構成される。
【0029】
図3に示されるように、仕切フレーム15は、一対のサイドフレーム14C,14D及び載置部13との間がポッティング材20を介して封止されている。これにより、バッテリ冷却装置1は、仕切フレーム15の側方及び下方を介した冷却液LのX方向における漏洩を防止できる。ポッティング材20は、はんだ等の金属や樹脂で構成される。
【0030】
仕切フレーム15は、一対のサイドフレーム14C,14Dと共に車体フレームの一部を構成しており、冷却液Lの車両前後方向の流動を抑制する流動抑制部材として機能する。具体的には、
図4に示されるように、本実施形態では、仕切フレーム15は、載置部13に載置された電池セル4の高さH1以上の高さH2を有する。
【0031】
バッテリケース10は、例えば車体フレーム(不図示)に固定されている。車体フレームとは、車両のボディを形成するフレームである。本実施形態では、前壁部14A及び後壁部14Bが車体フレームに締結固定され、一対のサイドフレーム14C,14D、仕切フレーム15は車体フレームの一部となる。
【0032】
これにより、バッテリケース10は車体フレームと同様の状態とされる。すなわち、車両が下り勾配の道に位置している場合には、車体フレームと同様に、バッテリケース10が前下がりの状態(前傾姿勢)となる。また、車両が上り勾配の道に位置している場合には、車体フレームと同様に、バッテリケース10が前上がりの状態(後傾姿勢)となる。また、車両が左下がりのバンクを有する道に位置している場合には、車体フレームが左下がりの状態となり、車両が右下がりのバンクを有する道に位置している場合には、車体フレームが右下がりの状態となる。すなわち、バッテリケース10は、車両の傾きと同じように傾斜する。
【0033】
一対のサイドフレーム14C,14Dの外側方には、一対の衝撃緩和部材16,16が固定されている。車両の左右方向に突出した状態で車両の前後方向に延在した衝撃緩和部材16を有している。衝撃緩和部材16は、車両の側方からの衝突を緩和する部材として機能する。衝撃緩和部材16は例えばアルミ材によって形成されている。衝撃緩和部材16は、内部に車体前後方向に延びる空間が車両左右方向に複数形成されている。
【0034】
仕切フレーム15は、例えば鉄材やステンレス鋼等でよって形成されており、アルミ材等によって形成される一対の衝撃緩和部材16,16よりも高い剛性を有する。これにより、車両に搭載されたバッテリ冷却装置1は、車両側方からの衝突時において、衝撃緩和部材16によって車両側方からの衝撃を吸収しつつ、仕切フレーム15によってバッテリケース10の変形が抑制される。その結果、車両側方からの衝突等によるバッテリ2の破損を防止できる。なお、図示では、衝撃緩和部材16,16がサイドフレーム14C,14Dと一体化されているが、衝撃緩和部材16,16は、車体フレームとしてのサイドフレーム14C,14Dの外側方に別体として固定してもよい。
【0035】
以上のように構成されたバッテリ冷却装置1を搭載する車両が水平な場所を走行している際や、水平な場所に駐停車している際には、
図4に示されるように、バッテリケース10の4つの壁部14が鉛直方向に沿って立設する状態となる。これにより、バッテリケース10内の冷却液Lは、液面が水平な状態となり、夫々のバッテリモジュール3における冷却液Lの浸漬水位が同じ水位になる。
【0036】
例えばバッテリ冷却装置1を搭載する車両が上り勾配の場所を走行している際や、上り勾配の場所に駐停車している際には、
図5に示されるように、バッテリケース10は、前壁部14A及び後壁部14BがX2側に傾いた状態(後傾姿勢)となる。しかし、バッテリケース10内の冷却液Lは、仕切フレーム15によって夫々のバッテリ収容部11内に保持されるため、夫々のバッテリモジュール3における冷却液Lの浸漬水位が同程度の水位になる。
【0037】
また、図示しないが、例えばバッテリ冷却装置1を搭載する車両が下り勾配の場所を走行している際や、下り勾配の場所に駐停車している際には、
図5とは反対に、バッテリケース10は、前壁部14A及び後壁部14BがX1側に傾いた状態(前傾姿勢)となる。しかし、この場合も、バッテリケース10内の冷却液Lは、仕切フレーム15によって夫々のバッテリ収容部11内に保持されるため、夫々のバッテリモジュール3における冷却液Lの浸漬水位が同程度の水位になる。
【0038】
以上のように、本実施形態のバッテリ冷却装置1によれば、車両が上り勾配の場所を走行したり駐停車している際や、車両が下り勾配の場所を走行したり駐停車している際においても、バッテリケース10の内部において仕切フレーム15によって冷却液Lの車両前後方向の流動が抑制される。これにより、バッテリケース10においてバッテリ収容部11に収容された夫々のバッテリモジュール3は、冷却液Lによる浸漬状態をある程度維持できる。しかも、流動抑制部材として機能する仕切フレーム15が車体フレームを構成するため、車体フレームとは別に仕切フレーム15を設ける場合に比べて、車体重量を低減しつつ強度の高い仕切フレーム15によってバッテリ2を適切に保護することができる。その結果、バッテリ冷却装置1は、冷却液Lによってバッテリ2を安定的に冷却できる。
【0039】
また、仕切フレーム15は、載置部13に載置されたバッテリモジュール3(電池セル4)の高さH1以上の高さH2を有するので、車両(車体)が前後に傾斜した場合であっても、バッテリモジュール3を浸漬する冷却液Lが仕切フレーム15を越えて車両前後方向に流動し難い。これにより、バッテリ冷却装置1は、バッテリモジュール3が冷却液Lに浸漬した状態を維持し易くなる。その結果、バッテリ冷却装置1は、バッテリ2を冷却液Lによってバッテリ2をより安定的に冷却できる。
【0040】
図6に示されるように、従来のバッテリケースでは、載置部13にリブ30が設けられることがある。リブ30は、載置部13に載置される複数のバッテリモジュール3(電池セル4)の位置決めやバッテリケースの補強のために利用される。このようなリブ30は、高さが電池セル4よりもかなり低く、車両前後方向に所定の幅W1を有している。一方、本実施形態では、
図7に示されるように、載置部13に仕切フレーム15が電池セル4よりも高い位置まで立設されている。
図7では、仕切フレーム15の幅W2がリブ30(
図6)の幅W1よりも小さい例が示されている。
【0041】
以下、
図6に示されるリブ30(従来例)と、
図7に示される仕切フレーム15(本実施形態)とを比較する。
図7の仕切フレーム15の幅W2は
図6のリブ30の幅W1よりも小さいが、仕切フレーム15の高さH2はリブ30の高さH3よりもかなり高い。ここで、仕切フレーム15の幅W2がリブ30の幅W1の半分であっても、仕切フレーム15の高さH2がリブ30の高さH3の2倍であれば、仕切フレーム15とリブ30とは同程度の断面積を有する。したがって、バッテリケース10は、仕切フレーム15のW2が小さい場合でも、幅W1が大きいリブ30を有するバッテリケースと同程度の強度を維持できる。
【0042】
さらに、バッテリケース10は、仕切フレーム15の幅W2が小さいことで、バッテリ収容部11を広く確保することや、載置部13をコンパクトに形成することができる。また、本実施形態のバッテリケース10は、従来の既存部材であるリブ30に代えて仕切フレーム15を設ける構成であるので、部品点数を増やすことなく構成できる。
【0043】
〔第2実施形態〕
次に、第2実施形態のバッテリ冷却装置1について説明する。第1実施形態では、バッテリケース10のバッテリカバー12が仕切フレーム15の上端から離間して配置される例を示した。第2実施形態のバッテリ冷却装置1では、
図8に示されるように、バッテリカバー12が仕切フレーム15に密着しており、BMS5の収容部には冷却液Lが充填されていない。他の構成については、第1実施形態と同様である。以下では、第2実施形態について、主に第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0044】
第2実施形態では、仕切フレーム15のうち少なくとも1つは、バッテリカバー12に密着している。
図8に示される例では、バッテリカバー12が複数の仕切フレーム15の全てに密着している。これにより、車両が前傾姿勢や後傾姿勢になっても、バッテリ2を浸漬する冷却液Lは仕切フレーム15によって他のバッテリモジュール3への移動が完全に遮られる。その結果、バッテリ冷却装置1は、車両の前後姿勢の変化に関わらず、個々のバッテリモジュール3を冷却液Lによってより安定的に冷却することができる。
【0045】
また、
図8に示される第2実施形態では、BMS5が収容される領域にバッテリモジュール3の冷却液Lを流入させずに構成できる。これにより、バッテリ冷却装置1は、バッテリモジュール3を冷却する冷却液Lの浸漬量を確保しつつ、バッテリケース10に収容される冷却液Lの液量を低減できる。その結果、バッテリ冷却装置1によって、車両重量を低減でき、電費の向上にも寄与できる。
【0046】
〔第2実施形態の変形例〕
バッテリ冷却装置1は、複数の仕切フレーム15のうち一部の仕切フレーム15のみを高くする等して、バッテリカバー12が一部の仕切フレーム15のみに密着する構成にしてもよく、バッテリカバー12がBMS5との境界に設けられる仕切フレーム15のみに密着する構成にしてもよい。
【0047】
〔第3実施形態〕
上記の実施形態では、バッテリ冷却装置1において、仕切フレーム15の高さH2が電池セル4の高さH1よりも高く構成した例を示した。これに代えて、
図9に示されるように、バッテリ冷却装置1は、仕切フレーム15の高さH2が、電池セル4の高さH1と同じ、又は、電池セル4の高さH1より少し低い構成でもよい。ただし、この場合は、バッテリモジュール3を浸漬させる冷却液Lの液量を、車両が前後方向に傾斜しても仕切フレーム15によって冷却液Lの車両前後方向の流動が抑制可能な液量に調整する必要がある。
【0048】
バッテリ冷却装置1において、冷却液Lによってバッテリ2を適正に冷却するためには、車両が前後方向に傾斜した状態でおいても冷却液Lが電池セル4のうち少なくとも底面4a(
図9参照)全体を浸漬することが好ましい。また、冷却液Lは、バッテリケース10の上面から供給されてバッテリケース10の下面から排出されて循環利用されることがある。その場合、車両が前後方向のいずれに大きく傾斜したとしても電池セル4の底面4a側から冷却液Lを確実に排出できるよう、冷却液Lが電池セル4の底面4a(
図9参照)全体を浸漬することが好ましい。そこで、以下では、
図9に基づいて仕切フレーム15の最小高さH2minについて説明する。
【0049】
図9に示されるように、例えば、車両が最も後傾したときのバッテリケース10の傾斜角(最大傾斜角)をθ(度)とし、電池セル4の収容空間のX方向の長さをD(mm)とすると、仕切フレーム15の最小高さH2minは、以下の式(1)によって算出できる。
H2min=tanθ・D・・・・(1)
【0050】
道路の勾配を表す傾斜角は最大で20度程度であることが知られている。バッテリケース10の最大傾斜角θを20度とした場合、tan20(度)が約0.36であるので、仕切フレーム15の最小高さH2minは約0.36D(mm)となる。すなわち、仕切フレーム15の最小高さH2minは、電池セル4の収容空間のX方向長さDの約36%となる。ここで、
図9に示される冷却液Lの液量は、電池セル4の底面4a全体を常に浸漬するための最少必要液量である。仕切フレーム15の高さH2が最小高さH2minである場合に、冷却液Lが最少必要液量以上の液量であると、車両の前後方向への傾斜が最大になると、冷却液Lは仕切フレーム15を越えて他のバッテリモジュール3等の収容空間に移動する。
【0051】
図9では、電池セル4の収容空間のX方向長さD(mm)が電池セル4のX方向長さよりも大きいことが誇張されて図示されており、仕切フレーム15に対して電池セル4が近接して配置されている。そのため、電池セル4の収容空間のX方向長さDと電池セル4のX方向長さとの差は小さく、電池セル4のX方向長さとX方向長さD(mm)とはほぼ同視できる。したがって、仕切フレーム15の最小高さH2minは電池セル4のX方向長さの36%程度となる。すなわち、仕切フレーム15の高さH2が電池セル4の高さH1の36%以上であれば、車両が前後方向に最大限傾斜した場合であっても、バッテリ冷却装置1において冷却液Lが電池セル4の底面4a全体を浸漬する。また、仮に電池セル4の高さH1を電池セル4のX方向長さの半分(1/2)に設定した場合には、仕切フレーム15の最小高さH2minは電池セル4の高さH1の約72%となる。
【0052】
これらにより、仕切フレーム15の高さH2が電池セル4の高さH1より低い場合でも、高さH2が電池セル4の収容空間のX方向長さDの36%以上であり、冷却液Lの液量が最少必要液量以上であれば、バッテリ冷却装置1において冷却液Lが電池セル4(バッテリモジュール3)のうち少なくとも底面4a全体を浸漬することが実証された。
【0053】
〔第3実施形態の変形例〕
冷却液Lは、バッテリケース10の上面から供給されてバッテリケース10の下面から排出されて循環利用される場合、バッテリケース10の下面に設けられる冷却液Lの排出口が電池セル4の収容空間のX方向の中央位置13a(
図10参照)付近に配置されることがある。その場合には、仕切フレーム15の最小高さH2minは、以下の式(2)によって算出できる。
H2min=tanθ・D/2・・・・(2)
【0054】
本変形例では、
図10に示されるように、仕切フレーム15は、tanθ・D/2(H2min)以上の高さを有する。仕切フレーム15がtanθ・D/2(H2min)以上の高さを有していれば、車両が前後方向に最大限傾斜した場合であっても、冷却液Lは電池セル4の収容空間のX方向長さDの半分の領域に存在する。これにより、バッテリ冷却装置1は、電池セル4(バッテリモジュール3)の底面4aの半分を冷却液Lに浸漬できる。また、冷却液Lは電池セル4の収容空間の下方から排出でき循環が可能になる。その結果、バッテリ冷却装置1は、冷却液Lによってバッテリ2を安定的に冷却できる。
【0055】
〔別実施形態〕
(1)バッテリ冷却装置1は、バッテリケース10において仕切フレーム15によって仕切られた収容部にBMS5を配置せずに構成してもよいし、BMS5をX1側(前側)に配置してもよい。
(2)バッテリ冷却装置1は、バッテリケース10のサイドフレーム14C,14Dに衝撃緩和部材16を含まずに構成してもよい。
【0056】
本発明は、バッテリを冷却液に浸漬させて冷却するバッテリ冷却装置に用いることが可能である。
【符号の説明】
【0057】
1 :バッテリ冷却装置
2 :バッテリ
3 :バッテリモジュール
4 :電池セル
10 :バッテリケース
12 :バッテリカバー
13 :載置部
14 :壁部
14C,14D:サイドフレーム
15 :仕切フレーム
16 :衝撃緩和部材
20 :ポッティング材
L :冷却液