(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126399
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】メモリ装置及びメモリシステム
(51)【国際特許分類】
G11C 11/16 20060101AFI20240912BHJP
H10B 61/00 20230101ALI20240912BHJP
H01L 29/82 20060101ALI20240912BHJP
H10N 52/00 20230101ALI20240912BHJP
【FI】
G11C11/16 240
G11C11/16 100A
H10B61/00
H01L29/82 Z
H10N52/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034753
(22)【出願日】2023-03-07
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2020年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「高効率・高速処理を可能とするAIチップ・次世代コンピューティングの技術開発/次世代コンピューティング技術の開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阪井 塁
(72)【発明者】
【氏名】細見 政功
(72)【発明者】
【氏名】肥後 豊
(72)【発明者】
【氏名】平賀 啓三
【テーマコード(参考)】
4M119
5F092
【Fターム(参考)】
4M119AA01
4M119AA05
4M119AA11
4M119BB01
4M119CC05
4M119DD05
4M119DD08
4M119DD09
4M119DD24
4M119DD25
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4M119DD45
4M119DD55
4M119EE22
4M119EE27
4M119FF05
4M119FF16
4M119FF17
5F092AA03
5F092AA04
5F092AA12
5F092AB07
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5F092AD23
5F092BB08
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5F092BB53
5F092BC03
5F092BC04
5F092BC07
5F092BC22
5F092BC42
(57)【要約】
【課題】高精度に電圧のパルス幅を制御する必要もなく、且つ、初期読み出しを必要としないメモリ装置を提供する。
【解決手段】第1の制御線と第2の制御線との間に接続される磁気抵抗素子と、前記磁気抵抗素子に対する書き込みを制御する書き込み回路と、前記磁気抵抗素子に対する読み出しを制御する読み出し回路とを備え、前記磁気抵抗素子は、電圧磁気異方性制御(VCMA)効果型磁気抵抗素子であり、前記書き込み回路は、前記磁気抵抗素子を高抵抗状態へ書き込む第1の電圧と、前記磁気抵抗素子を低抵抗状態へ書き込む第2の電圧とが逆向きになるように制御する、メモリ装置を提供する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の制御線と第2の制御線との間に接続される磁気抵抗素子と、
前記磁気抵抗素子に対する書き込みを制御する書き込み回路と、
前記磁気抵抗素子に対する読み出しを制御する読み出し回路と、
を備え、
前記磁気抵抗素子は、電圧磁気異方性制御(VCMA)効果型磁気抵抗素子であり、
前記書き込み回路は、前記磁気抵抗素子を高抵抗状態へ書き込む第1の電圧と、前記磁気抵抗素子を低抵抗状態へ書き込む第2の電圧とが逆向きになるように、制御する、
メモリ装置。
【請求項2】
前記磁気抵抗素子は、記憶層、トンネルバリア層及び参照層の積層構造からなるMTJ素子を少なくとも1つ含む、請求項1に記載のメモリ装置。
【請求項3】
前記磁気抵抗素子は、互いに積層された複数の前記MTJ素子を有する、請求項2に記載のメモリ装置。
【請求項4】
前記磁気抵抗素子は、前記複数のMTJ素子の間に設けられた磁気結合層又は反強磁性結合層をさらに有する、請求項3に記載のメモリ装置。
【請求項5】
前記磁気結合層又は前記反強磁性結合層は、一方の前記MTJ素子の前記記憶層と他の前記MTJ素子の前記記憶層とに挟まれるように設けられる、請求項4に記載のメモリ装置。
【請求項6】
前記複数のMTJ素子は、前記記憶層を共有する、請求項3に記載のメモリ装置。
【請求項7】
前記複数のMTJ素子は、互いにTMR(Tunnel Magneto Resistance)比が異なる、請求項3に記載のメモリ装置。
【請求項8】
前記複数のMTJ素子は、互いの異なる膜厚を持つ前記トンネルバリア層を有する、請求項7に記載のメモリ装置。
【請求項9】
前記磁気抵抗素子は、第1のMTJ素子及び第2のMTJ素子を含み、
前記第2のMTJ素子の高抵抗状態の抵抗値、前記第1のMTJ素子の高抵抗状態の抵抗値、前記第1のMTJ素子の低抵抗状態の抵抗値、前記第2のMTJ素子の低抵抗状態の抵抗値の順で、値が順次小さくなる、
請求項7に記載のメモリ装置。
【請求項10】
前記磁気抵抗素子は、
前記MTJ素子の前記記憶層に接する磁気結合層又は反強磁性結合層と、
前記磁気結合層又は前記反強磁性結合層に接する他の記憶層及び前記他の記憶層と接する他のトンネルバリア層からなる抵抗素子と、
をさらに有する、
請求項2に記載のメモリ装置。
【請求項11】
前記磁気抵抗素子は、前記MTJ素子の前記記憶層に接する他のトンネルバリア層からなる抵抗素子をさらに有する、
請求項2に記載のメモリ装置。
【請求項12】
前記磁気抵抗素子は、1つの前記MTJ素子及び1つの前記抵抗素子を含み、
前記MTJ素子の高抵抗状態の抵抗値、前記抵抗素子の抵抗値、前記MTJ素子の低抵抗状態の抵抗値の順で、値が順次小さくなる、
請求項10に記載のメモリ装置。
【請求項13】
前記磁気抵抗素子は、前記MTJ素子を挟み込むキャップ層及び下地層をさらに有する、請求項2に記載のメモリ装置。
【請求項14】
前記第2の制御線に接続される端子を持つ選択素子をさらに備える、請求項1に記載のメモリ装置。
【請求項15】
複数の前記磁気抵抗素子を備え、
前記複数の磁気抵抗素子は、
行方向及び列方向に沿って配列し、
同一列の前記磁気抵抗素子の一端は、共通の第1の制御線に電気的に接続され、
同一行の前記磁気抵抗素子の他端を共通の第2の制御線に電気的に接続され、
クロスポイント型メモリアレイを構成する、
請求項1に記載のメモリ装置。
【請求項16】
ラッチ回路をさらに備える、請求項1に記載のメモリ装置。
【請求項17】
フリップフロップ回路をさらに備える、請求項1に記載のメモリ装置。
【請求項18】
SRAMを構成する、請求項16に記載のメモリ装置。
【請求項19】
磁気抵抗素子、及び、前記磁気抵抗素子を選択する選択素子を含む複数のメモリセルと、
前記複数のメモリセルを選択して前記選択素子を介して前記磁気抵抗素子に書き込みを行う書き込み回路と、
前記複数のメモリセルを選択して前記選択素子を介して前記磁気抵抗素子から読み出しを行う読み出し回路と、
前記書き込み回路及び前記読み出し回路を介して複数の前記メモリセルにおけるデータの書き込み及び読み出しを制御するメモリ制御部と、
を備え、
前記磁気抵抗素子は、電圧磁気異方性制御(VCMA)効果型磁気抵抗素子であり、
前記書き込み回路は、前記磁気抵抗素子を高抵抗状態へ書き込む第1の電圧と、前記磁気抵抗素子を低抵抗状態へ書き込む第2の電圧とが逆向きになるように、制御する、
メモリシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、メモリ装置及びメモリシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
磁気抵抗素子を記憶素子に用いた磁気抵抗ランダムアクセスメモリ(MRAM:Magnetoresistive Random Access Memory)は、強磁性体の磁化状態によって状態を保持するため、電源を切っても記録されたデータが保持される不揮発性を有する。磁気抵抗素子の基本構造は、磁性体薄膜からなる磁性層2層によって絶縁体の非磁性層(トンネルバリア層)を挟んだサンドイッチ構造である。当該構造を磁気トンネル接合(MTJ:Magnetic Tunnel Junction)と称し、当該構造を持つ素子をMTJ素子と称される。詳細には、非磁性層の膜厚が数nm程度と非常に薄いことから、磁気抵抗素子の両端に電圧を印加するとトンネル電流が流れ、トンネル電流の大きさは、磁性層2層の磁化の相対角度に依存する。このような現象は、トンネル磁気抵抗(TMR:Tunnel Magneto Resistance)効果と呼ばれる。
【0003】
MRAMにおいては、2層の磁性層のうち、一方の磁性層(磁化固定層)の磁化を固定し、他方の磁性層(記憶層)の磁化を外場により制御する。磁化固定層と記憶層との磁化方向が互いに平行である状態を状態0(低抵抗状態)、反平行である状態を状態1(高抵抗状態)とする。このように、MRAMにおいては、磁化の平行・反平行状態を書き換えることで状態(“0”または“1”)を不揮発に保存することができる。なお、磁化固定層と記憶層との磁化方向が互いに平行である状態と、反平行である状態とで抵抗値が異なることから、抵抗値を読み出すことにより、保存された状態を読み出すことができる。また、磁化の方向制御に用いる外場としては、外部配線への電流通電により生じる電流磁界や、MTJ素子に直接電流通電を行い、スピン角運動量移行(STT:Spin Transfer Torque)効果を利用する方法、又は、電圧による磁気異方性制御(VCMA:Voltage Controlled Magnetic Anisotropy)を利用した方法等がある。
【0004】
現在主流となっているMRAMは、電流磁界を用いた場合よりも微細化が可能であり、消費電力も低減できるSTT-MRAMである。一方、近年、VCMAを利用した電圧制御型(VC:Voltage Controlled)MRAM、すなわち、VC-MRAMは、書き込みが高速で、且つ、低消費電力で動作可能であることから注目されてきている。例えば、下記特許文献1で開示されているVCMAを利用した電圧書き込み方式は、単極性(一方向にのみ電圧を印加すること)で超高速のパルス電圧を印加することによって双方向の書き込みを実現する。VC-MRAMにおいては、下記特許文献1に開示されているように、単極性のパルス電圧の印加により、双方向の書き込み動作が行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1で開示されている方式においては、記憶層の磁化方向の反転のために、高精度に、短いパルス幅を持つパルス電圧を印加することが求められている。しかしながら、高精度に、短いパルス幅を持つパルス電圧を印加することは難しく、例えば、短いパルス幅を高精度に制御するための複雑、且つ、大規模な制御回路を必要とする。また、上記特許文献1で開示されている方式においては、初期読み出しを必要とすることから、実際の書き込み時間としては、初期読み出しの時間と、書き込みパルスを印加する時間とのを積算した時間が必要となり、書き込む時間の長時間化を避けることができない。
【0007】
そこで、本開示では、高精度に電圧のパルス幅を制御する必要もなく、且つ、初期読み出しを必要としないメモリ装置及びメモリシステムを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示によれば、第1の制御線と第2の制御線との間に接続される磁気抵抗素子と、前記磁気抵抗素子に対する書き込みを制御する書き込み回路と、前記磁気抵抗素子に対する読み出しを制御する読み出し回路とを備え、前記磁気抵抗素子は、電圧磁気異方性制御(VCMA)効果型磁気抵抗素子であり、前記書き込み回路は、前記磁気抵抗素子を高抵抗状態へ書き込む第1の電圧と、前記磁気抵抗素子を低抵抗状態へ書き込む第2の電圧とが逆向きになるように、制御する、メモリ装置が提供される。
【0009】
また、本開示によれば、磁気抵抗素子、及び、前記磁気抵抗素子を選択する選択素子を含む複数のメモリセルと、前記複数のメモリセルを選択して前記選択素子を介して前記磁気抵抗素子に書き込みを行う書き込み回路と、前記複数のメモリセルを選択して前記選択素子を介して前記磁気抵抗素子から読み出しを行う読み出し回路と、前記書き込み回路及び前記読み出し回路を介して複数の前記メモリセルにおけるデータの書き込み及び読み出しを制御するメモリ制御部とを備え、前記磁気抵抗素子は、電圧磁気異方性制御(VCMA)効果型磁気抵抗素子であり、前記書き込み回路は、前記磁気抵抗素子を高抵抗状態へ書き込む第1の電圧と、前記磁気抵抗素子を低抵抗状態へ書き込む第2の電圧とが逆向きになるように、制御する、メモリシステムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の第1の実施形態に係る磁気抵抗素子の構成例を示す模式図である。
【
図2】本開示の第1の実施形態に係るメモリセルアレイの具体的な構成の一例の斜視図である。
【
図4】本開示の第1の実施形態に係る磁気抵抗素子の動作原理を説明するための説明図(その1)である。
【
図5】本開示の第1の実施形態に係る磁気抵抗素子の動作原理を説明するための説明図(その2)である。
【
図6】本開示の第1の実施形態に係る磁気抵抗素子の動作原理を説明するための説明図(その3)である。
【
図7】本開示の第1の実施形態に係る磁気抵抗素子の動作原理を説明するための説明図(その4)である。
【
図8】本開示の第1の実施形態に係るメモリ装置のブロック図である。
【
図9】本開示の第1の実施形態に係るメモリ装置の書き込みのタイミングチャートである。
【
図10】本開示の第1の本実施形態に係るメモリ装置の書き込みのフローチャートである。
【
図11】本開示の第1の実施形態に係るメモリ装置の書き込み電圧制御のタイミングチャートである。
【
図12】本開示の第1の本実施形態の変形例1に係るメモリ装置の書き込みのフローチャートである。
【
図13】本開示の第1の実施形態の変形例1に係るメモリ装置の書き込み電圧制御のタイミングチャート(その1)である。
【
図14】本開示の第1の実施形態の変形例1に係るメモリ装置の書き込み電圧制御のタイミングチャート(その2)である。
【
図15】本開示の第1の実施形態の変形例2に係る磁気抵抗素子の構成例及び動作原理を説明するための説明図である。
【
図16】本開示の第2の実施形態に係る磁気抵抗素子の構成例を示す模式図である。
【
図17】本開示の第2の実施形態に係る磁気抵抗素子の動作原理を説明するための説明図(その1)である。
【
図18】本開示の第2の実施形態に係る磁気抵抗素子の動作原理を説明するための説明図(その2)である。
【
図19】本開示の第2の実施形態に係る磁気抵抗素子の動作原理を説明するための説明図(その3)である。
【
図20】本開示の第2の実施形態の変形例2に係る磁気抵抗素子の構成例及び動作原理を説明するための説明図である。
【
図21】本開示の第3の実施形態に係る磁気抵抗素子の構成例を示す模式図である。
【
図22】本開示の第3の実施形態に係る磁気抵抗素子の動作原理を説明するための説明図(その1)である。
【
図23】本開示の第3の実施形態に係る磁気抵抗素子の動作原理を説明するための説明図(その2)である。
【
図24】本開示の第3の実施形態に係る磁気抵抗素子の動作原理を説明するための説明図(その3)である。
【
図25】本開示の第3の実施形態の変形例2に係る磁気抵抗素子の構成例及び動作原理を説明するための説明図である。
【
図26】本開示の第3の実施形態の変形例3に係る磁気抵抗素子の構成例を示す模式図である。
【
図27】本開示の第3の実施形態の変形例3に係る磁気抵抗素子の構成例及び動作原理を説明するための説明図である。
【
図28】本開示の第3の実施形態の変形例4に係る磁気抵抗素子の構成例及び動作原理を説明するための説明図である。
【
図29】本開示の第4の実施形態に係る磁気抵抗素子の構成例を示す模式図である。
【
図30】本開示の第4の実施形態に係る磁気抵抗素子の動作原理を説明するための説明図(その1)である。
【
図31】本開示の第4の実施形態に係る磁気抵抗素子の動作原理を説明するための説明図(その2)である。
【
図32】本開示の第4の実施形態に係る磁気抵抗素子の動作原理を説明するための説明図(その3)である。
【
図33】本開示の第4の実施形態の変形例2に係る磁気抵抗素子の構成例及び動作原理を説明するための説明図である。
【
図34】本開示の第4の実施形態の変形例3に係る磁気抵抗素子の構成例を示す模式図である。
【
図35】本開示の第4の実施形態の変形例3に係る磁気抵抗素子の構成例及び動作原理を説明するための説明図である。
【
図36】本開示の第4の実施形態の変形例4に係る磁気抵抗素子の構成例及び動作原理を説明するための説明図である。
【
図37】本開示の第5の実施形態に係る磁気抵抗素子の構成例を示す模式図である。
【
図38】本開示の第5の実施形態に係る磁気抵抗素子の動作原理を説明するための説明図(その1)である。
【
図39】本開示の第5の実施形態に係る磁気抵抗素子の動作原理を説明するための説明図(その2)である。
【
図40】本開示の第5の実施形態に係る磁気抵抗素子の動作原理を説明するための説明図(その3)である。
【
図41】本開示の第5の実施形態の変形例2に係る磁気抵抗素子の構成例及び動作原理を説明するための説明図である。
【
図42】本開示の第6の実施形態に係る磁気抵抗素子の構成例を示す模式図である。
【
図43】本開示の第6の実施形態に係る磁気抵抗素子の動作原理を説明するための説明図(その1)である。
【
図44】本開示の第6の実施形態に係る磁気抵抗素子の動作原理を説明するための説明図(その2)である。
【
図45】本開示の第6の実施形態に係る磁気抵抗素子の動作原理を説明するための説明図(その3)である。
【
図46】本開示の6の実施形態の変形例2に係る磁気抵抗素子の構成例及び動作原理を説明するための説明図である。
【
図47】本開示の第6の実施形態の変形例3に係る磁気抵抗素子の構成例を示す模式図である。
【
図48】本開示の第6の実施形態の変形例3に係る磁気抵抗素子の構成例及び動作原理を説明するための説明図である。
【
図49】本開示の第6の実施形態の変形例4に係る磁気抵抗素子の構成例及び動作原理を説明するための説明図である。
【
図50】本開示の第7の実施形態に係るメモリセルアレイの回路図である。
【
図51】本開示の第7の実施形態に係るメモリ装置の構成例を示すブロック図である。
【
図52】本開示の第7の実施形態における低抵抗状態への書き込みパルス制御を説明するための説明図である。
【
図53】本開示の第7の実施形態における高抵抗状態への書き込みパルス制御を説明するための説明図である。
【
図54】本開示の第7の実施形態の変形例に係るメモリセルアレイの回路図である。
【
図55】本開示の第8の実施形態に係るメモリ装置の回路図である。
【
図56】本開示の第8の実施形態に係るメモリ装置がラッチ回路として機能する際の動作を説明するための説明図である。
【
図57】本開示の第8の実施形態に係るメモリ装置のストアの際の動作を説明するための説明図(その1)である。
【
図58】本開示の第8の実施形態に係るメモリ装置のストアの際の動作を説明するための説明図(その2)である。
【
図59】本開示の第8の実施形態の変形例1に係るメモリ装置の回路図である。
【
図60】本開示の第8の実施形態の変形例1に係るメモリ装置がラッチ回路として機能する際の動作を説明するための説明図である。
【
図61】本開示の第8の実施形態の変形例1に係るメモリ装置のストアの際の動作を説明するための説明図(その1)である。
【
図62】本開示の第8の実施形態の変形例1に係るメモリ装置のストアの際の動作を説明するための説明図(その2)である。
【
図63】本開示の第8の実施形態の変形例2に係るメモリ装置の回路図である。
【
図64】本開示の第8の実施形態の変形例2に係るメモリ装置がラッチ回路として機能する際の動作を説明するための説明図である。
【
図65】本開示の第8の実施形態の変形例2に係るメモリ装置のストアの際の動作を説明するための説明図(その1)である。
【
図66】本開示の第8の実施形態の変形例2に係るメモリ装置のストアの際の動作を説明するための説明図(その2)である。
【
図67】本開示の第9の実施形態に係るメモリ装置の回路図である。
【
図68】本開示の第9の実施形態の変形例3に係るメモリ装置の回路図である。
【
図69】本開示の第10の実施形態に係るメモリ装置の回路図である。
【
図70】本開示の第10の実施形態の変形例1に係るメモリ装置の回路図である。
【
図71】本開示の第10の実施形態の変形例2に係るメモリ装置の回路図である。
【
図72】本開示の第11の実施形態に係る書き込み部の回路図である。
【
図73】本開示の第12の実施形態に係る撮像装置のブロック図である。
【
図74】本開示の第12の実施形態に係る撮像装置の積層構造例の模式図である。
【
図75】本開示の第12の実施形態における書き込みのフローチャートである。
【
図76】本開示の第12の実施形態における読み出しのフローチャートである。
【
図77】撮像装置の概略構成の一例を示す図である。
【
図78】測距装置の概略構成の一例を示す図である。
【
図79】ゲーム機器の概略構成の一例を示す斜視図(外観斜視図)である。
【
図80】ゲーム機器の概略構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本開示の実施形態について図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態により本開示に係る装置や機器、方法などは限定されるものではなく、実施形態に係る種々の数値や材料などは例示である。また、以下の実施形態において、基本的に同一の部位には同一の符号を付することにより重複する説明を省略する。
【0012】
また、本明細書及び図面において、実質的に同一または類似の機能構成を有する複数の構成要素を、同一の符号の後に異なる数字を付して区別する場合がある。ただし、実質的に同一または類似の機能構成を有する複数の構成要素の各々を特に区別する必要がない場合、同一符号のみを付する。また、異なる実施形態の類似する構成要素については、同一の符号の後に異なるアルファベットを付して区別する場合がある。ただし、類似する構成要素の各々を特に区別する必要がない場合、同一符号のみを付する。
【0013】
以下に説明される、1又は複数の実施形態(実施例、変形例を含む)は、各々が独立に実施されることが可能である。一方で、以下に説明される複数の実施形態は、少なくとも一部が他の実施形態の少なくとも一部と適宜組み合わせて実施されてもよい。これら複数の実施形態は、互いに異なる新規な特徴を含み得る。したがって、これら複数の実施形態は、互いに異なる目的、又は、課題を解決することに寄与することができ、互いに異なる効果を奏することができる。なお、各実施形態における効果はあくまで例示であって限定されるものでは無く、他の効果があってもよい。
【0014】
また、以下の説明で参照される図面は、本開示の一実施形態の説明とその理解を促すための図面であり、わかりやすくするために、図中に示される形状や寸法、比などは実際と異なる場合がある。さらに、図中に示される素子等は、以下の説明と公知の技術を参酌して適宜、設計変更することができる。また、以下の説明においては、素子等の積層構造の上下方向は、素子が設けられた基板上の面を上とした場合の相対方向に対応し、実際の重力加速度に従った上下方向とは異なる場合がある。
【0015】
以下の説明における具体的な長さや形状についての記載は、数学的に定義される数値と同一の値や幾何学的に定義される形状だけを意味するものではない。詳細には、以下の説明における具体的な長さや形状についての記載は、メモリ装置、及びこれらの製造工程、及び、その使用・動作において許容される程度の違い(誤差・ひずみ)がある場合やその形状に類似する形状をも含むものとする。
【0016】
また、磁化方向(磁気モーメント)や磁気異方性について説明する際に、便宜的に「垂直方向」(膜面に対して垂直な方向、もしくは積層構造の積層方向)及び「面内方向」(膜面に対して平行な方向、もしくは積層構造の積層方向に対して垂直な方向)等の用語を用いる場合がある。ただし、これらの用語は、必ずしも磁化の厳密な方向を意味するものではない。例えば、「磁化方向が垂直方向である」や「垂直磁気異方性を有する」等の文言は、面内方向の磁化に比べて垂直方向の磁化が優位な状態であることを意味している。同様に、例えば、「磁化方向が面内方向である」や「面内磁気異方性を有する」等の文言は、垂直方向の磁化に比べて面内方向の磁化が優位な状態であることを意味している。
【0017】
また、以下の回路(電気的な接続)の説明においては、特段の断りがない限りは、「接続」とは、複数の要素の間を電気(信号)が導通するように接続することを意味する。加えて、以下の説明における「接続」には、複数の要素を直接的に、且つ、電気的に接続する場合だけでなく、他の要素を介して間接的に、且つ、電気的に接続する場合も含むものとする。
【0018】
なお、説明は以下の順序で行うものとする。
1. 本発明者らが本開示に係る実施形態を創作するに至る背景
2. 第1の実施形態
2.1 磁気抵抗素子の構成例
2.2 メモリセルアレイの構成例
2.3 動作原理
2.4 メモリ装置の構成例
2.5 書き込みフロー
2.6 変形例1
2.7 変形例2
3. 第2の実施形態
3.1 磁気抵抗素子の構成例
3.2 動作原理
3.3 変形例1
3.4 変形例2
4. 第3の実施形態
4.1 磁気抵抗素子の構成例
4.2 動作原理
4.3 変形例1
4.4 変形例2
4.5 変形例3
4.6 変形例4
5. 第4の実施形態
5.1 磁気抵抗素子の構成例
5.2 動作原理
5.3 変形例1
5.4 変形例2
5.5 変形例3
5.6 変形例4
6. 第5の実施形態
6.1 磁気抵抗素子の構成例
6.2 動作原理
6.3 変形例1
6.4 変形例2
7. 第6の実施形態
7.1 磁気抵抗素子の構成例
7.2 動作原理
7.3 変形例1
7.4 変形例2
7.5 変形例3
7.6 変形例4
8. 第7の実施形態
8.1 実施形態
8.2 変形例
9. 第8の実施形態
9.1 実施形態
9.2 変形例1
9.3 変形例2
10. 第9の実施形態
10.1 実施形態
10.2 変形例1
10.3 変形例2
10.4 変形例3
11. 第10の実施形態
11.1 実施形態
11.2 変形例1
11.3 変形例2
12. 第11の実施形態
13. 第12の実施形態
14. まとめ
15. 電子機器の構成例
15.1 撮像装置
15.2 測距装置
15.3 ゲーム機器
16. 補足
【0019】
<<1. 本発明者らが本開示に係る実施形態を創作するに至る背景>>
まずは、本開示の実施形態を説明する前に、本発明者らが本開示の実施形態を創作するに至る背景について説明する。
【0020】
先に説明したように、近年、書き込みが高速で、且つ、低消費電力で動作可能であることから、VCMAを利用した電圧制御型MRAM(VC-MRAM)が注目されてきている。VC-MRAMの基本構造も、磁性体薄膜からなる磁性層2層によって絶縁体の非磁性層(トンネルバリア層)を挟んだサンドイッチ構造を持つMTJ素子である。
【0021】
VC-MRAMの書き込み方式は、単極性電圧で双方向の書き込み動作が行われる。MTJ素子に電圧が印加されていないとき、記憶層が持つ垂直磁気異方性(磁化が膜面垂直方向に向きやすい性質)によって磁化は膜面垂直方向(z方向)を向いている。同様に、磁化固定層も垂直磁気異方性によって磁化はz方向を向いている。ここで、記憶層と磁化固定層との磁化方向がともに+z方向、すなわち平行状態であって、MTJ素子に状態0が書き込まれているものとする。さらに、膜面内方向(x方向とy方向)のうち+x方向に外部磁界(Hext)がMTJ素子に印加されているとする。この際、MTJ素子に電圧が印加されると、非磁性層と記憶層との界面付近に発生する電界によって記憶層の垂直磁気異方性が消失し、磁化が膜面垂直方向に向きやすい性質が失われる。その結果、記憶層の磁化は、外部磁界によって磁気エネルギーが最小となっているx方向へ向かう運動を始めることとなる。その際、記憶層の磁化の向きは、単純に+z方向から+x方向に一直線に変化するのではなく、yz平面内を外部磁場(Hext)の方向を軸として周回しながら+x方向に徐々に向かう、いわゆるスピンの歳差運動を始めることとなる。
【0022】
そして、最初+z方向を向いていた記憶層の磁化は、yz平面内の歳差運動の過程において、略-z方向を向く瞬間が存在する。このときにMTJ素子に印加されている電圧をゼロにすると、記憶層の垂直磁気異方性が元に戻り、磁化が膜面垂直方向に向きやすくなるから、記憶層の磁化は-z方向に固定される。すなわち、MTJ素子には、パルス状の電圧を印加することによって、記憶層と磁化固定層との磁化方向が平行となる状態0から、記憶層と磁化固定層との磁化方向が反平行となる状態1が書き込まれることとなる。同様に、初めに記憶層の磁化方向が-z方向を向いている状態1の場合でも上述の現象が起きることから、当該MTJ素子によれば、単極性のパルス電圧の印加によって双方向の書き込みが実現できる。
【0023】
上記特許文献1で開示されているVCMAを利用した電圧書き込み方式においては、パルス電圧のパルス幅を0.7[nsec]程度にすることで、記憶層の磁化方向の反転の確率が1(成功)に近づく。また、上記特許文献1で開示されている方式においては、パルス幅を0.7[nsec]より長くすると、成功率は、振動しながら0.5(成功と失敗が50%)に収束する。すなわち、記憶層の磁化方向の反転のためには、最適なパルス幅があり、パルス幅の最適値は、外部磁場(Hext)に依存する。
【0024】
上記特許文献1で開示されている方式においては、パルス幅を最適時間に対して短くしても長くしても、成功率が劣化することから、パルス幅を精度よく適切に制御することが求められる。しかしながら、数nsecのパルス幅を精度よく制御することが難しい。上記特許文献1には、このような制御を行うことができる制御回路が開示されているが、複数の記憶素子からなるメモリセルアレイが大きくなると、寄生抵抗、寄生容量の存在によるパルス鈍りが無視できなくなり、記憶素子に対して、高精度に、短いパルス幅を持つパルス電圧を印加することはより難しくなる。
【0025】
また、上記特許文献1では、書き込みのフローチャートが示されているが、ここでは、初期読み出しを行った後に、データのプログラム(書き込みパルス電圧の印加)を実行している。詳細には、上記特許文献1で開示されている方式では、単極性(同一方向)のパルス電圧を印加して、記憶層の磁化方向の反転を行うことから(いわゆる「トグル書き込み」)、記憶層が期待する状態と反対の場合のみにパルス電圧を印加するため、初期読み出しを行い、期待と一致するかどうかを確認し、その結果に基づいてパルス電圧を印加する。
【0026】
従って、上記特許文献1で開示されている方式においては、初期読み出しを行うことから、実際の書き込み時間は、初期読み出しの時間と、書き込みパルスを印加する時間とを積算した時間が必要となる。そのため、上記特許文献1で開示されている方式は、書き込みが高速であるというVC-MRAMの特性が十分に生かされているとは言えない。
【0027】
そこで、本発明者らは、このような状況を鑑みて、鋭意検討を行い、パルス幅の高精度の制御や初期読み出しを行うことのない、VC-MRAMの実施形態を創作した。本発明者らが創作した本開示の実施形態においては、記憶素子は、VCMAを利用することができる記憶層を複数有し、各記憶層の、印加電圧に対する磁気異方性の変化の方向は、互いに逆となっている。もしくは、本発明者らが創作した本開示の実施形態においては、記憶素子は、VCMAを利用することができるトンネルバリア層に挟まれた記憶層を有し、一方のトンネルバリア層と記憶層との界面と、他方のトンネルバリア層と記憶層との界面とは、印加電圧に対する磁気異方性の変化の方向は、互いに逆となっている。
【0028】
このような本発明者らの創作した本開示の実施形態によれば、印加電圧のパルス幅が長くなっても、記憶層の磁化方向の反転の確率が劣化することはないことから、パルス幅の高精度の制御を行うことがなく、容易に書き込みを行うことができる。さらに、本開示の実施形態によれば、短いパルス幅を高精度に制御するための複雑、且つ、大規模な制御回路を必要としない。
【0029】
また、本開示の実施形態においては、記憶素子の書き込みは、磁化固定層と記憶層との磁化方向が互いに平行である状態(低抵抗状態)への書き込みと、反平行である状態(高抵抗状態)への書き込みとで、逆方向(逆向き)となる電圧を印加する(いわゆる「非トグル書き込み」)。より詳細には、本開示の実施形態においては、高抵抗状態から低抵抗状態への書き込み及び高抵抗状態を維持する場合と、低抵抗状態から高抵抗状態への書き込み及び低抵抗状態を維持する場合とで、逆方向の電圧を印加する。すなわち、本開示の実施形態においては、記憶層に対して期待する状態に応じた電圧、双極性の電圧を印加するのであり、単極性(同一方向)のパルス電圧を印加して記憶層の磁化方向の反転を行うわけではないことから、初期読み出しを行う必要がない。従って、本開示の実施形態によれば、初期読み出しを行う必要がないことから、書き込み時間が長くなることを避けることができ、書き込みが高速であるというVC-MRAMの特性を十分に生かすことができる。以下、このような本開示の実施形態の詳細を順次説明する。
【0030】
<<2. 第1の実施形態>>
<2.1 磁気抵抗素子の構成例>
まずは、
図1を参照して、本開示の第1の実施形態に係る磁気抵抗素子3の構成例について詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る磁気抵抗素子3の構成例を示す模式図である。
【0031】
本実施形態においては、磁気抵抗素子3は、電圧磁気異方性制御(VCMA)効果型磁気抵抗素子であり、
図1に示すように、例えば、2つのMTJ素子100、200(第1のMTJ素子、第2のMTJ素子)が積層されている積層構造を有する。各MTJ素子100、200は、磁化方向が固定されている磁化固定層(参照層)102、202と、入力磁場に応じて磁化方向が変化する記憶層106、206と、磁化固定層102、202と記憶層106、206との間に配置されたトンネルバリア層104、204とを有する。また、本実施形態においては、2つのMTJ素子100、200の間には、磁気結合層300が挟まれている。詳細には、磁気結合層300は、MTJ素子(一方のMTJ素子)100の記憶層106と、MTJ素子(他方のMTJ素子)200の記憶層206とに挟まれるように設けられている。さらに、
図1に示すように、2つのMTJ素子100、200の積層構造を挟むように、キャップ層402及び下地層400が設けられている。以下、磁気抵抗素子3の各層について順次説明する。
【0032】
磁化固定層102、202は、コバルト鉄ボロン(CoFeB)、コバルト鉄ボロン合金、コバルト鉄炭素(CoFeC)合金、ニッケル鉄ボロン(NiFeB)合金、ニッケル鉄炭素(NiFeC)合金等を用いて形成することができる。また、磁化固定層102、202は、強磁性層からなる構成、あるいは、複数の強磁性層を、非磁性層を介して積層した、積層フェリピン構造としてもよい。積層フェリピン構造の磁化固定層を構成する強磁性層の材料としては、コバルト(Co)、コバルト鉄(CoFe)、CoFeB等を用いることができる。また、非磁性層の材料としては、ルテニウム(Ru)、レニウム(Re)、イリジウム(Ir)、オスニウム(Os)等を用いることができる。また、磁化固定層102、202は、反強磁性層と強磁性層との反強磁性結合を利用することにより、磁化の向きが固定された層とすることもできる。この場合、反強磁性層の材料としては、鉄マンガン(FeMn)合金、白金マンガン(PtMn)合金、白金クロムマンガン(PtCrMn)合金、ニッケルマンガン(NiMn)合金、イリジウムマンガン(IrMn)合金、酸化ニッケル(NiO)、酸化鉄(Fe2O3)等の磁性体を挙げることができる。さらに、これらの磁性体に、銀(Ag)、銅(Cu)、金(Au)、アルミニウム(Al)、シリコン(Si)、ビスマス(Bi)、タンタル(Ta)、ボロン(B)、炭素(C)、酸素(O)、窒素(N)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、Ir、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)等の非磁性元素を添加してもよい。
【0033】
記憶層106、206は、CoFe、CoFeB、鉄(Fe)、ホウ化鉄(FeB)等を用いて形成することができる。さらに、記憶層106、206は、遷移金属(Hf、Ta、W、Re、Ir、Pt、Au、Zr、Nb、Mo、Ru、ロジウム(Rh)、Pd、Ag、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、Cuや、これらの窒化物、酸化物を含んでいてもよい。また、記憶層106、206は、磁性体への近接磁気モーメント誘起を起こす材料として、Ir、Osを用いて形成してもよい。また、本実施形態においては、記憶層106、206は、膜厚を3.0nm以下とすることが好ましい。
【0034】
トンネルバリア層104、204は、マグネシウム(Mg)、Al、Ti、Si、亜鉛(Zn)、Zr、Hf、Ta、Bi、Cr、ガリウム(Ga)、ランタン(La)、ガドリニウム(Gd)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)からなる群から選択された少なくとも1種の元素の酸化物、もしくは、Mg、Al、Ti、Si、Zn、Zr、Hf、Ta、Bi、Cr、Ga、La、Gd、Sr、Baからなる群から選択された少なくとも1種の元素の窒化物等を用いて形成することができる。また、トンネルバリア層104、204は、フッ化マグネシウム(MgF2)、フッ化カルシウム(CaF)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO2)、アルミン酸ランタン(LaAlO3)、酸窒化アルミニウム(AlNO)等の各種の絶縁体、誘電体、半導体を用いて形成してもよい。また、本実施形態においては、トンネルバリア層104、204は、膜厚を0.6nm以上とすることが好ましい。
【0035】
本実施形態においては、MTJ素子100、200は、互いにTMR(Tunnel Magneto Resistance)比が異なることが好ましく、そのため、MTJ素子100、200のトンネルバリア層104、204は、互いに異なる膜厚を持つことが好ましい。また、本実施形態においては、MTJ素子200の高抵抗状態の抵抗値、MTJ素子100の高抵抗状態の抵抗値、MTJ素子100の低抵抗状態の抵抗値、MTJ素子200の低抵抗状態の抵抗値の順で、値が順次小さくなることが好ましい。
【0036】
本実施形態においては、磁気結合層300による強磁性結合により、磁気結合層300を挟む2つの記憶層106、206の磁化が同一方向を向く場合しか存在しない。磁気結合層300は、Mg、Al、Ti、Si、Zn、Zr、Hf、Ta、Bi、Cr、Ga、La、Gd、Sr、Ba、W、Re、Ir、Pt、Au、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、V、Mn、Ni、Cu、Os等を用いて形成することができる。また、後述する本開示の第2の実施形態の反強磁性結合層302(
図16 参照)も、磁気結合層300と同様の材料で形成することができるが、層の膜厚を変えることにより、当該層を磁気結合層300と反強磁性結合層302とのいずれかにすることができる。
【0037】
下地層400は、Cr、Ta、Ru、Au、Ag、Cu、Al、Ti、V、Mo、Zr、Hf、Re、W、Pt、Pd、Ir、Rh等の貴金属、それらを含む合金、遷移金属元素からなる層、及び、それらの積層構造を用いて形成することができる。また、下地層400は、窒化チタン(TiN)等の導電性窒化物を用いて形成することもできる。
【0038】
キャップ層402は、Cr、Ta、Ru、Au、Ag、Cu、Al、Ti、V、Mo、Zr、Hf、Re、W、Pt、Pd、Ir、Rh等の貴金属、それらを含む合金、遷移金属元素からなる層、及び、それらの積層構造を用いて形成することができる。また、キャップ層402は、TiN等の導電性窒化物を用いて形成することができる。
【0039】
また、磁気抵抗素子3の直径は、15nm以上、好ましくは30nm以上、より好ましくは40nm以上であり、280nm以下、好ましくは100nm以下、より好ましくは80nm以下である。また、磁気抵抗素子3の断面(積層方向に対して垂直に切断した際の断面)の形状は、円形又は楕円形であることができるが、本実施形態においては、特に限定されるものではない。また、本実施形態においては、磁気抵抗素子3は、VCMAを利用することができる記憶層106、206を複数有し、後述するように各記憶層106、206の、印加電圧に対する磁気異方性の変化の方向は、互いに逆となっていればよく、
図3に示される構成に限定されるものではない。また、本実施形態においては、MTJ素子100の磁化固定層102の磁化方向を下向き、MTJ素子200の磁化固定層202の磁化方向を上向きとする。
【0040】
<2.2 メモリセルアレイの構成例>
また、
図2及び
図3を参照して、磁気抵抗素子3を有するメモリセルアレイ11について説明する。
図2は、本実施形態に係るメモリセルアレイ11の具体的な構成の一例の斜視図であり、
図3は、
図2のメモリセルアレイ11の断面図である。
【0041】
図2に示すように、互いに直交する2種類のアドレス配線(ワード線(第2の制御線)及びビット線(第1の制御線)6)の交点に、磁気抵抗素子3が配置される。詳細には、シリコン基板等の半導体基体10に設けられた素子分離層2によって分離された半導体基体10の領域に、各磁気抵抗素子3を選択するための選択用トランジスタ(選択素子)が形成されている。選択用トランジスタは、半導体基体10に設けられたドレイン領域8及びソース領域7と、ゲート電極1とを有する。ゲート電極1は、
図2中の奥行方向に延びる一方のアドレス配線(ワード線)を兼ねている。ドレイン領域8は、
図2中の左右方向のそって並ぶ2つの選択用トランジスタに共通して形成されており、当該ドレイン領域8には、配線9が接続されている。すなわち、本実施形態においては、ソース領域7と、上方に配置された
図2中の左右方向に延びるビット線6との間に、磁気抵抗素子3を配置される。
【0042】
また、
図3に示すように、磁気抵抗素子3は、ビット線6とソース領域7とに、それぞれ上下に位置するコンタクト層4を介して接続されている。これにより、2種類のアドレス配線を通じて、磁気抵抗素子3に電圧を印加することで、磁気抵抗素子3にアクセスすることができる。なお、本実施形態に係るメモリセルアレイ11の構成は、
図2及び
図3に示される構成に限定されるものではない。
【0043】
<2.3 動作原理>
次に、
図4から
図7を参照して、本実施形態に係る磁気抵抗素子3の動作原理を説明する。
図4から
図7は、本実施形態に係る磁気抵抗素子3の動作原理を説明するための説明図である。
【0044】
図4に、本実施形態に係る磁気抵抗素子3に、正電圧(以下、図中の下方に高電位を持つ電圧を印加している場合のことを「正電圧」と呼ぶ)を印加している時と、負電圧(以下、図中の上方に高電位を持つ電圧を印加している場合のことを「負電圧」と呼ぶ)を印加している時との、MTJ素子100の記憶層106及びMTJ素子200の記憶層206の磁気異方性の変化を模式的に示す。この場合、2つの記憶層106、206は、磁気結合層300を介して交換結合(強磁性結合)しており、同一の方向に磁化が向く。なお、
図4中、上下方向をz軸とし、磁気抵抗素子3にはz軸と直交するx-y平面方向に、外部磁場Hextがかけられている。
【0045】
図4に示すように、本実施形態に係る磁気抵抗素子3においては、正電圧を印加すると、VCMA効果により、MTJ素子100の記憶層106の垂直磁気異方性は大きくなり、MTJ素子200の記憶層206の垂直磁気異方性は小さくなる。さらに、本実施形態に係る磁気抵抗素子3においては、負電圧を印加すると、VCMA効果により、MTJ素子100の記憶層106は垂直磁気異方性が小さくなり、MTJ素子200の記憶層206の垂直磁気異方性は大きくなる。
【0046】
次に、
図5に、MTJ素子100、200の抵抗状態と磁化方向との関係を示す。本実施形態においては、MTJ素子100、200は異なる抵抗値を持つ。詳細には、本実施形態においては、MTJ素子100の、高抵抗状態の抵抗値R
1(H)、低抵抗状態の抵抗値R
1(L)、MTJ素子200の、高抵抗状態の抵抗値R
2(H)、低抵抗状態の抵抗値R
2(L)は、例えば、R
2(H)>R
1(H)>R
1(L)>R
2(L)の大小関係を持つ。なお、本実施形態においては、MTJ素子100、200のそれぞれの低抵抗状態の抵抗値(R
1(L)、R
2(L))については、ほぼ等しい、もしくは、R
1(L)<R
2(L)の関係であってもよい。
【0047】
以下、記憶層106、206の磁化方向を矢印(例えば「↑↑」)で示すが、左側の矢印が上層の記憶層106の磁化方向を示し、右側の矢印が下層の記憶層206の磁化方向を示す。また、以下の図においては、MTJ素子100を「第1のMTJ」とも呼び、MTJ素子200を「第2のMTJ」とも呼ぶ。
【0048】
上述のような場合、記憶層106、206の磁化方向が共に上向きの場合(↑↑)には、磁化固定層102、202の磁化方向との関係で、MTJ素子100は高抵抗状態、MTJ素子200は低抵抗状態となる。また、同様に、記憶層106、206の磁化方向が共に下向きの場合(↓↓)には、磁化固定層102、202の磁化方向との関係で、MTJ素子100は低抵抗状態、MTJ素子200は高抵抗状態となる。また、磁気抵抗素子3の全体の抵抗値は、MTJ素子100、200の抵抗値の合算となることから、記憶層106、206の磁化方向が共に上向きの場合(↑↑)には、磁気抵抗素子3は低抵抗状態に、記憶層106、206の磁化方向が共に下向きの場合(↓↓)には、磁気抵抗素子3は高抵抗状態になる。なお、本実施形態においては、2つの記憶層106、206は、磁気結合層300を介して交換結合(強磁性結合)しており、同一の方向に磁化が向く場合しか存在しない。
【0049】
また、上述のような場合、記憶層106、206の磁化方向が共に上向きの場合(↑↑)には、MTJ素子200と比べてMTJ素子100の抵抗値が大きいことから、磁気抵抗素子3への電圧印加時には、MTJ素子100の分圧が大きくなる。一方、記憶層106、206の磁化方向が共に下向きの場合(↓↓)には、MTJ素子100と比べてMTJ素子200の抵抗値が大きいことから、磁気抵抗素子3への電圧印加時には、MTJ素子200の分圧が大きくなる。以上のように、磁気抵抗素子3の抵抗値が変化することから、抵抗値により、磁気抵抗素子3の状態を検知する、すなわち、保存された状態を読み出すことができる。なお、本実施形態においては、MTJ素子100、200の抵抗値の大小関係は、上述と逆でも良く、その場合には、書き込み時の電圧方向も逆となる。
【0050】
次に、
図6に、電圧印加時の記憶層106、206の磁気異方性と、2つの記憶層106、206が結合した磁化エネルギーとの模式図を示す。また、以下の図においては、「上層」とは、上層側の記憶層106を意味し、「下層」とは、下層側の記憶層206を意味する。
【0051】
本実施形態に係る磁気抵抗素子3においては、記憶層106、206の結合による磁化エネルギーが谷を形成すると、記憶層106、206のいずれかの磁化方向が、外部磁場Hextの方向を軸とする歳差運動を行いつつ、エネルギーの低い状態へ移動することから、反転が生じる。
【0052】
まずは、低抵抗状態の磁気抵抗素子3に正電圧を印加した場合を説明する。この場合、MTJ素子100の分圧が大きく、MTJ素子100の記憶層106の磁気異方性が大きい。従って、磁気抵抗素子3の全体では、磁気異方性が大きくなることから、
図6の左上に示すように、磁化エネルギーは障壁(山)を形成し、磁化方向を反転させることができない。
【0053】
次に、高抵抗状態の磁気抵抗素子3に正電圧を印加した場合を説明する。この場合、MTJ素子200の分圧が大きく、MTJ素子200の記憶層206の磁気異方性が小さい。従って、磁気抵抗素子3の全体では、磁気異方性が小さくなることから、
図6の右上に示すように、磁化エネルギーは谷を形成し、磁化方向を反転させることができる。
【0054】
次に、低抵抗状態の磁気抵抗素子3に負電圧を印加した場合を説明する。この場合、MTJ素子100の分圧が大きく、MTJ素子100の記憶層106の磁気異方性が小さい。従って、磁気抵抗素子3の全体では、磁気異方性が小さくなることから、
図6の左下に示すように、磁化エネルギーは谷を形成し、磁化方向を反転させることができる。
【0055】
次に、高抵抗状態の磁気抵抗素子3に負電圧を印加した場合を説明する。この場合、MTJ素子200の分圧が大きく、MTJ素子200の記憶層106の磁気異方性が大きい。従って、磁気抵抗素子3の全体では、磁気異方性が大きくなることから、
図6の右下に示すように、磁化エネルギーは障壁(山)を形成し、磁化方向を反転させることができない。
【0056】
以上のように、本実施形態に係る磁気抵抗素子3においては、MTJ素子100、200の記憶層106、206の結合による磁化エネルギーが谷を形成すると、外部磁場Hextの方向を軸とする歳差運動を行いつつ、エネルギーの低い状態へ移動するために、磁化方向の反転が生じる。さらに、本実施形態においては、以下に説明するように、磁化方向が反転して抵抗状態が変化すると、磁気異方性及び磁化エネルギーも変化することから、磁化方向が反転できない安定した状態となる。
【0057】
図7に、計算機シミュレーションにより得られた、磁気抵抗素子3に電圧を印加した最中の磁化ベクトルの振る舞いを示す。
図7中のフラフにおいては、横軸は時間、縦軸は磁化のz成分m
zを示し、m
zが+1で上向き(↑)、-1で下向き(↓)を意味する。シミュレーションの条件としては、10~20nsecの間に電圧を印加し、電圧印加の前後に、10nsecの緩和時間(電圧を印加しない時間)を設けた。また、また、以下の図においては、「1層」とは、上層側のMTJ素子100を意味し、「2層」とは、下層側のMTJ素子200を意味する。
【0058】
低抵抗状態の磁気抵抗素子3に正電圧を印加した場合には、
図7の左上に示すように、記憶層106、206ともに磁化方向が反転せず、状態が維持されていた。また、高抵抗状態の磁気抵抗素子3に正電圧を印加した場合には、
図7の右上に示すように、記憶層106、206ともに磁化方向が反転し、反転後は振動せずに状態が維持されていた。また、低抵抗状態の磁気抵抗素子3に負電圧を印加した場合には、
図7の左下に示すように、記憶層106、206ともに磁化方向が反転し、反転後は振動せずに状態が維持されていた。また、高抵抗状態の磁気抵抗素子3に負電圧を印加した場合には、
図7の右下にしめすように、記憶層106、206ともに磁化方向が反転せず、状態が維持されていた。
【0059】
すなわち、本実施形態に係る磁気抵抗素子3においては、印加する電圧のパルス幅が20[nsec]と長くなっても、記憶層106、206ともに磁化方向が反転した場合であっても、反転後は状態が維持されていた。言い換えると、本実施形態に係る磁気抵抗素子3においては、印加する電圧のパルス幅が長くなっても、記憶層106、206は、期待される磁化方向を維持することがわかった。
【0060】
先に説明した上記特許文献1で開示されている方式では、電圧印加中は磁化方向が周回することから、印加する電圧のパルス幅を長くすると、磁化方向が所望の方向に反転する成功率が劣化していた。一方、本実施形態においては、印加する電圧のパルス幅を長くしても、反転後は状態が維持される。詳細には、本実施形態においては、
図7に示すように、電圧印加開始から2、3[nsec]以降では、どのタイミングで電圧印加を止めても磁化方向が反転後の状態を維持している。また、本実施形態に係る磁気抵抗素子3は、STT-MRAMのように書き込み誤り率を下げるためにパルス幅を長くすることを必要とせず、制御が実現できればパルス幅のさらなる短縮も可能である。例えば、
図7では、100MHzクロックの周期である10[nsec]のパルス幅を想定してシミュレーションを行っているが、将来的に動作周波数が向上して周期が短縮された場合にも、本実施形態は適用することが可能である。
【0061】
従って、本実施形態によれば、印加電圧のパルス幅が長くなっても、記憶層の磁化方向の反転の確率が劣化することはないことから、パルス幅の高精度の制御を行うことがなく、容易に書き込みを行うことができる。さらに、本実施形態によれば、短いパルス幅を高精度に制御するための複雑、且つ、大規模な制御回路を必要としない。
【0062】
また、本実施形態に係る磁気抵抗素子3の動作を利用しようとする場合、低抵抗状態の磁気抵抗素子3への書き込み、及び、低抵抗状態を維持したい際には、正電圧を印加すればよい。また、本実施形態に係る磁気抵抗素子3の動作を利用しようとする場合、高抵抗状態の磁気抵抗素子3への書き込み、及び、高抵抗状態を維持したい際には、負電圧を印加すればよい。言い換えると、本実施形態においては、後述する書き込み回路512(
図8 参照)は、磁気抵抗素子3を高抵抗状態へと書き込む電圧(第1の電圧)と、磁気抵抗素子3を低抵抗状態へと書き込む電圧(第2の電圧)とが逆になるように、制御することとなる。
【0063】
先に説明した上記特許文献1で開示されている方式では、電圧印加中は磁化方向が反転することから、磁気抵抗素子3の状態を確認するための初期読み出しが必要であった。一方、本実施形態においては、期待する状態に応じた電圧を印加することで、反転後であっても期待される状態が維持されることから、磁気抵抗素子3の状態を確認するための初期読み出しが不要である。従って、本実施形態によれば、書き込み時間が長くなることを避けることができ、書き込みが高速であるというVC-MRAMの特性を十分に生かすことができる。
【0064】
<2.4 メモリ装置の構成例>
次に、
図8を参照して、磁気抵抗素子3を有するメモリ装置(メモリシステム)500について説明する。
図8は、本実施形態に係るメモリ装置500のブロック図である。
【0065】
図8に示すように、メモリ装置500は、入出力部(I/O)502、制御回路503、電圧生成回路504、センスアンプ506、読み出し回路510、書き込み回路512、ビット/ソースラインアドレスデコーダ520、ワードラインアドレスデコーダ530、ビットラインに制御回路540、ワードライン制御回路542、ソースライン制御回路544、及び、メモリセルアレイ550を主に含む。さらに、メモリセルアレイ550は、複数の、上述した磁気抵抗素子3、選択トランジスタ(選択素子)、ビットライン(BL)、ワードライン(WL)、及び、ソースライン(SL)を有する。
【0066】
本実施形態においては、入出力部(I/O)502を通じて、コマンド、アドレス、書き込みデータ、読み出しデータの受け渡しを行うことができる。電圧生成回路504は、書き込み・読み出しに用いるパルス電圧を生成することができる。また、回路動作に必要な電圧は、図示しない電源から供給されるものとする。ビット/ソースラインアドレスデコーダ520及びワードラインアドレスデコーダ530は、受信したアドレスに応じてアクセスするビット/ソースラインとワードラインのアドレスを取得することができる。書き込み回路512及び読み出し回路510は、コマンドに応じて、磁気抵抗素子3に対する書き込み/読み出しの制御を行うことができる。詳細には、書き込み回路512は、書き込みパルスの制御を行い、読み出し回路510は、読み出しパルスの制御を行い、センスアンプ506により読み出しデータは検出される。
【0067】
<2.5 書き込みフロー>
次に、
図9から
図11を参照して、磁気抵抗素子3の書き込みフローについて説明する。
図9は、本実施形態に係るメモリ装置500の書き込みのタイミングチャートであり、
図10は、本実施形態に係るメモリ装置500の書き込みのフローチャートであり、
図11は、本実施形態に係るメモリ装置500の書き込み電圧制御のタイミングチャートである。
【0068】
図9に示すように、本実施形態においては、低抵抗状態への書き込み、及び、低抵抗状態を維持する場合には、磁気抵抗素子3に正電圧を印加するため、ソースラインを高電位に制御する。また、本実施形態においては、高抵抗状態への書き込み、及び、高抵抗状態を維持する場合には、磁気抵抗素子3に負電圧を印加するため、ビットラインを高電位に制御する。なお、本実施形態においては、
図1から3及び
図8に示した磁気抵抗素子3の積層構造や電気的な接続は、図示された形態に限定されるものではなく、逆であってもよい。すなわち、本実施形態においては、ビットラインとソースラインとの電圧制御の関係は、これらの接続関係等に応じて逆にしてもよい。また、
図9においては、ワードライン、ソースライン及びビットラインに印加される電圧のパルス幅を同一としているが、本実施形態においては、パルス幅は異なってもいてもよい。例えば、先にワードラインの電圧をオンしてから、ソースラインもしくはビットラインの電圧をオン/オフして、最後にワードラインをオフしてもよい。
【0069】
図10に、本実施形態のフローチャートを示す。
図8に示すようなブロックを持つメモリ装置500において、例えば
図10に示す書き込みフローを実行することができる。
図10に示すように、書き込み命令及び書き込みデータの入力によりフローが開始する。次に、メモリ装置500は、低抵抗状態への書き込み、もしくは、低抵抗状態の維持かどうかを判断する(ステップS101)。低抵抗状態への書き込み、もしくは、低抵抗状態の維持である場合(ステップS101:Yes)には、メモリ装置500は、ステップS102へ進み、ソースラインを高電位にする設定を行う(ステップS102)。一方、低抵抗状態への書き込み、もしくは、低抵抗状態の維持でない場合(ステップS101:No)には、メモリ装置500は、ステップS103へ進み、ビットラインを高電位にする設定を行う(ステップS103)。そして、メモリ装置500は、ステップS102又はステップS104の決定に従って、パルス電圧を印加して(ステップS104)、フローを終了する。
【0070】
図11に、メモリ装置500の書き込み制御タイミングチャートを示す。本実施形態においては、
図10のフローを実行すると、書き込み回路512は、
図11に示す制御信号を発行し、各制御回路が
図9に示すような電圧を生成する。さらに、書き込みを開始すると、書き込み回路512は、書き込み開始信号Write Startと書き込み方向制御信号Direction Controlとを発行する。この際、書き込み回路512は、低抵抗状態への書き込み、及び、低抵抗状態を維持する場合は、書き込み方向制御信号Direction ControlをLowとする。また、書き込み回路512は、高抵抗状態への書き込み、及び、高抵抗状態を維持する場合は、書き込み方向制御信号Direction ControlをHighとする。そして、書き込み回路512は、制御信号の発行後に書き込みパルスを発行する。
【0071】
<2.6 変形例1>
次に、
図12から
図14を参照して、本実施形態の変形例1を説明する。
図12は、本変形例1に係るメモリ装置500の書き込みのフローチャートであり、
図13及び
図14は、本変形例1に係るメモリ装置500の書き込み電圧制御のタイミングチャートである。本変形例1においては、上述の本実施形態と異なり、書き込みの動作が正常に行われるか確認するためにベリファイ読み出しを行う。従って、本変形例1においては、書き込みパルスを1回発行するのではなく、パルス印加後にベリファイ読み出しを行い、期待と一致しなければ再度パルスを印加する。
【0072】
図12に、本変形例1のフローチャートを示す。
図12に示すステップS201からステップS204は、
図10に示す本実施形態のステップS101からステップS104と同じであるため、ここでは説明を省略する。次に、メモリ装置500は、パルス印加後にベリファイ読み出しを行い(ステップS205)、読み出した結果が期待と一致するかどうかを判断する(ステップS206)。メモリ装置500は、期待と一致する場合(ステップS206:Yes)には、フローを終了し、期待と一致しない場合(ステップS206:No)には、ステップS204へ戻る。
【0073】
図13に、メモリ装置500の、低抵抗状態への書き込み制御タイミングチャートを示し、
図14に、高抵抗状態への書き込み制御タイミングチャートを示す。本変形例1においては、
図12のフローを実行すると、本実施形態と同様に、書き込み回路512は、制御信号を発行し、各制御回路が
図13、14に示すような電圧を生成する。さらに、書き込みを開始すると、書き込み回路512は、書き込み開始信号Write Startと書き込み方向制御信号Direction Controlとを発行する。詳細には、書き込み回路512は、低抵抗状態への書き込み、及び、低抵抗状態を維持する場合は、書き込み方向制御信号Direction ControlをLowとする。一方、書き込み回路512は、高抵抗状態への書き込み、及び、高抵抗状態を維持する場合は、書き込み方向制御信号Direction ControlをHighとする。そして、書き込み回路512は、制御信号の発行後に書き込みパルスを発行する。さらに、メモリ装置500は、書き込みパルスの印加後に読み出しを実行する。読み出し回路510は、読み出し開始信号Read Startを発行して、読み出しパルスの発行制御を行う。読み出しパルスは、ビットライン、ソースラインのいずれを高電位としても良いが、図に示す例においては、ビットラインを高電位としている。次に、磁気抵抗素子3の状態に応じてソースラインの電圧が変化するため、センスアンプ506を有効にして(SA Enable)、期待と一致するかどうかを確認する。メモリ装置500は、一致しなければ、書き込み制御と読み出し制御とを繰り返す。
【0074】
<2.7 変形例2>
次に、
図15を参照して、本実施形態の変形例2を説明する。
図15は、本変形例2に係る磁気抵抗素子3aの構成例及び動作原理を説明するための説明図である。上述した本実施形態においては、MTJ素子100の磁化固定層102の磁化方向を下向き、MTJ素子200の磁化固定層202の磁化方向を上向きとしていた。一方、本変形例2においては、MTJ素子100の磁化固定層102の磁化方向を上向き、MTJ素子200の磁化固定層202の磁化方向を下向きとする。このような構成であっても、本実施形態と同様に動作させることができる。以下においては、第1の実施形態と共通する点については、説明を省略し、第1の実施形態と異なる点について説明する。
【0075】
まず、
図15に、MTJ素子100、200の抵抗状態を磁化方向との関係を示す。本変形例2においても、MTJ素子100の、高抵抗状態の抵抗値R
1(H)、低抵抗状態の抵抗値R
1(L)、MTJ素子200の、高抵抗状態の抵抗値R
2(H)、低抵抗状態の抵抗値R
2(L)は、例えば、R
2(H)>R
1(H)>R
1(L)>R
2(L)の大小関係を持つ。なお、本変形例2においても、MTJ素子100、200のそれぞれの低抵抗状態の抵抗値は、ほぼ等しい、もしくは、R
1(L)<R
2(L)に大小関係であってもよい。
【0076】
上述のような場合、記憶層106、206の磁化方向が共に下向きの場合(↓↓)には、MTJ素子100は高抵抗状態、MTJ素子200は低抵抗状態となる。また、記憶層106、206の磁化方向が共に上向きの場合(↑↑)には、MTJ素子100は低抵抗状態、MTJ素子200は高抵抗状態となる。また、磁気抵抗素子3aの全体の抵抗値については、記憶層106、206の磁化方向が共に下向きの場合(↓↓)には、低抵抗状態に、記憶層106、206の磁化方向が共に上向きの場合(↑↑)には、高抵抗状態になる。
【0077】
また、上述のような場合、記憶層106、206の磁化方向が共に下向きの場合(↓↓)には、MTJ素子200と比べてMTJ素子100の抵抗値が大きいことから、磁気抵抗素子3aへの電圧印加時には、MTJ素子100の分圧が大きくなる。一方、記憶層106、206の磁化方向が共に上向きの場合(↑↑)には、MTJ素子100と比べてMTJ素子200の抵抗値が大きいことから、磁気抵抗素子3aへの電圧印加時には、MTJ素子200の分圧が大きくなる。従って、本変形例2においても、本実施形態と同様に、動作させることができる。なお、本変形例2においても、MTJ素子100、200の抵抗値の大小関係は、上述と逆でも良く、その場合には、書き込み時の電圧方向も逆となる。
【0078】
以上のように、本変形例2のような構成であっても、本実施形態と同様に動作させることができる。なお、本変形例2についても、上述の変形例1を適用することができる。
【0079】
<<3. 第2の実施形態>>
<3.1 磁気抵抗素子の構成例>
次に、
図16を参照して、本開示の第2の実施形態を説明する。
図16は、本実施形態に係る磁気抵抗素子3bの構成例を示す模式図である。以下においては、第1の実施形態と共通する点については、説明を省略し、第1の実施形態と異なる点について説明する。
【0080】
上述した第1の実施形態においては、2つのMTJ素子100、200の間には、強磁性結合を示す磁気結合層300が設けられていたが、本実施形態においては、
図16に示すように、反強磁性結合層302が設けられている。詳細には、反強磁性結合層302は、MTJ素子(一方のMTJ素子)100の記憶層106と、MTJ素子(他方のMTJ素子)200の記憶層206とに挟まれるように設けられている。本実施形態においては、反強磁性結合層302の反強磁性結合により、2つの記憶層106、206の磁化方向は、反対方向を向く場合に安定することとなる。なお、本実施形態においては、MTJ素子100の磁化固定層102の磁化方向を下向き、MTJ素子200の磁化固定層202の磁化方向を下向きとする。
【0081】
<3.2 動作原理>
次に、
図17から
図19を参照して、本実施形態に係る磁気抵抗素子3bの動作原理を説明する。
図17から
図19は、本実施形態に係る磁気抵抗素子3bの動作原理を説明するための説明図である。
【0082】
図17に示すように、本実施形態に係る磁気抵抗素子3bにおいても、正電圧を印加することにより、VCMA効果により、MTJ素子100の記憶層106の垂直磁気異方性は大きくなり、MTJ素子200の記憶層206の垂直磁気異方性は小さくなる。さらに、本実施形態に係る磁気抵抗素子3bにおいても、負電圧を印加することにより、VCMA効果により、MTJ素子100の記憶層106の垂直磁気異方性は小さくなり、MTJ素子200の記憶層206の垂直磁気異方性は大きくなる。
【0083】
次に、
図18に、MTJ素子100、200の抵抗状態と磁化方向との関係を示す。本実施形態においても、MTJ素子100、200は、異なる抵抗値を持つ。詳細には、本実施形態においては、MTJ素子100の、高抵抗状態の抵抗値R
1(H)、低抵抗状態の抵抗値R
1(L)、MTJ素子200の、高抵抗状態の抵抗値R
2(H)、低抵抗状態の抵抗値R
2(L)は、例えば、R
2(H)>R
1(H)>R
1(L)>R
2(L)の大小関係を持つ。なお、本実施形態においては、MTJ素子100、200のそれぞれの低抵抗状態の抵抗値は、ほぼ等しい、もしくは、R
1(L)<R
2(L)の大小関係であってもよい。
【0084】
上述のような場合、記憶層106、206の磁化方向が異なる方向(↑↓)の場合には、MTJ素子100は高抵抗状態、MTJ素子200は低抵抗状態となる。また、記憶層106、206の磁化方向が異なる方向(↓↑)には、MTJ素子100は低抵抗状態、MTJ素子200は高抵抗状態となる。また、磁気抵抗素子3bの全体の抵抗値については、記憶層106、206の磁化方向が異なる方向(↑↓)の場合には、低抵抗状態に、記憶層106、206の磁化方向が異なる方向(↓↑)には、高抵抗状態になる。なお、本実施形態においては、反強磁性結合により、2つの記憶層106、206の磁化方向が反対方向を向く場合しか存在しない。
【0085】
また、記憶層106、206の磁化方向が異なる方向(↑↓)の場合には、MTJ素子100の抵抗値が大きいことから、磁気抵抗素子3bへの電圧印加時には、MTJ素子100の分圧が大きくなる。一方、MTJ素子100、200の記憶層106、206の磁化方向が異なる方向(↓↑)には、MTJ素子200の抵抗値が大きいことから、磁気抵抗素子3bへの電圧印加時には、MTJ素子200の分圧が大きくなる。なお、本実施形態においては、MTJ素子100、200の抵抗値の大小関係は、上述と逆でも良く、その場合には、書き込み時の電圧方向も逆となる。
【0086】
次に、
図19に、電圧印加時のMTJ素子100、200の記憶層106、206の磁気異方性と、2つの記憶層106、206が結合した磁化エネルギーとの模式図を示す。なお、本実施形態においては、図に示される磁化方向が第1の実施形態の
図6と異なるものの、動作原理については、第1の実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0087】
<3.3 変形例1>
第2の実施形態においても、第1の実施形態の変形例1を適用することができる。
【0088】
<3.4 変形例2>
次に、
図20を参照して、本実施形態の変形例2を説明する。
図20は、本変形例2に係る磁気抵抗素子3cの構成例及び動作原理を説明するための説明図である。上述の本実施形態においては、MTJ素子100の磁化固定層102の磁化方向を下向き、MTJ素子200の磁化固定層202の磁化方向を下向きとしていた。一方、本変形例2においては、MTJ素子100の磁化固定層102の磁化方向を上向き、MTJ素子200の磁化固定層202の磁化方向を上向きとする。このような構成であっても、本実施形態と同様に動作させることができる。なお、本変形例2についても、上述の変形例1を適用することができる。
【0089】
次に、
図20に、MTJ素子100、200の抵抗状態と磁化方向との関係を示す。本変形例2においても、MTJ素子100の、高抵抗状態の抵抗値R
1(H)、低抵抗状態の抵抗値R
1(L)、MTJ素子200の、高抵抗状態の抵抗値R
2(H)、低抵抗状態の抵抗値R
2(L)は、例えば、R
2(H)>R
1(H)>R
1(L)>R
2(L)の大小関係を持つ。なお、本変形例2においても、MTJ素子100、200のそれぞれの低抵抗状態の抵抗値は、ほぼ等しい、もしくは、R
1(L)<R
2(L)の大小関係であってもよい。
【0090】
上述のような場合、記憶層106、206の磁化方向が異なる方向(↓↑)の場合には、MTJ素子100は高抵抗状態、MTJ素子200は低抵抗状態となる。また、記憶層106、206の磁化方向が異なる方向(↑↓)には、MTJ素子100は低抵抗状態、MTJ素子200は高抵抗状態となる。また、磁気抵抗素子3cの全体の抵抗値については、記憶層106、206の磁化方向が異なる方向(↓↑)の場合には、低抵抗状態に、記憶層106、206の磁化方向が異なる方向(↑↓)には、高抵抗状態になる。なお、本変形例2においても、反強磁性結合により、2つの記憶層106、206の磁化方向が反対方向を向く場合しか存在しない。
【0091】
また、上述のような場合、記憶層106、206の磁化方向が異なる方向(↓↑)の場合には、MTJ素子100の抵抗値が大きいことから、磁気抵抗素子3cへの電圧印加時には、MTJ素子100の分圧が大きくなる。一方、記憶層106、206の磁化方向が異なる方向(↑↓)には、MTJ素子200の抵抗値が大きいことから、磁気抵抗素子3cへの電圧印加時には、MTJ素子200の分圧が大きくなる。なお、本変形例2においても、MTJ素子100、200の抵抗値の大小関係は、上述と逆でも良く、その場合には、書き込み時の電圧方向も逆となる。
【0092】
<<4. 第3の実施形態>>
<4.1 磁気抵抗素子の構成例>
次に、
図21を参照して、本開示の第3の実施形態を説明する。
図21は、本実施形態に係る磁気抵抗素子3dの構成例を示す模式図である。以下においては、第1及び第2の実施形態と共通する点については、説明を省略し、第1及び第2の実施形態と異なる点について説明する。
【0093】
上述の第1の実施形態においては、磁気抵抗素子3は、2つのMTJ素子100、200を有していたが、本実施形態においては、
図21に示すように、上方のMTJ素子100から磁化固定層102を削除した構成となっている。詳細には、磁気抵抗素子3dは、MTJ素子200と、MTJ素子200の記憶層206と接する磁気結合層300とを有する。さらに、磁気抵抗素子3dは、磁気結合層300に接する記憶層(他の記憶層)106及び記憶層106と接するトンネルバリア層(他のトンネルバリア層)104からなる抵抗素子を有する。本実施形態においては、磁気結合層300の強磁性結合により、2つの記憶層106、206の磁化方向が同一方向を向く場合に安定する。なお、本実施形態においては、MTJ素子200の磁化固定層202の磁化方向を上向きとする。
【0094】
<4.2 動作原理>
次に、
図22から
図24を参照して、本実施形態に係る磁気抵抗素子3dの動作原理を説明する。
図22から
図24は、本実施形態に係る磁気抵抗素子3dの動作原理を説明するための説明図である。
【0095】
図22に示すように、本実施形態に係る磁気抵抗素子3dにおいては、正電圧を印加することにより、記憶層106の垂直磁気異方性は大きくなり、MTJ素子200の記憶層206の垂直磁気異方性は小さくなる。さらに、本実施形態に係る磁気抵抗素子3bにおいては、負電圧を印加することにより、記憶層106の垂直磁気異方性は小さくなり、MTJ素子200の記憶層206の垂直磁気異方性は大きくなる。
【0096】
次に、
図23に、抵抗状態と磁化方向との関係を示す。詳細には、本実施形態においては、上層の抵抗値R
1、下層のMTJ素子200の、高抵抗状態の抵抗値R
2(H)、低抵抗状態の抵抗値R
2(L)は、例えば、R
2(H)>R
1>R
2(L)の大小関係を持つ。
【0097】
上述のような場合、記憶層106、206の磁化方向が共に上向きの場合(↑↑)には、MTJ素子200は低抵抗状態となる。また、記憶層106、206の磁化方向が共に下向きの場合(↓↓)には、MTJ素子200は高抵抗状態となる。また、磁気抵抗素子3dの全体の抵抗値については、記憶層106、206の磁化方向が共に上向きの場合(↑↑)には、低抵抗状態に、記憶層106、206の磁化方向が共に下向きの場合(↓↓)には、高抵抗状態になる。なお、本実施形態においては、強磁性結合により、2つの記憶層106、206の磁化方向が同一方向を向く場合しか存在しない。
【0098】
また、上述のような場合、記憶層106、206の磁化方向が共に上向きの場合(↑↑)には、MTJ素子200と比べて上層の抵抗値が大きいことから、磁気抵抗素子3dへの電圧印加時には、上層の分圧が大きくなる。一方、記憶層106、206の磁化方向が共に下向きの場合(↓↓)には、上層と比べてMTJ素子200の抵抗値が大きいことから、磁気抵抗素子3dへの電圧印加時には、MTJ素子200の分圧が大きくなる。なお、本実施形態においては、抵抗値の大小関係は、上述と逆でも良く、その場合には、書き込み時の電圧方向も逆となる。
【0099】
次に、
図24に、記憶層106、206の磁気異方性と、2つの記憶層106、206が結合した磁化エネルギーとの模式図を示す。なお、本実施形態においては、動作原理については、第1の実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0100】
<4.3 変形例1>
第3の実施形態においても、第1の実施形態の変形例1を適用することができる。
【0101】
<4.4 変形例2>
次に、
図25を参照して、本実施形態の変形例2を説明する。
図25は、本変形例2に係る磁気抵抗素子3eの構成例及び動作原理を説明するための説明図である。上述の本実施形態においては、MTJ素子200の磁化固定層202の磁化方向を上向きとしていた。一方、本変形例2においては、MTJ素子200の磁化固定層202の磁化方向を下向きとする。このような構成であっても、本実施形態と同様に動作させることができる。なお、本変形例2についても、上述の変形例1を適用することができる。
【0102】
次に、
図25に、抵抗状態と磁化方向との関係を示す。詳細には、本変形例2においては、上層の抵抗値R
1、MTJ素子200の、高抵抗状態の抵抗値R
2(H)、低抵抗状態の抵抗値R
2(L)は、例えば、R
2(H)>R
1>R
2(L)の大小関係を持つ。
【0103】
上述のような場合、記憶層106、206の磁化方向が共に下向きの場合(↓↓)には、MTJ素子200は低抵抗状態となる。また、記憶層106、206の磁化方向が共に上向きの場合(↑↑)には、MTJ素子200は高抵抗状態となる。また、磁気抵抗素子3eの全体の抵抗値については、記憶層106、206の磁化方向が共に下向きの場合(↓↓)には、低抵抗状態に、記憶層106、206の磁化方向が共に上向きの場合(↑↑)には、高抵抗状態になる。なお、本変形例2においても、強磁性結合により、2つの記憶層106、206の磁化方向が同一方向を向く場合しか存在しない。
【0104】
また、上述のような場合、記憶層106、206の磁化方向が共に下向きの場合(↓↓)には、MTJ素子200と比べて上層の抵抗値が大きいことから、磁気抵抗素子3eへの電圧印加時には、上層の分圧が大きくなる。一方、記憶層106、206の磁化方向が共に上向きの場合(↑↑)には、上層と比べてMTJ素子200の抵抗値が大きいことから、磁気抵抗素子3eへの電圧印加時には、MTJ素子200の分圧が大きくなる。なお、本変形例においては、抵抗値の大小関係は、上述と逆でも良く、その場合には、書き込み時の電圧方向も逆となる。
【0105】
<4.5 変形例3>
次に、
図26及び
図27を参照して、本実施形態の変形例3を説明する。
図26は、本変形例3に係る磁気抵抗素子3fの構成例を示す模式図であり、
図26は、本変形例3に係る磁気抵抗素子3fの構成例及び動作原理を説明するための説明図である。上述の本実施形態においては、磁気抵抗素子3dは、上層のMTJ素子100から磁化固定層102を削除した構成となっていたが、本変形例3においては、
図26に示すように、下層のMTJ素子200から磁化固定層202を削除した構成となっている。また、変形例3においては、MTJ素子100の磁化固定層102の磁化方向を下向きとする。このような構成であっても、本実施形態と同様に動作させることができる。なお、本変形例3についても、上述の変形例1を適用することができる。
【0106】
次に、
図27に、抵抗状態と磁化方向との関係を示す。詳細には、本変形例3においては、MTJ素子100の、高抵抗状態の抵抗値R
1(H)、低抵抗状態の抵抗値R
1(L)、下層の抵抗値R
2は、例えば、R
1(H)>R
2>R
1(L)の大小関係を持つ。
【0107】
上述のような場合、記憶層106、206の磁化方向が共に下向きの場合(↓↓)には、MTJ素子100は低抵抗状態となる。また、記憶層106、206の磁化方向が共に上向きの場合(↑↑)には、MTJ素子100は高抵抗状態となる。また、磁気抵抗素子3fの全体の抵抗値については、記憶層106、206の磁化方向が共に下向きの場合(↓↓)には、低抵抗状態に、記憶層106、206の磁化方向が共に上向きの場合(↑↑)には、高抵抗状態になる。
【0108】
また、上述のような場合、記憶層106、206の磁化方向が共に下向きの場合(↓↓)には、MTJ素子100と比べて下層の抵抗値が大きいことから、磁気抵抗素子3fへの電圧印加時には、下層の分圧が大きくなる。一方、記憶層106、206の磁化方向が共に上向きの場合(↑↑)には、下層と比べてMTJ素子100の抵抗値が大きいことから、磁気抵抗素子3fへの電圧印加時には、MTJ素子100の分圧が大きくなる。なお、本変形例においては、抵抗値の大小関係は、上述と逆でも良く、その場合には、書き込み時の電圧方向も逆となる。
【0109】
<4.6 変形例4>
次に、
図28を参照して、本実施形態の変形例4を説明する。
図28は、本変形例4に係る磁気抵抗素子3gの構成例及び動作原理を説明するための説明図である。上述の変形例3においては、MTJ素子100の磁化固定層102の磁化方向を下向きとしていた。一方、本変形例4においては、MTJ素子100の磁化固定層102の磁化方向を上向きとする。このような構成であっても、本実施形態と同様に動作させることができる。なお、本変形例4についても、上述の変形例1を適用することができる。
【0110】
次に、
図28に、抵抗状態と磁化方向との関係を示す。詳細には、本変形例4においては、MTJ素子100の、高抵抗状態の抵抗値R
1(H)、低抵抗状態の抵抗値R
1(L)、下層の抵抗値R
2は、例えば、R
1(H)>R
2>R
1(L)の大小関係を持つ。
【0111】
上述のような場合、記憶層106、206の磁化方向が共に上向きの場合(↑↑)には、MTJ素子100は低抵抗状態となる。また、記憶層106、206の磁化方向が共に下向きの場合(↓↓)には、MTJ素子100は高抵抗状態となる。また、磁気抵抗素子3gの全体の抵抗値については、記憶層106、206の磁化方向が共に上向きの場合(↑↑)には、低抵抗状態に、記憶層106、206の磁化方向が共に下向きの場合(↓↓)には、高抵抗状態になる。
【0112】
また、上述のような場合、記憶層106、206の磁化方向が共に上向きの場合(↑↑)には、MTJ素子100と比べて下層の抵抗値が大きいことから、磁気抵抗素子3gへの電圧印加時には、下層の分圧が大きくなる。一方、記憶層106、206の磁化方向が共に下向きの場合(↓↓)には、下層と比べてMTJ素子100の抵抗値が大きいことから、磁気抵抗素子3gへの電圧印加時には、MTJ素子100の分圧が大きくなる。なお、本変形例においては、抵抗値の大小関係は、上述と逆でも良く、その場合には、書き込み時の電圧方向も逆となる。
【0113】
<<5. 第4の実施形態>>
<5.1 磁気抵抗素子の構成例>
次に、
図29を参照して、本開示の第4の実施形態を説明する。
図29は、本実施形態に係る磁気抵抗素子3hの構成例を示す模式図である。以下においては、第1から第3の実施形態と共通する点については、説明を省略し、第1から第3の実施形態と異なる点について説明する。
【0114】
本実施形態においては、
図29に示すように、上述の第3の実施形態の磁気結合層300の代わりに、反強磁性結合層302が設けられている。本実施形態においては、反強磁性結合層302の反強磁性結合により、2つの記憶層106、206の磁化が反対方向を向く場合に安定する。なお、本実施形態においては、MTJ素子200の磁化固定層202の磁化方向は上向きとする。
【0115】
<5.2 動作原理>
次に、
図30から
図32を参照して、本実施形態に係る磁気抵抗素子3hの動作原理を説明する。
図30から
図32は、本実施形態に係る磁気抵抗素子3hの動作原理を説明するための説明図である。
【0116】
図30に示すように、本実施形態に係る磁気抵抗素子3hにおいては、正電圧を印加することにより、記憶層106の垂直磁気異方性が大きくなり、MTJ素子200の記憶層206の垂直磁気異方性は小さくなる。さらに、本実施形態に係る磁気抵抗素子3hにおいては、負電圧を印加することにより、記憶層106の垂直磁気異方性は小さくなり、MTJ素子200の記憶層206の垂直磁気異方性は大きくなる。
【0117】
次に、
図31に、抵抗状態と磁化方向との関係を示す。詳細には、本実施形態においては、上層の抵抗値R
1、MTJ素子200の、高抵抗状態の抵抗値R
2(H)、低抵抗状態の抵抗値R
2(L)は、例えば、R
2(H)>R
1>R
2(L)の大小関係を持つ。
【0118】
上述のような場合、記憶層106、206の磁化方向が異なる場合(↓↑)には、MTJ素子200は低抵抗状態となる。また、記憶層106、206の磁化方向が異なる場合(↑↓)には、MTJ素子200は高抵抗状態となる。また、磁気抵抗素子3hの全体の抵抗値については、記憶層106、206の磁化方向が異なる場合(↓↑)には、低抵抗状態に、記憶層106、206の磁化方向が異なる場合(↑↓)には、高抵抗状態になる。なお、本実施形態においては、強磁性結合により、2つの記憶層106、206の磁化方向が異なる方向を向く場合しか存在しない。
【0119】
また、上述のような場合、記憶層106、206の磁化方向が異なる場合(↓↑)には、MTJ素子200と比べて上層の抵抗値が大きいことから、磁気抵抗素子3hへの電圧印加時には、上層の分圧が大きくなる。一方、記憶層106、206の磁化方向が異なる場合(↑↓)には、上層と比べてMTJ素子200の抵抗値が大きいことから、磁気抵抗素子3hへの電圧印加時には、MTJ素子200の分圧が大きくなる。なお、本実施形態においては、抵抗値の大小関係は、上述と逆でも良く、その場合には、書き込み時の電圧方向も逆となる。
【0120】
次に、
図32に、記憶層106、206の磁気異方性と、2つの記憶層106、206が結合した磁化エネルギーとの模式図を示す。なお、本実施形態においては、動作原理については、第1の実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0121】
<5.3 変形例1>
第4の実施形態においても、第1の実施形態の変形例1を適用することができる。
【0122】
<5.4 変形例2>
次に、
図33を参照して、本実施形態の変形例2を説明する。
図33は、本変形例2に係る磁気抵抗素子3iの構成例及び動作原理を説明するための説明図である。上述の本実施形態においては、MTJ素子200の磁化固定層202の磁化方向を上向きとしていた。一方、本変形例2においては、MTJ素子200の磁化固定層202の磁化方向を下向きとする。このような構成であっても、本実施形態と同様に動作させることができる。なお、本変形例2についても、上述の変形例1を適用することができる。
【0123】
次に、
図33に、抵抗状態と磁化方向との関係を示す。詳細には、本変形例2においては、上層の抵抗値R
1、MTJ素子200の、高抵抗状態の抵抗値R
2(H)、低抵抗状態の抵抗値R
2(L)は、例えば、R
2(H)>R
1>R
2(L)の大小関係を持つ。
【0124】
上述のような場合、記憶層106、206の磁化方向が異なる場合(↑↓)には、MTJ素子200は低抵抗状態となる。また、記憶層106、206の磁化方向が異なる場合(↓↑)には、MTJ素子200は高抵抗状態となる。また、記憶層106、206の磁化方向が異なる場合(↑↓)には、磁気抵抗素子3iに全体は低抵抗状態に、記憶層106、206の磁化方向が異なる場合(↓↑)には、磁気抵抗素子3iに全体は高抵抗状態になる。
【0125】
また、上述のような場合、記憶層106、206の磁化方向が異なる場合(↑↓)には、上層の抵抗値が大きいことから、磁気抵抗素子3iへの電圧印加時には、上層の分圧が大きくなる。一方、記憶層106、206の磁化方向が異なる場合(↓↑)には、MTJ素子200の抵抗値が大きいことから、磁気抵抗素子3iへの電圧印加時には、MTJ素子200の分圧が大きくなる。なお、本変形例においては、抵抗値の大小関係は、上述と逆でも良く、その場合には、書き込み時の電圧方向も逆となる。
【0126】
<5.5 変形例3>
次に、
図34及び
図35を参照して、本実施形態の変形例3を説明する。
図34は、本変形例3に係る磁気抵抗素子3jの構成例を示す模式図であり、
図35は、本変形例3に係る磁気抵抗素子3jの構成例及び動作原理を説明するための説明図である。上述の本実施形態においては、磁気抵抗素子3hは、上方のMTJ素子100から磁化固定層102を削除した構成となっていたが、本変形例3においては、
図34に示すように、下方のMTJ素子200から磁化固定層202を削除した構成となっている。なお、本変形例3においては、MTJ素子100の磁化固定層102の磁化方向を下向きとする。このような構成であっても、本実施形態と同様に動作させることができる。なお、本変形例3についても、上述の変形例1を適用することができる。
【0127】
次に、
図35に、抵抗状態と磁化方向との関係を示す。詳細には、本変形例3においては、MTJ素子100の、高抵抗状態の抵抗値R
1(H)、低抵抗状態の抵抗値R
1(L)、下層の抵抗値R
2は、例えば、R
1(H)>R
2>R
1(L)の大小関係を持つ。
【0128】
上述のような場合、記憶層106、206の磁化方向が異なる場合(↓↑)には、MTJ素子100は低抵抗状態となる。また、記憶層106、206の磁化方向が異なる場合(↑↓)には、MTJ素子100は高抵抗状態となる。また、磁気抵抗素子3jの全体の抵抗値については、記憶層106、206の磁化方向が異なる場合(↓↑)には、低抵抗状態に、記憶層106、206の磁化方向が異なる場合(↑↓)には、高抵抗状態になる。
【0129】
また、上述のような場合、記憶層106、206の磁化方向が異なる場合(↓↑)には、MTJ素子100と比べて下層の抵抗値が大きいことから、磁気抵抗素子3jへの電圧印加時には、下層の分圧が大きくなる。一方、記憶層106、206の磁化方向が異なる場合(↑↓)には、下層と比べてMTJ素子100の抵抗値が大きいことから、磁気抵抗素子3jへの電圧印加時には、MTJ素子100の分圧が大きくなる。なお、本変形例においては、抵抗値の大小関係は、上述と逆でも良く、その場合には、書き込み時の電圧方向も逆となる。
【0130】
<5.6 変形例4>
次に、
図36を参照して、本実施形態の変形例4を説明する。
図36は、本変形例4に係る磁気抵抗素子3kの構成例及び動作原理を説明するための説明図である。上述の変形例3においては、MTJ素子100の磁化固定層102の磁化方向を下向きとしていた。一方、本変形例4においては、MTJ素子100の磁化固定層102の磁化方向を上向きとする。このような構成であっても、本実施形態と同様に動作させることができる。なお、本変形例4についても、上述の変形例1を適用することができる。
【0131】
次に、
図36に、抵抗状態と磁化方向との関係を示す。詳細には、本変形例4においては、MTJ素子100の、高抵抗状態の抵抗値R
1(H)、低抵抗状態の抵抗値R
1(L)、下層の抵抗値R
2は、例えば、R
1(H)>R
2>R
1(L)の大小関係を持つ。
【0132】
上述のような場合、記憶層106、206の磁化方向が異なる場合(↑↓)には、MTJ素子100は低抵抗状態となる。また、記憶層106、206の磁化方向が異なる場合(↓↑)には、MTJ素子100は高抵抗状態となる。また、磁気抵抗素子3kの全体の抵抗値については、記憶層106、206の磁化方向が異なる場合(↑↓)には、低抵抗状態に、記憶層106、206の磁化方向が異なる場合(↓↑)には、高抵抗状態になる。
【0133】
また、上述のような場合、記憶層106、206の磁化方向が異なる場合(↑↓)には、下層の抵抗値が大きいことから、磁気抵抗素子3kへの電圧印加時には、下層の分圧が大きくなる。一方、記憶層106、206の磁化方向が異なる場合(↓↑)には、MTJ素子100の抵抗値が大きいことから、磁気抵抗素子3kへの電圧印加時には、MTJ素子100の分圧が大きくなる。なお、本変形例においては、抵抗値の大小関係は、上述と逆でも良く、その場合には、書き込み時の電圧方向も逆となる。
【0134】
<<6. 第5の実施形態>>
<6.1 磁気抵抗素子の構成例>
次に、
図37を参照して、本開示の第5の実施形態を説明する。
図37は、本実施形態に係る磁気抵抗素子3mの構成例を示す模式図である。以下においては、第1から第4の実施形態と共通する点については、説明を省略し、第1から第4の実施形態と異なる点について説明する。
【0135】
本実施形態においては、
図37に示すように、磁気抵抗素子3mは、2つのMTJ素子100、200を有するものの、その間には、磁気結合層300や反強磁性結合層302が設けられていない。さらに、本実施形態においては、2つのMTJ素子100、200は、1つの記憶層106を共有する。なお、本実施形態においては、MTJ素子100の磁化固定層102の磁化方向を下向き、MTJ素子200の磁化固定層202の磁化方向を上向きとする。
【0136】
<6.2 動作原理>
次に、
図38から
図40を参照して、本実施形態に係る磁気抵抗素子3mの動作原理を説明する。
図38から
図40は、本実施形態に係る磁気抵抗素子3mの動作原理を説明するための説明図である。なお、以下の図においては、「上側界面」は、上層のトンネルバリア層104と記憶層106との界面を意味し、「下側界面」は、下層のトンネルバリア層204と記憶層106との界面を意味する。
【0137】
図38に示すように、本実施形態に係る磁気抵抗素子3mにおいては、正電圧を印加することにより、VCMA効果により、上層のトンネルバリア層104と記憶層106との界面は、垂直磁気異方性が大きくなり、下層のトンネルバリア層204と記憶層106との界面は、垂直磁気異方性が小さくなる。さらに、本実施形態に係る磁気抵抗素子3mにおいては、負電圧を印加することにより、VCMA効果により、上層のトンネルバリア層104と記憶層106との界面は、垂直磁気異方性が小さくなり、下層のトンネルバリア層204と記憶層106との界面は、垂直磁気異方性が大きくなる。
【0138】
次に、
図39に、MTJ素子100、200の抵抗状態と磁化方向との関係を示す。本実施形態においては、MTJ素子100、200は異なる抵抗値を持つ。詳細には、本実施形態においては、MTJ素子100の、高抵抗状態の抵抗値R
1(H)、低抵抗状態の抵抗値R
1(L)、MTJ素子200の、高抵抗状態の抵抗値R
2(H)、低抵抗状態の抵抗値R
2(L)は、例えば、R
2(H)>R
1(H)>R
1(L)>R
2(L)の大小関係を持つ。なお、本実施形態においては、MTJ素子100、200のそれぞれの低抵抗状態の抵抗値は、ほぼ等しい、もしくは、R
1(L)<R
2(L)の大小関係をもっていてもよい。
【0139】
上述のような場合、記憶層106の磁化方向が上向きの場合(↑)には、MTJ素子100は高抵抗状態、MTJ素子200は低抵抗状態となる。また、記憶層106の磁化方向が下向きの場合(↓)には、MTJ素子100は低抵抗状態、MTJ素子200は高抵抗状態となる。また、磁気抵抗素子3mの全体の抵抗値は、MTJ素子100、200の抵抗値の合算となることから、記憶層106の磁化方向が上向きの場合(↑)には、磁気抵抗素子3mは低抵抗状態に、記憶層106の磁化方向が下向きの場合(↓)には、磁気抵抗素子3mは高抵抗状態になる。
【0140】
また、上述のような場合、記憶層106の磁化方向が上向きの場合(↑)には、MTJ素子100の抵抗値が大きいことから、磁気抵抗素子3mへの電圧印加時には、MTJ素子100の分圧が大きくなる。一方、記憶層106の磁化方向が下向きの場合(↓)には、MTJ素子200の抵抗値が大きいことから、磁気抵抗素子3mへの電圧印加時には、MTJ素子200の分圧が大きくなる。なお、本実施形態においては、MTJ素子100、200の抵抗値の大小関係は、上述と逆でも良く、その場合には、書き込み時の電圧方向も逆となる。
【0141】
次に、
図40に、上層のトンネルバリア層104と記憶層106との界面及び下層のトンネルバリア層204と記憶層106との界面の磁気異方性と、磁化エネルギーとの模式図を示す。なお、本実施形態においては、動作原理については、第1の実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0142】
<6.3 変形例1>
第5の実施形態においても、第1の実施形態の変形例1を適用することができる。
【0143】
<6.4 変形例2>
次に、
図41を参照して、本実施形態の変形例2を説明する。
図41は、本変形例2に係る磁気抵抗素子3nの構成例及び動作原理を説明するための説明図である。上述の本実施形態においては、MTJ素子100の磁化固定層102の磁化方向を下向き、MTJ素子200の磁化固定層202の磁化方向を上向きとしていた。一方、本変形例2においては、MTJ素子100の磁化固定層102の磁化方向を上向き、MTJ素子200の磁化固定層202の磁化方向を下向きとする。このような構成であっても、本実施形態と同様に動作させることができる。なお、本変形例2についても、上述の変形例1を適用することができる。
【0144】
次に、
図41に、MTJ素子100、200の抵抗状態と磁化方向との関係を示す。本変形例2においても、MTJ素子100、200は異なる抵抗値を持つ。詳細には、本実施形態においては、MTJ素子100の、高抵抗状態の抵抗値R
1(H)、低抵抗状態の抵抗値R
1(L)、MTJ素子200の、高抵抗状態の抵抗値R
2(H)、低抵抗状態の抵抗値R
2(L)は、例えば、R
2(H)>R
1(H)>R
1(L)>R
2(L)の大小関係を持つ。なお、本実施形態においては、MTJ素子100、200のそれぞれの低抵抗状態の抵抗値は、ほぼ等しい、もしくは、R
1(L)<R
2(L)の大小関係であってもよい。
【0145】
上述のような場合、MTJ素子100の記憶層106の磁化方向が下向きの場合(↓)には、MTJ素子100は高抵抗状態、MTJ素子200は低抵抗状態となる。また、記憶層106の磁化方向が上向きの場合(↑)には、MTJ素子100は低抵抗状態、MTJ素子200は高抵抗状態となる。また、磁気抵抗素子3nの全体の抵抗値については、記憶層106の磁化方向が下向きの場合(↓)には、低抵抗状態に、記憶層106の磁化方向が上向きの場合(↑)には、高抵抗状態になる。
【0146】
また、上述のような場合、記憶層106の磁化方向が下向きの場合(↓)には、MTJ素子100の抵抗値が大きいことから、磁気抵抗素子3nへの電圧印加時には、MTJ素子100の分圧が大きくなる。一方、記憶層106の磁化方向が上向きの場合(↑)には、MTJ素子200の抵抗値が大きいことから、磁気抵抗素子3nへの電圧印加時には、MTJ素子200の分圧が大きくなる。なお、本実施形態においては、MTJ素子100、200の抵抗値の大小関係は、上述と逆でも良く、その場合には、書き込み時の電圧方向も逆となる。
【0147】
<<7. 第6の実施形態>>
<7.1 磁気抵抗素子の構成例>
次に、
図42を参照して、本開示の第6の実施形態を説明する。
図42は、本実施形態に係る磁気抵抗素子3pの構成例を示す模式図である。以下においては、第1から第5の実施形態と共通する点については、説明を省略し、第1から第5の実施形態と異なる点について説明する。
【0148】
上述の第5の実施形態においては、磁気抵抗素子3mは、2つのMTJ素子100、200を有するものの、1つの記憶層106を共有していた。本実施形態においては、第5の実施形態の上方のMTJ素子100から磁化固定層102を削除した構成を有する。詳細には、本実施形態に係る磁気抵抗素子3pは、MTJ素子200を有する。さらに、磁気抵抗素子3pは、MTJ素子200の記憶層206と接するトンネルバリア層(他のトンネルバリア層)104からなる抵抗素子を有する。なお、本実施形態においては、MTJ素子200の磁化固定層202の磁化方向を上向きとする。
【0149】
<7.2 動作原理>
次に、
図43から
図45を参照して、本実施形態に係る磁気抵抗素子3pの動作原理を説明する。
図43から
図45は、本実施形態に係る磁気抵抗素子3pの動作原理を説明するための説明図である。なお、以下の図においては、「上側界面」は、上層のトンネルバリア層104と記憶層206との界面を意味し、「下側界面」は、下層のトンネルバリア層204と記憶層206との界面を意味する。
【0150】
図43に示すように、本実施形態に係る磁気抵抗素子3pにおいては、正電圧を印加することにより、VCMA効果により、上層のトンネルバリア層104と記憶層206との界面は、垂直磁気異方性が大きくなり、下層のトンネルバリア層204と記憶層206との界面は、垂直磁気異方性が小さくなる。さらに、本実施形態に係る磁気抵抗素子3pにおいては、負電圧を印加することにより、VCMA効果により、上層のトンネルバリア層104と記憶層206との界面は、垂直磁気異方性が小さくなり、下層のトンネルバリア層204と記憶層206との界面は、垂直磁気異方性が大きくなる。
【0151】
次に、
図44に、抵抗状態と磁化方向との関係を示す。詳細には、本実施形態においては、上層の抵抗値R
1、MTJ素子200の、高抵抗状態の抵抗値R
2(H)、低抵抗状態の抵抗値R
2(L)は、例えば、R
2(H)>R
1>R
2(L)の大小関係を持つ。
【0152】
上述のような場合、記憶層206の磁化方向が上向きの場合(↑)には、MTJ素子200は低抵抗状態となる。また、記憶層206の磁化方向が下向きの場合(↓)には、MTJ素子200は高抵抗状態となる。また、磁気抵抗素子3pの全体の抵抗値については、記憶層206の磁化方向が上向きの場合(↑)には、低抵抗状態に、記憶層206の磁化方向が下向きの場合(↓)には、高抵抗状態になる。
【0153】
また、上述のような場合、記憶層206の磁化方向が上向きの場合(↑)には、上層の抵抗値が大きいことから、磁気抵抗素子3pへの電圧印加時には、上層の分圧が大きくなる。一方、記憶層206の磁化方向が下向き場合(↓)には、MTJ素子200の抵抗値が大きいことから、磁気抵抗素子3pへの電圧印加時には、MTJ素子200の分圧が大きくなる。なお、本実施形態においては、抵抗値の大小関係は、上述と逆でも良く、その場合には、書き込み時の電圧方向も逆となる。
【0154】
次に、
図45に、上層のトンネルバリア層104と記憶層206との界面及び下層のトンネルバリア層204と記憶層206との界面の磁気異方性と、磁化エネルギーとの模式図を示す。なお、本実施形態においては動作原理については、第1の実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0155】
<7.3 変形例1>
第6の実施形態においても、第1の実施形態の変形例1を適用することができる。
【0156】
<7.4 変形例2>
次に、
図46を参照して、本実施形態の変形例2を説明する。
図46は、本変形例2に係る磁気抵抗素子3qの構成例及び動作原理を説明するための説明図である。上述の本実施形態においては、MTJ素子200の磁化固定層202の磁化方向を上向きとしていた。一方、本変形例2においては、MTJ素子200の磁化固定層202の磁化方向を下向きとする。このような構成であっても、本実施形態と同様に動作させることができる。なお、本変形例2についても、上述の変形例1を適用することができる。
【0157】
次に、
図46に、抵抗状態と磁化方向との関係を示す。詳細には、本変形例2においては、上層の抵抗値R
1、MTJ素子200の、高抵抗状態の抵抗値R
2(H)、低抵抗状態の抵抗値R
2(L)は、例えば、R
2(H)>R
1>R
2(L)の大小関係を持つ。
【0158】
上述のような場合、記憶層206の磁化方向が下向きの場合(↓)には、MTJ素子200は低抵抗状態となる。また、記憶層206の磁化方向が上向きの場合(↑)には、MTJ素子200は高抵抗状態となる。また、磁気抵抗素子3qの全体の抵抗値については、記憶層206の磁化方向が下向きの場合(↓)には、低抵抗状態に、記憶層206の磁化方向が上向きの場合(↑)には、高抵抗状態になる。
【0159】
また、上述のような場合、記憶層206の磁化方向が下向きの場合(↓)には、上層の抵抗値が大きいことから、磁気抵抗素子3qへの電圧印加時には、上層の分圧が大きくなる。一方、記憶層206の磁化方向が上向き場合(↑)には、MTJ素子200の抵抗値が大きいことから、磁気抵抗素子3qへの電圧印加時には、MTJ素子200の分圧が大きくなる。なお、本実施形態においては、抵抗値の大小関係は、上述と逆でも良く、その場合には、書き込み時の電圧方向も逆となる。
【0160】
<7.5 変形例3>
次に、
図47及び
図48を参照して、本実施形態の変形例3を説明する。
図47は、本変形例3に係る磁気抵抗素子3rの構成例を示す模式図であり、
図48は、本変形例3に係る磁気抵抗素子3rの構成例及び動作原理を説明するための説明図である。上述の本実施形態においては、磁気抵抗素子3pは、上方のMTJ素子100から磁化固定層102を削除した構成となっていたが、本変形例3においては、
図47に示すように、下方のMTJ素子200から磁化固定層202を削除した構成となっている。本変形例3においては、MTJ素子100の磁化固定層102の磁化方向を下向きとする。このような構成であっても、本実施形態と同様に動作させることができる。なお、本変形例3についても、上述の変形例1を適用することができる。
【0161】
次に、
図48に、抵抗状態と磁化方向との関係を示す。詳細には、本変形例3においては、下層の抵抗値R
2、MTJ素子100の、高抵抗状態の抵抗値R
1(H)、低抵抗状態の抵抗値R
1(L)は、例えば、R
1(H)>R
2>R
1(L)の大小関係を持つ。
【0162】
上述のような場合、記憶層106の磁化方向が下向きの場合(↓)には、MTJ素子100は低抵抗状態となる。また、記憶層106の磁化方向が上向きの場合(↑)には、MTJ素子100は高抵抗状態となる。また、磁気抵抗素子3rの全体の抵抗値については、記憶層106の磁化方向が下向きの場合(↓)には、低抵抗状態に、記憶層106の磁化方向が上向きの場合(↑)には、高抵抗状態になる。
【0163】
また、上述のような場合、記憶層106の磁化方向が下向きの場合(↓)には、下層の抵抗値が大きいことから、磁気抵抗素子3rへの電圧印加時には、下層の分圧が大きくなる。一方、記憶層106の磁化方向が上向き場合(↑)には、MTJ素子100の抵抗値が大きいことから、磁気抵抗素子3rへの電圧印加時には、MTJ素子100の分圧が大きくなる。なお、本実施形態においては、抵抗値の大小関係は、上述と逆でも良く、その場合には、書き込み時の電圧方向も逆となる。
【0164】
<7.6 変形例4>
次に、
図49を参照して、本実施形態の変形例4を説明する。
図49は、本変形例4に係る磁気抵抗素子3sの構成例及び動作原理を説明するための説明図である。上述の変形例3においては、MTJ素子100の磁化固定層102の磁化方向を下向きとしていた。一方、本変形例4においては、MTJ素子100の磁化固定層102の磁化方向を上向きとする。このような構成であっても、本実施形態と同様に動作させることができる。なお、本変形例4についても、上述の変形例1を適用することができる。
【0165】
次に、
図49に、抵抗状態と磁化方向との関係を示す。詳細には、本変形例4においては、下層の抵抗値R
2、MTJ素子100の、高抵抗状態の抵抗値R
1(H)、低抵抗状態の抵抗値R
1(L)は、例えば、R
1(H)>R
2>R
1(L)の大小関係を持つ。
【0166】
上述のような場合、記憶層106の磁化方向が上向きの場合(↑)には、MTJ素子100は低抵抗状態となる。また、記憶層106の磁化方向が下向きの場合(↓)には、MTJ素子100は高抵抗状態となる。また、磁気抵抗素子3sの全体の抵抗値については、記憶層106の磁化方向が上向きの場合(↑)には、低抵抗状態に、記憶層106の磁化方向が下向きの場合(↓)には、高抵抗状態になる。
【0167】
また、上述のような場合、記憶層106の磁化方向が上向きの場合(↑)には、下層の抵抗値が大きいことから、磁気抵抗素子3sへの電圧印加時には、下層の分圧が大きくなる。一方、記憶層106の磁化方向が下向き場合(↓)には、MTJ素子100の抵抗値が大きいことから、磁気抵抗素子3sへの電圧印加時には、MTJ素子100の分圧が大きくなる。なお、本実施形態においては、抵抗値の大小関係は、上述と逆でも良く、その場合には、書き込み時の電圧方向も逆となる。
【0168】
<<8. 第7の実施形態>>
<8.1 実施形態>
上述した本開示の第1から第6の実施形態及び変形例に係る磁気抵抗素子3は、クロスポイント構造を持つクロスポイントメモリ(クロスポイント型メモリアレイ)に適用することができる。クロスポイント構造とは、複数のワード線と複数のビット線が交差した領域のそれぞれにメモリセル(磁気抵抗素子3)を配置する構造のことである。
【0169】
そこで、
図50から
図53を参照して、本開示の第7の実施形態として、第1から第6の実施形態及び変形例を適用したクロスポイントメモリの実施形態を説明する。
図50は、本実施形態に係るメモリセルアレイ550aの回路図であり、
図51は、本実施形態に係るメモリ装置500aの構成例を示すブロック図である。また、
図52は、本実施形態における低抵抗状態への書き込みパルス制御を説明するための説明図であり、
図53は、本実施形態における高抵抗状態への書き込みパルス制御を説明するための説明図である。
【0170】
図50に示すように、本実施形態のメモリセルアレイ550aにおいては、複数の磁気抵抗素子3及び選択素子5は、行方向及び列方向に沿って配列される。詳細には、本実施形態のメモリセルアレイ550aにおいては、Word Line(WL)とBit Line(BL)の交差する箇所に、第1から第6の実施形態及び変形例に係る磁気抵抗素子3と選択素子5とが配置される。より具体的には、同一列の磁気抵抗素子3の一端は、共通のBit Line(BL)(第1の制御線)に電気的に接続され、同一行の磁気抵抗素子3の他端を共通のWord Line(WL)(第2の制御線)に電気的に接続される。また、選択素子については、磁気抵抗素子3のいずれか一方の端子と直列に接続される。さらに、本実施形態のメモリセルアレイ550aは、メモリセルと印加電圧とを選択するスイッチ552を有する。
図50においては、磁気抵抗素子3の反転が生じる電圧をV_writeとし、スイッチ552は、Word Line(WL)とBit Line(BL)とを3通りの電位(V_write/2、GND、-V_write/2)のいずれかに設定する。
【0171】
図51に、本実施形態に係るメモリ装置500aの構成例を示す。
図51においては、電源、電圧生成等、書き込み/読み出し処理に直接影響しない機能部の図示を省略している。選択スイッチ552は、
図51のBLバイアス回路(BL biasing circuit)560、WLバイアス回路(WL biasing circuit)562に配置される。読み出し回路(read circuit)564は、メモリセルから読み出しを行うことができる。また、制御パルスは、パルス生成部(Pulse Generator)566で生成する。制御パルスの生成タイミング等といった書き込み制御は、制御回路(Control circuit)568で行う。本実施形態に係るメモリ装置500aにおいては、メモリセルアレイ550aを複数搭載し、アクセスするビット数と同数のメモリセルアレイ550aが同時に動作することができる。入出力部(I/F)570は、書き込み/読み出しなどのコマンドアドレスを受信し、アドレスデコーダ(CMD/Address Decoder)572は、コマンドアドレスを解釈して内部信号へ変換し、書き込みであれば書き込みデータと共に各メモリセルアレイ550aの制御回路568へ信号を伝送する。なお、本実施形態においては、読み出しについては、既存の方法を用いることができる。
【0172】
図52に、本実施形態における低抵抗状態への書き込みパルス制御を示す。本実施形態においては、
図52に示すように、書き込みターゲットになるメモリセル接続されたWLとBLとを選択し、選択したWLに-V_Write/2、BLにV_Write/2を印加する。その他のWL及びBLは0[V](GND)のままとする。従って、選択したターゲットのメモリセルにのみに、電圧V_Writeが印加されることとなる。なお、ターゲットのメモリセルの同一列または同一行の他のメモリセルにおいては、電圧V_Write/2が印加されることから、磁化方向の反転は起きない。
【0173】
図53に、本実施形態における高抵抗状態への書き込みパルス制御を示す。本実施形態においては、
図53に示すように、書き込みターゲットになるメモリセル接続されたWLとBLとを選択し、選択したWLにV_Write/2、BLに-V_Write/2を印加する。その他のWL及びBLは0[V](GND)のままとする。従って、選択したターゲットのメモリセルにのみに、電圧V_Writeが印加されることとなる。なお、ターゲットのメモリセルの同一列または同一行の他のメモリセルにおいては、電圧V_Write/2が印加されることから、磁化方向の反転は起きない。
【0174】
<8.2 変形例>
次に、
図54を参照して、本実施形態の変形例を説明する。
図54は、本変形例に係るメモリセルアレイ550bの回路図である。本変形例においては、上述の本実施形態と異なり、メモリセルは選択素子5を含んでいない。本変形例においても、メモリセルの磁気抵抗素子3に書き込む際には、電圧V_Writeを印加するものとする。このような場合、メモリセルの磁気抵抗素子3に、書き込み電圧の半分、すなわち、電圧V_Write/2が印加されても、磁化方向の反転が起きず、書き込みは行われない。そこで、本変形例においては、このような特性を利用して、選択素子5を設けていなくても、ターゲットとするメモリセルのみに書き込みを行うことができる。詳細には、本変形例においては、ターゲットのメモリセルの同一列または同一行の他のメモリセルには、電圧V_Write/2が印加されるが、磁化方向の反転は起きない。従って、本変形例においても、ターゲットのメモリセルのみ、磁化方向を反転させ、書き込みを行うことができる。
【0175】
<<9. 第8の実施形態>>
<9.1 実施形態>
上述した本開示の第1から第6の実施形態及び変形例に係る磁気抵抗素子3は、信号を一時的に保持するラッチ回路を持つメモリ装置にも適用することができる。そこで、
図55から
図58を参照して、本開示の第8の実施形態として、第1から第6の実施形態及び変形例を適用した、不揮発性ラッチ回路を持つメモリ装置の実施形態を説明する。
図55は、本実施形態に係るメモリ装置500cの回路図である。
図56は、本実施形態に係るメモリ装置500cがラッチ回路として機能する際の動作を説明するための説明図である。
図57及び
図58は、本実施形態に係るメモリ装置500cのストアの際の動作を説明するための説明図である。以下の図においては、「素子A」は磁気抵抗素子Aを意味し、「素子B」は磁気抵抗素子Bを意味する。
【0176】
図55に示すように、本実施形態に係るメモリ装置500cは、ラッチ回路と2つの磁気抵抗素子3及び2つのトランジスタ5aで構成される。本実施形態においては、磁気抵抗素子3は、高抵抗状態と低抵抗状態とにデータ論理に割り当てて記録することとなる。本実施形態においては、磁気抵抗素子3は、第1から第6の実施形態及び変形例に係る磁気抵抗素子であることができる。詳細には、本実施形態においては、磁気抵抗素子3の上部の端子(
図55中の上側)に高電位な電圧が印加された時に高抵抗状態への書き込み及び高抵抗状態を維持し、磁気抵抗素子3の上部の端子に低電位な電圧が印加された時に低抵抗状態への書き込み及び低抵抗状態を維持することができる。
【0177】
図56に示すように、本実施形態に係るメモリ装置500cをラッチ回路として機能させる際には、2つのトランジスタはオフ(Vg=0)して、
図56に示すようにデータを入力出する。なお、一例として電圧1[V]で動作する場合を示したが、本実施形態においては、これに限定されるものではない。例えば、ラッチした論理が「1」である場合には、VA=1[V]、VB=0[V]の状態にある。一方、ラッチした論理が「0」である場合、VA=0[V]、VB=1[V]の状態にある。
【0178】
また、本実施形態においては、メモリ装置500cは、例えば、電圧遮断前にラッチしたデータを磁気抵抗素子3にストアすることができる。磁気抵抗素子3(磁気抵抗素子A、磁気抵抗素子Bの総称)への書き込みは2ステップで行うことができる。
【0179】
図57に示す第1ステップにおいては、トランジスタのゲート電圧VgをVg(ON)にし、磁気抵抗素子3の下端電圧VxをVx(High)に設定して低抵抗状態への書き込みを行う。例えば、Vx(High)は1[V]とする。例えば、ラッチした論理が「1」であればVB=0[V]であり、磁気抵抗素子Bは-1[V]、磁気抵抗素子Aは0[V]の電圧がかかる。磁気抵抗素子Aには電圧がかからないため反転は起きず、磁気抵抗素子Bのみが低抵抗状態への反転が起こる。もしくは、磁気抵抗素子Bが低抵抗状態にあれば状態が維持される。また、例えば、ラッチした論理が「0」であればVA=0[V]であり、磁気抵抗素子Aは-1[V]、磁気抵抗素子Bは0[V]の電圧がかかる。磁気抵抗素子Bには電圧がかからないため反転は起きず、磁気抵抗素子Aのみ低抵抗状態への反転が起こる。もしくは、磁気抵抗素子Aが低抵抗状態にあれば状態が維持される。
【0180】
図58に示す第2ステップにおいては、ゲート電圧VgをVg(ON)に、磁気抵抗素子3の下端電圧VxをGNDに設定して高抵抗状態への書き込みを行う。ラッチした論理が「1」であればVA=1[V]であり、磁気抵抗素子Aは1[V]、磁気抵抗素子Bは0[V]の電圧がかかる。磁気抵抗素子Bは電圧がかからないため反転は起きず、第1ステップの状態が保持され、磁気抵抗素子Aのみ高抵抗状態への反転が起こる。もしくは、磁気抵抗素子Aが高抵抗状態にあれば状態が維持される。ラッチした論理が「0」であればVB=1[V]であり、磁気抵抗素子Bは1[V]、磁気抵抗素子Aは0[V]の電圧がかかる。磁気抵抗素子Aは電圧がかからないため反転は起きず、第1ステップの状態が保持され、磁気抵抗素子Bのみ高抵抗状態への反転が起こる。もしくは、磁気抵抗素子Bが高抵抗状態にあれば状態が維持される。
【0181】
<9.2 変形例1>
次に、
図59から
図62を参照して、本実施形態の変形例1を説明する。
図59は、本変形例1に係るメモリ装置500dの回路図である。
図60は、本変形例1に係るメモリ装置500dがラッチ回路として機能する際の動作を説明するための説明図である。
図61及び
図62は、本変形例1に係るメモリ装置500dのストアの際の動作を説明するための説明図である。本変形例1においては、
図59に示すように、メモリ装置500dは、上述した本実施形態と異なりトランジスタ5aを有していない。
【0182】
本変形例においては、
図60に示すように、メモリ装置500dをラッチ回路として機能させる際には、磁気抵抗素子3の下端電圧Vx=0.5[V](Mid)とし、
図60に示すようにデータを入力出する。なお、一例として電圧1[V]で動作する場合を示したが、本実施形態においては、これに限定されるものではない。例えば、ラッチした論理が「1」である場合には、VA=1[V]、VB=0[V]の状態にある。一方、ラッチした論理が「0」である場合、VA=0[V]、VB=1[V]の状態にある。なお、磁気抵抗素子3の書き込み電圧が±1[V]と設定されている場合には、磁気抵抗素子3には±0.5[V]が印加されても反転は起きない。
【0183】
図61に示す第1ステップにおいては、磁気抵抗素子3の下端電圧VxをVx(High)に設定して低抵抗状態への書き込みを行う。例えば、Vx(High)は1[V]とする。例えば、ラッチした論理が「1」であればVB=0[V]であり、磁気抵抗素子Bは-1[V]、磁気抵抗素子Aは0[V]の電圧がかかる。磁気抵抗素子Aには電圧がかからないため反転は起きず、磁気抵抗素子Bのみが低抵抗状態への反転が起こる。もしくは、磁気抵抗素子Bが低抵抗状態にあれば状態が維持される。また、例えば、ラッチした論理が「0」であればVA=0[V]であり、磁気抵抗素子Aは-1[V]、磁気抵抗素子Bは0[V]の電圧がかかる。磁気抵抗素子Bには電圧がかからないため反転は起きず、磁気抵抗素子Aのみ低抵抗状態への反転が起こる。もしくは、磁気抵抗素子Aが低抵抗状態にあれば状態が維持される。
【0184】
図62に示す第2ステップにおいては、磁気抵抗素子3の下端電圧VxをGNDに設定して高抵抗状態への書き込みを行う。ラッチした論理が「1」であればVA=1[V]であり、磁気抵抗素子Aは1[V]、磁気抵抗素子Bは0[V]の電圧がかかる。磁気抵抗素子Bは電圧がかからないため反転は起きず、第1ステップの状態が保持され、磁気抵抗素子Aのみ高抵抗状態への反転が起こる。もしくは、磁気抵抗素子Aが高抵抗状態にあれば状態が維持される。ラッチした論理が「0」であればVB=1[V]であり、磁気抵抗素子Bは1[V]、磁気抵抗素子Aは0[V]の電圧がかかる。磁気抵抗素子Aは電圧がかからないため反転は起きず、第1ステップの状態が保持され、磁気抵抗素子Bのみ高抵抗状態への反転が起こる。もしくは、磁気抵抗素子Bが高抵抗状態にあれば状態が維持される。
【0185】
<9.3 変形例2>
次に、
図63から
図66を参照して、本実施形態の変形例2を説明する。
図63は、本変形例2に係るメモリ装置500eの回路図である。
図64は、本変形例2に係るメモリ装置500eがラッチ回路として機能する際の動作を説明するための説明図である。
図65及び
図66は、本変形例2に係るメモリ装置500eのストアの際の動作を説明するための説明図である。本変形例2においては、
図63に示すように、メモリ装置500eは、ラッチ回路として動作する際には、磁気抵抗素子3の下端をフローティングとする。
【0186】
詳細には、本変形例においては、
図64に示すように、メモリ装置500eをラッチ回路として機能させる際には、磁気抵抗素子3の下端電圧Vxをフローティングとし、
図64に示すようにデータを入力出する。なお、一例として電圧1[V]で動作する場合を示したが、本実施形態においては、これに限定されるものではない。例えば、ラッチした論理が「1」である場合には、VA=1[V]、VB=0[V]の状態にある。一方、ラッチした論理が「0」である場合、VA=0[V]、VB=1[V]の状態にある。なお、磁気抵抗素子3の高抵抗状態と低抵抗状態との抵抗比を2倍とすると、2つの磁気抵抗素子3の間の電圧の2/3が高抵抗状態の磁気抵抗素子3に、2つの磁気抵抗素子3の間の電圧の1/3が低抵抗状態の磁気抵抗素子3に印加される。磁気抵抗素子3の書き込み電圧が±1[V]と設定されている場合には、2/3[V]を印加しても、磁気抵抗素子3の反転確率は低い。
【0187】
図65に示す第1ステップにおいては、磁気抵抗素子3の下端電圧VxをVx(High)に設定して低抵抗状態への書き込みを行う。例えば、Vx(High)は1[V]とする。例えば、ラッチした論理が「1」であればVB=0[V]であり、磁気抵抗素子Bは-1[V]、磁気抵抗素子Aは0[V]の電圧がかかる。磁気抵抗素子Aには電圧がかからないため反転は起きず、磁気抵抗素子Bのみが低抵抗状態への反転が起こる。もしきは、磁気抵抗素子Bが低抵抗状態にあれば状態が維持される。また、例えば、ラッチした論理が「0」であればVA=0[V]であり、磁気抵抗素子Aは-1[V]、磁気抵抗素子Bは0[V]の電圧がかかる。磁気抵抗素子Bには電圧がかからないため反転は起きず、磁気抵抗素子Aのみ低抵抗状態への反転が起こる。もしくは、磁気抵抗素子Aが低抵抗状態にあれば状態が維持される。
【0188】
図66に示す第2ステップにおいては、磁気抵抗素子3の下端電圧VxをGNDに設定して高抵抗状態への書き込みを行う。ラッチした論理が「1」であればVA=1[V]であり、磁気抵抗素子Aは1[V]、磁気抵抗素子Bは0[V]の電圧がかかる。磁気抵抗素子Bは電圧がかからないため反転は起きず、第1ステップの状態が保持され、磁気抵抗素子Aのみ高抵抗状態への反転が起こる。もしくは、磁気抵抗素子Aが高抵抗状態にあれば状態が維持される。ラッチした論理が「0」であればVB=1[V]であり、磁気抵抗素子Bは1[V]、磁気抵抗素子Aは0[V]の電圧がかかる。磁気抵抗素子Aは電圧がかからないため反転は起きず、第1ステップの状態が保持され、磁気抵抗素子Bのみ高抵抗状態への反転が起こる。もしくは、磁気抵抗素子Bが高抵抗状態にあれば状態が維持される。
【0189】
<<10. 第9の実施形態>>
<10.1 実施形態>
上述した第8の実施形態においては、第1から第6の実施形態及び変形例に係る磁気抵抗素子3を、信号を一時的に保持するラッチ回路を持つメモリ装置500cに適用していた。本実施形態においては、ラッチ回路の代わりに、信号を一時的に保持するフリップフロップ回路持つメモリ装置500fに適用する。以下、
図67を参照して、このような本開示の第9の実施形態を説明する。
図67は、本実施形態に係るメモリ装置500fの回路図である。
【0190】
本実施形態においては、
図67に示すように、一般的なフリップフロップのスレーブラッチ回路に、第1から第6の実施形態及び変形例に係る磁気抵抗素子3を適用する。ここでは、N1とN2ノードの電圧は、第8の実施形態のVA、VBに相当し、SRノードの電圧は、第8の実施形態のVg、CTRLノードの電圧は、第8の実施形態のVxに相当する。動作については、一般的なフリップフロップ回路の動作と同じであり、電源遮断前に、N1とN2ノードの状態を磁気抵抗素子3にストアし、電源復帰後にリストアする。すなわち、動作については、上述の第8の実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0191】
<10.2 変形例1>
第9の実施形態においても、第8の実施形態の変形例1を適用することができる。
【0192】
<10.3 変形例2>
第9の実施形態においても、第8の実施形態の変形例2を適用することができる。
【0193】
<10.4 変形例3>
次に、
図68を参照して、本実施形態の変形例2を説明する。
図68は、本変形例3に係るメモリ装置500gの回路図である。本変形例3においては、
図68に示すように、複数のフリップフロップ回路を含み、同時にそれらを制御してもよい。また、本変形例3についても、上述の変形例1及び変形例2を適用することができる。
【0194】
<<11. 第10の実施形態>>
<11.1 実施形態>
上述した第8の実施形態のラッチ回路を持つメモリ装置500cを不揮発性SRAM(Static Random Access Memory)に適用することができる。以下、
図69を参照して、このような本開示の第10の実施形態を説明する。
図69は、本実施形態に係るメモリ装置500hの回路図である。
図69には、一般的なSRAMのブロック図が示されており、SRAMのラッチ回路のそれぞれに上述の第8の実施形態を適用する。動作については、一般的なSRAMの動作と同じであり、電源遮断前に、磁気抵抗素子3にストアし、電源復帰後にリストアする。すなわち、動作については、上述の第8の実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0195】
<11.2 変形例1>
次に、
図70を参照して、本実施形態の変形例1を説明する。
図70は、本変形例1に係るメモリ装置500iの回路図である。本変形例1においては、
図70に示すように、第8の実施形態の変形例1を適用することができる。
【0196】
<11.3 変形例2>
次に、
図71を参照して、本実施形態の変形例2を説明する。
図71は、本変形例2に係るメモリ装置500jの回路図である。本変形例2においては、
図71に示すように、第8の実施形態の変形例2を適用することができる。
【0197】
<<12. 第11の実施形態>>
上述した本開示の第1から第6の実施形態及び変形例に係る磁気抵抗素子3は、自己適応型の書き込み動作を実現するメモリ装置にも適用することができる。自己適応型の書き込み動作を実現するメモリ装置は、読み出しデータと書き込みデータとが異なるときには書き込みを続行し、同じになったときには書き込みを中止することができる。そこで、
図72を参照して、本開示の第11の実施形態として、第1から第6の実施形態及び変形例を適用した、自己適応型の書き込み動作を実現するメモリ装置の実施形態を説明する。
図72は、本実施形態に係る、自己適応型の書き込み動作を実現するメモリ装置が有する書き込み部50の回路図である。
【0198】
詳細には、
図72に示すように、書き込み部50は、書き込み電圧発生部51と、電圧印加部52と、読み出し部53と、比較部54と、帰還部55と、書き込み選択部56とを有する。
【0199】
書き込み電圧発生部51は、状態0書き込み電圧線15(WR0)と、状態1書き込み電圧線16(WR1)と、書き込みデータ線17(WD)と、書き込み信号線19(WE2)とを入力端子として有する。状態0書き込み電圧線15、状態1書き込み電圧線16及び書き込みデータ線17は、書き込み制御部(図示省略)に接続されている。書き込み信号線19は、書き込み選択部56に接続されている。
【0200】
書き込み制御部(図示省略)の制御により、状態0書き込み電圧線15には、状態0を書き込むための電圧が印加され、状態1書き込み電圧線16には、状態1を書き込むための電圧が印加される。また、書き込みデータ線17には、書き込み制御部の制御により、状態0を書き込むときにオフ電圧が印加され、状態1を書き込むときにオン電圧が印加される。
【0201】
書き込み電圧発生部51は、書き込みデータ線17から印加された電圧に応じて、状態0書き込み電圧線15の電圧と、状態1書き込み電圧線16の電圧のうち、いずれか一方の電圧(WR)を電圧印加部52に出力する。
【0202】
電圧印加部52は、書き込み電圧発生部51から出力された電圧に依存する電圧をビット線BL又はソース線SLに出力する。ビット線BL及びソース線SLには、スイッチ30が設けられており、電圧印加部52から出力された電圧を、磁気抵抗素子3の上端に印加する場合と、磁気抵抗素子3の下端に印加する場合とに切り替えることができる。また、当該スイッチ30により、電圧の印加されない磁気抵抗素子3の端子は、GNDに接続される。このようにして、本実施形態においては、磁気抵抗素子3へ書き込みたい状態、すなわち、期待する状態に応じて、逆向きの電圧を磁気抵抗素子3に印加することができる。
【0203】
読み出し部53は、書き込みの対象となっている磁気抵抗素子3の状態を読み出す子音ができる。この際、読み出し部53は、スイッチ32により、磁気抵抗素子3の高電位側の端子に接続される。さらに、読み出し部53は、読み出したデータ、すなわち読み出しデータに応じた読み出し電圧を比較部54に出力する。
【0204】
比較部54は、読み出し部53から出力された電圧を参照して、読み出しデータ(例えば、読み出した磁気抵抗素子3の状態)と書き込みデータ(例えば、目標の磁気抵抗素子3の状態)との比較を行う。比較部54は、書き込みデータ線17をもう1つの入力端子として有し。比較を行うため、書き込みデータ線17からの電圧を用いることができる。比較部54は、比較した結果に応じた比較電圧を帰還部55に出力する。
【0205】
帰還部55は、比較部54から出力された電圧を参照して、書き込みを続行するか中止するかを判断する。帰還部55は、書き込み開始信号線18(EN)をもう1つの入力端子として有し、書き込みを続行するか中止するかを判断するため、書き込み開始信号線18の電圧を用いることができる。
【0206】
書き込み選択部56は、帰還部55から出力された電圧を参照して、書き込みを続行するか中止するかを選択する。書き込み選択部56は、書き込み選択線14(SE)をもう1つの入力端子として有し、書き込みを続行するか中止するかを選択するため、書き込み選択線14の電圧を用いることができる。
【0207】
以上のように、上記書き込み部50を用いることによって、読み出しデータと書き込みデータとが異なるときには書き込みを続行し、同じになったときには書き込みを中止する、自己適応型の書き込み動作を実現することができる。
【0208】
<<13. 第12の実施形態>>
上述した本開示の第1から第6の実施形態及び変形例に係る磁気抵抗素子3は、例えばイメージセンサと積層されるロジック回路のフレームメモリに適用することもできる。また、上記磁気抵抗素子3は、イメージセンサ用のロジック回路への適用に限定されるものではなく、不揮発性メモリ素子であることから、例えば、マイクロコントローラ、DSP(Digital Signal Processor)等演算プログラムの保存、AI(Artificial Intelligence)・認識処理の係数データの保存等に用いるメモリに適用することができる。本開示の第1から第6の実施形態及び変形例に係る磁気抵抗素子3は、書き込みが低エネルギーを行うことができ、低遅延であり、且つ、SRAMよりも省面積で低リークであることから、SRAMに置き換えて利用することも可能である。
【0209】
そこで、
図73から
図76を参照して、本開示の第12の実施形態として、第1から第6の実施形態及び変形例に係る磁気抵抗素子3を適用したイメージセンサ用のロジックLSI(Large Scale Integration)の実施形態を説明する。
図73は、本実施形態に係る撮像装置800のブロック図であり、
図74は、本実施形態に係る撮像装置800の積層構造例の模式図である。また、
図75は、本実施形態における書き込みのフローチャートであり、
図76は、本実施形態における読み出しのフローチャートである。
【0210】
図73に示すように、撮像装置800は、イメージセンサ(CIS)812とロジックLSI820とを有する。ロジックLSI820は、代表的な機能部として、イメージセンサ812からの出力データをデジタル変換するA/D(Analog/digital)変換器(ADC)840、フレームメモリ860に記録するための制御を行うフレームメモリ制御部842、画像処理やAI処理を行う画像・AI処理部844、データを出力する出力部(I/F)846等を有する。また、ロジックLSI820は、メモリ記録時の誤りを訂正するため誤り訂正部(ECC処理部)850を持っていてもよい。ロジックLSI820は、ECC処理には、書き込み時に誤り訂正冗長データを付加する符号化機能と、読み出し時に誤りを訂正する復号機能等を持っていてもよい。なお、VC-MRAMの誤り率が用途に対して高い場合には誤り訂正機能を用いるが、充分に低ければ誤り訂正機能はなくてもよい。
【0211】
イメージセンサ812からデータが出力されると、一旦フレームメモリ860にデータをバッファした後、読み出して画像処理やAI処理を行い、処理後の画像データ、AI等で認識したメタデータ等を出力部846から出力する。フレームメモリ860には、本開示の第1から第6の実施形態及び変形例に係る磁気抵抗素子3を適用することができる。VC-MRAMは、不揮発性であり、SRAMに比べて面積が小さく、さらに、リークも小さく、STT-MRAMやSOT-MRAMに比べて書き込みエネルギーが小さい。従って、本開示の第1から第6の実施形態及び変形例に係る磁気抵抗素子3を適用することで、低消費電力で、且つ、コンパクトなロジックLSI820とすることができる。さらに、本開示の第1から第6の実施形態及び変形例に係る磁気抵抗素子3を適用することで、書き込み制御が容易となる。
【0212】
また、本実施形態においては、
図74に示すように、イメージセンサ812を搭載した基板810と、メモリ部822及びロジック部824を搭載した基板830とを積層させることにより、撮像装置800をよりコンパクトにすることができる。
【0213】
図75に、本実施形態における書き込みのフローチャートを示す。まず、ロジックLSI820は、A/D(Analog/digital)変換されたデータを受信すると、書き込みコマンドを発行して、データをECC処理へ転送する(ステップS301)。次に、ロジックLS820は、ECC処理では符号化処理を行い(ステップS302)、書き込み信号を発行して、誤り訂正冗長データを付加したデータをフレームメモリ860に転送する(ステップS303)。そして、フレームメモリ860は、誤り訂正符号化されたデータを書き込む(ステップS304)。
【0214】
図76に、本実施形態における読み出しのフローチャートを示す。まず、ロジックLSI820は、A/D(Analog/digital)変換されたデータをフレームメモリ860に書き込んだ後、データを読み出して画像処理やAI処理を行う。さらに、フレームメモリ制御部842が読み出しコマンドを発行する(ステップS401)。次に、ロジックLSI820は、ECC処理部850を介してフレームメモリ860に読み出し信号を発行する(ステップS402)。なお、本実施形態においては、ECC処理を介さずにフレームメモリ860へ読み出し信号を発行してもよい。そして、フレームメモリ860は、データを読み出し(ステップS403)、ECC処理部850へ転送する(ステップS404)。そして、ECC処理部850は、復号処理を行い(ステップS405)、フレームメモリ制御部842に転送する(ステップS406)。
【0215】
<<14. まとめ>>
以上のように、本開示の各実施形態においては、印加電圧のパルス幅が長くなっても、記憶層の磁化方向の反転の確率が劣化することはないことから、パルス幅の高精度の制御を行うことがなく、容易に書き込みを行うことができる。さらに、本実施形態によれば、短いパルス幅を高精度に制御するための複雑、且つ、大規模な制御回路を必要としない。
【0216】
また、本実施形態においては、低抵抗状態の磁気抵抗素子3への書き込み、及び、低抵抗状態を維持したい際には、正電圧を印加すればよい。また、本実施形態においては、高抵抗状態の磁気抵抗素子3への書き込み、及び、高抵抗状態を維持したい際には、負電圧を印加する。従って、本実施形態においては、期待する状態に応じた電圧を印加することで、反転後であっても期待される状態が維持されることから、磁気抵抗素子3の状態を確認するための初期読み出しが不要である。その結果、本実施形態によれば、書き込み時間が長くなることを避けることができ、書き込みが高速であるというVC-MRAMの特性を十分に生かすことができる。
【0217】
また、上述した各実施形態のフローにおける各ステップは、必ずしも記載された順序に沿って処理されなくてもよい。例えば、各ステップは、適宜順序が変更されて処理されてもよい。また、各ステップは、時系列的に処理される代わりに、一部並列的に又は個別的に処理されてもよい。
【0218】
また、本開示の実施形態及び変形例に係る磁気抵抗素子3は、一般的な半導体装置の製造に用いられる、方法、装置、及び条件を用いることで製造することが可能である。
【0219】
なお、上述の方法としては、例えば、PVD(Physical Vapor Deposition)法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法及びALD(Atomic Layer Deposition)法等を挙げることができる。PVD法としては、真空蒸着法、EB(電子ビーム)蒸着法、各種スパッタリング法(マグネトロンスパッタリング法、RF(Radio Frequency)-DC(Direct Current)結合形バイアススパッタリング法、ECR(Electron Cyclotron Resonance)スパッタリング法、対向ターゲットスパッタリング法、高周波スパッタリング法等)、イオンプレーティング法、レーザアブレーション法、分子線エピタキシー法(MBE(Molecular Beam Epitaxy)法)、レーザ転写法を挙げることができる。また、CVD法としては、プラズマCVD法、熱CVD法、有機金属(MO)CVD法、光CVD法を挙げることができる。さらに、他の方法としては、電解メッキ法や無電解メッキ法、スピンコート法;浸漬法;キャスト法;マイクロコンタクトプリント法;ドロップキャスト法;スクリーン印刷法やインクジェット印刷法、オフセット印刷法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法といった各種印刷法;スタンプ法;スプレー法;エアドクタコーター法、ブレードコーター法、ロッドコーター法、ナイフコーター法、スクイズコーター法、リバースロールコーター法、トランスファーロールコーター法、グラビアコーター法、キスコーター法、キャストコーター法、スプレーコーター法、スリットオリフィスコーター法、カレンダーコーター法といった各種コーティング法を挙げることができる。さらに、パターニング法としては、シャドーマスク、レーザ転写、フォトリソグラフィー等の化学的エッチング、紫外線やレーザ等による物理的エッチング等を挙げることができる。加えて、平坦化技術としては、CMP(Chemical Mechanical Polishing)法、レーザ平坦化法、リフロー法等を挙げることができる。
【0220】
<<15. 電子機器の構成例>>
以下、
図77から
図80を参照して、上述した本開示の実施形態(変形例も含む)を適用した電子機器として、撮像装置310、測距装置410及びゲーム機器900を説明する。
【0221】
<15.1 撮像装置>
まずは、
図77を参照して、上述した本開示の実施形態(変形例も含む)を適用した電子機器として、撮像装置310を説明する。
図77は、撮像装置310の概略構成の一例を示す図である。撮像装置310としては、例えば、デジタルスチルカメラやビデオカメラ、撮像機能を有するスマートフォンや携帯電話機等の電子機器が挙げられる。
【0222】
図77に示すように、撮像装置310は、光学系311、シャッタ装置312、撮像素子313、制御回路(駆動回路)314、信号処理回路315、モニタ316及びメモリ317を有する。この撮像装置310は、静止画像及び動画像を撮像可能である。
【0223】
光学系311は、1枚または複数枚のレンズを有する。この光学系311は、被写体からの光(入射光)を撮像素子313に導き、撮像素子313の受光面に結像させる。
【0224】
シャッタ装置312は、光学系311及び撮像素子313の間に配置される。このシャッタ装置312は、制御回路314の制御に従って、撮像素子313への光照射期間および遮光期間を制御する。
【0225】
撮像素子313は、光学系311及びシャッタ装置312を介して受光面に結像される光に応じて、一定期間、信号電荷を蓄積する。撮像素子313に蓄積された信号電荷は、制御回路314から供給される駆動信号(タイミング信号)に従って転送される。
【0226】
制御回路314は、撮像素子313の転送動作及びシャッタ装置312のシャッタ動作を制御する駆動信号を出力して、撮像素子313及びシャッタ装置312を駆動する。
【0227】
信号処理回路315は、撮像素子313から出力された信号電荷に対して各種の信号処理を施す。信号処理回路315が信号処理を施すことにより得られた画像(画像データ)は、モニタ316に供給され、また、メモリ317に供給される。
【0228】
モニタ316は、信号処理回路315から供給された画像データに基づき、撮像素子313により撮像された動画又は静止画を表示する。モニタ316としては、例えば、液晶パネルや有機EL(Electro Luminescence)パネル等のパネル型表示装置が用いられる。
【0229】
メモリ317は、信号処理回路315から供給された画像データ、すなわち、撮像素子313により撮像された動画又は静止画の画像データを記憶する。メモリ317には、本開示の実施形態を適用することができる。
【0230】
<15.2 測距装置>
次に、
図78を参照して、上述した本開示の実施形態(変形例も含む)を適用した電子機器として、測距装置410を説明する。
図78は、測距装置410の概略構成の一例を示す図である。
【0231】
図78に示すように、測距装置(距離画像センサ)410は、光源部411と、光学系412と、固体撮像装置(撮像素子)413、制御回路(駆動回路)414、信号処理回路415、モニタ416及びメモリ417を有する。測距装置410は、光源部411から被写体に向かって投光し、被写体の表面で反射された光(変調光やパルス光)を受光することにより、被写体までの距離に応じた距離画像を取得することができる。
【0232】
光源部411は、被写体に向かって投光する。光源部411としては、例えば、面光源としてレーザ光を射出する垂直共振器面発光レーザ(VCSEL:Vertical Cavity Surface Emitting Laser)アレイや、レーザダイオードをライン上に配列したレーザダイオードアレイが用いられる。なお、レーザダイオードアレイは、所定の駆動部(図示省略)によって支持され、レーザダイオードの配列方向に垂直の方向にスキャンされる。
【0233】
光学系412は、1枚または複数枚のレンズを有する。この光学系412は、被写体からの光(入射光)を固体撮像装置413に導き、固体撮像装置413の受光面(センサ部)に結像させる。
【0234】
固体撮像装置413は、光学系412を介して受光面に結像される光に応じて、信号電荷を蓄積する。この固体撮像装置413から出力される受光信号(APD OUT)から求められる距離を示す距離信号が信号処理回路415に供給される。固体撮像装置413としては、例えば、イメージセンサ等の固体撮像素子が用いられる。
【0235】
制御回路414は、光源部411や固体撮像装置413等の動作を制御する駆動信号(制御信号)を出力し、光源部411や固体撮像装置413等を駆動する。
【0236】
信号処理回路415は、固体撮像装置413から供給された距離信号に対して各種の信号処理を施す。例えば、信号処理回路415は、距離信号に基づいて距離画像を構築する画像処理(例えば、ヒストグラム処理やピーク検出処理等)を行う。信号処理回路415が信号処理を施すことにより得られた画像(画像データ)は、モニタ416に供給され、また、メモリ417に供給される。
【0237】
モニタ416は、信号処理回路415から供給された画像データに基づき、固体撮像装置413により撮像された距離画像を表示する。モニタ416としては、例えば、液晶パネルや有機ELパネル等のパネル型表示装置が用いられる。
【0238】
メモリ417は、信号処理回路415から供給された画像データ、すなわち、固体撮像装置413により撮像された距離画像の画像データを記憶する。メモリ417には、本開示の実施形態を適用することができる。
【0239】
<15.3 ゲーム機器>
次に、
図79及び
図80を参照して、上述した本開示の実施形態(変形例も含む)を適用した電子機器として、ゲーム機器900を説明する。
図79は、ゲーム機器900の概略構成の一例を示す斜視図(外観斜視図)である。
図80は、ゲーム機器900の概略構成の一例を示すブロック図である。
【0240】
図79に示すように、ゲーム機器900は、例えば、横長の扁平な形状に形成された外筐901の内外に各構成が配置された外観を有する。
【0241】
外筐901の前面には、長手方向の中央部に表示パネル902が設けられる。また、表示パネル902の左右には、それぞれ周方向に離隔して配置された操作キー903及び操作キー904が設けられる。また、外筐901の前面の下端部には、操作キー905が設けられる。操作キー903、904、905は、方向キー又は決定キー等として機能し、表示パネル902に表示されるメニュー項目の選択やゲームの進行等に用いられる。
【0242】
外筐901の上面には、外部機器を接続するための接続端子906や電力供給用の供給端子907、外部機器との赤外線通信を行う受光窓908等が設けられる。
【0243】
図80に示すように、ゲーム機器900は、CPU(Central Processing Unit)を含む演算処理部910と、各種情報を記憶する記憶部920と、ゲーム機器900の各構成を制御する制御部930とを備える。演算処理部910及び制御部930には、例えば、図示しないバッテリー等から電力が供給される。
【0244】
演算処理部910は、各種情報の設定またはアプリケーションの選択をユーザに行わせるためのメニュー画面を生成する。また、演算処理部910は、ユーザによって選択されたアプリケーションを実行する。
【0245】
記憶部920は、ユーザにより設定された各種情報を保持する。記憶部920には、本開示の実施形態を適用することができる。
【0246】
制御部930は、入力受付部931、通信処理部933及び電力制御部935を有する。入力受付部931は、例えば、操作キー903、904及び905の状態検出を行う。また、通信処理部933は、外部機器との間の通信処理を行う。電力制御部935は、ゲーム機器900の各部に供給される電力の制御を行う。
【0247】
また、本開示の実施形態は、上述のようにメモリ(記憶部)が搭載され得る各種の電子機器に実装されることが可能である。例えば、本開示の実施形態は、撮像装置310やゲーム機器900の他にも、ノートPC(Personal Computer)、モバイル機器(例えば、スマートフォンやタブレットPC等)、PDA(Personal Digital Assistant)、ウェアラブルデバイス、音楽機器等、各種の電子機器等に適用することができる。
【0248】
<<16. 補足>>
以上、添付図面を参照しながら本開示の好適な実施形態について詳細に説明したが、本開示の技術的範囲はかかる例に限定されない。本開示の技術分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0249】
また、本明細書に記載された効果は、あくまで説明的または例示的なものであって限定的ではない。つまり、本開示に係る技術は、上記の効果とともに、または上記の効果に代えて、本明細書の記載から当業者には明らかな他の効果を奏しうる。
【0250】
なお、本技術は以下のような構成も取ることができる。
(1)
第1の制御線と第2の制御線との間に接続される磁気抵抗素子と、
前記磁気抵抗素子に対する書き込みを制御する書き込み回路と、
前記磁気抵抗素子に対する読み出しを制御する読み出し回路と、
を備え、
前記磁気抵抗素子は、電圧磁気異方性制御(VCMA)効果型磁気抵抗素子であり、
前記書き込み回路は、前記磁気抵抗素子を高抵抗状態へ書き込む第1の電圧と、前記磁気抵抗素子を低抵抗状態へ書き込む第2の電圧とが逆向きになるように、制御する、
メモリ装置。
(2)
前記磁気抵抗素子は、記憶層、トンネルバリア層及び参照層の積層構造からなるMTJ素子を少なくとも1つ含む、上記(1)に記載のメモリ装置。
(3)
前記磁気抵抗素子は、互いに積層された複数の前記MTJ素子を有する、上記(2)に記載のメモリ装置。
(4)
前記磁気抵抗素子は、前記複数のMTJ素子の間に設けられた磁気結合層又は反強磁性結合層をさらに有する、上記(3)に記載のメモリ装置。
(5)
前記磁気結合層又は前記反強磁性結合層は、一方の前記MTJ素子の前記記憶層と他の前記MTJ素子の前記記憶層とに挟まれるように設けられる、上記(4)に記載のメモリ装置。
(6)
前記複数のMTJ素子は、前記記憶層を共有する、上記(3)に記載のメモリ装置。
(7)
前記複数のMTJ素子は、互いにTMR(Tunnel Magneto Resistance)比が異なる、上記(3)~(6)のいずれか1つに記載のメモリ装置。
(8)
前記複数のMTJ素子は、互いの異なる膜厚を持つ前記トンネルバリア層を有する、上記(7)に記載のメモリ装置。
(9)
前記磁気抵抗素子は、第1のMTJ素子及び第2のMTJ素子を含み、
前記第2のMTJ素子の高抵抗状態の抵抗値、前記第1のMTJ素子の高抵抗状態の抵抗値、前記第1のMTJ素子の低抵抗状態の抵抗値、前記第2のMTJ素子の低抵抗状態の抵抗値の順で、値が順次小さくなる、
上記(7)又は(8)に記載のメモリ装置。
(10)
前記磁気抵抗素子は、
前記MTJ素子の前記記憶層に接する磁気結合層又は反強磁性結合層と、
前記磁気結合層又は前記反強磁性結合層に接する他の記憶層及び前記他の記憶層と接する他のトンネルバリア層からなる抵抗素子と、
をさらに有する、
上記(2)に記載のメモリ装置。
(11)
前記磁気抵抗素子は、前記MTJ素子の前記記憶層に接する他のトンネルバリア層からなる抵抗素子をさらに有する、
上記(2)に記載のメモリ装置。
(12)
前記磁気抵抗素子は、1つの前記MTJ素子及び1つの前記抵抗素子を含み、
前記MTJ素子の高抵抗状態の抵抗値、前記抵抗素子の抵抗値、前記MTJ素子の低抵抗状態の抵抗値の順で、値が順次小さくなる、
上記(10)又は(11)に記載のメモリ装置。
(13)
前記磁気抵抗素子は、前記MTJ素子を挟み込むキャップ層及び下地層をさらに有する、上記(2)~(12)のいずれか1つに記載のメモリ装置。
(14)
前記第2の制御線に接続される端子を持つ選択素子をさらに備える、上記(1)~(13)のいずれか1つに記載のメモリ装置。
(15)
複数の前記磁気抵抗素子を備え、
前記複数の磁気抵抗素子は、
行方向及び列方向に沿って配列し、
同一列の前記磁気抵抗素子の一端は、共通の第1の制御線に電気的に接続され、
同一行の前記磁気抵抗素子の他端を共通の第2の制御線に電気的に接続され、
クロスポイント型メモリアレイを構成する、
上記(1)~(14)のいずれか1つに記載のメモリ装置。
(16)
ラッチ回路をさらに備える、上記(1)~(14)のいずれか1つに記載のメモリ装置。
(17)
フリップフロップ回路をさらに備える、上記(1)~(14)のいずれか1つに記載のメモリ装置。
(18)
SRAMを構成する、上記(16)又は(17)に記載のメモリ装置。
(19)
磁気抵抗素子、及び、前記磁気抵抗素子を選択する選択素子を含む複数のメモリセルと、
前記複数のメモリセルを選択して前記選択素子を介して前記磁気抵抗素子に書き込みを行う書き込み回路と、
前記複数のメモリセルを選択して前記選択素子を介して前記磁気抵抗素子から読み出しを行う読み出し回路と、
前記書き込み回路及び前記読み出し回路を介して複数の前記メモリセルにおけるデータの書き込み及び読み出しを制御するメモリ制御部と、
を備え、
前記磁気抵抗素子は、電圧磁気異方性制御(VCMA)効果型磁気抵抗素子であり、
前記書き込み回路は、前記磁気抵抗素子を高抵抗状態へ書き込む第1の電圧と、前記磁気抵抗素子を低抵抗状態へ書き込む第2の電圧とが逆向きになるように、制御する、
メモリシステム。
【符号の説明】
【0251】
1 ゲート電極
2 素子分離層
3、3a、3b、3c、3d、3e、3f、3g、3h、3i、3j、3k、3m、3n、3p、3q、3r、3s 磁気抵抗素子
5 選択素子
5a トランジスタ
4 コンタクト層
6 ビット線
7 ソース領域
8 ドレイン領域
9 配線
10 半導体基体
11、550、550a、550b メモリセルアレイ
15、16 電圧線
17 データ線
19 信号線
30、32 スイッチ
50 書き込み部
51 書き込み電圧発生部
52 電圧印加部
53 読み出し部
54 比較部
55 帰還部
56 書き込み選択部
100、200 MTJ素子
102、202 磁化固定層
104、204 トンネルバリア層
106、206 記憶層
300 磁気結合層
302 反強磁性結合層
400 下地層
402 キャップ層
500、500a、500c、500d、500e、500f、500g、500h、500i、500j メモリ装置
502、570 入出力部
503、568 制御回路
504 電圧生成回路
506 センスアンプ
510、564 読み出し回路
512 書き込み回路
520 ビット/ソースラインアドレスデコーダ
530 ワードラインアドレスデコーダ
540 ビットライン制御回路
542 ワードライン制御回路
544 ソースライン制御回路
552 スイッチ
560 BLバイアス回路
562 WLバイアス回路
566 パルス生成部
572 アドレスデコーダ
800 撮像装置
810、830 基板
812 イメージセンサ
820 ロジックLSI
822 メモリ部
824 ロジック部
840 ADC
842 フレームメモリ制御部
844 画像・AI処理部
846 出力部
850 ECC処理部
860 フレームメモリ