IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社東芝の特許一覧 ▶ 東芝エネルギーシステムズ株式会社の特許一覧

特開2024-126410風力発電装置および風力発電装置の運転方法
<>
  • 特開-風力発電装置および風力発電装置の運転方法 図1
  • 特開-風力発電装置および風力発電装置の運転方法 図2
  • 特開-風力発電装置および風力発電装置の運転方法 図3
  • 特開-風力発電装置および風力発電装置の運転方法 図4
  • 特開-風力発電装置および風力発電装置の運転方法 図5
  • 特開-風力発電装置および風力発電装置の運転方法 図6
  • 特開-風力発電装置および風力発電装置の運転方法 図7
  • 特開-風力発電装置および風力発電装置の運転方法 図8
  • 特開-風力発電装置および風力発電装置の運転方法 図9
  • 特開-風力発電装置および風力発電装置の運転方法 図10
  • 特開-風力発電装置および風力発電装置の運転方法 図11
  • 特開-風力発電装置および風力発電装置の運転方法 図12
  • 特開-風力発電装置および風力発電装置の運転方法 図13
  • 特開-風力発電装置および風力発電装置の運転方法 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126410
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】風力発電装置および風力発電装置の運転方法
(51)【国際特許分類】
   F03D 7/04 20060101AFI20240912BHJP
【FI】
F03D7/04 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034773
(22)【出願日】2023-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100150717
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 和也
(74)【代理人】
【識別番号】100198029
【弁理士】
【氏名又は名称】綿貫 力
(72)【発明者】
【氏名】平野 俊夫
(72)【発明者】
【氏名】吉水 謙司
(72)【発明者】
【氏名】谷山 賀浩
(72)【発明者】
【氏名】仲村 岳
(72)【発明者】
【氏名】山田 敏雅
(72)【発明者】
【氏名】伊東 亮
【テーマコード(参考)】
3H178
【Fターム(参考)】
3H178AA03
3H178AA40
3H178AA43
3H178BB35
3H178DD42X
3H178EE02
3H178EE15
3H178EE23
(57)【要約】
【課題】回転軸を支持する軸受の損傷を防止する。
【解決手段】実施の形態による風力発電装置は、鉛直方向に延びるタワーと、タワーに支持されたナセルと、ナセルに収容された発電機と、ナセルの前方に配置され、風力により回転して回転エネルギを生成するブレードと、ナセルに軸受を介して回転可能に支持され、ブレードにより生成された回転エネルギを発電機に伝達する回転軸と、少なくとも風向を計測する風況計測器と、ナセルをタワーに対してヨー方向に回転させるヨー駆動装置と、ヨー駆動装置を制御する制御装置と、を備える。制御装置は、ヨー駆動装置を制御して、鉛直方向から見たときに回転軸の回転軸線が風向に対して傾くようにナセルをヨー方向に回転させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直方向に延びるタワーと、
前記タワーに支持されたナセルと、
前記ナセルに収容された発電機と、
前記ナセルの前方に配置され、風力により回転して回転エネルギを生成するブレードと、
前記ナセルに軸受を介して回転可能に支持され、前記ブレードにより生成された前記回転エネルギを前記発電機に伝達する回転軸と、
少なくとも風向を計測する風況計測器と、
前記ナセルを前記タワーに対してヨー方向に回転させるヨー駆動装置と、
前記ヨー駆動装置を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記ヨー駆動装置を制御して、前記鉛直方向から見たときに前記回転軸の回転軸線が前記風向に対して傾くように前記ナセルを前記ヨー方向に回転させる、風力発電装置。
【請求項2】
前記風況計測器は、風速も計測し、
前記制御装置は、前記風速に基づいて、前記回転軸線の前記風向に対する傾き角度を決定する、請求項1に記載の風力発電装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記風速が所定風速よりも大きい場合、前記ナセルを前記ヨー方向における第1方向に回転させ、前記風速が前記所定風速よりも大きい場合、前記ナセルを前記ヨー方向における前記第1方向とは反対側の第2方向に回転させる、請求項2に記載の風力発電装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記傾き角度に応じた前記発電機の出力低下量に基づいて、前記傾き角度を決定する、請求項2または3に記載の風力発電装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記風力発電装置の起動時に前記ヨー駆動装置を制御して、前記鉛直方向から見たときに前記回転軸の回転軸線が前記風向に対して傾くように前記ナセルを前記ヨー方向に回転させる、請求項1に記載の風力発電装置。
【請求項6】
前記制御装置は、前記風力発電装置の運転中に前記ヨー駆動装置を制御して、前記鉛直方向から見たときに前記回転軸の回転軸線が前記風向に対して傾くように前記ナセルを前記ヨー方向に回転させる、請求項1に記載の風力発電装置。
【請求項7】
鉛直方向に延びるタワーと、前記タワーに支持されたナセルと、前記ナセルに収容された発電機と、前記ナセルの前方に配置され、風力により回転して回転エネルギを生成するブレードと、前記ナセルに軸受を介して回転可能に支持され、前記ブレードにより生成された回転エネルギを前記発電機に伝達する回転軸と、を備えた風力発電装置の運転方法であって、
風向を計測する風況計測工程と、
前記鉛直方向から見たときに前記回転軸の回転軸線が前記風向に対して傾くように前記ナセルをヨー方向に回転させるナセル回転工程と、を備える、風力発電装置の運転方法。
【請求項8】
前記風況計測工程において、風速も計測し、
前記ナセル回転工程において、前記風速に基づいて、前記回転軸線の前記風向に対する傾き角度を決定する、請求項7に記載の風力発電装置の運転方法。
【請求項9】
前記ナセル回転工程において、前記風速が所定風速よりも大きい場合、前記ナセルを前記ヨー方向における第1方向に回転させ、前記風速が前記所定風速よりも大きい場合、前記ナセルを前記ヨー方向における前記第1方向とは反対側の第2方向に回転させる、請求項8に記載の風力発電装置の運転方法。
【請求項10】
前記ナセル回転工程において、前記傾き角度に応じた前記発電機の出力低下量に基づいて、前記傾き角度を決定する、請求項8または9に記載の風力発電装置の運転方法。
【請求項11】
前記ナセル回転工程は、前記風力発電装置の起動時に実施される、請求項7に記載の風力発電装置の運転方法。
【請求項12】
前記ナセル回転工程は、前記風力発電装置の運転中に実施される、請求項7に記載の風力発電装置の運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、風力発電装置および風力発電装置の運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
風力発電装置は、タワーに支持されたナセルと、ナセルに収容された発電機と、ナセルの前方に配置されたブレードと、ナセルに軸受を介して回転可能に支持された回転軸と、を備えている。風力によりブレードが回転することで、その回転エネルギが回転軸を介してナセル内の発電機に伝達され、発電機による発電が行われる。
【0003】
また、一般に、風力発電装置は、風速および風向を計測する風況計測器と、ナセルをタワーに対してヨー方向に回転させるヨー駆動装置とを備えている。ヨー駆動装置によりナセルをヨー方向に回転させることで、回転軸の回転軸線が風向に沿うようにナセルのヨー方向の向きが調整される。
【0004】
上述した風力発電装置では、ロータのブレードとハブがナセルの前方に位置している。このため、回転軸を支持する軸受には、水平軸まわりにロータの自重分のモーメント荷重が作用する。一方、風の乱れにより、ブレードは様々な方向および大きさの力を受ける。このため、軸受にも様々な方向および大きさのモーメント荷重が作用する。この風によるモーメント荷重は、ロータの自重分のモーメント荷重と同じ水平軸まわりの方向にも作用し得る。このとき、軸受には水平軸まわりに大きなモーメント荷重が作用し、軸受は最も過酷な状況に置かれる。この場合、軸受が損傷するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-074059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、回転軸を支持する軸受の損傷を防止することができる風力発電装置および風力発電装置の運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施の形態による風力発電装置は、鉛直方向に延びるタワーと、タワーに支持されたナセルと、ナセルに収容された発電機と、ナセルの前方に配置され、風力により回転して回転エネルギを生成するブレードと、ナセルに軸受を介して回転可能に支持され、ブレードにより生成された回転エネルギを発電機に伝達する回転軸と、少なくとも風向を計測する風況計測器と、ナセルをタワーに対してヨー方向に回転させるヨー駆動装置と、ヨー駆動装置を制御する制御装置と、を備える。制御装置は、ヨー駆動装置を制御して、鉛直方向から見たときに回転軸の回転軸線が風向に対して傾くようにナセルをヨー方向に回転させる。
【0008】
実施の形態による風力発電装置の運転方法は、鉛直方向に延びるタワーと、タワーに支持されたナセルと、ナセルに収容された発電機と、ナセルの前方に配置され、風力により回転して回転エネルギを生成するブレードと、ナセルに軸受を介して回転可能に支持され、ブレードにより生成された回転エネルギを発電機に伝達する回転軸と、を備えた風力発電装置の運転方法である。風力発電装置の運転方法は、風向を計測する風況計測工程と、鉛直方向から見たときに回転軸の回転軸線が風向に対して傾くようにナセルをヨー方向に回転させるヨー方向回転工程と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本実施の形態によれば、回転軸を支持する軸受の損傷を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本実施の形態による風力発電装置を示す模式図である。
図2図2は、図1の風力発電装置を上方から見た図である。
図3図3は、図1の風力発電装置のロータおよび軸受を拡大して示す図である。
図4図4は、図3の軸受に作用する水平軸まわりのモーメント荷重を示す図である。
図5図5は、ブレードに作用する力を説明するための図であって、ブレードを上方から見たときの断面図である。
図6図6は、ヨーミスアライメント発生時に上半部を回転するブレードを上方から見たときの断面図である。
図7図7は、ヨーミスアライメント発生時に下半部を回転するブレードを上方から見たときの断面図である。
図8図8は、風速8m/s時の各傾き角度における軸受に作用する水平軸まわりのモーメント荷重を示す図である。
図9図9は、風速12m/s時の各傾き角度における軸受に作用する水平軸まわりのモーメント荷重を示す図である。
図10図10は、風速16m/s時の各傾き角度における軸受に作用する水平軸まわりのモーメント荷重を示す図である。
図11図11は、風速20m/s時の各傾き角度における軸受に作用する水平軸まわりのモーメント荷重を示す図である。
図12図12は、各風速における傾き角度と軸受に作用する水平軸まわりのモーメント荷重の関係を示す図である。
図13図13は、各風速における傾き角度と発電機の出力低下量の関係を示す図である。
図14図14は、各風速における傾き角度と評価指標値の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態による風力発電装置および風力発電装置の運転方法について説明する。
【0012】
まず、図1を用いて、本実施の形態による風力発電装置について説明する。風力発電装置は、地上に設置されていてもよいし、洋上に設置されていてもよい。
【0013】
風力発電装置1は、風力により発電を行うように構成されている。図1に示すように、風力発電装置1は、タワー2と、ナセル3と、ロータ4と、発電機5と、を含んでいる。
【0014】
タワー2は、ナセル3を下方から支持する支持体である。タワー2は、鉛直方向に延びている。タワー2は、例えば、細長の円柱状に形成されていてもよい。タワー2は、地上またはその他の基礎構造物に設置されていてもよい。
【0015】
ナセル3は、タワー2に支持されている。ナセル3は、筐体として機能する。ナセル3には、ロータ4の回転軸4c、軸受6、変速機構7および発電機5が収容されている。ナセル3は、鉛直方向に垂直な方向に長手方向を有している。ナセル3は、鉛直方向に垂直な面内で回転可能に構成されている。より具体的には、ナセル3は、後述するヨー駆動装置9により制御されて、タワー2に対してヨー方向(鉛直方向まわりの方向)に回転するように構成されている。また、ナセル3は、ロータ4を回転可能に支持している。より具体的には、ナセル3は、軸受6を介してロータ4の回転軸4cを回転可能に支持している。
【0016】
ロータ4は、ナセル3に回転可能に支持されている。ロータ4は、複数のブレード4aと、ハブ4bと、回転軸4cと、を含んでいる。ブレード4aは、ナセル3の前方に配置されている。ハブ4bは、ナセル3の前方に配置され、ブレード4aを支持している。ブレード4aは、ハブ4bの周りに放射状に配置されていてもよい。回転軸4cは、ナセル3に軸受6を介して回転可能に支持されている。回転軸4cの一端はハブ4bに接続され、回転軸4cの他端は変速機構7に接続されている。回転軸4cは、変速機構7を介して発電機5に接続されている。
【0017】
ブレード4aは、風力により回転して回転エネルギを生成する。より具体的には、ブレード4aは、ハブ4bおよび回転軸4cと一体に回転し、風力から得られた流体エネルギを回転エネルギに変換する。回転軸4cは、ブレード4aにより生成された回転エネルギを発電機5に伝達する。より具体的には、回転エネルギは、回転軸4cによって、変速機構7を介して発電機5に伝達される。変速機構7は、回転速度を増速して発電機5に回転を伝達する。なお、ダイレクトドライブ方式のように、変速機構7を介さずに、発電機5に回転を直接伝達してもよい。発電機5は、伝達された回転エネルギを用いて発電を行う。
【0018】
また、図1に示すように、風力発電装置1は、風況計測器8と、ヨー駆動装置9と、制御装置10と、を含んでいる。
【0019】
風況計測器8は、ナセル3の上部に配置されていてもよい。風況計測器8は、少なくとも風向を計測する。風況計測器8は、風速も計測してもよい。風況計測器8は、風向および風速を計測する風向風速計であってもよい。風況計測器8が検出する風向は、風況計測器8が位置する水平面において風速が最大となる方向である。その方向に沿う風速と風向が風況計測器8により検出される。風況計測器8は、所定時間の間、風向および風速を断続的に計測し、所定時間内の平均値としての風向および風速を計測してもよい。
【0020】
ヨー駆動装置9は、タワー2とナセル3との接続部に配置されている。ヨー駆動装置9は、タワー2またはナセル3に取り付けられていてもよい。ヨー駆動装置9は、ナセル3をタワー2に対してヨー方向(鉛直方向まわりの方向)に回転させるように構成されている。ヨー駆動装置9は、制御装置10により制御される。
【0021】
制御装置10は、図1に示すように、タワー2内に配置されていてもよい。制御装置10は、ナセル3内に配置されていてもよいし、タワー2およびナセル3の外部に配置されていてもよいし、その配置場所は任意である。制御装置10は、ヨー駆動装置9を制御する。すなわち、制御装置10は、ヨー駆動装置9を制御して、ナセル3をタワー2に対してヨー方向に回転させる。制御装置10は、風力発電装置1の起動時にヨー駆動装置9を制御してもよい。制御装置10は、風力発電装置1の運転中にヨー駆動装置9を制御してもよい。
【0022】
本実施の形態においては、図2に示すように、制御装置10は、ヨー駆動装置9を制御して、鉛直方向から見たときに回転軸4cの回転軸線Oが風向(図2における実線矢印)に対して傾くようにナセル3をヨー方向に回転させる。ここで、回転軸線Oとは、回転軸4cの回転の中心軸となる直線を意味する。以下、回転軸線Oの風向に対する傾き角度を、単に傾き角度θとも表わす。傾き角度θは、正の値および負の値を有し得る。例えば、傾き角度θは、図2に示すように、鉛直方向から見たときに回転軸線Oに対して風向が時計回り(正の方向)に傾いたときの角度を正の値とし、反時計回り(負の方向)に傾いたときの角度を負の値としてもよい。
【0023】
上述した風力発電装置1では、図3に示すように、ロータ4のブレード4aとハブ4bがナセル3の前方に位置している。このため、回転軸4cを支持する軸受6には、図3に示すように、ロータ4の自重分のモーメント荷重Maが水平軸まわりに作用する。軸受6の重心点6gとロータ4の重心点4gとの間の距離をLとし、ロータ4の重心点4gに作用する荷重をFとしたとき、ロータ4の自重分のモーメント荷重Maは、以下の(式1)で表される。
【数1】
【0024】
また、風の乱れにより、ブレード4aは様々な方向および大きさの力を受ける。このため、軸受6にも様々な方向および大きさのモーメント荷重が作用する。この風によるモーメント荷重は、ロータ4の自重分のモーメント荷重Maと同じ水平軸まわりの方向にも作用し得る。このとき、軸受には水平軸まわりに大きなモーメント荷重Mが作用し、軸受は最も過酷な状況に置かれる。
【0025】
図4の(a)は、軸受6に作用する水平軸まわりのモーメント荷重Mであって、ロータ4の自重分のモーメント荷重Maと風の乱れの影響によるモーメント荷重とを加算した場合のモーメント荷重Mを示している。図4において、横軸は時間T(sec)を示し、縦軸は水平軸まわりのモーメント荷重M(kNm)を示している。図4においては、時間Tpでモーメント荷重Mの絶対値が最大値を示しており、軸受6に最も大きなモーメント荷重Mが作用している。
【0026】
一方、本発明者らが鋭意検討した結果、図2に示すように、回転軸4cの回転軸線Oを風向に対して傾けた場合、軸受6に作用する水平軸まわりのモーメント荷重Mの絶対値を低減し得ることを見出した。以下、回転軸4cの回転軸線Oが風向に対して傾いている状態を、ヨーミスアライメントが発生しているともいう。すなわち、本発明者らは、ヨーミスアライメント発生時、軸受6に、ロータ4の自重分のモーメント荷重Maとは反対方向の水平軸まわりのモーメント荷重Mbが作用する場合があることを見出した。
【0027】
図4の(b)は、軸受6に作用する水平軸まわりのモーメント荷重Mであって、ロータ4の自重分のモーメント荷重Maと風の乱れの影響によるモーメント荷重とヨーミスアライメント発生時のモーメント荷重Mbとを加算した場合のモーメント荷重Mを示している。図4の(b)の場合、図4の(a)の場合よりも全体的にモーメント荷重Mの絶対値を低減できており、とりわけ、時間Tpにおけるモーメント荷重Mの絶対値の最大値を低減できている。風の乱れの影響を除いた、軸受6に作用する水平軸まわりのモーメント荷重Mは、以下の(式2)で表される。
【数2】
【0028】
次に、ヨーミスアライメント発生時に、このようなモーメントMbが発生する理由について説明する。
【0029】
図5は、上方から見たときのブレード4aの断面図を示している。図5に示すように、ブレード4aには、流入速度Vinで風が流入する。ここで、ブレード4aは、回転方向Dに周速度Wで回転する。図5に示すように、ブレード4aに流入する風の相対流入速度Uinは、流入速度Vinから周速度Wをベクトル減算することにより得られる。このとき、ブレード4aに作用する揚力Fおよび抗力Fは、それぞれ以下の(式3)、(式4)で表される。
【数3】
【数4】
【0030】
ここで、Cは揚力係数、Cは抗力係数、ρは流体密度、Uinは相対流入速度、Aは代表面積である。揚力係数C、抗力係数Cおよび相対流入速度Uinは、図5に示す迎角αおよび流入角φに依存して変化する。風力発電装置1の通常運転の範囲においては、揚力係数Cおよび抗力係数Cは、迎角αおよび流入角φが増大するにつれて増大する。
【0031】
また、この揚力Fおよび抗力Fを座標変換することにより、軸方向に沿う軸方向力FAXと接線方向に沿う接線方向力FTANが得られる。軸方向力FAXおよび接線方向力FTANは、それぞれ以下の(式5)、(式6)で表される。
【数5】
【数6】
【0032】
ヨーミスアライメント発生時、軸方向力FAXは、ブレード4aが上半部を回転する場合と下半部を回転する場合とでその大きさに差異が生じる。図6は、ヨーミスアライメント発生時の上半部を回転するブレード4aの断面図を示している。図7は、ヨーミスアライメント発生時の下半部を回転するブレード4aの断面図を示している。図6および図7において、破線で示されるV’inおよびU’inは、それぞれヨーミスアライメントがない場合の流入速度および相対流入速度を表している(図5におけるVinおよびUinに相当)。一方、図6および図7において、実線で示されるVinおよびUinは、それぞれヨーミスアライメント発生時の流入速度および相対流入速度を表している。
【0033】
図6に示すように、ヨーミスアライメント発生時に上半部を回転するブレード4aでは、ヨーミスアライメントがない場合と比較して、迎角αおよび流入角φが増大する。このため、揚力係数Cおよび抗力係数Cも増大する。一方、相対流入速度Uinは減少する。また、図7に示すように、ヨーミスアライメント発生時に下半部を回転するブレード4aでは、ヨーミスアライメントがない場合と比較して、迎角αおよび流入角φが減少する。一方、相対流入速度Uinは増大する。このため、上記の(式3)、(式4)および(式5)より、ヨーミスアライメント発生時には、ブレード4aが上半部を回転する場合と下半部を回転する場合とで軸方向力FAXに差異が生じる。この結果、ヨーミスアライメントの発生に起因して、軸受6に水平軸まわりのモーメント荷重Myが作用する。このモーメント荷重Myの向きおよび大きさは、揚力係数C、抗力係数Cおよび相対流入速度Uinによって異なる。
【0034】
本発明者らは、実際の風力発電装置の運転条件を用いて、傾き角度θおよび風速V(流入速度Vin)をパラメータとした数値シミュレーションを行い、軸受6に作用する水平軸まわりのモーメント荷重Mを算出した。図8図11は、各傾き角度θにおけるモーメント荷重Mを示すグラフである。図8は風速8m/s時のグラフであり、図9は風速12m/s時のグラフであり、図10は風速16m/s時のグラフであり、図11は風速20m/s時のグラフである。図8図11において、横軸は時間T(sec)を示し、縦軸は軸受6に作用する水平軸まわりのモーメント荷重M(kNm)を示している。図8図11において、それぞれ、θaは傾き角度θが-30度、θbは傾き角度θが-15度、θcは傾き角度θが+15度、θdは傾き角度θが+30度、θ0は傾き角度θが0度の場合のグラフを示している。なお、各グラフにおいて、風の乱れの影響は含まれていない。
【0035】
図8図11に示す各グラフにおいて、時間T=0秒(sec)は風力発電装置1の起動時を示している。各グラフにおいて、モーメント荷重Mは、起動後60秒程度まで変動しており、起動後60秒以降に定常状態になっている。
【0036】
図8に示すように、風速8m/s時には、定常状態において、傾き角度θa(-30度)およびで傾き角度θb(-15度)の場合のモーメント荷重Mの絶対値が、傾き角度θ0(0度)の場合のモーメント荷重Mの絶対値よりも小さくなっている。傾き角度θa(-30度)の場合のモーメント荷重Mの絶対値は、傾き角度θb(-15度)の場合のモーメント荷重Mの絶対値よりも小さくなっている。一方、傾き角度θc(+15度)および傾き角度θd(+30度)の場合のモーメント荷重Mの絶対値は、傾き角度θ0(0度)の場合のモーメント荷重Mの絶対値よりも大きくなっている。傾き角度θd(+30度)の場合のモーメント荷重Mの絶対値は、傾き角度θc(+15度)の場合のモーメント荷重Mの絶対値よりも大きくなっている。図9に示すように、風速12m/s時にも、定常状態において、上述した風速8m/s時と同じ傾向を示している。
【0037】
一方、図10に示すように、風速16m/s時には、各モーメント荷重Mは、起動後、定常状態に至るまで大きく変動しており、不安定な挙動を示している。そして、定常状態においては、傾き角度θa(-30度)および傾き角度θc(+15度)場合のモーメント荷重Mの絶対値が、傾き角度θ0(0度)の場合のモーメント荷重Mの絶対値よりも小さくなっている。また、傾き角度θb(-15度)および傾き角度θd(+30度)の場合のモーメント荷重Mの絶対値が、傾き角度θ0(0度)の場合のモーメント荷重Mの絶対値よりも大きくなっている。
【0038】
また、図11に示すように、風速20m/s時には、定常状態において、上述した風速8m/s時および上述した風速12m/sとは逆の傾向を示している。すなわち、傾き角度θc(+15度)および傾き角度θd(+30度)の場合のモーメント荷重Mの絶対値が、傾き角度θ0(0度)の場合のモーメント荷重Mの絶対値よりも小さくなっている。傾き角度θd(+30度)の場合のモーメント荷重Mの絶対値は、傾き角度θc(+15度)の場合のモーメント荷重Mの絶対値よりも小さくなっている。一方、傾き角度θa(-30度)およびで傾き角度θb(-15度)の場合のモーメント荷重Mの絶対値は、傾き角度θ0(0度)の場合のモーメント荷重Mの絶対値よりも大きくなっている。傾き角度θa(-30度)の場合のモーメント荷重Mの絶対値は、傾き角度θb(-15度)の場合のモーメント荷重Mの絶対値よりも大きくなっている。
【0039】
図8図11の結果を各風速における傾き角度θとモーメント荷重Mの関係としてまとめたグラフを図12に示す。図12において、モーメント荷重Mの値は、図8図11に示すモーメント荷重Mの定常状態のうち起動後95秒~100秒の間の平均値である。図12において、それぞれ、Vaは風速8m/s、Vbは風速12m/s、Vcは風速16m/s、Vdは風速20m/sの場合のグラフを示している。
【0040】
図12に示すように、風速Va(8m/s)の場合は、傾き角度θが-30度~+30度の範囲内において、傾き角度θが負の方向に大きいほど、モーメント荷重Mの絶対値が小さくなることが分かった。また、風速Vb(12m/s)の場合も、傾き角度θ=-30度~+30度の範囲内において、傾き角度θが負の方向に大きいほど、モーメント荷重Mの絶対値が小さくなることが分かった。一方、風速Vd(8m/s)の場合は、傾き角度θ=-20度~+20度の範囲内において、傾き角度θが正の方向に大きいほど、モーメント荷重Mの絶対値が小さくなることが分かった。そして、傾き角度θが+20度~+30度の範囲内にある場合に、モーメント荷重Mの絶対値が最も小さくなることが分かった。また、傾き角度θとモーメント荷重Mの関係の傾向は、が逆転するのは、風速Vc(16m/s)付近を境界として逆転していることが分かった。
【0041】
以上の検討結果に鑑み、本実施の形態による制御装置10は、ヨー駆動装置9を制御して、鉛直方向から見たときに回転軸4cの回転軸線Oが風向に対して傾くようにナセル3をヨー方向に回転させるようにしている。
【0042】
制御装置10は、風力発電装置1の起動時にヨー駆動装置9を制御して、鉛直方向から見たときに回転軸4cの回転軸線Oが風向に対して傾くようにナセル3をヨー方向に回転させてもよい。また、制御装置10は、風力発電装置1の運転中にヨー駆動装置9を制御して、鉛直方向から見たときに回転軸4cの回転軸線Oが風向に対して傾くようにナセル3をヨー方向に回転させてもよい。
【0043】
また、制御装置10は、風況計測器8により計測された風速に基づいて、回転軸線Oの風向に対する傾き角度(傾き角度θ)を決定してもよい。例えば、上記の検討結果に鑑み、制御装置10は、風速が所定風速Vtよりも小さい場合、傾き角度θを負の値に決定し、風速が所定風速Vtよりも大きい場合、傾き角度θを正の値に決定してもよい。換言すると、制御装置10は、風速が所定風速Vtよりも小さい場合、ナセル3をヨー方向における第1方向(負の方向)に回転させ、風速が所定風速Vtよりも大きい場合、ナセル3をヨー方向における第1方向とは反対側の第2方向(正の方向)に回転させてもよい。この所定風速Vtは、14m/s以上18m/s以下の風速であってもよい。
【0044】
また例えば、制御装置10は、図12に示すような、各風速における傾き角度θとモーメント荷重Mの関係のデータベースを記憶しておいてもよい。そして、制御装置10は、各風速における傾き角度θとモーメント荷重Mの関係を参照して、風況計測器8により計測した風速においてモーメント荷重Mが最小となるように傾き角度θを決定してもよい。
【0045】
制御装置10により決定される傾き角度θの絶対値は、5度以上であってもよく、10度以上であってもよく、15度以上であってもよい。制御装置10により決定される傾き角度θの絶対値は、30度以下であってもよく、35度以下であってもよく、40度以下であってもよい。
【0046】
一方、回転軸4cの回転軸線Oを風向に対して傾けた場合、発電機5の出力低下が懸念される。本発明者らは、図12のグラフと同条件下における発電機5の出力低下量Pを見積もった。図13は、各風速における傾き角度θと発電機5の出力低下量Pの関係を示す図である。図13において、それぞれ、Vaは風速8m/s、Vbは風速12m/s、Vcは風速16m/s、Vdは風速20m/sの場合のグラフを示している。
【0047】
図13に示すように、風速Va(8m/s)の場合、傾き角度θの絶対値が大きいほど出力が低下し、傾き角度θが±30度の場合には約80kWの出力低下が見られた。また、風速Vb(12m/s)の場合も、傾き角度θの絶対値が大きいほど出力が低下し、傾き角度θが±30度の場合には約230kWの出力低下が見られた。なお、図13においては、風速Vb(12m/s)の場合の傾き角度θが-15度~+15度の範囲内、並びに風速Vc(16m/s)および風速Vd(20m/s)の場合の全域において、出力が低下していない。これは、風速が大きいために風速に余裕があり、元々ピッチ角制御により定格出力を超えないように出力を抑えていたためである。
【0048】
上記を鑑み、制御装置10は、傾き角度θに応じた発電機5の出力低下量Pに基づいて、傾き角度θを決定してもよい。例えば、図13のグラフを参照すると、傾き角度θの絶対値が20度を超えると出力低下量Pが大きくなる。このため、制御装置10は、出力低下量Pを考慮し、-20度~+20度の範囲内で傾き角度θを決定するようにしてもよい。また例えば、制御装置10は、出力低下量が所定量(例えば50kW)を超えない範囲内で傾き角度θを決定するようにしてもよい。
【0049】
また例えば、制御装置10は、モーメント荷重Mと出力低下量Pをパラメータとした評価指標値Eに基づいて、傾き角度θを決定してもよい。評価指標値Eは、例えば、以下の(式7)により算出される。
【数7】
【0050】
ここで、Mは軸受6に作用する水平軸まわりのモーメント荷重、M0はヨーミスアライメントがない場合の水平軸まわりのモーメント荷重、Pは出力低下量、P0は定格出力である。また、k、kはそれぞれ重み係数である。
【0051】
上記の(式7)から、各風速における傾き角度θと評価指標値Eの関係を算出したグラフを図14に示す。図14において、それぞれ、Vaは風速8m/s、Vbは風速12m/s、Vcは風速16m/s、Vdは風速20m/sの場合のグラフを示している。
【0052】
上記の(式7)において、軸受6に作用する水平軸まわりのモーメント荷重Mおよび出力低下量Pは共に小さいほうが望ましい。したがって、評価指標値Eも小さいほうが望ましい。このため、例えば、評価指標値Eが最小値になるように傾き角度θを決定してもよい。図14においては、例えば、風速Vb(12m/s)の場合、図中に〇で示すように、傾き角度θが約-20度の場合に評価指標値Eが最小値を示している。このため、制御装置10は、評価指標値Eが最小値になる当該角度に傾き角度θを決定してもよい。
【0053】
このように、制御装置10は、上記の(式7)および図14に示すような評価指標値Eに基づいて、傾き角度θを決定してもよい。制御装置10は、図14に示すような、各風速における傾き角度θと評価指標値Eの関係の数式やデータベースを記憶しておいてもよい。そして、制御装置10は、各風速における傾き角度θと評価指標値Eの関係を参照して、評価指標値Eが最小値になるように傾き角度θを決定してもよい。
【0054】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用効果について説明する。
【0055】
風力発電装置1の起動時、まず、風況計測工程が実施される。風況計測工程においては、ナセル3の上部に配置された風況計測器8により、風向および風速が計測される。風況計測工程においては、突風等の影響を排除するため、所定時間の間、風向および風速が断続的に計測され、所定時間内の平均値としての風向および風速が計測される。
【0056】
次に、ナセル回転工程が実施される。ナセル回転工程は、風力発電装置1の通常運転前に実施される。すなわち、ナセル回転工程は、風力発電装置1の起動時に実施される。ナセル回転工程においては、制御装置10によりヨー駆動装置9が制御されて、鉛直方向から見たときに回転軸4cの回転軸線Oが風向に対して傾くようにナセル3をヨー方向に回転させる。
【0057】
上述したように、ナセル回転工程においては、風況計測工程で計測された風速に基づいて、回転軸線Oの風向に対する傾き角度θが決定される。ここで、風速が所定風速Vtよりも小さい場合、ナセル3をヨー方向における第1方向(負の方向)に回転させ、風速が所定風速Vtよりも大きい場合、ナセル3をヨー方向における第1方向とは反対側の第2方向(正の方向)に回転させる。また、上述したように、ナセル回転工程においては、傾き角度θに応じた発電機5の出力低下量Pに基づいて、傾き角度θが決定される。
【0058】
風力発電装置1の起動後、風力発電装置1の運転中にも、上述した風況計測工程が実施される。すなわち、風況計測器8による風向および風速の計測は、風力発電装置1の起動時から運転中まで断続的に行われる。
【0059】
次に、風力発電装置1の運転中にも、上述したナセル回転工程が実施される。すなわち、ナセル回転工程は、風力発電装置1の起動時から運転中まで断続的に行われ、途中で風向および風速が変化した場合でも、変化後の風向および風速に適した傾き角度θになるように、ナセル3がヨー方向に回転される。
【0060】
このように本実施の形態によれば、制御装置10によりヨー駆動装置9が制御されて、鉛直方向から見たときに回転軸4cの回転軸線Oが風向に対して傾くようにナセル3がヨー方向に回転される。このことにより、軸受6に、ロータ4の自重分のモーメント荷重Maとは反対方向の水平軸まわりのモーメント荷重Mbを作用させることができる。このため、軸受6に作用する水平軸まわりのモーメント荷重Mの絶対値を低減することができる。この結果、回転軸4cを支持する軸受6の損傷を防止することができる。
【0061】
また、本実施の形態によれば、風速に基づいて、傾き角度θが決定される。上述したように、本発明者らの検討によって、風速に応じて、傾き角度θに対するモーメント荷重Mの増減の傾向が異なることが分かった。このため、風速に基づいて傾き角度θを決定することで、モーメント荷重Mの絶対値を効果的に低減することができる。この結果、回転軸4cを支持する軸受6の損傷を確実に防止することができる。
【0062】
とりわけ、本実施の形態によれば、風速が所定風速Vtよりも小さい場合、ナセル3がヨー方向における第1方向に回転され、風速が所定風速Vtよりも大きい場合、ナセル3がヨー方向における第1方向とは反対側の第2方向に回転される。上述したように、本発明者らの検討によって、所定風速を境界にして傾き角度θに対するモーメント荷重Mの増減の傾向が変化することが分かった。このため、所定風速を閾値としてナセル3の回転方向を変更することで、モーメント荷重Mの絶対値を効果的に低減することができる。この結果、回転軸4cを支持する軸受6の損傷を確実に防止することができる。
【0063】
また、本実施の形態によれば、傾き角度θに応じた発電機5の出力低下量Pに基づいて、傾き角度θが決定される。上述したように、回転軸4cの回転軸線Oを風向に対して傾けた場合、発電機5の出力が低下し得る。このため、出力低下量Pに基づいて傾き角度θを決定することで、発電機5の出力低下を抑制しつつ、回転軸4cを支持する軸受6の損傷を防止することができる。
【0064】
また、本実施の形態によれば、制御装置10により、風力発電装置1の起動時にヨー駆動装置9が制御されて、鉛直方向から見たときに回転軸4cの回転軸線Oが風向に対して傾くようにナセル3がヨー方向に回転される。すなわち、ナセル回転工程が、風力発電装置1の起動時に実施される。このことにより、風力発電装置1の起動時から運転に至るまでの間および風力発電装置1の運転中においても、軸受6に作用する水平軸まわりのモーメント荷重Mの絶対値を低減することができる。このため、回転軸4cを支持する軸受6の損傷を効果的に防止することができる。
【0065】
また、本実施の形態によれば、制御装置10により、風力発電装置1の運転中にヨー駆動装置9が制御されて、鉛直方向から見たときに回転軸4cの回転軸線Oが風向に対して傾くようにナセル3がヨー方向に回転される。すなわち、ナセル回転工程が、風力発電装置1の運転中に実施される。このことにより、風力発電装置1の運転中に風向および風速が変化した場合においても、変化後の風向および風速に適した傾き角度θになるように、ナセル3をヨー方向に回転させることができる。このため、風力発電装置1の運転中において、モーメント荷重Mの絶対値を効果的に低減することができる。この結果、回転軸4cを支持する軸受6の損傷を効果的に防止することができる。
【0066】
なお、上述した本実施の形態においては、制御装置10が、風向および風速に基づいて自動的に傾き角度θを決定し、ナセル3をヨー方向に回転させる例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、例えば、作業員が、風向および風速に基づいて傾き角度θを決定し、その傾き角度θでナセル3をヨー方向に回転させるように制御装置10に指示してもよい。出力低下量Pについても同様に、作業員が、発電機5の出力低下量Pに基づいて傾き角度θを決定し、その傾き角度θでナセル3をヨー方向に回転させるように制御装置10に指示してもよい。
【0067】
以上述べた実施の形態によれば、回転軸を支持する軸受の損傷を防止することができる。
【0068】
以上、本発明のいくつかの実施の形態を説明したが、これらの実施の形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施の形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0069】
1:風力発電装置、2:タワー、3:ナセル、4:ロータ、4a:ブレード、4b:ハブ、4c:回転軸、5:発電機、6:軸受、7:変速機構、8:風況計測器、9:ヨー駆動装置、10:制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14