(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126423
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】接合部材、および接合部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 65/02 20060101AFI20240912BHJP
【FI】
B29C65/02
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034790
(22)【出願日】2023-03-07
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-08-20
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】加茂 宗太
(72)【発明者】
【氏名】山田 佑樹
(72)【発明者】
【氏名】安藤 功治
【テーマコード(参考)】
4F211
【Fターム(参考)】
4F211AD03
4F211AD16
4F211AG21
4F211AH31
4F211AR06
4F211TA03
4F211TA06
4F211TC23
4F211TD13
4F211TN11
4F211TN22
4F211TN26
(57)【要約】
【課題】第1部材と第2部材との強固な接合が困難な場合であっても、第1部材と第2部材との接合強度を高めることができるようにした接合部材を提供する。
【解決手段】第1部材、第2部材、および第3部材を備え、第1部材と第2部材とは、第3部材を介して接合されている。第1部材の接合面には、複数の接続孔が設けられている。
接続孔は、接合面のうちの互いに異なる2つの箇所同士を第1部材の内部の空間を経由することによって接続するための孔である。第1部材の接合面は、第1部材のうちの第2部材と対向する面である。第2部材は、樹脂を含み、第3部材は、樹脂部材と、繊維部材と、を含む。繊維部材は、接続孔に挿入されて且つ2つの箇所の一方から他方へと延びる部材であり、接合面には、繊維部材を含んだ樹脂が接している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材、第2部材、および第3部材を備え、
前記第1部材と前記第2部材とは、前記第3部材を介して接合されており、
前記第1部材の接合面には、複数の接続孔が設けられており、
前記接続孔は、前記接合面のうちの互いに異なる2つの箇所同士を前記第1部材の内部の空間を経由することによって接続するための孔であり、
前記第1部材の接合面は、前記第1部材のうちの前記第2部材と対向する面であり、
前記第2部材は、樹脂を含み、
前記第3部材は、樹脂部材と、繊維部材と、を含み、
前記繊維部材は、前記接続孔に挿入されて且つ前記2つの箇所の一方から他方へと延びる部材であり、
前記接合面には、前記繊維部材を含んだ樹脂が接している接合部材。
【請求項2】
前記第3部材は、前記接続孔に挿入されている部分と、前記接合面に接触している部分とが、いずれも樹脂部材および前記繊維部材を含んだ複合材であり、
前記第2部材は、前記第3部材の前記樹脂部材と接合されている請求項1記載の接合部材。
【請求項3】
前記第2部材は、繊維および樹脂を含んだ複合材である請求項1記載の接合部材。
【請求項4】
前記第1部材は、金属製の部材である請求項1記載の接合部材。
【請求項5】
前記接続孔は、前記第1部材と前記第2部材との接合面に直交する方向に対して斜めに形成されている請求項1記載の接合部材。
【請求項6】
前記2つの箇所を接続する前記接続孔は、第1孔と、第2孔とを含み、
前記第1孔は、前記2つの箇所のうちの一方に設けられて且つ前記第1部材の前記接合面と前記接合面の裏面とを貫通する孔であり、
前記第2孔は、前記2つの箇所のうちの他方に設けられて且つ前記第1部材の前記接合面と前記接合面の裏面とを貫通する孔であり、
前記繊維部材は、前記対向する面をつたって前記第1孔および前記第2孔の2つのうちの一方から他方へと延びるように配置されている請求項1記載の接合部材。
【請求項7】
前記2つの箇所を接続する前記接続孔は、前記接合面の裏面まで貫通することなく前記第1部材の内部空間を介して前記2つの箇所を接続する孔である請求項1記載の接合部材。
【請求項8】
前記第1部材のうちの前記第2部材との接合面の裏面も前記第2部材との接合面となっている請求項6記載の接合部材。
【請求項9】
前記接続孔は、第1方向接続孔および第2方向接続孔を含み、
前記第1方向接続孔は、前記第1部材の接合面のうちの互いに異なる第1箇所および第2箇所を接続するための孔であり、
前記第2方向接続孔は、前記第1部材の接合面のうちの互いに異なる第3箇所および第4箇所を接続するための孔であり、
前記第1箇所および前記第2箇所の2つのうちの一方から他方へと延びる方向と、前記第3箇所および前記第4箇所の2つのうちの一方から他方へと延びる方向とが異なっている請求項1記載の接合部材。
【請求項10】
前記繊維部材が挿入される前記接続孔が前記接合面に形成される密度は、前記第1部材および前記第2部材の2つの部材のうちの少なくとも1つの端部の方が、前記端部に囲まれた内部と比較して高い請求項1記載の接合部材。
【請求項11】
複数の接続孔が形成された第1部材を形成する工程と、
第1部材の接合面に前記接続孔によって形成された開口部のうちの互いに異なる2つの開口部の一方から他方へと前記接続孔を経由して第3部材を挿入する挿入工程と、
前記第1部材と第2部材との間に前記第3部材を挟み込むことによって、前記第3部材と前記第2部材とを接合する接合工程と、を有し、
前記第2部材は、樹脂を含み、
前記第3部材は、樹脂部材と、繊維部材と、を含み、
前記挿入工程は、前記繊維部材を前記接続孔に挿入する工程であり、
前記接合工程は、第2部材を、前記第3部材の前記樹脂部材と接合させる工程である接合部材の製造方法。
【請求項12】
前記接合工程において、前記繊維部材の両側から前記繊維部材に張力を付与する請求項11記載の接合部材の製造方法。
【請求項13】
前記第3部材は、前記接続孔に挿入されている部分と、前記第2部材と接合されている部分とが、いずれも前記樹脂部材および前記繊維部材を含んだ複合材であり、
前記挿入工程は、前記第3部材となるテープ状部材をその両側から引っ張りつつ加熱する工程を含む請求項11記載の接合部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合部材、および接合部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば下記特許文献1には、長繊維強化プラスチック板と金属板とを接着剤を介して一体化した板状複合材料(接合部材)が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の場合、金属板と接着剤との間に異物が混入すると、接合強度が不十分となる懸念がある。また、金属板と接着剤との材質の相違に起因した線膨張係数の相違に起因して、接合強度が不十分となる懸念がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下、上記課題を解決するための手段およびその作用効果について記載する。
1.第1部材、第2部材、および第3部材を備え、前記第1部材と前記第2部材とは、前記第3部材を介して接合されており、前記第1部材の接合面には、複数の接続孔が設けられており、前記接続孔は、前記接合面のうちの互いに異なる2つの箇所同士を前記第1部材の内部の空間を経由することによって接続するための孔であり、前記第1部材の接合面は、前記第1部材のうちの前記第2部材と対向する面であり、前記第2部材は、樹脂を含み、前記第3部材は、樹脂部材と、繊維部材と、を含み、前記繊維部材は、前記接続孔に挿入されて且つ前記2つの箇所の一方から他方へと延びる部材であり、前記接合面には、前記繊維部材を含んだ樹脂が接している接合部材である。
【0006】
上記構成では、第1部材の接合孔に第3部材の繊維部材が挿入されることによって、第1部材と第3部材とを強固に結びつけることができる。そして、第1部材と第2部材とを、第3部材を介して接合する。一方、第1部材の接合面には、繊維部材を含んだ樹脂が接していて且つ、第2部材は樹脂を含んでいる。そのため、第3部材は、繊維部材を含んだ樹脂によって第2部材と接合されている。そのため、第2部材に接合される第3部材は、第2部材との接合にとって相性が良い。そのため、第1部材と第2部材との強固な接合が困難な場合であっても、第1部材と第2部材との接合強度を高めることができる。
【0007】
さらに、接合面の法線方向に加わる力によって、第1部材と第3部材とが剥離したとしても、接合孔に挿入されている繊維部材によって、第1部材と第2部材とが完全に分離することが十分に抑制される。
【0008】
2.前記第3部材は、前記接続孔に挿入されている部分と、前記接合面に接触している部分とが、いずれも樹脂部材および前記繊維部材を含んだ複合材であり、前記第2部材は、前記第3部材の前記樹脂部材と接合されている上記1記載の複合部材である。
【0009】
上記構成では、第3部材を、樹脂部材と繊維部材との複合材とした。これにより、部分的に繊維部材のみの部分を設ける場合等と比較してその形成が容易となる。
3.前記第2部材は、繊維および樹脂を含んだ複合材である上記1または2記載の接合部材である。
【0010】
上記構成では、第2部材を繊維および樹脂を含んだ複合材とすることにより、樹脂のみから形成する場合と比較して、第2部材の強度を高めることができる。
4.前記第1部材は、金属製の部材である上記1記載の接合部材である。
【0011】
上記構成では、第1部材が金属製の部材であることから、第1部材と第2部材とを接着剤等によって接合する場合には、接合強度を高めることが困難である。そのため、第3部材を接続孔に挿入する上記手法の利用価値が特に高い。
【0012】
5.前記接続孔は、前記第1部材と前記第2部材との接合面に直交する方向に対して斜めに形成されている上記1記載の接合部材である。
接続孔が接合面に直交する場合、接合面の2つの箇所の一方から他方へと接合孔を介して繊維部材を延ばすことが困難となる。また、接合面の接続孔による開口部において繊維部材に加わる力が大きくなりやすい。そこで、上記構成では、接続孔を接合面に直交する方向に対して斜めに形成する。これにより、上記問題を緩和できる。
【0013】
6.前記2つの箇所を接続する前記接続孔は、第1孔と、第2孔とを含み、前記第1孔は、前記2つの箇所のうちの一方に設けられて且つ前記第1部材の前記接合面と前記接合面の裏面とを貫通する孔であり、前記第2孔は、前記2つの箇所のうちの他方に設けられて且つ前記第1部材の前記接合面と前記接合面の裏面とを貫通する孔であり、前記繊維部材は、前記対向する面をつたって前記第1孔および前記第2孔の2つのうちの一方から他方へと延びるように配置されている上記1~5のいずれか1つに記載の接合部材である。
【0014】
上記構成では、繊維部材が接合面の裏面をつたって第1孔および第2孔を介して接合面に繋がっている。そのため、第1部材が第2部材から離れようとする場合、繊維部材が上記裏面に力を及ぼす。これにより、第1部材が第2部材から離れることを抑制できる。
【0015】
7.前記2つの箇所を接続する前記接続孔は、前記接合面の裏面まで貫通することなく前記第1部材の内部空間を介して前記2つの箇所を接続する孔である上記1~5のいずれか1つに記載の接合部材である。
【0016】
上記構成では、繊維部材が第1部材の内部空間を介して接合面の互いに異なる2つの箇所の一方から他方へと延びている。そのため、第1部材が第2部材から離れようとする場合、繊維部材が接続孔の内壁に力を及ぼす。これにより、第1部材が第2部材から離れることを抑制できる。
【0017】
8.前記第1部材のうちの前記第2部材との接合面の裏面も前記第2部材との接合面となっている上記6記載の接合部材である。
上記構成では、第1部材の両面を第2部材によって挟み込むようにしつつ、第1部材と第2部材とを接合できる。
【0018】
9.前記接続孔は、第1方向接続孔および第2方向接続孔を含み、前記第1方向接続孔は、前記第1部材の接合面のうちの互いに異なる第1箇所および第2箇所を接続するための孔であり、前記第2方向接続孔は、前記第1部材の接合面のうちの互いに異なる第3箇所および第4箇所を接続するための孔であり、前記第1箇所および前記第2箇所の2つのうちの一方から他方へと延びる方向と、前記第3箇所および前記第4箇所の2つのうちの一方から他方へと延びる方向とが異なっている上記1~8のいずれか1つに記載の接合部材である。
【0019】
繊維部材が接合面の互いに異なる2つの箇所の一方から他方へと延びる方向が限られる場合、その方向に加わる力に対する強度と比較して、その方向に直交する方向に加わる力に対する強度が低くなる懸念がある。そこで上記構成では、上記延びる方向として2つの方向を含めることにより、延びる方向が1つに限られる場合と比較して、接合強度を高めることができる。
【0020】
10.前記繊維部材が挿入される前記接続孔が前記接合面に形成される密度は、前記第1部材および前記第2部材の2つの部材のうちの少なくとも1つの端部の方が、前記端部に囲まれた内部と比較して高い上記1~9のいずれか1つに記載の接合部材である。
【0021】
接続孔に繊維部材を挿入することによる接合強度は、接続孔を第1部材と第2部材との少なくとも一方の端部に設ける場合の方が、内部に設ける場合よりも高めやすい。そこで上記構成では、上記端部における接続孔の形成される密度を高めることにより、第1部材と第2部材との接合強度を効果的に高めることができる。
【0022】
また、第1部材と第2部材との接続体は、端部から剥離が生じやすい。そのため、端部において接続孔に繊維部材を挿入する密度を高めることにより、剥離が生じることを抑制できる。そのため、上記構成では、第1部材と第2部材との接合強度を効果的に高めることができる。
【0023】
11.複数の接続孔が形成された第1部材を形成する工程と、第1部材の接合面に前記接続孔によって形成された開口部のうちの互いに異なる2つの開口部の一方から他方へと前記接続孔を経由して第3部材を挿入する挿入工程と、前記第1部材と第2部材との間に前記第3部材を挟み込むことによって、前記第3部材と前記第2部材とを接合する接合工程と、を有し、前記第2部材は、樹脂を含み、前記第3部材は、樹脂部材と、繊維部材と、を含み、前記挿入工程は、前記繊維部材を前記接続孔に挿入する工程であり、前記接合工程は、第2部材を、前記第3部材の前記樹脂部材と接合させる工程である接合部材の製造方法である。
【0024】
上記方法では、第1部材の接合孔に第3部材の繊維部材を挿入することによって、第1部材と第3部材とを強固に結びつけることができる。そして、第1部材と第2部材とを、第3部材を介して接合する。一方、第2部材は樹脂を含んで且つ、第3部材の樹脂部材と接合される。そのため、第2部材に接合される第3部材は、第2部材との接合にとって相性が良い。そのため、第1部材と第2部材との強固な接合が困難な場合であっても、第1部材と第2部材との接合強度を高めることができる。
【0025】
12.前記接合工程において、前記繊維部材の両側から前記繊維部材に張力を付与する上記11記載の接合部材の製造方法である。
上記構成では、繊維部材の両側から張力を付与することにより、第3部材と第1部材との間に隙間が生じることを抑制できる。
【0026】
13.前記第3部材は、前記接続孔に挿入されている部分と、前記第2部材と接合されている部分とが、いずれも前記樹脂部材および前記繊維部材を含んだ複合材であり、前記挿入工程は、前記第3部材となるテープ状部材をその両側から引っ張りつつ加熱する工程を含む上記11記載の接合部材の製造方法である。
【0027】
上記構成では、挿入工程において、テープ状部材の両側から張力を付与することにより、第3部材と第1部材との間に隙間が生じることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】第1の実施形態にかかる接合部材の断面構成を示す断面図である。
【
図2】同実施形態にかかる接合部材の平面図である。
【
図3】同実施形態にかかる接合部材の製造工程を示す流れ図である。
【
図4(a)】同実施形態にかかる接合部材の製造工程を示す断面図である。
【
図4(b)】同実施形態にかかる接合部材の製造工程を示す断面図である。
【
図4(c)】同実施形態にかかる接合部材の製造工程を示す断面図である。
【
図5】第2の実施形態にかかる接合部材の製造工程を示す流れ図である。
【
図6】第3の実施形態にかかる接合部材の平面図である。
【
図7】同実施形態にかかる接合部材の製造工程の一部の断面図である。
【
図8】第4の実施形態にかかる接合部材の平面図である。
【
図9】第5の実施形態にかかる接合部材の断面構成を示す断面図である。
【
図10】第6の実施形態にかかる接合部材の断面構成を示す断面図である。
【
図11】第7の実施形態が解決しようとする課題を示す断面図である。
【
図12】同実施形態にかかる接合部材の製造工程の一部の断面図である。
【
図13】第8の実施形態にかかる接合部材の製造工程の一部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
<第1の実施形態>
以下、第1の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
「接合部材の構成」
図1に、接合部材10の断面構成を示す。なお、接合部材10は、たとえば乗り物のボディを構成する部材であってもよい。特に、接合部材10は、航空機の機体、航空機の胴体、航空機の翼等の航空機のボディを構成する部材であってもよい。
【0030】
図1に示すように、接合部材10は、強化繊維プラスチック部材20と、金属部材30と、接合用部材40とを備える。
強化繊維プラスチック部材20は、一例として炭素繊維強化熱可塑性樹脂(CFRTP)によって構成されている。金属部材30は、一例としてチタンによって構成されている。接合用部材40は、強化繊維プラスチック部材20と金属部材30とを接合するための部材である。換言すれば、互いに異なる材質の部材同士を接合するための部材である。接合用部材40は、一例としてCFRTPによって構成されている。
【0031】
図1には、金属部材30と強化繊維プラスチック部材20との積層方向をz軸方向としている。そして、z軸方向に直交する方向を、x軸方向およびy軸方向としている。
図1に示す接合部材10は、一例として、金属部材30および強化繊維プラスチック部材20が、いずれもx軸およびy軸によって張られる平面に平行な板状部材となっている。
【0032】
金属部材30には、複数の接続孔32が設けられている。
図1には、複数の接続孔32を区別すべく、「32(a),32(b),32(c),32(d)」と記載している。カッコ内のアルファベットは、接続孔32を識別するためのラベル変数である。
【0033】
複数の接続孔32は、いずれも金属部材30のうちの接合面30aおよび裏面30b間を貫通する。金属部材30のうちの接合面30aは、接合用部材40に対向する面である。裏面30bは、金属部材30における接合面30aの裏面である。接続孔32は、z軸に対して斜めに形成されている。換言すれば、金属部材30の厚さ方向に対して斜めに形成されている。
【0034】
接合用部材40は、強化繊維プラスチック部材20および金属部材30に挟まれた部分と、接続孔32に充填されている部分とを含む。接合用部材40のうちの1つの接続孔32に充填されている部分は、金属部材30の裏面30bを介して、隣接する別の接続孔32に充填されている部分とつながっている。すなわち、接続孔32のうち隣接する第1孔、および第2孔を、それぞれ、接続孔32(a),32(b)とすると、接合用部材40のうちの接続孔32(a),32(b)を介して金属部材30の裏面から露出する部分は互いに連結されている。接続孔32(a),32(b)の出入り口同士の距離は、接合面30a側と比較して裏面30b側の方が小さくなっている。これにより、
図1に示すように、接合用部材40のxz平面における断面形状は、台形形状部分またはアーチ形状部分を有する。
【0035】
同様に、接合用部材40のうちの接続孔32(c),32(d)を介して金属部材30の裏面から露出する部分は互いに連結されている。接続孔32(c),32(d)の出入り口同士の距離は、接合面30a側と比較して裏面30b側の方が小さくなっている。
【0036】
図2に、金属部材30を、裏面30b側から見た平面図を示す。
図2に示すように、金属部材30の裏面30bからは、接続孔32を介して間欠的に接合用部材40が露出している。接合用部材40は、x軸方向に沿って形成された接続孔32のうちの隣接する2つずつをペアとして、その一方と他方とを接続する。すなわち、接合用部材40は、裏面30bのうちの隣接する2つの接続孔32(a),32(b)の間をつたってそれらを接続する。また、接合用部材40は、裏面30bのうちの隣接する2つの接続孔32(c),32(d)の間をつたってそれらを接続する。一方、接合用部材40は、裏面30bのうちの隣接する2つの接続孔32(b),32(c)の間には配置されていない。そして、接合用部材40に含まれる炭素繊維は、接合面30aおよび裏面30bを往復することによって蛇行しつつx軸に沿って延びている。
【0037】
「接合部材の製造工程」
図3に、接合部材10の製造工程を示す。
図3に示す一連の工程においては、まず金属部材30の原型となる金属部品を製造する(S10)。すなわち、金属材料を、所定の形状、寸法を有した金属部品に成形する。次に、金属部品にスティッチ孔(接続孔32)を形成することによって、金属部材30を製造する(S12)。
図4(a)に、S12の工程によって形成された金属部材30の断面構造を示す。
【0038】
図3に戻り、スティッチ孔に、接合用部材40の材料となるプリプレグテープを挿入する(S14)。
図4(b)に、S14の工程を例示する。図示されるように、プリプレグテープ42が接続孔32を介して金属部材30の接合面30aおよび裏面30bを往復しつつx軸方向に延びるように蛇行して配置される。なお、プリプレグテープ42に含まれる炭素繊維を一方向材として且つ、炭素繊維がx軸方向に引きそろえられて蛇行して配置されることが望ましい。
【0039】
図3に戻り、強化繊維プラスチック部材20の原型となる複合材母材を形成する(S16)。そして、複合材母材とプリプレグテープとを接合する(S18)。
図4(c)に、S18の工程を示す。
図4に示すように、金属部材30の接合面30a側に複合材母材22を配置し、複合材母材22のうち接合面30aに対向する面の裏面と金属部材30の裏面30bとの双方から圧力を加える。この際、熱を加える。ここでは、プリプレグテープ42の温度を、プリプレグテープ42が変形容易となるように軟化する温度となるように加熱する。なお、加熱に用いる装置は、赤外線を照射する装置であってもよい。また、加熱に用いる装置は、超音波を照射する装置であってもよい。また、加熱する装置は、はんだごてであってもよい。
【0040】
S18の工程によって、プリプレグテープ42のうちの樹脂成分が金属部材30と複合材母材22との隙間を埋めるように薄く広がる。これにより、プリプレグテープ42のうちの樹脂成分が複合材母材22と接合される。また、プリプレグテープ42のうちの樹脂成分が金属部材30と接合される。これにより、プリプレグテープ42の樹脂成分を介して、複合材母材22と金属部材30とが接合される。また、この工程によって、複合材母材22が、最終的な強化繊維プラスチック部材20となる。
【0041】
「本実施形態の作用および効果」
接合部材10は、強化繊維プラスチック部材20と金属部材30との2つの異種材料による部材同士を接合した部材である。金属部材30は、複数の接続孔32によって、接合面30aおよび裏面30b間が貫通されている。そして、接合用部材40の炭素繊維が接合面30aおよび裏面30b間を蛇行しつつ接続孔32を介して金属部材30の一定の方向に沿って延びている。また、接合用部材40の樹脂は、強化繊維プラスチック部材20と接合されている。
【0042】
ここで、強化繊維プラスチック部材20と、接合用部材40とは同種の材料よりなる。そのため、それらの線膨張係数の相違等は、強化繊維プラスチック部材20と金属部材30との線膨張係数の相違よりも小さい。そのため、強化繊維プラスチック部材20と金属部材30とを直接接合する場合の接合強度よりも、強化繊維プラスチック部材20と接合用部材40とを直接接合する場合の接合強度の方が高い。また、接合用部材40と金属部材30とを直接接合する場合の接合強度よりも、強化繊維プラスチック部材20と接合用部材40とを直接接合する場合の接合強度の方が高い。このように、強化繊維プラスチック部材20と接合用部材40との接合強度が高いために、強化繊維プラスチック部材20と接合用部材40の炭素繊維とが一体不可分となっているとみなせる。そのため、強化繊維プラスチック部材20と金属部材30とが、接合用部材40の炭素繊維によって縫合されているとみなせる。そのため、強化繊維プラスチック部材20と金属部材30とを分離させようとする力が働いても、炭素繊維がその力に十分に抗することができる。したがって、強化繊維プラスチック部材20と金属部材30とを直接接合する場合と比較すると、強化繊維プラスチック部材20と金属部材30とをより強固に接合できる。
【0043】
以上説明した本実施形態によれば、さらに以下に記載する作用および効果が得られる。
(1)接続孔32をz軸に対して斜めに形成した。そして、隣接する2つの接続孔32のうち、裏面30b側において炭素繊維によって接続される2つの接続孔については、接合面30a側における接続孔32間の距離よりも裏面30b側における接続孔32間の距離を小さくした。また、隣接する2つの接続孔32のうち、裏面30b側で炭素繊維によって接続されない2つの接続孔については、裏面30b側における接続孔32間の距離よりも接合面30a側における接続孔32間の距離を小さくした。これにより、一定方向に沿った複数の接続孔32に炭素繊維を挿入することが容易となる。さらに、接続孔32に充填されている接合用部材40と金属部材30の裏面30b側に露出している接合部材との接続部分に加わる力を軽減できる。また、接続孔32に充填されている接合用部材40と金属部材30の接合面30a側に露出している接合部材との接続部分に加わる力を軽減できる。
【0044】
<第2の実施形態>
以下、第2の実施形態について、第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0045】
本実施形態では、強化繊維プラスチック部材20を、熱硬化性樹脂と炭素繊維との複合材とする。
図5に、本実施形態にかかる接合部材10の製造工程を示す。なお、
図5において、
図3に示した工程に対応する工程については、便宜上、同一のステップ番号を付与している。
【0046】
図5に示す一連の処理においては、S14の工程の後に、複合材母材22の成型と、成形によって生成される強化繊維プラスチック部材20と、金属部材30に接合された接合用部材40との接合とを実行する(S20)。このように、強化繊維プラスチック部材20と接合用部材40とをいっしょに成形することにより、強化繊維プラスチック部材20を熱硬化性樹脂と炭素繊維との複合材とする場合であっても、接着剤を用いることなくそれらを接合できる。また、この工程によれば、複合材母材22の成型工程と、金属部材30の接合工程とを同時に行うこともできる。
【0047】
<第3の実施形態>
以下、第3の実施形態について、第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0048】
図6に、本実施形態にかかる接合部材10を金属部材30側から見た図を示す。
図6に示すように、本実施形態では、炭素繊維がy軸方向に沿って延びる接合用部材40(a)と、炭素繊維がx軸方向に沿って延びる接合用部材40(b)と、を備える。すなわち、炭素繊維がy軸方向に沿って延びる接合用部材40(a)は、y軸方向において隣接する接続孔32(a)および接続孔32(b)の2つのうちの一方から他方へと延びる炭素繊維を備える。また、炭素繊維がx軸方向に沿って延びる接合用部材40(b)は、x軸方向において隣接する接続孔32(c)および接続孔32(d)の2つのうちの一方から他方へと延びる炭素繊維を備える。
【0049】
図7に、S14の工程における
図6の7-7断面を示す。
図7には、炭素繊維がx軸方向に沿って延びる接合用部材40(b)となるプリプレグテープ42(b)を接続孔32に通した後に、炭素繊維がy軸方向に沿って延びる接合用部材40(a)となるプリプレグテープ42(a)を接続孔32に通す例を示した。
【0050】
こうした構成によれば、強化繊維プラスチック部材20と金属部材30とが、接合用部材40の炭素繊維によって、互いに直交する2つの方向に沿って縫合される。そのため、強化繊維プラスチック部材20と金属部材30とに様々な方向から力が加わっても、それらが接合した状態をより確実に維持できる。
【0051】
<第4の実施形態>
以下、第4の実施形態について、第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0052】
図8に、本実施形態にかかる接合部材10を金属部材30側から見た図を示す。
図8に示すように、本実施形態において、強化繊維プラスチック部材20および金属部材30が互いに対向する領域において、接合用部材40が金属部材30の裏面30b側に露出する密度を領域によって異ならせている。詳しくは、強化繊維プラスチック部材20および金属部材30が互いに対向する領域の縁部に沿って、接合用部材40を金属部材30の裏面30b側に露出させている。換言すれば、強化繊維プラスチック部材20と金属部材30とを接合用部材40によって縫合する領域を、強化繊維プラスチック部材20および金属部材30が互いに対向する領域の縁部に沿って設けている。
【0053】
これにより、強化繊維プラスチック部材20および金属部材30を接合するうえで特に有効な領域を用いて強化繊維プラスチック部材20と金属部材30とを接合用部材40によって縫合することができる。そのため、強化繊維プラスチック部材20および金属部材30を効率的に縫合できる。
【0054】
<第5の実施形態>
以下、第5の実施形態について、第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0055】
図9に、本実施形態にかかる接合部材10の断面構成を示す。本実施形態の金属部材30の接続孔32は、接合面30aと裏面30bとを貫通する孔となっていない。接続孔32は、接合面30aの互いに異なる2つの開口部を貫通する。すなわち、接続孔32は、たとえば、x軸方向において互いに隣接する一対の開口部POa,PObを貫通する。そして、接続孔32には、接合用部材40が充填されている。詳しくは、接続孔32に沿って接合用部材40の炭素繊維が延びている。
図9に示す例では、接合用部材40の炭素繊維が複数の接続孔32を通って蛇行しながらx軸方向に延びている。
【0056】
こうした構成においても、強化繊維プラスチック部材20と金属部材30とを接合用部材40の炭素繊維によって縫合できる。
<第6の実施形態>
以下、第6の実施形態について、第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0057】
図10に、本実施形態にかかる接合部材10の断面構成を示す。本実施形態においては、金属部材30のz軸に直交する面の両面が接合面となっている。すなわち、金属部材30の上記両面が、接合用部材40を介して強化繊維プラスチック部材20に対向している。
【0058】
金属部材30には、x軸方向に沿って複数の接続孔32が形成されている。接続孔32は、いずれも金属部材30を貫通している。また、接続孔32は、z軸に対して斜めに形成されている。そして、接続孔32には、接合用部材40が充填されている。詳しくは、接合用部材40の炭素繊維が、接続孔32を介して蛇行しながらx軸方向に延びている。
【0059】
こうした構成によれば、金属部材30の2つの面のそれぞれが、接合用部材40の炭素繊維によって強化繊維プラスチック部材20に縫合される。
<第7の実施形態>
以下、第7の実施形態について、第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0060】
図11に、上記S18の工程において、接合用部材40を金属部材30の裏面30bに十分に接触させることができない場合を例示する。
図11は、
図1に対応する断面図である。こうした状態となる場合、金属部材30と強化繊維プラスチック部材20との接合強度が低下するおそれがある。
【0061】
そこで本実施形態では、S18の工程を以下のようにする。
図12に、本実施形態にかかるS18の工程を示す。
図12に示すように、本実施形態では、プリプレグテープ42の両端部をクリップ50でつかんで互いに逆方向に引っ張る。
図12には、プリプレグテープ42の両端の張力の働く方向を白抜きの矢印で示した。これはx軸の互いに逆な方向である。
【0062】
これにより、接合用部材40と金属部材30の裏面30bとの間に隙間が生じることを抑制できる。
<第8の実施形態>
以下、第8の実施形態について、第7の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0063】
本実施形態では、S14の工程において、プリプレグテープ42と金属部材30の裏面30bとを密着させる。
図13に、本実施形態にかかるS14の工程を示す。
図13に示すように、本実施形態では、プリプレグテープ42の両端部をクリップ50でつかんで互いに逆方向に引っ張る。
図13には、プリプレグテープ42の両端の張力の働く方向を白抜きの矢印で示した。これはx軸の互いに逆な方向である。さらに、プリプレグテープ42が軟化するようにプリプレグテープ42を加熱する。なお、加熱に用いる装置は、赤外線を照射する装置であってもよい。また、加熱に用いる装置は、超音波を照射する装置であってもよい。また、加熱する装置は、はんだごてであってもよい。
【0064】
これにより、S14の工程の段階で、プリプレグテープ42を金属部材30の裏面30bに密着させる。
<対応関係>
上記実施形態における事項と、上記「課題を解決するための手段」の欄に記載した事項との対応関係は、次の通りである。以下では、「課題を解決するための手段」の欄に記載した解決手段の番号毎に、対応関係を示している。[1]第1部材は、金属部材30に対応する。第2部材は、強化繊維プラスチック部材20に対応する。第3部材は、接合用部材40に対応する。「接合面のうち互いに異なる2つの箇所」は、
図1に示す金属部材30のうちの接続孔32(a)による接合面30a側の開口部と接続孔32(b)による接合面30a側の開口部とに対応する。[2]接合用部材40が、樹脂部材および繊維部材の複合材であることに対応する。[3]強化繊維プラスチック部材20が、炭素繊維を含んだ複合材であることに対応する。[4]金属部材30がチタン製であることに対応する。[5]接合面に直交する方向は、
図1のz方向に対応する。接続孔が斜めに形成されていることは、接続孔32がz方向に対してx方向に傾いていることに対応する。[6]第1孔は、接続孔32(a)に対応する。第2孔は、接続孔32(b)に対応する。[7]
図9に対応する。[8]
図10に対応する。[9]第1方向接続孔は、接続孔32(a),32(b)に対応する。第2方向接続孔は、接続孔32(c),32(d)に対応する。第1箇所は、金属部材30のうちの接続孔32(a)による開口部に対応する。第2箇所は、金属部材30のうちの接続孔32(b)による開口部に対応する。第3箇所は、金属部材30のうちの接続孔32(c)による開口部に対応する。第4箇所は、金属部材30のうちの接続孔32(d)による開口部に対応する。[10]
図8に示す構成に対応する。[11]第1部材を形成する工程は、S10,S12の工程に対応する。挿入工程は、S14の工程に対応する。接合工程は、S18,S20の工程に対応する。[12]接合工程は、
図12に示す工程に対応する。[13]挿入工程は、
図13に示す工程に対応する。
【0065】
<その他の実施形態>
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態および以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0066】
「金属部材30について」
・金属部材30としては、チタンを材料とする部材に限らない。金属部材30は、たとえば、ステンレス鋼製であってもよい。また金属部材30は、たとえば、アルミニウム合金製であってもよい。また金属部材30は、たとえば、銅または銅を含む合金製であってもよい。
【0067】
「第1部材について」
・第1部材が、金属部材30であることは必須ではない。たとえばセラミック製の部材であってもよい。また、樹脂製であってもよい。
【0068】
「第2部材について」
・第2部材としての樹脂を含んだ複合材としては、強化繊維プラスチック部材20に限らない。たとえば、繊維を含まなくてもよい。
【0069】
・第2部材が、樹脂を含んだ複合材であることは必須ではない。たとえば、樹脂のみから構成されてもよい。
「第3部材について」
・第3部材が備える無機繊維としては、炭素繊維に限らない。たとえば黒鉛繊維、炭化ケイ素繊維、アルミナ繊維、ボロン繊維、ガラス繊維等であってもよい。また、第2部材が備える繊維部材が、無機繊維製であることも必須ではない。たとえば、アラミド繊維、ポリエチレン繊維等の有機繊維製であってもよい。
【0070】
・第3部材が備える樹脂部材としては、熱硬化性樹脂に限らない。たとえば熱可塑性樹脂であってもよい。
・第3部材としては、繊維部材と樹脂部材との複合材に限らない。たとえば、接続孔32に充填される部分と、裏面30bに露出する部分とについては、繊維部材のみからなって且つ、強化繊維プラスチック部材20および金属部材30に挟まれる部分については、繊維部材と樹脂部材との複合材であってもよい。
【0071】
・第3部材が、樹脂部材を含むことは必須ではない。たとえば、強化繊維プラスチック部材20を熱可塑性樹脂等として且つ、金属部材30と複合材母材22とを接合させる際に、複合材母材22の表面の流動化した樹脂によって第3部材の繊維部材を覆うようにしてもよい。その場合、接合部材10において強化繊維プラスチック部材20および金属部材30に挟まれる繊維部材は、樹脂と一体不可分な複合材となっている。
【0072】
「強化繊維プラスチック部材20と金属部材30との縫合について」
・たとえば
図1に示すx軸方向のような縫合方向に沿った1列の接続孔32の全てに共通して一本のプリプレグテープ42が挿入されることは必須ではない。たとえば、縫合方向に沿った1列の接続孔32に、1,2,3,…と番号を付与する場合、偶数番目の接続孔32用のプリプレグテープ42と、奇数番目の接続孔32用のプリプレグテープ42とを各別に用意してもよい。
【0073】
・一本のプリプレグテープ42が3個以上の接続孔32に挿入されることは必須ではない。たとえば、
図1において、プリプレグテープ42が互いに隣接する2個の接続孔32を介して金属部材30の接合面30aおよび裏面30bを往復するのみであってもよい。その場合、x軸方向に沿った接続孔32が偶数個Nであるなら、それらには、「N/2」本のプリプレグテープ42が用いられることとなる。
【0074】
・1つの接続孔32に挿入されるプリプレグテープ42が一本であることは必須ではない。
「炭素繊維が延びる方向について」
・接合用部材40の炭素繊維が延びる方向としては、1つの方向、または
図6に例示したように互いに直交する2つの方向に限らない。接合用部材40の炭素繊維が延びる方向は、たとえば互いに斜めに交わる2つの方向であってもよい。またたとえば、接合用部材40の炭素繊維が延びる方向は、互いに異なる3つ以上の方向であってもよい。
【0075】
「接続孔について」
・接続孔32が、z軸方向に対して傾いていることは必須ではない。
「接合部材の製造工程について」
・強化繊維プラスチック部材20を熱硬化性樹脂と炭素繊維との複合材とする場合において、
図3の工程を採用してもよい。ただしその場合、複合材母材22とプリプレグテープ42とを接着剤を用いて接合することが望ましい。
【0076】
・強化繊維プラスチック部材20を熱可塑性樹脂と炭素繊維との複合材とする場合において、
図5の工程を採用してもよい。
【符号の説明】
【0077】
10…接合部材
20…強化繊維プラスチック部材
22…複合材母材
30…金属部材
30a…接合面
30b…裏面
32…接続孔
32a…開口部
32b…開口部
40…接合用部材
42…プリプレグテープ
【手続補正書】
【提出日】2024-06-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材、第2部材、および第3部材を備え、
前記第1部材と前記第2部材とは、前記第3部材を介して接合されており、
前記第1部材の接合面には、複数の接続孔が設けられており、
前記接続孔は、前記接合面のうちの互いに異なる2つの箇所同士を前記第1部材の内部の空間を経由することによって接続するための孔であり、
前記第1部材の接合面は、前記第1部材のうちの前記第2部材と対向する面であり、
前記第2部材は、樹脂を含み、
前記第3部材は、樹脂部材と、繊維部材と、を含み、
前記繊維部材は、前記接続孔に挿入されて且つ前記2つの箇所の一方から他方へと延びる部材であり、
前記接合面には、前記繊維部材を含んだ樹脂が接しており、
前記第1部材は、金属製の部材である接合部材。
【請求項2】
第1部材、第2部材、および第3部材を備え、
前記第1部材と前記第2部材とは、前記第3部材を介して接合されており、
前記第1部材の接合面には、複数の接続孔が設けられており、
前記接続孔は、前記接合面のうちの互いに異なる2つの箇所同士を前記第1部材の内部の空間を経由することによって接続するための孔であり、
前記第1部材の接合面は、前記第1部材のうちの前記第2部材と対向する面であり、
前記第2部材は、樹脂を含み、
前記第3部材は、樹脂部材と、繊維部材と、を含み、
前記繊維部材は、前記接続孔に挿入されて且つ前記2つの箇所の一方から他方へと延びる部材であり、
前記接合面には、前記繊維部材を含んだ樹脂が接しており、
前記2つの箇所を接続する前記接続孔は、前記接合面の裏面まで貫通することなく前記第1部材の内部空間を介して前記2つの箇所を接続する孔である接合部材。
【請求項3】
第1部材、第2部材、および第3部材を備え、
前記第1部材と前記第2部材とは、前記第3部材を介して接合されており、
前記第1部材の接合面には、複数の接続孔が設けられており、
前記接続孔は、前記接合面のうちの互いに異なる2つの箇所同士を前記第1部材の内部の空間を経由することによって接続するための孔であり、
前記第1部材の接合面は、前記第1部材のうちの前記第2部材と対向する面であり、
前記第2部材は、樹脂を含み、
前記第3部材は、樹脂部材と、繊維部材と、を含み、
前記繊維部材は、前記接続孔に挿入されて且つ前記2つの箇所の一方から他方へと延びる部材であり、
前記接合面には、前記繊維部材を含んだ樹脂が接しており、
前記接続孔は、第1方向接続孔および第2方向接続孔を含み、
前記第1方向接続孔は、前記第1部材の接合面のうちの互いに異なる第1箇所および第2箇所を接続するための孔であり、
前記第2方向接続孔は、前記第1部材の接合面のうちの互いに異なる第3箇所および第4箇所を接続するための孔であり、
前記第1箇所および前記第2箇所の2つのうちの一方から他方へと延びる方向と、前記第3箇所および前記第4箇所の2つのうちの一方から他方へと延びる方向とが異なっている接合部材。
【請求項4】
第1部材、第2部材、および第3部材を備え、
前記第1部材と前記第2部材とは、前記第3部材を介して接合されており、
前記第1部材の接合面には、複数の接続孔が設けられており、
前記接続孔は、前記接合面のうちの互いに異なる2つの箇所同士を前記第1部材の内部の空間を経由することによって接続するための孔であり、
前記第1部材の接合面は、前記第1部材のうちの前記第2部材と対向する面であり、
前記第2部材は、樹脂を含み、
前記第3部材は、樹脂部材と、繊維部材と、を含み、
前記繊維部材は、前記接続孔に挿入されて且つ前記2つの箇所の一方から他方へと延びる部材であり、
前記接合面には、前記繊維部材を含んだ樹脂が接しており、
前記繊維部材が挿入される前記接続孔が前記接合面に形成される密度は、前記第1部材および前記第2部材の2つの部材のうちの少なくとも1つの端部の方が、前記端部に囲まれた内部と比較して高い接合部材。
【請求項5】
前記2つの箇所を接続する前記接続孔は、第1孔と、第2孔とを含み、
前記第1孔は、前記2つの箇所のうちの一方に設けられて且つ前記第1部材の前記接合面と前記接合面の裏面とを貫通する孔であり、
前記第2孔は、前記2つの箇所のうちの他方に設けられて且つ前記第1部材の前記接合面と前記接合面の裏面とを貫通する孔であり、
前記繊維部材は、前記対向する面をつたって前記第1孔および前記第2孔の2つのうちの一方から他方へと延びるように配置されている請求項1,3,4のいずれか1項に記載の接合部材。
【請求項6】
前記第3部材は、前記接続孔に挿入されている部分と、前記接合面に接触している部分とが、いずれも樹脂部材および前記繊維部材を含んだ複合材であり、
前記第2部材は、前記第3部材の前記樹脂部材と接合されている請求項1~4のいずれか1項に記載の接合部材。
【請求項7】
前記第2部材は、繊維および樹脂を含んだ複合材である請求項1~4のいずれか1項に記載の接合部材。
【請求項8】
前記第1部材のうちの前記第2部材との接合面の裏面も前記第2部材との接合面となっている請求項5記載の接合部材。
【請求項9】
複数の接続孔が形成された第1部材を形成する工程と、
第1部材の接合面に前記接続孔によって形成された開口部のうちの互いに異なる2つの開口部の一方から他方へと前記接続孔を経由して第3部材を挿入する挿入工程と、
前記第1部材と第2部材との間に前記第3部材を挟み込むことによって、前記第3部材と前記第2部材とを接合する接合工程と、を有し、
前記第2部材は、樹脂を含み、
前記第3部材は、樹脂部材と、繊維部材と、を含み、
前記挿入工程は、前記繊維部材を前記接続孔に挿入する工程であり、
前記接合工程は、第2部材を、前記第3部材の前記樹脂部材と接合させる工程であり、
前記第3部材は、前記接続孔に挿入されている部分と、前記第2部材と接合されている部分とが、いずれも前記樹脂部材および前記繊維部材を含んだ複合材であり、
前記挿入工程は、前記第3部材となるテープ状部材をその両側から引っ張りつつ加熱する工程を含む接合部材の製造方法。
【請求項10】
前記接合工程において、前記繊維部材の両側から前記繊維部材に張力を付与する請求項9記載の接合部材の製造方法。