(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126425
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】喉頭挙上測定装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/11 20060101AFI20240912BHJP
【FI】
A61B5/11 310
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034794
(22)【出願日】2023-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健太
(72)【発明者】
【氏名】小幡 孝義
(72)【発明者】
【氏名】大内 友貴
(72)【発明者】
【氏名】田中 功二
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038VA04
4C038VB09
4C038VC20
(57)【要約】
【課題】被験者の喉頭隆起の位置を把握する。
【解決手段】喉頭挙上測定装置10は、第1変位センサ21と、第2変位センサ22と、制御部101と、を備えている。第1変位センサ21は、被験者の頚部に取り付け可能である。第2変位センサ22は、被験者の頚部のうちの第1変位センサ21とは所定距離Pを置いた箇所に取り付け可能である。制御部101は、第1変位センサ21の変位量及び第2変位センサ22の変位量を取得する。制御部101は、第1変位センサ21の変位量の経時変化及び第2変位センサ22の変位量の経時変化と、所定距離Pと、に基づいて被験者の喉頭隆起の位置変化を推定し、その推定結果を出力する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の頚部に取り付け可能な第1変位センサと、
前記被験者の頚部のうちの前記第1変位センサとは所定距離を置いた箇所に取り付け可能な第2変位センサと、
前記第1変位センサの変位量及び前記第2変位センサの変位量を取得する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記第1変位センサの変位量の経時変化と、前記第2変位センサの変位量の経時変化と、前記所定距離と、に基づいて前記被験者の喉頭隆起の位置変化を推定し、その推定結果を出力する
喉頭挙上測定装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1変位センサの変位量が第1閾値未満から前記第1閾値以上に変化したタイミングを含む第1期間について前記推定結果を出力する
請求項1に記載の喉頭挙上測定装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記第1期間における前記第2変位センサの変位量の経時変化の傾きの最大値が第3閾値以上であれば、前記第1期間について前記推定結果を出力し、前記最大値が前記第3閾値未満であれば前記推定結果を出力しない
請求項2に記載の喉頭挙上測定装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記第1期間における前記第2変位センサの変位量の経時変化の傾きの最大値が第3閾値未満であれば、前記被験者の喉頭隆起の位置変化を推定できない状態であることをユーザに通知する
請求項2に記載の喉頭挙上測定装置。
【請求項5】
前記第1変位センサの変位量が第1閾値未満から前記第1閾値以上に変化したタイミングを特定タイミングとしたとき、
前記制御部は、
前記特定タイミングでの前記第2変位センサの変位量が、前記第1閾値未満の値である第2閾値以上であれば、前第1期間について前記推定結果を出力し、
前記特定タイミングでの前記第2変位センサの変位量が、前記第2閾値未満であれば、前記推定結果を出力しない
請求項2に記載の喉頭挙上測定装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記第1変位センサの変位量及び前記第2変位センサの変位量の双方が、前記第1閾値未満の値として定められた第4閾値以上であることを条件に、前記喉頭隆起の位置変化の推定を開始し、
前記第1変位センサの変位量及び前記第2変位センサの変位量の一方または双方が、前記第4閾値未満であれば前記喉頭隆起の位置変化の推定を開始しない
請求項2に記載の喉頭挙上測定装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記第1変位センサの変位量及び前記第2変位センサの変位量の一方または双方が、前記第1閾値未満の値として定められた第4閾値未満であれば、前記被験者の喉頭隆起の位置変化を推定できない状態であることをユーザに通知する
請求項2に記載の喉頭挙上測定装置。
【請求項8】
前記被験者の頸椎に沿う方向での前記喉頭隆起の位置を上下位置、前記被験者の前後方向での前記喉頭隆起の先端の位置を前後位置としたとき、
前記制御部は、時間を横軸とし前記上下位置又は前記前後位置のいずれか一方を直交座標系の縦軸とし、前記上下位置及び前記前後位置のいずれか他方を色彩の変化で表現した2次元画像を、前記推定結果として出力する
請求項1に記載の喉頭挙上測定装置。
【請求項9】
前記制御部は、
前記喉頭隆起の位置を推定している期間中での前記被験者の嚥下運動の回数、1回の嚥下運動に要した時間である嚥下持続時間、及び1回の嚥下運動での前記喉頭隆起の最大移動距離から選ばれる1以上を、前記2次元画像に合わせて数値で表示する
請求項8に記載の喉頭挙上測定装置。
【請求項10】
前記制御部は、
前記2次元画像において前記被験者が嚥下運動している期間を、嚥下運動していない前記期間とは異なる態様で表示する
請求項8に記載の喉頭挙上測定装置。
【請求項11】
前記第1変位センサから前記第2変位センサへ向かう方向を第1方向とし、前記第1方向と交差する方向を第2方向としたとき、
前記被験者の頚部に取り付け可能な第1横変位センサと、
前記被験者の頚部のうちの、前記第1横変位センサに対して前記第2方向に離れた箇所に取り付け可能な第2横変位センサと、
をさらに備え、
前記制御部は、
前記第1変位センサの変位量の経時変化、前記第2変位センサの変位量の経時変化、前記第1横変位センサの変位量の経時変化、及び前記第2横変位センサの変位量の経時変化に基づいて、前記喉頭隆起の位置を推定し、その推定結果を出力する
請求項1に記載の喉頭挙上測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、喉頭挙上測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の嚥下運動計測装置は、シート状のセンサと、押し当て具と、計測器と、を有している。センサは、静電容量センサである。静電容量センサは、被験者の甲状軟骨の動きを静電容量の変化として検出する。押し当て具は、センサの一部を被験者の喉頭部の体表に押し付けるためのものである。嚥下運動計測装置は、センサの静電容量の変化に基づいて、被験者の嚥下運動を計測する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の嚥下運動計測装置のセンサは、被験者の嚥下時の喉頭の動きだけでなく、被験者の首の動きに応じた静電容量の変化も検知する。そのため、センサの検出値は、嚥下運動以外の被験者の動きを含んだものとなる。すなわち、特許文献1に記載の嚥下運動計測装置の検出結果を参照しても、嚥下運動のみを精度よく把握することが困難である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明は、被験者の頚部に取り付け可能な第1変位センサと、前記被験者の頚部のうちの前記第1変位センサとは所定距離を置いた箇所に取り付け可能な第2変位センサと、前記第1変位センサの変位量及び前記第2変位センサの変位量を取得する制御部と、を備え、前記制御部は、前記第1変位センサの変位量の経時変化と、前記第2変位センサの変位量の経時変化と、前記所定距離と、に基づいて前記被験者の喉頭隆起の位置変化を推定し、その推定結果を出力する喉頭挙上測定装置である。
【0006】
上記構成によれば、複数の変位センサで変位量の経時変化を取得することにより、喉頭隆起の位置変化を推定する。ユーザは、出力された喉頭隆起の位置変化の推定結果に基づくことで、被験者の喉頭隆起の状態を詳細に把握できる。これにより、嚥下運動を精度よく把握できる。
【発明の効果】
【0007】
被験者の喉頭隆起の状態を詳細に把握し、嚥下運動のみを検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】
図2は、喉頭挙上測定装置の本体部を被験者に取り付けたときの図である。
【
図3】
図3は、制御部が実行する画像作成制御の一連の処理を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、画像作成制御によって作成される画像の一例である。
【
図5】
図5は、制御部が実行する嚥下運動推定制御の一連の処理を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、変更例の制御部が実行する嚥下運動推定制御の一連の処理を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、変更例の喉頭挙上測定装置の全体図である。
【
図8】
図8は、変更例の喉頭挙上測定装置の本体部を被験者に取り付けたときの図である。
【
図9】
図9は、変更例における画像作成制御によって作成される画像の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、喉頭挙上測定装置の一実施形態を、図面を参照して説明する。なお、図面は、理解を容易にするために構成要素を拡大して示している場合がある。構成要素の寸法比率は実際のものと、又は別の図面中のものと異なる場合がある。
【0010】
<全体構成について>
図1に示すように、喉頭挙上測定装置10は、被験者に取り付けられる本体部50と、本体部50に電気的に接続された制御装置100と、を備えている。本体部50は、センサシート30と、5つの変位センサ20と、固定部材40とを備えている。
【0011】
センサシート30は、平面視したときに略長方形状のシートである。センサシート30は、伸縮性を有する合成樹脂からなる。センサシート30は、例えば、ポリウレタン、アクリル、シリコーン樹脂等の弾性率の小さい材料を含んでいると好ましい。
【0012】
各変位センサ20は、センサシート30の一方の主面に取り付けられている。各変位センサ20は、全体として帯状である。各変位センサ20は、センサシート30の長辺に沿って延びている。5つの変位センサ20は、センサシート30の短辺に沿って互いに離れて位置している。また、5つの変位センサ20は、互いに平行に並列している。5つの変位センサ20は、等間隔毎に配置されている。
【0013】
各変位センサ20は、センサ部20A及び検出部20Bを有している。
センサ部20Aは、帯状である。センサ部20Aは、センサシート30の長辺と平行に延びている。各センサ部20Aは、電気的な導体からなる。各センサ部20Aは、伸縮に対する抵抗値の変化が大きい材質からなる。各センサ部20Aの材質は、例えば、銀、銅等の金属粉と、シリコーン等のエラストマー系樹脂の混合物である。
【0014】
各センサ部20Aは、弾性変形可能である。そして、センサ部20Aは、弾性変形に伴いセンサ部20Aの長軸に沿う方向の長さが変化することにより、その抵抗値が変化する。例えば、各変位センサ20は、外部から力が作用していない状態では、直線状である。そして、各変位センサ20は、外部から力が作用することにより湾曲し、抵抗値が増大する。
【0015】
検出部20Bは、センサ部20Aに電気的に接続している。検出部20Bは、センサ部20Aの抵抗値の変化を、変位量に変換する。すなわち、検出部20Bは、センサ部20Aが直線状の状態から湾曲したときの変位量を検出する。そして、検出部20Bは、変位量に応じた信号を発信する。
【0016】
固定部材40は、シート状である。固定部材40の材質は、例えば、ウレタンゴム、シリコンゴムニトリルゴムスポンジ、クロロプレンゴムスポンジ、エチレンゴムスポンジ等である。固定部材40は、センサシート30に対して変位センサ20と反対側に位置している。固定部材40は、センサシート30に対して貼り付けられている。また、固定部材40は、センサシート30に対して一回り大きくなっている。そして、固定部材40は、センサシート30の概ね全体を覆っている。固定部材40においてセンサシート30が貼り付けられている側と反対側の面は粘着性を有している。したがって、本体部50は、固定部材40を介して被験者に取り付け可能である。
【0017】
図1に示すように、5つの変位センサ20は、第1変位センサ21、第2変位センサ22、第3変位センサ23、第4変位センサ24、及び第5変位センサ25である。
図2に示すように、5つの変位センサ20は、被験者の頚部に取り付けられる。被験者の頸椎に沿う方向において、第1変位センサ21は、5つの変位センサ20最も上側に位置している。本実施形態では、第1変位センサ21は、被験者の通常時の喉頭隆起の位置、すなわち嚥下運動をしていないときの喉頭隆起の位置よりも上側に位置している。第2変位センサ22は、第1変位センサ21に対して下側で、第1変位センサ21とは所定距離Pを置いた箇所に取り付けられている。そして、第2変位センサ22からさらに下側に、第3変位センサ23、第4変位センサ24、及び第5変位センサ25の順で、互いに所定距離Pを置いて離間して位置している。したがって、被験者が嚥下運動を行っていない状態では、喉頭隆起は、第2変位センサ22~第5変位センサ25の何れかの位置に対応している。そして、被験者が嚥下運動を行って喉頭隆起が上に移動すると、喉頭隆起が第1変位センサ21の近傍に位置することになる。つまり、第1変位センサ21は、被験者の嚥下運動に伴う咽頭隆起の可動範囲のうち最も上の位置に対応して取り付けられるものである。
【0018】
<制御装置について>
図1に示すように、制御装置100は、制御部101と、記憶部102と、通知部103と、を備えている。
【0019】
制御部101は、コードを介して各変位センサ20に接続している。制御部101は、各変位センサ20から発信された信号を受信する。すなわち、制御部101、各変位センサ20から変位量を取得する。また、制御部101は、各変位センサ20が取得した変位量と、変位量を取得した時間と紐づけて記憶部102に記憶する。また、制御部101は、各変位センサ20の変位量の経時変化に基づいて、被験者の喉頭隆起の位置を推定する。そして、制御部101は、通知部103を介して推定結果をディスプレイ110に出力する。
【0020】
制御部101は、1又は複数のプロセッサを含む回路(circuitry)を含んでいる。制御部101は、特定用途向け集積回路(ASIC)等の1つ以上の専用のハードウェア回路、又はそれらの組み合わせを含む回路であってもよい。
【0021】
記憶部102は、制御部101により読み取り可能な記憶媒体である。記憶部102は、制御部101が実行する各種の処理をプログラムデータの形で記憶している。また、記憶部102は、制御部101が実行する各種の処理に必要な制御用の値を予め記憶している。さらに、上述したように記憶部102は、制御部101の処理に基づき、取得した各変位センサ20の変位量と当該変位量を取得した時間とを紐づけて記憶する。
【0022】
通知部103は、有線又は無線でディスプレイ110と通信可能である。上述したように、通知部103は、制御部101が実行する各種の処理に応じて、推定結果をディスプレイ110に表示する。なお、図示は省略するが、制御装置100は、電源回路、クロック回路などの周辺回路も備えている。
【0023】
<画像作成制御について>
制御部101は、記憶部102に記憶されている画像作成プログラムを実行することにより、画像作成制御の各処理を実行する。また、制御部101は、制御装置100の電源がオフ状態からオン状態に切り替えられたときに、画像作成制御を開始し、電源がオフ状態になるまで所定の制御周期で繰り返し実行する。
【0024】
図3に示すように、制御部101は、画像作成制御を開始すると、先ず、ステップS11の処理を実行する。ステップS11では、制御部101は、各変位センサ20から、変位量を取得する。そして、制御部101は、各変位センサ20から取得した変位量を、変位量を取得した時間と紐づけて記憶部102に記憶する。つまり、制御部101は、各変位センサ20の変位量の経時変化を記憶部102に記憶する。その後、制御部101は、ステップS12の処理を実行する。
【0025】
ステップS12では、制御部101は、各変位センサ20の変位量の経時変化と、所定距離Pと、に基づいて、喉頭隆起の位置変化を推定する。
具体的には、制御部101は、被験者の頸椎に沿う方向での喉頭隆起の位置を上下位置として推定する。また、制御部101は、被験者の前後方向での喉頭隆起の先端の位置を前後位置として推定する。そして、例えば、
図4に示すように、制御部101は、帯状の単位画像UIを、喉頭隆起の上下位置及び前後位置の推定結果として作成する。この単位画像UIにおいては、変位量の大きさが黒色の濃さで示される。また、単位画像UIにおいて長手方向に沿う位置が、第1変位センサ21~第5変位センサ25の位置に対応している。具体的には、
図4に示す単位画像UIにおいて長手方向の中央が第3変位センサ23の位置である。そして、単位画像UIの長手方向の中央から上側に向かって順に、第2変位センサ22、第1変位センサ21の位置であり、下側に向かって順に、第4変位センサ24、第5変位センサ25の位置である。したがって、1つの単位画像UIにおいて最も黒色が濃い箇所の位置が、喉頭隆起の上下位置の推定結果を示す。また、1つの単位画像UIにおいて最も黒色が濃い箇所の黒色の濃さが、喉頭隆起の前後位置の推定結果を示す。
【0026】
制御部101は、上記のようにして新たな単位画像UIを作成すると、過去に作成した単位画像UIと合わせて、新たな2次元画像IMGを作成する。具体的には、制御部101は、過去一定期間内の複数の単位画像UIを時系列で並べて、1つの2次元画像IMGを作成する。上記一定期間は、例えば、数秒である。
図4に示す例では、2次元画像IMGは、横軸を時間、縦軸を喉頭隆起の上下位置とする直交座標系の画像である。上述したとおり、各単位画像UIは、喉頭隆起の上下位置及び前後位置を示すものである。したがって、2次元画像IMGは、喉頭隆起の上下位置の経時的な変化及び前後位置の経時的な変化を示している。
【0027】
制御部101は、上記のようにして新たな2次元画像IMGを作成すると、これを記憶部102に記憶する。このとき、制御部101は、過去に作成した2次元画像IMGを記憶部102から削除する。つまり、制御部101は、記憶部102に記憶されている2次元画像IMGを新たなものに更新する。その後、制御部101による一連の画像作成制御の1サイクルが終了し、制御部101は、再び画像作成制御を開始する。
【0028】
<嚥下運動推定制御について>
制御部101は、記憶部102に記憶されている嚥下運動推定プログラムを実行することにより、嚥下運動推定制御の各処理を実行する。また、制御部101は、喉頭挙上測定装置10の電源がオフ状態からオン状態に切り替えられたときに、嚥下運動推定制御を1度だけ実行する。
【0029】
図5に示すように、制御部101は、嚥下運動推定制御を開始すると、先ず、ステップS21の処理を実行する。ステップS21では、制御部101は、各変位センサ20から変位量を取得する。その後、制御部101は、ステップS22の処理を実行する。
【0030】
ステップS22では、制御部101は、各変位センサ20の変位量が、予め定められた第4閾値V4以上であるか否かを判定する。第4閾値V4は、変位センサ20を被験者の頚部に取り付けたときに検出されるであろう変位量の最小値よりもやや小さな値として、試験及びシミュレーション等で予め定められている。制御部101は、全ての変位センサ20の変位量が第4閾値V4以上である場合には、ステップS22において肯定判定する。また、制御部101は、少なくとも1つの変位センサ20の変位量が第4閾値V4未満である場合には、ステップS22において否定判定する。ステップS22において否定判定の場合、制御部101は、ステップS32の処理を実行する。
【0031】
ステップS32では、制御部101は、通知部103を介して、ディスプレイ110にユーザに通知するための通知信号を出力する。当該通知信号を受信したディスプレイ110は、喉頭挙上測定装置10が正常に被験者の喉頭隆起の位置を推定できない状態であることを示すメッセージを表示する。すなわち、制御部101は、すべての変位センサ20の変位量が第4閾値V4未満であれば、喉頭隆起の位置変化の推定を開始しない。そして、制御部101は、少なくとも1つの変位センサ20の変位量が、第4閾値V4未満であれば、被験者の喉頭隆起の位置を推定できない状態であることをユーザに通知する。なお、喉頭挙上測定装置10が正常に被験者の喉頭隆起の位置を推定できない状態の一例は、本体部50が被験者に取り付けられていない状態、変位センサ20に異常がある状態などである。その後、制御部101は、一連の嚥下運動推定制御の処理を終了し、喉頭挙上測定装置10の電源をオフにする。
【0032】
一方、ステップS22において肯定判定の場合、制御部101は、ステップS23の処理を実行する。ステップS23では、制御部101は、被験者の喉頭隆起の位置変化に基づく嚥下運動の推定を開始する。その後、制御部101は、ステップS24の処理を実行する。
【0033】
ステップS24では、制御部101は、各変位センサ20から変位量を取得する。そして、制御部101は、取得した第1変位センサ21の変位量が第1閾値V1以上であるか否かを判定する。第1閾値V1は、被験者が嚥下運動を行った際に第1変位センサ21が検出するであろう変位量よりもやや小さな値として、試験及びシミュレーション等で予め定められた値である。ステップS24において、否定判定の場合、制御部101は、再びステップS24の処理を実行する。すなわち、制御部101は、第1変位センサ21の変位量が第1閾値V1以上になるまで、ステップS24の処理を繰り返す。一方。ステップS24において肯定判定の場合、制御部101は、ステップS25の処理を実行する。
【0034】
ステップS25では、制御部101は、第1変位センサ21の変位量が第1閾値V1以上となったときの時刻を、特定タイミングTとして記憶部102に記憶する。換言すると、制御部101は、第1変位センサ21の変位量が、第1閾値V1未満から第1閾値V1以上に変化したタイミングとして、特定タイミングTを定める。そして、その後、制御部101は、ステップS26の処理を実行する。
【0035】
ステップS26では、制御部101は、特定タイミングTでの第2変位センサ22の変位量が予め定められた第2閾値V2以上であるか否かを判定する。第2閾値V2は、第1閾値V1未満、且つ第4閾値V4以上の値として予め定められている。なお、第2閾値V2は、被験者が嚥下運動をした際に、第1変位センサ21と隣接する第2変位センサ22の変位量に適切である値の下限値として試験及びシミュレーション等で予め定められている。ステップS26において否定判定の場合、制御部101は、上述のステップS32の処理を実行する。すなわち、制御部101は、特定タイミングTでの第2変位センサ22の変位量が、第2閾値未満であれば、推定結果を出力しない。その後、制御部101は、一連の嚥下運動推定制御の処理を終了し、喉頭挙上測定装置10の電源をオフにする。
【0036】
一方、ステップS26において、肯定判定の場合、制御部101は、ステップS27の処理を実行する。ステップS27では、制御部101は、記憶部102に記憶されている嚥下回数を1回加算する。すなわち、制御部101は、喉頭隆起の位置を推定している期間中での被験者の嚥下運動の回数をカウントする。なお、記憶部102に記憶されている嚥下回数は、嚥下運動推定制御を実行する度にリセットされる。その後、制御部101は、ステップS28の処理を実行する。
【0037】
ステップS28では、制御部101は、各変位センサ20から変位量を取得する。そして、制御部101は、取得した第1変位センサ21の変位量が第1閾値V1未満であるか否かを判定する。ステップS28において、否定判定の場合、制御部101は、再びステップS28の処理を実行する。すなわち、制御部101は、第1変位センサ21の変位量が第1閾値V1未満になるまで、ステップS28の処理を繰り返す。一方。ステップS28において肯定判定の場合、制御部101は、ステップS29の処理を実行する。
【0038】
ステップS29では、制御部101は、1回の嚥下運動に要した時間である嚥下持続時間を算出する。具体的には、制御部101は、嚥下持続時間を、特定タイミングTから当該ステップS29の処理開始までの時間として算出する。また、制御部101は、1回の嚥下運動での喉頭隆起の最大移動距離を算出する。具体的には、制御部101は、上記嚥下持続時間中で、各時刻において変位量が最大となる位置のなかから最も下の位置となる箇所から最も上の位置となる箇所までの距離を算出する。そして、制御部101は、これらの嚥下持続時間及び最大移動距離を、嚥下回数に紐づけて記憶部102に記憶する。その後、制御部101は、ステップS30の処理を実行する。
【0039】
ステップS30では、制御部101は、第1変位センサ21の変位量が第1閾値V1未満から第1閾値V1以上に変化したタイミングを含む第1期間について推定結果を出力する。具体的には、制御部101は、通知部103を介して、特定タイミングTを含み、特定タイミングTの前後一定期間である第1期間の2次元画像IMGを、ディスプレイ110に出力する。上記一定期間は、例えば、1秒未満である。具体的には、制御部101は、特定タイミングTから上記一定期間経過するまで待機する。その後、制御部101は、画像作成制御で作成された2次元画像IMGを、喉頭隆起の位置変化の推定結果として出力する。なお、上述したとおり、2次元画像IMGは、数秒間の咽頭隆起の位置変化を表したものである。したがって、第1期間の2次元画像IMGは、特定タイミングTの前後一定期間の喉頭隆起の位置変化を含むものである。また、このとき、制御部101は、2次元画像IMGにおいて被験者が嚥下運動している期間、すなわち上記の嚥下持続期間を、嚥下運動していない期間とは異なる態様で表示する。例えば、
図4に示すように、制御部101は、2次元画像IMGにおいて被験者が嚥下運動している期間を四角形状の枠で囲った状態で2次元画像IMGを表示する。また、制御部101は、ステップS29において記憶した嚥下持続時間及び最大移動距離を、2次元画像IMGの表示に合わせて数値としてディスプレイ110に表示する。その後、
図5に示すように、制御部101は、ステップS31の処理を実行する。
【0040】
ステップS31では、制御部101は、各変位センサ20の変位量が、第4閾値V4未満であるか否かを判定する。制御部101は、少なくとも1つの変位センサ20の変位量が第4閾値V4未満である場合には、ステップS31において肯定判定する。また、制御部101は、全ての変位センサ20の変位量が第4閾値V4以上である場合には、ステップS31において否定判定する。ステップS31において、否定判定の場合、制御部101は、再びステップS24の処理を実行する。すなわち、制御部101は、各変位センサ20が被験者の頚部に取り付けられている状態であると判定し、次の嚥下運動の推定を開始する。一方で、ステップS31において肯定判定の場合、制御部101は、この時点において記憶部102に記憶されている最新の嚥下回数を、通知部103を介してディスプレイ110に表示させる。そして、制御部101は、一連の嚥下運動推定制御の処理を終了する。
【0041】
<本実施形態の作用>
5つの変位センサ20は、それぞれ、取り付けられた位置の頚部の変位量を検出する。すなわち、制御部101は、あるタイミングにおいて頚部の5箇所の変位量を取得する。そして、各変位センサ20同士の間隔を反映し、これら5つの変位量の値を適切な関数で近似する。これによりあるタイミングでの喉頭隆起の位置と変位量を算出できる。制御部101は、これらの算出した喉頭隆起の位置、変位量を反映して、2次元画像IMGにおける帯状の単位画像UIを、作成する。
【0042】
また、制御部101は、特定タイミングT、すなわち第1変位センサ21の変位量が第1閾値V1未満から第1閾値V1以上になったタイミングに前後して、被験者が嚥下運動を行ったと判定する。また、嚥下運動が始まると、被験者の喉頭隆起は、上側に移動する。すなわち、第1期間において、被験者の喉頭隆起は、第1変位センサ21に向かう方向に移動中である。そして、第1期間では、第1変位センサ21に隣接する第2変位センサ22の変位量も第2閾値V2以上になっている蓋然性が高い。換言すると、第1期間において第2変位センサ22の変位量が第2閾値V2未満の場合、第2変位センサ22にエラーが生じている可能性がある。
【0043】
<本実施形態の効果>
(1)上記実施形態では、複数の変位センサ20で変位量の経時変化を取得することにより、喉頭隆起の位置変化を推定する。ユーザは、出力された喉頭隆起の位置変化の推定結果に基づくことで、被験者の喉頭隆起の状態を詳細に把握できる。これにより、嚥下運動を精度よく把握できる。
【0044】
(2)上記実施形態では、第1変位センサ21の変位量が第1閾値V1未満から第1閾値V1以上に変化したことを条件に、特定タイミングTを含む第1期間の2次元画像IMGを出力する。つまり、上記実施形態では、被験者が嚥下運動を行った可能性が高い第1期間の2次元画像IMGを出力する。したがって、ユーザは、嚥下運動が反映された可能の高い期間の2次元画像IMGを入手できる。
【0045】
(3)上記実施形態では、制御部101は、特定タイミングTでの第2変位センサ22の変位量が、第2閾値V2以上であることを条件に、特定タイミングTを含む一定の期間の2次元画像IMGを出力する。特定タイミングTにおいて第2変位センサ22の変位量が第2閾値V2以上であれば、喉頭挙上測定装置10が正常に嚥下運動を検知している蓋然性がある。そのため、嚥下運動を正常に検知できていないときの2次元画像IMGが出力されることを防げる。
【0046】
(4)上記実施形態では、制御部101は、特定タイミングTでの第2変位センサ22の変位量が、第2閾値V2未満である場合、通知信号を出力する。特定タイミングTにおいて第2変位センサ22の変位量が第2閾値V2未満であれば、第2変位センサ22が正常に機能していない可能性がある。したがって、この構成によれば、第2変位センサ22が正常に機能していない可能性があることをユーザが把握できる。
【0047】
(5)上記実施形態では、制御部101は、すべての変位センサ20の変位量が、第4閾値V4以上であることを条件に、喉頭隆起の位置変化の推定を開始する。各変位センサ20の変位量が第4閾値V4以上のとき、各変位センサ20が被験者の頚部の表面に沿って弾性変形している蓋然性が高い。したがって、この構成によれば、各変位センサ20が適切に取り付けられた状態で嚥下運動の推定ができる。
【0048】
(6)上記実施形態では、制御部101は、いずれかの変位センサ20の変位量が、第4閾値V4未満であることを条件に、ユーザに通知するための通知信号を出力する。各変位センサ20のうちのいずれかの変位量が第4閾値V4未満のとき、各変位センサ20が正しく取り付けられていないと判断できる。この構成によれば、適切な状態で変位センサ20が取り付けられていないことをユーザが把握できる。
【0049】
(7)上記実施形態では、制御部101は、時間を横軸、上下位置を縦軸とした直交座標系の2次元画像IMGを、推定結果として出力する。この構成によれば、ユーザが、喉頭隆起の位置変化を画像により直感的に認識できる。
【0050】
(8)上記実施形態では、2次元画像IMGは、喉頭隆起の前後位置を色彩の変化で表現した画像である。色彩の変化を用いることで、疑似的に3次元の情報を2次元画像IMGで表現できる。
【0051】
(9)上記実施形態では、制御部101は、2次元画像IMGにおいて被験者が嚥下運動している期間を、四角形状の枠で囲った状態で2次元画像IMGを表示する。すなわち、制御部101は、被験者が嚥下運動している期間を、嚥下運動していない期間とは異なる態様で表示する。この構成によれば、被験者の嚥下運動時の喉頭隆起の位置変化の確認がより簡単になる。
【0052】
<変更例>
上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0053】
・上記実施形態において、本体部50の構成は、上記実施形態の例に限定されない。例えば、本体部50は、複数のセンサシート30を有しており、各変位センサ20は、それぞれ異なるセンサシート30上に貼り付けられていてもよい。また、例えば、本体部50は、センサシート30及び固定部材40の構成を省略し、粘着テープ等で各変位センサ20を頚部に取り付けてもよい。
【0054】
・上記実施形態において、変位センサ20は、2つ以上であればよい。すなわち、喉頭挙上測定装置10は、第1変位センサ21及び第2変位センサ22を備えていればよい。少なくとも2つの変位センサ20を備えていれば、第1変位センサ21及び第2変位センサ22の位置関係により、被験者の喉頭隆起の位置変化を推定可能である。
【0055】
・上記実施形態において、センサ部20Aは帯状であったが、例えば線状等であってもよい。
・上記実施形態において、変位センサ20は、変位量を測定可能であれば、その具体的な構成は上記実施形態の例に限定されない。例えば、変位センサ20は、一対の電極とその間に位置する誘電層とを有しており、静電容量の変化を検出することで歪みの大きさを測定する静電容量型のセンサでもよい。また、変位センサ20は、光やカメラ等で歪みの大きさを検出するものでもよい。また、変位センサ20は、圧電フィルムによって構成されていてもよい。
【0056】
・制御部101は、嚥下運動推定制御を省略してもよい。その場合、例えば、制御部101は、画像作成制御において新たに2次元画像IMGを作成する度に、その2次元画像IMGをディスプレイ110に出力してもよい。この場合、ディスプレイ110は、経時的に変化する2次元画像IMG、すなわち動画を表示することになる。
【0057】
・制御部101は、嚥下運動推定制御においてステップS24の処理を省略可能である。換言すると、制御部101は、第1変位センサ21の変位量が第1閾値V1以上か、第1閾値V1未満か、に拘わらず特定タイミングTを設定してもよい。この場合、例えば、ユーザが、被験者の嚥下運動するタイミングに応じて特定タイミングTを入力する等すればよい。
【0058】
・制御部101は、嚥下運動推定制御において、ステップS22及びステップS31の処理を省略可能である。その場合、制御部101は、例えばユーザによって予め定められた時間が経過した後、嚥下運動推定制御を終了すればよい。また、制御部101は、ステップS22の処理を省略する場合、ステップS32の処理も省略すればよい。
【0059】
・嚥下運動推定制御のステップS32において、制御部101が出力する通知信号の態様は問わない。また、通知信号の出力先もディスプレイ110に限らない。喉頭挙上測定装置10が嚥下運動の計測に適した状態でないことを通知できる通知信号、その受信先であれば、どのようなものでも構わない。
【0060】
・制御部101は、嚥下運動推定制御において、ステップS27の処理を省略可能である。すなわち、制御部101は、被験者の嚥下運動の回数のカウントを省略してもよい。
・制御部101は、嚥下運動推定制御のステップS29において、嚥下持続時間及び喉頭隆起の最大移動量のどちらか一方の算出を省略してもよい。また、制御部101は、嚥下運動推定制御のステップS29の処理を省略してもよい。つまり、嚥下持続時間及び喉頭隆起の最大移動量の両方の算出を省略してもよい。
【0061】
・制御部101は、嚥下運動推定制御において、嚥下運動の終了時間を推定する必要がない場合には、ステップS28の処理を省略してもよい。
・嚥下運動推定制御のステップS30においてディスプレイ110に表示される2次元画像IMGは、前後位置を縦軸とし、上下位置を色彩の変化で表現した画像であってもよい。また、この場合、色彩の変化は、色相の変化、明度の変化、彩度の変化等を含む。
【0062】
・制御部101は、嚥下運動推定制御のステップS30において、2次元画像において被験者が嚥下運動している期間を、上記実施形態とは別の方法で嚥下運動していない期間とは異なる態様で表示してもよい。例えば、2次元画像において被験者が嚥下運動している期間を、嚥下運動していない期間と異なる色彩で表示してもよい。また、制御部101は、2次元画像において被験者が嚥下運動している期間と、嚥下運動していない期間とを区別なく表示してもよい。
【0063】
・制御部101は、少なくとも、喉頭隆起の位置変化が反映された2次元画像を作成すればよい。換言すると、2次元画像が、変位量の大小の変化を含んでいなくてもよい。その場合、たとえば、制御部101は、各時刻における変位量が最大となる位置をプロットして喉頭隆起の位置変化を推定すればよい。
【0064】
・制御部101は、嚥下運動推定制御のステップS26において、第2変位センサ22の変位量と第2閾値V2とを比較することで、第2変位センサ22が正常に機能しているか否かを判定した。一方で、制御部101は、嚥下運動推定制御のステップS26と異なる処理を実行することで、第2変位センサ22が正常に動作しているか否かを判定してもよい。
【0065】
例えば、
図6に示す嚥下運動推定制御の変更例では、制御部101は、上記実施形態のステップS26の代わりにステップS46の処理を実行する。ステップS46では、制御部101は、特定タイミングTを含む第1期間における第2変位センサ22の変位量の経時変化の傾きの最大値が、第3閾値V3以上であるか否かを判定する。なお、制御部101は、第1期間における所定のタイミングの第2変位センサ22の変位量から、当該タイミングに対して単位時間前のタイミングでの第2変位センサ22の変位量を減算した値を、第2変位センサ22の変位量の経時変化の傾きとして算出する。また、第3閾値V3は、被験者が嚥下運動をした際に、第1変位センサ21と隣接する第2変位センサ22において変位量の傾きの最大値に相当する値として試験及びシミュレーション等で予め定められている。ステップS46において否定判定の場合、制御部101は、上記実施形態のステップS32の処理を実行する。すなわち、制御部101は、第1期間における第2変位センサ22の変位量の経時変化の傾きの絶対値が第3閾値V3未満であれば、推定結果を出力しない。そして、制御部101は、第1期間における第2変位センサ22の変位量の経時変化の傾きの絶対値が第3閾値V3未満であれば、被験者の喉頭隆起の位置変化を推定できない状態であることをユーザに通知するための通知信号を出力する。一方、制御部101は、ステップS46において肯定判定の場合、上記実施形態のステップS27以降の処理を実施する。すなわち、特定タイミングTでの第2変位センサ22の変位量の経時変化の傾きの絶対値が第3閾値V3以上であることを条件に、特定タイミングTを含む一定の期間について喉頭隆起の位置変化の推定結果を出力する。
【0066】
また、上記構成において、変位量の経時変化の傾きとは、複数種類あってもよい。例えば、変位量の経時変化の傾きは、微分することで算出される値であってもよい。また、変位量の経時変化の傾きは、時間と変位量とを示すグラフにおける接線により求められる値であってもよい。また、変位量の経時変化の傾きは、時間と変位量とを示すグラフにおいて、第1変位センサ21の変位量が第1閾値V1を超える前の点と超えた後の点とを結ぶ直線を引き、その直線の傾きから求められる値であってもよい。
【0067】
・上記実施形態において、喉頭挙上測定装置10は、第1変位センサ21とは直交する方向に配置された変位センサ20を有していてもよい。
図7に示す例では、変位センサ20は、第1変位センサ21~第5変位センサ25に加えて、第1横変位センサ61、第2横変位センサ62、第3横変位センサ63、第4横変位センサ64、及び第5横変位センサ65を含む。なお、これらの横変位センサは、上記実施形態で説明した第1変位センサ21等の変位センサ20と同じ構造である。
【0068】
第1変位センサ21及び第2変位センサ22が並ぶ方向に延びる軸を第1軸Xとする。第1変位センサ21から第2変位センサへ向かう方向を第1方向とする。また、第1軸Xに直交し、センサシート30上を延びる軸を第2軸Yとする。そして、第2軸Yに沿う方向のうちの一方を第2方向とする。すなわち、第2方向は、第1方向と交差する方向である。このとき、第1横変位センサ61~第5横変位センサ65は、第1軸Xに沿って延びる帯状である。そして、第2横変位センサ62は、第1横変位センサ61に対して第2方向に離れた箇所に取り付けられている。具体的には、
図8に示すように、被験者に正対して視たとき、第2横変位センサ62は、第1横変位センサ61に対して右側に位置している。そして、第2横変位センサ62からさらに当該右側に、第3横変位センサ63、第4横変位センサ64、第5横変位センサ65の順で、互いに離間して位置している。このように、第1横変位センサ61~第5横変位センサ65を取り付けることで、制御部101は、第2軸Yに沿う方向における喉頭隆起の位置変化を2次元的に推定可能となる。
【0069】
上記の変更例において、制御部101は、第1変位センサ21~第5変位センサ25の変位量の経時変化、及び第1横変位センサ61~第5横変位センサ65の変位量の経時変化に基づいて、被験者の喉頭隆起の位置を推定する。具体的には、制御部101は、第1軸X及び第2軸Yを直交軸とする仮想平面上での被験者の喉頭隆起の位置を推定し、その推定結果を出力する。
【0070】
例えば、
図9に示すように、制御部101は、縦軸を第1軸X、横軸を第2軸Yとした2次元画像を、喉頭隆起の上下位置及び左右位置の推定結果として作成する。この画像において、変位量の大きさが黒色の濃さで示される。第1軸Xに沿う位置が第1変位センサ21~第5変位センサ25の位置に対応している。第2軸Yに沿う位置が、第1横変位センサ61~第5横変位センサ65の位置に対応している。また、制御部101は、このような画像を所定時間毎に複数作成する。そして、制御部101は、これら所定時間毎の画像を組み合わせた動画を作成する。この動画は、喉頭隆起の第1軸Xに沿う方向の位置の経時的な変化及び第2軸Yに沿う方向の経時的な変化を示している。なお、
図7に示す例において、横変位センサは、少なくとも第1横変位センサ61及び第2横変位センサ62があればよい。
【0071】
・上記実施形態において、各閾値は予め設定されたものではなく、測定毎に算出されるものであってもよい。例えば、第1閾値V1は、測定日の気温、湿度によって定まる係数を、予め設定される値に掛け算して算出されてもよい。
【0072】
<付記>
上記実施形態及び変更例から導き出せる技術思想を以下に記載する。
[1]被験者の頚部に取り付け可能な第1変位センサと、前記被験者の頚部のうちの前記第1変位センサとは所定距離を置いた箇所に取り付け可能な第2変位センサと、前記第1変位センサの変位量及び前記第2変位センサの変位量を取得する制御部と、を備え、前記制御部は、前記第1変位センサの変位量の経時変化と、前記第2変位センサの変位量の経時変化と、前記所定距離と、に基づいて前記被験者の喉頭隆起の位置変化を推定し、その推定結果を出力する喉頭挙上測定装置。
【0073】
[2]前記制御部は、前記第1変位センサの変位量が第1閾値未満から前記第1閾値以上に変化したタイミングを含む第1期間について前記推定結果を出力する[1]に記載の喉頭挙上測定装置。
【0074】
[3]前記制御部は、前記第1期間における前記第2変位センサの変位量の経時変化の傾きの最大値が第3閾値以上であれば、前記第1期間について前記推定結果を出力し、前記最大値が前記第3閾値未満であれば前記推定結果を出力しない[2]に記載の喉頭挙上測定装置。
【0075】
[4]前記制御部は、前記第1期間における前記第2変位センサの変位量の経時変化の傾きの最大値が第3閾値未満であれば、前記被験者の喉頭隆起の位置変化を推定できない状態であることをユーザに通知する[2]または[3]に記載の喉頭挙上測定装置。
【0076】
[5]前記第1変位センサの変位量が第1閾値未満から前記第1閾値以上に変化したタイミングを特定タイミングとしたとき、前記制御部は、前記特定タイミングでの前記第2変位センサの変位量が、前記第1閾値未満の値である第2閾値以上であれば、前第1期間について前記推定結果を出力し、前記特定タイミングでの前記第2変位センサの変位量が、前記第2閾値未満であれば、前記推定結果を出力しない[2]~[4]のいずれか1つに記載の喉頭挙上測定装置。
【0077】
[6]前記制御部は、前記第1変位センサの変位量及び前記第2変位センサの変位量の双方が、前記第1閾値未満の値として定められた第4閾値以上であることを条件に、前記喉頭隆起の位置変化の推定を開始し、前記第1変位センサの変位量及び前記第2変位センサの変位量の一方または双方が、前記第4閾値未満であれば前記喉頭隆起の位置変化の推定を開始しない[2]~[5]のいずれか1つに記載の喉頭挙上測定装置。
【0078】
[7]前記第1変位センサの変位量及び前記第2変位センサの変位量の一方または双方が、前記第1閾値未満の値として定められた第4閾値未満であれば、前記被験者の喉頭隆起の位置変化を推定できない状態であることをユーザに通知する[2]~[6]のいずれか1つに記載の喉頭挙上測定装置。
【0079】
[8]前記被験者の頸椎に沿う方向での前記喉頭隆起の位置を上下位置、前記被験者の前後方向での前記喉頭隆起の先端の位置を前後位置としたとき、前記制御部は、時間を横軸とし前記上下位置又は前記前後位置のいずれか一方を直交座標系の縦軸とし、前記上下位置及び前記前後位置のいずれか他方を色彩の変化で表現した2次元画像を、前記推定結果として出力する[1]~[7]のいずれか1つに記載の喉頭挙上測定装置。
【0080】
[9]前記制御部は、前記喉頭隆起の位置を推定している期間中での前記被験者の嚥下運動の回数、1回の嚥下運動に要した時間である嚥下持続時間、及び1回の嚥下運動での前記喉頭隆起の最大移動距離から選ばれる1以上を、前記2次元画像に合わせて数値で表示する[8]に記載の喉頭挙上測定装置。
【0081】
[10]前記制御部は、前記2次元画像において前記被験者が嚥下運動している期間を、嚥下運動していない前記期間とは異なる態様で表示する[8]または[9]に記載の喉頭挙上測定装置。
【0082】
[11]前記第1変位センサから前記第2変位センサへ向かう方向を第1方向とし、前記第1方向と交差する方向を第2方向としたとき、前記被験者の頚部に取り付け可能な第1横変位センサと、前記被験者の頚部のうちの、前記第1横変位センサに対して前記第2方向に離れた箇所に取り付け可能な第2横変位センサと、をさらに備え、前記制御部は、前記第1変位センサの変位量の経時変化、前記第2変位センサの変位量の経時変化、前記第1横変位センサの変位量の経時変化、及び前記第2横変位センサの変位量の経時変化に基づいて、前記喉頭隆起の位置を推定し、その推定結果を出力する[1]~[10]のいずれか1つに記載の喉頭挙上測定装置。
【符号の説明】
【0083】
IMG…2次元画像
P…所定距離
T…特定タイミング
V1…第1閾値
V2…第2閾値
V3…第3閾値
V4…第4閾値
10…喉頭挙上測定装置
20…変位センサ
21…第1変位センサ
22…第2変位センサ
101…制御部