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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126433
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】車両用衝撃吸収部材
(51)【国際特許分類】
   F16F 7/00 20060101AFI20240912BHJP
   F16F 7/12 20060101ALI20240912BHJP
   B62D 21/15 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
F16F7/00 K
F16F7/12
B62D21/15 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034807
(22)【出願日】2023-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】000241496
【氏名又は名称】豊田鉄工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106781
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 稔也
(72)【発明者】
【氏名】大沼 健二
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼本 海峰
【テーマコード(参考)】
3D203
3J066
【Fターム(参考)】
3D203AA02
3D203BA06
3D203CA07
3D203CA23
3D203CA34
3D203CA40
3J066AA02
3J066AA23
3J066BA03
3J066BC01
3J066BD05
3J066BF02
3J066BG02
(57)【要約】
【課題】効率の良い衝撃エネルギーの吸収が可能になる車両用衝撃吸収部材の構造を高い自由度で設定することのできる車両用衝撃部材を提供する。
【解決手段】衝撃吸収部材30は、樹脂材料によって形成されている。衝撃吸収部材30は、筒状をなす本体部31と、中間壁部32とを有する。中間壁部32は、本体部31の内部における同本体部31の軸線方向の中間位置に設けられるとともに、軸線方向と交差する方向に延在する。本体部31は、軸荷重によって座屈変形した場合に破断する破断部35を有する。破断部35は、本体部31と中間壁部32との境界部分に沿って延設されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂材料によって形成された車両用衝撃吸収部材であって、
筒状をなす本体部と、
前記本体部の内部における同本体部の軸線方向の中間位置に設けられて、前記軸線方向と交差する方向に延在する中間壁部と、を備え、
前記本体部は、軸荷重によって座屈変形した場合に破断する破断部を有し、
前記破断部は、前記本体部と前記中間壁部との境界部分に沿って延設されている
車両用衝撃吸収部材。
【請求項2】
前記境界部分には、同境界部分における他の部位よりも脆弱な部位である脆弱部が設けられている
請求項1に記載の車両用衝撃吸収部材。
【請求項3】
前記脆弱部は、前記本体部の周方向に延びる態様で前記本体部または前記中間壁部に形成された溝である
請求項2に記載の車両用衝撃吸収部材。
【請求項4】
前記本体部の前記軸線方向における一端は、前記軸荷重を受ける荷重受け部を構成しており、
前記溝は、前記中間壁部における前記荷重受け部から遠い側の面に設けられている
請求項3に記載の車両用衝撃吸収部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用衝撃吸収部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両用衝撃吸収部材としては、金属材料からなる筒状の本体部を有するものが多用されている(例えば特許文献1参照)。この車両用衝撃吸収部材では、本体部に対して軸荷重が作用すると、同本体部が蛇腹状になる態様で座屈変形する。こうした本体部の変形によって、衝撃エネルギーが吸収される。
【0003】
特許文献2には、筒状の本体部を樹脂材料によって形成することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2-175452号公報
【特許文献2】特開2015-175430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記車両用衝撃吸収部材では、軸荷重を受けて本体部が座屈変形する際に、同本体部は蛇腹状に折り畳まれることで軸線の延びる方向(以下「軸線方向」という。)に積層された状態になる。そして上記車両用衝撃吸収部材は、本体部の座屈変形が進むと、そうした積層状態の本体部によって同本体部のそれ以上の座屈変形が不能になる状態、いわゆる底付き状態になる。このように、上記車両用衝撃吸収部材では、本体部の座屈変形にかかる軸線方向の変形量(以下「変形ストローク」という)が、座屈変形していない状態から上記底付き状態になるまでの本体部の変形量によって定まる。
【0006】
通常、本体部の板厚が同一の条件のもとでは、樹脂製の本体部の強度は、金属製の本体部の強度と比較して低くなる。そのため、樹脂製の本体部を採用する場合には、金属製の本体部を採用する場合と比較して、同本体部の板厚が大きくなる。そのため、樹脂製の本体部を採用する場合には、本体部の板厚が大きくなる分だけ、底付き状態になるまでの本体部の変形量が小さくなる。これにより、本体部の変形ストロークが短くなるため、効率の良い衝撃エネルギーの吸収を実現するべく車両用衝撃吸収部材の構造を設定する場合における設定の自由度が低くなってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための車両用衝撃吸収部材は、樹脂材料によって形成された車両用衝撃吸収部材であって、筒状をなす本体部と、前記本体部の内部における同本体部の軸線方向の中間位置に設けられて、前記軸線方向と交差する方向に延在する中間壁部と、を備え、前記本体部は、軸荷重によって座屈変形した場合に破断する破断部を有し、前記破断部は、前記本体部と前記中間壁部との境界部分に沿って延設されている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態の車両用衝撃吸収部材の平断面図である。
図2】同車両用衝撃吸収部材の平面図である。
図3】同車両用衝撃吸収部材の図2における3矢視図である。
図4】変形の初期における同車両用衝撃吸収部材の平端面図である。
図5】変形の中期における同車両用衝撃吸収部材の平端面図である。
図6】破断した状態の同車両用衝撃吸収部材の平端面図である。
図7】底付き状態の同車両用衝撃吸収部材の平端面図である。
図8】第1実施形態の車両用衝撃吸収部材および比較例の衝撃吸収部材についての圧縮試験の結果を示すグラフである。
図9】第2実施形態の車両用衝撃吸収部材の平断面図である。
図10】同車両用衝撃吸収部材の図9における10-10線に沿った断面図である。
図11】同車両用衝撃吸収部材の溝およびその周辺の平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
以下、図1図8を参照して、第1実施形態の車両用衝撃吸収部材(以下、衝撃吸収部材30という)について説明する。
【0010】
以降において、車両の前後方向を前後方向Lとし、車両の幅方向を車幅方向Wとし、車両が水平面上に位置しているときの車両の上下方向を上下方向Zとして説明する。また、前後方向Lにおける前側および後側を、それぞれ単に「前側」および「後側」とし、上下方向Zにおける上側および下側を、それぞれ単に「上側」および「下側」として説明する。
【0011】
図1に示すように、車両の前部には、前側から順に、バンパリインフォースメント20、衝撃吸収部材30、およびフロントサイドメンバ21が設けられている。すなわち、衝撃吸収部材30は、前後方向Lにおいてバンパリインフォースメント20とフロントサイドメンバ21とにより挟まれている。
【0012】
以下、衝撃吸収部材30の各構成について詳細に説明する。
図1図3に示すように、衝撃吸収部材30は、本体部31と、中間壁部32と、台座部33とを有する。本体部31、中間壁部32、および台座部33は、合成樹脂材料によって一体成形されている。
【0013】
<本体部>
本体部31は、略正八角形の筒状をなしている。本体部31の軸線は前後方向Lにおいて延びている。本体部31の前端は、塞がれておらず、前側に向けて開口している。本実施形態では、本体部31の軸線方向における一端、詳しくは同本体部31の前端が、軸荷重を受ける荷重受け部34を構成している。
【0014】
<中間壁部>
中間壁部32は、本体部31の内部に設けられている。中間壁部32は、本体部31の前後方向Lにおける中央位置に設けられている。中間壁部32は、本体部31の軸線方向と直交する方向、すなわち上下方向Zおよび車幅方向Wに延在する平板形状をなしている。この中間壁部32により、本体部31の内部は荷重受け部34側のスペースと同荷重受け部34から遠い側のスペースとに仕切られている。
【0015】
衝撃吸収部材30は、可動型と固定型とを有する金型装置(図示略)を用いて成形される。本実施形態では、可動型と固定型との合わせ面(いわゆるパーティングライン)が、本体部31の前後方向Lにおける中央位置、すなわち中間壁部32の配設位置に設定されている。
【0016】
<破断部>
本体部31は、破断部35を有する。破断部35は、軸荷重によって本体部31が座屈変形した場合に破断する部分である。破断部35は、本体部31と中間壁部32との境界部分に沿って、同本体部31の周方向に延びている。破断部35は、本体部31の周囲全周にわたって延びている。
【0017】
本実施形態の衝撃吸収部材30では、破断部35において本体部31が破断した場合に、同本体部31が中間壁部32を含む前側の部分(以下「第1部分P1」という)と、同中間壁部32を含まない後側の部分(以下「第2部分P2」という)とに分割される。
【0018】
本実施形態では、発明者等による各種の実験やシミュレーションの結果をもとに、上述の破断態様が実現される衝撃吸収部材30の形成材料や同衝撃吸収部材30の各構成の板厚が予め求められている。そして、その求められた形成材料や板厚が、衝撃吸収部材30の形成材料や同衝撃吸収部材30の各構成の板厚に定められている。本実施形態では、衝撃吸収部材30の形成材料としては、ポリブチレンテレフタレート(PBT)が採用されている。また、本体部31の板厚および中間壁部32の板厚は、3ミリメートル以上、且つ4ミリメートル以下に設定されている。なお、上述の破断態様が実現されるのであれば、衝撃吸収部材30の形成材料や同衝撃吸収部材30の各構成の板厚は任意に変更することができる。
【0019】
<台座部>
台座部33は、本体部31の後端に設けられている。台座部33は、車幅方向Wおよび上下方向Zに延在する平板形状をなしている。台座部33の平面視における外形は略正方形である。台座部33の平面視における中央部分、詳しくは本体部31の後側にあたる部分には、台座部33を前後方向Lにおいて貫通する開口部37が設けられている。本実施形態の衝撃吸収部材30では、本体部31の後端は上記台座部33によって塞がれておらず、開口部37を介して後側に向けて開口している。台座部33の4つの角部には、同台座部33を前後方向Lにおいて貫通する貫通孔38が設けられている。この貫通孔38には、台座部33をフロントサイドメンバ21の前端面に固定するためのボルト(図示略)が挿通される。
【0020】
<作用>
以下、本実施形態の衝撃吸収部材30による作用について説明する。
車両が正面衝突すると、衝突に伴う荷重(以下、衝突荷重という)が、バンパリインフォースメント20を介して本体部31の前端を構成する荷重受け部34に作用するようになる。
【0021】
図4に示すように、このようにして衝突荷重が作用することで、本体部31は、前端側の部位から順に蛇腹状になる態様で座屈変形するようになる。本実施形態では、本体部31の前端が開口している。これにより、本体部31の前端が塞がれた構造のものと比較して、本体部31の前側の部分が軸荷重によって変形し易くなっているため、衝突荷重を受けた際の初期荷重が小さくなる。
【0022】
図5に示すように、その後においては、本体部31の座屈変形が進んで中間壁部32の配設部分に到達する。中間壁部32の配設部分は、同中間壁部32によって本体部31が支持された構造をなしている。そのため、本体部31における中間壁部32の配設部分は、同本体部31の他の部分と比べて剛性が高いといえる。したがって、本体部31の座屈変形が中間壁部32の配設部分に到達すると、そうした中間壁部32の配設部分、すなわち比較的高い剛性を有する部分によって衝突荷重を受ける状態になるため、同衝突荷重は一時的に大きくなる。
【0023】
なお本実施形態の衝撃吸収部材30では、本体部31に対する中間壁部32の前後方向Lの位置を変更することにより、本体部31の座屈変形が中間壁部32の配設部分に到達するタイミングを変更することができる。そして、これにより衝撃吸収部材30に作用する衝突荷重が大きくなるタイミングを変更することが可能になる。このように本実施形態の衝撃吸収部材30では、中間壁部32の配設位置の調整を通じて、本体部31の変形過程における衝突荷重の変化態様を調整することができる。
【0024】
本体部31の変形が進むと、図5中に二点鎖線で示すように、本体部31における中間壁部32よりも後側の部分が座屈変形するようになる。そして、この変形の当初においては、図5中に矢印A1で示すように、本体部31における中間壁部32よりも後側の部分が、後側に向けて広がる態様で変形するようになる。その一方で、そうした本体部31を内部側から支持している中間壁部32には、図5中に矢印A2で示すように、引張応力が作用するようになる。したがって、このときには、本体部31と中間壁部32との境界をなす角部36に応力が集中するようになる。
【0025】
図6に示すように、さらに本体部31の変形が進むと、上記角部36における応力の集中により発生する大きな応力によって、本体部31は同角部36を起点に破断するようになる。この破断により、本体部31は、中間壁部32を含む前側の部分である第1部分P1と中間壁部32を含まない後側の部分である第2部分P2とに分割されるようになる。
【0026】
図7に示すように、本体部31が破断した後においては、中間壁部32を含む第1部分P1が、中間壁部32を含まない第2部分P2の前端を押し開くように同第2部分P2の内部に侵入するようになる。このように本体部31を変形させることで、図7中に矢印A3で示すように、第2部分P2の前側の部分を、前後方向Lにおいて第1部分P1と重ならない位置に退避させることができる。
【0027】
本実施形態の衝撃吸収部材30では、衝突荷重を受けて本体部31が座屈変形する際に、同本体部31は蛇腹状に折り畳まれることで前後方向Lに積層された状態になる。とはいえ、衝撃吸収部材30では、第2部分P2の前側の部分が第1部分P1と重ならない位置に退避されるため、同第2部分P2の前側の部分は積層されなくなる。これにより、座屈変形していない状態から前記底付き状態になるまでの本体部31の変形量、すなわち前記変形ストロークを大きくすることができる。したがって、効率の良い衝撃エネルギーの吸収を実現するために衝撃吸収部材30の構造を高い自由度で設定することができる。
【0028】
さらに本体部31の変形が進むと、第1部分P1によって押圧されることで、第2部分P2の後側の部分が座屈変形する。その後、衝撃吸収部材30は、積層状態の本体部31によって同本体部31のそれ以上の座屈変形が不能になる状態、いわゆる底付き状態(図7に示す状態)になる。
【0029】
次に、図8を参照して、本実施形態の衝撃吸収部材30、および比較例の衝撃吸収部材についての圧縮試験の結果を説明する。
図8において実線は、本実施形態の衝撃吸収部材30についての荷重変位曲線を示す。
【0030】
図8において破線は、第1比較例の衝撃吸収部材についての荷重変位曲線を示す。なお第1比較例の衝撃吸収部材は、本体部31の前端が閉塞されている点、および中間壁部32を有していない点において本実施形態の衝撃吸収部材30と異なっている。
【0031】
図8において一点鎖線は、第2比較例の衝撃吸収部材の荷重変位曲線を示す。なお第2比較例の衝撃吸収部材は、中間壁部32を有していない点において本実施形態の衝撃吸収部材30と異なっている。
【0032】
図8に示すように、本実施形態の衝撃吸収部材30(実線)によれば、第1比較例の衝撃吸収部材(破線)に比べて、初期荷重が「5分の3」程度に低減されているといえる。これは、第1比較例の衝撃吸収部材では本体部31の前端が閉塞されているのに対し、本実施形態の衝撃吸収部材30では本体部31の前端が開口されているためと考えられる。
【0033】
また図8に示すように、第1比較例の衝撃吸収部材(破線)や第2比較例の衝撃吸収部材(一点鎖線)では、本体部31の変形過程の中期において、衝撃吸収部材に作用する衝撃荷重が徐々に大きくなっている。これに対して、本実施形態の衝撃吸収部材30(実線)によれば、本体部31の変形過程の中期において、衝撃荷重が一時的に大きくなっているといえる。これは、第1比較例の衝撃吸収部材や第2比較例の衝撃吸収部材は中間壁部32を有していないのに対し、本実施形態の衝撃吸収部材30は中間壁部32を有しているためと考えられる。
【0034】
さらに図8に示すように、本実施形態の衝撃吸収部材30(実線)によれば、第1比較例の衝撃吸収部材(破線)や第2比較例の衝撃吸収部材(一点鎖線)に比べて、最大変位、すなわち前記変形ストロークが大きくなっているといえる。これは、第1比較例の衝撃吸収部材や第2比較例の衝撃吸収部材は中間壁部32および破断部35を有していないのに対し、本実施形態の衝撃吸収部材30は中間壁部32および破断部35を有しているためと考えられる。
【0035】
<効果>
本実施形態によれば、以下に記載する効果が得られる。
(1-1)本体部31は、軸荷重によって座屈変形した場合に破断する破断部35を有している。破断部35は、本体部31と中間壁部32との境界部分に沿って延設されている。これにより、前記変形ストロークを大きくすることができるため、効率の良い衝撃エネルギーの吸収を実現するべく衝撃吸収部材30の構造を高い自由度で設定することができる。
【0036】
(第2実施形態)
以下、図9図11を参照して、第2実施形態の車両用衝撃吸収部材(以下、衝撃吸収部材40という)について、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0037】
本実施形態の衝撃吸収部材40は、他の部位よりも脆弱な部位である脆弱部を有する点のみが、第1実施形態の衝撃吸収部材30と相違している。
以下、脆弱部について、詳しく説明する。
【0038】
なお、本実施形態において第1実施形態と同様の構成については、第1実施形態と同一の符号を付すとともに、それら構成についての重複する説明を割愛する。
<脆弱部>
図9図11に示すように、本実施形態の衝撃吸収部材40は、V字溝形状の溝41を有している。溝41は、本体部31と中間壁部32との境界部分に沿って、同本体部31の周方向に延びている。詳しくは、溝41は、中間壁部32の外縁において同中間壁部32の周囲全周にわたって延びている。溝41は、中間壁部32における前記荷重受け部34から遠い側の面、すなわち同中間壁部32の後面に設けられている。なお本実施形態では、溝41が、前記境界部分における他の部位よりも脆弱な部位である脆弱部に相当する。
【0039】
<作用>
以下、本実施形態の衝撃吸収部材40による作用効果について説明する。
本実施形態の衝撃吸収部材40では、本体部31の座屈変形が中間壁部32の配設部分に到達した後にさらに進むと、同本体部31における中間壁部32よりも後側の部分が座屈変形するようになる。このとき、図11中に二点鎖線で示すように、本体部31における中間壁部32よりも後側の部分は、後側に向けて広がる態様で変形するようになる。そして、そうした本体部31の変形に伴い、中間壁部32の外縁に設けられた溝41は外周側に広げられる。これにより、V字溝形状をなす溝41の底(詳しくは、角部)に応力が集中するようになる。
【0040】
衝撃吸収部材40では、さらに本体部31の変形が進むと、上記溝41の底における応力の集中により発生する大きな応力によって、同溝41の底を始点に本体部31が裂ける。その結果、本体部31は破断部35において破断するようになる。そして、この破断により、本体部31は、中間壁部32を含む前側の部分である第1部分P1と、中間壁部32を含まない後側の部分である第2部分P2とに分割される。
【0041】
衝撃吸収部材40では、本体部31と中間壁部32との境界部分に、脆弱部としての溝41が形成されている。そのため、この溝41を起点に、予め想定した位置(具体的には、破断部35)で、本体部31を破断させることができる。これにより、本体部31の変形態様を精度良くコントロールすることができる。
【0042】
<効果>
本実施形態によれば、先の(1-1)に記載の効果に準じた効果に加えて、以下の(2-1)~(2-3)に記載する効果が得られる。
【0043】
(2-1)脆弱部としての溝41を、本体部31と中間壁部32との境界部分に設けるようにした。そのため、本体部31の変形態様を精度良くコントロールすることができる。
【0044】
(2-2)溝41を、本体部31の周方向に延びる態様で中間壁部32に形成するようにした。そのため、この溝41を起点に、予め想定した位置で、本体部31を破断させることができる。
【0045】
(2-3)溝41を、中間壁部32の後側の面に設けるようにした。そのため、本体部31を、中間壁部32を含む前側の部分である第1部分P1と中間壁部32を含まない後側の部分である第2部分P2とに分割することができる。これにより、本体部31が破断した後においては、前側の第2部分P2によって後側の第1部分P1を押し広げるようにして、同本体部31を変形させることができる。
【0046】
<変更例>
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記各実施形態および以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0047】
・第2実施形態における溝41として、V字溝形状の溝を採用することに限らず、U字溝形状の溝や矩形溝形状の溝、半円溝形状の溝など、任意の形状の溝を採用することができる。
【0048】
・第2実施形態において、本体部31の周囲全周にわたって延びる溝41に代えて、本体部31の周方向において断続的に延びる溝を設けるようにしてもよい。
・第2実施形態において、溝41に代えて、複数の凹部を設けるようにしてもよい。同構成においては、例えば複数の凹部を、本体部31の周方向に間隔を置いて並ぶ態様で、且つ、本体部31と中間壁部32との境界部分に沿って並ぶ態様で設けることができる。同構成においては、複数の凹部が脆弱部に相当する。
【0049】
その他、中間壁部32を前後方向Lに貫通する複数の貫通孔を、本体部31の周方向に間隔を置いて並ぶ態様で、且つ、本体部31と中間壁部32との境界部分に沿って並ぶ態様で設けること等も可能である。同構成においては、複数の貫通孔が脆弱部に相当する。
【0050】
・第2実施形態において、脆弱部としての溝41や凹部を、中間壁部32における荷重受け部34側の面である前面に設けるようにしてもよい。同構成によれば、本体部31を、中間壁部32を含まない前側の部分である第1部分と同中間壁部32を含む後側の部分である第2部分とに分割することができる。そのため、本体部31が破断した後においては、後側の第2部分の前端部分によって前側の第1部分の後端部分を押し広げるようにして、同本体部31を変形させることができる。これにより、第1部分の後側の部分を、前後方向Lにおいて第2部分と重ならない位置に退避させることができる。
【0051】
・第2実施形態において、脆弱部としての溝(または凹部)を、本体部31に設けるようにしてもよい。
・各実施形態において、本体部31の内部における中間壁部32の配設位置は、同本体部31の前後方向Lの中間位置であれば、本体部31の前後方向Lの中央位置以外の位置にすることができる。
【0052】
・各実施形態において、中間壁部32が延在する方向としては、本体部31の軸線方向と交差する方向であれば、本体部31の軸線方向と直交する方向以外の方向を採用することができる。
【0053】
・各実施形態において、中間壁部32に貫通孔を設けたり、他の部位と比較して板厚が薄い薄肉部を設けたりしてもよい。同構成によれば、貫通孔や薄肉部を設けることによって中間壁部32の剛性を調整することができるため、衝撃吸収部材30,40の変形態様や衝撃荷重を高い自由度で設定することができる。
【0054】
・各実施形態において、本体部31の各部の板厚や中間壁部32の各部の板厚は、任意に変更することができる。例えば本体部31における前側部分の板厚と比較して後側部分の板厚を薄くするなど、本体部31における前側部分の板厚と後側部分の板厚とを異なる値に設定することができる。また、本体部31の板厚と比較して中間壁部32の板厚を薄くするなど、本体部31の板厚と中間壁部32の板厚とを異なる値に設定することができる。その他、本体部31の前側部分の板厚を荷重受け部34に向かうに連れて薄くなるように設定するなど、本体部31の板厚を徐変させること等も可能である。上記構成によれば、本体部31の各部の剛性や中間壁部32の各部の剛性を高い自由度で調整することができるため、衝撃吸収部材30,40の変形態様や衝撃荷重を高い自由度で設定することができる。
【0055】
なお、上記構成を有する衝撃吸収部材は、各実施形態にかかる衝撃吸収部材30,40と同様に、合成樹脂材料により金型装置を利用して成形されることが好ましい。このように衝撃吸収部材を形成することにより、衝撃吸収部材を金属材料によって形成する場合と比較して、本体部31の各部の板厚や中間壁部32の各部の板厚が異なる構造の衝撃吸収部材を容易に形成することができる。
【0056】
・各実施形態において、本体部31の内面や外面に補強リブを設けるようにしてもよい。
・各実施形態において、本体部31を略正八角形の筒状に形成することに代えて、六角形の筒状や、四角形の筒状、円形の筒状、楕円形の筒状など、任意の外形をなす筒状に形成することができる。
【符号の説明】
【0057】
P1…第1部分
P2…第2部分
20…バンパリインフォースメント
21…フロントサイドメンバ
30…衝撃吸収部材
31…本体部
32…中間壁部
33…台座部
34…荷重受け部
35…破断部
36…角部
37…開口部
38…貫通孔
40…衝撃吸収部材
41…溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11