(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126434
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】接合体及び接合方法
(51)【国際特許分類】
B29C 65/16 20060101AFI20240912BHJP
B29C 65/44 20060101ALI20240912BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20240912BHJP
B32B 37/04 20060101ALI20240912BHJP
B23K 26/352 20140101ALI20240912BHJP
【FI】
B29C65/16
B29C65/44
B32B15/08 M
B32B37/04
B23K26/352
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034808
(22)【出願日】2023-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】000241496
【氏名又は名称】豊田鉄工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106781
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 稔也
(72)【発明者】
【氏名】鈴森 理生
【テーマコード(参考)】
4E168
4F100
4F211
【Fターム(参考)】
4E168AB01
4E168CB02
4E168DA42
4E168JA03
4F100AB01A
4F100AK01B
4F100BA02
4F100DD04A
4F100DD05B
4F100EC032
4F100EJ521
4F100JB16B
4F211AA04
4F211AA11
4F211AD03
4F211AD24
4F211AG03
4F211TA01
4F211TC02
4F211TD02
4F211TD11
4F211TH17
4F211TN27
(57)【要約】
【課題】金属部材と樹脂部材との接合強度を向上できる接合体及び接合方法を提供する。
【解決手段】接合体11は、金属部材12の接合面13に熱可塑性の樹脂部材14を溶着することによって接合されたものである。接合面13には、レーザの照射により、2つの第1溝15が間隔を置いて並んで形成されるとともに、第1溝15の両隣の位置に接合面13から隆起した隆起部16がそれぞれ形成されている。隣合う2つの第1溝15同士の間には、隣合う2つの第1溝15の内側に隣接するそれぞれの隆起部16と当該隆起部16同士の間に位置するレーザが未照射の領域の接合面13とにより第2溝19が形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属部材の接合面に熱可塑性の樹脂部材を溶着することによって接合された接合体であって、
前記接合面には、レーザの照射により、少なくとも2つの第1溝が間隔を置いて並んで形成されるとともに、前記第1溝の両隣の位置に前記接合面から隆起した隆起部がそれぞれ形成され、
隣合う2つの前記第1溝同士の間には、隣合う2つの前記第1溝の内側に隣接するそれぞれの前記隆起部と当該隆起部同士の間に位置する前記レーザが未照射の領域の前記接合面とにより第2溝が形成されていることを特徴とする接合体。
【請求項2】
前記隆起部は、括れ部を有した形状をなしていることを特徴とする請求項1に記載の接合体。
【請求項3】
金属部材の接合面に熱可塑性の樹脂部材を溶着することによって接合する接合方法であって、
連続発振レーザの照射により前記接合面に溝を形成する表面処理工程と、
前記接合面に前記樹脂部材を接触させた状態で、前記金属部材における前記接合面側とは反対側の面に前記連続発振レーザを照射して前記接合面を加熱することにより前記接合面に前記樹脂部材を溶着する溶着工程と、
を備えることを特徴とする接合方法。
【請求項4】
前記表面処理工程において、前記連続発振レーザの照射により前記金属部材の前記接合面に前記溝としての第1溝を複数並ぶように間隔を置いて形成することによって前記第1溝の並び方向の両側に前記接合面から隆起した隆起部を形成し、隣合う2つの前記第1溝同士の間で隣合う前記隆起部同士の間に位置する前記連続発振レーザが未照射の領域の前記接合面と当該領域の前記接合面を挟む前記隆起部同士とで第2溝を形成することを特徴とする請求項3に記載の接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属部材と樹脂部材との接合体及び接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の接合体として、例えば特許文献1に示すものが知られている。こうした接合体は、一の面に平滑部と凹部及び凸部をそれぞれ複数有する凹凸部とを有した金属部材と、上記一の面に接合された樹脂部材とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述のような接合体では、金属部材の表面にレーザで凹凸を形成することによって粗面化するとともに、この粗面化した部分に樹脂部材を成形することにより金属部材と樹脂部材との接合強度の向上を図っている。しかし、金属部材と樹脂部材との接合強度を向上させる上では、改善の余地を残すものとなっている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決する接合体は、金属部材の接合面に熱可塑性の樹脂部材を溶着することによって接合された接合体であって、前記接合面には、レーザの照射により、少なくとも2つの第1溝が間隔を置いて並んで形成されるとともに、前記第1溝の両隣の位置に前記接合面から隆起した隆起部がそれぞれ形成され、隣合う2つの前記第1溝同士の間には、隣合う2つの前記第1溝の内側に隣接するそれぞれの前記隆起部と当該隆起部同士の間に位置する前記レーザが未照射の領域の前記接合面とにより第2溝が形成されている。
【0006】
上記課題を解決する接合方法は、金属部材の接合面に熱可塑性の樹脂部材を溶着することによって接合する接合方法であって、連続発振レーザの照射により前記接合面に溝を形成する表面処理工程と、前記接合面を前記樹脂部材に接触させた状態で、前記金属部材における前記接合面側とは反対側の面に前記連続発振レーザを照射して前記接合面を加熱することにより前記接合面に前記樹脂部材を溶着する溶着工程と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】一実施形態の接合体における金属部材と樹脂部材との接合部分を示す断面模式図である。
【
図2】
図1の接合体における金属部材と樹脂部材との接合部分を示す側面図である。
【
図4】金属部材と樹脂部材との接合工程を示すブロック図である。
【
図5】金属部材の接合面の表面処理工程を示す断面模式図である。
【
図6】金属部材と樹脂部材との溶着工程を示す断面模式図である。
【
図8】変更例における金属部材と樹脂部材との溶着工程を示す平面模式図である。
【
図9】別の変更例における金属部材と樹脂部材との溶着工程を示す平面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、接合体の一実施形態を図面に従って説明する。
<接合体11>
図1及び
図2に示すように、接合体11は、直方体状の金属部材12の一端面である接合面13に直方体状の樹脂部材14の一端面を溶着することによって接合された構成になっている。金属部材12は、例えばアルミニウムによって構成される。樹脂部材14は、例えばポリプロピレンやポリエチレンなどの熱可塑性の樹脂によって構成される。
【0009】
<接合面13>
図1及び
図3に示すように、金属部材12の接合面13には、短辺方向Yに直線状に延びる2つの第1溝15が長辺方向Xに間隔を置いて並んで形成されている。第1溝15は、シングルモードの連続発振レーザを照射することによって金属部材12を熱で溶かして形成される。このため、第1溝15の両隣には、第1溝15の形成によって溶けた金属部材12によって構成される隆起部16がそれぞれ形成される。
【0010】
隆起部16は、第1溝15の形成により、接合面13から隆起した複数の隆起体17が第1溝15に沿って並んだものである。すなわち、隆起部16は、第1溝15に沿って直線状に一列に並ぶ複数の隆起体17によって構成される。したがって、1つの第1溝15の両側には、隆起部16が1つずつ配置される。すなわち、1つの第1溝15は、一対の隆起部16同士の間に配置される。隆起部16を構成する各隆起体17は、基端部に括れ部18を有した略球体形状をなしている。
【0011】
2つの第1溝15同士の間には、2つの第1溝15の内側に隣接するそれぞれの隆起部16と当該隆起部16同士の間に位置する上記連続発振レーザが未照射の領域の接合面13とにより第2溝19が形成されている。第2溝19は、第1溝15に沿って直線状に延びている。第2溝19の深さは、第1溝15の深さよりも浅くなっている。第2溝19の深さは、接合面13からの隆起部16の高さと一致している。第2溝19の幅は、第1溝15の幅よりも若干広くなっている。
【0012】
次に、金属部材12と樹脂部材14との接合方法を実施形態の作用として説明する。
<金属部材12と樹脂部材14との接合方法>
図4に示すように、金属部材12の接合面13への樹脂部材14の接合は、表面処理工程及び溶着工程を順に経ることによって行われる。
【0013】
図5に示すように、表面処理工程では、金属部材12の接合面13にシングルモードの連続発振レーザ(
図5に矢印で示す)を照射することによって短辺方向Yに延びる2つの第1溝15を長辺方向Xに間隔を置いて並ぶように形成する。このとき、各第1溝15の並び方向である長辺方向Xの両側に接合面13から隆起した隆起部16が形成される。
【0014】
これにより、2つの第1溝15同士の間で隣合う2つの隆起部16同士の間に位置する連続発振レーザが未照射の領域の接合面13と当該領域の接合面13を挟む2つの隆起部16同士とで第2溝19が形成される。このように、表面処理工程では、金属部材12の接合面13に連続発振レーザを照射することによって接合面13が粗面化される。
【0015】
図6に示すように、溶着工程では、まず、表面処理工程で粗面化された金属部材12の接合面13を樹脂部材14に上側から接触させた状態にする。この状態で、金属部材12における接合面13側とは反対側の面にシングルモードの連続発振レーザを照射して接合面13を加熱する。このとき、連続発振レーザは、
図7の太線で示すように、短辺方向Yに直線状に移動させながら照射する。
【0016】
これにより、樹脂部材14における接合面13と対応する部分が溶融するので、金属部材12の自重により隆起部16が溶融した樹脂部材14内に進入するとともに、溶融した樹脂部材14が第1溝15内、第2溝19内、及び括れ部18内に進入する。その後、溶融した樹脂部材14が冷えて固化することによって金属部材12の接合面13に樹脂部材14が溶着される。これにより、
図1に示す接合体11が製造される。
【0017】
なお、
図7の太線は、連続発振レーザの照射位置が移動した軌跡であって金属部材12の接合面13に樹脂部材14を溶着した後に金属部材12に形成される連続発振レーザによる溶融痕20を示している。
【0018】
このように、接合体11においては、金属部材12の隆起部16が樹脂部材14内に進入するとともに、樹脂部材14が金属部材12の第1溝15内、第2溝19内、及び括れ部18内にそれぞれ進入している。このため、接合体11における金属部材12と樹脂部材14との接合部分においてより高いアンカー効果が得られる。したがって、金属部材12と樹脂部材14との接合強度が効果的に向上される。
【0019】
<実施形態の効果>
以上詳述した実施形態によれば、次のような効果が発揮される。
(1)接合体11は、金属部材12の接合面13に熱可塑性の樹脂部材14を溶着することによって接合されたものである。接合面13には、連続発振レーザの照射により、2つの第1溝15が間隔を置いて並んで形成されるとともに、第1溝15の両隣の位置に接合面13から隆起した隆起部16がそれぞれ形成される。2つの第1溝15同士の間には、2つの第1溝15の内側に隣接するそれぞれの隆起部16と当該隆起部16同士の間に位置する連続発振レーザが未照射の領域の接合面13とにより第2溝19が形成されている。
【0020】
上記構成によれば、金属部材12の接合面13には、2つの第1溝15の間に1つの第2溝19が隣合うように形成されている。このため、接合面13に第2溝19が形成されない場合に比べて隆起部16の数が多くなるので、隆起部16による樹脂部材14に対するアンカー効果を好適に得ることができる。したがって、金属部材12と樹脂部材14との接合強度を向上できる。
【0021】
(2)接合体11において、隆起部16は、括れ部18を有した形状をなしている。
上記構成によれば、隆起部16が括れ部18を有した形状をなすことで、隆起部16の樹脂部材14に対するアンカー効果をより一層向上できる。
【0022】
(3)金属部材12の接合面13に熱可塑性の樹脂部材14を溶着することによって接合する接合方法は、表面処理工程と溶着工程とを備えている。表面処理工程は、連続発振レーザの照射により金属部材12の接合面13に第1溝15を2つ並ぶように間隔を置いて形成することによって第1溝15の並び方向の両側に接合面13から隆起した隆起部16を形成する。さらに、表面処理工程は、2つの第1溝15同士の間で隣合う隆起部16同士の間に位置する連続発振レーザが未照射の領域の接合面13と当該領域の接合面13を挟む隆起部16同士とで第2溝19を形成する。溶着工程は、接合面13に樹脂部材14を接触させた状態で、金属部材12における接合面13側とは反対側の面に連続発振レーザを照射して接合面13を加熱することにより接合面13に樹脂部材14を溶着する。
【0023】
上記方法によれば、表面処理工程と溶着工程とで使用されるレーザが共に連続発振レーザであるため、表面処理工程と溶着工程とで異なるレーザを使用する場合に比べてレーザの設備を簡素化できる。加えて、金属部材12の接合面13に第1溝15を2つ並んで形成すると2つの第1溝15同士の間に第2溝19が隣合うように形成される。このため、第2溝19が形成されない場合に比べて隆起部16の数を多くすることができるので、隆起部16による樹脂部材14に対するアンカー効果を好適に得ることができる。したがって、金属部材12と樹脂部材14との接合強度を向上できる。
【0024】
<変更例>
上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。また、上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0025】
・溶着工程において、金属部材12における接合面13側とは反対側の面への連続発振レーザの照射は、
図8の太線で示すように、短辺方向Yにループを描くように移動させながら行う、所謂ウォブリング照射であってもよい。
【0026】
・溶着工程において、金属部材12における接合面13側とは反対側の面への連続発振レーザの照射は、
図9の太線で示すように、短辺方向Yにジグザグに移動させながら行う、所謂ウィービング照射であってもよい。
【0027】
・表面処理工程では、連続発振レーザの照射により接合面13に第2溝19が形成されないように溝を形成するようにしてもよい。
・隆起部16は、必ずしも括れ部18を有した形状をなす必要はない。
【0028】
・接合体11において、金属部材12の接合面13には、N個(Nは4以上の自然数)の第1溝15と、隣合う2つの第1溝15同士の間に位置するN-1個の第2溝19とを形成するようにしてもよい。
【0029】
・金属部材12の接合面13に形成される第1溝15及び第2溝は、長辺方向Xに延びるようにしてもよい。
・金属部材12の接合面13に形成される第1溝15及び第2溝は、波状やジグザグに延びていてもよいし、波状やジグザグに延びる部分の一部に直線状に延びる部分が混在していてもよい。
【符号の説明】
【0030】
11…接合体
12…金属部材
13…接合面
14…樹脂部材
15…第1溝
16…隆起部
17…隆起体
18…括れ部
19…第2溝
20…溶融痕
X…長辺方向
Y…短辺方向