(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126438
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】ポリイミド前駆体組成物、ポリイミド樹脂、配線回路基板、および、電子機器
(51)【国際特許分類】
G03F 7/004 20060101AFI20240912BHJP
G03F 7/038 20060101ALI20240912BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
G03F7/004 501
G03F7/004 531
G03F7/038 504
G03F7/004 503Z
H05K1/03 610P
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034818
(22)【出願日】2023-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003812
【氏名又は名称】弁理士法人いくみ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西野 晃太
(72)【発明者】
【氏名】大角 友規
(72)【発明者】
【氏名】岩見 みづほ
(72)【発明者】
【氏名】福田 淳一
【テーマコード(参考)】
2H225
【Fターム(参考)】
2H225AG00P
2H225AM73P
2H225AM99P
2H225AN21P
2H225AN51P
2H225AN63P
2H225AN65P
2H225AN84P
2H225AN87P
2H225AN88N
2H225BA28P
2H225CB02
2H225CC01
2H225CC25
(57)【要約】
【課題】配線層との密着性、電気特性および生産効率に優れる配線回路基板を製造することができる、ポリイミド前駆体組成物を提供する。
【解決手段】ポリアミド酸と、感光剤と、現像促進剤と、アミン化合物とを含み、前記現像促進剤が、イミドアクリレート化合物および/または窒素非含有エステル化合物であり、前記アミン化合物の炭素数が、10以下である、ポリイミド前駆体組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド酸と、
感光剤と、
現像促進剤と、
アミン化合物と
を含み、
前記アミン化合物の炭素数が、10以下である、ポリイミド前駆体組成物。
【請求項2】
前記現像促進剤が、4-ヒドロキシ安息香酸類、または、イミドアクリレート化合物である、請求項1に記載のポリイミド前駆体組成物。
【請求項3】
前記現像促進剤が、4-ヒドロキシ安息香酸類である、請求項2に記載のポリイミド前駆体組成物。
【請求項4】
前記現像促進剤100質量部に対して、前記アミン化合物の配合割合が、5質量部以上である、請求項1に記載のポリイミド前駆体組成物。
【請求項5】
前記アミン化合物の酸解離係数pKaHが7以上である、請求項1に記載のポリイミド前駆体組成物。
【請求項6】
前記アミン化合物が、含窒素複素環化合物である、請求項1に記載のポリイミド前駆体組成物。
【請求項7】
前記アミン化合物が、トリアゾール系化合物である、請求項1に記載のポリイミド前駆体組成物。
【請求項8】
前記アミン化合物が、二級アミンおよび三級アミンを共に有する化合物である、請求項1に記載のポリイミド前駆体組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載のポリイミド前駆体組成物から形成される、ポリイミド樹脂。
【請求項10】
請求項9に記載のポリイミド樹脂を含む、配線回路基板。
【請求項11】
請求項10に記載の配線回路基板を含む、電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイミド前駆体組成物、ポリイミド樹脂、配線回路基板、および、電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器に用いられる配線回路基板として、金属基材、絶縁層、配線層、および、被覆層が体積された積層体が知られている。
【0003】
このような配線回路基板に用いられる絶縁層および被覆層の材料として、例えば、ポリイミド前駆体組成物が知られている(例えば、下記特許文献1参照。)。
【0004】
しかしながら、このようなポリイミド前駆体組成物から形成されるポリイミド樹脂は、配線層との密着性が低く、ポリイミド樹脂と配線層との境界に空隙が発生し、信頼性が低下するという不具合がある。そこで、配線層とポリイミド樹脂との間に、ニッケル層を形成し、密着性を向上させることが提案されている(例えば、下記特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7-179604号公報
【特許文献2】特開2013-100441号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2の配線回路基板では、ポリイミド樹脂と配線層との間に、ニッケル層を形成することによって、密着性を向上させ、高い信頼性を担保する一方、透磁率の高いニッケル層を有するため、導体損失の値が大きくなり、電気特性に劣り、さらに、ニッケル層を形成する必要があるため、生産効率が低いという不具合がある。
【0007】
つまり、ポリイミド前駆体組成物からポリイミド樹脂を形成し、配線回路基板に用いる場合に、信頼性を向上させるために、配線層と高い密着性を有することが要求され、さらに、配線回路基板は、電気特性に優れ、生産効率が高いことが要求される。
【0008】
本発明は、配線層との密着性に優れるポリイミド樹脂を形成でき、さらに、電気特性および生産効率に優れる配線回路基板を製造することができる、ポリイミド前駆体組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明[1]は、ポリアミド酸と、感光剤と、現像促進剤と、アミン化合物とを含み、前記アミン化合物の炭素数が、10以下である、ポリイミド前駆体組成物を含んでいる。
【0010】
本発明[2]は、前記現像促進剤が、4-ヒドロキシ安息香酸類、または、イミドアクリレート化合物である、上記[1]に記載のポリイミド前駆体組成物を含んでいる。
【0011】
本発明[3]は、前記現像促進剤が、4-ヒドロキシ安息香酸類である、上記[2]に記載のポリイミド前駆体組成物を含んでいる。
【0012】
本発明[4]は、前記現像促進剤100質量部に対して、前記アミン化合物の配合割合が、5質量部以上である、上記[1]~[3]のいずれか一項に記載のポリイミド前駆体組成物を含んでいる。
【0013】
本発明[5]は、前記アミン化合物の酸解離係数pKaHが7以上である、上記[1]~[4]のいずれか一項に記載のポリイミド前駆体組成物を含んでいる。
【0014】
本発明[6]は、前記アミン化合物が、含窒素複素環化合物である、上記[1]~[5]のいずれか一項に記載のポリイミド前駆体組成物を含んでいる。
【0015】
本発明[7]は、前記アミン化合物が、トリアゾール系化合物である、上記[1]~[6]のいずれか一項に記載のポリイミド前駆体組成物を含んでいる。
【0016】
本発明[8]は、前記アミン化合物が、二級アミンおよび三級アミンを共に有する化合物である、上記[1]~[5]のいずれか一項に記載のポリイミド前駆体組成物を含んでいる。
【0017】
本発明[9]は、上記[1]~[8]のいずれか一項に記載のポリイミド前駆体組成物から形成される、ポリイミド樹脂を含んでいる。
【0018】
本発明[10]は、上記[9]に記載のポリイミド樹脂を含む、配線回路基板を含んでいる。
【0019】
本発明[11]は、上記[10]に記載の配線回路基板を含む、電子機器含んでいる。
【発明の効果】
【0020】
本発明のポリイミド前駆体組成物は、ポリアミド酸と、感光剤と、現像促進剤と、アミン化合物とを含み、前記アミン化合物の炭素数が、10以下である。そのため、配線層との密着性に優れるポリイミド樹脂を形成することができ、電気特性および生産効率に優れる配線回路基板を製造することができる。
【0021】
本発明のポリイミド樹脂は、本発明のポリイミド前駆体組成物から形成される。そのため、配線層との密着性に優れる。
【0022】
本発明の配線回路基板は、本発明のポリイミド樹脂を含む。そのため、信頼性に優れ、さらに、電気特性および生産効率に優れる。
【0023】
本発明の電子機器は、本発明の配線回路基板を含む。そのため、信頼性に優れ、さらに、電気特性および生産効率に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1Aから
図1Eは、本発明の一実施形態としてのポリイミド前駆体組成物から形成されるポリイミド樹脂を用いて、被覆層を形成する方法の一例を示す。
図1Aは、積層工程を示し、
図1Bは、エッチング工程を示し、
図1Cは、塗布工程を示し、
図1Dは露光工程を示し、
図1Eは現像工程を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
1.ポリイミド前駆体組成物
本発明のポリイミド前駆体組成物は、ポリアミド酸と、感光剤と、現像促進剤と、アミン化合物とを含んでいる。ポリイミド前駆体組成物は、フォトリソグラフィ法によってパターンを形成でき、加熱によりポリイミド樹脂となる。
【0026】
<ポリアミド酸>
ポリアミド酸は、ポリイミド前駆体であり、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応生成物である。ポリアミド酸は、繰り返し単位内で隣接するアミド基とカルボキシル基とが反応(イミド化反応)し、イミド基含有閉環構造を形成することによって、ポリイミド樹脂を形成する。イミド化反応は、例えば、加熱によって生ずる。
【0027】
テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、1,2,3,4-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、および、2,3,5-トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物が挙げられる。
【0028】
ジアミンとしては、例えば、芳香族ジアミンが挙げられる。
【0029】
芳香族ジアミンとしては、例えば、p-フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、1,4-ジアミノベンゼン、2,5-ジアミノトルエン、および、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニルが挙げられる。
【0030】
ポリアミド酸は、例えば、下記の一般式(1)で表される第1構造単位と、下記の一般式(2)で表される第2構造単位とを含む。
【0031】
【0032】
【0033】
一般式(1)において、R1は、炭素数1~3のアルキル基であり、mは、0または4以下の正の整数であり、nは、4以下の正の整数である。
【0034】
第1構造単位と第2構造単位とを含むポリアミド酸は、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と、少なくとも二種類のジアミンとを、有機溶剤中で反応させることにより得られる。
【0035】
すなわち、ポリアミド酸は溶液として得られる。有機溶剤としては、特に制限されず、例えば、公知の有機溶剤が挙げられ、好ましくは、後述する有機溶剤が挙げられる。
【0036】
このような場合、ポリアミド酸の溶液の固形分濃度は、例えば、1質量%以上、好ましくは、3質量%以上、また、例えば、60質量%以下、好ましくは、50質量%以下である。
【0037】
また、少なくとも二種類のジアミンは、第1構造単位用のジアミン(第1ジアミン)と、第2構造単位用のジアミン(第2ジアミン)とを含む。
【0038】
第1ジアミンとしては、例えば、p-フェニレンジアミンが挙げられる。すなわち、一般式(1)おいて、mは、好ましくは、0であり、nは、好ましくは、1である。
【0039】
第2ジアミンとしては、例えば、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニルが挙げられる。
【0040】
第1ジアミン(a1)と第2ジアミン(a2)のモル比率(a1/a2)は、例えば、0.25以上、好ましくは、0.5以上、より好ましくは、1以上、さらに好ましくは、2以上、また、例えば、10以下、好ましくは、7.5以下、より好ましくは、5以下である。
【0041】
第1ジアミン(a1)と第2ジアミン(a2)のモル比率(a1/a2)が、上記下限以上であれば、ポリイミド前駆体組成物から形成されるポリイミド樹脂の熱膨張率を抑制でき、また、上記上限以下であれば、ポリイミド前駆体組成物から形成されるポリイミド樹脂の吸湿膨張率を抑制できる。
【0042】
ポリイミド前駆体組成物(固形分)100質量部に対する、ポリアミド酸(固形分)の配合割合は、例えば、40質量部以上、好ましくは、50質量部以上、より好ましくは、55質量部以上、さらに好ましくは、60質量部以上、また、例えば、90質量部以下、好ましくは、80質量部以下、より好ましくは、70質量部以下、さらに好ましくは、65質量部以下である。
【0043】
ポリイミド前駆体組成物(固形分)100質量部に対する、ポリアミド酸(固形分)の配合割合が、上記範囲内であれば、ポリイミド前駆体組成物の良好な粘度を確保できる。
【0044】
<感光剤>
感光剤は、フォトリソグラフィ法の露光工程で光照射を受けた部分(露光部分)に含まれるポリアミド酸のイミド化を促進させる成分である(ポリアミド酸のイミド化が促進された部分は、露光工程より後の現像工程で使用される現像液に対する溶解性が低下する)。そのため、配線層の材料である金属との密着性を向上させることができる。
【0045】
感光剤としては、例えば、ピリジン系感光剤が挙げられる。
【0046】
ピリジン系感光剤としては、例えば、下記の一般式(3)で表される化合物(1,4-ジヒドロピリジン誘導体)が挙げられる。一般式(3)において、R2、R3、R4、およびR5は、それぞれ、水素原子、または、炭素数1~4のアルキル基であり、互いに同じであってもよいし、互いに異なってもよい。また、一般式(3)において、Arは、オルソ位にニトロ基を有するアリル基である。
【0047】
【0048】
一般式(3)において、R2は、例えば、水素原子またはメチル基である。R3は、例えば、水素原子またはメチル基である。R4は、例えば、メチル基またはエチル基である。R5は、例えば、メチル基またはエチル基である。R6は、例えば、メチル基またはエチル基である。Arは、例えば、2-ニトロフェニル基である。
【0049】
一般式(3)で表されるピリジン系感光剤としては、例えば、1-エチル-3,5-ジメトキシカルボニル-4-(2-ニトロフェニル)-1,4-ジヒドロピリジン、1-メチル-3,5-ジメトキシカルボニル-4-(2-ニトロフェニル)-1,4-ジヒドロピリジン、1-プロピル-3,5-ジメトキシカルボニル-4-(2-ニトロフェニル)-1,4-ジヒドロピリジン、および、1-プロピル-3,5-ジエトキシカルボニル-4-(2-ニトロフェニル)-1,4-ジヒドロピリジンが挙げられる。
【0050】
ピリジン系感光剤としては、好ましくは、下記の式(4)で表わされる1-エチル-3,5-ジメトキシカルボニル-4-(2-ニトロフェニル)-1,4-ジヒドロピリジンが挙げられる。
【0051】
【0052】
ピリジン系感光剤(1,4-ジヒドロピリジン誘導体)は、例えば、置換ベンズアルデヒドと、その2倍モル量のアルキルプロピオレート(プロパギル酸アルキルエステル)と、所定の第1級アミンとを、氷酢酸中で還流下に反応させることにより、得られる(Khim.Geterotsikl.Soed.,pp.1067-1071,1982)。
【0053】
ポリイミド前駆体組成物(固形分)100質量部に対する、感光剤の配合割合は、例えば、1質量部以上、好ましくは、3質量部以上、より好ましくは、5質量部以上、さらに好ましくは、5.5質量部以上、とりわけ好ましくは、6質量部以上、また、例えば、15質量部以下、好ましくは、10質量部以下、より好ましくは、8質量部以下、さらに好ましくは、7質量部以下である。
【0054】
ポリイミド前駆体組成物(固形分)100質量部に対する、感光剤の配合割合が、上記下限以上であれば、現像液に対する露光部分の上述の溶解性低下効果を十分に確保でき、配線層の材料である金属との密着性を向上させることができる。
【0055】
ポリイミド前駆体組成物(固形分)100質量部に対する、感光剤の配合割合が、上記上限以下であれば、ポリイミド前駆体組成物の保存時における固形分の析出を抑制でき、さらに、フォトリソグラフィ法の現像工程後の加熱硬化工程において、形成されるポリイミド樹脂の厚さの減少を抑制できる。
【0056】
ポリアミド酸100質量部に対する、感光剤の配合割合は、例えば、3質量部以上、好ましくは、5質量部以上、より好ましくは、7質量部以上、さらに好ましくは、9質量部以上、また、例えば、20質量部以下、好ましくは、15質量部以下、より好ましくは、12質量部以下である。
【0057】
<現像促進剤>
現像促進剤は、現像工程において、現像液に対するフォトリソグラフィ法の露光工程で光照射を受けていない部分(未露光部)の溶解を促進させる。
【0058】
現像促進剤としては、例えば、エステル化合物が挙げられる。現像促進剤は、エステル結合を有しているため、例えば、現像工程において塩基性現像液が用いられる場合には、現像促進剤のエステル結合が、塩基性現像液により加水分解されてアルコールおよびカルボン酸を生成し、それにより、親水性が増大することに伴って、塩基性現像液がポリアミド酸に、より一層浸透しやすくなる。
【0059】
このように、エステル化合物を用いることにより、ポリアミド酸に対する塩基性現像液の浸透性が向上することにより、現像工程において、未露光部をより確実に除去することができる。そのため、形成されたポリイミド樹脂は、パターニング精度に優れる。
【0060】
現像促進剤は、単独で使用してもよく、2種以上併用することもできる。
【0061】
エステル化合物としては、例えば、窒素非含有エステル化合物、および、窒素含有エステル化合物が挙げられる。また、耐熱性の観点から、好ましくは、窒素非含有エステル化合物が挙げられる。
【0062】
窒素非含有エステル化合物としては、例えば、芳香環非含有の窒素非含有エステル化合物、および、芳香環含有の窒素非含有エステル化合物が挙げられ、好ましくは、芳香環含有の窒素非含有エステル化合物が挙げられる。
【0063】
芳香環非含有の窒素非含有エステル化合物としては、例えば、環状エステル化合物が挙げられる。
【0064】
環状エステル化合物としては、例えば、ε-カプロラクトン、グリコリド、DL-ラクチド、テトラメチルグリコリド、デルタオクタノラクトン、DL-メバロノラクトン、および、ガンマヘプタノラクトンが挙げられる。
【0065】
芳香環含有の窒素非含有エステル化合物としては、例えば、芳香環含有の脂肪族カルボン酸エステル化合物、および、芳香族カルボン酸エステル化合物が挙げられる。好ましくは、耐熱性の観点から、芳香族カルボン酸エステル化合物が挙げられる。
【0066】
芳香環含有の脂肪族カルボン酸エステル化合物としては、例えば、芳香環含有の酢酸エステル化合物が挙げられる。
【0067】
芳香環含有の酢酸エステル化合物としては、例えば、(3-メチルフェニル)アセテート、メチル-2-ヒドロキシ-2-フェニルアセテート、メチル-2-(4-ヒドロキシフェニル)アセテート、エチル-2-(2-メチルフェニル)アセテート、エチル-2-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)アセテート、および、エチル-2-ヒドロキシ-2-(3-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)アセテートが挙げられる。
【0068】
芳香族カルボン酸エステル化合物としては、例えば、安息香酸エステル化合物、フタル酸エステル化合物、および、トリメリット酸エステル化合物が挙げられ、好ましくは、安息香酸エステル化合物が挙げられる。
【0069】
安息香酸エステル化合物としては、例えば、エチル-3-ヒドロキシベンゾエート、エチル-2-アセチルオキシベンゾエート、エチル-2-エトキシ-6-ヒドロキシベンゾエート、エチル-3,5-ジヒドロキシベンゾエート、エチル-2,4-ジヒドロキシ-6-メチルベンゾエート、2-ヒドロキシエチル-2-ヒドロキシベンゾエート、および、フェニルベンゾエート(安息香酸フェニル)が挙げられ、好ましくは、フェニルベンゾエート(安息香酸フェニル)が挙げられる。
【0070】
安息香酸エステル化合物としては、4-ヒドロキシ安息香酸(パラベン)類も挙げられる。
【0071】
4-ヒドロキシ安息香酸(パラベン)類としては、例えば、ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート(ブチルパラベン)、イソブチル-4-ヒドロキシベンゾエート(イソブチルパラベン)、ヘキシル-4-ヒドロキシベンゾエート(ヘキシルパラベン)、2-メチルプロピル-4-ヒドロキシベンゾエート、2-エチルヘキシル-4-ヒドロキシベンゾエート、および、ベンジル-4-ヒドロキシベンゾエート(ベンジルパラベン)が挙げられ、好ましくは、ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート(ブチルパラベン)が挙げられる。
【0072】
フタル酸エステル化合物としては、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジプロピル、フタル酸ジイソプロピル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジフェニル、および、フタル酸ビス(2-メトキシエチル)が挙げられる。
【0073】
トリメリット酸エステル化合物としては、トリメリット酸トリメチル、トリメリット酸トリプロピル、トリメリット酸トリブチル、および、トリメリット酸トリス(2-エチルヘキシル)が挙げられる。
【0074】
窒素非含有エステル化合物は、好ましくは、安息香酸エステル化合物が挙げられ、また、親水性を向上する観点から、より好ましくは、フェノール性水酸基を有する安息香酸エステル化合物が挙げられる。そのようなフェノール性水酸基を有する安息香酸エステル化合物として、例えば、4-ヒドロキシ安息香酸(パラベン)類が挙げられる。
【0075】
窒素含有エステル化合物としては、例えば、下記の一般式(5)で表される、イミドアクリレート化合物が挙げられる。
【0076】
【0077】
一般式(5)において、R7は、水素原子またはメチル基であり、R8は、炭素数2以上の2価の炭化水素基である。
【0078】
イミドアクリレート化合物としては、例えば、下記の式(6)で表されるN-アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミドが挙げられる。すなわち、一般式(5)において、R7は、好ましくは、水素原子であり、R8は、好ましくは、エチレン基である。
【0079】
【0080】
イミドアクリレート化合物としては、また、例えば、N-アクリロイルオキシエチル-1,2,3,6-テトラヒドロフタルイミド、および、N-アクリロイルオキシエチル-3,4,5,6-テトラヒドロフタルイミドも挙げられる。
【0081】
現像促進剤としては、例えば、4-ヒドロキシ安息香酸類、および、イミドアクリレート化合物が挙げられ、好ましくは、4-ヒドロキシ安息香酸類が挙げられる。具体的には、現像促進剤としては、例えば、ブチルパラベン、および、N-アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミドが挙げられ、好ましくは、ブチルパラベンが挙げられる。
【0082】
ポリイミド前駆体組成物(固形分)100質量部に対する、現像促進剤の配合割合は、例えば、10質量部以上、好ましくは、20質量部以上、より好ましくは、25質量部以上、さらに好ましくは、30質量部以上、また、例えば、60質量部以下、好ましくは、50質量部以下、より好ましくは、40質量部以下、さらに好ましくは、35質量部以下である。
【0083】
ポリアミド酸(固形分)100質量部に対する、現像促進剤の配合割合は、例えば、20質量部以上、好ましくは、30質量部以上、より好ましくは、40質量部以上、さらに好ましくは、45質量部以上、また、例えば、100質量部以下、好ましくは、80質量部以下、より好ましくは、60質量部以下である。
【0084】
ポリアミド酸(固形分)100質量部に対する、現像促進剤の配合割合が、上記下限以上であれば、ポリアミド酸のイミド化の過度の進行を抑制でき、上記上限以下であれば、十分な相溶性を確保して、現像コントラストの向上を図ることができる。
【0085】
<アミン化合物>
アミン化合物は、ポリアミド酸のカルボキシ基を保護することで、配線層材料である金属との錯体形成を阻害し、イミド化を促進する。つまり、金属とポリイミド前駆体組成物との界面における、ポリアミド酸のイミド化を促進することができ、配線層の材料である金属とポリイミド樹脂との密着性を向上させる。
【0086】
アミン化合物は、イミド基の窒素原子およびアミド基の窒素原子以外の、アミン窒素原子を含む。
【0087】
また、アミン化合物は、炭素数が10以下であり、好ましくは、8以下、より好ましくは、6以下、また、例えば、1以上、好ましくは、2以上、より好ましくは、4以上である。そのため、より一層、配線層の材料である金属とポリイミド前駆体組成物との界面における、ポリアミド酸のイミド化を促進することができ、配線層の材料である金属とポリイミド樹脂との密着性を向上させる。
【0088】
アミン化合物としては、例えば、1級アミン化合物、二級アミン化合物、および、三級アミン化合物が挙げられ、また、例えば、二級アミンおよび三級アミンを共に有する化合物であってもよい。
【0089】
アミン化合物としては、例えば、脂肪族アミン化合物、芳香族アミン化合物、および、含窒素複素環化合物が挙げられ、好ましくは、脂肪族アミン化合物、および、含窒素複素環化合物が挙げられ、より好ましくは、含窒素複素環化合物が挙げられる。
【0090】
脂肪族アミンとしては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ペンチルアミン、エタノールアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ-N-プロピルアミン、ジ-N-ペンチルアミン、ジエタノールアミン、N,N-ジメチルエチレンジアミン、N,N-ジメチルホルムアミドジメチルアセタール、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ-N-プロピルアミン、および、トリエタノールアミンが挙げられ、好ましくは、N,N-ジメチルホルムアミドジメチルアセタール、および、トリエチルアミンが挙げられ、より好ましくは、N,N-ジメチルホルムアミドジメチルアセタールが挙げられる。なお、N,N-ジメチルホルムアミドジメチルアセタールは、二級アミンおよび三級アミンを共に有する化合物である。
【0091】
芳香族アミンとしては、例えば、アニリン、ベンジルアミン、N-メチルアニリン、N-エチルアニリン、N,N-ジメチルアニリン、3-アミノ安息香酸、および、4-アミノ安息香酸が挙げられ、好ましくは、ベンジルアミンが挙げられる。
【0092】
含窒素複素環化合物としては、例えば、ピリジン化合物、モルホリン化合物、イミダゾール化合物、および、トリアゾール化合物が挙げられ、好ましくは、モルホリン化合物、および、トリアゾール化合物が挙げられ、より好ましくは、トリアゾール化合物が挙げられる。
【0093】
ピリジン化合物としては、例えば、ピリジン、メチルピリジン、エチルピリジン、ジメチルピリジン、および、4-ジメチルアミノピリジンが挙げられる。
【0094】
モルホリン化合物としては、例えば、モルホリン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン、および、2,6-ジメチルモルホリンが挙げられ、好ましくは、モルホリン、および、N-メチルモルホリンが挙げられる。
【0095】
イミダゾール化合物としては、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、N-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、および、2-フェニルイミダゾールが挙げられる。
【0096】
トリアゾール化合物としては、1H-トリアゾール、5-メチル-1H-トリアゾール、5-エチル-1H-トリアゾール、4,5-ジメチル-1H-トリアゾール、5-フェニル-1H-トリアゾール、5-ヒドロキシフェニル-1H-トリアゾール、フェニルトリアゾール、p-エトキシフェニルトリアゾール、5-ベンジル-1H-トリアゾール、ヒドロキシフェニルトリアゾール、1,5-ジメチルトリアゾール、4,5-ジエチル-1H-トリアゾール、1H-ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、5-メチル-1H-ベンゾトリアゾール、4-メチル-1H-ベンゾトリアゾール、4-カルボキシ-1H-ベンゾトリアゾール、および、5-カルボキシ-1H-ベンゾトリアゾールが挙げられ、好ましくは、1H-ベンゾトリアゾールが挙げられる。
【0097】
アミン化合物としては、例えば、脂肪族アミン化合物、および、含窒素複素環化合物が挙げられる。具体的には、アミン化合物としては、例えば、脂肪族アミン化合物、モルホリン化合物、および、トリアゾール化合物が挙げられ、好ましくは、トリエチルアミン、N,N-ジメチルホルムアミドジメチルアセタール、ベンジルアミン、モルホリン、N-メチルモルホリン、および、1H-ベンゾトリアゾールが挙げられ、より好ましくは、N,N-ジメチルホルムアミドジメチルアセタール、および、1H-ベンゾトリアゾールが挙げられ、さらに好ましくは、1H-ベンゾトリアゾールが挙げられる。なお、アミン化合物としては、N,N-ジメチルホルムアミドジメチルアセタールのような、二級アミンおよび三級アミンを共に有する化合物も好ましい。
【0098】
アミン化合物は、単独で用いられてもよいし、二種類以上が併用されてもよい。
【0099】
アミン化合物のpKaHは、例えば、7以上、好ましくは、7.5以上、より好ましくは、8以上、また、例えば、12以下、好ましくは、11.5以下、より好ましくは、11以下である。
【0100】
ポリイミド前駆体組成物(固形分)100質量部に対する、アミン化合物の配合割合は、例えば、1質量部以上、好ましくは、1.5質量部以上、より好ましくは、2質量部以上、さらに好ましくは、2.5質量部以上、とりわけ好ましくは、3質量部以上、また、例えば、10質量部以下、好ましくは、8質量部以下、より好ましくは、6質量部以下、さらに好ましくは、5質量部以下、とりわけ好ましくは、4質量部以下、最も好ましくは、3.5質量部以下である。
【0101】
ポリイミド前駆体組成物(固形分)100質量部に対する、アミン化合物の配合割合が上記範囲内であれば、配線層の材料である金属とポリイミド樹脂との密着性を向上させることができる。
【0102】
ポリアミド酸(固形分)100質量部に対する、アミン化合物の配合割合は、例えば、1.5質量部以上、好ましくは、2質量部以上、より好ましくは、2.5質量部以上、さらに好ましくは、3質量部以上、とりわけ好ましくは、4質量部以上、最も好ましくは、4.5質量部以上、また、例えば、10質量部以下、好ましくは、8質量部以下、より好ましくは、6質量部以下である。
【0103】
ポリアミド酸(固形分)100質量部に対する、アミン化合物の配合割合が上記範囲内であれば、配線層の材料である金属とポリイミド樹脂との密着性を向上させることができる。
【0104】
現像促進剤100質量部に対する、アミン化合物の配合割合は、例えば、3質量部以上、好ましくは、5質量部以上、より好ましくは、7質量部以上、さらに好ましくは、9質量部以上、また、例えば、30質量部以下、好ましくは、20質量部以下、より好ましくは、15質量部以下、さらに好ましくは、12質量部以下である。
【0105】
現像促進剤100質量部に対する、アミン化合物の配合割合が上記範囲内であれば、配線層の材料である金属とポリイミド樹脂との密着性を向上させることができる。
【0106】
ポリイミド前駆体組成物は、他の成分を含有してもよい。他の成分としては、例えば、光増感剤が挙げられる。
【0107】
光増感剤としては、例えば、3,3’-カルボニルビス(7-N,N-ジメトキシ)クマリン、3-ベンゾイルクマリン、3-ベンゾイル-7-N,N-メトキシクマリン、およびベンザルアセトフェノンが挙げられる。
【0108】
ポリアミド酸(固形分)100質量部に対する、光増感剤の配合割合は、例えば、0.05質量部以上、また、例えば、20質量部以下である。
【0109】
ポリイミド前駆体組成物は、例えば、ポリアミド酸と、感光剤と、現像促進剤と、炭素数1~10のアミン化合物と、必要に応じて添加される他の成分とを混合することにより、調製できる。ポリイミド前駆体組成物は、好ましくは、ポリアミド酸の溶液と、感光剤と、現像促進剤と、炭素数1~10のアミン化合物と、必要に応じて添加される他の成分とを混合する、または、ポリイミド前駆体組成物は、好ましくは、ポリアミド酸と、感光剤と、現像促進剤と、炭素数1~10のアミン化合物と、必要に応じて添加される他の成分とを有機溶剤中で混合することにより、ポリイミド前駆体組成物の希釈液(ワニス)として調製できる。具体的には、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを有機溶媒中で反応させることによって得られるポリアミド酸の溶液に、感光剤と、現像促進剤と、炭素数1~10のアミン化合物と、必要に応じて他の成分とを配合することにより、ワニスを調製できる。
【0110】
有機溶剤としては、例えば、非プロトン性極性溶媒が挙げられる。
【0111】
非プロトン性極性溶媒としては、例えば、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、およびヘキサメチルホスホルアミドが挙げられる。
【0112】
ポリアミド酸(固形分)100質量部に対する、有機溶剤の配合割合は、例えば、150質量部以上、また、例えば、2000質量部以下である。
【0113】
ポリイミド前駆体組成物の希釈液(ワニス)における、ポリアミド酸(固形分)の含有量は、例えば、5質量%以上、好ましくは、7.5質量%以上、より好ましくは、10質量%以上、また、例えば、20質量%以下、好ましくは、16質量%以下、より好ましくは、14質量%以下である。
【0114】
ポリイミド前駆体組成物の希釈液(ワニス)における、ポリアミド酸(固形分)の含有量が、上記範囲内であれば、ポリイミド前駆体組成物の良好な粘度を確保することができる。
【0115】
ポリイミド前駆体組成物の希釈液(ワニス)における、感光剤(固形分)の含有量は、例えば、0.5質量%以上、好ましくは、1質量%以上、また、例えば、10質量%以下、好ましくは、7.5質量%以下、より好ましくは、5質量%以下、さらに好ましくは、3質量部以下、とりわけ好ましくは、2質量部以下である。
【0116】
ポリイミド前駆体組成物の希釈液(ワニス)における、感光剤(固形分)の含有量が、上記下限以上であると、ポリイミド前駆体組成物において、露光部における、ポリアミド酸の加熱によるイミド化を促進し、現像液に対する露光部の溶解性を低下させ、電気特性に優れるポリイミド樹脂を形成できる。感光剤(固形分)の含有量が、上記上限以下であると、加熱工程において、ポリイミド樹脂のパターンの厚さの減少を抑制することができる。
【0117】
ポリイミド前駆体組成物の希釈液(ワニス)における、現像促進剤(固形分)の含有量は、例えば、1.0質量%以上、好ましくは、1.5質量%以上、より好ましくは、2.0質量%以上、さらに好ましくは、3.0質量%以上、とりわけ好ましくは、4.0質量%以上、また、例えば、15質量%以下、好ましくは、13質量%以下、より好ましくは、11質量%以下、さらに好ましくは、10質量%以下、特に好ましくは、8質量%以下である。
【0118】
ポリイミド前駆体組成物の希釈液(ワニス)における、現像促進剤(固形分)の含有量が、上記下限以上であれば、ポリアミド酸のイミド化の過度の進行を抑制できる。現像促進剤(固形分)の含有量が、上記上限以下であれば、十分な相溶性を確保して、現像コントラストの向上を図ることができる。
【0119】
ポリイミド前駆体組成物の希釈液(ワニス)における、アミン化合物(固形分)の含有量は、例えば、0.01質量%以上、好ましくは、0.03質量%以上、より好ましくは、0.05質量%以上、また、例えば、3質量%以下、好ましくは、2.5質量%以下、より好ましくは、2質量%以下である。
【0120】
ポリイミド前駆体組成物の希釈液(ワニス)における、アミン化合物(固形分)の含有量が、上記範囲内であれば、配線層の材料である金属とポリイミド樹脂との密着性を向上させることができる。
【0121】
ポリイミド前駆体組成物(またはワニス)は、加熱硬化によりポリイミド樹脂を形成する。
【0122】
2.ポリイミド樹脂
本発明のポリイミド樹脂は、本発明のポリイミド前駆体組成物から形成される。ポリイミド樹脂は、例えば、配線回路基板の被覆層として用いられる。
【0123】
3.配線回路基板
本発明の配線回路基板は、例えば、基材と、基板上に配置される絶縁層と、配線層と、被覆層とを備える。被覆層は、本発明のポリイミド樹脂を含む。
【0124】
基材の形状としては、例えば、所定の厚みを有するフィルム形状(シート形状を含む。)、および、板状が挙げられる。
【0125】
基材の材料としては、例えば、金属が挙げられ、好ましくは、アルミニウム、ステンレス、および銅が挙げられ、より好ましくは、ステンレスが挙げられる。
【0126】
基材の厚みとしては、例えば、5μm以上、好ましくは、10μm以上、また、例えば、100μm以下、好ましくは、50μm以下である。
【0127】
絶縁層の材料としては、特に限定されず、公知の材料を用いることができる。絶縁層の材料としては、好ましくは、ポリイミド樹脂が挙げられる。
【0128】
絶縁層の厚みとしては、例えば、1μm以上、好ましくは、5μm以上、また、例えば、50μm以下、好ましくは、30μm以下である。
【0129】
配線層の材料としては、例えば、金属が挙げられ、好ましくは、アルミニウム、クロム、および、銅が挙げられる。
【0130】
配線層の材料は、単独で用いられてもよいし、二種類以上が併用されてもよく、好ましくは、クロムと銅との併用が挙げられる。
【0131】
配線層の厚みとしては、例えば、1μm以上、好ましくは、10μm以上、また、例えば、50μm以下、好ましくは、30μm以下である。
【0132】
次に、配線回路基板1において、本発明のポリイミド前駆体組成物から、ポリイミド樹脂の被覆層を形成する方法を、
図1A~
図1Eを参照して説明する。
【0133】
まず、
図1Aに示すように、基材S上に、絶縁層材料(例えば、ポリイミド前駆体組成物)塗布し、硬化させ、絶縁層10を形成する。さらに、下地として、金属からなる配線層材料を、スパッタ蒸着法によって、積層し、金属層21を形成する。加えて、ドライフィルムレジストを用いて、所定の配線パターンと逆パターン形状となるめっきレジスト30を形成した後、電解銅めっき22により、金属層21におけるめっきレジストが形成されていない部分に、所定の配線パターンとなる導体回路パターン20(配線層)を、セミアディティブ法により形成する(積層工程)。
【0134】
その後、
図1Bに示すように、めっきレジスト30を、化学エッチングによって除去し、めっきレジストが形成されていた金属層21を、化学エッチングによって除去する(エッチング工程)。
【0135】
次いで、
図1Cに示すように、本発明のポリイミド前駆体組成物の希釈液(ワニス)を、塗布し、さらに、加熱することによって乾燥し、皮膜40Aを形成する(塗布工程)。
【0136】
塗布方法としては、例えば、スピンコート、および、スクリーン印刷が挙げられる。
【0137】
乾燥温度は、例えば、100℃以上、また、例えば、200℃以下である。乾燥時間は、例えば、1分以上、また、例えば、15分以下である。
【0138】
皮膜50Aの厚さは、例えば、1μm以上、好ましくは、10μm以上、また、例えば、50μm以下、好ましくは、40μm以下である。
【0139】
次いで、
図1Dに示すように、皮膜40Aに、フォトマスクMを介して紫外線照射する(露光工程)。フォトマスクMは、導体回路パターン20(配線層)のパターン形状に対応する開口部Maを有する。
【0140】
照射紫外線の波長は、例えば、300nm以上、また、例えば、450nm以下である。紫外線の累積照射量は、例えば、100mJ/cm2以上、また、例えば、1000mJ/cm2以下である。
【0141】
紫外線照射により、皮膜40Aにおいて、露光部分41と未露光部分42とが生ずる。紫外線照射の後、皮膜40Aを予備加熱してもよい。
【0142】
予備加熱温度は、例えば、100℃以上、また、例えば、300℃以下である。予備加熱時間は、例えば、5分以上、また、例えば、30分以下である。
【0143】
次いで、
図1Eに示すように、皮膜40Aを現像する。具体的には、皮膜40Aの未露光部分42が、現像液によって溶解されて除去される(現像工程)。現像後、露光部分41を加熱する。これによって、皮膜40Aの露光部分41に、ポリイミド樹脂が形成され、被覆層40Bが形成される。
【0144】
現像液としては、例えば、塩基性現像剤が挙げられる。
【0145】
塩基性現像剤としては、例えば、無機アルカリ溶液、および、有機アルカリ溶液が挙げられる。
【0146】
無機アルカリ溶液としては、例えば、水酸化ナトリウム水溶液、および、水酸化カリウム水溶液が挙げられる。
【0147】
有機アルカリ溶液としては、例えば、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)の水溶液、および、TMAH/エキネン溶液が挙げられ、好ましくは、TMAH/エキネン溶液が挙げられる。
【0148】
現像方法としては、例えば、浸漬(ディップ)法、スプレー法、および、パドル法が挙げられる。
【0149】
加熱温度は、例えば、300℃以上、また、例えば、450℃以下である。加熱時間は、例えば、1時間以上、また、例えば、10時間以下である。
【0150】
以上のようにして、基板S上に、絶縁層10と、所定のパターン形状を有する導体パターン20(配線層)と、導体パターン20(配線層)を被覆し、ポリイミド樹脂からなる被覆層40Bとからなる積層体が形成される。これによって、配線回路基板1が得られる。
【0151】
このように、本発明の配線回路基板は、ニッケル層を形成しない。そのため、電気特性に優れ、生産効率が高い。
【0152】
4.電子機器
本発明の電子機器は、本発明の配線回路基板を含む。
【0153】
電子機器としては、例えば、ノート型パーソナルコンピュータ、携帯電話器が挙げられる。
【0154】
<作用効果>
本発明のポリイミド前駆体組成物は、ポリアミド酸と、感光剤と、現像促進剤と、アミン化合物とを含み、前記アミン化合物の炭素数が、10以下である。そのため、配線層との密着性に優れるポリイミド樹脂を形成することができ、電気特性および生産効率に優れる配線回路基板を製造することができる。
【0155】
具体的には、本発明のポリイミド前駆体組成物は、炭素数10以下のアミン化合物を含む。そのため、ポリアミド酸のカルボキシ基を保護することで、金属との錯体形成を阻害し、イミド化を促進することができ、配線層との密着性に優れるポリイミド樹脂を形成することができる。
【0156】
よって、本発明のポリイミド前駆体組成物から形成したポリイミド樹脂は、密着性に優れ、そのため、ニッケル層を形成する必要がなく、電気特性および生産効率に優れる配線回路基板を製造することができる。
【実施例0157】
以下に実施例、比較例および参考例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、何ら実施例、比較例および参考例に限定されない。また、以下の記載において用いられる配合割合(含有量)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有量)、物性値、パラメータなど該当記載の上限(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
【0158】
<成分の詳細>
各実施例、および、各比較例で用いた成分の、商品名および略語について、詳述する。
【0159】
BPDA:3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
PPD:p-フェニレンジアミン
TFMB:2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル
NMP:N-メチル-2-ピロリドン
DMF‐DMA:N,N-ジメチルホルムアミドジメチルアセタール
NKS-4:1-エチル-3,5-ジメトキシカルボニル-4-(2-ニトロフェニル)-1,4-ジヒドロピリジン
Aronix:トリプロピレングリコールジアクリレート、東亞合成社製
TMAH:水酸化テトラメチルアンモニウム
エキネン:エタノールを主剤とした混合溶剤
【0160】
<ポリイミド前駆体組成物の調製>
実施例1
まず、ポリアミド酸を合成した。具体的には、1000mLの四つ口フラスコ内で、94.15g(320mmol)のBPDAと、27.68g(256mmol)のPPDと、20.50g(64mmol)のTFMBと、874gのNMPとを含む溶液を、室温(25℃)で50時間、撹拌した(ポリアミド酸(A)の合成)。これにより、ポリアミド酸(A)を含有するNMP溶液を得た。合成されたポリアミド酸(A)は、上述の第1構造単位および第2構造単位を含む。このポリアミド酸(A)において、第1構造単位を表す上記一般式(1)中のmは0であり、かつ、一般式(1)中のnは1である。また、このポリアミド酸(A)における第2構造単位の割合は、20モル%である。
【0161】
次いで、7.1g(0.06mol)のDMF‐DMAを、70gのNMPで希釈した溶液を、ポリアミド酸(A)を含有する上記NMP溶液に、10分間で滴下した。滴下後、ポリアミド酸(A)とDMF‐DMAとの混合溶液を、30℃で3時間、撹拌した。撹拌後、感光剤と、現像促進剤とを混合し、感光性のポリイミド前駆体組成物のワニスを調製した。感光剤は、NKS-4を用い、現像促進剤は、ブチルパラベンを用いた。ポリイミド前駆体組成物の調製においては、上記ポリアミド酸(A)(固形分)と、NKS-4と、ブチルパラベンと、アミン化合物の組成比(質量比)が、10:1:5:0.5となるように、混合した。これにより、実施例1のポリイミド前駆体組成物のNMP溶液(ワニス)を得た。
【0162】
実施例2~13、比較例1~4、および、参考例1
表1~5に基づいて、現像促進剤の種類、アミン化合物の種類、および/または、組成比を変更した以外は、実施例1のポリイミド前駆体組成物と同様にして、各ポリイミド前駆体組成物を調製した。
【0163】
<評価>
[密着性]
各実施例および各比較例のポリイミド前駆体組成物のNMP溶液(ワニス)を銅配線上にスクリーン印刷機で塗工し、イナートオーブン(ESPEC-SPHH-201、エスペック社製)を用いて、120℃で10分間乾燥した。次いで、露光機で露光量200mJ/cm2で露光した後、再度イナートオーブンにて200℃、10分間加熱処理を行なった。その後、TMAH/エキネン溶液を用い、各2秒間で数回のディップ現像により現像し、脱イオン水でリンスした後、再度イナートオーブンで100℃、5分間乾燥し、配線回路基板を得た。なお、参考例1は、銅配線上にニッケル層を形成し、その後、参考例1のポリイミド前駆体組成物のNMP溶液(ワニス)を塗工したこと以外は、上記と同様にし、配線回路基板を得た。得られた回路基板の未露光部と露光部の境界のポリイミドと銅配線の界面をSEM(FlexSEM1000、ヒタチハイテクサイエンス社製)を用いて、1000倍、60°傾斜の条件で、1か所観察した。密着性に関して、次の基準で評価した。その結果を表1~5に示す。
【0164】
{基準}
○:配線の側面、および、上面ともに、空隙が存在しない
△:配線の側面、または、上面のどちらか一方のみに、空隙が存在する
×:配線の側面、および、上面ともに、空隙が存在する
【0165】
[イミド化率]
各実施例および各比較例のポリイミド前駆体組成物のNMP溶液(ワニス)を銅配線上にスクリーン印刷機で塗工し、イナートオーブン(ESPEC-SPHH-201、エスペック社製)を用いて、120℃で10分間乾燥した。次いで、露光機で露光量200mJ/cm2で露光した後、再度イナートオーブンにて200℃、10分間加熱処理を行なった。なお、参考例1は、銅配線上にニッケル層を形成し、その後、参考例1のポリイミド前駆体組成物のNMP溶液(ワニス)を塗工したこと以外は、上記と同様にした。その後、未露光部・銅配線の界面部の赤外吸収スペクトルを、赤外吸収スペクトル装置(Nicolet4700 Continuμm、Thermo Fisher Scientific社製)を用いて測定した。なお、赤外吸収スペクトル測定は、顕微ATR法を用い、積算回数は64回とした。イミド構造の吸収ピーク(1780cm-1)/ベンゼン環の吸収ピーク(1450cm-1)×100から、未露光部および銅配線の界面部のイミド化率(%)を算出した。イミド化率に関して、銅配線の界面部のイミド化率および未露光部のイミド化率の差(銅配線の界面部のイミド化率(%)-未露光部のイミド化率(%))を、次の基準で評価した。その結果を表1~5に示す。
【0166】
{基準}
◎:15%以上
〇:10%以上、15%未満
△:5%以上、10%未満
×:5%未満
【0167】
【0168】
【0169】
【0170】
【0171】