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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126441
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】ヒートポンプ温水装置
(51)【国際特許分類】
   F24H 1/18 20220101AFI20240912BHJP
   F24H 4/02 20220101ALI20240912BHJP
   F24H 15/136 20220101ALI20240912BHJP
   F24H 15/269 20220101ALI20240912BHJP
   F24H 15/231 20220101ALI20240912BHJP
   F24H 15/335 20220101ALI20240912BHJP
   F24H 15/38 20220101ALI20240912BHJP
   F24H 15/168 20220101ALI20240912BHJP
【FI】
F24H1/18 G
F24H4/02 C
F24H15/136
F24H15/269
F24H15/231
F24H15/335
F24H15/38
F24H15/168
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034821
(22)【出願日】2023-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】000000538
【氏名又は名称】株式会社コロナ
(71)【出願人】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003096
【氏名又は名称】弁理士法人第一テクニカル国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿部 基
(72)【発明者】
【氏名】窪田 広記
(72)【発明者】
【氏名】赤木 伸行
(72)【発明者】
【氏名】田附 洋人
(72)【発明者】
【氏名】姫野 竜佑
【テーマコード(参考)】
3L122
【Fターム(参考)】
3L122AA02
3L122AA23
3L122AA54
3L122AA62
3L122AB02
3L122AB22
3L122AB33
3L122AC35
3L122BA32
3L122BB02
3L122BB14
3L122BC05
3L122BC12
3L122DA22
3L122DA23
3L122EA63
(57)【要約】
【課題】電力抑制制御が行われる場合でも、十分な除霜を行う。
【解決手段】加熱制御装置50では、タイムアウト時間設定部410Gにより所定のタイムアウト時間が設定され、正サイクル除霜運転を開始した後に前記タイムアウト時間が経過した場合には、運転切替部410Aにより当該正サイクル除霜運転を強制的に終了し、沸上運転に復帰させる。さらに、タイムアウト時間設定部410Gにより、電力抑制信号が許容する消費電力上限値に応じて、タイムアウト時間が可変に設定される。これにより、消費電力上限値が小さいほどタイムアウト時間を長く設定することができるので、霜の溶け残りを防止して、十分な除霜を行うことができる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機、膨張弁、空気熱交換器を冷媒配管で接続したヒートポンプ装置と、
前記ヒートポンプ装置から前記冷媒配管を介し冷媒の供給を受けて水との熱交換により湯水循環回路側への温水を生成する水-冷媒熱交換器と、
前記水-冷媒熱交換器で生成された温水を循環させる循環ポンプと、
前記圧縮機及び前記循環ポンプを制御する制御手段と、
を有し、
前記制御手段は、
前記循環ポンプを駆動した状態で、前記ヒートポンプ装置により加熱した前記冷媒を前記冷媒配管内に循環させ、前記水-冷媒熱交換器で生成した温水を前記湯水循環回路側へ循環させる温水生成運転と、
前記温水生成運転が停止された状態で、前記ヒートポンプ装置により加熱した前記冷媒を前記冷媒配管内に前記温水生成運転時の冷媒の流れと同方向に循環させて前記空気熱交換器の除霜を行う正サイクル除霜運転と、
を切り替えて行うヒートポンプ温水装置において、
前記制御手段は、
前記温水生成運転時において所定の除霜開始条件が成立した場合、当該温水生成運転から前記正サイクル除霜運転に切り替え、前記正サイクル除霜運転を開始した後において所定のタイムアウト時間が経過した場合、当該正サイクル除霜運転を終了して前記温水生成運転に復帰させる、運転切替手段と、
前記ヒートポンプ装置における消費電力の抑制を指示する電力抑制信号が入力された場合には、当該電力抑制信号により許容される消費電力上限値に応じて、前記タイムアウト時間を可変に設定する、タイムアウト時間設定手段と、
を備えることを特徴とするヒートポンプ温水装置。
【請求項2】
前記消費電力上限値と当該消費電力上限値に予め対応付けられた前記タイムアウト時間との相関を記憶した記憶手段をさらに有し、
前記タイムアウト時間設定手段は、
前記記憶手段に記憶された前記相関に基づき、前記消費電力上限値が小さいほど前記タイムアウト時間を長く設定する
ことを特徴とする請求項1記載のヒートポンプ温水装置。
【請求項3】
前記タイムアウト時間設定手段は、
前記正サイクル除霜運転の開始と共に前記タイムアウト時間を設定した後、当該正サイクル除霜運転が継続している間は、電力抑制信号により許容される消費電力上限値の変動に基づき、前記タイムアウト時間を更新する
ことを特徴とする請求項2記載のヒートポンプ温水装置。
【請求項4】
前記タイムアウト時間設定手段は、
第1タイミングにおける前記消費電力上限値に対し前記相関により対応付けられた前記タイムアウト時間の第1値に関連し、前記第1タイミングより後の第2タイミングにおける前記消費電力上限値に前記相関により対応付けられた前記タイムアウト時間の第2値が前記第1値以下である場合は、前記タイムアウト時間を前記第1値のまま保持して前記第2値へと更新せず、
前記第2値が前記第1値より長い場合は、前記タイムアウト時間を前記第1値から前記第2値へと更新する
ことを特徴とする請求項3記載のヒートポンプ温水装置。
【請求項5】
前記制御手段は、
前記タイムアウト時間設定手段により前記第1値から前記第2値への更新が実行された場合には、前記正サイクル除霜運転の開始から当該第2値の時間が経過したときに前記正サイクル除霜運転が終了するように、前記タイムアウト時間を延長する
ことを特徴とする請求項4記載のヒートポンプ温水装置。
【請求項6】
湯水を貯湯する貯湯タンクと、
圧縮機、膨張弁、空気熱交換器を冷媒配管で接続したヒートポンプ装置と、
前記ヒートポンプ装置から前記冷媒配管を介し冷媒の供給を受けて水との熱交換を行う水-冷媒熱交換器と、
前記貯湯タンクの下部から前記水-冷媒熱交換器に向かう往き管、及び、前記水-冷媒熱交換器から前記貯湯タンクの上部に戻る戻り管、を備えた湯水循環回路と、
前記湯水循環回路内に前記湯水を循環させる循環ポンプと、
前記圧縮機及び前記循環ポンプを制御する制御手段と、
を有し、
前記制御手段は、
前記循環ポンプを駆動した状態で、前記ヒートポンプ装置により加熱した前記冷媒を前記冷媒配管内に循環させ、前記往き管を介し前記水-冷媒熱交換器に導入されて加熱された前記湯水を前記戻り管を介して前記貯湯タンクへ供給する沸上運転と、
前記沸上運転が停止された状態で、前記ヒートポンプ装置により加熱した前記冷媒を前記冷媒配管内に前記沸上運転時の冷媒の流れと同方向に循環させて前記空気熱交換器の除霜を行う正サイクル除霜運転と、
を切り替えて行うヒートポンプ温水装置において、
前記制御手段は、
前記沸上運転時において所定の除霜開始条件が成立した場合、当該沸上運転から前記正サイクル除霜運転に切り替え、前記正サイクル除霜運転を開始した後において所定のタイムアウト時間が経過した場合、当該正サイクル除霜運転を終了して前記沸上運転に復帰させる、運転切替手段と、
前記ヒートポンプ装置における消費電力の抑制を指示する電力抑制信号が入力された場合には、当該電力抑制信号により許容される消費電力上限値に応じて、前記タイムアウト時間を可変に設定する、タイムアウト時間設定手段と、
を備えることを特徴とするヒートポンプ温水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、水-冷媒熱交換器での冷媒との熱交換により温水を生成するヒートポンプ温水装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来よりこの種のヒートポンプ温水装置においては、特許文献1記載のように、空気熱交換器、圧縮機、膨張弁を含むヒートポンプ装置に冷媒を循環させ貯湯タンク内の湯水の沸上運転を行ったときに空気熱交換器に着霜が生じた場合、循環ポンプを停止し、冷媒を沸上運転時と同じ方向に循環して除霜する正サイクル除霜運転を行うものがあった。
【0003】
通常、前記の正サイクル除霜運転が行われる間は前記膨張弁は全開とされるが、全開状態にしたとしても膨張弁では機構上ある程度開口面積が絞られるため、圧縮機での圧縮により昇温された冷媒の温度が低下してしまう。その結果、除霜機能が不十分となり、除霜がなかなか完了しない場合がある。これに対応して、この従来のものでは、所定のタイムアウト時間が設定され、前記正サイクル除霜運転を開始した後に前記タイムアウト時間が経過した場合には当該正サイクル除霜運転を強制的に終了し、前記沸上運転に復帰させる。これにより、圧縮機からの冷媒を高い吐出温度まで昇温させることで、後に実行される次回の正サイクル除霜運転時において、当該昇温した冷媒により除霜を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-3158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、近年、前記ヒートポンプ装置について、専用電源を設けることなく例えばAC100Vの家庭用電源や蓄電池から電力供給を受けて作動させる構成が提唱されている。この場合、限られた電源容量を、通常の家庭での各電化製品等とヒートポンプ装置とで共有することとなるため、前記ヒートポンプ装置における消費電力の抑制を指示する電力抑制信号が、外部から入力される場合がある。前記電力抑制信号には、ヒートポンプ装置において消費することが許容される消費電力上限値が指示されている。前記電力抑制信号が入力されると、ヒートポンプ装置で消費する電力が前記消費電力上限値以内となるように電力抑制制御が行われ、圧縮機の回転数が制限される。
【0006】
このような電力抑制制御は、前記正サイクル除霜運転時においても行われる場合がある。その場合、圧縮機の回転数の制限により除霜性能が低下するため、上記従来のもののような通常のタイムアウト時間の設定では、その後の沸上運転への復帰を経た次回の除霜運転時でも十分に除霜できず、霜の溶け残りが生じる恐れがあるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1では、圧縮機、膨張弁、空気熱交換器を冷媒配管で接続したヒートポンプ装置と、前記ヒートポンプ装置から前記冷媒配管を介し冷媒の供給を受けて水との熱交換により湯水循環回路側への温水を生成する水-冷媒熱交換器と、前記水-冷媒熱交換器で生成された温水を循環させる循環ポンプと、前記圧縮機及び前記循環ポンプを制御する制御手段と、を有し、前記制御手段は、前記循環ポンプを駆動した状態で、前記ヒートポンプ装置により加熱した前記冷媒を前記冷媒配管内に循環させ、前記水-冷媒熱交換器で生成した温水を前記湯水循環回路側へ循環させる温水生成運転と、前記温水生成運転が停止された状態で、前記ヒートポンプ装置により加熱した前記冷媒を前記冷媒配管内に前記温水生成運転時の冷媒の流れと同方向に循環させて前記空気熱交換器の除霜を行う正サイクル除霜運転と、を切り替えて行うヒートポンプ温水装置において、前記制御手段は、前記温水生成運転時において所定の除霜開始条件が成立した場合、当該温水生成運転から前記正サイクル除霜運転に切り替え、前記正サイクル除霜運転を開始した後において所定のタイムアウト時間が経過した場合、当該正サイクル除霜運転を終了して前記温水生成運転に復帰させる、運転切替手段と、前記ヒートポンプ装置における消費電力の抑制を指示する電力抑制信号が入力された場合には、当該電力抑制信号により許容される消費電力上限値に応じて、前記タイムアウト時間を可変に設定する、タイムアウト時間設定手段と、を備えるものである。
【0008】
また、請求項2では、前記消費電力上限値と当該消費電力上限値に予め対応付けられた前記タイムアウト時間との相関を記憶した記憶手段をさらに有し、前記タイムアウト時間設定手段は、前記記憶手段に記憶された前記相関に基づき、前記消費電力上限値が小さいほど前記タイムアウト時間を長く設定するものである。
【0009】
また、請求項3では、前記タイムアウト時間設定手段は、前記正サイクル除霜運転の開始と共に前記タイムアウト時間を設定した後、当該正サイクル除霜運転が継続している間は、電力抑制信号により許容される消費電力上限値の変動に基づき、前記タイムアウト時間を更新するものである。
【0010】
また、請求項4では、前記タイムアウト時間設定手段は、第1タイミングにおける前記消費電力上限値に対し前記相関により対応付けられた前記タイムアウト時間の第1値に関連し、前記第1タイミングより後の第2タイミングにおける前記消費電力上限値に前記相関により対応付けられた前記タイムアウト時間の第2値が前記第1値以下である場合は、前記タイムアウト時間を前記第1値のまま保持して前記第2値へと更新せず、前記第2値が前記第1値より長い場合は、前記タイムアウト時間を前記第1値から前記第2値へと更新するものである。
【0011】
また、請求項5では、前記制御手段は、前記タイムアウト時間設定手段により前記第1値から前記第2値への更新が実行された場合には、前記正サイクル除霜運転の開始から当該第2値の時間が経過したときに前記正サイクル除霜運転が終了するように、前記タイムアウト時間を延長するものである。
【0012】
また上記課題を解決するために、本発明の請求項6では、湯水を貯湯する貯湯タンクと、圧縮機、膨張弁、空気熱交換器を冷媒配管で接続したヒートポンプ装置と、前記ヒートポンプ装置から前記冷媒配管を介し冷媒の供給を受けて水との熱交換を行う水-冷媒熱交換器と、前記貯湯タンクの下部から前記水-冷媒熱交換器に向かう往き管、及び、前記水-冷媒熱交換器から前記貯湯タンクの上部に戻る戻り管、を備えた湯水循環回路と、前記湯水循環回路内に前記湯水を循環させる循環ポンプと、前記圧縮機及び前記循環ポンプを制御する制御手段と、を有し、前記制御手段は、前記循環ポンプを駆動した状態で、前記ヒートポンプ装置により加熱した前記冷媒を前記冷媒配管内に循環させ、前記往き管を介し前記水-冷媒熱交換器に導入されて加熱された前記湯水を前記戻り管を介して前記貯湯タンクへ供給する沸上運転と、前記沸上運転が停止された状態で、前記ヒートポンプ装置により加熱した前記冷媒を前記冷媒配管内に前記沸上運転時の冷媒の流れと同方向に循環させて前記空気熱交換器の除霜を行う正サイクル除霜運転と、を切り替えて行うヒートポンプ温水装置において、前記制御手段は、前記沸上運転時において所定の除霜開始条件が成立した場合、当該沸上運転から前記正サイクル除霜運転に切り替え、前記正サイクル除霜運転を開始した後において所定のタイムアウト時間が経過した場合、当該正サイクル除霜運転を終了して前記沸上運転に復帰させる、運転切替手段と、前記ヒートポンプ装置における消費電力の抑制を指示する電力抑制信号が入力された場合には、当該電力抑制信号により許容される消費電力上限値に応じて、前記タイムアウト時間を可変に設定する、タイムアウト時間設定手段と、を備えるものである。
【発明の効果】
【0013】
この発明の請求項1によれば、制御手段の制御により、温水生成運転、及び、正サイクル除霜運転、が切り替え可能に実行される。
温水生成運転では、ヒートポンプ装置で加熱された冷媒が冷媒配管内に循環されると共に、循環ポンプが駆動される。これにより、前記水-冷媒熱交換器において冷媒からの加熱により温水が生成され、生成した温水を湯水循環回路へと循環させることで、温水を貯湯タンクに導きタンク内の湯水の沸き上げを行ったり、適宜の熱交換端末に導いて暖房を行ったりすることができる。
上記のような温水生成運転を実行し、圧縮機、膨張弁、空気熱交換器を結ぶ冷媒配管内を冷媒が循環するにつれて、空気熱交換器において着霜が生じる場合がある。着霜がある程度進んで所定の除霜開始条件が成立した場合、温水生成運転が中断され、正サイクル除霜運転が行われる。正サイクル除霜運転では、前記温水生成運転が停止され(=前記循環ポンプが実質的に停止され)、その状態で、冷媒が前記温水生成運転時と同じ方向に循環する。これにより、前記ヒートポンプ装置により加熱された前記冷媒が前記冷媒配管を介して空気熱交換器へと供給され、冷媒の加熱によって前記空気熱交換器の除霜が行われる。
【0014】
このとき、本願発明によれば、所定のタイムアウト時間が設定され、前記正サイクル除霜運転を開始した後に前記タイムアウト時間が経過した場合には、運転切替手段により当該正サイクル除霜運転を強制的に終了し、前記温水生成運転に復帰させる。これにより、圧縮機からの冷媒を高い吐出温度まで昇温させることで、後に実行される次回の正サイクル除霜運転時において、当該昇温した冷媒により確実に除霜を行うことができる。
そして、本願発明のヒートポンプ温水装置によれば、タイムアウト時間設定手段が設けられ、電力抑制信号が許容する前記消費電力上限値に応じて、前記タイムアウト時間が可変に設定される。これにより、例えば前記消費電力上限値が小さいほど、前記タイムアウト時間を長く設定することができるので、前述の霜の溶け残りを防止して、十分な除霜を行うことができる。
【0015】
また、請求項2によれば、記憶手段は、消費電力上限値とタイムアウト時間とが互いに対応付けられた相関を予め記憶している。そして、消費電力上限値が小さいほど圧縮機の回転数が低く制限されて除霜性能が低下することに対応して、タイムアウト時間設定手段は、前記相関を用いて、消費電力上限値が小さいほどタイムアウト時間を長く設定する。これにより、確実に霜の溶け残りを防止して十分な除霜を行うことができる。
【0016】
また、電力抑制信号が指示する消費電力上限値は、電源容量を共有するヒートポンプ装置以外の機器の電力消費状況に応じて時々刻々と変化する場合がある。請求項3によれば、そのような場合に対応し、正サイクル除霜運転が継続している間は、タイムアウト時間設定手段により、消費電力上限値の変動に基づき前記タイムアウト時間が更新される。これにより、時々刻々と変化する消費電力上限値の値に対応して適切なタイムアウト時間を設定し、十分な除霜を行うことができる。
【0017】
また請求項4によれば、前述のように、タイムアウト時間設定手段が、タイムアウト時間を消費電力上限値の変動に合わせて更新する際、タイムアウト時間の値が同じか又は短くなるような更新は行わない。すなわち、後のタイミングにおいて前記相関により対応付けられるタイムアウト時間の第2値が、それより前のタイミングにおいて相関により対応付けられるタイムアウト時間の第1値より長い場合にのみ、第1値から第2値への更新が行われる。
これにより、タイムアウト時間を第1値に設定して除霜運転を継続している間に、急にタイムアウト時間が短くなることによる制御上の不都合や不安定さを回避することができる。また、消費電力上限値が変動したとしてもタイムアウト時間の値が短くなるか同一値に維持するような更新は行わず長くなるような更新のみを行うことで、十分な除霜を確実に完了するために万全を期すことができる。
【0018】
また、請求項5によれば、はじめにタイムアウト時間を第1値(例えば11分)として除霜運転を開始し、ある経過時間(例えば10分)が経過した段階でタイムアウト時間が前記第1値よりも長い第2値(例えば31分)に更新された場合に、制御手段は、除霜運転の開始から前記第2値(31分)が経過したときに除霜運転が終了するように、タイムアウト時間を延長する。これにより、タイムアウト時間の更新を円滑かつ確実に行うことができる。
【0019】
また、請求項6によれば、前記と同様、タイムアウト時間設定手段によって、電力抑制信号が許容する前記消費電力上限値に応じて、前記タイムアウト時間が可変に設定される。これにより、例えば前記消費電力上限値が小さいほど、前記タイムアウト時間を長く設定することができるので、前述の霜の溶け残りを防止して、十分な除霜を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態のヒートポンプ温水装置の概略構成図
図2】加熱制御装置の機能的構成を表す機能ブロック図
図3】電力抑制制御時における消費電力上限値とタイムアウト時間との相関を表すテーブル
図4】加熱制御装置が実行する制御手順を表すフローチャート図
図5】タイムアウト時間が更新されて延長される挙動の説明図
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明の一実施形態について図面に基づいて説明する。
【0022】
<概略回路構成>
図1に示すように、本実施形態に係わるヒートポンプ温水装置100は、湯水を貯湯する貯湯タンク2を有したタンクユニット1と、ヒートポンプユニット3と、を有している。
【0023】
前記ヒートポンプユニット3は、前記貯湯タンク2内の湯水を加熱するために水冷媒熱交換器15(水-冷媒熱交換器に相当)と、加熱循環ポンプ19(循環ポンプに相当)と、を備えている。水冷媒熱交換器15は、冷媒を流通させる冷媒側の流路15bと水側の流路15aとを有し、高温高圧の冷媒と貯湯タンク2内の湯水とを熱交換する。すなわち、前記水冷媒熱交換器15の前記水側の流路15aと前記貯湯タンク2とが加熱往き管5(往き管に相当)及び加熱戻り管6(戻り管に相当)によって環状に接続され、前記タンクユニット1と前記ヒートポンプユニット3とにわたる湯水循環回路としての加熱循環回路4が形成されている。
【0024】
加熱往き管5は、前記貯湯タンク2の下部に接続され、加熱戻り管6は、前記貯湯タンク2の上部に接続されている。前記加熱循環ポンプ19は、前記加熱往き管5の途中に設けられ、前記水側の流路15aを介し前記加熱往き管5からの湯水を前記加熱戻り管6へ流通させつつ、貯湯タンク2の湯水を循環させる。なお、前記加熱戻り管6には、前記水側の流路15aから前記貯湯タンク2に向かって流出する沸上温度Tbを検出する沸上温度センサ24が設けられている。
【0025】
前記タンクユニット1において、貯湯タンク2の側面には、貯湯タンク2内の湯の温度Twを検出する貯湯温度センサ12が上下にわたり複数設けられている。
前記貯湯タンク2の下部にはまた、貯湯タンク2に水を給水する給水管7が接続され、前記貯湯タンク2の上部にはまた、貯湯されている高温水を出湯する出湯管8が接続され、出湯管8には、貯湯タンク2内が負圧になった場合に開弁して貯湯タンク2内に空気を導入する負圧吸気弁119が設けられ、給水管7からは給水バイパス管9が分岐して設けられている。
さらに、出湯管8からの湯と給水バイパス管9からの水とを混合して給湯設定温度の湯とする混合弁10と、混合弁10で混合された湯を給湯端末125に給湯するための給湯管108aと、給湯管108a内の給湯温度を検出する給湯温度センサ11と、が設けられている。
【0026】
なお、前記タンクユニット1外における給湯管108aの給湯端末125側には給湯管108bが設けられており、これら給湯管108a,108bの間には混合弁10で混合された湯を加熱可能なガス熱源機130が設けられている。
【0027】
前記ヒートポンプユニット3はまた、冷媒を圧縮する圧縮機14と、前記水冷媒熱交換器15通過後の冷媒を減圧させる膨張弁としての電子膨張弁16と、熱源としての空気と冷媒との熱交換を行う熱源側熱交換器としての空気熱交換器17と、空気熱交換器17に外気を送り込む室外ファン67と、を備えている。そして、前記圧縮機14と、前記圧縮機14から吐出された冷媒が流通する前記水冷媒熱交換器15の前記冷媒側の流路15bと、前記電子膨張弁16と、前記空気熱交換器17とが冷媒配管18で環状に接続されることにより冷媒循環回路30が形成されている。
【0028】
冷媒配管18は、圧縮機14の吐出側を前記水冷媒熱交換器15の入口側に連通させ、また圧縮機14の吸込側を前記空気熱交換器の出口側に連通させる。なお、冷媒配管18及びこれに接続された圧縮機14、空気熱交換器17、電子膨張弁16が、ヒートポンプ装置に相当している。また、本実施形態では、前記ヒートポンプ装置を構成する前記圧縮機14等を含むヒートポンプユニット3及びタンクユニット1について専用電源が設けられることなく、それらヒートポンプユニット3及びタンクユニットは、いずれも例えばAC100Vの家庭用電源や蓄電池から電力供給を受けて作動する構成となっている。
【0029】
冷媒循環回路30内には、冷媒として例えばR32冷媒が用いられ、ヒートポンプサイクルを構成している。前記冷媒配管18の前記圧縮機14の吐出側の部位には、圧縮機14から吐出される冷媒の冷媒吐出温度Toutを検出する吐出温度センサ20が設けられ、前記空気熱交換器17の空気入口側には、外気温度Tairを検出する外気温度センサ22(外気温検出手段に相当)が設けられている。また前記空気熱交換器17途中の前記冷媒配管18には、低圧側の冷媒温度Tcを検出する冷媒温度センサ52が設けられている。なお、本実施形態では、この冷媒温度センサ52により検出される温度が、実質的に、空気熱交換器17内の冷媒温度Tcとして機能するものである。
【0030】
そして、前記タンクユニット1には、前記した各センサ12,11の検出結果が入力される貯湯制御装置40が設けられている。同様に、前記ヒートポンプユニット3には、前記した各センサ20,22,24,52の検出結果が入力される加熱制御装置50(制御手段に相当)が設けられている。加熱制御装置50及び貯湯制御装置40は、互いに通信可能に接続されており、前記各センサ24,12,11,20,22,52の検出結果等に基づき、相互に連携しつつ、前記タンクユニット1及び前記ヒートポンプユニット3内の各機器の動作を制御する。
【0031】
なお、加熱制御装置50と貯湯制御装置40との間に制御上の主従関係があり、例えばセンサ12,11の検出結果に基づく運転指令や電力抑制信号(後述)を貯湯制御装置40が加熱制御装置50へ出力し、加熱制御装置50はこの運転指令や電力抑制信号と各センサ20,22,24,52の検出結果とに基づきヒートポンプユニット3内の各機器の動作を制御するようにしてもよい。以下、本明細書においては、このような場合を例にとって説明する。
【0032】
<加熱制御装置>
次に、前記ヒートポンプユニット3に備えられた前記加熱制御装置50について説明する。加熱制御装置50は、詳細な図示を省略するが、各種のデータやプログラムを記憶する記憶部と、演算・制御処理を行う制御部とを備えている。この加熱制御装置50の機能的構成を図2により説明する。
【0033】
図2に示すように、前記加熱制御装置50は、運転切替部410Aと、圧縮機制御部410Bと、膨張弁制御部410Cと、室外ファン制御部410Dと、ポンプ制御部410Fと、タイムアウト時間設定部410Gと、を機能的に備えている。
【0034】
本実施形態のヒートポンプユニット3は、貯湯制御装置40から出力される運転指令に基づき各種制御を行う。すなわち、運転切替部410Aには、前記貯湯制御装置40により出力された運転指令が入力される。運転切替部410Aは、前記運転指令に応じて、実際にヒートポンプユニット3を、空気熱交換器17を蒸発器として機能させる前記沸上運転を行うか行わないか、を決定する。また、運転切替部410Aは、その決定結果に対応する運転情報を、前記圧縮機制御部410B、膨張弁制御部410C、室外ファン制御部410D、ポンプ制御部410F、及び、タイムアウト時間設定部410G、に出力する。なおこの運転情報には、前記貯湯温度センサ12により検出された貯湯タンク2内の湯の温度Tw、及び、適宜に決定された目標沸上温度Tbo、等が含まれる。
【0035】
圧縮機制御部410Bには、この例では、前記外気温度センサ22により検出された前記外気温度Tairと、前記沸上温度センサ24により検出された前記沸上温度Tbと、前記貯湯制御装置40の運転指令に対応した前記運転情報と、が入力される(直接入力される場合のほか、間接的に入力するようにしてもよい。以下同様)。圧縮機制御部410Bは、この例では、入力された前記外気温度Tair及び前記沸上温度Tbに基づき、前記圧縮機14の目標回転数を設定し、この目標回転数となるように圧縮機14の回転数を増減制御する。
【0036】
膨張弁制御部410Cには、前記吐出温度センサ20により検出された前記冷媒吐出温度Toutと、前記貯湯制御装置40の運転指令に対応した前記運転情報と、が入力される。この例では、膨張弁制御部410Cは、前記冷媒吐出温度Toutが制御上の所望の目標温度となるように、電子膨張弁16の開度を増減制御する。
【0037】
室外ファン制御部410Dには、前記外気温度センサ22により検出された前記外気温度Tairと、前記貯湯制御装置40の運転指令に対応した前記運転情報と、が入力される。
【0038】
室外ファン制御部410Dは、入力された前記運転情報及び前記外気温度Tairと、に基づき前記室外ファン67の目標回転数を設定し、室外ファン67の回転数がその目標回転数となるように増減制御する。
【0039】
ポンプ制御部410Fには、前記沸上温度センサ24により検出された前記沸上温度Tbと、前記貯湯制御装置40の運転指令に対応した前記運転情報と、が入力され、これらに基づき、前記加熱循環ポンプ19の回転数を制御する。
【0040】
なお、タイムアウト時間設定部410Gについては、後述する。
【0041】
<沸上運転>
前記したように、本実施形態のヒートポンプユニット3では、圧縮機14の吐出側が前記水冷媒熱交換器15の入口側に連通し、圧縮機14の吸込側が前記空気熱交換器の出口側に連通しており、これによって空気熱交換器17を電子膨張弁16からの低温低圧の冷媒を蒸発させる蒸発器として機能させる。すなわち、水冷媒熱交換器15において冷媒配管18内の冷媒からの放熱により熱が放出され、加熱循環回路4内に温水が生成される。生成された温水は、加熱循環ポンプ19が誘起する加熱循環回路4内の温水の流れによって加熱戻り管6を介し貯湯タンク2内に供給され、これによって貯湯タンク2内の湯水の温度を上昇させることができる(=温水生成運転としての沸上運転)。
【0042】
<除霜開始条件>
上記のような沸上運転を実行し、圧縮機14、水冷媒熱交換器15、電子膨張弁16、空気熱交換器17を結ぶ冷媒配管18内を冷媒が循環するにつれて、空気熱交換器17において着霜が生じる場合がある。本実施形態では、着霜がある程度進んで所定の除霜開始条件が成立した場合、加熱制御装置50の前記運転切替部410Aによって前記沸上運転が中断され、正サイクル除霜運転が行われる。すなわち運転切替部410Aからの前記運転情報に基づく、圧縮機制御部410B、膨張弁制御部410C、室外ファン制御部410D、ポンプ制御部410Fの制御により、沸上運転から正サイクル除霜運転への切替が行われる。すなわち、前記運転切替部410Aは、上記沸上運転中に、前記除霜開始条件が成立したか否かに応じて、沸上運転から除霜運転に切り替えるか切り替えないかを、決定する。前記の運転情報には、沸上運転を行うのか行わないのか、除霜運転を行うのか行わないのか、の情報が含まれる。
【0043】
前記除霜開始条件としては、例えば、前記外気温度センサ22によって検出される外気温度Tairが所定範囲(例えば-10℃以上、かつ、2℃未満)であり、かつ、前記冷媒温度センサ52によって検出される前記空気熱交換器17内の冷媒温度Tcを前記外気温度Tairから差し引いた温度差Tair-Tcが、所定範囲(例えば8℃より大きい)であること、である。すなわち、外気温度Tairがかなり低く、しかも、空気熱交換器17内の冷媒温度Tcがその外気温度Tairよりもかなり低い場合は、除霜が必要なほど着霜量が多い状態であると推定されるからである。前記の外気温度Tair及び冷媒温度Tcは前記運転切替部410Aへ入力され、それらに基づき運転切替部410Aにおいて前記除霜開始条件が成立したか否かが判定される。
【0044】
<正サイクル除霜運転>
正サイクル除霜運転では、前記沸上運転が停止された状態(ポンプ制御部410Fの制御により前記加熱循環ポンプ19が実質的に停止された状態)で、冷媒が前記沸上運転時と同じ方向、すなわち圧縮機14→水冷媒熱交換器15→電子膨張弁16→空気熱交換器17→圧縮機14、の向きに循環する。これにより、前記圧縮機14での圧縮により加熱された前記冷媒が前記冷媒配管18を介して空気熱交換器17へと供給され、冷媒の加熱によって前記空気熱交換器17の除霜が行われる。
なお、前記「加熱循環ポンプ19が実質的に停止された状態」とは、具体的には、ポンプ制御部410Fの制御により加熱循環ポンプ19が停止された状態、若しくは、ポンプ制御部410Fの制御により、沸上運転時の回転数よりも大幅に低い回転数で連続的または間欠的に加熱循環ポンプ19が駆動される状態、である。
【0045】
<タイムアウト時間>
ここで、前記の正サイクル除霜運転が行われる間は、膨張弁制御部410Cの制御により前記電子膨張弁16は全開とされる。しかしながら、電子膨張弁16が全開状態とされたとしても、膨張弁の機構上、ある程度開口面積が絞られるため、圧縮機14での圧縮により前記のように昇温された冷媒の温度が低下してしまう。その結果、除霜機能が不十分となり、除霜がなかなか完了しない場合がある。本実施形態ではこれに対応するために、加熱制御装置50にタイムアウト時間設定部410Gが設けられ、所定のタイムアウト時間が設定される。タイムアウト時間設定部410Gで設定されたタイムアウト時間は、前記運転切替部410Aへ入力される。
【0046】
前記正サイクル除霜運転を開始した後に前記タイムアウト時間が経過した場合には、運転切替部410Aからの前記運転情報に基づく圧縮機制御部410B、膨張弁制御部410C、室外ファン制御部410D、ポンプ制御部410Fの制御により、当該正サイクル除霜運転が強制的に終了され、前記の温水生成運転に復帰させる。これにより、圧縮機14からの冷媒を高い吐出温度まで昇温させることで、後に実行される次回の正サイクル除霜運転時において、当該昇温した冷媒により確実に空気熱交換器14の除霜を行うことができる。
【0047】
<電力抑制制御>
ここで、前記のようにヒートポンプユニット3の圧縮機14等が家庭用電源から電力供給を受けて作動する場合、限られた電源容量を、タンクユニット1や家庭での各電化製品等と共有することとなる。そのため、本実施形態では、圧縮機14等における消費電力の抑制を指示する電力抑制信号が、前記貯湯制御装置40から加熱制御装置50の前記運転切替部410Aへと入力される。前記電力抑制信号には、前記圧縮機14等において消費することが許容される消費電力上限値が指示されている。前記運転切替部410Aは、前記電力抑制信号が入力されると、前記圧縮機14等で消費する電力が前記消費電力上限値以内となるように電力抑制制御を行う。すなわち運転切替部410Aからの運転情報には、電力抑制制御を行うのか行わないのか、の情報が含まれる。これにより、電力抑制制御の実行時には、運転切替部410Aからの運転情報に基づき、圧縮機制御部410Bが圧縮機14の回転数を制限する。
【0048】
<タイムアウト時間の可変設定>
ところで、前記電力抑制制御は、前記正サイクル除霜運転時においても行われる場合がある。その場合、前記したような圧縮機14の回転数の制限により除霜性能が低下するため、通常のタイムアウト時間の設定ではその後の沸上運転への復帰を経た次回の除霜運転時でも十分に除霜できず、霜の溶け残りが生じる恐れがある。そこで本実施形態では、タイムアウト時間設定部410Gが、電力抑制信号により許容される前記消費電力上限値に応じ、前記タイムアウト時間を可変に設定する。その可変設定の際には、タイムアウト時間設定部410Gに設けた記憶部411(記憶手段に相当)に予め記憶された、消費電力上限値とタイムアウト時間とを対応付けた相関が用いられる。
【0049】
図3に、前記相関の一例を示す。図示のように、この例では、前記消費電力上限値がない(すなわち電力抑制信号が入力されていない)場合は、前記タイムアウト時間が10[分]に設定されている。前記消費電力上限値が900[W]を超え(なお、図3では便宜的に「901~」と示す。以下同様)、1000[W]以下の場合は、前記タイムアウト時間は11[分]に設定されている。
【0050】
同様に、前記消費電力上限値が800[W]を超え900[W]以下の場合は前記タイムアウト時間は13[分]に設定され、前記消費電力上限値が700[W]を超え800[W]以下の場合は前記タイムアウト時間は16[分]に設定され、前記消費電力上限値が600[W]を超え700[W]以下の場合は前記タイムアウト時間は20[分]に設定され、前記消費電力上限値が500[W]を超え600[W]以下の場合は前記タイムアウト時間は25[分]に設定され、前記消費電力上限値が500[W]以下の場合は前記タイムアウト時間は31[分]に設定されている。
【0051】
すなわち、前記のように、図3に示す前記相関においては、消費電力上限値が小さいほど圧縮機14の回転数が低く制限されて除霜性能が低下することに対応して、消費電力上限値が小さいほどタイムアウト時間が長く設定されている。
【0052】
<制御手順>
本実施形態の前記加熱制御装置50により実行される、前記図3の相関に基づくタイムアウト時間の設定を含む前記除霜運転時の制御手順を、図4のフローチャートにより説明する。
【0053】
図4において、まずS10で、前記貯湯制御装置40からの運転指令に対応した運転切替部410Aからの運転情報に基づき、前記沸上運転が開始される。
【0054】
その後、S20で、運転切替部410Aにより、前記の除霜開始条件が成立したか否かが判定される。除霜開始条件が成立していなければNo判定され、S30へ移行する。
【0055】
S30では、前述の貯湯タンク2内の温度Twが所定値に達した等、前記沸上運転を終了すべきタイミングとなったか否かが運転切替部410Aにより判定される。終了すべきタイミングになっていればYes判定され、S40において運転切替部410Aからの運転情報に基づき沸上運転を終了し、このフローを終了する。S30において前記沸上運転を終了すべきタイミングにまだなっていなければNo判定されてS10へ戻り、沸上運転が続行される。
【0056】
沸上運転の続行中に前記除霜開始条件が成立したらS20がYes判定され、S50へ移行する。S50では、タイムアウト時間設定部410Gにより、図3に一例を示した記憶部411に記憶された相関が参照されて、前記電力抑制信号に含まれる消費電力上限値に対応した前記タイムアウト時間が設定される。
【0057】
その後、S60で、運転切替部410Aからの運転情報に基づき、前記除霜運転が開始される。
【0058】
そして、S70で、既に述べたように前記電力抑制信号が変動するのに応じて、前記S50で設定される最新の前記タイムアウト時間の値(第2タイミングの第2値に相当)が、その直前にS50で設定されていた前記タイムアウト時間の値(第1タイミングの第1値に相当)よりも長くなっているか否かがタイムアウト時間設定部410Gにより判定される。最新の値が直前の値よりも長くなっていればS70がYes判定されてS75へ移行し、S75ではタイムアウト時間の値をその長くなった値に更新してS80へ移行し、最新の値が直前の値よりも長くなっていなければNo判定されてそのままS80へ移行する。
【0059】
S80では、運転切替部410Aにより、前記S60で除霜運転を開始した後、この時点で設定されているタイムアウト時間が経過したか否かが判定される。タイムアウト時間が経過していればYes判定され、S100に移行して運転切替部410Aからの運転情報に基づき前記除霜運転が終了され、前記S10へ戻る。
【0060】
S80でタイムアウト時間が経過していなければNo判定され、S90へ移行する。S90では、運転切替部410Aにより、前記冷媒温度センサ52で検出されている前記冷媒温度Tcが所定温度(この例では5[℃])以上になったか否かが判定される。所定温度に達していればYes判定され、前記S100に移行して前記除霜運転が終了され、前記S10へ戻る。S90で前記冷媒温度Tcが前記所定温度未満であればS90がNo判定され、前記S50に戻って再度消費電力上限値に応じたタイムアウト時間が設定され、以降、同様の手順を繰り返す。
【0061】
<実施形態の効果>
以上説明したように、本実施形態のヒートポンプ温水装置100では、加熱制御装置50の制御により、沸上運転、及び、正サイクル除霜運転、が切り替え可能に実行される。
前記沸上運転では、ヒートポンプユニット3の圧縮機14で加熱された冷媒が冷媒配管18内に循環されると共に、加熱循環ポンプ19が駆動される。これにより、前記水冷媒熱交換器15において冷媒からの加熱により温水が生成され、生成した温水を加熱循環回路4へと循環させることで、温水を貯湯タンク2に導きタンク内の湯水の沸き上げを行うことができる。
正サイクル除霜運転では、前記加熱循環ポンプ19が停止され、その状態で、冷媒が前記沸上運転時と同じ方向に循環する。これにより、前記ヒートポンプユニット3の圧縮機14により加熱された前記冷媒が前記冷媒配管18を介して空気熱交換器17へと供給され、冷媒の加熱によって前記空気熱交換器17の除霜が行われる。
【0062】
このとき、本実施形態においては、タイムアウト時間設定部410Gにより所定のタイムアウト時間が設定され、前記正サイクル除霜運転を開始した後に前記タイムアウト時間が経過した場合には、運転切替部410Aにより当該正サイクル除霜運転を強制的に終了し、前記沸上運転に復帰させる(図4のS80,S100参照)。これにより、圧縮機14からの高い吐出温度で冷媒を昇温させることで、後に実行される次回の正サイクル除霜運転時において、当該昇温した冷媒により確実に除霜を行うことができる。
そして、本実施形態のヒートポンプ温水装置100では、タイムアウト時間設定部410Gにより、貯湯制御装置40から加熱制御装置50に入力される電力抑制信号が許容する前記消費電力上限値に応じて、前記タイムアウト時間が可変に設定される(図4のS50参照)。これにより、例えば前記消費電力上限値が小さいほど、前記タイムアウト時間を長く設定することができる(図3参照)ので、霜の溶け残りを防止して、十分な除霜を行うことができる。
【0063】
また、本実施形態では特に、記憶部411が、消費電力上限値とタイムアウト時間とが互いに対応付けられた相関(図3参照)を予め記憶している。そして、電力抑制制御の実行時には消費電力上限値が小さいほど圧縮機14の回転数が低く制限されて除霜性能が低下することに対応して、タイムアウト時間設定部410Gは、前記相関を用いて、消費電力上限値が小さいほどタイムアウト時間を長く設定する。これにより、確実に霜の溶け残りを防止して十分な除霜を行うことができる。
【0064】
また、前記のように、貯湯制御装置40からの電力抑制信号が指示する消費電力上限値は、電源容量を共有する、圧縮機14等以外の他の機器(この例では、タンクユニット1側における貯湯タンク2内のヒータや、前記家庭の電化製品等)の電力消費状況に応じて、時々刻々と変化する場合がある。本実施形態では特に、そのような場合に対応し、正サイクル除霜運転が継続している間は、タイムアウト時間設定部410Gにより、消費電力上限値の変動に基づき前記タイムアウト時間が更新される(図4のS70,S75参照)。これにより、時々刻々と変化する消費電力上限値の値に対応して適切なタイムアウト時間を設定し、十分な除霜を行うことができる。
【0065】
また、本実施形態では特に、前述のようにタイムアウト時間設定部410Gがタイムアウト時間を消費電力上限値の変動に合わせて更新する際、タイムアウト時間の値が同じか又は短くなるような更新は行わない(図4のS70,S75参照)。すなわち、後のタイミングにおいて前記相関により対応付けられるタイムアウト時間の値(第2値)が、それより前のタイミングにおいて前記相関により対応付けられるタイムアウト時間の値(第1値)より長い場合にのみ、当該第1値から当該第2値への更新が行われる。特に具体的には、前記第2値から前記除霜運転開始後、更新時点までの経過時間を差し引いた差分時間を前記第1値に対し加える形で、前記タイムアウト時間を延長する。このことを、図5に示す具体例により説明する。
【0066】
図5(a)に示すように、この例では、まずはじめに、前記消費電力上限値が1000[W]であることに対応し、前記図3の相関を参照して、タイムアウト時間が11分(前記第1値の一例)に設定された状態で除霜運転が開始される。
【0067】
前記除霜運転の開始後4分が経過すると、図5(b)に示すように、この時点での除霜運転の残り運転時間は7分となる。
【0068】
さらに前記除霜運転の開始後10分が経過すると、図5(c)の上段に示すように、この時点での除霜運転の残り運転時間は1分となる。このタイミングで、前記消費電力上限値が1000[W]から500[W]に変化すると、前記図3の相関が参照されることで前記タイムアウト時間は前記11分よりも長い31分(前記第2値の一例)に更新されることとなる。この場合、図5(c)の下段に示すように、加熱制御装置50では、前記の31分から前記経過時間(10分)を差し引いた差分時間の21分だけ、タイムアウト時間を延長する。これにより、タイムアウト時間の更新を円滑かつ確実に行うことができる。
なお、タイムアウト時間の延長は上記手法に限られない。すなわち、最終的に、前記除霜運転の開始から前記31分が経過したときに前記除霜運転が終了するような手法であれば、他の手法で延長するようにしてもよい。この場合も同様の効果を得る。
【0069】
図5(d)は、前記延長後5分、すなわち前記除霜運転の開始後15分が経過した状態を表しており、この時点での除霜運転の残り運転時間は16分となっている。同様に、図5(e)は、前記延長後13分、すなわち前記除霜運転の開始後28分が経過した状態を表しており、この時点での除霜運転の残り運転時間は3分となっている。
【0070】
そして、前記延長後21分、すなわち前記除霜運転の開始後31分が経過すると、図5(f)に示すように、前記残り運転時間がゼロとなってタイムアウトとなり、除霜運転が終了する。
【0071】
本実施形態では、上記の延長手法とすることにより、タイムアウト時間を前記第1値に設定して除霜運転を継続している間に、急にタイムアウト時間が短くなることによる制御上の不都合や不安定さを回避することができる。また、消費電力上限値が変動したとしてもタイムアウト時間の値が短くなるか同一値に維持するような更新は行わず長くなるような更新のみを行うことで、十分な除霜を確実に完了するために万全を期すことができる。
【0072】
なお、本発明は以上の態様に限定されることなく、その趣旨を変更しない範囲で適用可能なものである。
【0073】
すなわち、上記実施形態では、水冷媒熱交換器15の負荷側に加熱往き管5及び加熱戻り管6からなる加熱循環回路4を介して貯湯タンク2を接続することで、水冷媒熱交換器15で前記のように生成した温水を貯湯タンク2に供給する前記沸上運転を行うようにしたが、これに限られない。すなわち、加熱循環回路4と同様の温水を循環させる循環回路を介してファンコイル、床暖房パネル、パネルコンベクタ等の適宜の熱交換端末を接続しその熱交換端末に温水を供給して暖房を行う、温水生成運転としての暖房運転を行うようにしてもよい。この場合も、前記暖房運転により生じた空気熱交換器17の着霜に対し、前記電力抑制制御の下で除霜運転を行う際、前述と同様の手法によって同様の効果を得ることができる。
【0074】
また、前記実施形態における前記ヒートポンプサイクルとして、減圧器としてエジェクターを用いたエジェクターサイクルでもよい。
【0075】
また、上記実施形態では、熱源機として、熱源側熱交換器としての空気熱交換器17に冷媒を通じる一方で外気を送風する室外ファン67を有し、熱源としての外気と前記冷媒とが熱交換される、空気熱源式のヒートポンプである場合を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、熱源機を、熱源側熱交換器に対して水や不凍液が供給されそれらの液体と冷媒とが当該熱源側熱交換器において熱交換する構成のものとしてもよい。
また、地中又は比較的大容量の水源中に熱源側熱交換器を設け、この熱源側熱交換器で前記地中又は前記水源と冷媒とが熱交換する構成のものとしてもよい。さらには、前記地中又は前記水源の熱を用いたヒートポンプ回路と空気熱を用いた別のヒートポンプ回路とを備えた複合熱源型の構成としてもよい。
さらには、熱源側熱交換器において前記冷媒と熱交換できるものであれば、前記液体や前記外気や前記水源に代えて、それ以外のもの(例えば、発煙、排煙、各種高温ガス等を含む気体や、熱砂、塵埃、各種粒子等を含む流動固体)を熱源側熱交換器に通じたり、太陽光、反射光、その他輻射等による熱を熱源側熱交換器に供給して用いる構成としても良い。
【符号の説明】
【0076】
1 タンクユニット
2 貯湯タンク
3 ヒートポンプユニット
4 加熱循環回路(湯水循環回路)
5 加熱往き管(往き管、湯水配管)
6 加熱戻り管(戻り管、湯水配管)
14 圧縮機
15 水冷媒熱交換器(水-冷媒熱交換器)
16 電子膨張弁(膨張弁)
17 空気熱交換器
18 冷媒配管
19 加熱循環ポンプ(循環ポンプ)
22 外気温度センサ
30 冷媒循環回路
40 貯湯制御装置
50 加熱制御装置(制御手段)
100 ヒートポンプ温水装置
410A 運転切替部(運転切替手段)
410G タイムアウト時間設定部(タイムアウト時間設定手段)
411 記憶部(記憶手段)
Tair 外気温度
Tout 冷媒吐出温度
Tc 空気熱交換器における冷媒温度
図1
図2
図3
図4
図5