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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126442
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】ヒートポンプ温水装置
(51)【国際特許分類】
   F24H 4/02 20220101AFI20240912BHJP
   F24H 15/174 20220101ALI20240912BHJP
   F24H 15/227 20220101ALI20240912BHJP
   F24H 15/258 20220101ALI20240912BHJP
   F24H 15/38 20220101ALI20240912BHJP
   F24H 15/385 20220101ALI20240912BHJP
   F24H 15/429 20220101ALI20240912BHJP
   F24H 15/168 20220101ALI20240912BHJP
【FI】
F24H4/02 A
F24H15/174
F24H15/227
F24H15/258
F24H15/38
F24H15/385
F24H15/429
F24H15/168
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034822
(22)【出願日】2023-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】000000538
【氏名又は名称】株式会社コロナ
(71)【出願人】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003096
【氏名又は名称】弁理士法人第一テクニカル国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】窪田 広記
(72)【発明者】
【氏名】阿部 基
(72)【発明者】
【氏名】赤木 伸行
(72)【発明者】
【氏名】田附 洋人
(72)【発明者】
【氏名】姫野 竜佑
【テーマコード(参考)】
3L122
【Fターム(参考)】
3L122AA02
3L122AA23
3L122AA54
3L122AA62
3L122AB02
3L122AB22
3L122AB33
3L122BA13
3L122BA32
3L122BB02
3L122BB13
3L122BB14
3L122BC12
3L122BC13
3L122DA22
3L122DA23
3L122EA01
3L122FA02
(57)【要約】
【課題】電力抑制制御の実行時に通常出力運転から高出力運転へ切り替えられた際の、温水温度のアンダーシュートを防止する。
【解決手段】ヒートポンプ温水装置100は、膨張弁制御部410Cの目標開度決定部410Ccにより、電子膨張弁16の目標開度が、冷媒吐出温度Toutと冷媒流出温度T2との温度差が所定の目標温度差△Hとなるように決定される。定格モードでの運転から高性能モードでの運転へ切り替えられた場合は、目標開度補正部410Cbにより、目標開度決定部410Ccが前記のように決定した目標開度に対し、開き方向への補正量が加えられる。電力抑制制御の実行のために外部から電力抑制信号が入力された場合は、補正量調整部410Cdが、目標開度補正部410Cbが決定した開き方向への補正量を、電力抑制信号が入力されない場合よりも小さくする。この結果、アンダーシュートの発生等の不都合を回避できる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機、減圧器、空気熱交換器を冷媒配管で接続したヒートポンプ装置と、
前記ヒートポンプ装置から前記冷媒配管を介し冷媒の供給を受けて水との熱交換により湯水循環回路側への温水を生成する水-冷媒熱交換器と、
を有し、
予め定められた通常出力により前記湯水循環回路側に温水を生成する通常モードでの運転、及び、前記通常出力よりも大きな出力により前記湯水循環回路側に温水を生成する高出力モードでの運転、を選択的に実行可能なヒートポンプ温水装置において、
前記圧縮機の回転数を、前記通常モードでの運転か前記高出力モードでの運転かに応じて各モードに対応した目標圧縮機回転数となるように増減制御する圧縮機制御手段と、
前記減圧器の開度を制御する減圧器制御手段と、
を有し、
前記減圧器制御手段は、
前記圧縮機から吐出される冷媒の吐出温度または吐出温度に応じた値が、生成される前記温水の目標温水温度に基づいて算出される目標値となるような、前記減圧器の目標開度を決定する目標開度決定手段と、
前記通常モードでの運転から前記高出力モードでの運転への切り替えが行われたか否かを判定する運転切替判定手段と、
前記運転切替判定手段により前記高出力モードでの運転への切り替えが行われたと判定された場合に、前記目標開度決定手段により決定された前記目標開度に対し、開き方向への補正量を加える目標開度補正手段と、
前記ヒートポンプ装置における消費電力の抑制を指示する電力抑制信号が入力されたか否かを判定する電力抑制判定手段と、
前記電力抑制判定手段により前記電力抑制信号が入力されたと判定された場合における前記目標開度補正手段による前記開き方向への補正量を、前記電力抑制判定手段により前記電力抑制信号が入力されたと判定されない場合における開き方向への補正量よりも小さく調整する補正量調整手段と、
を有することを特徴とするヒートポンプ温水装置。
【請求項2】
前記補正量調整手段は、
前記電力抑制判定手段により前記電力抑制信号が入力されたと判定された場合、当該電力抑制信号により許容される消費電力上限値に応じて、補正量を可変に調整する
ことを特徴とする請求項1記載のヒートポンプ温水装置。
【請求項3】
前記補正量調整手段は、
前記電力抑制判定手段により前記電力抑制信号が入力されたと判定された場合、さらに外気温度に応じて、補正量を可変に調整する
ことを特徴とする請求項2記載のヒートポンプ温水装置。
【請求項4】
前記補正量調整手段は、
前記電力抑制判定手段により前記電力抑制信号が入力されたと判定された場合、前記消費電力上限値が小さい場合は大きい場合よりも前記補正量を小さくし、前記外気温度が低い場合は高い場合よりも前記補正量を小さくする
ことを特徴とする請求項3記載のヒートポンプ温水装置。
【請求項5】
前記目標開度補正手段は、
前記運転切替判定手段により前記高出力モードでの運転への切り替えが行われたと判定された後、前記目標開度決定手段により決定された前記目標開度に対し、所定回数限定で前記開き方向への補正量を加える
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載のヒートポンプ温水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、水-冷媒熱交換器での冷媒との熱交換により温水を生成するヒートポンプ温水装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来よりこの種のヒートポンプ温水装置においては、特許文献1記載のように、圧縮機から吐出される冷媒の吐出温度と水-冷媒熱交換器から流出する冷媒の流出温度との温度差が、目標沸き上げ温度と外気温度と前記水冷媒熱交換器に流入する湯水の入水温度とに基づいて算出される所定の目標温度差となるように減圧器の目標開度をフィードバック制御するものがあった。
【0003】
また、特許文献2記載のように、負荷が小さい場合に予め定めた通常の加熱能力を得る通常モードでの運転と、負荷が大きい場合に通常モードより大きな加熱能力とする高出力モードでの運転と、を切り替えて実行するものがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5558937号公報
【特許文献2】特開2007-132594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1記載による減圧器のフィードバック制御を実行する際に、特許文献2記載の技術のように通常出力運転から高出力運転への切り替えが行われたとき、圧縮機回転数の上昇による冷媒圧や温水温度の過度の上昇(いわゆるオーバーシュート)を防止するために、前記フィードバック制御による減圧器の目標開度に対し、開き方向への補正量を加える場合がある。
なお、本願明細書においては、特に、減圧器の目標開度(例えば開度○○[%]で表す)を、減圧器を当該目標開度にするために駆動する駆動手段、例えばパルスモータのパルス位置として表す場合がある。この場合、上記目標開度と上記パルス位置とが一対一に対応することから、減圧器を開き方向又は閉じ方向に駆動するとき、それら2つのパルス位置の差分、すなわち現在のパルス位置と駆動後のパルス位置(目標位置)との差分が「操作量」となる。
一方、前記「補正量」とは、減圧器の開度制御における補正前後の目標開度の偏差、すなわち補正前目標開度と補正後目標開度との開度差分のことである(以下、同様)。
【0006】
一方、近年、前記ヒートポンプ装置について、AC200Vの専用電源を設けることなく例えばAC100Vの家庭用電源や蓄電池から電力供給を受けて作動させる構成が提唱されている。この場合、限られた電源容量を、通常の家庭での各電化製品等とヒートポンプ装置とで共有することとなるため、前記ヒートポンプ装置における消費電力の抑制を指示する電力抑制信号が、外部から入力される場合がある。前記電力抑制信号には、ヒートポンプ装置において消費することが許容される消費電力上限値が指示されている。前記電力抑制信号が入力されると、ヒートポンプ装置で消費する電力が前記消費電力上限値以内となるように電力抑制制御が行われ、圧縮機の回転数が制限される。
【0007】
このような電力抑制制御が行われている状態で前記の通常出力運転から高出力運転への切り替えが行われた場合、圧縮機の回転数が制限されている状態において前記減圧器の開き方向への補正量を加える制御が行われるため、圧縮機の吐出温度が下がりすぎて温水温度が低下する(いわゆるアンダーシュートが生じる)という問題があった。
【0008】
なお、前記したような減圧器のフィードバック制御だけでなく、圧縮機からの吐出温度が目標吐出温度となるように減圧器の開度を制御するいわゆる吐出温度制御が行われる場合でも、上記同様の課題が生じる。
すなわち、通常モードから高出力モードへ移行して圧縮機の回転数が増大すると吐出温度が上昇傾向となることから、吐出温度制御においても、前記と同様、温水温度のオーバーシュートを防止するために、吐出温度制御での減圧器の目標開度に対し開き方向への補正量を加える場合がある。
そのため、前記と同様、電力抑制制御実行時に高出力運転への切り替えが行われたとき、圧縮機の回転数が制限されている状態において前記開き方向への補正量を加える制御が行われるため、圧縮機の吐出温度が下がりすぎてアンダーシュートが生じ得る。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1では、圧縮機、減圧器、空気熱交換器を冷媒配管で接続したヒートポンプ装置と、前記ヒートポンプ装置から前記冷媒配管を介し冷媒の供給を受けて水との熱交換により湯水循環回路側への温水を生成する水-冷媒熱交換器と、を有し、予め定められた通常出力により前記湯水循環回路側に温水を生成する通常モードでの運転、及び、前記通常出力よりも大きな出力により前記湯水循環回路側に温水を生成する高出力モードでの運転、を選択的に実行可能なヒートポンプ温水装置において、前記圧縮機の回転数を、前記通常モードでの運転か前記高出力モードでの運転かに応じて各モードに対応した目標圧縮機回転数となるように増減制御する圧縮機制御手段と、前記減圧器の開度を制御する減圧器制御手段と、を有し、前記減圧器制御手段は、前記圧縮機から吐出される冷媒の吐出温度または吐出温度に応じた値が、生成される前記温水の目標温水温度に基づいて算出される目標値となるような、前記減圧器の目標開度を決定する目標開度決定手段と、前記通常モードでの運転から前記高出力モードでの運転への切り替えが行われたか否かを判定する運転切替判定手段と、前記運転切替判定手段により前記高出力モードでの運転への切り替えが行われたと判定された場合に、前記目標開度決定手段により決定された前記目標開度に対し、開き方向への補正量を加える目標開度補正手段と、前記ヒートポンプ装置における消費電力の抑制を指示する電力抑制信号が入力されたか否かを判定する電力抑制判定手段と、前記電力抑制判定手段により前記電力抑制信号が入力されたと判定された場合における前記目標開度補正手段による前記開き方向への補正量を、前記電力抑制判定手段により前記電力抑制信号が入力されたと判定されない場合における開き方向への補正量よりも小さく調整する補正量調整手段と、を有するものである。
【0010】
また、請求項2では、前記補正量調整手段は、前記電力抑制判定手段により前記電力抑制信号が入力されたと判定された場合、当該電力抑制信号により許容される消費電力上限値に応じて、補正量を可変に調整するものである。
【0011】
また、請求項3では、前記電力抑制判定手段により前記電力抑制信号が入力されたと判定された場合、さらに外気温度に応じて、補正量を可変に調整するものである。
【0012】
また、請求項4では、前記補正量調整手段は、前記電力抑制判定手段により前記電力抑制信号が入力されたと判定された場合、前記消費電力上限値が小さい場合は大きい場合よりも前記補正量を小さくし、前記外気温度が低い場合は高い場合よりも前記補正量を小さくするものである。
【0013】
また、請求項5では、前記目標開度補正手段は、前記運転切替判定手段により前記高出力モードでの運転への切り替えが行われたと判定された後、前記目標開度決定手段により決定された前記目標開度に対し、所定回数限定で前記開き方向への補正量を加えるものである。
【発明の効果】
【0014】
この発明の請求項1によれば、目標開度決定手段により、減圧器制御手段による減圧器の目標開度が、圧縮機からの冷媒の吐出温度または吐出温度に応じた値が、生成される温水の目標温水温度に基づいて算出される目標値となるように決定され、ヒートポンプ装置での効率最大化が図られる。
【0015】
通常モードでの運転から高出力モードでの運転へ切り替えられたと運転切替判定手段により判定された場合は、目標開度補正手段により、前記目標開度決定手段が前記のように決定した目標開度に対し、開き方向への補正量が加えられる。これにより、圧縮機回転数の上昇による冷媒圧や温水温度の過度の上昇(いわゆるオーバーシュート)が防止される。
【0016】
一方、電力抑制制御の実行のために外部から電力抑制信号が入力されたと電力抑制判定手段により判定された場合は、補正量調整手段が、前記のように目標開度補正手段が決定した開き方向への補正量を、前記電力抑制信号が入力されたと判定されない場合の開き方向への補正量よりも小さく調整する。すなわち、圧縮機の回転数が制限されていることに対応して、前記減圧器の開き方向への補正量を抑えめにする。この結果、前記のアンダーシュートの発生といった不都合を回避することができる。
【0017】
なお、減圧器の目標開度の補正における補正量を増減調整する手法とすることには、以下の意義がある。すなわちこの場合、圧縮機の目標回転数としては、通常モードから高出力モードへ切り替わり、かつ電力抑制信号が入力される前と同じ、比較的高い目標回転数が維持される。そのため、圧縮機は、電力抑制制御による消費電力の制限を満たしつつ、可能な限りギリギリまで高い回転数で作動できるので、そのときの環境条件や作動状態に応じて確実にアンダーシュートを回避することができる。
【0018】
また、請求項2によれば、電力抑制信号により許容される消費電力上限値に応じて、パルスモータが減圧器の開度を操作するときの開き方向への補正量(補正前後の開度の差分)の値を可変に調整する。このような補正量の可変調整が行われることにより、例えば消費電力上限値が800[W]の場合は、電力制限がない場合に比べ、パルスモータのパルス位置で表したときの補正量をマイナス側へ5[パルス]減に調整することで、前記開き方向への補正量を15[パルス]とし、600[W]の場合は補正量をマイナス側へ10[パルス]減に調整することで前記開き方向への補正量を10[パルス]とし、400[W]の場合は補正量をマイナス側へ15[パルス]減に調整することで前記開き方向への補正量を5[パルス]とする。このように、圧縮機の回転数を制限する上限値の値に応じて好適な開度制御の態様とすることができる。
【0019】
また、一般に、減圧器は、低温であるほど、少ない量の開き操作でも冷媒温度への影響が大きくなる。請求項3によれば、これに対応し、補正量調整手段は、外気温にも応じて、補正量の値を可変に調整する。これにより、例えば消費電力上限値が800[W]の場合には、相対的に低温側では補正量をマイナス側へ5[パルス]減に調整することで前記開き方向への補正量を15[パルス]とし、高温側では補正量をマイナス側へ0[パルス]減に調整することで前記開き方向への補正量を20[パルス]、等とする。このように、外気温に応じて低温側の開き方向への補正量を抑え気味とする好適な開度制御の態様とすることができる。
【0020】
また、請求項4によれば、例えば消費電力上限値が800[W]の場合は、低温側では補正量をマイナス側へ5[パルス]減に調整することで前記開き方向への補正量を15[パルス]とし、高温側では補正量をマイナス側の0[パルス]減に調整することで前記開き方向への補正量を20[パルス]とする。また、600[W]の場合は低温側では補正量をマイナス側へ10[パルス]減に調整することで前記開き方向への補正量を10[パルス]とし、高温側では補正量をマイナス側へ5[パルス]減に調整することで前記開き方向への補正量を15[パルス]とし、400[W]の場合は低温側では補正量をマイナス側へ15[パルス]減に調整することで前記開き方向への補正量を5[パルス]とし、高温側では補正量をマイナス側へ10[パルス]減に調整することで前記開き方向への補正量を10[パルス]、等とする。このように、外気温に応じて好適な開度制御の態様とすることができる。
【0021】
また、請求項5によれば、目標開度補正手段による目標開度の補正を永続的に行うのではなく、所定回数限定とすることで、従来の制御内容からの制御ロジックの複雑化を回避してシンプル化を図りつつ、前記のアンダーシュート発生の不都合を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態のヒートポンプ温水装置の概略構成図
図2】加熱制御装置の機能的構成を表す機能ブロック図
図3】電力抑制制御時における消費電力上限値、外気温度、電子膨張弁の目標開度の補正量の挙動を表す説明図
図4】加熱制御装置が実行する制御手順を表すフローチャート図
図5】補正量調整が行われるときの、運転モードの切替状態、沸上温度、電子膨張弁の開度、圧縮機の回転数、及び、冷媒吐出圧、の挙動をそれぞれ表す説明図
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本発明の一実施形態について図面に基づいて説明する。
【0024】
<概略回路構成>
図1に示すように、本実施形態に係わるヒートポンプ温水装置100は、湯水を貯湯する貯湯タンク2を有したタンクユニット1と、ヒートポンプユニット3と、を有している。
【0025】
前記ヒートポンプユニット3は、前記貯湯タンク2内の湯水を加熱するために水冷媒熱交換器15(水-冷媒熱交換器に相当)と、加熱循環ポンプ19(循環ポンプに相当)と、を備えている。水冷媒熱交換器15は、冷媒を流通させる冷媒側の流路15bと水側の流路15aとを有し、高温高圧の冷媒と貯湯タンク2内の湯水とを熱交換する。すなわち、前記水冷媒熱交換器15の前記水側の流路15aと前記貯湯タンク2とが加熱往き管5(往き管に相当)及び加熱戻り管6(戻り管に相当)によって環状に接続され、前記タンクユニット1と前記ヒートポンプユニット3とにわたる湯水循環回路としての加熱循環回路4が形成されている。
【0026】
加熱往き管5は、前記貯湯タンク2の下部に接続され、加熱戻り管6は、前記貯湯タンク2の上部に接続されている。前記加熱循環ポンプ19は、前記加熱往き管5の途中に設けられ、前記水側の流路15aを介し前記加熱往き管5からの湯水を前記加熱戻り管6へ流通させつつ、貯湯タンク2の湯水を循環させる。なお、前記加熱往き管5には、前記水冷媒熱交換器15の前記水側の流路15aに流入する入水温度T1(湯水の入口温度)を検出する入水温度センサ23が設けられ、前記加熱戻り管6には、前記水側の流路15aから前記貯湯タンク2に向かって流出する沸上温度Tbを検出する沸上温度センサ24が設けられている。
【0027】
前記タンクユニット1において、貯湯タンク2の側面には、貯湯タンク2内の湯の温度Twを検出する貯湯温度センサ12が上下にわたり複数設けられている。
前記貯湯タンク2の下部にはまた、貯湯タンク2に水を給水する給水管7が接続され、前記貯湯タンク2の上部にはまた、貯湯されている高温水を出湯する出湯管8が接続され、出湯管8には、貯湯タンク2内が負圧になった場合に開弁して貯湯タンク2内に空気を導入する負圧吸気弁119が設けられ、給水管7からは給水バイパス管9が分岐して設けられている。
さらに、出湯管8からの湯と給水バイパス管9からの水とを混合して給湯設定温度の湯とする混合弁10と、混合弁10で混合された湯を給湯端末125に給湯するための給湯管108aと、給湯管108a内の給湯温度を検出する給湯温度センサ11と、が設けられている。
【0028】
なお、前記タンクユニット1外における給湯管108aの給湯端末125側には給湯管108bが設けられており、これら給湯管108a,108bの間には混合弁10で混合された湯を加熱可能なガス熱源機130が設けられている。
【0029】
前記ヒートポンプユニット3はまた、冷媒を圧縮する圧縮機14と、前記水冷媒熱交換器15通過後の冷媒を減圧させる減圧器としての電子膨張弁16と、熱源としての空気と冷媒との熱交換を行う熱源側熱交換器としての空気熱交換器17と、空気熱交換器17に外気を送り込む室外ファン67と、を備えている。そして、前記圧縮機14と、前記圧縮機14から吐出された冷媒が流通する前記水冷媒熱交換器15の前記冷媒側の流路15bと、前記電子膨張弁16と、前記空気熱交換器17とが冷媒配管18で環状に接続されることにより冷媒循環回路30が形成されている。電子膨張弁16は、例えば現在位置を「パルス数位置」として把握可能なパルスモータにより駆動される。
【0030】
冷媒配管18は、圧縮機14の吐出側を前記水冷媒熱交換器15の入口側に連通させ、また圧縮機14の吸込側を前記空気熱交換器の出口側に連通させる。なお、冷媒配管18及びこれに接続された圧縮機14、空気熱交換器17、電子膨張弁16が、ヒートポンプ装置に相当している。また、本実施形態では、前記ヒートポンプ装置を構成する前記圧縮機14等を含むヒートポンプユニット3及びタンクユニット1について専用電源が設けられることなく、それらヒートポンプユニット3及びタンクユニットは、いずれも例えばAC100Vの家庭用電源や蓄電池から電力供給を受けて作動する構成となっている。
【0031】
冷媒循環回路30内には、冷媒として例えばR32冷媒が用いられ、ヒートポンプサイクルを構成している。前記冷媒配管18の前記圧縮機14の吐出側の部位には、圧縮機14から吐出される冷媒の冷媒吐出温度Toutを検出する吐出温度センサ20が設けられ、前記冷媒側の流路15bと前記電子膨張弁16との間の冷媒配管18には、前記冷媒側の流路15bから流出し前記電子膨張弁16に向かう冷媒の流出温度T2(冷媒の出口温度)を検出する流出温度センサ21が設けられ、前記空気熱交換器17の空気入口側には、外気温度Tairを検出する外気温度センサ22(外気温検出手段に相当)が設けられている。
【0032】
そして、前記タンクユニット1には、前記した各センサ12,11の検出結果が入力される貯湯制御装置40が設けられている。同様に、前記ヒートポンプユニット3には、前記した各センサ20,22,24,21,23の検出結果が入力される加熱制御装置50が設けられている。加熱制御装置50及び貯湯制御装置40は、互いに通信可能に接続されており、前記各センサ12,11,20,22,24,21,23の検出結果等に基づき、相互に連携しつつ、前記タンクユニット1及び前記ヒートポンプユニット3内の各機器の動作を制御する。
【0033】
なお、加熱制御装置50と貯湯制御装置40との間に制御上の主従関係があり、例えばセンサ12,11の検出結果に基づく運転指令や電力抑制信号(後述)を貯湯制御装置40が加熱制御装置50へ出力し、加熱制御装置50はこの運転指令や電力抑制信号と各センサ20,22,24,21,23の検出結果とに基づきヒートポンプユニット3内の各機器の動作を制御するようにしてもよい。以下、本明細書においては、このような場合を例にとって説明する。
【0034】
<ヒートポンプ消費電力検出装置>
ヒートポンプユニット3には、当該ヒートポンプユニット3内で消費する電力(以下適宜、単に「HP消費電力」と称する。図示も同様)を検出するヒートポンプ消費電力検出装置200が設けられている。ヒートポンプ消費電力検出装置200は、ヒートポンプユニット3へ供給される電圧値及び電流値をそれぞれ公知のセンサにより検出し、それら電圧値及び電流値を積算することで前記HP消費電力を算出する。算出されたHP消費電力は、加熱制御装置50へと出力される。
【0035】
<加熱制御装置>
次に、前記ヒートポンプユニット3に備えられた前記加熱制御装置50について説明する。加熱制御装置50は、詳細な図示を省略するが、各種のデータやプログラムを記憶する記憶部と、演算・制御処理を行う制御部とを備えている。この加熱制御装置50の機能的構成を図2により説明する。
【0036】
図2に示すように、前記加熱制御装置50は、運転切替部410Aと、圧縮機制御部410B(圧縮機制御手段に相当)と、膨張弁制御部410C(減圧器制御手段に相当)と、室外ファン制御部410Dと、ポンプ制御部410Fと、を機能的に備えている。
【0037】
本実施形態のヒートポンプユニット3では、予め定められた定格出力(例えば2.5kW程度。通常出力に相当)により貯湯タンク2への温水を生成する定格モード(通常モードに相当)と、この定格出力よりも大きな高出力(例えば4.0kW程度、通常出力より大きな出力に相当)により温水を生成する高性能モード(高出力モードに相当)と、の2つのモードが選択的に実行可能に用意されている。このいずれのモードでヒートポンプユニット3を運転するかは、貯湯制御装置40から出力される運転指令に基づき決定される。
【0038】
すなわち、運転切替部410Aには、前記貯湯制御装置40により出力された運転指令が入力される。運転切替部410Aは、前記運転指令に応じて、実際にヒートポンプユニット3を、上記2つのモードのうちいずれのモードで運転を行うか、及び、空気熱交換器17を蒸発器として機能させる前記沸上運転を行うか行わないか、を決定する。また、運転切替部410Aは、その決定結果に対応する運転情報を、前記圧縮機制御部410B、膨張弁制御部410C、室外ファン制御部410D、及び、ポンプ制御部410Fに出力する。なおこの運転情報には、前記貯湯温度センサ12により検出された貯湯タンク2内の湯の温度Tw、及び、適宜に決定された目標沸上温度Tbo、等が含まれる。
【0039】
圧縮機制御部410Bには、この例では、前記外気温度センサ22により検出された前記外気温度Tairと、前記沸上温度センサ24により検出された前記沸上温度Tbと、前記貯湯制御装置40の運転指令に対応した前記運転情報と、前記貯湯制御装置40からの電力抑制信号と、ヒートポンプ消費電力検出装置200からのHP消費電力と、が入力される(直接入力される場合のほか、間接的に入力するようにしてもよい。以下同様)。また圧縮機制御部410Bは、運転モード判定部410Baと、最大回転数設定部410Bbと、目標回転数決定部410Bcと、電力抑制判定部410Bdと、を有する。
【0040】
運転モード判定部410Baは、運転切替部410Aからの前記運転情報に基づき、前述の定格モード及び高性能モードのうちいずれのモードで運転されているかを判定する。
最大回転数設定部410Bbは、運転モード判定部410Baでの判定結果に基づき、対応する圧縮機14の目標回転数の最大値(最大目標回転数)を決定する。例えば、定格モードの場合は最大目標回転数が50[rps]に設定され、高性能モードの場合は最大目標回転数が90[rps]に設定される。
目標回転数決定部410Bcは、設定された当該最大目標回転数の範囲内で、入力された前記外気温度Tair及び前記沸上温度Tb及び前記電力抑制信号に基づき、前記圧縮機14の目標回転数を設定し、この目標回転数となるように圧縮機14の回転数を増減制御する。
なお、電力抑制判定部410Bdについては、後述する。
【0041】
膨張弁制御部410Cには、この例では、前記吐出温度センサ20により検出された前記冷媒吐出温度Toutと、前記流出温度センサ21により検出された冷媒流出温度T2と、前記外気温度センサ22により検出された前記外気温度Tairと、前記入水温度センサ23により検出された前記入水温度T1と、前記貯湯制御装置40の運転指令に対応した前記運転情報と、前記貯湯制御装置40からの電力抑制信号と、が入力される。また膨張弁制御部410Cは、運転切替判定部410Caと、目標開度補正部410Cbと、目標開度決定部410Ccと、補正量調整部410Cdと、電力抑制判定部410Ceと、を有する。
【0042】
目標開度決定部410Ccは、前記冷媒吐出温度Toutと前記冷媒流出温度T2との温度差Tout-T2(吐出温度に応じた値に相当)が、前記目標沸上温度Tbo(温水の目標温水温度に相当)と前記外気温度Tairと前記入水温度T1とに基づいて算出される所定の目標温度差△H(目標値に相当)となるような、電子膨張弁16の目標開度を決定する。ここで、目標開度は、電子膨張弁16を駆動する前記パルスモータの前記「パルス数位置」と一対一に対応している。
【0043】
運転切替判定部410Caは、運転切替部410Aからの前記運転情報に基づき、前記定格モードでの運転から前記高性能モードでの運転への切り替えが行われたか否かを判定する。
目標開度補正部410Cbは、前記運転切替判定部410Caにより前記高性能モードでの運転への切り替えが行われたと判定された場合に、前記目標開度決定部410Ccにより決定された前記目標開度に対し、開き方向への補正量を加える。
なお、補正量調整部410Cd及び電力抑制判定部410Ceについては、後述する。
【0044】
室外ファン制御部410Dには、前記外気温度センサ22により検出された前記外気温度Tairと、前記貯湯制御装置40の運転指令に対応した前記運転情報と、が入力される。室外ファン制御部410Dは、入力された前記運転情報及び前記外気温度Tairと、に基づき前記室外ファン67の目標回転数を設定し、室外ファン67の回転数がその目標回転数となるように増減制御する。
【0045】
ポンプ制御部410Fには、前記沸上温度センサ24により検出された前記沸上温度Tbと、前記貯湯制御装置40の運転指令に対応した前記運転情報と、が入力され、これらに基づき、前記加熱循環ポンプ19の回転数を制御する。
【0046】
<沸上運転>
前記したように、本実施形態のヒートポンプユニット3では、圧縮機14の吐出側が前記水冷媒熱交換器15の入口側に連通し、圧縮機14の吸込側が前記空気熱交換器の出口側に連通しており、これによって空気熱交換器17を電子膨張弁16からの低温低圧の冷媒を蒸発させる蒸発器として機能させる。すなわち、水冷媒熱交換器15において冷媒配管18内の冷媒からの放熱により熱が放出され、加熱循環回路4内に温水が生成される。生成された温水は、加熱循環ポンプ19が誘起する加熱循環回路4内の温水の流れによって加熱戻り管6を介し貯湯タンク2内に供給され、これによって貯湯タンク2内の湯水の温度を上昇させることができる(=温水生成運転としての沸上運転)。
【0047】
<電力抑制制御>
ここで、前記のようにヒートポンプユニット3の圧縮機14等が家庭用電源や蓄電池から電力供給を受けて作動する場合、限られた電源容量を、タンクユニット1や家庭での各電化製品等と共有することとなる。そのため、本実施形態では、圧縮機14等における消費電力の抑制を指示する電力抑制信号が、前記貯湯制御装置40から加熱制御装置50の前記運転切替部410A、圧縮機制御部410B、膨張弁制御部410Cへと入力される。前記電力抑制信号には、前記圧縮機14等において消費することが許容される消費電力上限値が指示されている。
【0048】
前記したように、圧縮機制御部410Bには、電力抑制判定部410Bdが設けられている。この電力抑制判定部410Bdは、前記電力抑制信号が入力されたか否かの判定を行う。電力抑制信号が入力されたと判定された場合、電力抑制判定部410Bdは、当該電力抑制信号により指定される前記消費電力上限値の値を前記目標回転数決定部410Bcへと出力する。
目標回転数決定部410Bcは、最大回転数設定部410Bbにより設定された前記最大目標回転数の範囲内で、かつ、ヒートポンプ消費電力検出装置200から入力されたHP消費電力が前記消費電力上限値以下となる範囲内で、前記圧縮機14の目標回転数を設定し、この目標回転数となるように圧縮機14の回転数を増減制御する。
【0049】
<電力抑制制御時に運転切り替えが行われた場合>
ところで、前記のような電力抑制制御が行われている状態で、前記の定格モードでの運転から高性能モードでの運転への切り替えが行われた場合、前記したように圧縮機制御部410Bの目標回転数決定部410Bcにより圧縮機14の回転数が制限されている状態において、膨張弁制御部410Cの目標開度補正部410Cbにより前記のような電子膨張弁16の開き方向への補正量を加える制御が行われることとなる。そのため、圧縮機14からの前記冷媒吐出温度Toutが下がりすぎて加熱循環回路4における温水の温度が低下する(いわゆるアンダーシュートが生じる)おそれがある。
【0050】
そこで本実施形態では、膨張弁制御部410Cに、補正量調整部410Cd及び電力抑制判定部410Ceが設けられる。
電力抑制判定部410Ceは、前記電力抑制信号が貯湯制御装置40から入力されたか否かを判定する。
補正量調整部410Cdは、電力抑制判定部410Ceにより前記電力抑制信号が入力されたと判定された場合、前記目標開度補正部410Cbによる電子膨張弁16の開度の前記開き方向への補正量を、前記電力抑制信号が入力されたと判定されない場合における当該開き方向への補正量よりも小さく調整する。
詳細には、前記補正量調整部410Cdは、前記電力抑制信号が入力されたと判定された場合には、当該電力抑制信号により指定される前記消費電力上限値に応じて、電子膨張弁16の開度の前記開き方向への補正量を可変に調整する。特にこの例では、前記補正量調整部410Cdは、前記消費電力上限値と前記外気温度Tairとの両方に応じて、前記補正量を可変に調整する。膨張弁制御部410Cは、目標開度補正部410Cbにより補正がなされた場合は、その補正後の目標開度となるように電子膨張弁16の開度を増減制御し、目標開度補正部410Cbにより補正がなされない場合は、前記目標開度決定部410Ccにより決定された目標開度となるように電子膨張弁16の開度を増減制御する。ここで、電子膨張弁16の開度の増減制御は、例えば目標開度が80パルス位置で、パルスモータの現在位置が60パルス位置であると、パルスモータは20パルス分開き方向へ駆動されるように行われる。この20パルス分が前記操作量となる。
【0051】
前記補正量の可変調整の態様の一例を図3に示す。図3は、横軸に前記外気温度Tairをとって表したときの、前記電子膨張弁16の開度の開き方向の補正量の調整挙動を、電子膨張弁16を駆動するパルスモータへの駆動指示信号のパルス数で示したものである(パルス数が大きいほど電子膨張弁16の開度が開き方向へ駆動される)。
【0052】
図3に示すように、この例では、電力抑制信号が入力されず消費電力上限値がない場合には、外気温度Tairの値に係わらず前記電子膨張弁16の開き方向への開度補正量は20[パルス]とされる。
消費電力上限値が800[W]の場合、外気温度Tairが-5[℃]未満の場合は前記補正量は15[パルス]に調整され、外気温度Tairが-5[℃]以上の場合は前記補正量は20[パルス]に調整される。
消費電力上限値が600[W]の場合、外気温度Tairが0[℃]未満の場合は前記補正量は10[パルス]に調整され、外気温度Tairが0[℃]以上の場合は前記補正量は15[パルス]に調整される。
消費電力上限値が400[W]の場合、外気温度Tairが5[℃]未満の場合は前記補正量は5[パルス]に調整され、外気温度Tairが5[℃]以上の場合は前記補正量は10[パルス]に調整される。
【0053】
上記のように、この例では、前記消費電力上限値が小さい場合は大きい場合よりも前記補正量が小さくなり、前記外気温度Tairが低い場合は高い場合よりも前記補正量が小さくなる。
【0054】
<制御手順>
本実施形態の前記加熱制御装置50により実行される、前記図3に一例を示した電子膨張弁の開度補正量の調整を含む制御手順を、図4のフローチャートにより説明する。
【0055】
図4において、まずS10で、前記貯湯制御装置40からの運転指令に対応した運転切替部410Aからの運転情報に基づき、前記沸上運転が開始される。
【0056】
その後、S15で、膨張弁制御部410Cの前記目標開度決定部410Ccにより、前記Tout-T2が前記所定の目標温度差△Hとなるような、電子膨張弁16の目標開度が決定される(いわゆる△H制御)。この△H制御により決定された目標開度となるように、目標開度補正部410Cbから前述のパルスモータへ駆動指示信号が予め定められた所定周期t(後述の図5参照)にて出力される。
【0057】
そして、S20において、膨張弁制御部410Cの電力抑制判定部410Ceにより、前記の電力抑制信号が入力されたか否かが判定される。
【0058】
電力抑制信号が入力されていない場合はS20がNo判定され、S25へ移行する。S25では、前記補正量調整部410Cdにより、前記定格モードでの運転から前記高性能モードでの運転に切り替えられたとき(言い換えれば運転切替判定部410Caにより高性能モードへ切り替えられたと判定された場合)において前記目標開度補正部410Cbが実行する前記電子膨張弁16の開度の開き方向への補正量が、所定の固定値(図3の例では20[パルス])に一律に設定される。
電力抑制信号が入力されている場合はS20がYes判定され、S30へ移行する。S30では、前記補正量調整部410Cdにより、前記高性能モードでの運転に切り替えられたときにおいて前記目標開度補正部410Cbが実行する前記電子膨張弁16の開度の開き方向への補正量が、図3に一例を示したように可変に算出される。
S25,S30の後はS35へ移行する。
【0059】
S35では、膨張弁制御部410Cの運転切替判定部410Caにより、前記定格モードから前記高性能モードへ切り替えられたか否かが判定される。切り替えられていない場合はNo判定され、前記S10へ戻って同様の手順が繰り返される。
定格モードから高性能モードに切り替えられた場合はYes判定され(圧縮機制御部410Bの運転モード判定部410Baでも、高性能モードとなったことが判定される)、S40へ移行する。
【0060】
S40では、圧縮機制御部410Bの最大回転数設定部410Bbにより、圧縮機14の最大目標回転数が、定格モード用のものから高性能モード用のものに変更される。前述の例に沿うと、最大目標回転数が50[rps]から90[rps]に変更され、HP消費電力上限値を超えないように圧縮機14の回転数が増加されていく。
【0061】
そして、S45で、膨張弁制御部410Cの前記目標開度決定部410Ccにより、前記S15で開始された前記△H制御に基づき、前記S35で検知したモード切替後に最初に△H制御として実行される(=以下適宜、単に「初回制御時の」「初回の」等と称する。図示も同様)電子膨張弁16の目標開度が決定される。
【0062】
その後、S50で、前記S45で決定された初回制御時の前記目標開度に対して、前記目標開度補正部410Cbにより、前記S30で算出済又は前記S25で決定済みの前記電子膨張弁16の開度の開き方向への補正量が加えられる。
すなわち、この例では、前記定格モードから前記高性能モードへ切り替えられた後、△H制御を実行するために目標開度決定部410Ccにより決定された前記目標開度に対し、所定回数(この例では1回)限定で、前記電子膨張弁16の開き方向への補正量が加えられ、次の制御周期では通常の△H制御のみが実行されるものである。
【0063】
S55では、前述の貯湯タンク2内の温度Twが所定値に達した等、前記沸上運転を終了すべきタイミングとなったか否かが前記運転切替部410Aにより判定される。終了すべきタイミングになっていればYes判定され、運転切替部410Aからの運転情報に基づき沸上運転を終了し、このフローを終了する。S55において前記沸上運転を終了すべきタイミングにまだなっていなければNo判定されてS10へ戻り、(S15での△H制御を伴う)沸上運転が続行される。
【0064】
<実施形態の効果>
以上説明したように、本実施形態のヒートポンプ温水装置100では、膨張弁制御部410Cの目標開度決定部410Ccにより、電子膨張弁16の目標開度が、圧縮機14からの冷媒の吐出温度Toutに応じた値が目標温水温度に基づいて算出される目標値となるように、決定される。具体的には、この例では、目標開度決定部410Ccが実行する△H制御により、電子膨張弁16の目標開度が、圧縮機14からの冷媒の吐出温度Toutと水冷媒熱交換器15からの冷媒の流出温度T2との温度差Tout-T2が所定の目標温度差△Hとなるように決定される。これにより、圧縮機14、電子膨張弁16、空気熱交換器17を備えた前記ヒートポンプ装置での効率最大化が図られる。
【0065】
定格モードでの運転から高性能モードでの運転へ切り替えられたと運転切替判定部410Caにより判定された場合は、目標開度補正部410Cbにより、前記目標開度決定部410Ccが前記のように決定した目標開度に対し、開き方向への補正量が加えられる。これにより、圧縮機14回転数の上昇による冷媒圧や温水温度の過度の上昇(いわゆるオーバーシュート)が防止される。
【0066】
一方、電力抑制制御の実行のために加熱制御装置50の外部から電力抑制信号が入力されたと電力抑制判定部410Ceにより判定された場合は、補正量調整部410Cdが、前記のように目標開度補正部410Cbが決定した開き方向への補正量を、前記電力抑制信号が入力されたと判定されない場合の開き方向への補正量よりも小さく調整する。
【0067】
前記の調整による各部の挙動の一例を図5(a)~(e)に示す。図5(a)は前記の運転モードの切替状態を表し、図5(b)は前記沸上温度Tbの挙動を表し、図5(c)は電子膨張弁16の開度の挙動を表し、図5(d)は圧縮機14の回転数の挙動を表し、図5(e)は前記冷媒吐出圧の挙動を表している。この例では、入力された前記電力抑制信号による消費電力上限値が400[W]であった場合を一例として示している。なお、図5(b)~(e)においては、本実施形態による前述の電子膨張弁16の開度の補正量の調整を行わない場合を比較例として破線で示している。
【0068】
図5(a)に示すように時間t0にて定格モードでの運転から高性能モードでの運転に切り替わったとき、図5(d)に示すように、圧縮機14の回転数は、前記電力抑制信号による消費電力上限値の制限のため、なかなか上昇しない(時間t0~t5参照)。このような状態で、前記した電子膨張弁16の△H制御に対する開き方向への補正量を加える制御が(補正量調整部410Cdによる調整なしで)単純に行われた場合、圧縮機14からの冷媒吐出圧(図5(e)参照)や冷媒吐出温度Toutが下がりすぎ、図5(b)に示すように沸上温度Tbが低下する現象(いわゆるアンダーシュート。時間t0~t2参照)が起こり得る。
【0069】
そこで本実施形態では、前記した手法により、図5(c)に示すように電子膨張弁16の開き方向への初回補正量が(破線の比較例に比べて)マイナス方向に調整され、補正量の値が小さくなる(時間t0~t1参照)。この結果、圧縮機14からの冷媒吐出圧や冷媒吐出温度Toutの低下を抑制することができ(図5(e)の時間t0~t2参照)、沸上温度Tbの低下を防止できるので(図5(b)の時間t0~t2参照)、前記のアンダーシュートの発生を回避することができる。
【0070】
なお、本実施形態において、電力抑制信号に応じて圧縮機14の目標回転数を直接可変に制御するのではなく、電子膨張弁16の目標開度の補正における補正量を増減調整する手法とすることには、以下の意義がある。すなわちこのような手法とすることで、圧縮機14の目標回転数としては、定格モードから高性能モードへ切り替わりかつ電力抑制信号が入力される前と同じ、比較的高い目標回転数(前記の例では90[rps])が維持される。そのため、圧縮機14は、電力抑制制御による消費電力の制限を満たしつつ、可能な限りギリギリまで高い回転数で作動できるので、そのときの環境条件や作動状態に応じて確実にアンダーシュートを回避することができるものである。
【0071】
また、本実施形態では特に、図3等を用いて前述したように、電力抑制信号により許容される消費電力上限値に応じて、補正量の値が可変に調整される。これにより、例えば前述の例では、消費電力上限値が800[W]の場合は、電力制限がない場合に比べ、パルスモータのパルス位置で表したときの補正量をマイナス側へ5[パルス]減に調整することで、電子膨張弁16の開き方向への前記補正量を15[パルス]とする。同様に、600[W]の場合は補正量をマイナス側へ10[パルス]減に調整することで前記開き方向への補正量を10[パルス]とし、400[W]の場合は補正量をマイナス側へ15[パルス]減に調整することで前記開き方向への補正量を5[パルス]、等とする。このように、圧縮機14の回転数を制限する消費電力上限値の値に応じて好適な開度制御の態様とすることができる。
【0072】
また、一般に、電子膨張弁16は、低温であるほど、少ない量の開き操作でも冷媒温度への影響が大きくなる。本実施形態は特にこれに対応し、図3等を用いて前述したように、補正量調整部410Cdが外気温度Tairにも応じて補正量の値を可変に調整する。これにより、図3に示したように例えば消費電力上限値が800[W]の場合には、相対的に低温側では補正量をマイナス側へ5[パルス]減に調整することで前記開き方向への補正量を15[パルス]とし、高温側では補正量をマイナス側へ0[パルス]減に調整することで前記開き方向への補正量を20[パルス]、等とする。このように、外気温度Tairに応じて低温側の開き方向への補正量を抑え気味とする、好適な開度制御の態様とすることができる。
【0073】
また、本実施形態では特に、図3を用いて前述したように、前記消費電力上限値が小さい場合は大きい場合よりも前記補正量の値を小さくし、前記外気温度Tairが低い場合は高い場合よりも前記補正量の値を小さくする。これにより、図3に示したように、例えば消費電力上限値が800[W]の場合は、低温側では補正量をマイナス側へ5[パルス]減に調整することで前記開き方向への補正量を15[パルス]とし、高温側では補正量をマイナス側へ0[パルス]減に調整することで前記開き方向への補正量を20[パルス]とし、600[W]の場合は低温側では補正量をマイナス側へ10[パルス]減に調整することで前記開き方向への補正量を10[パルス]とし、高温側では補正量をマイナス側へ5[パルス]減に調整することで前記開き方向への補正量を15[パルス]とし、400[W]の場合は低温側では補正量をマイナス側へ15[パルス]減に調整することで前記開き方向への補正量を5[パルス]とし、高温側では補正量をマイナス側へ10[パルス]減に調整することで前記開き方向への補正量を10[パルス]、等とする。このように、外気温度Tairに応じて好適な開度制御の態様とすることができる。
【0074】
また、本実施形態では特に、目標開度補正部410Cbは、前記高性能モードへの切り替えが行われた後、前記目標開度決定部410Ccにより決定された前記目標開度に対し、所定回数限定で(前述の例では初回限定で)前記開き方向への補正量が加えられる。目標開度補正部410Cbによる目標開度の補正を永続的に行うのではなく、所定回数限定とすることで、従来の制御内容からの制御ロジックの複雑化を回避してシンプル化を図りつつ、前記のアンダーシュート発生の不都合を回避することができる。
【0075】
なお、本発明は以上の態様に限定されることなく、その趣旨を変更しない範囲で適用可能なものである。
【0076】
すなわち、上記実施形態では、膨張弁制御部410Cの目標開度決定部410Ccが、電子膨張弁16の目標開度を、冷媒吐出温度Toutと冷媒流出温度T2との温度差が目標沸上温度Tboと外気温度Tairと入水温度T1とに基づく△Hとなるように決定する、△H制御を行う場合を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、膨張弁制御部410Cが、前記冷媒吐出温度Toutが前記目標沸上温度Tboプラス一定値[℃]となるように、電子膨張弁16の開度をフィードバック制御する(いわゆる吐出温度制御)ようにしてもよい。この場合も、消費電力上限値の制限がある状態で前記吐出温度制御に対し開き方向への補正量を加える制御が単純に行われた場合には、前述と同様のアンダーシュートが起こりうるため、前記と同様の手法により電子膨張弁16の開き方向への補正量の値を小さくすることで、前記のアンダーシュートの発生を回避することができる。
【0077】
また、上記実施形態では、水冷媒熱交換器15の負荷側に加熱往き管5及び加熱戻り管6からなる加熱循環回路4を介して貯湯タンク2を接続することで、水冷媒熱交換器15で前記のように生成した温水を貯湯タンク2に供給する前記沸上運転を行うようにしたが、これに限られない。すなわち、加熱循環回路4と同様の温水を循環させる循環回路を介してファンコイル、床暖房パネル、パネルコンベクタ等の適宜の熱交換端末を接続しその熱交換端末に温水を供給して暖房を行う、温水生成運転としての暖房運転を行うようにしてもよい。なおこの場合は、例えば熱交換端末を操作するリモコンの設定温度レベルに応じた目標戻り温度が、前記の目標温水温度に相当する。
この場合も、前述と同様の手法によって同様の効果を得ることができる。
【0078】
また、前記実施形態における前記ヒートポンプサイクルとして、減圧器としてエジェクターを用いたエジェクターサイクルでもよい。
【0079】
また、上記実施形態では、熱源機として、熱源側熱交換器としての空気熱交換器17に冷媒を通じる一方で外気を送風する室外ファン67を有し、熱源としての外気と前記冷媒とが熱交換される、空気熱源式のヒートポンプである場合を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、熱源機を、熱源側熱交換器に対して水や不凍液が供給されそれらの液体と冷媒とが当該熱源側熱交換器において熱交換する構成のものとしてもよい。
また、地中又は比較的大容量の水源中に熱源側熱交換器を設け、この熱源側熱交換器で前記地中又は前記水源と冷媒とが熱交換する構成のものとしてもよい。さらには、前記地中又は前記水源の熱を用いたヒートポンプ回路と空気熱を用いた別のヒートポンプ回路とを備えた複合熱源型の構成としてもよい。
さらには、熱源側熱交換器において前記冷媒と熱交換できるものであれば、前記液体や前記外気や前記水源に代えて、それ以外のもの(例えば、発煙、排煙、各種高温ガス等を含む気体や、熱砂、塵埃、各種粒子等を含む流動固体)を熱源側熱交換器に通じたり、太陽光、反射光、その他輻射等による熱を熱源側熱交換器に供給して用いる構成としても良い。
【符号の説明】
【0080】
1 タンクユニット
2 貯湯タンク
3 ヒートポンプユニット
4 加熱循環回路(湯水循環回路)
5 加熱往き管(往き管、湯水配管)
6 加熱戻り管(戻り管、湯水配管)
14 圧縮機
15 水冷媒熱交換器(水-冷媒熱交換器)
16 電子膨張弁(減圧器)
17 空気熱交換器
18 冷媒配管
19 加熱循環ポンプ
20 吐出温度センサ
21 流出温度センサ
22 外気温度センサ
23 入水温度センサ
30 冷媒循環回路
40 貯湯制御装置
50 加熱制御装置
100 ヒートポンプ温水装置
410A 運転切替部
410B 圧縮機制御部(圧縮機制御手段)
410C 膨張弁制御部(減圧器制御手段)
410Ca 運転切替判定部(運転切替判定手段)
410Cb 目標開度補正部(目標開度補正手段)
410Cc 目標開度決定部(目標開度決定手段)
410Cd 補正量調整部(補正量調整手段)
410Ce 電力抑制判定部(電力抑制判定手段)
Tair 外気温度
Tout 冷媒吐出温度
T1 入水温度
T2 流出温度
図1
図2
図3
図4
図5