(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126446
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】表面保護フィルム付偏光板
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20240912BHJP
G02B 1/14 20150101ALI20240912BHJP
G02B 1/16 20150101ALI20240912BHJP
G02F 1/1335 20060101ALI20240912BHJP
G02F 1/13363 20060101ALI20240912BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20240912BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20240912BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
G02B5/30
G02B1/14
G02B1/16
G02F1/1335 510
G02F1/13363
C09J7/38
C09J201/00
B32B27/18 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034827
(22)【出願日】2023-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003845
【氏名又は名称】弁理士法人籾井特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】徐 菁▲王番▼
【テーマコード(参考)】
2H149
2H291
2K009
4F100
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
2H149AA02
2H149AA18
2H149AB02
2H149CA02
2H149DA02
2H149EA02
2H149EA12
2H149EA22
2H149FA08Z
2H149FA54Z
2H149FA66
2H149FB01
2H149FD37
2H149FD47
2H291FA22
2H291FA30
2H291FA94
2H291FA95
2H291FB02
2H291FB05
2H291FC05
2H291FC08
2H291FD12
2H291PA04
2H291PA07
2H291PA24
2H291PA42
2H291PA44
2H291PA52
2H291PA53
2H291PA64
2K009AA15
2K009EE03
4F100AJ06D
4F100AK21E
4F100AK25B
4F100AK25E
4F100AK42A
4F100AR00C
4F100AR00E
4F100AT00A
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4F100BA10E
4F100CA07C
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4F100CB00B
4F100CB00E
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4J004AA10
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4J040HD41
4J040JB09
4J040KA16
4J040KA32
4J040NA17
(57)【要約】
【課題】帯電防止性能に優れ、かつ、表面保護フィルム剥離後の偏光板の表面汚染が抑制された表面保護フィルム付偏光板を提供すること。
【解決手段】本発明の実施形態の表面保護フィルム付偏光板は、基材層と、粘着剤層Aと、を備える表面保護フィルムと;表面処理層と、保護層と、偏光子と、をこの順に備える偏光板と;粘着剤層Bと、をこの順に有し、該表面保護フィルムが該偏光板の該表面処理層に剥離可能に仮着されており、該表面保護フィルムが帯電防止剤を含まず、該粘着剤層Bが、帯電防止剤を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と、粘着剤層Aと、を備える表面保護フィルムと;
表面処理層と、保護層と、偏光子と、をこの順に備える偏光板と;
粘着剤層Bと;をこの順に有し、
該表面保護フィルムが該偏光板の該表面処理層に剥離可能に仮着されており、
該表面保護フィルムが、帯電防止剤を含まず、
該粘着剤層Bが、帯電防止剤を含む、表面保護フィルム付偏光板。
【請求項2】
前記表面処理層が、紫外線吸収剤を含む、請求項1に記載の表面保護フィルム付偏光板。
【請求項3】
前記粘着剤層Bの表面抵抗値が、1×1010Ω/□~1×1012Ω/□である、請求項1に記載の表面保護フィルム付偏光板。
【請求項4】
前記偏光板の厚みが60μm~210μmである、請求項1に記載の表面保護フィルム付偏光板。
【請求項5】
前記表面保護フィルムの剥離帯電圧が4.0kV以下である、請求項1に記載の表面保護フィルム付偏光板。
【請求項6】
前記偏光板がさらに位相差層を備える、請求項1に記載の表面保護フィルム付偏光板。
【請求項7】
前記表面処理層がハードコート層である、請求項1に記載の表面保護フィルム付偏光板。
【請求項8】
前記表面保護フィルムの表面抵抗値が、1×108Ω/□以上である、請求項1に記載の表面保護フィルム付偏光板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面保護フィルム付偏光板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置およびエレクトロルミネセンス(EL)表示装置(例えば、有機EL表示装置、無機EL表示装置)に代表される画像表示装置が急速に普及している。画像表示装置には、代表的には偏光板および位相差板が用いられている。偏光板は製造工程において表面を一時的に保護するための表面保護フィルムが貼着される。このような表面保護フィルムは、偏光板を製造する工程のみに使用され、偏光板を画像表示ディスプレイに組み込む時点で、偏光板から剥離して除去される。表面保護フィルムを剥離する際に生じ得る剥離帯電圧は被着体汚染、および、剥離帯電圧に起因するスパーク等による電子回路の破壊等の障害の発生の要因となり得る。剥離帯電圧の発生を抑制するため、表面保護フィルムの粘着剤層に帯電防止剤を添加し、帯電防止性能を向上させることが提案されている(例えば、特許文献1)。しかしながら、帯電防止性能に優れる表面保護フィルムを用いる場合、表面保護フィルムの剥離時に偏光板の表面が白濁し、偏光板表面が汚染される場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は帯電防止性能に優れ、かつ、表面保護フィルム剥離後の偏光板の表面汚染が抑制された表面保護フィルム付偏光板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
1.本発明の実施形態の表面保護フィルム付偏光板は、基材層と、粘着剤層Aと、を備える表面保護フィルムと;表面処理層と、保護層と、偏光子と、をこの順に備える偏光板と;粘着剤層Bと、をこの順に備える。該表面保護フィルムは該偏光板の該表面処理層に剥離可能に仮着されている。該表面保護フィルムは、帯電防止剤を含まず、該粘着剤層Bは、帯電防止剤を含む。
2.上記1に記載の表面保護フィルム付偏光板において、上記表面処理層は、紫外線吸収剤を含んでいてもよい。
3.上記1または2に記載の表面保護フィルム付偏光板において、上記粘着剤層Bの表面抵抗値は、1×1010Ω/□~1×1012Ω/□であってもよい。
4.上記1から3のいずれかに記載の表面保護フィルム付偏光板において、上記偏光板の厚みは60μm~210μmであってもよい。
5.上記1から4のいずれかに記載の表面保護フィルム付偏光板において、上記表面保護フィルムの剥離帯電圧は、4.0kV以下であってもよい。
6.上記1から5のいずれかに記載の表面保護フィルム付偏光板において、上記偏光板はさらに位相差層を備えていてもよい。
7.上記1から6のいずれかに記載の表面保護フィルム付偏光板において、上記表面処理層はハードコート層であってもよい。
8.上記1から7のいずれかに記載の表面保護フィルム付偏光板において、上記表面保護フィルムの表面抵抗値は、1×108Ω/□以上であってもよい。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、帯電防止性能に優れ、かつ、表面保護フィルム剥離後の偏光板の表面汚染が抑制された表面保護フィルム付偏光板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の1つの実施形態による表面保護フィルム付偏光板の概略断面図である。
【
図2】本発明の1つの実施形態による表面保護フィルム付偏光板の概略断面図である。
【
図3】本発明の1つの実施形態による表面保護フィルム付偏光板の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(用語および記号の定義)
本明細書における用語および記号の定義は下記の通りである。
(1)屈折率(nx、ny、nz)
「nx」は面内の屈折率が最大になる方向(すなわち、遅相軸方向)の屈折率であり、「ny」は面内で遅相軸と直交する方向(すなわち、進相軸方向)の屈折率であり、「nz」は厚み方向の屈折率である。
(2)面内位相差(Re)
「Re(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定した面内位相差である。例えば、「Re(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定した面内位相差である。Re(λ)は、層(フィルム)の厚みをd(nm)としたとき、式:Re(λ)=(nx-ny)×dによって求められる。
(3)厚み方向の位相差(Rth)
「Rth(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定した厚み方向の位相差である。例えば、「Rth(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定した厚み方向の位相差である。Rth(λ)は、層(フィルム)の厚みをd(nm)としたとき、式:Rth(λ)=(nx-nz)×dによって求められる。
(4)Nz係数
Nz係数は、Nz=Rth/Reによって求められる。
(5)角度
本明細書において角度に言及するときは、当該角度は基準方向に対して時計回りおよび反時計回りの両方を包含する。したがって、例えば「45°」は基準方向に対して時計回りまたは反時計回りに45°を意味する。
【0009】
A.表面保護フィルム付偏光板の全体構成
本発明の実施形態による表面保護フィルム付偏光板は、基材層と、粘着剤層Aと、を備える表面保護フィルムと;表面処理層と、保護層と、偏光子と、をこの順に備える偏光板と;粘着剤層Bと、をこの順に備える。表面保護フィルムは、偏光板の表面処理層に剥離可能に仮着されている。本発明の実施形態の表面保護フィルム付偏光板は、表面保護フィルムは帯電防止剤を含まず、偏光板の表面保護フィルムが貼り合わせられていない面に備えられる粘着剤層Bは帯電防止剤を含む。粘着剤層Bは、例えば、画像表示装置(例えば、画像表示セル)との貼り合わせのために用いられる粘着剤層である。本発明の実施形態の表面保護フィルム付偏光板は、偏光板の表面保護フィルムが貼り合わせられる面とは反対側の面に備えられた粘着剤層Bが帯電防止剤を含んでいれば、表面保護フィルム(代表的には、表面保護フィルムが備える粘着剤層A)が帯電防止剤を含まないにも関わらず、表面保護フィルム剥離時の剥離帯電圧を抑制し得る。剥離される表面保護フィルムから離隔した粘着剤層Bが帯電防止剤を含むことによる剥離帯電圧の抑制効果は予期せぬ優れた効果である。さらに、表面保護フィルムが帯電防止剤を含まないため、表面保護フィルム剥離後の偏光板表面の汚染も抑制し得る。
【0010】
図1は、本発明の1つの実施形態による表面保護フィルム付偏光板の概略断面図である。表面保護フィルム付偏光板100Aは、表面処理層11と保護層12と偏光子13とをこの順に備える偏光板10と、基材層21と基材層21の片側に設けられた粘着剤層A22とを備える表面保護フィルム20と、粘着剤層B30を含む。表面保護フィルム20は、粘着剤層A22を介して偏光板10の表面処理層11に剥離可能に仮着されている。表面保護フィルム20は、偏光板の実際の使用時には剥離除去される。図示しないが、粘着剤層B30は、使用に供されるまでの間、はく離ライナーで保護されていてもよい。また、表面保護フィルム付偏光板(実質的には、偏光板)の実際の使用時には、はく離ライナーは剥離除去され、偏光板10が粘着剤層B30を介して画像表示装置(実質的には、画像表示セル)に貼り合わせられる。
【0011】
1つの実施形態において、偏光板はさらに位相差層を備えていてもよい。
図2は、本発明の別の実施形態による表面保護フィルム付偏光板の概略断面図である。表面保護フィルム付偏光板100Bは、表面処理層11と保護層12と偏光子13と第1の位相差層15とをこの順に備える偏光板10と、基材層21と基材層21の片側に設けられた粘着剤層A22とを有する表面保護フィルム20と、粘着剤層B30を含む。表面保護フィルム20は、粘着剤層A22を介して偏光板10の表面処理層11に剥離可能に仮着されている。表面保護フィルム20は、偏光板の実際の使用時には剥離除去される。図示しないが、粘着剤層B30は、使用に供されるまでの間、はく離ライナーで保護されていてもよい。また、表面保護フィルム付偏光板(実質的には、偏光板)の実際の使用時には、はく離ライナーは剥離除去され、偏光板10が粘着剤層B30を介して画像表示装置(実質的には、画像表示セル)に貼り合わせられる。
【0012】
図3は、本発明のさらに別の実施形態による表面保護フィルム付偏光板の概略断面図である。表面保護フィルム付偏光板100Cは、表面処理層11と保護層12と偏光子13と第1の位相差層15と第2の位相差層16とをこの順に有する偏光板10と、基材層21と基材層21の片側に設けられた粘着剤層A22とを有する表面保護フィルム20と、粘着剤層B30を含む。表面保護フィルム20は、粘着剤層A22を介して偏光板10の表面処理層11に剥離可能に仮着されている。表面保護フィルム20は、偏光板の実際の使用時には剥離除去される。図示しないが、粘着剤層B30は、使用に供されるまでの間、はく離ライナーで保護されていてもよい。また、表面保護フィルム付偏光板(実質的には、偏光板)の実際の使用時には、はく離ライナーは剥離除去され、偏光板10が粘着剤層B30を介して画像表示装置(実質的には、画像表示セル)に貼り合わせられる。
【0013】
図示例において、保護層12と偏光子13との積層、偏光子13と第1の位相差層15との積層および第1の位相差層15と第2の位相差層16との積層はそれぞれ、接着層14a、14b、14cを介して行われ得る。接着層は、任意の適切な接着剤により形成される接着剤層であってもよく、任意の適切な粘着剤により形成される粘着剤層であってもよい。これらの積層は、目的に応じて、接着層を介することなく直接行われてもよい。また、図示例では、偏光子13の片側(視認側)のみに保護層が設けられているが、必要に応じて、偏光子の両側に保護層が設けられてもよい。
【0014】
偏光板の厚みは、好ましくは60μm~210μmであり、より好ましくは80μm~190μmであり、さらに好ましくは100μm~170μmである。偏光板の厚み、すなわち、表面保護フィルムから帯電防止剤を含む粘着剤層Bまでの距離が上記範囲であれば、表面保護フィルム剥離時の剥離耐電圧が抑制され得る。
【0015】
本発明の実施形態による表面保護フィルム付偏光板から表面保護フィルムを剥離速度0.3m/min、剥離温度23℃、剥離角度180°で剥離した際の剥離力は、好ましくは0.2N/25mm以下、より好ましくは0.02N/25mm~0.18N/25mm、さらに好ましくは0.1N/25mm~0.15N/25mmである。剥離力が上記範囲であれば、表面保護フィルムが偏光板に仮着された状態でその表面を好適に保護し得るとともに、剥離の際は容易に剥離され得る。
【0016】
B.表面保護フィルム
表面保護フィルムは、基材層と、粘着剤層Aとを備える。表面保護フィルムは粘着剤層Aを介して偏光板(より具体的には、偏光板の表面処理層)に剥離可能に仮着される。表面保護フィルム(代表的には、表面保護フィルムの粘着剤層)には、表面保護フィルム剥離時の剥離帯電圧を抑制するために、通常、帯電防止剤が用いられる。一方、上記のとおり、本発明の実施形態においては、表面保護フィルムは帯電防止剤を含まない。偏光板の表面保護フィルムが貼り合わせられる面とは反対側の面に備えられる粘着剤層Bが帯電防止剤を含んでいれば、表面保護フィルムが帯電防止剤を含まないにも関わらず、表面保護フィルム剥離時の剥離帯電圧を抑制し得る。また、表面保護フィルムが帯電防止剤を含まないため、表面保護フィルム剥離後の偏光板の表面汚染をも抑制し得る。
【0017】
表面保護フィルムは、剥離帯電圧が好ましくは4.0kV以下であり、より好ましくは3.5kV以下であり、さらに好ましくは2.5kV以下である。剥離帯電圧が上記範囲であれば、表面保護フィルム剥離時の剥離帯電圧が十分に抑制され得る。表面保護フィルムの剥離耐電圧は、例えば、0.1kV以上である。本明細書において、剥離帯電圧は以下の方法により測定され得る。
<剥離帯電圧の測定>
表面保護フィルム付偏光板から70mm×100mmの測定試料を切り出す。次いで、試料を、粘着剤層Bを介してガラス板に貼り合わせ、24時間放置する。その後、23℃、50%RHの環境下、30m/分の剥離速度で表面保護フィルムを剥離する。剥離後、直ぐに電位計(例えば、シシド静電気株式会社製の製品名「電位計STATIRON DZ4」)で偏光板の表面保護フィルムが貼り合わせられていた表面の電位を測定する。
【0018】
表面保護フィルムは、表面抵抗値が好ましくは1×108Ω/□以上であり、より好ましくは1×109Ω/□~1×1016Ω/□である。表面保護フィルムの表面抵抗値が上記範囲である場合、表面保護フィルム剥離時に剥離帯電圧が問題となり得る。本発明の実施形態においては、表面保護フィルムの表面抵抗値が上記範囲であっても、表面保護フィルム剥離時の剥離帯電圧を抑制し得る。
【0019】
B-1.基材層
基材層は、例えば樹脂フィルムである。樹脂フィルムの構成材料としては、例えば、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、およびポリフルオロエチレンが挙げられる。ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、およびポリブチレンテレフタレートが挙げられる。ポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-ブテン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、およびエチレン-ビニルアルコール共重合体が挙げられる。ポリアミドとしては、例えば、ナイロン6、ナイロン6,6、および部分芳香族ポリアミドが挙げられる。基材層は、1種類の材料からなってもよく、2種類以上の材料からなってもよい。基材層は、単層構造を有してもよいし、多層構造を有してもよい。また、基材層が樹脂フィルムである場合、基材層は延伸フィルムであってもよいし、無延伸フィルムであってもよい。
【0020】
基材層の厚みは、例えば10μm~200μm、好ましくは15μm~150μm、より好ましくは20μm~100μm、さらに好ましくは25μm~75μmである。厚みが上記範囲であれば、表面保護フィルムにおける支持体としての強度を確保し得るとともに、適度な可撓性を有する表面保護フィルムが得られ得る。
【0021】
基材の引張弾性率は、好ましくは1.0×108Pa~1.0×1010Paであり、より好ましくは1.0×109Pa~1.0×1010Paである。基材の引張弾性率が上記範囲であれば、表面保護フィルムの剥離除去の作業性が向上し得る。なお、引張弾性率は、JIS K 7161に準拠して測定される。
【0022】
基材の弾性率は、例えば、2.2kN/mm2~4.8kN/mm2であり得る。基材の弾性率がこのような範囲であれば、搬送および/または貼り合わせ時の変形を抑制し得る。また、表面保護フィルムの剥離除去の作業性が向上し得る。なお、弾性率は、JIS K 6781に準拠して測定される。
【0023】
B-2.粘着剤層A
粘着剤層Aは、任意の適切な粘着剤により形成され得る。具体例としては、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、エポキシ系粘着剤、およびポリエーテル系粘着剤が挙げられる。粘着剤のベース樹脂を形成するモノマーの種類、数、組み合わせおよび配合比、ならびに、架橋剤の配合量、反応温度、反応時間等を調整することにより、目的に応じた所望の特性を有する粘着剤を調製することができる。粘着剤のベース樹脂は、1種のみを用いてもよく。2種以上を組み合わせて用いてもよい。ベース樹脂は好ましくはアクリル樹脂である(すなわち、粘着剤層Aは、好ましくはアクリル系粘着剤で構成される)。通常、表面保護フィルムに帯電防止性能を付与するために、粘着剤層に帯電防止剤が用いられるところ、本発明の実施形態によれば、粘着剤層Aが帯電防止剤を含まないにもかかわらず、表面保護フィルム剥離時の剥離帯電圧を抑制し得、かつ、表面保護フィルム剥離後の偏光板表面の汚染も抑制し得る。
【0024】
表面保護フィルムの粘着剤層の厚みは、好ましくは3μm~100μmであり、より好ましくは4μm~60μm、さらに好ましくは5μm~40μmであり、特に好ましくは10μm~25μmである。
【0025】
C.偏光板
偏光板は、表面処理層と、保護層と、偏光子と、をこの順に備える。偏光板は、必要に応じて位相差層をさらに備えていてもよい。
【0026】
C-1.偏光子
偏光子は、代表的には、二色性物質(例えば、ヨウ素)を含むポリビニルアルコール系樹脂フィルムで構成されている。偏光子は、単層の樹脂フィルムから構成されたものであってもよく、二層以上の積層体を用いて作製されたものであってもよい。
【0027】
単層の樹脂フィルムから構成される偏光子の具体例としては、ポリビニルアルコール(PVA)系樹脂フィルム、部分ホルマール化PVA系樹脂フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質による染色処理および延伸処理が施されたもの、PVAの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等が挙げられる。好ましくは、光学特性に優れることから、PVA系樹脂フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸して得られた偏光子が用いられる。
【0028】
上記ヨウ素による染色は、例えば、PVA系樹脂フィルムをヨウ素水溶液に浸漬することにより行われる。上記一軸延伸の延伸倍率は、好ましくは3~7倍である。延伸は、染色処理後に行ってもよいし、染色しながら行ってもよい。また、延伸してから染色してもよい。必要に応じて、PVA系樹脂フィルムに、膨潤処理、架橋処理、洗浄処理、乾燥処理等が施される。例えば、染色の前にPVA系樹脂フィルムを水に浸漬して水洗することで、PVA系樹脂フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるだけでなく、PVA系樹脂フィルムを膨潤させて染色ムラ等を防止することができる。
【0029】
積層体を用いて得られる偏光子の具体例としては、樹脂基材と当該樹脂基材に積層されたPVA系樹脂層(PVA系樹脂フィルム)との積層体、あるいは、樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体を用いて得られる偏光子が挙げられる。樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体を用いて得られる偏光子は、例えば、PVA系樹脂溶液を樹脂基材に塗布し、乾燥させて樹脂基材上にPVA系樹脂層を形成して、樹脂基材とPVA系樹脂層との積層体を得ること;当該積層体を延伸および染色してPVA系樹脂層を偏光子とすること;により作製され得る。本実施形態においては、好ましくは、樹脂基材の片側に、ハロゲン化物とポリビニルアルコール系樹脂とを含むポリビニルアルコール系樹脂層を形成する。延伸は、代表的には積層体をホウ酸水溶液中に浸漬させて延伸することを含む。さらに、延伸は、必要に応じて、ホウ酸水溶液中での延伸の前に積層体を高温(例えば、95℃以上)で空中延伸することをさらに含み得る。加えて、本実施形態においては、好ましくは、積層体は、長手方向に搬送しながら加熱することにより幅方向に2%以上収縮させる乾燥収縮処理に供される。代表的には、本実施形態の製造方法は、積層体に、空中補助延伸処理と染色処理と水中延伸処理と乾燥収縮処理とをこの順に施すことを含む。補助延伸を導入することにより、熱可塑性樹脂上にPVAを塗布する場合でも、PVAの結晶性を高めることが可能となり、高い光学特性を達成することが可能となる。また、同時にPVAの配向性を事前に高めることで、後の染色工程や延伸工程で水に浸漬された時に、PVAの配向性の低下や溶解などの問題を防止することができ、高い光学特性を達成することが可能になる。さらに、PVA系樹脂層を液体に浸漬した場合において、PVA系樹脂層がハロゲン化物を含まない場合に比べて、ポリビニルアルコール分子の配向の乱れ、および配向性の低下が抑制され得る。これにより、染色処理および水中延伸処理など、積層体を液体に浸漬して行う処理工程を経て得られる偏光子の光学特性を向上し得る。さらに、乾燥収縮処理により積層体を幅方向に収縮させることにより、光学特性を向上させることができる。得られた樹脂基材/偏光子の積層体はそのまま用いてもよく(すなわち、樹脂基材を偏光子の保護層としてもよく)、樹脂基材/偏光子の積層体から樹脂基材を剥離し、当該剥離面に目的に応じた任意の適切な保護層を積層して用いてもよい。このような偏光子の製造方法の詳細は、例えば特開2012-73580号公報(特許第5414738号)、特許第6470455号に記載されている。これらの公報は、その全体の記載が本明細書に参考として援用される。
【0030】
偏光子の厚みは、例えば30μm以下であり、好ましくは15μm以下であり、より好ましくは1μm~12μmであり、さらに好ましくは2μm~10μmであり、さらにより好ましくは2μm~8μmである。
【0031】
偏光子は、好ましくは、波長380nm~780nmのいずれかの波長で吸収二色性を示す。偏光子の単体透過率は、例えば41.0%以上、好ましくは43.0%~46.0%であり、より好ましくは44.5%~46.0%である。偏光子の偏光度は、好ましくは97.0%以上であり、より好ましくは99.0%以上であり、さらに好ましくは99.9%以上である。
【0032】
C-2.保護層
保護層は、偏光子の保護層として使用できる任意の適切なフィルムで構成される。当該フィルムの主成分となる材料の具体例としては、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系樹脂や、ポリエステル系、ポリビニルアルコール系、ポリカーボネート系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリエーテルスルホン系、ポリスルホン系、ポリスチレン系、ポリノルボルネン系、ポリオレフィン系、(メタ)アクリル系、アセテート系等の透明樹脂等が挙げられる。また、(メタ)アクリル系、ウレタン系、(メタ)アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化型樹脂または紫外線硬化型樹脂等も挙げられる。この他にも、例えば、シロキサン系ポリマー等のガラス質系ポリマーも挙げられる。また、特開2001-343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマーフィルムも使用できる。このフィルムの材料としては、例えば、側鎖に置換または非置換のイミド基を有する熱可塑性樹脂と、側鎖に置換または非置換のフェニル基ならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物が使用でき、例えば、イソブテンとN-メチルマレイミドからなる交互共重合体と、アクリロニトリル・スチレン共重合体とを有する樹脂組成物が挙げられる。当該ポリマーフィルムは、例えば、上記樹脂組成物の押出成形物であり得る。
【0033】
偏光板を画像表示装置に適用したときに表示素子とは反対側に配置される保護層(視認側保護層12)の厚みは、代表的には300μm以下であり、好ましくは100μm以下、より好ましくは5μm~80μm、さらに好ましくは10μm~60μmである。
【0034】
偏光板を画像表示装置に適用したときに表示素子側に配置される保護層(内側保護層)の厚みは、好ましくは5μm~200μm、より好ましくは10μm~100μm、さらに好ましくは10μm~60μmである。
【0035】
1つの実施形態においては、内側保護層は、光学的に等方性である。本明細書において「光学的に等方性である」とは、位相差層の面内位相差Re(550)が0nm~10nmであり、厚み方向の位相差Rth(550)が-10nm~+10nmであることをいう。
【0036】
C-3.表面処理層
表面処理層としては任意の適切な層が形成され得る。例えば、ハードコート層、反射防止層等が挙げられる。表面処理層は、好ましくはハードコート層である。
【0037】
表面処理層は、好ましくは紫外線吸収剤を含む。紫外線吸収剤としては、紫外線(例えば、波長355nm)を吸収する化合物であればよく、任意の適切な紫外線吸収剤が用いられ得る。紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、サリチレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤等が挙げられる。なかでも好ましくは、トリアジン系紫外線吸収剤またはベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤であり、より好ましくはトリアジン系紫外線吸収剤である。トリアジン系紫外線吸収剤は、水酸基を有する化合物から構成されていることがより好ましく、ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物から構成された紫外線吸収剤(ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤)であることがより好ましい。紫外線吸収剤は、1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
表面処理層の厚みは、任意の適切な値に設定され得る。表面処理層の厚みは、例えば1μm~30μm、好ましくは3μm~15μm、より好ましくは5μm~12μmである。
【0039】
紫外線吸収剤の分子量は、好ましくは100~1500であり、より好ましくは200~1200であり、さらに好ましくは200~1000である。分子量の小さい化合物(例えば、分子量が600以下の化合物)を紫外線吸収剤として用いれば、紫外線吸収剤が表面近傍に偏在しやすくなる。
【0040】
紫外線吸収剤の含有量は、硬化性化合物の全量100重量部に対して、例えば0.1重量部~3.0重量部であり、好ましくは0.5重量部~2.5重量部であり、より好ましくは1.0重量部~2.0重量部である。含有量が上記範囲内であれば、偏光子や表示素子への紫外線の影響を抑制しつつ、適切な硬度のハードコート層を得ることができる。
【0041】
ハードコート層は、例えば、紫外線吸収剤と硬化性化合物を含む組成物(以下、ハードコート層形成用組成物ともいう)を用いて形成され得る。ハードコート層形成用組成物に含まれる硬化性化合物としては、熱硬化性化合物、紫外線硬化性化合物、電子線硬化性化合物等が挙げられる。硬化性化合物の種類としてはポリエステル系、アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、アミド系、シリコーン系、シリケート系、エポキシ系、メラミン系、オキセタン系、アクリルウレタン系等の各種の化合物が挙げられる。これら硬化性化合物は、1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
C-4.位相差層
1つの実施形態において、偏光板は位相差層をさらに備える。位相差層は、代表的には円偏光機能または楕円偏光機能を有する。位相差層は、樹脂フィルムの延伸フィルム(位相差フィルム)であってもよく、液晶化合物の配向固化層(液晶配向固化層)であってもよい。また、位相差層は、単一の層であってもよく、積層構造(実質的には、二層構造)を有するものであってもよい。
【0043】
位相差層が単一層である場合、位相差層は、代表的にはλ/4板として機能し得る。具体的には、位相差層のRe(550)は、好ましくは100nm~180nmであり、より好ましくは110nm~170nmであり、さらに好ましくは130nm~160nmである。位相差層の厚みは、λ/4板の所望の面内位相差が得られるよう調整され得る。位相差層が液晶配向固化層である場合には、その厚みは例えば1.0μm~2.5μmであり得る。本実施形態においては、位相差層の遅相軸と偏光子の吸収軸とのなす角度は、好ましくは40°~50°であり、より好ましくは42°~48°であり、さらに好ましくは44°~46°である。この実施形態においては、円偏光板は、位相差層と粘着剤層Bとの間にnz>nx=nyの屈折率特性を示す位相差層(図示せず)をさらに有していてもよい。位相差層が単一層である場合、位相差層は、好ましくは、位相差値が測定光の波長に応じて大きくなる逆分散波長特性を示す。
【0044】
位相差層が積層構造を有する場合、位相差層は、代表的には偏光板側から順に第1の位相差層と第2の位相差層との2層構造を有する(図示せず)。第1の位相差層は、代表的にはλ/2板として機能し得、第2の位相差層は、代表的にはλ/4板として機能し得る。具体的には、第1の位相差層のRe(550)は好ましくは200nm~300nmであり、より好ましくは230nm~290nmであり、さらに好ましくは250nm~280nmであり;第2の位相差層のRe(550)は、好ましくは100nm~180nmであり、より好ましくは110nm~170nmであり、さらに好ましくは130nm~160nmである。第1の位相差層の厚みは、λ/2板の所望の面内位相差が得られるよう調整され得る。第1の位相差層が液晶配向固化層である場合には、その厚みは例えば2.0μm~4.0μmであり得る。第2の位相差層の厚みは、λ/4板の所望の面内位相差が得られるよう調整され得る。第2の位相差層が液晶配向固化層である場合には、その厚みは例えば1.0μm~2.5μmであり得る。本実施形態においては、第1の位相差層の遅相軸と偏光子の吸収軸とのなす角度は、好ましくは10°~20°であり、より好ましくは12°~18°であり、さらに好ましくは14°~16°であり;第2の位相差層の遅相軸と偏光子の吸収軸とのなす角度は、好ましくは70°~80°であり、より好ましくは72°~78°であり、さらに好ましくは74°~76°である。なお、第1の位相差層および第2の位相差層の配置順序は逆であってもよく、第1の位相差層の遅相軸と偏光子の吸収軸とのなす角度および第2の位相差層の遅相軸と偏光子の吸収軸とのなす角度は逆であってもよい。位相差層が積層構造を有する場合、それぞれの層(例えば、第1の位相差層および第2の位相差層)は、位相差値が測定光の波長に応じて大きくなる逆分散波長特性を示してもよく、位相差値が測定光の波長に応じて小さくなる正の波長分散特性を示してもよく、位相差値が測定光の波長によってもほとんど変化しないフラットな波長分散特性を示してもよい。
【0045】
位相差層(積層構造を有する場合にはそれぞれの層)は、代表的には、屈折率特性がnx>ny=nzの関係を示す。なお、「ny=nz」はnyとnzが完全に等しい場合だけではなく、実質的に等しい場合を包含する。したがって、本発明の効果を損なわない範囲で、ny>nzまたはny<nzとなる場合があり得る。位相差層のNz係数は、好ましくは0.9~1.5であり、より好ましくは0.9~1.3である。
【0046】
C-5.接着層
接着層としては、光学用途に適用可能な任意の適切な接着剤層または粘着剤層が用いられ得る。
【0047】
D.粘着剤層B
粘着剤層Bは任意の適切な粘着剤で形成される。上記のとおり、粘着剤層Bを形成する粘着剤は帯電防止剤を含む。偏光板の表面保護フィルムが貼り合わせられていない面に備えられる粘着剤層Bが帯電防止剤を含んでいれば、表面保護フィルム自体が帯電防止剤を含んでいなくとも、表面保護フィルム剥離時の剥離帯電圧が抑制され得る。また、画像表示パネル側に配置される粘着剤層Bに含まれる帯電防止剤が偏光板の最表面(視認側表面)に析出することを抑制し得る。その結果、偏光板の表面汚染が抑制され得る。
【0048】
粘着剤層Bの表面抵抗値は、好ましくは1×1010Ω/□~1×1012Ω/□であり、より好ましくは1×1010Ω/□~8×1011Ω/□であり、さらに好ましくは1×1010Ω/□~5×1011Ω/□である。粘着剤層Bの剥離帯電圧が上記範囲であれば、表面保護フィルム剥離時の剥離帯電圧が抑制され得る。
【0049】
粘着剤層Bを構成する粘着剤としては、任意の適切な構成が採用され得る。粘着剤層を構成する粘着剤の具体例としては、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、エポキシ系粘着剤、およびポリエーテル系粘着剤が挙げられる。粘着剤のベース樹脂を形成するモノマーの種類、数、組み合わせおよび配合比、ならびに、架橋剤の配合量、反応温度、反応時間等を調整することにより、目的に応じた所望の特性を有する粘着剤を調製することができる。粘着剤のベース樹脂は、1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。透明性、加工性および耐久性などの観点から、アクリル系粘着剤(アクリル系粘着剤組成物)が好ましい。
【0050】
D-1.ベースポリマー
アクリル系粘着剤は、代表的には、(メタ)アクリル系ポリマーを主成分として含む。(メタ)アクリル系ポリマーは、粘着剤組成物の固形分中、例えば50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上の割合で粘着剤組成物に含有され得る。
【0051】
(メタ)アクリル系ポリマーは、モノマー単位としてアルキル(メタ)アクリレートを主成分として含有する。なお、(メタ)アクリレートはアクリレートおよび/またはメタクリレートをいう。アルキル(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリル系ポリマーを形成するモノマー成分中、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上の割合で含有され得る。アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基としては、例えば、1個~18個の炭素原子を有する直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。当該アルキル基の平均炭素数は、好ましくは3個~9個であり、より好ましくは3個~6個である。
【0052】
好ましいアルキル(メタ)アクリレートは、ブチルアクリレートである。(メタ)アクリル系ポリマーを構成するモノマー(共重合モノマー)としては、アルキル(メタ)アクリレート以外に、カルボキシル基含有モノマー、ヒドロキシル基含有モノマー、アミド基含有モノマー、芳香環含有(メタ)アクリレート、複素環含有ビニル系モノマー等が挙げられる。共重合モノマーの代表例としては、アクリル酸、4-ヒドロキシブチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、N-ビニル-2-ピロリドンが挙げられる。
【0053】
D-2.帯電防止剤
帯電防止剤としては、任意の適切な帯電防止剤を用いることができる。例えば、第4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩等のカチオン性官能基(例えば、第1アミノ基、第2アミノ基、第3アミノ基等)を有するカチオン型帯電防止剤;スルホン酸塩や硫酸エステル塩、ホスホン酸塩、リン酸エステル塩等のアニオン性官能基を有するアニオン型帯電防止剤;アルキルベタインおよびその誘導体、イミダゾリンおよびその誘導体、アラニンおよびその誘導体等の両性イオン型帯電防止剤;アミノアルコールおよびその誘導体、グリセリンおよびその誘導体、ポリエチレングリコールおよびその誘導体等のノニオン型帯電防止剤;さらには、上記カチオン型帯電防止剤、アニオン型帯電防止剤、両性イオン型帯電防止剤で示すイオン導電性基を有するモノマーを重合もしくは共重合して得られたイオン導電性重合体等が挙げられる。好ましくはアルカリ金属塩および/または有機カチオン-アニオン塩が用いられる。帯電防止剤がアルカリ金属塩および/または有機カチオン-アニオン塩であれば、より帯電防止性能が向上し得る。アルカリ金属塩は、アルカリ金属の有機塩および無機塩を用いることができる。本明細書において「有機カチオン-アニオン塩」は、有機塩であって、そのカチオン部が有機物で構成されているものを示し、アニオン部は有機物であってもよく、無機物であってもよい。粘着剤層Bに含まれる帯電防止剤が上記であれば、表面保護フィルムが帯電防止剤を含んでいなくとも表面保護フィルム剥離時の剥離帯電圧を抑制し得る。また、画像表示パネル側に配置される粘着剤層Bに含まれる帯電防止剤が偏光板の最表面(視認側表面)に析出することを抑制し得る。その結果、偏光板の表面汚染が抑制され得る。帯電防止剤は、1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。帯電防止剤として用いられるアルカリ金属塩および/または有機カチオン-アニオン塩の詳細は、例えば、特許第6320358号公報に記載されている。当該公報は、その全体の記載が本明細書に参考として援用される。
【0054】
帯電防止剤は、任意の適切な含有量で用いられる。例えば、ベースポリマー100重量部に対して、好ましくは0.01重量部以上であり、より好ましくは0.1重量部以上であり、さらに好ましくは0.5重量部以上である。また、帯電防止剤の含有量はベースポリマー100重量部に対して、好ましくは40重量部以下であり、より好ましくは30重量部以下であり、さらに好ましくは20重量部以下であり、特に好ましくは10重量部以下である。粘着剤層Bに含まれる帯電防止剤の含有量が上記範囲であれば、表面保護フィルムが帯電防止剤を含んでいなくとも、表面保護フィルム剥離時の剥離帯電圧を抑制し得る。また、画像表示パネル側に配置される粘着剤層Bに含まれる帯電防止剤が偏光板の最表面(視認側表面)に析出することを抑制し得る。その結果、偏光板の表面汚染が抑制され得る。
【0055】
D-3.その他の成分
アクリル系粘着剤は、好ましくは、シランカップリング剤および/または架橋剤を含有し得る。シランカップリング剤としては、例えばエポキシ基含有シランカップリング剤が挙げられる。架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、過酸化物系架橋剤が挙げられる。さらに、アクリル系粘着剤組成物は、酸化防止剤および/または導電剤を含有してもよい。粘着剤層またはアクリル系粘着剤組成物の詳細は、例えば、特開2006-183022号公報、特開2015-199942号公報、特開2018-053114号公報、特開2016-190996号公報、国際公開第2018/008712号に記載されており、これらの公報の記載は本明細書に参考として援用される。
【実施例0056】
以下に、実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は、それらに何ら制限されるものではない。なお、以下の説明において、「部」および「%」は、特に明記のない限り、重量基準である。
【0057】
[製造例1:表面保護フィルム1の作製]
2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)100重量部と、2-ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)4重量部とを含むモノマー組成物を重合して、アクリル系ポリマーを得た。得られたアクリル系ポリマー100重量部と、架橋剤として脂肪族ポリイソシアネート(東ソー製、製品名「コロネートHX」)5重量部と、架橋助剤としてジオクチルスズシラウレート(東京ファインケミカル製、製品名「エンビライザーOL-1」)0.03重量部と、剥離助剤としてポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテル硫酸アンモニウム塩(第一工業製薬製、製品名「アクアロンHS-10」)0.3重量部と、を混合して粘着剤組成物を調製した。
ポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱ケミカル製、製品名「ダイアホイルT100C38」)の片面に得られた粘着剤組成物を塗布して、130℃で1分間加熱し、厚み10μmの粘着剤層を形成し、表面保護フィルム1を得た。
【0058】
[製造例2:表面保護フィルム2の作製]
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた四つ口フラスコに2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)100重量部、4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)10重量部、アクリル酸(AA)0.02重量部、重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.2重量部、酢酸エチル157重量部を仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入し、フラスコ内の液温を65℃付近に保って、6時間重合反応を行い、(メタ)アクリル系ポリマー溶液(40重量%)を調製した。アクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)は54万、ガラス転移温度(Tg)は、-67℃であった。
得られた(メタ)アクリル系ポリマー溶液(40重量%)を酢酸エチルで20重量%に希釈し、この溶液500重量部(固形分100重量部)に、ポリエーテル変性シリコーン(信越化学社製、商品名「KF-353」)0.3重量部、帯電防止剤であるイオン性化合物のリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(東京化成工業社製、LiTFSI)0.15重量部(固形分0.15重量部)、および、架橋剤として、脂肪族系イソシアネート化合物であるヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(東ソー社製、コロネートHX:C/HX)3重量部(固形分3重量部)、架橋触媒として、ジラウリン酸ジブチルスズ(1重量%酢酸エチル溶液)2重量部(固形分0.02重量部)を加えて、混合攪拌を行い、粘着剤組成物(溶液)を調製した。
帯電防止剤(ソルベックス社製、マイクロソルバーRMd-142、酸化スズとポリエステル樹脂を主成分とする)10重量部を、水30重量部とメタノール70重量部からなる混合溶媒で希釈することにより帯電防止剤溶液を調製した。得られた帯電防止剤溶液を、支持フィルムであるポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ:38μm)上にマイヤーバーを用いて塗布し、130℃で1分間乾燥させて、溶剤を除去し、帯電防止層(厚さ:0.2μm)を形成し、帯電防止処理フィルムを作製した。上記粘着剤組成物(溶液)を、帯電防止処理フィルムの帯電防止層とは反対の面に塗布し、130℃で2分間加熱して、厚み15μmの粘着剤層を形成し、表面保護フィルム2を得た。
【0059】
[製造例3:表面保護フィルム3の作製]
2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)100重量部と、2-ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)4重量部とを含むモノマー組成物を重合して、アクリル系ポリマーを得た。得られたアクリル系ポリマー100重量部と、架橋剤として脂肪族ポリイソシアネート(東ソー製、製品名「コロネートHX」)5重量部と、架橋助剤としてジオクチルスズシラウレート(東京ファインケミカル製、製品名「エンビライザーOL-1」)0.03重量部と、帯電防止剤であるイオン性化合物のリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(東京化成工業社製、LiTFSI)0.15重量部(固形分0.15重量部)と、を混合して粘着剤組成物を調製した。
帯電防止処理層付ポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱ケミカル製、製品名「ダイアホイルT100F38」)の帯電防止層を形成していない側に、得られた粘着剤組成物を塗工し、130℃で1分間加熱して、厚み10μmの粘着剤層を形成し、表面保護フィルム3を得た。
【0060】
[製造例4:粘着剤組成物1の調製]
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた4つ口フラスコに、ブチルアクリレート(BA)75.8重量部、フェノキシエチルアクリレート(PEA)23重量部、N-ビニル-2-ピロリドン3重量部、アクリル酸0.3重量部、4-ヒドロキシブチルアクリレート0.4重量部を含有するモノマー混合物を仕込んだ。次いで、モノマー混合物(固形分)100重量部に対して、重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を酢酸エチル100重量部と共に仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入して窒素置換した後、フラスコ内の液温を55℃付近に保って8時間重合反応を行って、重量平均分子量(Mw)160万、Mw/Mn=3.7のアクリル系ポリマーの溶液を調製した。
得られたアクリル系ポリマーの溶液の固形分100重量部に対して、イオン性化合物として、三菱マテリアル社製のビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム(Li-TFSI)0.1重量部、イソシアネート架橋剤(三井化学社製、商品名「タケネートD160N」、トリメチロールプロパンヘキサメチレンジイソシアネート)0.1重量部、ベンゾイルパーオキサイド(日本油脂社製、商品名「ナイパーBMT」)0.3重量部、および、エポキシ基含有シランカップリング剤(信越化学工業社製、商品名「X-41-1056」)0.3重量部を配合して、アクリル系粘着剤組成物の溶液(粘着剤組成物1)を調製した。
【0061】
[製造例5:粘着剤組成物2の調製]
撹拌羽根、温度計、窒素ガス導入管及び冷却器を備えた4つ口フラスコに、ブチルアクリレート94.9重量部、アクリル酸5重量部、および、4-ヒドロキシブチルアクリレート0.1重量部を仕込み、モノマー混合物を得た。次いで、モノマー混合物(固形分)100重量部に対して、重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を酢酸エチル100部と共に仕込んだ。混合物を緩やかに撹拌しながら、フラスコ内について窒素ガスを導入して窒素置換した。フラスコ内の液温を55℃付近に維持して8時間重合反応を行い、重量平均分子量(Mw)210万、Mw/Mn=4.0のアクリル系ポリマーの溶液を調製した。
アクリル系ポリマーの溶液の固形分100重量部に対して、イソシアネート架橋剤(東ソー社製、商品名「コロネートL」、トリメチロールプロパントリレンジイソシアネート)0.45重量部、過酸化物架橋剤(日本油脂社製、商品名「ナイパーBMT」)0.1重量部、シランカップリング剤(信越化学工業社製、商品名「KBM-403」、γ-グリシドキシプロピルメトキシシラン)0.2重量部を添加し、アクリル系粘着剤組成物の溶液(粘着剤組成物2)を調製した。
【0062】
[製造例6:ハードコート層形成用組成物の調製]
ハードコート層に含まれる樹脂として、紫外線硬化型アクリレート樹脂(DIC(株)製、商品名「ルクシディア17-806」、固形分80%)100重量部あたり、光重合開始剤(BASF社製、商品名「OMNIRAD907」)を3重量部、レベリング剤(DIC(株)製、商品名「PC4100」、固形分40%)を0.01重量部、紫外線吸収剤(BASF社製、商品名「Tinuvin 326」を1.3重量部混合した。この混合物を固形分濃度が36%となるように、PGM/シクロペンタノン混合溶媒(重量比63/37)で希釈して、ハードコート層形成用組成物を調製した。
【0063】
[実施例1]
1.偏光板の作製
1-1.偏光子の作製
熱可塑性樹脂基材として、長尺状で、Tg約75℃である、非晶質のイソフタル共重合ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み:100μm)を用い、この樹脂基材の片面に、コロナ処理を施した。
ポリビニルアルコール(重合度4200、ケン化度99.2モル%)およびアセトアセチル変性PVA(日本合成化学工業社製、商品名「ゴーセファイマー」)を9:1の重量比で混合したPVA系樹脂100重量部に、ヨウ化カリウム13重量部を添加したものを水に溶かし、PVA水溶液(塗布液)を調製した。
樹脂基材のコロナ処理面に、上記PVA水溶液を塗布して60℃で乾燥することにより、厚み13μmのPVA系樹脂層を形成し、積層体を作製した。
得られた積層体を、130℃のオーブン内で縦方向(長手方向)に2.4倍に一軸延伸した(空中補助延伸処理)。
次いで、積層体を、液温40℃の不溶化浴(水100重量部に対して、ホウ酸を4重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(不溶化処理)。
次いで、液温30℃の染色浴(水100重量部に対して、ヨウ素とヨウ化カリウムを1:7の重量比で配合して得られたヨウ素水溶液)に、最終的に得られる偏光子の単体透過率(Ts)が所望の値となるように濃度を調整しながら60秒間浸漬させた(染色処理)。
次いで、液温40℃の架橋浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを3重量部配合し、ホウ酸を5重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(架橋処理)。
その後、積層体を、液温70℃のホウ酸水溶液(ホウ酸濃度4重量%、ヨウ化カリウム濃度5重量%)に浸漬させながら、周速の異なるロール間で縦方向(長手方向)に総延伸倍率が5.5倍となるように一軸延伸を行った(水中延伸処理)。
その後、積層体を液温20℃の洗浄浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを4重量部配合して得られた水溶液)に浸漬させた(洗浄処理)。
その後、約90℃に保たれたオーブン中で乾燥しながら、表面温度が約75℃に保たれたSUS製の加熱ロールに接触させた(乾燥収縮処理)。
このようにして、樹脂基材上に厚み5μmの偏光子を形成し、樹脂基材/偏光子の構成を有する積層体を得た。
【0064】
1-2.ハードコート層付保護層の作製および積層
厚み25μmのTACフィルム(富士フイルム(株)社製、製品名「TJ25UL」)の片面に、上記ハードコート層形成用組成物を塗布して80℃で1分間加熱し、加熱後の塗布層に高圧水銀ランプにて積算光量220mJ/cm2の紫外線を照射して塗布層を硬化させた。これにより、厚み7μmのハードコート(HC)層が片面に設けられたHC層付保護層を得た。
【0065】
上記で得られた積層体の偏光子側に、紫外線硬化型接着剤(硬化後の厚み1.5μm)を介して、HC層付保護層を貼り合わせた。その後、偏光子から樹脂基材を剥離し、[HC層/TACフィルム/接着剤層/偏光子]の構成を有する偏光板を得た。
【0066】
1-3.位相差層1の作製
撹拌翼および100℃に制御された還流冷却器を具備した縦型反応器2器からなるバッチ重合装置を用いて重合を行った。ビス[9-(2-フェノキシカルボニルエチル)フルオレン-9-イル]メタン29.60重量部(0.046mol)、イソソルビド(ISB)29.21重量部(0.200mol)、スピログリコール(SPG)42.28重量部(0.139mol)、ジフェニルカーボネート(DPC)63.77重量部(0.298mol)および触媒として酢酸カルシウム1水和物1.19×10-2重量部(6.78×10-5mol)を仕込んだ。反応器内を減圧窒素置換した後、熱媒で加温を行い、内温が100℃になった時点で撹拌を開始した。昇温開始40分後に内温を220℃に到達させ、この温度を保持するように制御すると同時に減圧を開始し、220℃に到達してから90分で13.3kPaにした。重合反応とともに副生するフェノール蒸気を100℃の還流冷却器に導き、フェノール蒸気中に若干量含まれるモノマー成分を反応器に戻し、凝縮しないフェノール蒸気は45℃の凝縮器に導いて回収した。第1反応器に窒素を導入して一旦大気圧まで復圧させた後、第1反応器内のオリゴマー化された反応液を第2反応器に移した。次いで、第2反応器内の昇温および減圧を開始して、50分で内温240℃、圧力0.2kPaにした。その後、所定の攪拌動力となるまで重合を進行させた。所定動力に到達した時点で反応器に窒素を導入して復圧し、生成したポリエステルカーボネート系樹脂を水中に押し出し、ストランドをカッティングしてペレットを得た。
【0067】
得られたポリエステルカーボネート系樹脂(ペレット)を80℃で5時間真空乾燥をした後、単軸押出機(東芝機械社製、シリンダー設定温度:250℃)、Tダイ(幅200mm、設定温度:250℃)、チルロール(設定温度:120~130℃)および巻取機を備えたフィルム製膜装置を用いて、厚み130μmの長尺状の樹脂フィルムを作製した。得られた長尺状の樹脂フィルムを、所定の位相差が得られるように調整しながら延伸し、第1の位相差層として、厚み48μmの位相差フィルムを得た。延伸条件は、幅方向に、延伸温度143℃、延伸倍率2.8倍であった。得られた位相差フィルムのRe(550)は141nmであり、Re(450)/Re(550)は0.86であり、Nz係数は1.12であった。
【0068】
1-4.位相差層付偏光板の作製
上記1-2で作製した偏光板の偏光子面に上記1-3で作製した位相差層を、厚み5μmのアクリル系粘着剤層を介して貼り合わせた。その際、第1の位相差層の遅相軸と偏光子の吸収軸とが45°の角度をなすようにして貼り合わせた。得られた積層体の第1の位相差層表面に製造例4で得られた粘着剤組成物1(厚み20μm)およびはく離ライナーをこの順に積層して、[HC層/TACフィルム/接着剤層/偏光子/粘着剤層/位相差層/粘着剤層/はく離ライナー]の構成を有する位相差層付偏光板(厚み105μm)を得た。
【0069】
2.表面保護フィルム付偏光板の作製
1.で作製した位相差層付偏光板のHC層表面に、表面保護フィルム(藤森工業株式会社、商品名「PPF-910」)を貼り合わせて表面保護フィルム付偏光板を得た。
【0070】
[実施例2]
2-1.位相差層2の作製
式(I)で示される化合物55重量部と、式(II)で示される化合物25重量部と、式(III)で示される化合物20重量部とを、シクロペンタノン(CPN)400重量部に加えた後、60℃に加温、撹拌して溶解させた。その後、上記した化合物の溶液を室温に戻し、上記した化合物の溶液に、イルガキュア907(BASFジャパン社製)3重量部と、メガファックF-554(DIC社製)0.2重量部と、p-メトキシフェノール(MEHQ)0.1重量部とを加えて、さらに撹拌した。撹拌後の溶液は、透明で均一であった。得られた溶液を0.20μmのメンブランフィルターでろ過し、重合性組成物を得た。
また、配向膜用ポリイミド溶液を厚さ0.7mmのガラス基材にスピンコート法を用いて塗布し、100℃で10分乾燥した後、200℃で60分焼成することにより塗膜を得た。得られた塗膜を、市販のラビング装置によってラビング処理し、配向膜を形成した。
次いで、基材(実質的には、配向膜)に、上記で得られた重合性組成物をスピンコート法で塗布し、100℃で2分乾燥した。得られた塗布膜を室温まで冷却した後、高圧水銀ランプを用いて、30mW/cm
2の強度で30秒間紫外線を照射して、液晶化合物の配向固化層である位相差層(厚み3μm)を得た。位相差層の面内位相差Re(550)は130nmであった。また、位相差層のRe(450)/Re(550)は0.851であり、逆分散波長特性を示した。位相差層は、λ/4板として機能し得る。
【化1】
【化2】
【0071】
位相差層1に代えて得られた位相差層2を用いた以外は実施例1と同様にして表面保護フィルム付偏光板を得た。
【0072】
[実施例3]
表面保護フィルムとして製造例1で得られた表面保護フィルム1を用いたこと以外は実施例1と同様にして、表面保護フィルム付偏光板を得た。
【0073】
(比較例1)
表面保護フィルムとして製造例2で得られた表面保護フィルム2を用いたこと、粘着剤組成物1に代えて製造例5で得られた粘着剤組成物2を用いたこと以外は実施例1と同様にして、表面保護フィルム付偏光板を得た。
【0074】
(比較例2)
粘着剤組成物1に代えて製造例5で得られた粘着剤組成物2を用いたこと以外は実施例3と同様にして、表面保護フィルム付偏光板を得た。
【0075】
(比較例3)
粘着剤組成物1に代えて製造例5で得られた粘着剤組成物2を用いたこと以外は実施例1と同様にして、表面保護フィルム付偏光板を得た。
【0076】
(比較例4)
表面保護フィルムとして製造例3で得られた表面保護フィルム3を用いたこと以外は実施例1と同様にして、表面保護フィルム付偏光板を得た。
【0077】
<評価>
実施例および比較例で得られた表面保護フィルム付偏光板を用いて以下の評価を行った。結果を表1に示す。
【0078】
1.剥離帯電圧測定
実施例および比較例で得られた表面保護フィルム付偏光板から70mm×100mmの測定試料を切り出した。次いで、試料を、偏光板の表面保護フィルムが積層されていない側の粘着剤層(粘着剤層B)を介してガラス板に貼り合わせ、24時間放置した。その後、23℃、50%RHの環境下、30m/分の剥離速度で表面保護フィルムを剥離した。剥離後、直ぐに電位計(シシド静電気株式会社製、製品名「電位計STATIRON DZ4」)で偏光板の表面保護フィルムが貼り合わせられていた表面(偏光板のハードコート層)の電位を測定した。3つの試料について測定を行い、平均値を算出した。剥離帯電圧が4.0kV以下であれば、表面保護フィルム剥離時の剥離帯電圧が抑制され得る。
【0079】
2.汚染評価
実施例、および、比較例で得た表面保護フィルム付偏光板を40mm×40mmのサイズにカットし、はく離ライナーをはく離してガラス板と貼り合せて評価サンプルを作製した。評価サンプルを、温度60℃、相対湿度90%のオーブンに投入し、120時間経過後に取り出して、表面保護フィルムを剥離した。偏光板のハードコート層側表面の一部に粘着テープを貼り合わせた後剥離して、表面の付着物質を除去した。その後、三波長蛍光灯を設置した暗室下で、粘着テープにより付着物質を除去した領域とその他の領域におけるハードコート層側表面からの反射光を目視にて観察し、下記の基準で評価した(N=2)。
≪評価基準≫
Lv.1:2つの領域とも変化なし
Lv.2:その他の領域(粘着テープにより付着物質を除去しなかった領域)に薄い白化あり
Lv.3:その他の領域に濃い白化あり、暗室外では視認されない
Lv.4:その他の領域に濃い白化あり、暗室外でも視認される
【0080】
【0081】
本発明の実施例の表面保護フィルム付偏光板は、表面保護フィルムが帯電防止剤を含んでいなくとも、表面保護フィルム剥離時の剥離帯電圧が抑制された。また、偏光板の表面の汚染も抑制された。