(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126447
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】分散供給装置及びそれを備えた組合せ計量装置
(51)【国際特許分類】
G01G 19/387 20060101AFI20240912BHJP
【FI】
G01G19/387 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034828
(22)【出願日】2023-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】000147833
【氏名又は名称】株式会社イシダ
(72)【発明者】
【氏名】西 道雄
(72)【発明者】
【氏名】岸川 樹
(72)【発明者】
【氏名】影山 寿晴
(72)【発明者】
【氏名】上垣内 暁
(72)【発明者】
【氏名】春日井 貴英
(72)【発明者】
【氏名】織田 一輝
(72)【発明者】
【氏名】長 秀将
(57)【要約】
【課題】簡単な構成で、ランダムに落下してくる物品を分散部の周縁に分散させることができる新たな分散供給装置と、それを利用した組合せ計量装置とを提供することを目的とする。
【解決手段】上方から落下してくる物品を受け取って周縁へ分散させる分散部と、分散部の周縁に沿って放射状に配列され、分散部から受け取った物品を分散部から遠ざける方向に搬送する複数の搬送部と、分散部の略中央部分から鉛直上方に伸びる支持軸と、落下する物品と接して物品の落下方向を変更するプレートと、プレートの中心部分を支持軸の先端部に連結する自在接手と、自在接手によって傾くプレートの傾斜角度を、水平状態からプレート上の物品が滑落するまでの角度に規制する規制部材と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方から落下してくる物品を受け取って周縁へ分散させる分散部と、
前記分散部の周縁に沿って放射状に配列され、前記分散部から受け取った前記物品を前記分散部から遠ざける方向に搬送する複数の搬送部と、を備えた分散供給装置であって、
前記分散部の略中央部分から鉛直上方に伸びる支持軸と、
落下する前記物品と接して前記物品の落下方向を変更するプレートと、
前記プレートの中心部分を前記支持軸の先端部に連結する自在接手と、
前記自在接手によって傾く前記プレートの傾斜角度を、水平状態から前記プレート上の物品が滑落するまでの角度に規制する規制部材と、を備える、
分散供給装置。
【請求項2】
前記支持軸は、分散部と一体となって、該支持軸の軸芯を中心として回転し、前記自在接手は、球面滑り軸受を備え、プレートと並行に取り付けられた第2の支持軸は、前記支持軸と交差する方向に伸びて、前記球面滑り軸受に支持されている、請求項1に記載の分散供給装置。
【請求項3】
前記規制部材は、前記支持軸が挿通され、前記自在接手が収容される円筒部と、前記円筒部の底を塞ぐ底面部とを備え、前記円筒部の上端縁は、前記プレートと接して、プレートの傾きを規制する、請求項1に記載の分散供給装置。
【請求項4】
請求項1から3の何れか一項に記載の分散供給装置を装置上部に備えた組合せ計量装置であって、前記搬送部は、スクリューを回転させることにより、前記物品を搬送するスクリューフィーダ、又は、トラフを振動させて前記物品を搬送する振動フィーダである、組合せ計量装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散供給装置とそれを備えた組合せ計量装置に関する。
【背景技術】
【0002】
粘着性の高い物品、例えば解体されたブロイラー等を組合せ計量する場合、下記特許文献1に開示されているように、装置上部の分散テーブルの頭頂部に傾斜円盤を固定し、上方から落下してくるブロイラーをその傾斜円盤に当てて周囲の放射フィーダRFに分散させるようにしている。
【0003】
この分散テーブルは、中央の頭頂部を通る鉛直軸を中心として回転する。したがって、傾斜円盤も分散テーブルと一体となって回転するため、傾斜円盤の上方から落下してくるブロイラーは、傾斜円盤に当たって分散テーブルの周縁に投下されるようになっている。そして、分散テーブルの周縁に投下されたブロイラーは、分散テーブルの回転により、ブロイラーで塞がれていない放射フィーダに向けて排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-155636号公報
【特許文献2】特開2007-114185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、傾斜円盤は、分散テーブルと一体となって回転するため、分散テーブルの空いたスペースに傾斜円盤を向けることができない。その結果、分散テーブルの回転や停止制御だけでは、落下してくるブロイラーを分散テーブルの周縁に満遍なく分散させることが難しいという問題がある。
【0006】
また、扁平に広げられたブロイラー、例えば鶏のモモ肉や胸肉が、傾斜円盤に付着し、そこに、落下してくるブロイラーが当たると、それらが一緒になって分散テーブルに排出されるため、分散テーブル上でブロイラーが重なり、それによって、一時的ではあるが、供給量の少ない放射フィーダにブロイラーを供給することが難しくなる問題がある。
【0007】
こうした問題を解決するには、例えば、特許文献2の
図6に開示された発明のように、傾斜円盤が、供給量の少ない放射フィーダに向くように、分散テーブルの停止位置を制御する方法や、傾斜円盤と分散テーブルとをそれぞれ別のモータで回転させて、傾斜円盤を分散テーブルの空いたスペースに向けるように構成する必要がある。しかし、そうした構成は、構造が複雑になるだけでなく、空いたスペースや放射フィーダをカメラ等で捉える必要があることから、コストアップになる問題がある。
【0008】
本発明は、こうした問題を解決せんとするもので、簡単な構成で、ランダムに落下してくる物品を傾斜円盤の周囲に分散させることができる新たな分散供給装置と、それを利用した組合せ計量装置とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、第1観点に係る分散供給装置は、
上方から落下してくる物品を受け取って周縁へ分散させる分散部と、
前記分散部の周縁に沿って放射状に配列され、前記分散部から受け取った前記物品を前記分散部から遠ざける方向に搬送する複数の搬送部と、
を備える分散供給装置であって、
前記分散部の略中央部分から鉛直上方に伸びる支持軸と、
落下する前記物品と接して前記物品の落下方向を変更するプレートと、
前記プレートの中心部分を前記支持軸の先端部に連結する自在接手と、
前記自在接手によって傾く前記プレートの傾斜角度を、水平状態から前記プレート上の物品が滑落するまでの角度に規制する規制部材と、を備えることを要旨とする。
【0010】
この装置では、ベルトコンベア等によって運ばれた物品は、分散部の略中央部分に落下するように、ベルトコンベアからの落下位置が設定されている。そのため、分散部の略中央部分に位置するプレート上に物品が落下すると、自在接手に支持されたプレートは、物品が当たる箇所に応じてその向きと傾きを変える。そのため、物品が次々と落下してきても、その都度、物品は、違う方向に振り向けられるから、上方から落下してきた物品は、支持軸を中心とした円弧内に分散される。したがって、プレートを分散部から独立させてモータ等で回転させる必要がないから、コストを抑えて、分散部の周縁に物品を分散させることができる。
【0011】
第2観点に係る分散供給装置は、第1観点に係る分散供給装置において、
前記支持軸は、分散部と一体となって、その支持軸の軸芯を中心として回転し、その支持軸の先端部に取り付けられた自在接手は、球面滑り軸受を備え、プレートと並行に取り付けられた第2の支持軸は、前記支持軸と交差する方向に伸びて、球面滑り軸受に支持されていることを要旨とする。
【0012】
これにより、鉛直方向に伸びる支持軸が水平面内で回転すると、それと交差する方向に伸びる第2の支持軸も鉛直方向の支持軸を中心として回転する。同時に、第2の支持軸に並行に取り付けられたプレートも、第2の支持軸を中心として回転する。そのため、物品がプレートに当たって向きを変えることに加え、プレート自体が分散部の回転によっても向きを変えるから、物品がランダムに落下してきても、その都度、物品は、種々の方向に振り向けられ、その結果、物品は、前記支持軸の周りに環状に分散されることになる。
【0013】
第3観点に係る分散供給装置は、第1観点に係る分散供給装置において、
前記規制部材は、前記支持軸が挿通され、前記自在接手が収容される円筒部と、前記円筒部の底を塞ぐ底面部とを備え、前記円筒部の上端縁は、前記プレートと接して、プレートの傾きを規制することを要旨とする。
【0014】
これにより、可動する自在接手が円筒内に収容されているから、例え自在接手に摩耗等が生じても、それを円筒内に留めて、分散部への落下を防止することができる。したがって、異物等の混入を抑えた食品処理装置としての装置を市場に提供することができる。
【0015】
第4観点に係る組合せ計量装置は、第1観点から第3観点に係る分散供給装置を装置上部に備えた組合せ計量装置であって、前記搬送部は、スクリューを回転させることにより前記物品を搬送するスクリューフィーダ、又は、トラフを振動させて前記物品を搬送する振動フィーダであることを要旨とする。
【0016】
この分散供給装置の各搬送部は、組合せ計量装置の各プールホッパに対応して配置される。これにより、例えばブロイラー等に特化した特殊仕様の組合せ計量装置でありながらコストを抑えた安価な装置を市場に提供することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、プレートの向きをモータ等によって積極的に変える構成を採らなくても、落下してくる物品がプレートに当たることによって、プレートの向きと傾きを変えることができるから、コストを抑えた分散供給装置を市場に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に係る組合せ計量装置の一実施形態の外観斜視図。
【
図2】プレートの取付構造を示す全体の外観斜視図。
【
図3】
図2から規制部材を取り外した状態の外観斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、図面は、模式的なものであり、寸法や比率等は、現実のものとは異なる、また、図面相互間においても互いの寸法や比率が異なることがある。さらに、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能や構成を有する要素については、同一符号を付して、重複説明を省略している。また、本発明に直接関係のない要素は、図示を省略している。
【0020】
<全体の構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る組合せ計量装置Wの全体構成を示す外観斜視図であり、
図2は、組合せ計量装置Wの上段に配置される他の実施形態に係る分散供給装置100の一例を示す外観斜視図である。
【0021】
これらの図において、組合せ計量装置Wは、装置の上段に設けられた分散供給装置100と、その下段に配置された複数のプールホッパPHと、さらにその下段に配置された同数の計量ホッパWHと、さらにその下段に配置された集合シュートCSとを備えている。こうした構成は周知であるから、
図2では、プールホッパPHより下段の計量ホッパWHや集合シュートCSは、図示していない。また、
図1に示す、プールホッパPH,計量ホッパWH、集合シュートCSなどの構成は、周知であるから、ここでは、それらの詳細な説明は、省略する。
【0022】
図1,
図2において、分散供給装置100は、中央の分散部10と、その周縁に放射状に配列された複数の搬送部20とを備えている。分散部10は、緩やかな円錐台状の分散テーブル11と、分散テーブル11を鉛直軸の回りに回転させる図示しない駆動部と、分散テーブル11の中央部分に取り付けられた円錐台12と、円錐台12の頭頂部に、支持軸30を介して取り付けられたプレート50と、を備えている。
【0023】
図1の搬送部20は、横断面がU字状のトラフ21と、トラフ内で回転するスクリュー22とを備えたスクリューフィーダで構成されている。このスクリューフィーダは、ブロック状の物品を搬送するのに適するが、物品が扁平なもの、例えば鶏のモモ肉や胸肉等の場合には、
図2に示すような振動トラフ23が採用される。
【0024】
図2の振動トラフ23は、下流側のプールホッパPHに向けて登り傾斜となる、平面視長方形、側面視直角三角形の小さな突起がレンガ模様のように、全面に複数個配列された物品搬送面23aを、図示しない電磁バイブレータと4点リンクのばね機構とによって物品を下流側へ搬送するように構成されたものである。また、放射状に配列された複数の振動トラフ23は、隣り合う隣接部分23bで上下に非接触に重なるように配列され、これにより、各振動トラフ23が、全体として一つの受け皿となって、プレート50に当たって飛ばされた物品を、いずれの振動トラフ23であっても受け止めることができるようになっている。
【0025】
図3は、分散テーブル11の円錐台12上に取り付けられるプレート50の取付構造の一例を示し、
図4は、
図3の後述の規制部材60を取り除いた状態の外観斜視図である。これらの図において、支持軸30の先端部には、ロッドエンド31がねじ込まれ、ロッドエンド31の先端部には、自在接手40が組み込まれている。また、自在接手40には、プレート50が連結され、プレート50の下部には、プレート50の傾きを規制する規制部材60が取り付けられている。
【0026】
プレート50は、上方から落下してくる物品Mが当たると、それによってプレート50の向きが変わるような大きさ、例えば、直径が略15cmから20cm程度のステンレス製の円盤で構成されている。また、その裏面の中央部分には、側面視がコの字形のブラケット51が、対向する両サイド面52をプレート50の裏面から直交させた状態で溶接されている。
【0027】
プレート50の裏面と直交する両サイド面52の間には、自在接手40の球面滑り軸受41が配置され、その球面滑り軸受41と、両サイド面52の貫通孔とにボルト53を挿通した状態で、ナット54で締め付けて固定するようになっている。したがって、このボルト53は、プレート50を傾かせる回転軸(第2の支持軸)となる。また、このボルト53は、鉛直方向に伸びる支持軸30と交差する方向に伸びているため、鉛直方向の支持軸30が軸心C1を中心として矢印方向F1に回転すると、第2の支持軸となるボルト53も、支持軸30の軸心C1を中心として矢印方向F1に回転する。なお、第2の支持軸となるボルト53は、プレート50と並行に取り付けられている。
【0028】
自在接手40の球面滑り軸受41は、ボルト(第2の支持軸)53を支持して、ボルト53の軸心C2を中心として矢印方向F2に回転し、同時に紙面に斜めに交差する水平軸C3を中心として矢印方向F3にも揺動する。したがって、第2の支持軸53と並行に取り付けられたプレート50は、これら3つの矢印方向F1~F3に自在に回転するようになっている。
【0029】
図5に示す規制部材60は、水平姿勢から鉛直姿勢まで傾くプレート50の傾きを規制するもので、例えばプレート50が、水平姿勢から物品Mが滑落するまでの範囲で傾くように設計されている。また、物品Mが滑落する角度は、物品Mの粘性やプレート50の表面粗さ等によって異なるから、実験によって角度を決めている。また、規制部材60は、自在接手40が収容できる大きさの円筒部61と、その底面を塞ぐ底面部62とを備え、その底面部62には、規制部材60を支持軸30に取り付けるための貫通孔63が設けられている。
【0030】
図4において、支持軸30の上端部には、ボルト32が形成され、そのボルト32をロッドエンド31の底面に形成されたネジ穴にねじ込むようになっている。そして、支持軸30のボルト32を規制部材60の貫通孔63に挿通した状態で、そのボルト32をロッドエンド31のネジ穴にねじ込めば、規制部材60を、支持軸30の上端面とロッドエンド31の底面との間に固定できるようになっている。そのため、規制部材60の円筒部61の側面には、レンチ挿入用の窓64が形成され、支持軸30とロッドエンド31の各側面には、レンチと噛み合うアイカット33が施されている。
【0031】
以上のように構成されたプレート50は、物品Mの落下位置に配置されるため、自在接手40に支持されたプレート50は、物品Mが当たる度に、プレート50の向きと傾きを変える。そのため、プレート50に当たった物品Mは、毎回、違う方向に振り向けられるから、例え物品Mが、常に同じ位置に落下してきても、それらの物品Mは、円錐台12の回りに程よく分散されることになる。
【0032】
それに加えて、プレート50を支持する支持軸30が鉛直軸回りに回転するから、プレート50は、自身の能動的な回転によっても向きを変えるから、常に同じ位置に物品Mが落下してきても、それらを円錐台12の回りに程よく分布させることが可能になる。
【0033】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明は、この実施形態れらに限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載により定まる本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく修正及び変更態様として実施することができる。例えば、分散テーブル11の回転に代えて、分散テーブルを一定の角度範囲内で螺旋状に円弧運動と上下運動とを繰り返すように構成してもよい。また、自在接手40の軸受に球面滑り軸受41を採用したが、これに代えて、二つの軸が直交する自在接手であってもよい。また、ロッドエンド31の球面滑り軸受41に代えて、ラジアル荷重を受けるベアリングで第2支持軸53を受けて、ロッドエンド31自体が、鉛直軸回りに自在に回転するように構成してもよい。したがって、本明細書の記載は、例示的なものであり、本発明に対し、何ら制限的な意味を有するものではない。
【符号の説明】
【0034】
W 組合せ計量装置
M 物品
10 分散部
20 搬送部
22 スクリュー
23 振動トラフ(トラフ)
30 支持軸
40 自在接手
41 球面滑り軸受
50 プレート
53 第2の支持軸(ボルト)
60 規制部材
61 円筒部
62 底面部
100 分散供給装置