(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126449
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】緊張予防剤又は緊張緩和剤
(51)【国際特許分類】
A23L 33/10 20160101AFI20240912BHJP
A23L 33/15 20160101ALI20240912BHJP
A61K 31/513 20060101ALI20240912BHJP
A61P 25/22 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
A23L33/10
A23L33/15
A61K31/513
A61P25/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034830
(22)【出願日】2023-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】515044263
【氏名又は名称】株式会社古川リサーチオフィス
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】古川 令
【テーマコード(参考)】
4B018
4C086
【Fターム(参考)】
4B018LB10
4B018LE01
4B018MD07
4B018MD09
4B018MD18
4B018MD23
4B018ME14
4B018MF08
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC42
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA35
4C086MA57
4C086NA14
4C086ZA03
(57)【要約】
【課題】一般的な抗不安薬や抗うつ剤のように長期連用を必要とせず、眠気やふらつき等の副作用を回避することができ、日常生活の中に気軽に取り入れやすく、緊張を予防又は緩和することに優れた作用を示す緊張予防剤又は緊張緩和剤を提供する。
【解決手段】緊張予防剤又は緊張緩和剤の有効成分として、オロット酸又はその塩を使用する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オロット酸又はその塩を有効成分として含有する緊張予防剤又は緊張緩和剤。
【請求項2】
緊張を生じ得るイベントの前に投与される、請求項1に記載の緊張予防剤又は緊張緩和剤。
【請求項3】
緊張を生じ得るイベントの前が、緊張を生じ得るイベントの2時間前~30分前である、請求項2に記載の緊張予防剤又は緊張緩和剤。
【請求項4】
単回投与される、請求項1に記載の緊張予防剤又は緊張緩和剤。
【請求項5】
オロット酸又はその塩の含有量が、1回分あたり100~500mgである、請求項1に記載の緊張予防剤又は緊張緩和剤。
【請求項6】
口腔粘膜投与される、請求項1~5のいずれかに記載の緊張予防剤又は緊張緩和剤。
【請求項7】
サプリメントである、請求項6に記載の緊張予防剤又は緊張緩和剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オロット酸又はその塩を有効成分として含有する、緊張予防剤又は緊張緩和剤に関する。
【背景技術】
【0002】
人々の生活において、心身の緊張を強いられる場面は往々にして存在する。例えば、学生にとって入学試験は一大イベントであり、誰もが緊張した経験を有するだろう。また、人前で演奏や発表等を行う際には緊張が付き物であり、緊張ゆえに思うようなパフォーマンスが発揮できなかった経験を有する人は少なくないはずである。一方で、決して大きなイベントによらずとも、例えば仕事や対人関係等においてでも、緊張を覚える場面というのは日常の中にしばしば存在する。
【0003】
このような、何らかのイベント(出来事)に起因する緊張は、ほとんどの場合一過性のものである。そのため、何らかのイベントによって緊張するのではないかという不安を事前に抱いたとしても、いわゆる抗不安薬や抗うつ剤等の摂取により対処することは適切ではない。一般的に抗不安薬や抗うつ剤(例えば、SSRI:選択的セロトニン再取り込み阻害薬)は数週間以上の長期連用を必要とする上、眠気、ふらつき、倦怠感等の副作用を生じやすく、一過性の緊張に対処する手段としてはあまりにも負担が大きすぎるためである。しかしながら、一過性の緊張に対しても事前に何らかの対処をして、高いパフォーマンスを発揮したいというニーズは根強く存在する。
【0004】
オロット酸(オロト酸、ウラシル6-カルボン酸、オロチン酸、又はビタミンB13とも呼ばれる)は、ピリミジンヌクレオチド生合成系における主要中間物質であり、ジヒドロオロット酸からジヒドロオロット酸デヒドロゲナーゼによって誘導され、オロット酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ(PRPP)によってオロチジル酸となる。オロチジル酸は、さらに速やかにウリジン一リン酸(UMP)に変換され、その後ウリジン三リン酸、シチジン三リン酸等のピリミジンヌクレオチドが合成される。
【0005】
近年、オロット酸の生理作用に関する研究が進められている。例えば、オロット酸が持久力向上作用を有すること(特許文献1)、オロット酸が酸素消費量及びエネルギー消費量の低減作用を有すること(特許文献2)、オロット酸が交感神経を活性化させる作用を有すること(特許文献3)等が報告されている。しかしながら、緊張に対するオロット酸の作用は知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011-136907号公報
【特許文献2】特開2012-246280号公報
【特許文献3】特開2012-126683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、一般的な抗不安薬や抗うつ剤のように長期連用を必要とせず、眠気やふらつき等の副作用を回避することができ、日常生活の中に気軽に取り入れやすく、緊張を予防又は緩和することに優れた作用を示す緊張予防剤又は緊張緩和剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述のとおり、特許文献3にはオロット酸が交感神経を活性化させることが開示されている。交感神経が優位となると、例えば、心拍は速くなり、呼吸は浅く速くなり、血管は収縮し、血圧は上昇し、発汗は促進され、心身が緊張する方向に変化することが一般的に知られている。そうすると、オロット酸を摂取すると心身が緊張するように考えられる。しかしながら、驚くべきことに、オロット酸を摂取するとむしろ逆に心身の緊張が予防又は緩和されることを本発明者は見いだした。本発明は、かかる知見に基づいて完成するに至ったものである。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の事項により特定されるとおりのものである。
〔1〕オロット酸又はその塩を有効成分として含有する緊張予防剤又は緊張緩和剤。
〔2〕緊張を生じ得るイベントの前に投与される、上記〔1〕に記載の緊張予防剤又は緊張緩和剤。
〔3〕緊張を生じ得るイベントの前が、緊張を生じ得るイベントの2時間前~30分前である、上記〔2〕に記載の緊張予防剤又は緊張緩和剤。
〔4〕単回投与される、上記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の緊張予防剤又は緊張緩和剤。
〔5〕オロット酸又はその塩の含有量が、1回分あたり100~500mgである、上記〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の緊張予防剤又は緊張緩和剤。
〔6〕口腔粘膜投与される、上記〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の緊張予防剤又は緊張緩和剤。
〔7〕サプリメントである、上記〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の緊張予防剤又は緊張緩和剤。
【0010】
また本発明の実施の他の形態として、例えば、以下のものを挙げることができる。
〔8〕緊張予防剤又は緊張緩和剤を製造するための、オロット酸又はその塩の使用。
〔9〕緊張の予防又は緩和における使用のための、オロット酸又はその塩。
〔10〕オロット酸又はその塩を、緊張の予防又は緩和を必要とする対象に有効量投与することを含む、緊張の予防方法又は緩和方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の緊張予防剤又は緊張緩和剤は、緊張を予防又は緩和することに優れた作用を示す。また、本発明の緊張予防剤又は緊張緩和剤は、単回投与で高い有効性と即効性を示す。そのため、一般的な抗不安薬や抗うつ剤のように長期連用を必要とせず、また、それらによる眠気やふらつき等の副作用を回避することができる。したがって、本発明の緊張予防剤又は緊張緩和剤は、日常生活の中に気軽に取り入れやすい。本発明の緊張予防剤又は緊張緩和剤は、緊張を生じ得るイベントを控えた対象にとって、緊張を予防又は緩和して高いパフォーマンスを発揮するために特に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(緊張予防剤又は緊張緩和剤)
本発明の緊張予防剤又は緊張緩和剤は、オロット酸又はその塩を有効成分として含有する。本発明の「緊張予防剤」又は「緊張緩和剤」は、緊張を予防又は緩和する作用を有する物質又は組成物であり、「緊張の予防に使用するため(緊張の予防のため)」又は「緊張の緩和に使用するため(緊張の緩和のため)」という使用目的(用途)が特定された剤である。また、本発明の剤は、「緊張予防剤及び緊張緩和剤」、すなわち「緊張の予防及び緩和に使用するため(緊張の予防及び緩和のため)」の剤として、すでに発生した緊張を緩和しながら、かつ今後発生する緊張を予防することも可能である。
【0013】
(オロット酸)
本発明における「オロット酸」は、オロット酸のフリー体(無水物)の他、オロット酸一水和物等のオロット酸水和物、オロット酸の誘導体、それらの薬理学的に許容される塩のいずれをも含む。
【0014】
上記オロット酸の具体例としては、オロット酸フリー体一水和物(協和発酵バイオ社製、マツモト交商社製)、オロット酸無水物(協和発酵バイオ社製)、オロット酸一水和物(SIGMA-ALDRICH社製、和光純薬工業社製)等の市販品;ピリミジン要求性、ピリミジンアナログ耐性等の変異を導入した様々な微生物を用いた発酵法により、培養液中に生成蓄積させ(例えば、特許第2927882号公報参照)、上記培養物、オロット酸を含有するホエイ等から、通常の精製手段、例えば、沈澱法、イオン交換樹脂、活性炭等によるクロマトグラフィー法等の分離精製法を用いて精製、採取したもの等を挙げることができる。
【0015】
(オロット酸の塩)
本発明における「オロット酸の塩」としては、生理学的に許容される塩基等との塩であればよく、例えば、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン付加塩、アミノ酸付加塩等を挙げることができる。金属塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、亜鉛塩等の重金属塩等を挙げることができる。アンモニウム塩としては、アンモニウム、テトラメチルアンモニウム、カルニチン等の塩を挙げることができる。有機アミン付加塩としては、トリエチルアミン、ピリジン、モルホリン、ピペリジン等の塩を挙げることができる。アミノ酸付加塩としては、グリシン、フェニルアラニン、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニン、オルニチン、ヒスチジン等の塩を挙げることができる。なお、オロット酸又はその塩の溶解性を高める観点からは、塩基性アミノ酸(アルギニン、オルニチン、ヒスチジン、リジン)又はカルニチン塩を好ましく挙げることができる。
【0016】
(緊張)
本発明の緊張予防剤又は緊張緩和剤は、緊張が発生することを予防するか、又は発生した緊張を緩和する作用を有する。
本発明において「緊張」とは、精神的ストレスに起因する心身の状態又は症状を意味する。本発明において「緊張」は、心理的緊張と身体的緊張のいずれをも含む。「緊張」は「ストレス状態」又は「ストレス症状」ということもできる。「緊張」の具体的な状態又は症状は、個人又は個体によって様々であるため特に制限されないが、例えば、あがり症、対人恐怖症、社交不安障害、社会不安障害、発汗、手足の震え、書痙、声の震え、言葉の詰まり、吃音(特に難発性)、イライラ感、精神的疲労感、不安感、恐怖感、無力感、倦怠感、憂鬱感、焦燥感、集中力低下、気分の落ち込み、食欲不振、胃腸障害、胃痛、消化不良、腹痛、下痢、吐き気、ひきつけ、不眠、睡眠の質の低下、眠りの浅さ、頭痛、のどの渇き、チック、過呼吸、息切れ、息苦しさ、動悸、頻脈、血行不良、手足の冷え、筋肉の硬直、赤面等を挙げることができる。また、特に、あがり症、発汗、手足の震え、言葉の詰まり、吃音を好適に挙げることができる。
また、本発明の緊張予防剤又は緊張緩和剤によって緊張が予防又は緩和された結果、平常心、リラックス感、解放感、幸福感、安らぎ感、安心感、自信、楽観性、積極性等を得ることもできる。
【0017】
(予防・緩和)
本発明において「予防」とは、対象における状態若しくは症状の発生の防止、遅延、又は対象における状態若しくは症状の発生のリスクを低下させることをいう。
また、本発明において「緩和」とは、対象における状態若しくは症状の好転、悪化の防止若しくは遅延、又は進行の逆転、防止若しくは遅延をいう。
【0018】
(投与方法)
本発明の緊張予防剤又は緊張緩和剤は、単回投与されるものであってよく、頓服されるものであってよい。本発明の緊張予防剤又は緊張緩和剤は高い即効性を示すため、一般的な抗不安薬や抗うつ剤のような長期連用を必要とせず、必要性が生じたときにのみ投与することで足りる。ただし、状況に応じて2回以上投与されてもよく、例えば、3回、4回、5回、6回、7回、8回、10回、12回、14回、20回、30回等、又はそれら以上投与されてもよい。継続的に使用することにより、緊張の予防及び/又は緩和において、さらに高い効果を期待することができる。また、これらの複数回分の緊張予防剤又は緊張緩和剤が一度に処方され、必要性が生じた際に1回分ずつ投与(頓服)されるものであってもよい。また、一日あたり、一週間あたり、又は一か月あたり等の一定期間あたりの投与回数は特に制限されず、必要性が生じた際に都度投与されてよい。
【0019】
また、本発明の緊張予防剤又は緊張緩和剤は、緊張を生じる前、緊張を生じたとき、又は緊張を生じた後に投与されるものであってよい。緊張を生じる前としては、例えば、緊張を生じ得るイベントの前(対象が緊張することが予想されるイベントの前)を挙げることができる。ここで「イベント」は特に制限されないが、例えば、聴衆又は観衆の存在するイベント、対人イベント、選抜のためのイベント、大きな責任をともなうイベント等を挙げることができ、具体的には、例えば、発表、講演、スピーチ、プレゼンテーション、演技、演劇、演芸、舞踏、演奏、オーディション、スポーツ、競技、試験(入学試験、資格試験、等)、面接、就職活動、選考会、仕事、会議、商談、契約、式典等を挙げることができる。本発明の緊張予防剤及び/又は緊張緩和剤は、このようなイベントを控えた対象、又はこのようなイベント中の対象にとって、緊張を予防及び/又は緩和して高いパフォーマンスを発揮するために特に有用である。
【0020】
本発明の緊張予防剤又は緊張緩和剤は、例えば、緊張を生じ得るイベントの12時間前、10時間前、8時間前、6時間前、4時間前、3時間前、2時間前、1時間前、30分前、直前、開始時、又は開始後等に投与されてもよいが、より効果的に緊張を予防及び/又は緩和する観点から、緊張を生じ得るイベントの4時間前~直前、3時間前~直前、2時間前~30分前、1時間前~30分前等に投与されることが好ましい。
【0021】
本発明の緊張予防剤又は緊張緩和剤における有効成分であるオロット酸又はその塩の含有量(投与量)は、特に制限されないが、例えば、1回分あたり50~1000mg、1回分あたり100~1000mg、1回分あたり100~800mg、1回分あたり100~600mg、1回分あたり100~500mg、1回分あたり100~400mg、1回分あたり100~300mg、等を挙げることができ、1回分あたり100~500mgが好ましい。ただし、対象の年齢、体重、性別、症状、オロット酸又はその塩への感受性等に応じて適宜決定してよい。
【0022】
本発明の緊張予防剤又は緊張緩和剤の投与方法は特に制限されず、経口又は非経口的に投与することができるが、経口投与されることが好ましく、口腔粘膜投与されることがより好ましい。口腔粘膜投与としては、例えば、舌下投与を挙げることができる。
【0023】
本発明の緊張予防剤又は緊張緩和剤は、オロット酸又はその塩の口腔粘膜への吸収性を向上させるため、さらに、オロット酸又はその塩の溶解性を高める成分(例えば、アミノ酸、ペプチド等)を含んでもよい。オロット酸又はその塩の溶解性を高める成分としては、例えば、リジン、ヒスチジン、アルギニン、オルニチン、カルニチン、コリン、カルノシン、アンセリン、バレニン等を挙げることができ、これらの中でもカルニチンを好適に例示できる。上記オロット酸又はその塩の溶解性を高める成分には、当該成分のL体、D体又はそれらの混合物が含まれる。また、上記オロット酸又はその塩の溶解性を高める成分は、1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。オロット酸又はその塩、特にオロット酸と上記溶解性を高める成分との併用により、オロット酸又はその塩の口腔粘膜への吸収性が向上するため、オロット酸又はその塩が口内に留まる時間が短くなり、小児や高齢者等にとって摂取が容易になる。
【0024】
本発明の緊張予防剤又は緊張緩和剤は、オロット酸又はその塩以外の1種又は2種以上の有効成分をさらに含有してもよい。また、本発明の緊張予防剤又は緊張緩和剤の投与に当たっては、オロット酸又はその塩以外の1種又は2種以上の有効成分又はそれ(ら)を含む剤を組み合わせて投与してもよい。
【0025】
(投与対象)
本発明の緊張予防剤又は緊張緩和剤を投与する対象は、特に制限されないが、例えば、ヒト、ブタ、ウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、イノシシ、ウサギ、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、サル、アカゲザル、カニクイザル、マーモセット、オランウータン、チンパンジー、イヌ、ネコ等の哺乳動物を挙げることができ、ヒトが好ましい。対象の年齢(月齢)や性別は特に制限されない。また、本発明の緊張予防剤又は緊張緩和剤は、妊娠中や授乳中の対象に投与されてもよい。
【0026】
(投与形態)
本発明の緊張予防剤又は緊張緩和剤としては、オロット酸又はその塩をそのまま使用することもできるし、本発明の効果を損なわない範囲内で、適宜他の成分を配合して食品や医薬品等として使用することもできる。本発明の緊張予防剤又は緊張緩和剤は、気軽に日常生活の中取り入れやすくする観点から、特にサプリメントとして提供されることが好ましい。
【0027】
(食品)
本発明における「食品」は、オロット酸又はその塩を有効量含有する食品である。ここで「有効量含有する」とは、個々の食品において通常喫食される量を摂取した場合に、前述したような範囲で有効成分が摂取されるような量を含むことをいう。
【0028】
本発明における食品の形態は、飲料の形態であってもよい。本発明における食品の形状は、哺乳動物等の対象が摂取可能であり、かつ食用に適した形状であれば特に制限はないが、例えば、固形状、液状、半液体状、顆粒状、粒状、粉末状、カプセル状、クリーム状、ペースト状が挙げられる。
【0029】
本発明における食品には、オロット酸又はその塩を単独で配合してもよいが、通常は、各食品の形態に応じた他の成分とともに配合する。
【0030】
ここで、他の成分としては、本発明の効果を損なわない範囲のものであれば特に限定はされず、例えば、各種タンパク質、糖類、脂肪、微量元素、滋養強壮成分、ビタミン類、クエン酸や酢酸等の有機酸塩等が挙げられる。また、本発明における食品は、その種類に応じて食品において許容され、通常使用される添加剤、例えば、アスパルテーム、ステビア等の甘味料、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸等の酸味料、デキストリン、澱粉等の賦形剤のほか、着色料、香料、苦味料、緩衝剤、増粘安定剤、ゲル化剤、安定剤、ガムベース、結合剤、希釈剤、乳化剤、分散剤、懸濁化剤、酸化防止剤、保存料、防腐剤、防かび剤、発色剤、漂白剤、光沢剤、酵素、調味料、香辛料抽出物等を適宜添加してもよい。
【0031】
本発明において「食品」とは、健康食品、機能性食品、特定保健用食品、栄養補助食品、病者用食品を含む意味で用いられる。なかでも、緊張の予防機能及び/又は緩和機能を期待する消費者に適した食品、すなわち特定保健用食品として提供することが好適である。ここでいう「特定保健用食品」とは、緊張の予防及び/又は緩和を目的として食品の製造又は販売等を行う場合に、保健上の観点から法上の何らかの制限を受けることがある食品をいう。
【0032】
上記健康食品等は、通常の食品の形状であってもよいが、サプリメントの形状(錠剤、顆粒剤、細粒剤、タブレット、チュアブルタブレット、カプセル(軟カプセル、硬カプセル)等)であることが好ましい。
【0033】
本発明において、オロット酸又はその塩の配合の対象となる食品としては、清涼飲料、炭酸飲料、栄養飲料、果実飲料、乳飲料等の飲料(これらの飲料の濃縮原液及び調整用粉末を含む);飯類、麺類、パン類、及びパスタ類等の炭水化物含有飲食;クッキーやケーキ等の洋菓子類、饅頭や羊羹等の和菓子類、キャンディー類、ガム類、ヨーグルト、プリン、ゼリー等の冷菓や氷菓等の各種菓子類;かまぼこ、ちくわ、ハンバーグ、ハム、ソーセージ等の水産・畜産加工食品;加工乳、発酵乳、ヨーグルト、バター、チーズ等の乳製品;マーガリン、マヨネーズ、ショートニング、ホイップクリーム、ドレッシング等の油脂及び油脂加工食品;ソース、たれ等の調味料等を例示することができるが、これらに限定されない。ただし、トローチ、飴、チューインガム、グミ等の口内での滞留時間が長い食品であることが好ましい。
【0034】
(医薬品)
また、本発明における「医薬品」は、オロット酸又はその塩を有効量含有する医薬品である。ここで「有効量含有する」とは、個々の医薬品において通常処方される量を摂取した場合に、前述したような範囲で有効成分が摂取されるような量を含むことをいう。
【0035】
本発明の緊張予防剤又は緊張緩和剤を医薬品として提供する場合は、オロット酸又はその塩をそのままで、あるいは医薬上許容され、かつ剤型に応じて適宜選択した適当な添加剤(例えば担体、賦形剤、希釈剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤又は崩壊補助剤、可溶化剤、安定化剤、保存剤、防腐剤、増量剤、増粘剤、乳化剤、分散剤、懸濁化剤、緩衝剤等)を用いて、公知の種々の方法にて経口又は非経口的に全身又は局所投与することができる各種製剤形態に調製して提供することができる。
【0036】
本発明における医薬品は、経口又は非経口的に投与することができる。本発明における医薬品を経口投与する場合は、錠剤(糖衣錠を含む)、カプセル剤、顆粒剤、散剤、丸剤、内用水剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤等に製剤化するか、使用する際に再溶解させる乾燥生成物にしてもよい。また、本発明における医薬品を非経口投与する場合は、注射剤(例えば、皮下注射剤、静脈内注射剤、筋肉内注射剤、腹腔内注射剤)、点滴剤、坐剤(例えば、直腸坐剤、膣坐剤)等に製剤化し、注射用製剤の場合は単位投与量アンプル又は多投与量容器の状態で提供される。
【0037】
ここで、製剤は、例えば下記のようにして製造できる。経口剤は、有効成分に、賦形剤(例えば、乳糖、白糖、デンプン、マンニトール)、崩壊剤(例えば、炭酸カルシウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム)、結合剤(例えば、α化デンプン、アラビアゴム、カルボキシメチルセルロース、ポリビニールピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース)、滑沢剤(例えば、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール6000)を添加して圧縮成形し、次いで必要により、味のマスキング、腸溶性あるいは持続性の目的のため自体公知の方法でコーティングすることにより製造することができる。コーティング剤としては、例えばエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ポリオキシエチレングリコール、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート及びオイドラギット(ローム社製、ドイツ、メタアクリル酸・アクリル酸共重合物)等を用いることができる。
【実施例0038】
以下、実施例等により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらにより制限されない。
被験者Aは、60代女性である。被験者Aは、趣味のバイオリンの演奏会において、毎回緊張が原因でのミスに悩んでいた。しかしながら、被験者Aは、表1に示すオロット酸(オロット酸フリー体一水和物、マツモト交商社製)200mgを含有する錠剤(以下、「オロット酸200mg錠」という。)を演奏会の1時間前に口腔粘膜投与により1錠摂取したところ、平常心で演奏することができ、全く緊張していなかったことに演奏終了後に気付いた。