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特開2024-126453施工支援装置、施工支援方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126453
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】施工支援装置、施工支援方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   E02D 3/12 20060101AFI20240912BHJP
   G01C 13/00 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
E02D3/12 101
G01C13/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034835
(22)【出願日】2023-03-07
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】000166627
【氏名又は名称】五洋建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】園部 陽一
【テーマコード(参考)】
2D040
【Fターム(参考)】
2D040AA01
2D040AB01
2D040BB07
2D040BD05
2D040CA09
2D040CB01
(57)【要約】
【課題】水底地盤高の変化を伴う施工において、潮位変化と水底地盤高の変化の双方を同時に考慮してその施工を支援する。
【解決手段】潮位予測データ取得部111は、船舶による施工対象エリアにおける潮位を現在から将来を含む施工期間にわたって予測した潮位予測データを取得する。水底位置計測部112は、施工対象エリア内の水底位置を計測する。水底位置推定部113は、施工対象エリア内の施工期間内の指定の日時における水底位置を推定する。危険エリア特定部114は、指定された日時について取得された潮位予測データと、推定された及び/又は計測された水底位置との差分である水深データを用いて、船舶の航行に危険が生じる可能性がある危険エリアを特定する。表示制御部115は、特定された危険エリアに関する情報を表示する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶による施工対象エリアにおける潮位を現在から将来を含む施工期間にわたって予測した潮位予測データを取得する潮位予測データ取得部と、
前記施工対象エリア内の水底位置を計測する水底位置計測部と、
前記施工対象エリア内の前記施工期間内の指定の日時における水底位置を推定する水底位置推定部と、
前記指定された日時について取得された前記潮位予測データと、推定された及び/又は計測された前記水底位置との差分である水深データを用いて、前記船舶の航行に危険が生じる可能性がある危険エリアを特定する危険エリア特定部と、
特定された前記危険エリアに関する情報を表示する表示制御部と
を備える施工支援装置。
【請求項2】
前記施工対象エリアにおいて前記水底位置計測部による計測後は、前記水底位置推定部により推定された水底位置が、前記水底位置計測部による水底位置に置き換わる
請求項1に記載の施工支援装置。
【請求項3】
前記表示制御部は、前記施工対象エリアに前記危険エリアを重ねて表示する
請求項1又は2に記載の施工支援装置。
【請求項4】
前記表示制御部は、前記施工対象エリアに前記危険エリアを重ねた水平平面、鉛直平面又は3次元空間を表示する
請求項3記載の施工支援装置。
【請求項5】
前記施工期間において、前記危険エリア特定部により特定された前記指定の日時における前記危険エリアを避けて当該指定の日時において施工する場所の順序、又は、施工可能時刻若しくは時間を算出する算出部を備え、
前記表示制御部は、算出された前記施工する場所の順序、又は、前記施工可能時刻若しくは時間を表示する
請求項1又は2に記載の施工支援装置。
【請求項6】
前記施工期間において施工を行う工期が設定されている場合に、
前記危険エリア特定部は、前記工期内における或る施工日又は前記指定の日時における前記潮位予測データと、推定された及び/又は計測された前記水底位置との差分である水深データを用いて、前記危険エリアを特定し、
前記表示制御部は、前記工期内の施工が行われる日又は前記指定の日時において前記危険エリアが特定されたことを意味する警告画像或いは警告音も用いて表示する
請求項1記載の施工支援装置。
【請求項7】
前記水底位置推定部は、将来の或る時点において推定した前記水底位置と、当該時点において前記水底位置計測部により計測された前記水底位置との差分に基づいて、前記水底位置を推定する方法を補正する
請求項1記載の施工支援装置。
【請求項8】
前記施工対象エリアにおける施工結果に関する施工管理データを保存する保存部と、
保存された前記施工管理データを出力する出力部と
を備える請求項1記載の施工支援装置。
【請求項9】
船舶による施工対象エリアにおける潮位を現在から将来を含む施工期間にわたって予測した潮位予測データを取得する潮位予測データ取得ステップと、
前記施工対象エリア内の水底位置を計測する水底位置計測ステップと、
前記施工対象エリア内の前記施工期間内の指定の日時における水底位置を推定する水底位置推定ステップと、
前記指定された日時について取得された前記潮位予測データと、推定された及び/又は計測された前記水底位置との差分である水深データを用いて、前記船舶の航行に危険が生じる可能性がある危険エリアを特定する危険エリア特定ステップと、
特定された前記危険エリアを表示する表示制御ステップと
を備える施工支援方法。
【請求項10】
コンピュータが請求項9記載の施工支援方法を実行するためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水底地盤高の変化を伴う施工を支援するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
水深が浅い場所での海上作業では、潮位の変動を考慮しつつ船舶の座礁リスクを最小限にした施工計画を策定して実行する必要がある。例えば特許文献1には、水底形状の仮想空間画像を船舶から見た風景の海面下に重畳して表示する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-225208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えばサンドコンパクションパイル工法を用いた地盤改良では、その施工により水底面が盛り上がる。このため、水底の地盤高の変位を伴う施工では、潮位の変動と水底地盤高の変位の双方を同時に考慮する必要があるが、特許文献1に記載の技術では対応できない。
【0005】
そこで、本発明は、水底地盤高の変化を伴う施工において、潮位変化と水底地盤高の変化の双方を同時に考慮してその施工を支援するための仕組みを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る施工支援装置は、船舶による施工対象エリアにおける潮位を現在から将来を含む施工期間にわたって予測した潮位予測データを取得する潮位予測データ取得部と、前記施工対象エリア内の水底位置を計測する水底位置計測部と、前記施工対象エリア内の前記施工期間内の指定の日時における水底位置を推定する水底位置推定部と、前記指定された日時について取得された前記潮位予測データと、推定された及び/又は計測された前記水底位置との差分である水深データを用いて、前記船舶の航行に危険が生じる可能性がある危険エリアを特定する危険エリア特定部と、特定された前記危険エリアに関する情報を表示する表示制御部とを備える。
【0007】
前記施工対象エリアにおいて前記水底位置計測部による計測後は、前記水底位置推定部により推定された水底位置が、前記水底位置計測部による水底位置に置き換わるようにしてもよい。
【0008】
前記表示制御部は、前記施工対象エリアに前記危険エリアを重ねて表示するようにしてもよい。
【0009】
前記表示制御部は、前記施工対象エリアに前記危険エリアを重ねた水平平面、鉛直平面又は3次元空間を表示するようにしてもよい。
【0010】
前記施工期間において、前記危険エリア特定部により特定された前記指定の日時における前記危険エリアを避けて当該指定の日時において施工する場所の順序、又は、施工可能時刻若しくは時間を算出する算出部を備え、前記表示制御部は、算出された前記施工する場所の順序、又は、前記施工可能時刻若しくは時間を表示するようにしてもよい。
【0011】
前記施工期間において施工を行う工期が設定されている場合に、前記危険エリア特定部は、前記工期内における或る施工日又は前記指定の日時における前記潮位予測データと、推定された及び/又は計測された前記水底位置との差分である水深データを用いて、前記危険エリアを特定し、前記表示制御部は、前記工期内の施工が行われる日又は前記指定の日時において前記危険エリアが特定されたことを意味する警告画像或いは警告音も用いて表示するようにしてもよい。
【0012】
前記水底位置推定部は、将来の或る時点において推定した前記水底位置と、当該時点において前記水底位置計測部により計測された前記水底位置との差分に基づいて、前記水底位置を推定する方法を補正するようにしてもよい。
【0013】
前記施工対象エリアにおける施工結果に関する施工管理データを保存する保存部と、保存された前記施工管理データを出力する出力部とを備えるようにしてもよい。
【0014】
また、本発明に係る施工支援方法は、船舶による施工対象エリアにおける潮位を現在から将来を含む施工期間にわたって予測した潮位予測データを取得する潮位予測データ取得ステップと、前記施工対象エリア内の水底位置を計測する水底位置計測ステップと、前記施工対象エリア内の前記施工期間内の指定の日時における水底位置を推定する水底位置推定ステップと、前記指定された日時について取得された前記潮位予測データと、推定された及び/又は計測された前記水底位置との差分である水深データを用いて、前記船舶の航行に危険が生じる可能性がある危険エリアを特定する危険エリア特定ステップと、特定された前記危険エリアを表示する表示制御ステップとを備える。
【0015】
また、本発明に係るプログラムは、上記施工支援方法を実行するためのプログラムである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、潮位変化と施工等による水底地盤高の変化の双方を同時に考慮して、水底地盤高の変化を伴う施工を支援することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る船舶1の主要部を例示する側面図。
図2】同実施形態に係る施工管理システム100のハードウェア構成の一例を示すブロック図。
図3】同実施形態に係るコンピュータ110のハードウェア構成の一例を示すブロック図。
図4】コンピュータ110の機能構成の一例を示すブロック図。
図5】コンピュータ110によって表示される画像を例示する図。
図6】コンピュータ110によって表示される画像を例示する図。
図7】コンピュータ110によって表示される画像を例示する図。
図8】コンピュータ110によって表示される画像を例示する図。
図9】コンピュータ110によって表示される画像を例示する図。
図10】コンピュータ110によって表示される画像を例示する図。
図11】コンピュータ110によって表示される画像を例示する図。
図12】コンピュータ110によって表示される画像を例示する図。
図13】同実施形態に係る施工管理データの表示例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明を実施するための形態の一例について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る船舶1の主要部を例示する側面図である。船舶1は、水底の地盤中に砂を圧入して締め固めることで砂柱を造成して地盤改良を行うサンドコンパクションパイル(SCP)工法の施工を行う作業船である。船舶1は、船体10と、操船室20と、SCP工法の施工を行うためのSCP施工部30とを少なくとも備えている。
【0019】
SCP工法の工程は概ね以下のとおりである。まず、船舶1はGNSS(Global Navigation Satellite System)によってサンドコンパクションパイル(砂柱)を造成する位置決めを行い、その位置における潮位(図1において所定の基準面に対する水面Sの高さ)と水底地盤高(図1における水底Gの位置)を計測する。次に、船舶1は、計測された潮位及び推定地盤高に基づいてケーシングパイプを貫入して支持地盤まで到達させ、ケーシングパイプを引き抜きながら地盤中に砂を投入する。船舶1は、規定量の砂を地盤中に投入すると、ケーシングパイプの引抜と打戻しを繰り返して地盤中にサンドコンパクションパイルを造成する。船舶1がこのような工程を繰り返して施工対象エリアに複数のサンドコンパクションパイルを造成することで、水底地盤が安定化する。
【0020】
図2は、船舶1が備える施工管理システム100のハードウェア構成を示す図である。施工管理システム100は、本発明に係る施工支援装置として機能するコンピュータ110と、深浅測量装置120と、GNSS装置130と、カメラ140と、潮位計150と、傾斜計160と、方位計170とが、例えばイーサネットや光ファイバ等の通信回線によってネットワーク化されたシステムである。
【0021】
コンピュータ110は、本発明に係る施工支援装置として機能する装置であり、操船室20に設置されている。
【0022】
深浅測量装置120は水底位置を計測する手段である。深浅測量装置120は、水中に音波を発信し、水底で反射した音波が戻ってくるまでの時間に基づいて水底位置を計測する。
【0023】
GNSS装置130は船舶1の測位を行う手段である。GNSS装置130は人工衛星から発せられるGNSS信号を用いて測位を行う。
【0024】
カメラ140は船舶1の周囲の海面を撮影する手段である。カメラ140は、船舶1の操船室の正面等の、船舶1の周囲の海面を見渡せる位置に設けられている。
【0025】
潮位計150は船舶1の施工対象エリアの潮位を計測する手段である。潮位計150は施工対象エリアの潮位を計測可能な位置に設けられている。
【0026】
傾斜計160は船舶1の船体の傾斜(トリム、ヒール)を計測する手段である。傾斜計160は例えば船舶1の船橋、操船室等の、船舶の傾斜が計測できる位置に設けられている。
【0027】
方位計170は船舶1が向いている方位(例えば船尾から船首に向かう直線が向いている方位)を計測する手段である。方位計170は例えば船舶1の船橋上の甲板、船橋等に設けられている。
【0028】
図3は、施工支援装置として機能するコンピュータ110のハードウェア構成を示す図である。コンピュータ110は、物理的には、プロセッサ1101、メモリ1102、ストレージ1103、通信装置1104、ユーザインタフェース装置1105及びこれらを接続するバスなどを含む。これらの各装置は図示せぬ電源から供給される電力によって動作する。
【0029】
コンピュータ110における各機能は、プロセッサ1101、メモリ1102などのハードウェア上に所定のソフトウェア(プログラム)を読み込ませることによって、プロセッサ1101が演算を行い、通信装置1104による通信を制御したり、他の装置から送信されてきたデータを取得したり、メモリ1102及びストレージ1103におけるデータの読み出し及び書き込みの少なくとも一方を制御したりすることによって実現される。
【0030】
プロセッサ1101は、例えば、オペレーティングシステムを動作させてコンピュータ全体を制御する。プロセッサ1101は、周辺装置とのインターフェース、制御装置、演算装置、レジスタなどを含む中央処理装置(CPU:Central Processing Unit)によって構成されてもよい。
【0031】
プロセッサ1101は、プログラム(プログラムコード)、ソフトウェアモジュール、データなどを、ストレージ1103からメモリ1102に読み出し、これらに従って各種の処理を実行する。
【0032】
メモリ1102は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体であり、例えば、ROM(Read Only Memory)、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)、RAM(Random Access Memory)などの少なくとも1つによって構成されてもよい。メモリ1102は、レジスタ、キャッシュ、メインメモリ(主記憶装置)などと呼ばれてもよい。メモリ1102は、本実施形態に係る方法を実施するために実行可能なプログラム(プログラムコード)、ソフトウェアモジュールなどを保存することができる。
【0033】
ストレージ1103は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体であり、例えば、CD-ROM(Compact Disc ROM)、コンパクトディスク、デジタル多用途ディスク、Blu-ray(登録商標)ディスクなどの光ディスク、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ、フレキシブルディスク、スマートカード、フラッシュメモリ(例えば、カード、スティック、キードライブ)などの少なくとも1つによって構成されてもよい。
【0034】
通信装置1104は、他の装置(深浅測量装置120、GNSS装置130、カメラ140等)と通信を行うためのハードウェアであり、例えばネットワークデバイス、ネットワークコントローラ、ネットワークカード、通信モジュールなどともいう。
【0035】
ユーザインタフェース装置1105は、外部からの入力を受け付ける入力装置(例えば、キーボード、マウス、マイクロフォン、スイッチ、ボタンなど)と、外部への出力を行う出力装置(例えば、ディスプレイ、スピーカー、LEDランプなど)とを含む。
【0036】
図4は、施工支援装置としてのコンピュータ110の機能構成の一例を示す図である。図4に示すように、コンピュータ110は、潮位予測データ取得部111、水底位置計測部112と、水底位置推定部113と、危険エリア特定部114と、表示制御部115と、算出部116と、保存部117と、出力部118という機能を実現する。
【0037】
潮位予測データ取得部111は、船舶1によって施工がなされる施工対象エリアにおける潮位を現在から将来を含む施工期間にわたって予測した潮位予測データを取得する。潮位予測データ取得部111は、例えばストレージ1103等に予め記憶されている日時及び位置単位の潮位予測データを読み出したり、ストレージ1103等に予め記憶されている、潮位予測データを生成するためのアルゴリズムを実行して日時及び位置単位の潮位予測データを算出したりすることで、施工期間内の任意の日時における施工対象エリアの潮位予測データを取得する。なお、施工対象エリアの位置はGNSS装置130により計測されてその施工対象エリアの潮位予測データが特定されるが、この潮位予測データを潮位計150による潮位の測定値で補正するようにしてもよい。
【0038】
水底位置計測部112は、深浅測量装置120を用いて施工対象エリア内の水底位置を計測する。
【0039】
水底位置推定部113は、施工期間内の指定の日時における施工対象エリア内の水底位置を推定する。SCP工法を用いた施工は、水底地盤中にサンドコンパクションパイルを造成するため、その施工前後で、水底面が盛り上がる等の、水底地盤高の変位が生じる。水底位置推定部113は、施工対象エリア内のどの位置にどの程度のサイズのサンドコンパクションパイルをいつ造成するかといった施工計画データと、サンドコンパクションパイルの造成により生じる水底地盤高の変位をシミュレーションするためのアルゴリズムとを用いて、指定の日時における水底位置を推定する。
【0040】
危険エリア特定部114は、指定された日時について取得された潮位予測データと、水底位置推定部113により推定された及び/又は水底位置計測部112により計測された水底位置との差分である水深データを用いて、施工に伴う船舶の航行に危険が生じる可能性があるような水深の浅いエリアを操船において危険な危険エリアとして特定する。施工対象エリアにおいて水底位置計測部112による計測がなされた後は、水底位置推定部113により推定された水底位置が、水底位置計測部112によって計測された水底位置に置き換えられる。危険エリア特定部114は、水底位置計測部112により水底位置が実際に計測されている地点に関して、オペレータにより任意に指定された日時について取得された潮位予測データと水底位置計測部112により計測された水底位置との差分から水深を算出し、その水深が閾値以内となる場合には、危険エリアに該当する地点であると判断する。また、危険エリア特定部114は、オペレータ等により任意に指定された日時において、水底位置計測部112により水底位置が実際に計測されておらず水底位置推定部113により水底位置が推定されているだけの地点に関しては、その指定された日時について取得された潮位予測データと、その指定された日時について水底位置推定部113により推定された水底位置との差分から水深を算出し、その水深が閾値以内となる場合には危険エリアに該当する地点であると判断する。これにより、危険エリア特定部114は、施工期間内の任意の日時における危険エリアを特定することができる。
【0041】
また、危険エリア特定部114は、施工期間において施工を行う工期が設定されている場合に、その工期内における或る施工日又は指定の日時における潮位予測データと、水底位置推定部113により推定された及び/又は水底位置計測部112により計測された水底位置との差分である水深データを用いて、危険エリアを特定する。例えば、危険エリア特定部114は、水底位置計測部112により水底位置が実際に計測されている地点に関して、工期内における或る施工日又は指定の日時について取得された潮位予測データと、水底位置計測部112により計測された水底位置との差分から水深を算出し、その水深が閾値以内となる場合には危険エリアに該当する地点であると判断する。また、危険エリア特定部114は、工期内における或る施工日又は指定の日時において、水底位置計測部112により水底位置が実際に計測されておらず水底位置推定部113により水底位置が推定されているだけの地点に関しては、その施工日又は指定の日時について取得された潮位予測データと、その施工日又は指定の日時について水底位置推定部113により推定された水底位置との差分から水深を算出し、その水深が閾値以内となる場合には危険エリアに該当する地点であると判断する。なお、任意に指定された日時における施工エリアにおいて、当該施工エリアの一部についてのみ水底位置計測部112により水底位置が計測されている場合には、水底位置推定部113により推定された水底位置に基づく危険エリアと、水底位置計測部112により計測された水底位置との差分に基づく危険エリアが併存して特定される。また、危険エリア特定部114は、傾斜計160によって計測された船舶1のトリム・ヒールを考慮して危険エリアの画像を表示するようにしてもよい。これにより、危険エリア特定部114は、施工を行う工期内における危険エリアを特定することができる。
【0042】
表示制御部115は、危険エリア特定部114により特定された危険エリアに関する情報をユーザインタフェース装置1105(ディスプレイ)に表示する。具体的には、表示制御部115は、危険エリア特定部114により特定された危険エリアを意味する画像を施工対象エリアの画像に重ねて表示する。このとき、表示制御部115は、方位計170により計測された船舶1の向きと、カメラ140の撮影方向とに応じて、船舶1に対する危険エリアの画像を表示する。
【0043】
図5~8は、表示制御部115によって表示される画像を例示する図である。図5において、画像D1は、カメラ140によって撮影された施工対象エリアの海面の画像に、危険エリア特定部114により特定された危険エリアの境界を示す画像d1を重ねた、いわゆるAR(Augmented Reality)画像である。画像D2は、水平平面において施工対象エリアに危険エリアの境界の画像d2を重ねた画像である。画像D3は、鉛直平面において施工対象エリアに危険エリアの境界の画像d3を重ねた画像である。なお、画像D2は、図6~8に例示するように、3次元空間の画像として表示することも可能である。この3次元空間の画像の視点の位置は、オペレータの操作により任意に変更することが可能である。
【0044】
図4の説明に戻り、算出部116は、現在から将来を含む施工期間において、危険エリア特定部114により特定された指定の日時における危険エリアを避けてその指定の日時において施工する場所の順序、又は、施工可能時刻若しくは時間を算出する。そして、表示制御部115は、算出部116により算出された施工する場所の順序、又は、施工可能時刻若しくは時間を表示する。
【0045】
図9~12は、表示制御部115によって表示される画像を例示する図である。図9において、水平平面上の施工対象エリア内で施工する複数の場所(サンドコンパクションパイルを造成する位置)をそれぞれ円形の図形で表している。さらに、施工済の場所に対応する円形の図形と、施工予定の場所に対応する円形の図形とを異なる色で表している。
【0046】
図10では、或る時点において算出部116により算出された施工場所の順序(1,2,3,4,5,6)が表示されている。図11は、図10の或る時点から1時間後の状態を予測した画像を表している。図11において、「1」と表記された場所は施工済であり、「2」と表記された場所は施工中である。このとき、船舶1の船体の位置は「3」と表記された施工予定場所であるとする。この時点において、危険エリア特定部114により場所R1が危険エリアとして特定されており、その危険エリアの位置がオペレータに分かるように示されている。これらの予測は、前述したように、施工対象エリア内のどの位置にどの程度のサイズのサンドコンパクションパイルをいつ造成するかといった施工計画データと、サンドコンパクションパイルの造成により生じる水底地盤高の変位をシミュレーションするためのアルゴリズムとを用いてなされるようになっている。
【0047】
図12は、図10の或る時点から3時間後の状態を予測した画像を表している。図12において、「1」「2」「3」と表記された場所はそれぞれ施工済であり、「4」と表記された場所は施工中である。このとき、船舶1の船体の位置は「5」と表記された施工予定場所であるとする。この時点において、危険エリア特定部114により場所R2,R3が危険エリアとして特定されており、その危険エリアの位置がオペレータに分かるように示されている。このとき、表示制御部115は、工期内の施工が行われる日又は指定の日時において危険エリアが特定されたことを意味する警告画像或いは警告音も用いて表示するようにしてもよい。これらの予測も、施工対象エリア内のどの位置にどの程度のサイズのサンドコンパクションパイルをいつ造成するかといった施工計画データと、当該サンドコンパクションパイルの造成により生じる水底地盤高の変位をシミュレーションするためのアルゴリズムとを用いてなされるようになっている。
【0048】
なお、図10~12は、算出部116により算出された施工する場所の順序を表示する例を示していたが、施工可能時刻又は施工可能時間を表示するようにしてもよい。
オペレータはこのような画像(図5~12)を適宜参考にして船舶1と危険エリアとの位置関係を把握しながら、船舶1を操作して施工作業を行うことができる。
【0049】
図4の説明に戻り、保存部117は、施工対象エリアにおける施工結果に関する施工管理データを保存する。この施工管理データは、例えば施工者、施工日時、施工場所、水底地盤中に投入した材料及びその投入量、施工後の水底の地盤高、及び、施工前と施工後における水底位置の変位等の、施工に関する様々な情報を含む。出力部118は、保存部117により保存された施工管理データを例えば表示、印刷、書き込み又は送信等の任意の形態で出力する。図13は、施工管理データの表示例を示す図である。これにより、施工日時及び施工場所ごとの施工管理データを確認することが可能となる。
【0050】
以上説明した実施形態によれば、現在から将来にわたって潮位の変動や水底地盤高の変位に応じて変化する危険エリアを視覚的に分かりやすく確認することが可能となる。また、施工計画に基づく将来発生するであろう危険エリアを事前に特定することで、最適な施工手順の策定や施工管理に役立てることができる。また、施工場所ごとの施工管理データを表示等することもできる。
【0051】
[変形例]
本発明は、上述した実施形態に限定されない。上述した実施形態を以下のように変形してもよい。
【0052】
[変形例1]
上記実施形態では、水底の地盤高の変位を伴う施工として、サンドコンパクションパイル工法の施工を例示したが、本発明が適用される施工はサンドコンパクションパイル工法以外の施工であってもよく、例えば水底への捨石投入、鋼管等の杭打ち、水底の浚渫工事、CDM(Cement Deep Mixing)船等による地盤改良工事、ブロック据付などのような当初の水底地形を施工に伴い変化させる施工方法であればよい。
【0053】
[変形例2]
水底位置推定部113が将来の或る時点において推定した水底位置と、その時点において水底位置計測部112が実際に計測した水底位置とが異なる場合が想定される。そこで、水底位置推定部113が水底位置を推定する方法に用いるパラメータや係数等を、推定された水底位置と実際に計測された水底位置の差分が小さくなるように補正するようにしてもよい。つまり、水底位置推定部113は、将来の或る時点において推定した水底位置と、その時点において水底位置計測部112により計測された水底位置との差分に基づいて、水底位置を推定する方法を補正するようにしてもよい。
【0054】
本発明を、船舶による施工対象エリアにおける潮位を現在から将来を含む施工期間にわたって予測した潮位予測データを取得する潮位予測データ取得ステップと、前記施工対象エリア内の水底位置を計測する水底位置計測ステップと、前記施工対象エリア内の前記施工期間内の指定の日時における水底位置を推定する水底位置推定ステップと、前記指定された日時について取得された前記潮位予測データと、推定された及び/又は計測された前記水底位置との差分である水深データを用いて、前記船舶の航行に危険が生じる可能性がある危険エリアを特定する危険エリア特定ステップと、特定された前記危険エリアを表示する表示制御ステップとを備える施工支援方法として実施することも可能である。また、本発明は上記方法を実行するためのプログラムであってもよい。
【符号の説明】
【0055】
1:船舶、10:船体、20:操船室、30:SCP部、100:施工管理システム、110:コンピュータ、120:深浅測量装置、130:GNSS装置、140:カメラ、150:潮位計、160:傾斜計、170:方位計、1101:プロセッサ、1102:メモリ、1103:ストレージ、1104:通信装置、1105:ユーザインタフェース装置、111:潮位予測データ取得部、112:水底位置計測部、113:水底位置推定部、114:危険エリア特定部、115:表示制御部、116:算出部、117:保存部、118:出力部、D1,D2,D3,d1,d2,d3:画像、R1,R2,R3:危険エリア
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