IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社朝日ラバーの特許一覧 ▶ f-Tech株式会社の特許一覧

特開2024-126472植物のサロゲートマーカー測定システム及び植物のサロゲートマーカーの測定方法
<>
  • 特開-植物のサロゲートマーカー測定システム及び植物のサロゲートマーカーの測定方法 図1
  • 特開-植物のサロゲートマーカー測定システム及び植物のサロゲートマーカーの測定方法 図2
  • 特開-植物のサロゲートマーカー測定システム及び植物のサロゲートマーカーの測定方法 図3
  • 特開-植物のサロゲートマーカー測定システム及び植物のサロゲートマーカーの測定方法 図4
  • 特開-植物のサロゲートマーカー測定システム及び植物のサロゲートマーカーの測定方法 図5
  • 特開-植物のサロゲートマーカー測定システム及び植物のサロゲートマーカーの測定方法 図6
  • 特開-植物のサロゲートマーカー測定システム及び植物のサロゲートマーカーの測定方法 図7
  • 特開-植物のサロゲートマーカー測定システム及び植物のサロゲートマーカーの測定方法 図8
  • 特開-植物のサロゲートマーカー測定システム及び植物のサロゲートマーカーの測定方法 図9
  • 特開-植物のサロゲートマーカー測定システム及び植物のサロゲートマーカーの測定方法 図10
  • 特開-植物のサロゲートマーカー測定システム及び植物のサロゲートマーカーの測定方法 図11
  • 特開-植物のサロゲートマーカー測定システム及び植物のサロゲートマーカーの測定方法 図12
  • 特開-植物のサロゲートマーカー測定システム及び植物のサロゲートマーカーの測定方法 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126472
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】植物のサロゲートマーカー測定システム及び植物のサロゲートマーカーの測定方法
(51)【国際特許分類】
   A01G 7/00 20060101AFI20240912BHJP
   G01N 27/00 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
A01G7/00 603
G01N27/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034861
(22)【出願日】2023-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】597096161
【氏名又は名称】株式会社朝日ラバー
(71)【出願人】
【識別番号】523083458
【氏名又は名称】f-Tech株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002251
【氏名又は名称】弁理士法人眞久特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤枝 俊宣
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼ 美都子
(72)【発明者】
【氏名】我妻 優
(72)【発明者】
【氏名】塚原 始
(72)【発明者】
【氏名】三原 将
(72)【発明者】
【氏名】大坪 真也
【テーマコード(参考)】
2G060
【Fターム(参考)】
2G060AA15
2G060AD07
2G060AF15
2G060AG03
2G060AG15
2G060EB03
2G060GA01
(57)【要約】
【課題】葉面の電位差を精度よく検出できる装着位置に電極を装着した植物のサロゲートマーカー測定システムを提供する。
【解決手段】植物のサロゲートマーカー測定システムは、植物10の健康状態を判断するサロゲートマーカーとして、植物10の葉に光照射又は光非照射されたときの光合成に基づく電位差が測定できるように、前記光照射される葉面10aの二箇所に設置されたフレキシブル電極14,14と前記フレキシブル電極14,14の各々に接続された電位差計とが接続されているものである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物の健康状態を判断するサロゲートマーカーとして、前記植物の葉に光照射又は光非照射されたときの光合成に基づく電位差が測定できるように、前記光照射される葉面の二箇所に設置されたフレキシブル電極と前記フレキシブル電極の各々に接続された電位差計とが接続されていることを特徴とする植物のサロゲートマーカー測定システム。
【請求項2】
前記二箇所の内、少なくとも一箇所は、葉緑体が存在する葉面箇所であることを特徴とする請求項1に記載の植物のサロゲートマーカー測定システム。
【請求項3】
前記葉が、その葉脈に主脈と前記主脈よりも細い側脈とを有するものであるとき、前記フレキシブル電極を設置する前記二箇所が、前記主脈を挟む両側面又は前記主脈を境界とする片側面の二箇所であることを特徴とする請求項1に記載の植物のサロゲートマーカー測定システム。
【請求項4】
前記フレキシブル電極が、前記葉面の凹凸に倣って変形可能であって、前記葉面の装着面に倣って変形して密着する導電性高分子から成る電極層と、前記電極層の一面側に積層され、前記電極層と共に前記装着面に倣って変形するエラストマー層と、前記エラストマー層を貫通し前記電極層と電気的に導通されているコネクター部とから構成されていることを特徴とする請求項1に記載の植物のサロゲートマーカー測定システム。
【請求項5】
前記エラストマー層は、前記電極層からの露出面が前記葉面の装着面に密着するように前記電極層よりも大面積であることを特徴とする請求項4に記載の植物のサロゲートマーカー測定システム。
【請求項6】
前記エラスマー層及び電極層が、透光性と気体透過性とを有していることを特徴とする請求項4に記載の植物のサロゲートマーカー測定システム。
【請求項7】
前記エラストマー層の厚さが200nm~550nmであり且つ前記電極層の厚さが200nm~500nmであって、前記エラストマー層と前記電極層との合計厚さが1000nm以下であることを特徴とする請求項4に記載の植物のサロゲートマーカー測定システム。
【請求項8】
前記導電性高分子が、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)-ポリスチレンスルホネートであることを特徴とする請求項4に記載の植物のサロゲートマーカー測定システム。
【請求項9】
前記エラストマー層が、ポリジメチルシロキサン、ポリウレタン又はスチレン・ブタジエン系熱可塑性エラストマーで形成されていることを特徴とする請求項4に記載の植物のサロゲートマーカー測定システム。
【請求項10】
前記フレキシブル電極には、伸縮自在の伸縮配線の一端が接続されていることを特徴とする請求項1に記載の植物のサロゲートマーカー測定システム。
【請求項11】
前記フレキシブル電極の一方が装着された葉面箇所は、光合成光量子束密度が15μmol/m2/sec以下となるように遮光されていることを特徴とする請求項1に記載の植物のサロゲートマーカー測定システム。
【請求項12】
前記電位差計が、直流電位差計であることを特徴とする請求項1に記載の植物のサロゲートマーカー測定システム。
【請求項13】
請求項1に記載の植物のサロゲートマーカー測定システムを用い、前記フレキシブル電極が植物の葉の光照射面である葉面の二箇所に設置し、前記葉面に光照射又は光非照射のときの前記電極間の電位差を測定して、それの経時的な変動を、前記植物の光合成の状態を判断するサロゲートマーカーとして観測することを特徴とする植物のサロゲートマーカーの測定方法。
【請求項14】
前記二箇所の内、少なくとも一箇所は、葉緑体が存在する葉面箇所であることを特徴とする請求項13に記載の植物のサロゲートマーカーの測定方法。
【請求項15】
前記二箇所が、葉脈の主脈を挟む両側面又は前記主脈を境界とする片側面の二箇所であることを特徴とする請求項13に記載の植物のサロゲートマーカーの測定方法。
【請求項16】
前記電位差の経時的な変動により、前記植物の健康状態、光合成活動状態、光合成量、生育量、及び/又はストレス状態として検知することを特徴とする請求項13に記載の植物のサロゲートマーカーの測定方法。
【請求項17】
前記電位差の経時的な変動により、前記植物の光化学反応と酵素化学反応との状態を検知することを特徴とする請求項13に記載の植物のサロゲートマーカーの測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物の生体情報の指標となるサロゲートマーカーとして、植物の葉面での光合成の際に発生する電位差を測定する植物のサロゲートマーカー測定システム及び植物のサロゲートマーカーの測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
植物の生育状態や健康状態を、当該植物の光合成の程度で推定できる。すなわち、当該植物が良好に生育し且つ良好な健康状態の場合、光合成が活発に行われているからである。このような光合成のメカニズムは、以下のように考えられている。
光合成では、植物の葉内の葉緑体が光エネルギーを利用して水を分解し、放出された電子は光化学系で受け渡され、ATP合成等に使われる。この光エネルギーを化学エネルギーに変換する反応において、葉面での電位差は、主に光合成に使われるエネルギーに変換された量(水を分解し放出された電子の量)であり、使われなかったエネルギーはクロロフィル蛍光や熱として放出されている。その後、二酸化炭素を取り込み、有機物を生成している。このような光合成のメカニズムから、光合成の程度は、炭酸ガス濃度変化、クロロフィル蛍光、電位差を測定することのより推定可能である。
【0003】
しかしながら、炭酸ガス濃度変化は、当該植物を密閉環境で測定しなくてはならず、開放状態にある植物の光合成の炭酸ガス濃度変化の測定は困難であり、開放状態での植物の光合成の程度を推定するマーカーとしては適当ではない。また、クロロフィル蛍光は、蛍光程度が当該植物の置かれた環境温度により変化する傾向(環境温度が高いときには蛍光が弱くなり、環境温度が高いときには蛍光が強くなる)があり、光合成の程度を推定するマーカーとしては適当ではない。
【0004】
これら炭酸ガス濃度変化及びクロロフィル蛍光に対して、葉面の電位差は、光エネルギーを化学エネルギーに変換し、この化学エネルギーを利用して無機物(COとHO)から有機物を合成する際に、光エネルギーを利用して水を電気分解し、放出された電子が光化学系で受け渡されるときの活動電位を葉面で捉えたものである。このことから、葉面の電位差は、光合成の程度を確実に推定でき、且つ当該植物を開放状態でも測定可能である。従って、葉面の電位差は、当該植物の生育状態や健康状態を、光合成の程度を介して推定できるサロゲートマーカーとして適当である。
【0005】
このような葉面での電位差は、下記特許文献1及び特許文献2に記載されているように、測定対象の葉面に二つの電極を装着して、葉面に光が照射されたときの電極間の電位差を測定している。しかし、本発明者等の検討によれば、特許文献1,2に記載されている電極を植物の葉面に装着した場合、葉面の電位差が精度よく測定できないことがあったり、当該植物の生体情報の指標となるサロゲートマーカーとしての波面の電位差データを得ようと長時間装着すると、葉が萎びたり枯れたりすることがあり、サロゲートマーカーの測定用電極としては用いることができないことが判明した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003-310058号公報
【特許文献2】特開平9-275779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、葉面の電位差を精度よく検出できるように葉面の所定位置に電極を装着した植物のサロゲートマーカー測定システム及び植物のサロゲートマーカーの測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成し得る植物のサロゲートマーカー測定システムは、植物の健康状態を判断するサロゲートマーカーとして、前記植物の葉に光照射又は光非照射されたときの光合成に基づく電位差が測定できるように、前記光照射される葉面の二箇所に設置されたフレキシブル電極と前記フレキシブル電極の各々に接続された電位差計とが接続されていることを特徴とするものである。
【0009】
前記二箇所の内、少なくとも一箇所は、葉緑体が存在する葉面箇所であることが好ましく、特に前記葉が、その葉脈に主脈と前記主脈よりも細い側脈とを有するものであるとき、前記フレキシブル電極を設置する前記二箇所が、前記主脈を挟む両側面又は前記主脈を境界とする片側面の二箇所であることが、葉面の光合成による電位差を精度よく検出でき好ましい。
【0010】
前記フレキシブル電極が、前記葉面の凹凸に倣って変形可能であって、前記葉面の装着面に倣って変形して密着する導電性高分子から成る電極層と、前記電極層の一面側に積層され、前記電極層と共に前記装着面に倣って変形するエラストマー層と、前記エラストマー層を貫通し前記電極層と電気的に導通されているコネクター部とから構成されていることにより、フレキシブル電極を葉面に密着でき好ましい。
【0011】
前記エラストマー層は、前記電極層からの露出面が前記葉面の装着面に密着するように前記電極層よりも大面積であることが好ましい。
【0012】
前記エラスマー層及び電極層が、透光性と気体透過性とを有していることにより、電極を装着した葉面での呼吸及び光合成を継続でき好ましい。
【0013】
前記エラストマー層の厚さが200nm~550nmであり且つ前記電極層の厚さが200nm~500nmであって、前記エラストマー層と前記電極層との合計厚さが1000nm以下であることにより、エラストマー層及び電極層の全体を葉面の装着面の凹凸に倣って簡単に変形して密着でき且つフレキシブル電極の重みにより葉が垂れ下がることを防止でき好ましい。
【0014】
前記導電性高分子が、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)-ポリスチレンスルホネートであることにより、電極層に良好な導電性と柔軟性とを付与でき好ましい。
【0015】
前記エラストマー層が、ポリジメチルシロキサン、ポリウレタン又はスチレン・ブタジエン系熱可塑性エラストマーで形成されていることにより、葉面や電極層との密着性を向上でき好ましい。
【0016】
前記フレキシブル電極には、伸縮自在の伸縮配線の一端が接続されていることにより、電極を装着した葉が風等で揺れても、伸縮配線が葉の揺れを吸収でき、電極に対して葉面から剥離するような無理な力が加えらないようにでき好ましい。
【0017】
前記フレキシブル電極の一方が装着された葉面箇所は、光合成光量子束密度が15μmol/m2/sec以下となるように遮光されていることが、他方の前記フレキシブル電極との電位差を拡大でき好ましい。
【0018】
前記電位差計が、直流電位差計であることが、測定される電位差の単位をV(ボルト)単位とすることができ好ましい。
【0019】
本発明は、上述した植物のサロゲートマーカー測定システムを用い、前記フレキシブル電極が植物の葉の光照射面である葉面の二箇所に設置し、前記葉面に光照射又は光非照射のときの前記電極間の電位差を測定して、それの経時的な変動を、前記植物の光合成の状態を判断するサロゲートマーカーとして観測することを特徴とする植物のサロゲートマーカーの測定方法である。
【0020】
前記二箇所の内、少なくとも一箇所は、葉緑体が存在する葉面箇所であることが好ましく、特に葉脈の主脈を挟む両側面又は前記主脈を境界とする片側面であることが、葉面の光合成による電位差を精度よく検出でき好ましい。
【0021】
前記電位差の経時的な変動により、前記植物の健康状態、光合成活動状態、光合成量、生育量、及び/又はストレス状態として検知することができる。
【0022】
前記電位差の経時的な変動により、前記植物の光化学反応と酵素化学反応との状態を検知することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、電極を葉面の最も光合成がなされる箇所に装着したので、葉面の光合成による電位差を精度よく検出でき、植物の生育状態等を確実に把握できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明を適用するサロゲートマーカー測定システムの概略図及びフレキシブル電極の装着状態を説明する断面図である。
図2図1に示すフレキシブル電極の正面図、背面図及び断面図である。
図3図2に示すフレキシブル電極の葉面装着前の状態を説明する断面図である。
図4】本発明の対象外のサロゲートマーカー測定システムの概略図である。
図5図1(a)(b)及び図4に示す葉面に装着された一対のフレキシブル電極で検知された電位差の経時的な変動を示すグラフである。
図6図1(a)に示す一対のフレキシブル電極の片方を遮蔽したときの葉面の電位差の経時的な変動を示すグラフである。
図7図1(a)に示す一対のフレキシブル電極を葉面に装着した葉面の電位差と二酸化炭素ガス濃度との関係を調べるための装置の概略図及びその結果を示すグラフである。
図8】大気中の葉のクロロフィル蛍光を調査する実験装置(a)と二酸化炭素ガス濃度とクロロフィル蛍光との関係を調査する実験装置(b)との概略図である。
図9図1(a)に示す一対のフレキシブル電極を葉面に装着したポトスの春、秋、冬での電位差の経時的変動を示すグラフである。
図10図1(a)に示す一対のフレキシブル電極をさつまいもの葉面に装着したときの電位差の経時的な変動を示すグラフである。
図11図7に示す装置を用いて二酸化炭素ガス濃度を変更して葉面電位差との関係を実験した結果を示すグラフである。
図12】屋外での植物の葉面の電位差を測定するためのサロゲートマーカー測定システムの概略図である。
図13図12のサロゲートマーカー測定システムを用いて、ポトスの屋外での葉面の電位差を測定した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの記載に限定されるものではない。
【0026】
本発明に係るサロゲートマーカー測定システムを構成する植物の葉は、図1に示す葉10は、葉緑体を有し、主脈12a及び側脈12b等の葉脈を有している。葉10は光合成や呼吸を行っており、葉脈は水や光合成反応の産物である有機物等の通路として機能している。葉脈は、葉10の略中央部を葉身の長手方向に延びる太い主脈12aと、主脈12aから分岐され、主脈12aよりも細い側脈12bとから構成される。このような葉10の葉面10aには、白色LED30から白色光が照射される。葉面10aには、一対のフレキシブル電極14,14が装着されている。図1(a)では、葉面10aの主脈12aを挟む両側面に一対のフレキシブル電極14,14が装着されており、図1(b)では、葉面10aの主脈12aを境界とする片側面に一対のフレキシブル電極14,14が装着されている。フレキシブル電極14,14が装着されている葉面は、側脈12bのみが存在する部分の対応部位である。このフレキシブル電極14,14の合計の大きさは、葉面10aよりも小さい。また、葉10は、葉面10aが滑面であるものが、フレキシブル電極14,14が密着し易く好ましい。このような葉10を有する植物は、ポトス、サツマイモ、柊、セイダカアワダチソウ、オーク、シガーツリー等があげられる。
【0027】
フレキシブル電極14,14の各々と電位差計とは、接続配線15で接続されており、接続配線15の一端に設けられた端子16は、フレキシブル電極14よりも小形であり、導電性接着剤又は導電性両面テープを介してフレキシブル電極14に接合されている。この接続配線15は、コイル状等の伸縮自在の形状であることが、風等で葉10が揺れても接続配線15の伸縮で吸収でき、フレキシブル電極14の葉面10aからの剥離や端子16のフレキシブル電極14からの剥離を防止できる。この電位差計としては、直流電位差計を用いることにより、葉面10aの電位差を直流で測定でき、測定される電位差の単位をV(ボルト)単位とすることができ好ましい。
【0028】
葉面10aに装着したフレキシブル電極14は、図1(c)に示すように、葉面10aの凹凸に沿って変形しつつ密着している。フレキシブル電極14は、図2(a)の正面図及び背面図(b)に示すように、葉面10aの装着面に倣って変形して密着する導電性高分子から成る電極層14aと、電極層14aの一面側に積層され、電極層14aと共に葉面10aの装着面に倣って変形するエラストマー層14bと、エラストマー層14bを貫通し電極層14aと電気的に導通されている複数のコネクター部14cとから構成されている。コネクター部14cは、図1(c)の断面図に示すように、エラストマー層14bに形成されたスルーホール14d内に電極層14aを形成する導電性高分子が充填されて形成され、その端面がエラストマー層14bの表面に露出している。コネクター部14cの露出面と接続配線15の端子16とが電気的に接続されている。
尚、コネクター部14cは、エラストマー層14bに形成されたスルーホール14dに、電極層14aを形成する導電性高分子と異なる導電材、例えば銀及び/又は金、銅等の金属フィラー又はそれらの金属がコートされたフィラーを含有する導電性シリコーンゴム等の導電性ゴムを充填したものであってもよい。
【0029】
フレキシブル電極14を形成するエラストマー層14bは、電極層14aからの露出面が葉面10aの装着面に密着するように電極層14aよりも大面積であることが好ましい。特に、電極層14aとエラストマー層14bとの面積比(電極層14aの面積:エラストマー層14bの面積)が1:2~1:18であることが、エラストマー層14bの電極層14aからの露出面が葉面10aに密着して、電極層14aの葉面10aとの密着状態を十分に保持でき好ましい。
【0030】
また、電極層14a及びエラスマー層14bが、透光性と気体透過性とを有していることにより、フレキシブル電極14を装着した葉面10aでの呼吸及び光合成を継続でき好ましい。更に、エラストマー層14bの厚さが200~550nm例えば250nm~550nmであり且つ電極層14aの厚さが200nm~500nmであって、エラストマー層14bと電極層14aとの合計厚さが1000nm以下であることにより、エラストマー層14b及び電極層14aの全体を葉面10aの装着面の凹凸に倣って簡単に変形して密着でき且つフレキシブル電極14の重みにより葉10が垂れ下がることを防止でき好ましい。
【0031】
電極層14aを形成する導電性高分子としては、市販されている導電性高分子を用いることができるが、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)-ポリスチレンスルホネート(PEDOT-PSS(poly(3,4-ethylendioxythiophene)- polystyren sulfonate):以下、単にEDOT-PSSと言う)を用いることにより、電極層14aに良好な導電性と柔軟性とを付与でき好ましい。また、エラストマー層14bが、ポリジメチルシロキサン、ポリウレタン又はスチレン・ブタジエン系熱可塑性エラストマーで形成されていることにより、葉面10aや電極層14aとの密着性を向上でき好ましい。特に、電極層14aをPEDOT-PSSを用いたとき、エラストマー層14bをポリウレタンで形成することにより、両者を強固に密着でき好ましい。特に、エラストマー層14bをポリウレタンで形成し且つ電極層14aをPEDOT-PSSで形成した場合、コロナ放電処理を施したエラストマー層14bの表面にジアミノ基含有シランカップリング剤で処理することにより、エラストマー層14bと電極層14aとを更に一層強固に密着できる。
【0032】
図1及び図2に示すフレキシブル電極14は、図3(a)に示すように、フレキシブル電極14の担持体としての水透過性層18とが水溶性材料から成る水溶性犠牲層20を介して接合されている供給形態24で供給される。水透過性層18としては、水を透過できる材料であればよく、具体的にはセルロース製又は樹脂製の不織布、或いは樹脂製のスポンジ又はメッシュを用いることができる。その厚さは、0.03~3mm程度とすることがフレキシブル電極14の運搬や保管に適している。また、水溶性犠牲層20としては、フレキシブル電極14と水透過性層18とを接合でき、且つ水に溶ける水溶性材料で形成されていればよく、具体的には澱粉、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸又はポリエチレングリコールで形成することにより、フレキシブル電極14と水透過性層18とを確実に接合でき、且つ水溶性透過層20を透過した水で溶けてフレキシブル電極14を水透過性層18から確実に剥離できる。
【0033】
図3(a)に示す供給形態24で供給されたフレキシブル電極14を葉面10aの所定の箇所に装着する際には、図3(b)に示すように、供給形態の製品24を水透過性層18が水含有のスポンジやガーゼ等の水含有材22上に水透過性層18が当接するように載置し、水含有材22の水が水透過性層18を透過して水溶性犠牲層20を溶かしてフレキシブル電極14を水透過性層18から剥離する。次いで、剥離されて水透過性層18上に置載された状態のフレキシブル電極14を、その電極層14aが葉面10aの所定箇所に密着するように押し付けることがより装着できる。
【0034】
図1(a)(b)では、一対のフレキシブル電極14、14を、葉10aの主脈12aを挟む両側面、或いは主脈12aを境界とする片側面に装着しているが、図4では、葉面10aの主脈12a上に一対のフレキシブル電極14、14を装着した。図1(a)(b)及び図4に示す一対のフレキシブル電極14、14が装着された葉10として、観葉植物であるポトスの葉を用いて、対のフレキシブル電極14、14を含むポトス全体を暗い場所に置き、白色LED30を15分間隔で点灯・消灯を繰り返して葉10の一対のフレキシブル電極14、14の経時的な電位差を測定した。その結果を図5に示す。図5において、ポトスを暗い場所において45分間ほど静置した後、白色LEDを15分間隔で点灯・消灯を繰り返したところ、図1(a)(b)の葉面10aに装着した一対のフレキシブル電極14、14での電位差には、点灯・消灯の際に明確に経時的な変動が確認された。一方、図4の葉面10aに装着した一対のフレキシブル電極14、14での電位差には、白色LEDの点灯・消灯の際に明確な経時的な変動は確認できなかった。
【0035】
図1(a)(b)の葉面10aに装着した一対のフレキシブル電極14、14での電位差の変動について検討すべく、図6(a)に示すように葉面10aの主脈12aを挟む両側面に装着した一対のフレキシブル電極14,14の一方を遮光フィルム26で遮光した。この遮光フィルム26は、光合成光量子束密度が15μmol/m2/sec以下となるように遮光でき、且つ葉10の呼吸を妨げないように二酸化炭素や酸素が透過可能の隙間を設けつつ葉面10aに装着できるものであればよく、アルミホイルや黒の画用紙を用いることができる。この図6(a)に示す葉10を含む植物全体を暗い場所に置き、白色LED30を15分間隔で点灯・消灯を繰り返して葉10の一対のフレキシブル電極14、14の電位差を経時的に測定した。その結果を図6(b)に示す。図6(b)に示すように、白色LED30の点灯・消灯の際のフレキシブル電極14、14の電位差の経時的な変動は、図5に示す図1(a)(b)の経時的な変動よりも大きい。フレキシブル電極14、14の一方のみに白色LED30の光が照射されるから、光が照射される電極側のみで光合成がなされていることを示している。このことから、葉面10aの全面に光が照射されていないことを知ることができ、且つ電位差を拡大でき明確化を図ることができる。
【0036】
図1(a)(b)に示す光合成観測装置によれば、植物の生育環境が良好でストレスが少なく、葉10の先端が上方を向いて元気である場合、白色LED30を所定間隔で点灯・消灯を繰り返したとき、葉10の一対のフレキシブル電極1、14の電位差の経時的な変動が大きい。一方、植物の生育環境が悪化しストレスがかかり、葉10の先端が下方を向いてしおれた様子で元気がない場合、白色LED30を所定間隔で点灯・消灯を繰り返したとき、葉10の一対のフレキシブル電極1、14の電位差の経時的な変動が小さく或いは略ゼロである。
尚、図1に示す光合成観測装置では、光源として白色LED30を用いたが、屋外で太陽光の下でも、葉10の一対のフレキシブル電極1、14の電位差の経時的な変動を測定でき、屋外で栽培している植物の健康状態等を知ることができる。
【0037】
ところで、植物の葉の光合成の概要は下記のように進行すると考えられている。すなわち、葉に照射された光エネルギーにより、葉の葉緑体のチラコイド膜内で根から吸収した水の一部を電気分解して酸素を大気中に放出する光化学反応(明反応)と、電気分解で得た電気エネルギーで大気中から吸収した二酸化炭素及び水を利用して有機物を合成する酵素化学反応(暗反応)とがある。光合成に利用されなかった過剰の光エネルギーは赤色のクロロフィル蛍光や熱として放出される。葉面の電位差は、光エネルギーを利用して水の電気分解のより生じるものであるから、光化学反応(明反応)に係るものであり、植物のわずかな環境ストレス状態を検知することが可能である。従って、図1(a)(b)に示す光合成観測装置により検知される、葉面10aの電位差の経時的な変動は、植物の健康状態、光合成活動状態、光合成量、生育量、及び/又はストレスのサロゲートマーカーとして検知することができる。
唯、植物の光合成全体を知るには、二酸化炭素や水の消費量、クロロフィル蛍光の程度も測定することが好ましい。
【0038】
葉面10に光照射した際に、葉10の電位差と二酸化炭素ガスとの関係を調べる装置を図7(a)に示す。図7(a)の植物全体を透明シート28で包み込み、植物全体が密閉空間32内に置かれるようにした。図7(a)に示す装置では、密閉空間32内の葉10の葉面10aには、主脈12aを挟む両面に一対のフレキシブル電極14,14を設置して葉面10aの電位差を測定できるようにした。更に、密閉空間30内に二酸化炭素濃度センサー36、湿度センサー38及び温度センサー34を設置し、二酸化炭素濃度、湿度及び温度を測定できるようにした。密閉空間30の外側に白色LED30を設け、密閉空間32内に白色LED30から照射される光のうち、植物の光合成に利用されるとされる波長400~700nmの光量子束密度を測定できるように光量子センサー40を密閉空間32内に設置した。
【0039】
密閉空間30内に二酸化炭素ガス(COガスという)をCOガス濃度が500ppmとなるように注入した後、密閉空間32内の温度が25℃、光量子束密度が35μmol m-2s-1となるように調整して、COガス濃度及び葉面10aの電位差の経時変化を測定した。その結果を図7(b)に示す。図7(b)に示すように、密閉空間32内のCOガス濃度は、葉10の光合成で消費されるために徐々に減少し、同時に葉面10aの電位差も減少する。このことは、密閉空間30内のCOガス濃度が減少するに従って葉面10aでの光合成反応のうちの水の電気分解反応の程度も減少することを意味している。密閉空間30内のCOガス濃度が300ppm以下となったとき、葉面10aの電位差は略ゼロとなり、白色LED30を点灯・消灯しても電位差の経時的な変動はなかった。このことは、光合成のうちの水の電気分解反応が略ゼロとなることを示唆している。このように、植物の載置空間を密閉系としなければ、COガス濃度の経時的変化を測定できず、屋外の植物に適用することは困難である。また、COガス濃度の経時的変化は、葉面10aの電位差の経時的変動が実質的にゼロとなって、植物の光合成の光化学反応(明反応)が実質的に停止している状態でも変化しているから、植物の健康状態等の変化を知るためのサロゲートマーカーとしては、葉面10aの電位差の経時的変動よりも低感度である。
尚、葉面10aの電位差が略ゼロになってもCOガス濃度が低下する現象は、光合成の光化学反応(明反応)と酵素化学反応(暗反応)とのタイムラグに起因しているものと推察される。
【0040】
クロロフィル蛍光を調べるシステムを図8(a)に示す。葉面10aに紫外線を照射する紫外線LED41が設けられ、葉面10aから放散されるクロロフィル蛍光を撮影するカメラ42が設けられている。葉面10aには、主脈12aを挟む両面に一対のフレキシブル電極14,14を設置して葉面10aの電位差を測定できるようにした。このようにフレキシブル電極14,14を葉面10aに設置しても、フレキシブル電極14,14は透光性と気体透過性とを有しており、紫外線LED41からの紫外線はフレキシブル電極14,14が装着された葉面10aにも照射される。また、フレキシブル電極14,14を含む葉面10aの全面のクロロフィル蛍光の発生状況をカメラ42で撮影できる。
また、図8(b)にCOガス濃度とクロロフィル蛍光との関係を調べるため、図8(a)に示す装置のうち、葉面10aに設置されたフレキシブル電極14,14を含む植物全体及びカメラ42を透明シート44で包み込み、植物全体が密閉空間45内に置かれるようにした。密閉空間45内のCOガス濃度を変更できるようにした。密閉空間45内のCOガス濃度が通常濃度(450~500ppm)のときは、紫外線LED41からの紫外線が照射されたとき、直ちに葉面10aでのクロロフィル蛍光が観測されるが、COガス濃度が低濃度(400ppm以下)のとき、紫外線LED41からの紫外線が照射されても、直ちに葉面10aでのクロロフィル蛍光が観測されず、観測できる時間に遅延が認められた。
【0041】
クロロフィル蛍光の発生状況は、気温やCOガス濃度で異なるから、植物の健康状態等の変化を知るためのサロゲートマーカーとしては、クロロフィル蛍光は葉面10aの電位差の経時的な変動よりも低感度である。
尚、これまでの説明は、葉脈に主脈12aと主脈12aよりも細い側脈12bとを有する葉10について説明してきたが、主脈12aと側脈12bとの区別のないホウセンカ等の双子葉類の網状脈の葉やトウモロコシ等の単子葉類の平行脈の葉では、葉緑体が存在する葉面にフレキシブル電極14,14を設けることで足りる。
【実施例0042】
以下、本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0043】
実施例1
図1(a)に示す葉10として、観葉植物である鉢植えのポトスを用い、葉面10aの主脈12aを挟む両側面に一対のフレキシブル電極14,14を装着した。一対のフレキシブル電極14,14は、直径18mm、総厚約800nmの電極であり、構成する電極層14aは一対のフレキシブル電極14,14の略中央部に、直流電位差計(株式会社キーサイト社製34461A)に接続されている接続配線15の一端に設けられた、フレキシブル電極14よりも小形の端子16をテープで接合した。
【0044】
鉢植のポトスについて、春(5月)、秋(11月)、冬(1月)での見た目の状態と、鉢植のポトスを暗い場所に置き、白色LED30を15分間隔で点灯・消灯を繰り返して葉10の一対のフレキシブル電極14、14の経時的な電位差を測定した。白色LED30を点灯したときの光量子束密度は35μmol m-2s-1であった。電位差の経時的な変動を図9に示す。気温が10℃以上の春及び秋では、ポトスの葉10の電位差の経時的な変動は明確であったが、気温が10℃以下の冬では、電位差の経時的な変動は極めて少なかった。ポトスの生育環境として推奨されている10℃以上の気温である春、秋では、ポトスのストレスも少なく、見た目も葉先が上を向いて元気な様子であった。一方、気温が10℃以下の冬では、ポトスのストレスは大きく、見た目も葉先が下を向いて元気のない様子であった。このことから、光合成が盛んになされており葉面の電位差が明暗の経時変動が大きい場合は、ポストのストレスが少なく状態が良好であること、光合成があまりなされなく明暗での電位差の経時的な変動が小さい場合、ポストのストレスが大きく状態が良くないことが判る。従って、葉面10aの電位差の明暗の経時変動は、植物のストレスや健康状態のサロゲートマーカーとして利用できる。
【0045】
実施例2
図1(a)に示す葉10として、ポトスの葉に代えてさつまいもの葉を用いた他は実施例1と同様にして葉面10aの電位差の経時的な変化を測定した。その結果を図10に示す。さつまいもの葉でも、白色LED30を15分間隔で点灯・消灯を繰り返したときの一対のフレキシブル電極14,14の電位差の経時的な変動が認められた。従って、ポトス以外の植物の葉でも電位差の経時的な変動により光合成の程度を知ることができる。図10において、電位差が異常に変動している箇所Aがあるが、さつまいもの葉に人が接近したからである。人の有している静電気や誘導電圧、体温により、植物が置かれている環境の変化することにより、電位差が生じてしまうことに起因しているものと考えられる。この人による変動は、特異的なものであるから、データ整理の際に、容易に削除できる。
【0046】
実施例3
図7(a)に示す装置を構成する密閉空間32のCOガス濃度を変化させて、ポトスの葉面10aの電位差の経時変化を調査した。その結果を図11に示す。図11に示すように、当初、密閉空間32のCOガス濃度を通常濃度(450~500ppm)に維持したところ、白色LED30を点灯・消灯することにより葉面10aの電位差は経時的に変動し、葉面10aでの光合成が進行していることが判る。次いで、密閉空間32のCOガス濃度を低濃度(400ppm以下)にしたところ、葉面10aの電位差は略ゼロであり、白色LED30を点灯・消灯しても電位差は略ゼロのままで変動しなく、葉面10aでの光合成がなされなくなったことが判る。しかし、密閉空間32のCOガス濃度の減少は続行している。光合成反応の酵素化学反応(暗反応)のみが進行しているものと推察される。その後、密閉空間32内のCOガス濃度を通常濃度(450~500ppm)に戻したところ、白色LED30を点灯・消灯することにより葉面10aの電位差は経時的な変動が認められ、葉面10aでの光合成が再開されたことが判る。このように、密閉空間32内のCOガス濃度の変化よりも、葉面10aの電位差の経時的な変動を測定することにより、葉面10aでの光合成の状態を精度よく把握できるから、葉面10aの電位差の経時的な変動は光合成のサロゲートマーカーとして利用できる。
【0047】
実施例4
図8(a)に示す装置を用いて、ポストのクロロフィル蛍光を調べた。春(5月)、秋(11月)、冬(1月)に、ポストの葉10に紫外線LED41から波長395nmの紫外線を照射して、葉面10aから放散されるクロロフィル蛍光を測定した。その結果、春及び秋では、波長395nmの紫外線を照射しつつ葉面12をカメラ42で撮影したところ、葉面10a全面が赤く写っており、クロロフィル蛍光が発生していることが判る。一方、冬では、波長395nmの紫外線を照射しつつ葉面12をカメラ42で撮影したところ、葉面10aが赤く写っておらず、クロロフィル蛍光が発生していないことが判る。この傾向は、図9に示す葉面10aの春、秋、冬の電位差の変動と同じ傾向であり、植物の生育に適正な温度であって、光合成が盛んに行われているとき、クロロフィル蛍光が発生する。
【0048】
また、図8(b)に示す装置を用いて、COガス濃度とポストのクロロフィル蛍光との関係を調べた。密閉空間45内のCOガス濃度を通常濃度(450~500ppm)としたとき、紫外線LED41からの紫外線(波長395nm)を照射したとき、1秒後には葉面10aの全面でのクロロフィル蛍光が観測された。一方、密閉空間45内のCOガス濃度を低濃度(400ppm以下)としたとき、紫外線LED41からの紫外線が照射されても、1秒後に葉面10aの一部でのクロロフィル蛍光が観測されたものの、クロロフィル蛍光が発生している面積は極めて小面積であった。3秒後では、クロロフィル蛍光が発生している面積は増加しているものの、依然として葉面10aの一部であった。このようにCOガス濃度を低濃度(400ppm以下)の場合、図11に示すように葉面10aでの電位差の経時的な変動が認められず、光合成は停止状態にあるから、クロロフィル蛍光のみでは光合成のサロゲートマーカーとして利用できない。
【0049】
実施例5
実施例1の鉢植えのポトスを図12に示すように屋外で太陽光の下で葉面10aの電位差を測定した。葉面10aの電位差の測定は実施例1と同様にした。二酸化炭素濃度センサー36、湿度センサー38及び温度センサー34を設置し、太陽光中の波長400~700nmの光量子束密度を測定できるように光量子センサー40を設置した。その結果を図13に示す。図13において、夕方15:00ごろに鉢植えのポトスを屋外に出した。15:00~16:00までは静置時間であって、葉面10aの電位差はバラツキが大きい。16:00ごろからは、光量子束密度の低下に伴って、葉面10aの電位差が次第に小さくなっていることを示しており、太陽光線量の低下に伴って葉面10aでの光合成が次第に低下していることが判る。このように、葉面10aの電位差の測定は、屋外の植物でも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0050】
屋外、温室での植物の健康状態等を葉面の電位差を測定することによりチェックでき、植物の育成環境を最適なものに調整することに資する。
【符号の説明】
【0051】
10:葉、10a:葉面、12a:主脈、12b:側脈、14、14:フレキシブル電極、14a:電極層、14b:エラストマー層、14c:コネクター部、14d:スルーホール、15:接続配線、16:端子、18:水透過性層、20:水溶性犠牲層、22:水含有材、24:供給形態、26:遮光フィルム、28,44:透明シート、30:白色LED、32,45:密閉空間、34:温度センサー、36:二酸化炭素濃度センサー、38:湿度センサー、40:光量子センサー、41:紫外線LED、42:カメラ、45:密閉空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13