IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 本田技研工業株式会社の特許一覧

特開2024-126483鞍乗り型車両における電子機器の支持構造
<>
  • 特開-鞍乗り型車両における電子機器の支持構造 図1
  • 特開-鞍乗り型車両における電子機器の支持構造 図2
  • 特開-鞍乗り型車両における電子機器の支持構造 図3
  • 特開-鞍乗り型車両における電子機器の支持構造 図4
  • 特開-鞍乗り型車両における電子機器の支持構造 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126483
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】鞍乗り型車両における電子機器の支持構造
(51)【国際特許分類】
   B62J 11/00 20200101AFI20240912BHJP
   B62K 19/30 20060101ALI20240912BHJP
   B62K 21/12 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
B62J11/00
B62K19/30
B62K21/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034875
(22)【出願日】2023-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒澤 亮
【テーマコード(参考)】
3D013
3D212
【Fターム(参考)】
3D013CF09
3D013CF14
3D212BH08
(57)【要約】
【課題】電子機器の振動を低減し、電子機器に対するアクセス性を向上できる電子機器の支持構造を実現する。
【解決手段】鞍乗り型車両1における電子機器2の支持構造において、電子機器2は、ハンドル部15を構成するグリップ部45Rの上方であって、ハンドル部15に設けられたブレーキ用のマスタシリンダ49の後方に位置し、車体前方から見たときに電子機器2の少なくとも一部がマスタシリンダ49と重なる位置に支持される。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鞍乗り型車両における電子機器の支持構造であって、
前記電子機器は、ハンドル部を構成するグリップ部の上方であって、前記ハンドル部に設けられたブレーキ用のマスタシリンダの後方に位置し、車体前方から見たときに前記電子機器の少なくとも一部が前記マスタシリンダと重なる位置に支持されることを特徴とする電子機器の支持構造。
【請求項2】
前記マスタシリンダの上面部は、前記電子機器の前方で前記ハンドル部を覆うハンドルカバーの上面部よりも上方に位置し、
前記電子機器の一部が、車体前方から見たときに前記マスタシリンダと少なくとも車幅方向で重なる位置に支持されることを特徴とする請求項1に記載の電子機器の支持構造。
【請求項3】
前記電子機器は、取付部材により前記ハンドル部に取り付けられ、
前記取付部材は、前記ハンドル部にねじ止めされて取り付けられる基部を有し、前記基部は前記マスタシリンダの側面部に少なくとも隣接して配置され、前記基部の回転軌跡上に前記マスタシリンダが配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の電子機器の支持構造。
【請求項4】
前記ハンドル部にはミラー部を取り付けるためのボス部が設けられ、
前記ミラー部は、締結部材により前記ボス部に取り付けられ、
前記締結部材は、一端部に第1ネジ部、他端部に第2ネジ部がそれぞれ設けられ、
前記締結部材は、前記ボス部との間に前記取付部材の基部を挟んだ状態で前記第1ネジ部が前記ボス部に締結され、
前記ミラー部が前記第2ネジ部に締結されることを特徴とする請求項3に記載の電子機器の支持構造。
【請求項5】
前記電子機器は、接続対象を接続するためのケーブルを接続する接続部を有し、
前記電子機器は、車体後方に突出する突出部を有し、
前記接続部が、前記突出部の車幅方向内側の側面部に隣接する前記電子機器の側面部に設けられることを特徴とする請求項1または2に記載の電子機器の支持構造。
【請求項6】
前記電子機器が取付部材により前記ハンドル部に取り付けられた状態で、前記電子機器の下面部と前記取付部材の上面部の間に隙間が形成され、
前記電子機器を車体側の配線に接続するためのケーブルが前記隙間を通るように配線されることを特徴とする請求項1または2に記載の電子機器の支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗り型車両における電子機器の支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、スマートフォンなどの外部機器を接続するためのUSBポートをレッグシールドの内側に配置した構造が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2019/187798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のようにUSBポートをレッグシールドの内側に配置すると、USBポートを取り扱う際のアクセス性が低下するといった課題がある。また、USBポートを外部に露出した状態で配置すると走行時の風や振動などの外乱によりUSBポートが振動するといった課題もある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされ、その目的は、電子機器の振動を低減し、電子機器に対するアクセス性を向上できる構造を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、鞍乗り型車両における電子機器の支持構造であって、前記電子機器は、ハンドル部を構成するグリップ部の上方であって、前記ハンドル部に設けられたブレーキ用のマスタシリンダの後方に位置し、車体前方から見たときに前記電子機器の少なくとも一部が前記マスタシリンダと重なる位置に支持される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、電子機器の振動を低減し、電子機器に対するアクセス性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態の電子機器の支持構造を適用した鞍乗り型車両の右側面図である。
図2】本実施形態の電子機器の支持構造を適用した鞍乗り型車両のハンドル部の正面図である。
図3】本実施形態の電子機器の支持構造を適用した鞍乗り型車両のハンドル部の斜視図である。
図4】本実施形態の電子機器の支持構造を適用した鞍乗り型車両のハンドル部の車幅方向右側の平面図である。
図5】本実施形態の電子機器の支持構造を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち2つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
本実施形態の鞍乗り型車両は、充電器などの電子機器が、ハンドル部を構成するグリップ部の上方であって、ハンドル部に設けられたブレーキ用のマスタシリンダの後方に位置し、車体前方から見たときに電子機器の少なくとも一部がマスタシリンダと重なる位置に支持される。そして、本実施形態の電子機器の支持構造は、電子機器がマスタシリンダにより回転が規制された状態で、ミラー部を取り付けるためのミラーボス部に共締めされて支持される。このように構成したことにより、電子機器の振動を低減し、電子機器に対するアクセス性を向上することができる。
【0011】
以下に、本実施形態の電子機器の支持構造の詳しい構成および機能について説明する。
【0012】
[車両の基本構成]
まず、図1から図4を参照して、本実施形態の鞍乗り型車両の基本構成について説明する。
【0013】
図1は、本実施形態の電子機器の支持構造を適用した鞍乗り型車両の右側面図である。図2は、本実施形態の電子機器の支持構造を適用した鞍乗り型車両のハンドル部の正面図である。図3は、本実施形態の電子機器の支持構造を適用した鞍乗り型車両のハンドル部の斜視図である。図4は、本実施形態の電子機器の支持構造を適用した鞍乗り型車両のハンドル部の車幅方向右側の平面図である。
【0014】
なお、以下の説明で参照する図に、理解の容易化のため、車体前後方向に対応するX方向と、車幅方向または車体左右方向に対応するY方向と、車体上下方向(鉛直方向)に対応するZ方向とを示している。
【0015】
以下の説明では、前/後、側方(左/右)、上/下などの記載は、車体を基準とした相対的な位置関係を示すものとする。また、符号に付されたL、Rは車幅方向の左側または右側の構成要素を示し、符号にL、Rを付していない場合は左右の構成要素を総称して示すものとする。
【0016】
本実施形態の鞍乗り型車両1は、例えば自動二輪車(以下、車両)である。車両1は、フレームボディ10、前輪11、後輪12、シート部13、リヤキャリヤ部14、ハンドル部15、ロックスイッチ部16、フロントフェンダ17、リヤフェンダ18、フロントフォーク19、リヤクッション20a、スイングアーム20b、パワートレイン21およびエキゾーストマフラー22を備える。また、車両1は、外装を形成するハンドルカバー23、フロントフォークカバー24、フロントガーニッシュ25、レッグシールド26、ボディカバー27、サイドカバー28、チェーンカバー29およびスタンド30を備える。
【0017】
前輪11は、左右のフロントフォーク19の下端部に回転可能に軸支される。左右のフロントフォーク19は、上端部がフレームボディ10の前端部に回転可能に軸支されるステアリングステム(不図示)の下端部に接続される。
【0018】
後輪12は、フレームボディ10に揺動自在に支持される左右のスイングアーム20bの後端部に回転可能に軸支される。左右のスイングアーム20bは、前端部がフレームボディ10の後端下部に揺動自在に支持される。
【0019】
シート部13は、フレームボディ10の上部に接続される。リヤキャリヤ部14は、フレームボディ10の後端上部に接続される。リヤフェンダ18は、フレームボディ10の後端部に取り付けられる。
【0020】
ハンドル部15は、車幅方向に延びるハンドルパイプ(不図示)を有する。ハンドルパイプ(不図示)は、フレームボディ10の前端部に回転可能に軸支されるステアリングステム(不図示)の上端部に接続される。ロックスイッチ部16は、キーシリンダとハンドルロック機構を含み、フレームボディ10の前端部におけるステアリングステム(不図示)を軸支する部分に接続される。
【0021】
ステアリングステム(不図示)の下端部には、左右のフロントフォーク19の上端部が接続される。フロンドフェンダ17は、左右のフロントフォークカバー24に接続される。リヤフェンダ18は、フレームボディ10の後端部に取り付けられる。
【0022】
リヤクッション20aは、上端部がシート部13の後方のフレームボディ10に軸支され、下端部がスイングアーム20bの後端部に軸支される。パワートレイン21は、エンジンおよびトランスミッションを含み、フレームボディ10の中央下部に支持される。エキゾーストマフラー22は、エンジンから後方に延び、マフラーステー22aによりフレームボディ10の下端部に接続される。
【0023】
ハンドル部15は、車幅方向の中央部にヘッドライト41およびスピードメータ42が設けられ、車幅方向両側にウィンカーライト43、ミラー部44、グリップ部45が設けられている。ヘッドライト41は、車体前方に向けて配置され、スピードメータ42は、ヘッドライト41の後方で車体後上方に向けて配置されている。
【0024】
ハンドル部15の車幅方向右側には、右ウィンカーライト43R、右バックミラー44R、右グリップ部45R、スロットルスイッチ46、スタータスイッチ47、ブレーキレバー48、ブレーキ用のマスタシリンダ49、電子機器2が配置されている。
【0025】
ハンドル部15の車幅方向左側には、左ウィンカーライト43L、左バックミラー44L、左グリップ部45L、ウィンカースイッチ50、グリップヒータスイッチ51が配置されている。
【0026】
リヤフェンダ18には、車幅方向中央部にテールライト52およびライセンスライト53が配置され、車幅方向両側にリヤウィンカーライト54が配置されている。テールライト52は、車体後方に向けて配置され、ライセンスライト53は、ライセンスプレートを照明するように車体下方に向けて配置されている。また、リヤフェンダ18の上方に、リヤキャリヤ部14が配置されている。
【0027】
ハンドルカバー23は、アッパーカバー23aとロアカバー23bを有し、ハンドル部15のハンドルパイプ(不図示)を覆う外装部材である。フロントフォークカバー24は、左右のフロントフォーク19を覆う外装部材である。レッグシールド26は、フレームボディ10の車体前方側を覆う外装部材である。ボディカバー27は、フレームボディ10の車体後方側を覆う外装部材である。サイドカバー28は、フレームボディ10に設けられた収納スペースを開閉するためのボディカバー27の開口部を覆う外装部材である。チェーンカバー29は、パワーユニット21の駆動力を後輪12に伝達するチェ-ンを覆う外装部材である。スタンド30は、車両1を自立させるための部材である。
【0028】
[電子機器の支持構造]
次に、図1から図4に加えて、図5を参照して、本実施形態の電子機器の支持構造について説明する。
【0029】
図5は、本実施形態の電子機器の支持構造を説明する図であって、図5(a)および図5(b)は、ブラケットの取付構造を説明する図であり、図5(c)は、ブラケットの右側面図である。
【0030】
本実施形態の電子機器2は、例えばUSB(Universal Serial Bus)規格に準拠した充電器(以下、充電器)である。充電器2は、不図示の車体側配線(ワイヤハーネス)を介して不図示の電源(バッテリ)に接続される。また、充電器2は、USBケーブルなどの接続ケーブルにより接続対象である被充電機器が接続可能であり、充電器2に接続され被充電機器をバッテリの電力を用いて充電可能である。被充電機器は、スマートフォンまたはタブレットコンピュータなどのライダーが所持するポータブルデバイスである。被充電器は、充電器2に接続された状態で、ライダーが所持または車両1に設けられた専用のホルダに保持される。なお、本実施形態の電子機器2は充電器に限定されず、ETC車載器などでもよい。
【0031】
図2および図3に示すように、充電器2は、ハンドル部15の右グリップ部45Rよりも上方かつマスタシリンダ49の後方に位置し、車体前後方向および車体上方から見たときに充電器2の少なくとも一部がマスタシリンダ49と重なるように支持される。詳しくは、マスタシリンダ49の上面部49dは、充電器2の前方でハンドル部15を覆うアッパーカバー23aの上面部23cよりも上方に位置し、充電器2は、ハンドル部15のグリップ部45およびアッパーカバー23aの上面部23cよりも上方に配置される。このように構成したことで、充電器をレッグシールドの内側に配置した構成よりも充電器2に対するアクセス性が向上する。また、充電器2は、マスタシリンダ49の後方に配置され、車体前後方向および車体上方から見たときに充電器2の一部がマスタシリンダ49と少なくとも車幅方向、好ましくは車幅方向かつ車体上下方向で重なるように配置される。このように構成したことで、走行風がマスタシリンダ49の前面部49aに当たり、図3の矢印Fで示すように車体上方に向きを変え、充電器2に当たる風量を低減できるので、走行風による充電器2の振動を低減することができる。特に、充電器2と被充電機器は接続ケーブルにより接続されるので、充電器2が振動することにより接続ケーブルが外れてしまう可能性もあり、充電器2の振動を抑制できることで接続ケーブルが外れにくくなる。また、充電器2は、ミラー部44の右バックミラー44Rをハンドル部15の車幅方向右側に接続するシャフト部44aよりも車体後方に配置されているので、充電器2が走行風を受けることによる空気抵抗をさらに低減し、走行安定性に対する影響を低減でき、また、充電器2がライダーの近くに配置されるので、充電器2に対するアクセス性が向上する。
【0032】
図5に示すように、充電器2は、専用の取付部材としてのブラケット3によりハンドル部15の車幅方向右側に取り付けられる。ブラケット3は、マスタシリンダ49に隣接して配置され、右ミラー44Lを接続するための車幅方向右側のミラーボス部40に固定される。ミラーボス部40は、ハンドル部15の車幅方向右側のハンドルパイプ(不図示)に固定される。ブラケット3は、ミラーボス部40にねじ止めされて取り付けられる基部4と、基部4から折れ曲がって上方に延びるアーム部5と、アーム部5の上端部から折れ曲がって車体後方かつ下方に傾斜して延びるホルダ部6を有する金属製の板状部材である。ホルダ部6は、アーム部5から約45度の角度で折れ曲がっており、充電器2がブラケット3に取り付けられている状態で、充電器2が水平方向に対して45度の角度で保持される。これにより、充電器2が走行風を受けることによる空気抵抗を低減し、走行安定性に対する影響を低減することができる。また、ホルダ部6は、側壁部6bを有する。側壁部6bは、ホルダ部6を構成する1枚の板材を折り曲げて成形され、基部4およびアーム部5の側縁部に溶接される。このように、アーム部5とホルダ部6を側壁部6bで接続することにより、ブラケット3の剛性を高くしている。これにより、走行風による充電器2の振動を大幅に低減でき、アーム部5に重ねて溶接することで溶接時のバラツキを低減し、強度の低下を抑制している。なお、ハンドル部15の車幅方向左側に配置されているグリップヒータスイッチ51も同様の理由で水平方向に対して45度の角度で取り付けられている。また、ブラケット3のアーム部5は車幅方向内側に延びている。これにより、ライダーのハンドル操作に影響しないように、充電器2をライダーの近くに配置でき、充電器2に対するアクセス性を向上することができる。なお、図5の例では、車体前後方向から見てブラケット3のアーム部5がミラーボス部40の軸方向と略同軸に延びているが、アーム部5がミラーボス部40の軸方向より車幅方向内側に位置するように構成することで、充電器2をさらにライダーの近くに配置でき、充電器2に対するアクセス性を向上できる。
【0033】
基部4には、基部4の左側縁部から折れ曲がって下方に延びる規制部4aが設けられている。規制部4aは、ブラケット3がハンドル部15に取り付けられた状態で、マスタシリンダ49の右側面部49bに少なくとも隣接し基部4の回転軌跡上にマスタシリンダ49の右側面部49bが配置される位置関係、好ましくはマスタシリンダ49の右側面部49bに当接した位置関係となり、ブラケット3が外力を受けた場合に、規制部4aがマスタシリンダ49の右側面部49bに当接することにより、ブラケット3がミラーボス部40の中心軸のまわりに回転しないようにする機能を有する。
【0034】
規制部4aには、ブラケット3がミラーボス部40に取り付けられる際に、ミラーボス部40とマスタシリンダ49の右側面部49bとの接続部49cと干渉しないように、接続部49cの形状に合わせて切除された切除部4bが形成されている。このように、既存の部品であるマスタシリンダ49によりブラケット3の回転を規制できるので、ブラケット3の回転を規制するための専用の部品を追加する必要がなく、コストを最小限に抑えることができる。
【0035】
特に、充電器2はライダーが取り扱うことが多く、グリップヒータスイッチ51のように回転が規制された状態で取り付けられておらず、サイズの大きな充電器2は回転しないように取り付けられていることが望ましい。なお、別形態としてブラケット3の基部4に規制部4aを設けず、左バックミラー44Rが車体前方から外力を受けた場合に、ブラケット3が右バックミラー44Rと共に図4の時計周りに車幅方向内側に回転するように構成してもよい。
【0036】
右バックミラー44Rは、専用の締結部材としてのアダプタボルト7によりミラーボス部40に接続される。アダプタボルト7は、第1ネジ部7aと第2ネジ部7bを有する。第1ネジ部7aは、アダプタボルト7の一端部(下端部)に形成された雄ネジであり、第2ネジ部7bはアダプタボルト7の他端部(上端部)に形成された雌ネジである。ブラケット3の基部4にはアダプタボルト7の第1ネジ部7aを挿通可能な開口部4cが形成されおり、アダプタボルト7は、第1ネジ部7aとミラーボス部40との間にブラケット3の基部4を挟んだ状態で、第1ネジ部7aがミラーボス部40に締結される。
【0037】
右バックミラー部44Rは、シャフト部44aの下端部にネジ部44bが形成されており、第2ネジ部7bにシャフト部44aが締結され、ナット8により固定されて、ロックナットキャップ9により覆われる。ミラーボス部40に取り付けられた右バックミラー44Rは、右バックミラー44Rが車体前方から外力を受けた場合に、図4の時計周りの回転だけが許容される。そして、本実施形態では、アダプタボルト7の第1ネジ部7aをミラーボス部40に締結するときにブラケット3の基部4が共締めされて固定される。これに対して、ハンドル部15の車幅方向左側においても同様に、左バックミラー44Lのシャフト部44aがミラーボス部に取り付けられるが、グリップヒータスイッチ51は、左バックミラー44Lが締結されるミラーボス部の第2ネジ部に締結されるので、外力により回転しやすい構成となっている。
【0038】
そして、本実施形態では、第1ネジ部7aをボス部40に締結する強度を、ミラー部44を第2のネジ部7bに締結する強度よりも大きくする、あるいは、第1ネジ部7aをボス部40に締結する方向(例えば、図4の時計回り)を、ミラー部44を第2のネジ部7bに締結する方向(例えば、図4の反時計回り)と反対にすることにより、ミラー部44が外力を受けて回転(図4の時計回り)し、第2ネジ部7bに対するミラー部44の締結が緩んだ場合であっても、ボス部40に対する第1ネジ部7aの締結は緩みにくい構成となるので、ブラケット3の回転、すなわち、充電器2の回転を抑制できる。
【0039】
図4に示すように、充電器2は、第1の筐体部2aと第2の筐体部2bを備え、第2の筐体部2bが車体上方から見て車体後方に突出する外形を有する。第2の筐体部2bは、第1の筐体部2aよりも車幅方向のサイズが小さく、第1の筐体部2aから車体後方に突出する突出部を形成している。第1の筐体部2aには、第2の筐体部2bの突出部の車幅方向内側の側面部2b2に隣接する車体後方側の側面部2b3に第2の接続部C2が設けられている。第2の筐体部2bには、車幅方向外側の側面部2b1に第1の接続部C1が設けられている。第1の接続部C1は、例えば、充電器2を車体側配線(ワイヤハーネス)に接続するための配線ケーブル2cのUSBプラグコネクタを接続するためのUSBレセクタブルコネクタである。第2の接続部C2は、被充電機器を充電器2に接続するための接続ケーブルのUSBプラグコネクタを接続するためのUSBレセクタブルコネクタである。このように、第2の接続部C2が、第1の筐体部2aの車体後方側の側面部2b3に設けられることにより、第2の接続部C2がライダーに近い位置に設けられるのでアクセス性をさらに向上しつつ、被充電機器を接続するための接続ケーブルが充電器2の車幅方向外側に突き出た状態となることを抑制できる。なお、第2の接続部C2を、第2の筐体部2bの突出部の車幅方向内側の側面部2b2に設けてもよく、このように構成したとしてもアクセス性および配線状態について、第2の接続部C2を第1の筐体部2aに設けた場合と同様の効果が得られる。
【0040】
また、充電器2は、ブラケット3のホルダ部6に係合した状態とし、ボルト6aにより締結することでブラケット3に取り付けられる。充電器2がブラケット3に保持されている状態において、充電器2の下面部とブラケット3のホルダ部6の上面部の間には隙間Gが形成される。この隙間Gには、充電器2を車体側配線(ワイヤハーネス)に接続するための配線ケーブル2cが配線される。なお、この隙間Gに、図2に示すスタータスイッチ47を車体側配線(ワイヤハーネス)に接続するための配線ケーブル47a、あるいは、マスタシリンダ49のブレーキホースを配線してもよいし、接続ケーブルと共に配線してもよい。このように充電器2の第1の接続部2b1から車幅方向外側に突き出す配線ケーブル2cを充電器2の下部の隙間Gに配線するので、ライダーがハンドル操作を行う際の影響を低減し、配線の保護および揺動を抑制することができる。
【0041】
以上のように、本実施形態によれば、充電器2の振動を低減し、充電器2に対するアクセス性を向上できる構造を実現することができる。
【0042】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。例えば、本発明の鞍乗り型車両は、自動二輪車に限られず、原動機付自転車、水上オートバイ、4輪バギー、芝刈り機などの鞍乗り型車両全般あるいは電動キックボードなどの鞍乗り型車両以外にも適用可能である。
【0043】
[実施形態のまとめ]
上述した実施形態は、少なくとも以下の鞍乗り型車両における電子機器の支持構造を開示する。
【0044】
<態様1>
鞍乗り型車両1における電子機器2の支持構造であって、
前記電子機器は、ハンドル部15を構成するグリップ部45Rの上方であって、前記ハンドル部15に設けられたブレーキ用のマスタシリンダ49の後方に位置し、車体前方から見たときに前記電子機器2の少なくとも一部が前記マスタシリンダ49と重なる位置に支持される。
【0045】
態様1によれば、電子機器2がグリップ部45の上方で、マスタシリンダ49の後方かつ車体前方から見たときにマスタシリンダ49と一部重なるように配置されているので、走行風による電子機器2の振動などの影響を低減しつつ、電子機器2に対するアクセス性を向上できる。
【0046】
<態様2>
態様1において、前記マスタシリンダ49の上面部49dは、前記電子機器2の前方で前記ハンドル部15を覆うハンドルカバー23aの上面部23cよりも上方に位置し、
前記電子機器2の一部が、車体前方から見たときに前記マスタシリンダ49と少なくとも車幅方向で重なる位置に支持される。
【0047】
態様2によれば、ハンドル部15にハンドルカバー23aが設けられている場合において、電子機器2が走行風を受けることによる空気抵抗をさらに低減し、走行安定性に対する影響を低減できる。
【0048】
<態様3>
態様1または2において、前記電子機器2は、取付部材3により前記ハンドル部15に取り付けられ、
前記取付部材3は、前記ハンドル部15にねじ止めされて取り付けられる基部4を有し、前記基部4は前記マスタシリンダ49の側面部49bに少なくとも隣接して配置され、前記基部4の回転軌跡上に前記マスタシリンダ49が配置されている。
【0049】
態様3によれば、取付部材3の基部4がマスタシリンダ49の側面部49bに当接することで取付部材3の回転が規制されるので、取付部材3の回転を規制するための専用の部品を追加する必要がなく、コストを抑えることができる。
【0050】
<態様4>
態様3において、前記ハンドル部15にはミラー部44を取り付けるためのボス部40が設けられ、
前記ミラー部44は、締結部材7により前記ボス部40に取り付けられ、
前記締結部材7は、一端部に第1ネジ部7a、他端部に第2ネジ部7bがそれぞれ設けられ、
前記締結部材7は、前記ボス部40との間に前記取付部材3の基部4を挟んだ状態で前記第1ネジ部7aが前記ボス部40に締結され、
前記ミラー部44が前記第2ネジ部7bに締結される。
【0051】
態様4によれば、第1ネジ部7aをボス部40に締結する強度を、ミラー部44を第2のネジ部7bに締結する強度よりも大きくする、あるいは、第1ネジ部7aをボス部40に締結する方向を、ミラー部44を第2のネジ部7bに締結する方向と反対にすることにより、ミラー部44が外力を受けて回転し、第2ネジ部7bに対するミラー部44の締結が緩んだ場合であっても、ボス部40に対する第1ネジ部7aの締結は緩みにくい構成となるので、取付部材3の回転、すなわち、電子機器2の回転を抑制できる。
【0052】
<態様5>
態様1から4のいずれかにおいて、前記電子機器2は、接続対象を接続するためのケーブルを接続する接続部C2を有し、
前記電子機器2は、車体後方に突出する突出部2bを有し、
前記接続部C2が、前記突出部2bの車幅方向内側の側面部2b2に隣接する前記電子機器の側面部2b3に設けられる。
【0053】
態様5によれば、接続部C2がライダーに近い位置に設けられるのでアクセス性をさらに向上しつつ、接続対象を接続するためのケーブルが電子機器2の車幅方向外側に突き出た状態となることを抑制できる。
【0054】
<態様6>
態様1から5のいずれかにおいて、前記電子機器2が取付部材3により前記ハンドル部に取り付けられた状態で、前記電子機器2の下面部と前記取付部材3の上面部の間に隙間Gが形成され、
前記電子機器2を車体側の配線に接続するためのケーブル2cが前記隙間Gを通るように配線される。
【0055】
態様6によれば、電子機器2から車幅方向外側に突き出る配線2cが隙間Gを通って車幅方向内側に配線されるので、ライダーがハンドル操作を行う際の影響を低減し、配線の保護および揺動を抑制できる。
【符号の説明】
【0056】
1…自動二輪車
2…充電器(電子機器)
2a…第1の筐体部
2b…第2の筐体部(突出部)
2c…配線ケーブル
3…ブラケット(取付部材)
4…基部
4a…規制部
4b…切除部
4c…開口部
5…アーム部
6…ホルダ部
6a…ボルト
6b…側壁部
7…アダプタボルト(締結部材)
7a…第1ネジ部
7b…第2ネジ部
8…ナット
9…ロックナットキャップ
10…フレームボディ
11…前輪
12…後輪
13…シート部
14…リヤキャリヤ部
15…ハンドル部
16…ロックスイッチ部
17…フロントフェンダ
18…リヤフェンダ
19…フロントフォーク
20a…リヤクッション
20b…スイングアーム
21…パワートレイン
22…エキゾーストマフラー
22a…マフラーステー
23…ハンドルカバー
23a…アッパーカバー
23b…ロアカバー
23c…アッパーカバーの上面部
24…フロントフォークカバー
25…フロントガーニッシュ
26…レッグシールド
27…ボディカバー
28…サイドカバー
29…チェーンカバー
30…スタンド
40…ミラーボス部
41…ヘッドライト
42…スピードメータ
43…ウィンカーライト
43R…右ウィンカーライト
43L…左ウィンカーライト
44…ミラー部
44a…シャフト部
44b…ネジ部
44R…右バックミラー
44L…左バックミラー
45…グリップ部
45R…右グリップ部
45L…左グリップ部
46…スロットルスイッチ
47…スタータスイッチ
47a…配線ケーブル
48…ブレーキレバー
49…マスタシリンダ
49a…マスタシリンダの前面部
49b…マスタシリンダの右側面図
49c…ミラーボス部とマスタシリンダの右側面部との接続部
49d…マスタシリンダの上面部
50…ウィンカースイッチ
51…グリップヒータスイッチ
52…テールライト
53…ライセンスライト
54…リヤウィンカーライト
C1…第1の接続部
C2…第2の接続部
F…走行風
G…隙間
図1
図2
図3
図4
図5