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特開2024-126495CO2資源化推進装置、CO2還元再生システムおよびCO2資源化推進方法
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  • 特開-CO2資源化推進装置、CO2還元再生システムおよびCO2資源化推進方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126495
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】CO2資源化推進装置、CO2還元再生システムおよびCO2資源化推進方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/30 20230101AFI20240912BHJP
【FI】
G06Q10/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034893
(22)【出願日】2023-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大田 裕之
【テーマコード(参考)】
5L010
5L049
【Fターム(参考)】
5L010AA20
5L049AA20
5L049CC15
(57)【要約】
【課題】カーボンリサイクルを推進するCO2資源化推進装置およびCO資源化推進方法を提供する。
【解決手段】実施形態によれば、COを受け入れて再生可能エネルギーによる電力を用いて電解還元によりCOを生成し化学合成により化成品を生産するCO還元再生装置によるCO資源化を推進するCO資源化推進装置100は、COの供給元であるCO排出施設との間で、CO排出権取引市場でのCO排出権の購入の約定価格を含む条件を決定する約定部150と、CO排出権取引市場の情報を取得する情報取得部111と、CO排出施設名義のCO排出権の購入の有無の判定および購入の指示を出力する購入判定部123と、購入された前記CO排出権を前記CO排出施設に引き渡す排出権引き渡し部170を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
COを受け入れて再生可能エネルギーによる電力を用いて電解還元によりCOを生成し化学合成により化成品を生産するCO還元再生装置によるCO資源化を推進するCO資源化推進装置であって、
前記COの供給元であるCO排出施設との間で、CO排出権取引市場でのCO排出権の購入の約定価格を含む条件を決定する約定部と、
前記CO排出権取引市場の情報を取得する情報取得部と、
前記CO排出施設名義の前記CO排出権の購入の有無の判定および購入の指示を出力する購入判定部と、
購入された前記CO排出権を前記CO排出施設に引き渡す排出権引き渡し部と、
を備えることを特徴とするCO資源化推進装置。
【請求項2】
前記CO排出権の前記CO排出施設への引き渡しは、前記CO排出権取引市場から発行された証書により行われることを特徴とする請求項1に記載のCO資源化推進装置。
【請求項3】
前記CO排出権の購入に伴う利益を算出する利益算出部をさらに備え、
前記購入判定部は、前記利益算出部の算出結果に基づいて前記判定を行う、
ことを特徴とする請求項1に記載のCO資源化推進装置。
【請求項4】
前記利益算出部の前記算出結果に基づいて前記CO排出施設に付与する還元利益を算出する還元利益算出部と、
前記還元利益を前記CO排出施設に付与する還元利益付与部と、
を備えることを特徴とする請求項3に記載のCO資源化推進装置。
【請求項5】
前記利益算出部は、前記CO排出施設からの前記COの受け入れサービスに伴う利益と、前記化成品の需要先への販売に伴う利益の算出をさらに行い、
前記還元利益算出部は、前記利益算出部により算出されたそれぞれの前記利益に基づいて前記還元利益を算出することを特徴とする請求項4に記載のCO資源化推進装置。
【請求項6】
CO排出施設からのCOを受け入れて再生可能エネルギーによる電力を用いて電解還元によりCOを生成するCO2電解還元装置と、
前記COを用いて化学合成により化成品を生産する化学合成装置と、
前記COの資源化を推進するCO資源化推進装置と、
を備えるCO還元再生システムであって、
前記CO資源化推進装置は、
前記COの供給元であるCO排出施設との間で、CO排出権取引市場でのCO排出権の購入の約定価格を含む条件を決定する約定部と、
前記CO排出権取引市場の情報を取得する情報取得部と、
前記CO排出施設名義の前記CO排出権の購入の有無の判定および購入の指示を出力する購入判定部と、
購入された前記CO排出権を前記CO排出施設に引き渡す排出権引き渡し部と、
を具備することを特徴とするCO還元再生システム。
【請求項7】
COを受け入れて再生可能エネルギーによる電力を用いて電解還元によりCOを生成し化学合成により化成品を生産するCO還元再生装置によるCO資源化を推進するCO資源化推進方法であって、
約定部が、前記COの供給元であるCO排出施設との間で、CO排出権取引市場でのCO排出権の購入の約定価格を含む条件を決定する約定ステップと、
情報取得部が、前記CO排出権取引市場の情報を取得する情報取得ステップと、
購入判定部が、前記CO排出施設名義の前記CO排出権の購入の有無の判定および購入の指示を出力する購入判定ステップと、
排出権引き渡し部が、購入された前記CO排出権を前記CO排出施設に引き渡す排出権引き渡しステップと、
を有することを特徴とするCO資源化推進方法。
【請求項8】
前記排出権引き渡しステップののちに、
前還元利益算出部が、前記CO排出施設に付与する還元利益を算出する還元利益算出ステップと、
還元利益付与部が、前記還元利益を前記CO排出施設に付与する還元利益付与ステップと、
をさらに有することを特徴とする請求項7に記載のCO資源化推進方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、CO資源化推進装置、CO還元再生システムおよびCO資源化推進方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化対策は、国際的に認識が共有された課題である。各国はこの課題を達成するために、再生可能エネルギー由来の電力供給を拡大しつつある。また、再エネ由来電力の余剰分で水を電気分解して水素(グリーン水素)を製造する。また、二酸化炭素(CO)の分離・回収を行い、回収されたCOの電解により一酸化炭素(CO)を生成し、グリーン水素とともに化成品を生成するというカーボンリサイクルが進められつつある。
【0003】
図8は、CO還元再生装置を用いたカーボンリサイクルの例を示す概念図である。
【0004】
CO発生施設(原排出者)で生じた排気ガスなどからのCOや大気中のCOは、CO分離回収施設で分離回収される。分離回収されたCOは、CO還元再生装置で電解還元され、さらに化成品の生成がなされる。すなわち、CO還元再生装置では、まず、再生エネルギー由来の電力を用いたCO電解槽によりCOに還元される。生成されたCOは、別途、再生エネルギー由来の電力を用いた電解槽で電解により生成されたグリーン水素とともに合成施設での合成のための原料となり、化成品が生成される。また、CO還元再生装置で生成された化成品を原料として、ジェット燃料(SAF)、軽油・繊維・プラスティックなどが生成される。
【0005】
特に、SAFの燃焼により大気に放散されたCOの相当部分が森林に吸収されるが、これ以外のCOを、再び回収分離することにより、カーボンリサイクルの輪が形成されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2011-523587号公報
【特許文献2】特開2022-7936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
現在、カーボンリサイクルにおけるCOの排出量については、原排出者が全て責任を負う政策の流れが主流である。このため、原排出者には、カーボンリサイクル構築に対するインセンティブが働かない。一方で、COの2次利用者には、排出量についての責任、負担は生じないが、インセンティブの働かない原排出者から、COを調達する必要がある。このような背景から、COの資源化の流れが小さくなり、カーボンリサイクルの輪が十分に働かない、さらには、輪が切れる懸念があるという問題がある。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、カーボンリサイクルを推進するCO資源化推進装置およびCO資源化推進方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成するため、本実施形態に係るCO資源化推進装置は、COを受け入れて再生可能エネルギーによる電力を用いて電解還元によりCOを生成し化学合成により化成品を生産するCO還元再生装置によるCO資源化を推進するCO資源化推進装置であって、前記COの供給元であるCO排出施設との間で、CO排出権取引市場でのCO排出権の購入の約定価格を含む条件を決定する約定部と、前記CO排出権取引市場の情報を取得する情報取得部と、前記CO排出施設名義の前記CO排出権の購入の有無の判定および購入の指示を出力する購入判定部と、購入された前記CO排出権を前記CO排出施設に引き渡す排出権引き渡し部と、を備えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の実施形態に係るCO還元再生システムのCO資源化推進装置のカーボンリサイクルにおける関係を示すブロック図である。
図2】第1の実施形態に係るCO資源化推進装置の構成を示すブロック図である。
図3】第1の実施形態に係るCO資源化推進方法の手順を示すフロー図である。
図4】第2の実施形態に係るCO資源化推進装置の構成を示すブロック図である。
図5】第2の実施形態に係るCO資源化推進装置の還元利益算出部による第1の還元利益を説明するグラフである。
図6】第2の実施形態に係るCO資源化推進装置の還元利益算出部による第2の還元利益を説明するグラフである。
図7】第2の実施形態に係るCO資源化推進方法の手順を示すフロー図である。
図8】CO還元再生システムを用いたカーボンリサイクルの例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係るCO資源化推進装置、CO還元再生システムおよびCO資源化推進方法について説明する。ここで、互いに同一または類似の部分には、共通の符号を付して、重畳する説明は省略する。なお、二酸化炭素(CO)については、便宜上、CO2と表記することもあるものとする。
【0012】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係るCO還元再生システム10のCO資源化推進装置100のカーボンリサイクルにおける関係を示すブロック図である。
【0013】
CO還元再生システム10は、CO還元再生装置10aおよびCO資源化推進装置100を有する。CO還元再生装置10aは、CO電解装置11および化学合成装置12を有する。
【0014】
CO排出施設20から排出されたCOを含むガスは、CO分離・回収装置25により高純度のCOとなる。なお、CO分離・回収装置25が設けられていない場合でも、COが他の手段で回収されていてもよい。また、CO分離・回収装置25をCO還元再生システム10の事業者が有していてもよい。
【0015】
CO還元再生システム10は、回収されたCOを受け入れる。COの受け入れは、COの処理であることから、処理サービスの費用の支払いを受けることになる。処理サービスの費用の詳細については、後に図3を引用しながら説明する。
【0016】
CO還元再生システム10のCO電解装置11は、たとえば風力、太陽光などの再生可能エネルギー装置13による電力を用いて、COを還元しCOを生成する。ここで、再生可能エネルギー装置13は、CO還元再生システム10の事業者が有していてもよいし、他の事業者のものであってもよい。生成されたCOは、再生可能エネルギーによるものであるので、グリーンCOである。
【0017】
また、これも、CO還元再生システム10の事業者が有していてもよいし、他の事業者のものであってもよいが、HO電解装置14が、再生可能エネルギー装置13による電力を用いて、HOを還元し水素(H)を生成する。生成されたHは、再生可能エネルギーによるものであるので、グリーン水素である。
【0018】
CO還元再生システム10の化学合成装置12は、CO電解装置11により生成されたグリーンCOと、HO電解装置14により生成されたグリーン水素を原料として、各種の化成品を生成する。
【0019】
CO還元再生システム10の事業者は、化学合成装置12により生成された各種の化成品を需要施設30に販売するが、途中過程で、CO電解装置11により生成されたグリーンCOそのものを需要施設30に販売してもよい。
【0020】
CO資源化推進装置100は、CO電解装置11および化学合成装置12、CO排出施設20、ならびに排出権取引市場40との情報の授受により、CO資源化の推進を行う。その詳細は、図2および図3を引用しながら説明する。
【0021】
なお、上述のように、CO還元再生システム10、CO排出施設20、および需要施設30、と表現した場合には、施設そのもののみではなく、施設を所有する事業者を含めて表すものとする。たとえば、CO排出施設20という場合には、CO排出施設20を用いた事業を行い、COを排出する原排出者も意味するものとする。同様に、排出権取引市場40と表現した場合には、市場そのもののみではなく、市場を運営する運営事業者を含めての意味であるものとする。
【0022】
図2は、第1の実施形態に係るCO資源化推進装置の構成を示すブロック図である。
【0023】
CO資源化推進装置100は、情報取得部111、演算部120、記憶部130、出力部140、約定部150、排出権購入部160、および排出権引き渡し部170を有する。CO資源化推進装置100は、たとえば、コンピュータシステムであるが、それぞれの要素の機能を有する個別の機器、装置の集合であってもよい。
【0024】
情報取得部111は、排出権取引市場40におけるCO排出権の価格情報を逐一取得する。また、情報取得部111は、CO排出施設20のCO排出量などの情報を可能な範囲で取得する。
【0025】
演算部120は、約定設定部121、利益算出部122、および購入判定部123を有する。
【0026】
約定設定部121は、CO排出施設20との間で約定するCO排出量およびこれに伴うCO排出権についての排出権取引市場40からの購入価格(約定価格Pc[円/kgCO])、購入量M[kg]などの条件(排出権購入条件)を設定し、あるいは変更する。
【0027】
利益算出部122は、排出権取引市場40からのCO排出権の購入に伴う購入利益Gを算出する。ここで、購入利益G[円]は、次の式(1)により与えられる。
=(Pc-Pt)×M-Cf ・・・(1)
ここで、Pt[kg]は、排出権取引市場40から実際に購入した際の購入価格[円/kgCO]、Cf[円]は、排出権取引市場40からのCO排出権の購入に伴う手数料および経費である。
【0028】
購入判定部123は、利益算出部122により算出された購入利益G[円]の額から、購入の有無を判定する。判定は、たとえば、次の式(2)が成立したら購入するとしてもよい。
/M≧gmin ・・・(2)
ここで、gmin[円/kgCO]の値は、Mの値に依存するものであってもよい。
【0029】
記憶部130は、約定情報記憶部131、排出権記憶部132、および、利益記憶部133を有する。
【0030】
約定情報記憶部131は、CO排出施設20との間で約定する排出権購入条件を記憶する。
【0031】
排出権記憶部132は、CO排出施設20ごとに、CO排出権の購入実績、および購入前の約定による排出権N関する情報を記憶する。
【0032】
利益記憶部133は、利益算出部122で算出した結果を記憶する。
【0033】
出力部140は、情報取得部111で取得した情報、記憶部130に収納されている情報を表示する。出力部140は、ヒューマンインターフェースとして、例えば、画面から入力可能で、要求に応じて、情報を表示することでもよい。
【0034】
約定部150は、CO排出施設20との間で情報の授受を行い、排出権購入条件を決定する。
【0035】
排出権購入部160は、購入判定部123が購入と判定した場合に、排出権取引市場40からのCO排出権の購入を行う。この場合の、CO排出権は、約定の相手であるCO排出施設20の名義のものであり、排出権取引市場40が発行する証書に明記される。
【0036】
なお、排出権購入部160を設けずに、管理者などがCO排出権の購入を行ってもよい。
【0037】
排出権引き渡し部170は、購入したCO排出権をCO排出施設20に引き渡す。具体的には、排出権取引市場40が発行した証書を、CO排出施設20に送付する。この場合、電子証書の形態であれば、電子証書をCO排出施設20に送信することでもよい。
【0038】
図3は、第1の実施形態に係るCO資源化推進方法の手順を示すフロー図である。
【0039】
図3においては、左から右側に、排出権取引市場40、CO排出施設20、CO還元再生システム10のCO資源化推進装置100およびそれ以外の装置、需要施設30のそれぞれにおける動作と、それぞれの間での物および情報の流れを示している。モノの流れは白抜きの太線矢印で、情報の流れは矢印で、それぞれ表示されている、図3では、上から下に向かって時間の流れ、動作の順序を示している。
【0040】
まず、CO資源化推進装置100の約定設定部121が、排出権購入条件1による約定条件案を作成し、約定部150が、この排出権購入条件1をCO排出施設20に提示する(ステップS11)。
【0041】
CO排出施設20は、排出権購入条件1の提示を受けて、排出権購入条件2をCO資源化推進装置100の約定部150に提示する(ステップS12)。
【0042】
約定部150は、排出権購入条件2を排出権購入条件1と比較し、一致しているあるいは相違点があっても許容範囲であるか、すなわち成立しているか否かを判定する(ステップS13)。
【0043】
約定部150が、成立していると判定しなかった(ステップS13 NO)場合には、ステップS11ないしS13を繰り返す。
【0044】
約定部150が、成立していると判定した(ステップS13 NO)場合には、約定部150は、CO排出施設20との間で、排出権購入条件の約定を行う(ステップS14)。
【0045】
以上が、CO資源化推進装置100が行うCO還元再生システム10とCO排出施設20との間の約定に関するステップである。
【0046】
排出権購入に関する約定が行われると、物の流れが行われる。以下、物の一連の流れを説明する。
【0047】
まず、CO排出施設20は、COをCO還元再生システム10に出荷し(ステップS01)、CO還元再生システム10がこのCOを受け入れる(ステップS02)。
【0048】
CO還元再生システム10では、CO電解装置11によるCOの電解でグリーンCOが生成され(ステップS03)、さらに化学合成装置12による合成で化成品が生成される(ステップS04)。また、需要施設30により、ステップS03で生成されたCOの購入(ステップS04)およびステップS05で生成された化成品の購入(ステップS06)が行われる。また、需要者が化成品を購入による代金支払い(ステップS07)、CO還元再生システムによる代金受領(ステップS08)が行われる。
【0049】
以上が、CO資源化推進装置100が行うCO還元再生システム10とCO排出施設20との間の約定の後の物の流れである。
【0050】
次に、CO資源化推進装置100が行うCO還元再生システム10とCO排出施設20との間の約定の後の情報の流れについて説明する。
【0051】
まず、情報取得部111は、排出権取引市場40の情報を継続的に取得する(ステップS21)。排出権取引市場40の情報としては、特に、CO排出権の市場価格およびその時間的な変化を含む。
【0052】
利益算出部122は、排出権取引市場40からのCO排出権の購入に伴う購入利益Gを算出する。ここで、購入利益G[円]は、次の式(3)により与えられる。
=(Pc-Pt)×M-Cf ・・・(3)
ここで、Pt[kg]は、排出権取引市場40から実際に購入した際の購入価格[円/kgCO]、Cf[円]は、排出権取引市場40からのCO排出権の購入に伴う手数料および経費である。
【0053】
購入判定部123は、利益算出部122により算出された購入利益G[円]の額から、購入の有無を判定する。判定は、たとえば、次の式(4)が成立する、すなわち(G/M)がgmin以上である場合は購入すると判定してもよい。
/M≧gmin ・・・(4)
ここで、gmin[円/kgCO]の値は、Mの値に依存するものであってもよい。
【0054】
購入判定部123が購入有りと判定しなかった場合(ステップS22 NO)は、ステップS21およびステップS22を継続する。
【0055】
購入判定部123が購入有りと判定した場合(ステップS22 YES)は、排出権購入部160が、排出権取引市場40から、CO排出権を購入する(ステップS23)。排出権購入部160による排出権取引市場40との購入取引はオンラインで実施される。
【0056】
排出権取引市場40は、排出権購入部160からの購入申し込み情報を受け付け(ステップS24)、CO排出施設20の名義の排出権証書を発行する(ステップS25)。この間に、CO排出権の購入の対価が、排出権購入部160から排出権取引市場40への支払いが、オンラインでなされる。
【0057】
排出権購入部160は、オンラインで電子データとして送付された排出権証書を受領する(ステップS26)。排出権引き渡し部170は、排出権購入部160が電子データとして受領した排出権証書を引き渡す(ステップS27)。すなわち、CO排出施設20に電子データとして排出権証書を送付する。CO排出施設20は、電子データとして送付された排出権証書を受領する(ステップS28)。
【0058】
なお、排出権取引市場40から排出権購入部160への排出権証書の発行、および、排出権引き渡し部170からCO排出施設20への排出権証書の引き渡しは、電子データではなくハードの証書によることでもよい。
【0059】
本実施形態によれば、CO排出施設20(原排出者)にとっては、CO還元再生システム10にCOの処理を依頼することにより、自動的に、そのCOに関する排出権証書を受け取ることができる。すなわち、CO還元再生システム10にCOの処理を依頼する分のCO排出権(COクレジット)を得ることができ、CO排出量からその分を相殺することができる。このようなCOクレジットの獲得は、原排出者(CO排出施設20)にとって、CO還元再生システム10にCOの処理を依頼する動機づけとなる。また、CO還元再生システム10にとっても、原料となるCOの確保をより確実にすることができる。
【0060】
この結果、COの資源化の流れが加速され、カーボンリサイクルの輪が強まることになる。
【0061】
[第2の実施形態]
図4は、第2の実施形態に係るCO資源化推進装置100aの構成を示すブロック図
【0062】
本実施形態は、第1の実施形態の変形であり、CO資源化推進装置100aは還元利益付与部180をさらに有し、また、演算部120aが還元利益算出部124と、記憶部130aが外部入力記憶部134をさらに有する。また、演算部120は、第1音実施形態における利益算出部122に代えて利益算出部122aを有する。その他の点では、第1の実施形態と同様である。以下、第1の実施形態との相違点についてのみ、説明する。
【0063】
本実施形態では、第1の実施形態における原排出者(CO排出施設20)への排出権証書の引き渡しに加えて、CO還元再生システム10がCO排出施設20から受け入れたCOに起因して得た利益の一部をCO排出施設20に還元するものである。
【0064】
ここで、CO還元再生システム10が得る利益には、以下の3種類の利益がある。
【0065】
(1)第1は、第1の実施形態で利益算出部122が算出する排出権購入利益G[円]である。すなわち、排出権取引市場40からの原排出者名義のCOクレジットの購入に伴う利益である。
【0066】
(2)第2は、CO排出施設20から、CO排出施設20が発生させたCOの処理のための受け入れに伴う受け入れ利益G[円]である。
【0067】
(3)第3は、CO還元再生システム10が生成するグリーンCOおよびグリーン化成品の販売による販売利益G[円]である。
【0068】
第1の排出権購入利益G[円]は、第1の実施形態と同様に利益算出部122aが算出する。利益算出部122aはさらに、第2の受け入れ利益G[円]および第3の販売利益G[円]を算出する。
【0069】
算出された排出権購入利益G[円]、受け入れ利益G[円]および販売利益G[円]は、利益記憶部133に収納、記憶される。
【0070】
原排出者(CO排出施設20)へ還元する利益Gr[円]は、上記の(1)の排出権購入利益Gの一部であるGr[円]の場合、さらに(2)の受け入れ利益Gの一部であるGr[円]を加える場合、あるいは、さらに(3)の販売利益Gの一部であるGr[円]を加える場合がある。そのいずれかを、CO還元再生システム10は、予め選択する。
【0071】
なお、この3つのケース(還元レベル1は(1)のみ、還元レベル2は(1)+(2)、還元レベル3は(1)+(2)+(3))を、原排出者(CO排出施設20)に応じて選択することでもよい。たとえば、原排出者から将来も安定的に受け入れが可能である場合、あるいは、受け入れるCOの純度が高い場合には、還元レベルを上げるとしてもよい。なお、還元利益Grおよび還元利益Grは、CO資源化推進のための投資と位置付けてもよい。
【0072】
還元レベルおよび後述するそれぞれの還元利益Gr[円](j=1~3)の算出のためのパラメータは、外部入力として外部入力受入れ部112が受け入れ、外部入力記憶部134が収納、記憶する。
【0073】
以下では、それぞれの利益について、還元利益算出部124が行う算出内容について説明する。なお、還元利益算出部124により算出された結果は、利益記憶部133が収納、記憶する、
【0074】
図5は、第2の実施形態に係るCO資源化推進装置100aの還元利益算出部124による第1の還元利益Grを説明するグラフである。横軸は、排出権購入利益G[円]であり、縦軸は各種利益[円]である。
【0075】
直線Aは、傾きが1の横軸と同じ値を与える直線である。すなわち、直線Aは、排出権購入利益G[円]の値である。
【0076】
外部入力受入れ部112は、固定分利益G10[円]および還元率rを外部入力として受け入れる。外部入力記憶部134は、これらの情報を収納、記憶する。
【0077】
還元利益算出部124は、次の式(5)により、還元利益Gr[円]を算出する。
Gr=(G-G10)×r ・・・(5)
ここで、還元率rは、購入利益Gから固定分利益G10を減じた値G11に対する還元利益Grの割合である。
【0078】
固定分利益G10[円]の値はゼロでもよい。また、還元率rは、排出権取引市場40からのCO排出権の購入に係るものなので、たとえば原排出者と折半とするならば、0.5となる。
【0079】
図6は、第2の実施形態に係るCO資源化推進装置100aの還元利益算出部124による第2の還元利益Grを説明するグラフである。
【0080】
直線Bは、傾きが1の横軸と同じ値を与える直線である。すなわち、直線Bは、受け入れ利益G[円]の値である。
【0081】
外部入力受入れ部112は、固定分利益G20[円]および還元率rを外部入力として受け入れる。外部入力記憶部134は、これらの情報を収納、記憶する。
【0082】
還元利益算出部124は、次の式(6)により、還元利益Gr[円]を算出する。
Gr=(G-G20)×r ・・・(6)
ここで、還元率rは、受け入れ利益Gから固定分利益G20を減じた値G21に対する還元利益Grの割合である。固定分利益G20[円]の値はゼロであってもよい。
【0083】
第3の販売利益G[円]についても、還元利益Gr[円]の導出と同様の方法でよい。したがって、説明は省略する。
【0084】
図7は、第2の実施形態に係るCO資源化推進方法の手順を示すフロー図である。以下では、第1の実施形態に加えられる部分についてのみ説明する。
【0085】
まず、利益算出部122aが、受け入れ利益G[円]および販売利益G[円]をさらに算出し、還元利益をそれぞれ算出する。(ステップS31)。詳細には、次のとおりである。CO排出施設20からのCO出荷(ステップS01)、CO還元再生システム10によるCO受け入れ(ステップS02)の際に、受け入れ代金の授受が行われる。また、需要者が化成品を購入(ステップS06)し、需要者による代金支払い(ステップS07)、CO還元再生システムによる代金受領(ステップS08)が行われる。これらの内容に基づいて、利益算出部122aが、受け入れ利益G[円]および販売利益G[円]をそれぞれ算出する。算出された結果は、利益記憶部133に収納、記憶される。
【0086】
還元利益付与部180は、還元レベルに応じて、利益記憶部133に収納された情報に基づいて、原排出者に還元利益Grjを、電子情報の形で付与する(ステップS32)。CO排出施設20(原排出者)は、還元利益を受領する(ステップS33)。
【0087】
このように、本実施形態においては、原排出者(CO排出施設20)にとって、CO還元再生システム10が得た利益の一部を取得できることから、CO還元再生システム10にCOの処理を依頼する動機づけがさらになされることになる。また、CO還元再生システム10にとっても、原料となるCOの確保をより確実にすることができる。
【0088】
この結果、COの資源化の流れがさらに加速され、カーボンリサイクルの輪が強まることになる。
【0089】
以上、説明した実施形態によれば、カーボンリサイクルを推進するCO資源化推進装置およびCO資源化推進方法を提供することが可能となる。
【0090】
[その他の実施形態]
【0091】
以上、本発明の実施形態を説明したが、実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。また、各実施形態の特徴を組み合わせてもよい。さらに、実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0092】
10…CO還元再生システム、10a…CO還元再生装置、11…CO電解装置、12…化学合成装置、13…再生可能エネルギー装置、14…HO電解装置、20…CO排出施設、25…CO分離・回収施設、30…需要施設、40…排出権取引市場、100、100a…CO資源化推進装置、111…情報取得部、112…外部入力受入れ部、120、120a…演算部、121…約定設定部、122、122a…利益算出部、123…購入判定部、124…還元利益算出部、130、130a…記憶部、131…約定情報記憶部、132…排出権記憶部、133…利益記憶部、134…外部入力記憶部、140…出力部、150…約定部、160…排出権購入部、170…排出権引き渡し部、180…還元利益付与部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8