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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126500
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】移動通信ネットワーク
(51)【国際特許分類】
   H04W 24/04 20090101AFI20240912BHJP
   H04W 8/06 20090101ALI20240912BHJP
【FI】
H04W24/04
H04W8/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034899
(22)【出願日】2023-03-07
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、国立研究開発法人情報通信研究機構、「革新的情報通信技術研究開発委託研究/Beyond5Gに向けたテラヘルツ帯を活用した端末拡張型無線通信システム実現のための研究開発 研究開発項目 3 端末拡張型無線通信システム構築・制御技術 副題:Beyond 5Gに向けたテラヘルツ帯を活用するユーザセントリックアーキテクチャ実現に関する研究開発」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】倉田 真之
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 理基
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 陽登
(72)【発明者】
【氏名】伊神 皓生
(72)【発明者】
【氏名】塚本 優
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA33
5K067DD57
5K067EE02
5K067EE10
5K067EE16
5K067HH22
5K067JJ61
(57)【要約】
【課題】NFの障害による影響を抑える技術を提供する。
【解決手段】移動通信ネットワークは、無線デバイスから前記移動通信ネットワークへの登録を要求する登録要求メッセージを受信すると、登録要求メッセージに含まれる識別情報に基づき、識別情報に関連付けられたコンポーネントが移動通信ネットワークの計算機群に生成されているかを判定する判定手段と、判定手段が、識別情報に関連付けられたコンポーネントが移動通信ネットワークの計算機群に生成されていないと判定した場合、識別情報に関連付けられたコンポーネントを移動通信ネットワークの計算機群に生成する処理を行う処理手段と、を備え、識別情報に関連付けられたコンポーネントは、識別情報を使用する1つ以上の無線デバイスに専用の1つ以上のNFを有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動通信ネットワークであって、
無線デバイスから前記移動通信ネットワークへの登録又は接続を要求する第1要求メッセージを受信すると、前記第1要求メッセージに含まれる識別情報に基づき、前記識別情報に関連付けられたコンポーネントが前記移動通信ネットワークの計算機群に生成されているかを判定する判定手段と、
前記判定手段が、前記識別情報に関連付けられた前記コンポーネントが前記移動通信ネットワークの前記計算機群に生成されていないと判定した場合、前記識別情報に関連付けられた前記コンポーネントを前記移動通信ネットワークの前記計算機群に生成する処理を行う処理手段と、
を備え、
前記識別情報に関連付けられた前記コンポーネントは、前記識別情報を使用する1つ以上の無線デバイスに専用の1つ以上のネットワーク機能を有する、移動通信ネットワーク。
【請求項2】
前記判定手段は、前記識別情報に関連付けられた前記コンポーネントが前記移動通信ネットワークの前記計算機群に生成されていると判定した場合、前記識別情報に関連付けられた前記コンポーネントに前記第1要求メッセージを出力する、請求項1に記載の移動通信ネットワーク。
【請求項3】
前記無線デバイスから第2要求メッセージを受信すると、前記処理手段は、前記第2要求メッセージに含まれる前記識別情報に関連付けられた前記コンポーネントを前記計算機群から削除する処理を行う、請求項1に記載の移動通信ネットワーク。
【請求項4】
前記識別情報に関連付けられた前記コンポーネントは、前記識別情報を使用する前記1つ以上の無線デバイスのステート情報を格納する格納手段をさらに有し、前記識別情報に関連付けられた前記コンポーネントの前記1つ以上のネットワーク機能は、前記ステート情報を保持しない、請求項1に記載の移動通信ネットワーク。
【請求項5】
前記識別情報に関連付けられた前記コンポーネントの前記1つ以上のネットワーク機能は、前記格納手段が格納する前記ステート情報を参照し、前記1つ以上の無線デバイスのステートが変化した場合、前記格納手段に格納された前記ステート情報を更新する、請求項4に記載の移動通信ネットワーク。
【請求項6】
前記判定手段及び前記処理手段は、前記計算機群に実装される、請求項1に記載の移動通信ネットワーク。
【請求項7】
前記計算機群は、無線信号の送受信を行う無線ユニット(RU)を介して前記無線デバイスから前記第1要求メッセージを受信する、請求項6に記載の移動通信ネットワーク。
【請求項8】
前記1つ以上のネットワーク機能は、分散ユニット(DU)、中央ユニット(CU)、ユーザプレーン機能(UPF)、アクセス及びモビリティ機能(AMF)及びセッション管理機能(SMF)の内の1つ以上である、請求項1から7のいずれか1項に記載の移動通信ネットワーク。
【請求項9】
前記1つ以上のネットワーク機能は、前記AMFを含み、
前記1つ以上のネットワーク機能の内の前記AMFとは異なるネットワーク機能は、制御プレーンのメッセージを送受信する際、当該メッセージの中継のためのみに前記AMFを使用しない、請求項8に記載の移動通信ネットワーク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、仮想化技術を用いた移動通信ネットワークに関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1は、第5世代(5G)の移動通信ネットワークを開示している。例えば、5Gの移動通信ネットワークは、コアネットワーク(CN)と、無線アクセスネットワーク(RAN)と、を有する。コアネットワーク(CN)は、様々なネットワーク機能(NF)を含む。NFの一例は、モビリティを管理するアクセス及びモビリティ機能(AMF)や、セッションを管理するセッション管理機能(SMF)や、ユーザが送受信するデータを中継するユーザプレーン機能(UPF)である。CNの各NFは、例えば、1つ以上のセントラルサイトに配置される。
【0003】
セントラルサイトは、1つ以上のエッジサイトに接続され得る。エッジサイトには、RANの構成要素である分散ユニット(DU)や、中央ユニット(CU)が配置される。エッジサイトは、1つ以上のアンテナサイトに接続される。アンテナサイトには、RANの構成要素である無線ユニット(RU)が配置される。なお、エッジサイトは、アンテナサイトを包含し得る。つまり、エッジサイトが接続する1つ以上のアンテナサイトの内の1つのアンテナサイトは、当該エッジサイトと同じサイトであり得る。
【0004】
5Gの移動通信ネットワークは、制御プレーン(CP)と、ユーザプレーン(UP)との分離を図っている。例えば、AMF及びSMFは、CPの機能であり、UPFは、UPの機能である。これに応じて、CUもCPの機能である(CU-CP)とUPの機能である(CU-UP)に分離される。同様に、DUもCPの機能である(DU-CP)とUPの機能である(DU-UP)に分離される。
【0005】
ユーザ装置(UE)やIoTデバイス等の無線デバイス(WD)が、例えば、インターネット上のサーバに送信するIPパケットは、RU、DU-UP及びCU-UPに送られ、CU-UPにおいて、GTPパケットにカプセル化される。GTPパケットは、PDUセッションに従って転送されてインターネットとの接続点にあるUPFに到達する。インターネットとの接続点にあるUPFは、GTPパケットに含まれるIPパケットをインターネットに送信する。SMFは、PDUセッションの確立処理等を行う。
【0006】
無線信号を送受信するRUを除く、各NFや、CU及びDUは、仮想化技術により構成され得る。つまり、ハードウェアとしては汎用の複数のコンピュータ(以下、計算機群と表記する。)をセントラルサイトやエッジサイトに配置し、計算機群において、ソフトウェア的に各NFや、CU及びDUを実現することができる。これにより、移動通信システムの状態に応じて、個々のNFや、CU及びDUに割り当てる計算機リソースを増減させたり、提供するサービスに応じてCU及びDUや、NFの数を増減させたりすることが可能になる。CU及びDUについては、NFと名付けられていないが、以下の説明においては、仮想化技術により実現可能なCU及びDUもNFの種類の1つとする。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】"5G System Overview",[online],2022年8月8日,[令和5年1月20日検索],インターネット,<URL:https://www.3gpp.org/technologies/5g-system-overview>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
移動通信ネットワークの各NFは、複数のWDにより共用され、よって、NFの障害により多くのWDに影響が生じる。
【0009】
本開示は、NFの障害による影響を抑える技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の一態様によると、移動通信ネットワークは、無線デバイスから前記移動通信ネットワークへの登録を要求する登録要求メッセージを受信すると、前記登録要求メッセージに含まれる識別情報に基づき、前記識別情報に関連付けられたコンポーネントが前記移動通信ネットワークの計算機群に生成されているかを判定する判定手段と、前記判定手段が、前記識別情報に関連付けられた前記コンポーネントが前記移動通信ネットワークの前記計算機群に生成されていないと判定した場合、前記識別情報に関連付けられた前記コンポーネントを前記移動通信ネットワークの前記計算機群に生成する処理を行う処理手段と、を備え、前記識別情報に関連付けられた前記コンポーネントは、前記識別情報を使用する1つ以上の無線デバイスに専用の1つ以上のネットワーク機能を有する。
【発明の効果】
【0011】
本開示によると、NFの障害による影響を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】一実施形態による、移動通信システムの構成図。
図2】一実施形態による、コンポーネントが生成されていない場合の登録処理のシーケンス図。
図3】一実施形態による、コンポーネントが生成されている場合の登録処理のシーケンス図。
図4】一実施形態による、コンポーネントの削除処理のシーケンス図。
図5】一実施形態による、PDUセッションの確立処理のシーケンス図。
図6】一実施形態による、移動通信ネットワークの構成図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0014】
図1は、本実施形態による、WD1と移動通信ネットワークとを含む移動通信システムの構成図である。セントラルサイト4は、1つ以上のエッジサイト3を収容し、1つのエッジサイト3は、1つ以上のアンテナサイトを収容する。アンテナサイトには、RU2が配置され、WD1と無線信号の送受信を行う。エッジサイト3には、コントローラ31と、計算機群32と、転送部33と、が配置される。なお、図1では、本実施形態の理解を容易にするため、コントローラ31及び転送部33を計算機群32とは異なるものとして示しているが、コントローラ31及び転送部33は、計算機群32によってソフトウェア的に実装され得る。
【0015】
セントラルサイト4には、コントローラ41と、計算機群42と、転送部43と、管理データベース(DB)44と、が配置される。コントローラ41及び転送部43は、コントローラ31及び、転送部33と同様の機能を有する。なお、図1では、本実施形態の理解を容易にするため、コントローラ41、転送部43及び管理DB44を計算機群42とは異なるものとして示しているが、これらも、計算機群42によってソフトウェア的に実装され得る。
【0016】
本実施形態では、WD1又はWD1のグループ毎に"コンポーネント"を作成する。コンポーネントとは、WD1にサービス提供をするために必要な各種別のNFのセットであり、計算機群32や計算機群42上にソフトウェア的に実現される。以下では、個々のWD1のコンポーネントを作成する場合を例にして説明する。なお、WD1のグループのコンポーネントの場合、以下の説明における"識別情報"は、個々のWD1の識別情報ではなく、WD1のグループに対して付与された識別情報となる。
【0017】
図2は、WD1のコンポーネントが作成されていない状態において、WD1が移動通信ネットワーク42への登録を要求する場合のシーケンス図である。なお、RU2は、WD1とエッジサイト3の計算機群32との間で信号を中継するのみであるため、図2ではRU2を省略している。WD1は、S1で、WD1の識別情報を含む登録要求メッセージを送信する。識別情報は、例えば、SUPI(Subscription Permanent Identifier)である。登録要求メッセージは、計算機群32内において、転送部33に入力される。転送部33は、識別情報と計算機群32に生成されているコンポーネントとの関係を示す情報を保持している。本例において、WD1のコンポーネントは生成されていないため、転送部33は、登録要求メッセージに含まれる識別情報を管理していない。この場合、転送部33は、S2で、登録要求メッセージをコントローラ31に転送する。
【0018】
コントローラ31は、登録要求メッセージの受信に応答して、S3で、セントラルサイト4の管理DB44にコンポーネント情報要求メッセージを送信する。コンポーネント情報要求メッセージは、WD1の識別情報を含む。管理DB44は、識別情報と、コンポーネントに含めるNFとの関係を示すコンポーネント情報を保持している。管理DB44は、WD1の認証機能も有する。管理DB44は、WD1の認証が成功すると、S4で、WD1のコンポーネント情報をコントローラ31に送信する。
【0019】
コントローラ31は、受信したコンポーネント情報に従い、S5において、WD1のコンポーネントを計算機群32に生成する。図2によると、WD1のコンポーネントは、DU、CU、UPF、SMF、AMF及び状態管理部(状態管理機能)を有する。なお、DUは、DU-CP及びDU-UPの総称であり、CUは、CU-CP及びCU-UPの総称である。状態管理部は、従来、AMFやSMF等の各NFが個別に管理しているWD1のステート情報を一元的に管理する。ステート情報は、例えば、UEコンテキストや、SMコンテキストの形式であり得る。S5において、WD1のコンポーネントが生成された際、状態管理部は、WD1のステート情報の初期値を有する。初期値は、例えば、前回、WD1のコンポーネントを削除した際のWD1のステート情報の一部又は全部であり得る。初期値は、後述する様に管理DB44に格納されており、S4でコントローラ1が受信するコンポーネント情報に含まれている。以下の説明においては、他のものであることが明記されていない限り、"コンポーネント"とは、WD1のコンポーネントを示すものとする。
【0020】
S6において、コントローラ31は、コンポーネントのDUを介してCUに登録要求メッセージを送信する。WD1の登録に伴い、コンポーネントのCU(CU-CP)は、S7で、状態管理部に格納されているWD1のステート情報、例えば、UEコンテキストを更新する。WD1のステート情報を更新すると、コンポーネントのCUは、S8で、DUを介して、コントローラ31に登録応答メッセージを送信する。この登録応答メッセージは、転送部33を介してWD1に送信される。なお、転送部33は、登録応答メッセージの受信に応答して、WD1の識別情報とコンポーネントとの関係を示す情報を格納する。
【0021】
図3は、WD1のコンポーネントが作成されている状態において、WD1が移動通信ネットワーク42への登録を要求する場合のシーケンス図である。図3の処理は、例えば、WD1のコンポーネントが作成された後、WD1が接続状態からアイドル状態等の他の状態に遷移し、その後、再度、移動通信システムに接続する場合等に行われ得る。WD1は、S10で、WD1の識別情報を含む登録要求メッセージを送信する。登録要求メッセージは、図2と同様に転送部33に入力される。転送部33は、WD1の識別情報を保持しているため、S11で、登録要求メッセージを、コンポーネントのDUを介してCUに送信する。
【0022】
WD1の登録に伴い、コンポーネントのCUは、S12で、状態管理部に格納されているWD1のステート情報、例えば、UEコンテキストを更新する。WD1のステート情報を更新すると、コンポーネントのCUは、S13で、DU及び転送部33を介してWD1に登録応答メッセージを送信する。なお、コンポーネントのCU(CU-CP)は、S12でステート情報を更新する前に、管理DB44にWD1の識別情報を送信してWD1の認証を行う構成とし得る。
【0023】
図2のS1や図3のS10の前に実行され得るランダムアクセス手順は、WD1のコンポーネントが作成されているか否かに拘わらず、コントローラ31によって処理される。つまり、転送部33は、WD1からRU2を介して受信するランダムアクセス手順の信号についてはコントローラ31に出力する。
【0024】
図4は、WD1がコンポーネントを削除する処理のシーケンス図である。WD1は、S20で、WD1の識別情報を含む終了要求(削除要求)メッセージを送信する。終了要求メッセージは、計算機群32内において、転送部33に入力される。転送部33は、WD1の識別情報を保持しているため、S21で、終了要求メッセージをWD1のコンポーネントのDUを介してCUに送信する。
【0025】
終了要求メッセージを受信すると、コンポーネントのCU(CU-CP)は、S22で、状態管理部からWD1のステート情報を取得し、S23で、ステート情報を管理DB44に格納するステート格納処理を行う。管理DB44に格納するステート情報は、例えば、3GPP(登録商標)の規格において保持しておくことが規定されているステート情報であり得る。また、CUが状態管理部からステート情報を取得して管理DB44に格納するのではなく、CUが状態管理部にステート格納処理の実行を指示し、状態管理部がステート格納処理を行う構成であっても良い。
【0026】
ステート格納処理が完了すると、コンポーネントのCUは、S24で、終了応答メッセージをコントローラ31に送信する。終了応答メッセージは、WD1の識別情報を含む。終了応答メッセージに応答して、コントローラ31は、WD1のコンポーネントを削除する。WD1のコンポーネントを削除すると、コントローラ31は、S26で転送部33を介してWD1に終了応答メッセージを送信する。また、転送部33は、終了応答メッセージに応答して、WD1の識別情報とコンポーネントとの関係を示す情報を削除する。
【0027】
なお、コンポーネントの削除は、WD1が移動通信ネットワークに対して明示的に要求した場合に実行されるのみならず、ネットワークが管理するタイマにより行う構成とすることもできる。例えば、WD1がアイドル状態に遷移した後、WD1が再度接続状態になることなく所定期間が経過すると、コントローラ31がWD1のコンポーネントを削除する構成とし得る。
【0028】
また、図2では、WD1のコンポーネントが作成されている状態において、WD1が移動通信ネットワーク42への登録を要求する場合のシーケンスを説明した。ここで、図4を用いて説明した様に、WD1のコンポーネントは、WD1による明示的な処理や、タイマの満了等により削除される。タイマの満了までの時間もWD1にとって既知であるため、WD1は、WD1のコンポーネントが移動通信ネットワークに維持されているか否かを判定できる。したがって、図2の処理は、例えば、移動通信ネットワークへの登録処理ではなく、例えば、再接続処理と読み替えることもできる。この場合、WD1は、S10で、登録要求メッセージではなく、再接続のためのメッセージを送信する構成とし得る。再接続のためのメッセージもWD1の識別情報を含む。
【0029】
図5は、WD1に対するPDUセッション確立処理のシーケンス図である。PDUセッションの確立は、図2図3に示す登録処理を行った後に実行される。なお、WD1のコンポーネントが生成されているため、WD1が送信する制御信号は、RU2、転送部33及びコンポーネントのCU-CPを介して他のNFに転送される。図5では、図の簡略化のため、RU2、転送部33及びCU-CPについては省略している。
【0030】
S30で、WD1は、PDUセッション確立要求メッセージを送信する。PDUセッション確立要求メッセージは、CU-CPを介してAMFに転送される。AMFは、S31で、PDUセッションの確立処理を行うSMFを選択し、S32において、選択したSMFにPDUセッションの確立を指示する。SMFは、S33で、状態管理部に格納されているWD1のステート情報、例えば、SMコンテキストを更新する。SMFは、S34で、PDUセッションの経路にあるUPFを選択し、S35において、UPFにPDUセッションの確立を指示する。SMFは、PDUセッションの確立が完了すると、S36で、状態管理部に格納されているWD1のステート情報、例えば、SMコンテキストを更新する。状態管理部に格納されているWD1のステート情報を更新した後、SMFは、S37で、CU-CPを介して、PDUセッション確立応答メッセージをWD1に送信する。
【0031】
従来、各NFが個別のステート情報を管理していたため、ステート情報の更新の際、NF間でステート情報の送受信を行う必要があった。例えば、図5の処理で説明すると、S33の処理の代わりに、AMFとSMFとの間でステート情報の送受信を行っていた。同様に、S36の処理の代わりに、AMFとSMFとの間でステート情報の送受信を行っていた。本実施形態では、WD1のステート情報を、状態管理部で一元管理するため、NF間でステート情報の送受信を行う必要がなく、各NFの処理負荷を低減させることができる。
【0032】
また、処理負荷の増減に対処するためにNFのスケールアウトやスケールインが行われる。NFがステート情報を管理していると、ステート情報を維持しつつスケールアウトさせなければならないが、ステート情報を維持しつつスケールアウトさせることは難しい。一方、本実施形態では、WD1のステート情報を状態管理部で一元管理するため、NFのスケールアウトが容易になる。
【0033】
また、従来、WD1は、コアネットワーク内のCPのNFとしては、AMFとのみ制御信号の送受信を行い、例えば、SMF等とは直接制御信号の送受信を行っていなかった。本実施形態では、S37において、SMFは、AMFを介することなく、WD1に制御信号を送信している。この様に、AMFを、制御信号の単なる中継機能として使用しないことで、AMFの処理負荷を抑えることができる。また、WD1やWD1のグループに関してNF間で送受信される制御信号は、基本的にはコンポーネント内で送受信される。したがって、制御信号の送受信によるCPの輻輳を回避できる。
【0034】
また、各WD1や、WD1の各グループに対して生成されるコンポーネントに含められるNFの種別や、各種別のNFの数は、WD1やグループ毎に異なり得る。また、1つのNFの機能を複数に分割し、WD1やグループのコンポーネントに含めるNFの機能の組み合わせを異ならせる構成とすることもできる。例えば、AMFが行う機能の1つは、WD1の位置管理(モビリティ管理)である。したがって、WD1が、所定位置に固定的に設置されたIoTデバイス等である場合、当該IoTデバイスのコンポーネントのAMFには、位置管理の機能を設けない構成とすることができる。
【0035】
また、上記実施形態では、コンポーネントをエッジサイト3の計算機群32に生成していた。しかしながら、コンポーネントをセントラルサイト4の計算機群42に生成する構成とすることもできる。例えば、基本的には、コンポーネントをエッジサイト3の計算機群32に生成し、計算機群32のリソース不足によりコンポーネントをエッジサイト3の計算機群32に生成できない場合、コンポーネントをセントラルサイト4の計算機群42に生成する構成とし得る。コンポーネントをエッジサイト3の計算機群32に生成できない場合、エッジサイト3のコントローラ31は、セントラルサイト4のコントローラ41に、図2のS2で受信した登録要求メッセージを転送する。なお、WD1やグループに優先度が設けられ、優先度の高いWD1等のコンポーネントを生成するためのリソースがエッジサイト3の計算機群32にない場合、より優先度の低い既存のコンポーネントをセントラルサイト4に移すことで、優先度の高いコンポーネントをエッジサイト3の計算機群32に生成する構成とし得る。さらに、コンポーネントに含まれる複数のNFの内の一部をエッジサイト3の計算機群32に生成し、残りのNFをセントラルサイト4の計算機群42に生成する構成とすることもできる。
【0036】
<まとめ>
図6は、本実施形態による移動通信ネットワーク500の構成図である。移動通信ネットワークは、計算機群5と、計算機群5に接続される1つ以上のRU2と、を有する。計算機群5は、図1のエッジサイトの計算機群32と、セントラルサイトの計算機群42の総称である。つまり、計算機群5は、移動通信ネットワーク500の様々なサイトに設けられた1つ以上のコンピュータの総称である。
【0037】
計算機群5には、判定部51及び処理部52がソフトウェア的に実現される。判定部51は、図1の転送部33及び転送部43の総称であり、例えば、移動通信ネットワーク500の各サイトに設けられる。処理部52は、図1のコントローラ31及びコントローラ41の総称であり、例えば、移動通信ネットワーク500の各サイトに設けられる。管理DB53は、図1の管理DB44に対応する。管理DB44も、複数のサイトに設けられ得る。コンポーネント群54は、WD1や、WD1のグループに対して専用に設けられるコンポーネントの総称である。
【0038】
判定部51は、WD1からRU2を介して移動通信ネットワーク500への登録又は再接続を要求する第1要求メッセージを受信すると、第1要求メッセージに含まれる識別情報に基づき、識別情報に関連付けられたコンポーネントが計算機群5に生成されているかを判定する。判定部51は、識別情報に関連付けられたコンポーネントが移動通信ネットワーク500の計算機群5に生成されていると判定した場合、識別情報に関連付けられたコンポーネントに第1要求メッセージを出力する。
【0039】
一方、識別情報に関連付けられたコンポーネントが移動通信ネットワーク500の計算機群5に生成されていないと判定した場合、処理部52は、識別情報に関連付けられたコンポーネントを移動通信ネットワーク500の計算機群5に生成する処理を行う。なお、どの様なNFをコンポーネントに含めるかと、状態管理部に格納するステート情報の初期値は、管理DB53がコンポーネント情報として格納している。つまり、処理部52は、管理DB53が保持している、識別情報毎のコンポーネント情報に従いコンポーネントを生成する。
【0040】
また、処理部52は、WD1からコンポーネントの削除を要求する第2要求メッセージを受信すると、第2要求メッセージに含まれる識別情報に関連付けられたコンポーネントを計算機群5から削除する処理を行う。
【0041】
この様に、WD1又はWD1のグループ毎に専用のNFを生成することで、NFの障害時に、影響を受けるWD1の数を抑えることが可能になる。
【0042】
また、上述した様に、識別情報に関連付けられたコンポーネントは状態管理部を有し、状態管理部は、当該識別情報を使用するWD1のステート情報を一元的に管理する。したがって、識別情報に関連付けられたコンポーネントの(状態管理部以外の)NFは、ステート情報を保持しない。そして、NFは、状態管理部が格納するステート情報を参照し、WD1のステートが変化した場合、状態管理部に格納されたステート情報を更新する。この様に、ステート情報を状態管理部において一元的に管理することで、NFの処理負荷を抑えることができ、かつ、NFのスケールアウトを容易に行える様にすることができる。
【0043】
また、コンポーネントのAMFとは異なるNFは、制御プレーンのメッセージを送受信する際、当該メッセージの中継のためのみにAMFを使用しない。この構成により、AMFの処理負荷を抑えることができる。
【0044】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【0045】
以上の構成により、NFの障害による影響を抑えることができる。したがって、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「レジリエントなインフラを整備し、持続可能な産業化を推進するとともに、イノベーションの拡大を図る」に貢献することが可能となる。
【符号の説明】
【0046】
500:移動通信ネットワーク、5:計算機群、51:判定部、52:処理部、54:コンポーネント群
図1
図2
図3
図4
図5
図6