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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126515
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】車体前部構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/20 20060101AFI20240912BHJP
   B62D 25/08 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
B62D25/20 C
B62D25/08 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034924
(22)【出願日】2023-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】弁理士法人イトーシン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】勝山 博之
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203AA02
3D203BB12
3D203BB16
3D203BB20
3D203BB35
3D203BB43
3D203BB54
3D203BC14
3D203CA04
3D203CA75
3D203CB13
3D203DA72
3D203DA76
(57)【要約】
【課題】サスペンション装置の取付位置が異なる複数種類の車両に対してフロントサイドフレーム、及び、サスペンションタワーの共用化を実現することができる車体前部構造を提供する。
【解決手段】車幅方向に配置され、車体前後方向に延在する一対のフロントサイドフレーム5と、一対のフロントサイドフレーム5の車幅方向外側において、サスペンション装置25の上部を支持する一対のサスペンションタワー7と、を備える車体前部構造であって、フロントサイドフレーム5に形成され、サスペンションタワー7に向けて車幅方向外側上方に向けて傾斜する接合フランジ15eと、サスペンションタワー7の下端部に形成され、接合フランジ15eに対して、異なる2以上の固定位置にて選択的に固定可能な位置決めフランジ7fと、を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車幅方向に配置され、車体前後方向に延在する一対のフロントサイドフレームと、
一対の前記フロントサイドフレームの車幅方向外側において、サスペンション装置の上部を支持する一対のサスペンションタワーと、を備える車体前部構造であって、
前記フロントサイドフレームに形成され、前記サスペンションタワーに向けて車幅方向外側上方に向けて傾斜する接合フランジと、
前記サスペンションタワーの下端部に形成され、前記接合フランジに対して、異なる2以上の固定位置にて選択的に固定可能な位置決めフランジと、を有することを特徴とする車体前部構造。
【請求項2】
前記位置決めフランジは、前記接合フランジに対する前記固定位置を、車体の3軸方向に調整可能であることを特徴とする請求項1に記載の車体前部構造。
【請求項3】
前記フロントサイドフレームは、フロントサイドフレーム本体と、前記フロントサイドフレーム本体の前端に接合されたエクステンションフレームと、を備え、
前記フロントサイドフレーム本体は、長さの異なる前記エクステンションフレームを選択的に接合可能であることを特徴とする請求項1に記載の車体前部構造。
【請求項4】
前記フロントサイドフレーム本体、及び、前記サスペンションタワーは、アルミダイカストにて成型されたことを特徴とする請求項3に記載の車体前部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サスペンション装置を支持するサスペンションタワー、及び、サスペンションタワー周辺部の車体前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車体前部のエンジンルームの内部には、トーボードの下側から、車体前方へ延出する左右一対のフロントサイドフレームが配設されている。この各フロントサイドフレームの車幅方向外側には、カウルトップからエンジンルームの両側に沿って車体前方へ延出するアッパサイドフレームが配設されている。
【0003】
各フロントサイドフレームと、各アッパサイドフレームとの間には、サスペンション装置のダンパ機構の上部を支持するサスペンションタワーが設けられている。
【0004】
サスペンションタワーは、フロントサイドフレーム、及びアッパサイドフレームに対し、固定されている。
【0005】
フロントサイドフレームに対するサスペンションタワーの固定構造として、従来様々な技術が提案されている。例えば、特許文献1(特開2015-85801号公報)には、サスペンションタワーにフロントサイドメンバ構成部を一体に成形することにより、サスペンションタワーをフロントサイドメンバ(フロントサイドフレーム)に固定する車体前部構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015-85801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示された構造のように、サスペンションタワーがフロントサイドフレームの一部と一体に成形された場合、フロントサイドフレームに対するサスペンションタワーの位置は、所定の位置に固定される。このような構造の場合、例えば、車両のサスペンション装置の取付位置が異なる種々の車種に対しては、フロントサイドフレーム、及び、サスペンションタワーを共用することができない。このため、特許文献1の技術では、少なくともサスペンション装置の取付部とフロントサイドフレームの位置関係が同一となる車種毎に専用のフロントサイドフレーム、及び、サスペンションタワーが必要となる。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、サスペンション装置の取付位置が異なる複数種類の車両に対してフロントサイドフレーム、及び、サスペンションタワーの共用化を実現することができる車体前部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様による車体前部構造は、車幅方向に配置され、車体前後方向に延在する一対のフロントサイドフレームと、一対のフロントサイドフレームの車幅方向外側において、サスペンション装置の上部を支持する一対のサスペンションタワーと、を備える車体前部構造であって、フロントサイドフレームに形成され、サスペンションタワーに向けて車幅方向外側上方に向けて傾斜する接合フランジと、サスペンションタワーの下端部に形成され、接合フランジに対して、異なる2以上の固定位置にて選択的に固定可能な位置決めフランジと、を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の車体前部構造によれば、サスペンション装置の取付位置が異なる複数種類の車両に対してフロントサイドフレーム、及び、サスペンションタワーの共用化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】車体前部のフレーム構造を示す斜視図
図2図1のII-II断面図
図3】フロントサイドフレーム構造を示す斜視図
図4】サスペンションタワーの拡大図
図5】サスペンションタワーの固定位置を車体前後方向に変位させた状態を示す説明図
図6】サスペンションタワーの固定位置を車幅方向、及び、車体上下方向に変位させた状態を示す説明図
図7】変形例に係り、サスペンションタワー、及び、フロントサイドフレームを示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下図面を参照して本発明の形態を説明する。
【0013】
なお、以下の説明に用いる図においては、各構成要素を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、構成要素毎に縮尺を異ならせてあるものである。したがって、本発明は、これらの図に記載された構成要素の数量、構成要素の形状、構成要素の大きさの比率、および各構成要素の相対的な位置関係のみに限定されるのもではない。
【0014】
本実施形態における車体前部構造の一例として、フロントエンジンタイプ車両の車体前部の構成について説明する。なお、以下の説明において、「接合」と記載されている場合、その接合方法は、溶融接合、或いは、機械的接合等を代表とする接合手段を用いて行われるものとする。
【0015】
図1に示すように、車両1の車体2は、前部にエンジンルーム3を有する。
【0016】
エンジンルーム3は、トーボード4と、一対のフロントサイドフレーム5と、一対のアッパサイドフレーム6と、一対のサスペンションタワー7と、を有して構成されている。
【0017】
トーボード4は、キャビン8と、エンジンルーム3とを区画する隔壁として、車幅方向に延在している。トーボード4の車幅方向両端部は、車体2を構成する左右一対のフロントピラー9に接合されている。また、トーボード4の上端部は、トーボード4に沿って車幅方向に延在するバルクヘッド10に接合されている。
【0018】
一対のフロントサイドフレーム5は、トーボード4の車幅方向中央部よりも外側において、トーボード4の下側から、車体2の前方へ向けて延出されている。
【0019】
この各フロントサイドフレーム5は、複数のフレーム部材を連結して構成されている。
【0020】
具体的に説明すると、各フロントサイドフレーム5は、例えば、フロントサイドフレーム本体15と、エクステンションフレーム16と、を有している。
【0021】
なお、各フロントサイドフレーム5よりも車幅方向外側の基本構造は、左右対称となっている。このため、以下においては、一例として車体右側部について説明する。
【0022】
フロントサイドフレーム本体15は、図2に示すように、一対の側壁部15a,15bと、上壁部15cと、底壁部15dと、接合フランジ15eと、を有する。
【0023】
一対の側壁部15a,15bは、車幅方向に所定間隔を隔てた状態にて、互いに対向されている。
【0024】
上壁部15cと底壁部15dは、上下方向に所定間隔を隔てた状態にて、互いに対向されている。これら上壁部15cと底壁部15dは、側壁部15aと側壁部15bの上端部、及び、側壁部15aと側壁部15bの下端部の各々を連結している。
【0025】
これらにより、一対の側壁部15a,15b、上壁部15c、及び、底壁部15dは、断面矩形形状をなす閉断面を形成している。
【0026】
接合フランジ15eは、例えば、上壁部15cと側壁部15bの接続部から、車幅方向外側上方に傾斜した状態にて延出されている。
【0027】
このフロントサイドフレーム本体15の後端には、図3に示すように、トルクボックス17が設けられている。
【0028】
ここで、本実施形態のフロントサイドフレーム本体15とトルクボックス17とは、アルミダイカストによって、一体に成型されている。トルクボックス17は、例えば、断面矩形の閉断面を有する形状となっている。このトルクボックス17を介して、フロントサイドフレーム本体15の後端部は、サイドシル18の前端部、及びフロアサイドフレーム19の前端部に接合されている。なお、フロントサイドフレーム本体15とトルクボックス17とは、この例示の構成例に限られることなく、例えば、別体として各々成型した状態にて連結されていてもよい。
【0029】
エクステンションフレーム16は、例えば、矩形状の閉断面を有する。このエクステンションフレーム16は、例えば、アルミ押し出し成型によって形成されている。エクステンションフレーム16は、フロントサイドフレーム本体15の前端部に接合された状態において、フロントサイドフレーム本体15から車体2の前部へ延出されている。そして、エクステンションフレーム16の前端部は、図3に示すように、車幅方向に湾曲して延在するバンパビーム20に接合されている。
【0030】
ここで、エクステンションフレーム16は、例えば、車種毎に異なる長さに設定されている。これらのエクステンションフレーム16は、車種に応じて選択的にフロントサイドフレーム本体15に接合することが可能である。
【0031】
これらの構成により、車体前後方向に延在するフロントサイドフレーム5は、車両前部の衝突の際、衝突エネルギーを吸収しつつ、トルクボックス17を介してサイドシル18、及び、フロアサイドフレーム19にエネルギーを分散させるエネルギー吸収部材として機能する。
【0032】
一対のアッパサイドフレーム6は、図1に示すように、エンジンルーム3の車幅方向の両側に配置されている。アッパサイドフレーム6は、カウルトップ21からエンジンルーム3に沿って車体前方に延出されている。
【0033】
このアッパサイドフレーム6は、図2に示すように、例えば、断面L型形状をなしている。このアッパサイドフレーム6は、天板部6aと、側壁部6bと、を有する。
【0034】
天板部6aは、エンジンルーム3の開口部を閉塞するエンジンフード(図示せず)の対向する位置に配置されている。
【0035】
側壁部6bは、天板部6aの車幅方向内側の端部から下側に延出されている。
【0036】
一対のサスペンションタワー7は、アルミダイカストにて一体に成型されている。サスペンションタワー7は、フロントサイドフレーム5と、アッパサイドフレーム6との間に設けられている。
【0037】
サスペンションタワー7は、図2,4に示すように、天板部7aと、縦壁部7b,7c,7dと、位置決めフランジ7e,7fと、を有する。
【0038】
天板部7aは、エンジンフードに対向する位置に設けられている。天板部7aは、平面視形状が略矩形形状をなしている。
【0039】
天板部7aの略中心部には、サスペンション取り付け孔7gが形成されている。より具体的には、サスペンション取り付け孔7gは、天板部7aから上方に起立する略円形状の起立部7hによって形成されている。
【0040】
このサスペンション取り付け孔7gには、図2に示すように、サスペンション取り付け孔7gの下側からサスペンション装置25のショックアブソーバ26の上端部28を挿通することが可能となっている。これにより、サスペンション装置25の上部は、サスペンションタワー7に支持される。
【0041】
縦壁部7b,7c,7dは、天板部7aの車体前後縁部、及び車幅方向内側の縁部からそれぞれ下側に延出されている。
【0042】
位置決めフランジ7eは、天板部7aの車幅方向外側の縁部に設けられている。
【0043】
位置決めフランジ7fは、例えば、縦壁部7dの下端部から、車幅方向内側下方に傾斜した状態にて延出されている。位置決めフランジ7fは、フロントサイドフレーム本体15の接合フランジ15eに対し、上側から当接することが可能となっている。この状態において、位置決めフランジ7fは、接合フランジ15eと接合可能となっている。
【0044】
ここで、接合フランジ15eの位置決めフランジ7fとの当接面の面積は、接合フランジ15eと位置決めフランジ7fとを所定の接合強度にて接合するために必要な接合面積よりも広く設定されている。
【0045】
具体的には、図4に示すように、例えば、接合フランジ15eの前後方向の長さは、位置決めフランジ7fの前後方向の長さよりも長く設定されている。これにより、接合フランジ15eは、図5に示すように、サスペンションタワー7を車体の前後方向に変位させた場合にも、接合強度を低下させることなく、位置決めフランジ7fと接合することが可能となっている。
【0046】
また、図2に示すように、例えば、位置決めフランジ7fの延出方向の長さは、接合フランジ15eの延出方向の長さよりも長く設定されている。この位置決めフランジ7fの延出方向の長さは、図6に示すように、位置決めフランジ7fの延出端部7iを切断することにより、変更することが可能となっている。これにより、位置決めフランジ7fは、サスペンションタワー7を上下方向及び車幅方向に変位させた場合にも接合強度を低下させることなく、接合フランジ15eと接合することが可能となっている。
【0047】
これらにより、サスペンションタワー7の位置決めフランジ7fは、接合フランジ15eに対する固定位置を、車体2の3軸方向(車体前後方向、車幅方向、車体上下方向)に調整可能となっている。
【0048】
このように、構成されたサスペンションタワー7は、例えば、サスペンション装置25の取付位置が異なる複数種類の車両1に対して、共用することが可能となっている。
【0049】
サスペンションタワー7の接合に際し、フロントサイドフレーム本体15の接合フランジ15eには、サスペンションタワー7の位置決めフランジ7fが当接された状態にて接合される。このときの位置決めフランジ7fは、接合フランジ15eに対し、車種に応じて異なる固定位置にて固定される。
【0050】
すなわち、サスペンションタワー7の位置決めフランジ7fは、接合フランジ15eに設定された異なる2以上の固定位置の中から、車種に応じた固定位置に固定することが可能である。
【0051】
その結果、アッパサイドフレーム6の側壁部6bには、サスペンションタワー7の位置決めフランジ7eが当接される。そして、位置決めフランジ7eは、側壁部6bに対して接合される(図2参照)。
【0052】
また、フロントサイドフレーム本体15の前端部には、車種に応じた仕様のエクステンションフレーム16が選択的に接合される。
【0053】
これらにより、フロントサイドフレーム本体15、及び、サスペンションタワー7は、サスペンション装置25の取付位置が異なる複数種類の車両1に対して共用化することができる。
【0054】
このような実施形態によれば、車体前部構造は、車幅方向に配置され、車体前後方向に延在する一対のフロントサイドフレーム5と、一対のフロントサイドフレーム5の車幅方向外側において、サスペンション装置25の上部を支持する一対のサスペンションタワー7と、を備える車体前部構造であって、フロントサイドフレーム5に形成され、サスペンションタワー7に向けて車幅方向外側上方に向けて傾斜する接合フランジ15eと、サスペンションタワー7の下端部に形成され、接合フランジ15eに対して、異なる2以上の固定位置にて選択的に固定可能な位置決めフランジ7fと、を有する。これらの構成により、車体前部構造は、サスペンション装置25の取付位置が異なる複数種類の車両1に対してフロントサイドフレーム、及び、サスペンションタワーの共用化を実現することができる。
【0055】
すなわち、車体前部構造は、フロントサイドフレーム5に対し、車幅方向外側上方に向けて傾斜する接合フランジ15eを有する。また、車体前部構造は、サスペンションタワー7の下端部に位置決めフランジ7fを有する。そして、位置決めフランジ7fは、接合フランジ15eに対して、異なる2以上の固定位置に選択的に固定することができる。
【0056】
この位置決めフランジ7f、及び、接合フランジ15eの作用により、本実施形態の車体前部構造は、フロントサイドフレーム5に対し、サスペンションタワー7の固定位置を3軸方向に調整することができる。これにより、サスペンションタワー7は、サスペンション装置25の取付位置が異なる複数種類の車両1のフロントサイドフレーム5に対し、選択的に固定することができる。
【0057】
また、フロントサイドフレーム5は、フロントサイドフレーム本体15と、エクステンションフレーム16と、を有する。フロントサイドフレーム本体15の前端部には、車種毎に異なる長さのエクステンションフレーム16が接合される。これにより、フロントサイドフレーム本体15を共用化した場合にも、車種に応じたフロントサイドフレーム5の長さを確保することができる。
【0058】
これらの構成により、フロントサイドフレーム5のフロントサイドフレーム本体15は、サスペンション装置25の取付位置が異なる複数種類の車両1に対して、共用することができる。
【0059】
さらに、フロントサイドフレーム本体15とサスペンションタワー7の各々は、アルミダイカストにて成型されている。これにより、車体前部構造は、車両1の軽量化、及び、製造コストの抑制が可能となる。
【0060】
また、位置決めフランジ7f、及び、接合フランジ15eは、例えば、延出する長さ、延出する向き、車体前後方向の長さ等を変化させることにより、フロントサイドフレーム5に対するサスペンションタワー7の変位可能な領域を調整することができる。これにより、サスペンション装置25の取付位置が異なる複数種類の車両1に対して、フロントサイドフレーム、及び、サスペンションタワーの共用化をより高めることが可能となる。
【0061】
なお、接合フランジ15eは、上壁部15cと側壁部15bの接続部から延出する例を説明したが、上壁部15cと側壁部15aの接続部から延出しても適用することができる。
【0062】
図7には、フロントサイドフレーム5のフロントサイドフレーム本体15の変形例を示している。
【0063】
図7に示すように、フロントサイドフレーム本体30は、上壁部30aと、底壁部30bと、縦壁部30cと、接合フランジ30dと、を有する。なお、前述の実施形態と同様の構成については、説明を省略する。
【0064】
上壁部30aと、底壁部30bは、上下方向に所定間隔を隔てた状態にて、互いに対向されている。
【0065】
縦壁部30cは、上壁部30aの車幅方向の中途の位置から下側に延出されている。延出された縦壁部30cの下端部は、底壁部30bの車幅方向の中途の位置に接続されている。
【0066】
これらにより、上壁部30a、底壁部30b、及び、縦壁部30cは、断面H型形状をなす開断面を形成している。
【0067】
接合フランジ30dは、例えば、縦壁部30cの車体上下方向の中途の位置から車幅方向外側斜め上方に延出されている。延出された接合フランジ30dの端部は、上壁部30aの車幅方向外側の端部に接続されている。
【0068】
このような構成により、フロントサイドフレーム本体30の接合フランジ30dは、強度を確保しつつ、延在する長さを長く設定することが可能となっている。
【0069】
このフロントサイドフレーム本体30は、例えば、アルミ押し出し成型等によって形成されている。なお、フロントサイドフレーム本体30の後方には、例えば、アルミダイカストによって、成型されたトルクボックス17がブラケット等を介して接合することが可能である。さらに、フロントサイドフレーム本体30の前端部には、例えば、アルミ押し出し成型等によって形成されるエクステンションフレーム16がブラケット等を介して接合することが可能である
【0070】
ここで、接合フランジ30dの位置決めフランジ7fとの当接面の面積は、接合フランジ30dと位置決めフランジ7fとを所定の接合強度にて接合するために必要な接合面積よりも広く設定されている。
【0071】
具体的には、例えば、接合フランジ30dの前後方向の長さは、位置決めフランジ7fの前後方向の長さよりも長く設定されている。これにより、接合フランジ30dは、サスペンションタワー7を車体の前後方向に変位させた場合にも、接合強度を低下させることなく、位置決めフランジ7fと接合することが可能となっている。
【0072】
また、接合フランジ30dの斜め上方に延在する長さは、図7に示すように、例えば、位置決めフランジ7fの延出方向の長さと略同等に設定されている。これにより、位置決めフランジ7fは、サスペンションタワー7を上下方向、及び車幅方向に変位させた場合にも所定の接合強度にて接合するために必要な接合面積を確保することが可能となっている。
【0073】
これらにより、サスペンションタワー7の位置決めフランジ7fは、接合フランジ30dに対する固定位置を、車体2の3軸方向に調整することができる。
【0074】
このように構成されるフロントサイドフレーム本体30を適用した場合、位置決めフランジ7fは、延出端部7iを切断することなくサスペンションタワー7を上下方向及び車幅方向に変位させることができる。そして、位置決めフランジ7fは、接合強度を低下させることなく、接合フランジ30dと接合することができる。
【0075】
なお、フロントサイドフレーム本体30について、上壁部30a、底壁部30b、及び、縦壁部30cによって断面H型形状をなす開断面を形成する説明をしたが、上壁部30a、及び、底壁部30bの車幅方向内側端部の各々を接続して略矩形形状をなす閉断面を設けてもよい。
【0076】
加えて、例えば、前記略矩形形状をなす閉断面を構成する上壁部30aを車幅方向内側下方に傾斜させた閉断面としてもよい。この場合、傾斜した上壁部30aは、フロントサイドフレーム本体30の接合フランジ30dの代わりに接合フランジとして置換してもよい。
【0077】
以上の実施の形態に記載した発明は、それらの形態に限ることなく、その他、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々の変形を実施し得ることが可能である。さらに、上記形態には、種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組み合わせにより種々の発明が抽出され得るものである。
【0078】
また、上述の実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、述べられている課題が解決でき、述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得るものである。
【符号の説明】
【0079】
1・・・車両
2・・・車体
3・・・エンジンルーム
4・・・トーボード
5・・・フロントサイドフレーム
6・・・アッパサイドフレーム
6a・・・天板部
6b・・・側壁部
7・・・サスペンションタワー
7a・・・天板部
7b・・・縦壁部
7c・・・縦壁部
7d・・・縦壁部
7e・・・位置決めフランジ
7f・・・位置決めフランジ
7g・・・サスペンション取り付け孔
7h・・・起立部
7i・・・延出端部
8・・・キャビン
9・・・フロントピラー
10・・・バルクヘッド
15・・・フロントサイドフレーム本体
15a・・・側壁部
15b・・・側壁部
15c・・・上壁部
15d・・・底壁部
15e・・・接合フランジ
16・・・エクステンションフレーム
17・・・トルクボックス
18・・・サイドシル
19・・・フロアサイドフレーム
20・・・バンパビーム
21・・・カウルトップ
25・・・サスペンション装置
26・・・ショックアブソーバ
28・・・上端部
30・・・フロントサイドフレーム本体
30a・・・上壁部
30b・・・底壁部
30c・・・縦壁部
30d・・・接合フランジ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7