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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126516
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】鉄道車両のカバー
(51)【国際特許分類】
   B61F 19/02 20060101AFI20240912BHJP
【FI】
B61F19/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034925
(22)【出願日】2023-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【弁理士】
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 隆史
(74)【代理人】
【識別番号】100212059
【弁理士】
【氏名又は名称】三根 卓也
(72)【発明者】
【氏名】阿久津 真理子
(72)【発明者】
【氏名】宇田 東樹
(57)【要約】
【課題】鉄道車両の車体と台車とが干渉するおそれなく、車体の底部に設けられた台車の格納空間において発生する圧力変動を低減させる。
【解決手段】車体20の底部の空間の側方を覆う側カバー22であって、車体20の底部に設けられた台車10を格納する格納空間Sの側方を覆う格納空間カバー部22aを有する。格納空間カバー部22aは、圧力変動抑制部22bを下端部に有する。圧力変動抑制部22bは、鉄道車両の長さ方向の断面視において内側面から内方に突出せずに、下端部に向かうにつれ厚くなるよう形成され、且つ、下端面が水平面である
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両の車体底部の空間の側方を覆うカバーであって、
前記車体底部に設けられた台車を格納する格納空間の側方を覆う格納空間カバー部を有し、
前記格納空間カバー部は、圧力変動抑制部を下端部に有し、
前記圧力変動抑制部は、前記鉄道車両の長さ方向の断面視において内側面から内方に突出せずに、下端部に向かうにつれ厚くなるよう形成され、且つ、下端面が水平面であることを特徴とする、鉄道車両のカバー。
【請求項2】
当該カバーは、前記車体底部の空間の側方全体を覆うように形成され、
前記圧力変動抑制部は、前記格納空間カバー部にのみ設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の鉄道車両のカバー。
【請求項3】
前記格納空間カバー部の前記圧力変動抑制部の外側面と、前記格納空間カバー部と前記長さ方向に隣接する部分の下端部の外側面とは、滑らかに連続していることを特徴とする、請求項1または2に記載の鉄道車両のカバー。
【請求項4】
当該カバーは、前記車体底部の空間の側方全体を覆うように形成され、
前記圧力変動抑制部は、前記カバーの全体に設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の鉄道車両のカバー。
【請求項5】
前記圧力変動抑制部の内部に吸音材が設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の鉄道車両のカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、台車を格納するために鉄道車両の車体の底部に設けられた格納空間において発生する圧力変動を低減させるための、鉄道車両のカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両の走行に伴って、圧力変動が発生することが知られており、この圧力変動は、列車周りの流れにより空力的に発生することがわかっている。圧力変動のうち、20Hz以上の成分は可聴音である空力音の騒音源となり得る。また、圧力変動のうち、5~20Hzの成分は、鉄道沿線家屋の建具等の振動を引き起こす原因となる。
【0003】
鉄道車両の走行に伴う圧力変動の発生個所としては、台車を格納するために鉄道車両の車体の底部に設けられた格納空間がある。非特許文献1には、100Hz以上の空力音を低減させるため、格納空間の側方を覆う台車カバーを、下端が平坦になるように下部を車体内側に折り曲げた形状を有するフラットアンダーカバーとすることが開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】宇田 東樹、外3名、“Sound source distribution ofhigh-speed trains and reduction of aerodynamicbogie noise”、[online]、2022年8月21日、International Institute on Noise ControlEngineering、[2023年1月27日検索]、インターネット<URL: https://az659834.vo.msecnd.net/eventsairwesteuprod/production-inconference-public/40b0d665fbfb4138ab95edf2615338c4>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、台車の格納空間の側方を覆うカバーの下部が、非特許文献1に開示のフラットアンダーカバーのように、車体内側に折り曲げた形状を有すると、車体に対して旋回する台車とカバーの下部とが干渉する場合がある。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、鉄道車両の車体と台車とが干渉するおそれなく、車体の底部に設けられた台車の格納空間において発生する圧力変動を低減させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明は、鉄道車両の車体底部の空間の側方を覆うカバーであって、前記車体底部に設けられた台車を格納する格納空間の側方を覆う格納空間カバー部を有し、前記格納空間カバー部は、圧力変動抑制部を下端部に有し、前記圧力変動抑制部は、前記鉄道車両の長さ方向の断面視において内側面から内方に突出せずに、下端部に向かうにつれ厚くなるよう形成され、且つ、下端面が水平面であることを特徴としている。
【0008】
本発明によれば、圧力変動抑制部により、走行する車両の周りの気流が台車の格納空間に流れ込む量及び速度を抑制することができる。したがって、台車の格納空間において発生する圧力変動を低減させることができる。
【0009】
当該カバーは、前記車体底部の空間の側方全体を覆うように形成され、前記圧力変動抑制部は、前記格納空間カバー部にのみ設けられていてもよい。
【0010】
前記格納空間カバー部の前記圧力変動抑制部の外側面と、前記格納空間カバー部と前記長さ方向に隣接する部分の下端部の外側面とは、滑らかに連続していてもよい。
【0011】
当該カバーは、前記車体底部の空間の側方全体を覆うように形成され、前記圧力変動抑制部は、前記カバーの全体に設けられていてもよい。
【0012】
前記圧力変動抑制部の内部に吸音材が設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、鉄道車両の車体と台車とが干渉するおそれなく、車体の底部に設けられた台車の格納空間において発生する圧力変動を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1実施形態にかかるカバーを備える鉄道車両の構成例の概略を示す側面図である。
図2図1の鉄道車両の部分拡大断面図であり、鉄道車両の幅方向視における断面を示している。
図3図1の鉄道車両の部分拡大断面図であり、鉄道車両の長さ方向視における断面を示している。
図4】側カバーの部分拡大断面図である。
図5】車体の下面図である。
図6】圧力変動抑制部の変形例を示すための、車体の下面の部分拡大図及びである。
図7】圧力変動抑制部の変形例を示すための、側カバーの部分拡大斜視図である。
図8】本発明の第2実施形態にかかるカバーとしての側カバーの概略を示す部分拡大断面図である。
図9】圧力変動抑制部による圧力変動の抑制効果を調べるために風洞を用いて行った確認試験の結果を示す図である。
図10】圧力変動抑制部による圧力変動の抑制効果を調べるために風洞を用いて行った確認試験の結果を示す図である。
図11】圧力変動抑制部による圧力変動の抑制効果を調べるために風洞を用いて行った確認試験の結果を示す図である。
図12】圧力変動抑制部による圧力変動の抑制効果を調べるために風洞を用いて行った確認試験の結果を示す図である。
図13】側カバーの他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書及び図面において実質的に同一の機能構成を有する要素においては、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0016】
(第1実施形態)
<鉄道車両>
図1は、本発明の第1実施形態にかかるカバーを備える鉄道車両の構成例の概略を示す側面図である。図2は、図1の鉄道車両の部分拡大断面図であり、鉄道車両の幅方向視における断面を示している。図3は、図1の鉄道車両の部分拡大断面図であり、鉄道車両の長さ方向視における断面を示している。図4は、後述の側カバーの部分拡大断面図である。図5は、後述の車体の下面図であり、後述の圧力変動抑制部の位置の例を説明するためのものである。
【0017】
図1の鉄道車両1は、例えば、レール(図示せず)上を高速で走行する新幹線車両等の高速鉄道車両である。この鉄道車両1は台車10と車体20とを備える。
【0018】
台車10は、図2に示すように、一対の輪軸11を有する。一対の輪軸11は、鉄道車両1の長さ方向(図のX方向。以下、車両長手方向という。)すなわち鉄道車両1の走行方向に互いに離間し且つ略平行になるように設けられている。輪軸11はそれぞれ、図3に示すように、車軸12と一対の車輪13とを有する。車軸12は、柱状に形成され、一対の車輪13が、車軸12の軸線方向すなわち鉄道車両1の幅方向(図のY方向。以下、車幅方向という。)に互いに離間するように設けられている。車輪13それぞれは、レール(図示せず)上を回転しながら走行する。
【0019】
また、台車10は一対の側梁14を有する。側梁14はそれぞれ車両長手方向に延びるように形成されている。一対の側梁14には、一対の輪軸11が車両長手方向に互いに離間するように取り付けられている。
【0020】
車体20は、図1に示すように、台車10を格納する格納空間Sが底部に設けられている。なお、本例において、図2に示すように、格納空間Sの車両長手方向の両端を画成する端部塞ぎ板21は、鉛直方向に延びるように設けられている。
【0021】
また、車体20は、本発明にかかるカバーとしての側カバー22を底部に一対有する。
一対の側カバー22は、図3に示すように、車幅方向に互いに対向するように設けられている。側カバー22はそれぞれ、車体20の底部の空間(具体的には床下の空間)のうち、少なくとも格納空間Sを、その側方を覆う。具体的には、側カバー22はそれぞれ、少なくとも格納空間Sを側方から塞ぐように覆う。すなわち、側カバー22はそれぞれ、格納空間Sの側方を覆う格納空間カバー部22aを有する。
【0022】
また、本例において、図1に示すように、側カバー22は、車体20の床下の空間のうち、格納空間S以外の空間についても、側方から塞ぐように覆う。すなわち、側カバー22は、車体20の車両長手方向全体に亘って形成されている。そのため、車体20において、床下の空間に収容された床下機器23の側方も、側カバー22により覆われる。
【0023】
さらに、車体20は、底カバー24と一対の上部カバー25とを有する。
底カバー24は、車体20の床下の空間における格納空間S以外の空間を下方から塞ぐように覆う。そのため、車体20において、床下機器23の下方が底カバー24により覆われる。
一対の上部カバー25は、車幅方向に互いに対向するように設けられている。上部カバー25はそれぞれ、車体20の床上の空間の側方を覆う。
【0024】
また、鉄道車両1において、図3及び図4に示すように、前述の格納空間カバー部22aは圧力変動抑制部22bを下端部に有する。
【0025】
圧力変動抑制部22bは、車両長手方向の断面視において、内側面から内方に突出せずに、すなわち台車10側の面から台車10に向かって突出せずに、下端部に向かうにつれ厚くなるよう形成されている。また、圧力変動抑制部22bはその下端面が水平面である。
【0026】
この圧力変動抑制部22bにより、走行する鉄道車両1の車体20の周りの気流が格納空間Sに流れ込む量及び速度を低減させることができる。
なお、圧力変動抑制部22bは、車両長手方向の断面視において、その下端が、当該圧力変動抑制部22bにより上記気流が格納空間Sに流れ込む量及び速度を十分低減させることができる程度に厚ければ、最も厚くなくてもよい。
【0027】
圧力変動抑制部22bは、例えば、図5に示すように、側カバー22において、格納空間カバー部22aにのみ設けられる。この場合、圧力変動抑制部22bは、側カバー22における格納空間カバー部22a以外の部分の外側面(図4の点線等参照)から外側に突出するように形成される。
また、圧力変動抑制部22bの内側面は、図3に示すように、車体20に対して旋回する台車10と干渉しない程度に、その上部より下部の方が台車10側に位置するよう、湾曲または傾斜していてもよい。
そのため、圧力変動抑制部22bは、車両長手方向の断面視において、内側面が車体20に対して旋回する台車10と干渉しない領域に位置し、下端部に向かうにつれ厚くなるよう形成されている、ということができる。
【0028】
圧力変動抑制部22bの下端の幅は、75mm以上であることが好ましく、150mm以上であることが好ましい。
また、圧力変動抑制部22bの外側端は、上部カバー25の外側端と側カバー22の上部の外側端とのうち外側寄りに位置するものより、内側に位置する。
【0029】
<主な効果>
以上のように、本実施形態では、上述のように側カバー22の下部に圧力変動抑制部22bが設けられており、圧力変動抑制部22bの下端部が車両長手方向の断面視において厚く、また、圧力変動抑制部22bの下端面が水平面である。そのため、本実施形態によれば、走行する鉄道車両1の車体20の周りの気流が格納空間Sに流れ込む量及び速度を低減させることができる。したがって、
(A)格納空間Sにおいて、10Hz~100Hzの低周波域で強い渦変動が生じるのを抑制することができ、その結果、格納空間Sにおいて発生する上記低周波域の圧力変動を低減させることができ、また、
(B)走行する鉄道車両1の車体20の周りの気流が、台車10の車輪13等に高速で衝突すること等を抑制することができ、その結果、格納空間Sにおいて発生する100Hzより高い可聴域の空力音を抑制することができる。
また、車両長手方向の断面視において、圧力変動抑制部22bの下端部が厚いが、圧力変動抑制部22bがその内側面から内方に突出していないため、圧力変動抑制部22bと台車10と干渉するおそれがない。
すなわち、本実施形態によれば、鉄道車両1の車体20と台車10とが干渉するおそれなく、車体20の底部に設けられた台車10の格納空間Sにおいて発生する圧力変動を低減させることができる。
さらに、本実施形態では、上述のように格納空間Sに流れ込む気流の量を低減させることができるため、台車10及び格納空間S内部への着雪を抑制することができる。
また、本実施形態では、圧力変動抑制部22bの下端面が水平面であるため、圧力変動抑制部22bに衝突した気流が下方に向かうのを抑制することができる。その結果、鉄道車両1が走行するレールの周囲のバラストが飛散するのを抑制することができる。
【0030】
<圧力変動抑制部の変形例>
図6及び図7はそれぞれ、圧力変動抑制部の変形例を示すための、車体20の下面の部分拡大図及び側カバーの部分拡大斜視図である。
図5の例では、格納空間カバー部22aの圧力変動抑制部22bの外側面と、格納空間カバー部22aと車両長手方向(図のX方向)に隣接する部分の下端部の外側面とにより、段差が形成されていた。
この例に限られず、図6及び図7に示すように示すように、格納空間カバー部22aの圧力変動抑制部22bの外側面と、格納空間カバー部22aと車両長手方向(図のX方向)に隣接する部分の下端部の外側面とは、段差無く滑らかに連続していてもよい。
【0031】
(第2実施形態)
<側カバー>
図8は、本発明の第2実施形態にかかるカバーとしての側カバーの概略を示す部分拡大断面図である。
図8の側カバー22Aは、格納空間カバー部22Aaの圧力変動抑制部22Abの内部に吸音材30が設けられているという点でのみ、図4等に示した側カバー22と異なる。
【0032】
吸音材30には、グラスウールやPET(ポリエチレンテレフタレート)ウール等の公知のものを用いることができる。
例えば、側カバー22Aの下端面に凹部22Acが形成されており、この凹部22Acの内部に吸音材30が設けられ、凹部22Acの下部の開口は、鉛直方向に貫通する貫通(図示せず)が形成された蓋22Adにより塞がれる。すなわち、吸音材30は、例えば、側カバー22Aの下端部の内部に設けられる。
【0033】
<確認試験>
図9図12はそれぞれ、圧力変動抑制部による圧力変動の抑制効果を調べるために風洞を用いて行った確認試験の結果を示す図である。
本確認試験では、1/5スケールの鉄道車両1を模した、模型1~5と比較例の模型を用いた。模型1、3はそれぞれ、図1図5を用いて説明した圧力変動抑制部22bを設けるようにし、模型2、4はそれぞれ、図8を用いて説明した圧力変動抑制部22Abを設けるようにし、比較例の模型には圧力変動抑制部22b、22Abを設けなかった。また、圧力変動抑制部22b、22Abの下端面の幅を、模型1、2では実機で150mmに相当する30mmとし、模型2、4では実機で75mmに相当する15mmとした。また、図9図12は、模型1~5のそれぞれについて、比較例の模型との圧力変動の大きさ(すなわちレベル)の差で結果を示している。さらに、図9及び図11は、風速が260km/hで生じた40~100Hzの低周波域の圧力変動の測定結果に対し、1/3オクターブ分析を行った結果を示している。図10及び図12は、風速が325km/hの風洞試験で生じた160Hz~1600Hzの高周波域における圧力変動の測定結果に対し、オクターブ分析を行った結果を示している。なお、ここで説明する周波数は、1/3オクターブ分析における中心周波数であり、試験での圧力変動の周波数を実機の場合に換算したものである。
【0034】
図9及び図10から明らかな通り、圧力変動抑制部22bが設けられた模型1を用いた場合の分析結果の平均値では、40Hz~100Hzの低周波域及び160Hz~1600Hzの高周波域の両方において、全ての周波数で圧力変動の低減が認められた。
また、図11及び図12から明らかな通り、同様に圧力変動抑制部22bが設けられた模型3では、40Hz~100Hzの低周波域において、圧力変動の低減が認められなかったが、160Hz~1600Hzの高周波域において、略全ての周波数で圧力変動の低減が認められた。
これらの結果から、圧力変動抑制部22bを設けることで、少なくとも、160Hz~1600Hzの高周波域において圧力変動が低減することが確認された。また、圧力変動抑制部22bの下端面の幅を30mm以上とすることで、40Hz~100Hzの低周波域及び160Hz~1600Hzの高周波域の両方において圧力変動が低減することが確認された。
【0035】
さらに、圧力変動抑制部22Abが設けられた模型2では、40Hz~100Hzの低周波域及び160Hz~1600Hzの高周波域の両方において、ほぼ全ての周波数で圧力変動の低減が認められた。また、圧力変動抑制部22Abが設けられた模型2では、上記低周波域及び上記高周波域において、一部の周波数で、模型1に比べて圧力変動の低減度合いが大きかった。
さらにまた、同様に圧力変動抑制部22Abが設けられた模型4では、上記高周波域において、ほぼ全ての周波数で、模型3に比べて圧力変動の低減度合いが大きかった。
これらの結果から、圧力変動抑制部22Abのように吸音材30を設けることで、少なくとも40Hz~100Hzの低周波域において圧力変動が低減することが確認された。また、圧力変動抑制部22bの下端面の幅を30mm以上の場合、吸音材30を設けることで、40Hz~100Hzの低周波域及び160Hz~1600Hzの高周波域の両方において圧力変動がさらに低減することが確認された。
【0036】
<側カバーの他の例>
図13は、側カバーの他の例を示す図である。
図5の例では、圧力変動抑制部22bは、側カバー22において、格納空間カバー部22aにのみ設けられていた。これに代えて、図13に示すように、圧力変動抑制部22bは、側カバー22の全体に設けられていてもよく、具体的には、側カバー22の車両長手方向(図のX方向)全体に亘って設けられていてもよい。
図7の圧力変動抑制部22Abについても同様である。すなわち、圧力変動抑制部の内部に吸音材が設けられる場合についても同様である。
【0037】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到しうることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0038】
また、本明細書に記載された効果は、あくまで説明的または例示的なものであって限定的ではない。つまり、本開示に係る技術は、上記の効果とともに、又は、上記の効果に代えて、本明細書の記載から当業者には明らかな他の効果を奏しうる。
【0039】
なお、以下のような構成も本開示の技術的範囲に属する。
(1)鉄道車両の車体底部の空間の側方を覆うカバーであって、
前記車体底部に設けられた台車を格納する格納空間の側方を覆う格納空間カバー部を有し、
前記格納空間カバー部は、圧力変動抑制部を下端部に有し、
前記圧力変動抑制部は、前記鉄道車両の長さ方向の断面視において内側面から内方に突出せずに、下端部に向かうにつれ厚くなるよう形成され、且つ、下端面が水平面であることを特徴とする、鉄道車両のカバー。
(2)当該カバーは、前記車体底部の空間の側方全体を覆うように形成され、
前記圧力変動抑制部は、前記格納空間カバー部にのみ設けられていることを特徴とする、前記(1)に記載の鉄道車両のカバー。
(3)前記格納空間カバー部の前記圧力変動抑制部の外側面と、前記格納空間カバー部と前記長さ方向に隣接する部分の下端部の外側面とは、滑らかに連続していることを特徴とする、前記(1)または(2)に記載の鉄道車両のカバー。
(4)当該カバーは、前記車体底部の空間の側方全体を覆うように形成され、
前記圧力変動抑制部は、前記カバーの全体に設けられていることを特徴とする、前記(1)に記載の鉄道車両のカバー。
(5)前記圧力変動抑制部の内部に吸音材が設けられていることを特徴とする、前記(1)~(4)のいずれか1に記載の鉄道車両のカバー。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、鉄道車両の車体の底部に設けられた台車の格納空間において発生する圧力変動の抑制に有用である。
【符号の説明】
【0041】
1 鉄道車両
10 台車
11 輪軸
12 車軸
13 車輪
14 側梁
20 車体
21 端部塞ぎ板
22、22A 側カバー
22a 格納空間カバー部
22Ab、22b 圧力変動抑制部
22Ac 凹部
22Ad 蓋
23 床下機器
24 底カバー
25 上部カバー
30 吸音材
S 格納空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13