(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126529
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】二酸化炭素変換装置及び二酸化炭素変換方法
(51)【国際特許分類】
C25B 1/23 20210101AFI20240912BHJP
C25B 15/08 20060101ALI20240912BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20240912BHJP
B01D 53/32 20060101ALI20240912BHJP
C25B 15/00 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
C25B1/23
C25B15/08 304
C25B9/00 Z
B01D53/32
C25B15/00 302Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034938
(22)【出願日】2023-03-07
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度、環境省、二酸化炭素の資源化を通じた炭素循環社会モデル構築促進事業委託業務「人工光合成技術を用いた電解による地域のCO2資源化検討事業」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 斗
【テーマコード(参考)】
4K021
【Fターム(参考)】
4K021AB25
4K021BA02
4K021BC02
4K021BC03
4K021CA15
4K021DB36
4K021DB40
(57)【要約】
【課題】二酸化炭素の有効活用を促進して、二酸化炭素の大気中への放出を低減することを可能にした二酸化炭素変換装置を提供する。
【解決手段】実施形態の二酸化炭素変換装置1は、供給された二酸化炭素を還元して一酸化炭素を生成するカソード室8と、被酸化物を酸化して酸素及び二酸化炭素を生成するアノード室9とを備える二酸化炭素電解部3と、アノード室9で生成される酸素-二酸化炭素含有ガスから二酸化炭素を分離回収する二酸化炭素回収部5と、カソード室9で生成される一酸化炭素含有ガスから一酸化炭素を精製する一酸化炭素精製部7と、一酸化炭素精製部4から排出される残余の一酸化炭素を含む還元性ガスと二酸化炭素回収部5で分離回収され、残余の酸素を含む二酸化炭素含有ガスとを反応させる酸化部6とを具備する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素含有ガスから二酸化炭素を回収して供給する二酸化炭素供給部と、
前記二酸化炭素供給部から二酸化炭素が供給され、前記二酸化炭素を還元して一酸化炭素を生成するカソード室と、被酸化物を酸化して酸素及び二酸化炭素を生成するアノード室とを備える二酸化炭素電解部と、
前記二酸化炭素電解部の前記アノード室で生成される酸素-二酸化炭素含有ガスから二酸化炭素を分離回収する二酸化炭素回収部と、
前記二酸化炭素電解部の前記カソード室で生成される一酸化炭素含有ガスから一酸化炭素を精製する一酸化炭素精製部と、
前記一酸化炭素精製部から排出される残余の一酸化炭素を含む還元性ガスと、前記二酸化炭素回収部で分離回収され、残余の酸素を含む二酸化炭素含有ガスとを反応させる酸化部と
を具備する二酸化炭素変換装置。
【請求項2】
前記酸化部は、前記反応により前記二酸化炭素含有ガス中の前記残余の酸素を除去する、請求項1に記載の二酸化炭素変換装置。
【請求項3】
前記酸化部は、前記還元性ガスに含まれる前記残余の一酸化炭素を前記二酸化炭素含有ガス中の前記残余の酸素とを反応させて二酸化炭素を生成する、請求項1に記載の二酸化炭素変換装置。
【請求項4】
前記酸化部は、前記残余の酸素が除去された二酸化炭素含有ガスを前記二酸化炭素電解部の前記カソード室に供給するように構成されている、請求項2に記載の二酸化炭素変換装置。
【請求項5】
二酸化炭素電解部のカソード室で二酸化炭素を還元して一酸化炭素を生成すると共に、前記二酸化炭素電解部のアノード室で被酸化物を酸化して酸素及び二酸化炭素を生成する工程と、
前記二酸化炭素電解部の前記アノード室で生成される酸素-二酸化炭素含有ガスから二酸化炭素を分離回収する工程と、
前記二酸化炭素電解部の前記カソード室で生成される一酸化炭素含有ガスから一酸化炭素を精製する工程と、
前記一酸化炭素を精製した後の残余の一酸化炭素を含む還元性ガスと、二酸化炭素を分離回収した残余の酸素を含む二酸化炭素含有ガスとを反応させる工程と
を具備する二酸化炭素変換方法。
【請求項6】
前記還元性ガスと前記二酸化炭素含有ガスとの反応により、前記二酸化炭素含有ガス中の前記残余の酸素を除去する、請求項5に記載の二酸化炭素変換方法。
【請求項7】
前記還元性ガスと前記二酸化炭素含有ガスとの反応により、前記還元性ガス中の前記残余の一酸化炭素を前記二酸化炭素含有ガス中の前記残余の酸素と反応させて二酸化炭素を生成する、請求項5に記載の二酸化炭素変換装方法。
【請求項8】
前記残余の酸素が除去された二酸化炭素含有ガスを前記二酸化炭素電解部の前記カソード室に供給する、請求項6に記載の二酸化炭素変換方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、二酸化炭素変換装置及び二酸化炭素変換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
天然ガス、石炭、石油等の化石燃料を燃焼させることで発生する二酸化炭素(CO2)は、温室効果による地球温暖化の主因と考えられており、化石燃料の使用削減が求められている。CO2発生源から排出される排ガスからCO2を除去し、大気中への放出を抑制することに加えて、排ガスから除去したCO2を原料とする化学合成が行われている。その一環として、CO2を還元して一酸化炭素(CO)を生成し、生成したCOと水素(H2)とから有機物を合成する技術の開発が進められている。
【0003】
CO2電解装置の生成ガスのうち、カソード室の生成ガスは、CO2の還元生成物であるCO、CO2と同時にH2Oが共電解されることにより生成される水素(H2)、未反応のCO2等を含んでいる。アノード室の生成ガスは、CO2の還元生成物の一部である炭酸イオン(CO3
2-)や水酸化物イオン(OH-)の酸化により生成される酸素(O2)と、副生成物としてのCO2を含んでいる。このように、CO2電解の生成物はCO、H2、O2等の主生成物に加えて、未反応のCO2や副生成物としてのCO2を含んでいる。このようなCO2電解装置の生成ガスからCO、H2等の有効成分を精製して回収した後のパージガスをそのまま放出すると、CO2の大気中への放出を低減することができないと共に、CO2の有効活用性が低下する。そこで、CO2の大気中への放出を低減すると共に、CO2の有効活用性を高めることが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2014/154253号
【特許文献2】特開2021-055124号公報
【特許文献3】特開2019-218578号公報
【特許文献4】特開2016-124759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、CO2の有効活用を促進して、CO2の大気中への放出を低減することを可能にした二酸化炭素変換装置及び二酸化炭素変換方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の二酸化炭素変換装置は、二酸化炭素含有ガスから二酸化炭素を回収して供給する二酸化炭素供給部と、前記二酸化炭素供給部から二酸化炭素が供給され、前記二酸化炭素を還元して一酸化炭素を生成するカソード室と、被酸化物を酸化して酸素及び二酸化炭素を生成するアノード室とを備える二酸化炭素電解部と、前記二酸化炭素電解部の前記アノード室で生成される酸素-二酸化炭素含有ガスから二酸化炭素を分離回収する二酸化炭素回収部と、前記二酸化炭素電解部の前記カソード室で生成される一酸化炭素含有ガスから一酸化炭素を精製する一酸化炭素精製部と、前記一酸化炭素精製部から排出される残余の一酸化炭素を含む還元性ガスと、前記二酸化炭素回収部で分離回収され、残余の酸素を含む二酸化炭素含有ガスとを反応させる酸化部とを具備する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態の二酸化炭素変換装置を示す図である。
【
図2】実施形態の二酸化炭素変換装置の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態の二酸化炭素変換装置について、図面を参照して説明する。以下に示す各実施形態において、実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、その説明を一部省略する場合がある。図面は模式的なものであり、厚さと平面寸法との関係、各部の厚さの比率等は現実のものとは異なる場合がある。なお、以下の説明における“~”の記号は、それぞれの数値の上限値と下限値の間の範囲を示すものである。その場合、各数値範囲は上限値及び下限値を含むものである。
【0009】
図1は実施形態の二酸化炭素変換装置を示す図である。
図1に示す二酸化炭素変換装置1は、二酸化炭素(CO
2)含有ガスからCO
2を回収して供給するCO
2供給部2と、CO
2を電解及び還元して一酸化炭素(CO)に変換するCO
2電解部3と、CO
2電解部3のカソード室で生成されるガスから一酸化炭素(CO)を精製するCO精製部4と、CO
2電解部3のアノード室で生成されるガスから二酸化炭素(CO
2)を分離回収するCO
2回収部5と、CO精製部4から排出される残余のCOを含む還元性ガスとCO
2回収部5で分離回収され、残余の酸素を含むCO
2含有ガスとを反応させ、COをCO
2に変換すると共に、残余の酸素(O
2)を除去する酸化部6とを具備する。
【0010】
CO2供給部2は、火力発電所、廃棄物焼却場、製鉄所等から排出されるCO2を含む排出ガス(CO2含有ガス)G1からCO2を分離回収し、CO2濃度を高めたCO2ガスG2をCO2電解部3に供給するように構成されている。CO2供給部2には、例えばアミン水溶液のような化学吸収液を用いる化学吸収法、メタノール、ポリエチレングリコール溶液のような物理吸収液を用いる物理吸収法、アミン化合物のような固体吸収剤を用いた固体吸収法、CO2分離膜を用いた膜分離法、ゼオライト等の無機物を吸着材として用いる物理吸着法、PSA(Pressure Swing Adsorption法(圧力変動吸着法))、TSA(Thermal Swing Adsorption法(温度変動吸着法)等が適用される。例えば、アミン水溶液を用いた化学吸収法及び装置では、アミン水溶液が噴霧される吸収塔に排出ガスG1を供給し、CO2を吸収したアミン水溶液を再生塔で加熱してアミン水溶液から放散されるCO2を回収する。
【0011】
CO2供給部2に適用するCO2の回収方法及び装置は、特に限定されるものではなく、排出ガス(CO2含有ガス)G1からCO2を回収することが可能な各種の方法及び装置を適用することができる。CO2供給部2は、ガス混合器7を介してCO2電解部3のカソード室(還元部)8に接続されている。CO2供給部2は、ガス混合器7を介してカソード室8にCO2ガスG2を供給するように構成されている。
【0012】
CO2電解部3は電解セルを有するCO2電解装置であり、カソード室(還元部)8とアノード室(酸化部)9とを備えている。カソード室8は還元電極(カソード)を備え、アノード室9は酸化電極(アノード)を備えており、少なくともアノード室9には電解液が流通される。カソード室8には、CO2ガスが流通される。アノード室9において、電解液には水(H2O)を用いた溶液、例えば任意の電解質を含む水溶液が用いられる。電解質を含む水溶液としては、リン酸イオン(PO4
2-)、ホウ酸イオン(BO3
3-)、ナトリウムイオン(Na+)、カリウムイオン(K+)、カルシウムイオン(Ca2+)、リチウムイオン(Li+)、セシウムイオン(Cs+)、マグネシウムイオン(Mg2+)、塩化物イオン(Cl-)、炭酸水素イオン(HCO3
-)、炭酸イオン(CO3
2-)、水酸化物イオン(OH-)等を含む水溶液が挙げられる。電解液の具体例としては、KOH、KHCO3、K2CO3等が溶解されたアルカリ水溶液が挙げられる。
【0013】
カソード室8には、CO2供給部2で回収されたCO2ガスG2が供給される。カソード室8は、図示しない還元電極に面するガス流路を有し、そのようなガス流路にCO2ガスが供給される。アノード室9は、例えば図示しない酸化電極に面する液体流路を有し、そのような液体流路に電解液が供給される。カソード室8とアノード室9とは、水素イオン(H+)、水酸化物イオン(OH-)、炭酸イオン(CO3
2-)、炭酸水素イオン(HCO3
-)等のイオンを移動させることが可能な隔膜10、例えばイオン交換膜により分離されている。CO2電解部3(電解セルを有するCO2電解装置)は、単一の電解セルやそれらを面方向に接続した構造を有していてもよいし、複数の電解セルが積層されて一体化されたスタック構造を有していてもよい。
【0014】
CO2電解部3の還元電極及び酸化電極には、図示しない直流電源が接続されている。CO2電解部3の還元電極及び酸化電極に、電源から直流電流が供給されることによって、カソード室8及びアノード室9では以下に示すような電解反応が生じる。カソード室8では、下記の(1)式に示すように、CO2の電解反応及び還元反応が生じる。カソード室8では、CO2の還元反応によりCOと炭酸イオン(CO3
2-)が生成される。
2CO2+2e- → CO+CO3
2- …(1)
カソード室8で生成された炭酸イオン(CO3
2-)は、隔膜10を介してアノード室9に移動する。アノード室9においては、下記の(2)式に示すように、カソード室8で生成され、隔膜10を介して移動した炭酸イオン(CO3
2-)の酸化反応が生じ、これによりCO2とO2とが生成される。
CO3
2- → CO2+0.5O2+2e- …(2)
【0015】
さらに、カソード室8においては、電解液中のH2Oの電解反応が生じ、下記の(3)式に示すように、水素(H2)と水酸化物イオン(OH-)とが生成される。
2H2O+2e- → H2+2OH- …(3)
カソード室8で生成された水酸化物イオン(OH-)は、隔膜10を介してアノード室9に移動する。そして、下記の(4)式に示すように、アノード室9で水(H2O)と酸素(O2)が生成される。
2OH- → 0.5O2+H2O+2e- …(4)
【0016】
また、アノード室9においては、下記の(5)式に示すように、電解液中の水(H2O)が電気分解され、酸素(O2)と水素イオン(H+)とが生成される。
2H2O → 4H++O2+4e- …(5)
生成された水素イオン(H+)は、隔膜10を介してカソード室8に移動する。カソード室8に水素イオン(H+)が到達し、外部回路を通って電子(e-)が到達したカソード室8においては、下記の(6)式に示す反応により水素が発生する。
4H++4e- → 2H2 …(6)
【0017】
カソード室8においては、(1)式に示すCO2の還元反応によりCOが生成されると共に、(3)式に示すH2Oの電解反応及び(6)式に示す反応によりH2が生成される。カソード室8で生成されたCO及びH2は、未反応のCO2や飽和水蒸気と共にカソード室8から排出される。カソード室8から排出される、COとH2とCO2と飽和水蒸気(H2O)を含む混合ガスG3は、冷却器11で冷却された後に、第1気液分離器12に送られる。第1気液分離器12で凝縮水(H2O)が除去され、COとH2とCO2とを含む混合ガスG4は、CO精製部4に送られる。
【0018】
CO精製部4においては、混合ガスG4からCOが精製される。CO精製部4には、例えば銅イオン・ゼオライト吸着剤、銅イオン活性炭吸着剤、塩化銅・アルミニウム・架橋ポリスチレン固体吸着剤、塩化銅・アルミニウム・活性炭吸着剤等を用いたCO-PSA(圧力変動吸着法)、銅アンモニア洗浄法、塩化銅アルミニウム錯体溶液吸収法、塩化銅・アルミニウム・ポリスチレン高分子錯体溶液吸収法、深冷法等が適用される。精製されたCOは、例えば図示しないタンク等の貯蔵容器に収容されるか、あるいは例えばCOとH2とを反応させるメタン合成反応器、アルコール合成器、フィッシャー・トロプシュ反応器等の有機物合成反応器に送られる。これら有機物合成反応器は、CO-PSA等を適用したCO精製部4に代えて使用してもよい。CO精製部4からは、COを精製した後の精製残ガスG5が排出される。精製残ガスG5は、残存するCO、H2、CO2等を含んでいる。CO精製部4から排出される精製残ガスG5は、酸化部6に送られる。
【0019】
一方、CO2電解部3のアノード室9では、上記した(2)式及び(4)式に示すように、炭酸イオン(CO3
2-)及び水酸化物イオン(OH-)の酸化により、酸素(O2)が生成されると共に、二酸化炭素(CO2)が再生成される。アノード室9で生成されたO2及びCO2を含有するガス(O2-CO2含有ガス)は、電解液と共にアノード室9から排出される。O2-CO2含有ガスを含む電解液は、第2気液分離器13に送られる。第2気液分離器13において、O2-CO2含有ガスは電解液から分離される。第2気液分離器13で分離されたO2-CO2含有ガスG6は、冷却器14で所定の温度まで冷却された後に第3気液分離器15に送られる。第2気液分離器13で分離された電解液は、冷却器16で所定の温度まで冷却された後に緩衝タンク17に送られる。緩衝タンク17には、第3気液分離器15で分離された凝縮水(H2O)も送られる。緩衝タンク17に送られた電解液は、必要に応じて補給水タンク18から水が供給された後に、ポンプ19を介してCO2電解部3のアノード室9に再送される。
【0020】
第2及び第3気液分離部器13、15で分離されたO2-CO2含有ガスG6は、H2O除去部20で残存するH2Oが除去された後、CO2回収部5に送られる。H2O除去部20には、水蒸気除去用高分子膜や、ゼオライト、シリカゲル、メソポーラスシリカ、活性炭等の水蒸気吸着材が用いられる。CO2回収部5においては、例えばCO2吸着剤として、1級又は2級アミン担持体、FAU型ゼオライト、GIS型ゼオライト、有機配位子として1,4-ベンゼンジカルボヒドロキサム酸を用いると共に、補助配位子としてイソニコチン酸を用い、硝酸コバルトと反応させて得られるCo-MOF(Metal Organic Frameworks:金属有機構造体)、ZIF-69(CAS No.1018477-10-5、化学式:C10H6N5O2ClZn)、Cubic[Zn4O(piperazine dicarbamate)3]等を用いて、吸着剤に応じた圧力変動吸着(Pressure Swing Adsorption:PSA)法や、温度変動吸着(Temperature Swing Adsorption:TSA)法でCO2を分離回収する。
【0021】
CO2回収部5においては、酸素吸着剤として、テトラシアノキノジメタン(CAS No.1518-16-7、化学式:(NC)2CC6H4C(CN)2)細孔体のような有機半導体を用い、圧力変動吸着(PSA)法や、温度変動吸着(TSA)法でO2を分離回収し、その結果としてCO2を回収してもよい。CO2回収部5には、ポリ-1,4-アントラキノン(Poly-1,4-anthraquinone)をCO2吸着極とし、ポリビニルフェロセン(Polyvinylferrocene)を対極とした、ファラデーエレクトロスウィング反応性吸着(Faradaic electro-swing reactive adsorption)法を適用してもよい。
【0022】
CO2回収部5で分離回収されたCO2を含むガスG7は、残存するO2を含んでいる。CO2及び残存するO2を含むガスG7は、酸化部6に送られる。酸化部6において、CO精製部4から排出され、残余のCOや未反応のCO2を含む精製残ガス(還元性ガス)G5と、CO2回収部5で分離回収され、CO2及び残余のO2を含むガスG7とを反応させる。ガスG5中の残余のCOは、ガスG7中のO2により酸化され、CO2に変換される。それと同時に、CO2回収部5で分離回収されたガスG7中のO2を除去する。これによって、酸化部6からCO2電解部3のカソード室8に返送するCO2ガスG8中のO2量を低減、さらにはより一層削減することができる。
【0023】
すなわち、CO2電解部3のカソード室8に供給するCO2ガスがO2を含んでいると、カソード室8に配置される還元電極(カソード)を構成する炭素材料がO2により劣化したり、還元電極(カソード)に還元触媒として含まれる金、銀、銅粒子等の金属粒子がO2により凝集したりする等によって、還元電極の性能が低下してしまう。このため、CO2回収部5で分離回収されたCO2を含むガスG7が残余のO2を含んでいると、カソード室8に再送することができない。これに対して、酸化部6で残余のCOや未反応のCO2を含む精製残ガス(還元性ガス)G5とCO2回収部5で分離回収されたCO2及び残余のO2を含むガスG7とを反応させて、CO2回収部5で分離回収されたガスG7中のO2を除去することによって、CO2を含むガスG7と未反応のCO2とCOの酸化により新たに生成したCO2とを含むガスG5との混合ガスG8を、カソード室8に悪影響を及ぼすことなく、CO2電解部3のカソード室8に再供給することができる。
【0024】
CO
2ガスG8は、冷却器21で冷却された後に、第4気液分離器22に送られる。第4気液分離器22で飽和水蒸気や凝縮水(H
2O)が除去された後に、CO
2ガスG8はガス混合器7に送られる。CO
2ガスG8は、ガス混合器7でCO
2供給部2から供給されたCO
2ガスG2と混合された後、CO
2電解部3のカソード室8に供給される。酸化部6においては、水素-酸素再結合触媒やNi-Ce
2O
3-Pt等の燃焼触媒を適用し、酸素の除去性を高めるようにしてもよい。CO
2回収部5から供給されるCO
2含有ガスG7中の残余のO
2濃度やCO精製部4から排出される精製残ガスG5中の残余のCO濃度によっては、
図2に示すように、H
2供給源23を設けてもよい。さらに、酸化部6から第4気液分離器22にCO
2ガスG8を送る配管に、O
2濃度計24やO
2吸着部25を設けてもよい。これらによって、CO
2ガスG8中のO
2濃度をより一層安定的に削減することが可能になる。
【0025】
CO2ガスG2の水蒸気量を制御し、電解液からの放散水蒸気量を低減するため、ガス混合器7においてCO2ガスを適度に加湿したり、又はCO2ガスG8からの水蒸気除去量を冷却器21の出口温度により制御してもよい。冷却器24の負荷低減及び/又は酸化部6の加熱量低減のために、ガスG8をガスG5、G7と熱交換してもよい。
【0026】
上述したように、実施形態のCO2変換装置1によれば、CO2回収部5で分離回収されたCO2ガスG7中の残余のO2を、酸化部6で精製残ガスG5中の残余のCOと反応させ、CO2ガスG7中の残余のO2を除去することができると共に、残余のCOをCO2として回収することができる。それに加えて、精製残ガスG5中に含まれる未反応のCO2を回収することができる。これらによって、CO2の有効活用を促進した上で、カソード室8に悪影響を及ぼすCO2ガスG8中のO2濃度をより一層安定的に削減することが可能になる。すなわち、CO2電解部3によるCO2の電解性能を維持しつつ、未反応及び再生成されたCO2を有効に活用することができる。
【0027】
なお、上記した実施形態及び
図1及び
図2には記載されていないが、ブロワ、ポンプ、コンプレッサ等が適宜配置されていてもよく、それらによりガスや液体等の流体の流れを補助するようにしてもよい。また、CO
2回収部5からの放出ガスの一部は、地中貯留、EOR、CO
2固定化(ミネラル化)等、他の用途に提供してもよい。さらに、CO
2回収部5でCO
2を分離回収した後のO
2ガスは、必要に応じて回収される。
【0028】
上述した実施形態の構成は、それぞれ組合せて適用することができ、また一部置き換えることも可能である。ここでは、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図するものではない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施し得るものであり、発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の省略、置き換え、変更等を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同時に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0029】
1…CO2変換装置、2…CO2供給部、3…CO2電解部、4…CO精製部、5…CO2回収部、6…酸化部、8…第1流量計、8…カソード室、9…アノード室、10…隔膜、12,13,15,22…気液分離器。