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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126530
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】爆薬装填システムと切羽穿孔機
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/00 20060101AFI20240912BHJP
【FI】
E21D9/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034939
(22)【出願日】2023-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】宮本 真吾
(57)【要約】
【課題】作業安全性が高く、作業苦渋性が少なく、効率的な装填作業を実現できる爆薬装填システムと、この爆薬装填システムを搭載した切羽穿孔機を提供する。
【解決手段】切羽Kの装薬孔Hに対して爆薬を含む被装填物Pを装填する、爆薬装填システム50であり、被装填物Pを供給する供給装置20と、被装填物Pを装薬孔Hに送り出す送り出し装置30とを有し、供給装置20は、複数の被装填物Pを収容する収容容器22と、収容容器22から受け取った1つの被装填物Pを供給する供給機構23とを有し、収容容器22は、上方収容部22Aと、複数の被装填物Pを列状に整列させ、供給機構23に対して被装填物Pを1つずつ供給する下方供給部22Bとを備え、上方収容部22Aの底面24のうち、少なくとも下方供給部側の領域24aが回動軸24eを介して上下動する跳ね板により形成され、跳ね板24が第1アクチュエータ25にて上下動する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
切羽に形成されている装薬孔に対して、少なくとも爆薬を含む被装填物を装填する、爆薬装填システムであって、
前記被装填物を供給する、供給装置と、
前記供給装置から供給された前記被装填物を前記装薬孔に送り出す、送り出し装置とを有し、
前記供給装置は、複数の前記被装填物を収容する収容容器と、該収容容器から受け取った1つの該被装填物を供給する供給機構とを有し、
前記収容容器は、上方収容部と、該上方収容部の下方から延びて複数の前記被装填物を列状に整列させ、前記供給機構に対して該被装填物を1つずつ供給する、下方供給部とを備え、
前記上方収容部の底面のうち、少なくとも下方供給部側の領域が、回動軸を介して上下動する跳ね板により形成され、該跳ね板が第1アクチュエータにて上下動するようになっていることを特徴とする、爆薬装填システム。
【請求項2】
前記跳ね板のうち、下方供給部側の領域の端部に、下方へくの字状に屈曲する屈曲部が設けられており、
前記跳ね板が上方に移動した際に、前記被装填物が該跳ね板の下方空間に入り込むことを前記屈曲部が防止することを特徴とする、請求項1に記載の爆薬装填システム。
【請求項3】
前記跳ね板のうち、下方供給部側の領域の上面には、前記回動軸に平行な凸部が設けられていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の爆薬装填システム。
【請求項4】
前記跳ね板のうち、下方供給部側の領域の端部には、該跳ね板から上方へ傾斜する反り部が設けられていることを特徴とする、請求項3に記載の爆薬装填システム。
【請求項5】
前記送り出し装置は、前記被装填物が送り出される送り出し系統と、該送り出し系統において該被装填物を移動させる送り出し手段とを備えており、
前記送り出し系統が、前記供給装置から前記被装填物を受け取る第1系統と、該第1系統から移動してきた前記被装填物を前記装薬孔まで送り出す第2系統と、を備えていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の爆薬装填システム。
【請求項6】
前記供給機構は、第2アクチュエータと、該第2アクチュエータによって回転する過程で受け取り溝を介して前記被装填物を受け取る回転体とを備え、
前記受け取り溝が前記第1系統の方向に配向した際に、該受け取り溝から前記被装填物が該第1系統へ供給されることを特徴とする、請求項5に記載の爆薬装填システム。
【請求項7】
前記第1系統は、前記供給装置から供給された前記被装填物の重量を計測する重量計、もしくは前記被装填物が前記回転体に供給されたことを検知するレーザ距離センサを備えていることを特徴とする、請求項6に記載の爆薬装填システム。
【請求項8】
台車と、
前記台車に対して旋回自在かつ起伏自在に装着されているブームとを備え、
請求項5に記載の爆薬装填システムを構成する、前記供給装置が前記台車に搭載されており、
前記第2系統の一部もしくは全部が前記ブームに搭載されていることを特徴とする、切羽穿孔機。
【請求項9】
前記ブームに対して、穿孔システムと装薬孔清掃システムの少なくとも一方がさらに搭載されていることを特徴とする、請求項8に記載の切羽穿孔機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、爆薬装填システムと切羽穿孔機に関する。
【背景技術】
【0002】
発破による山岳トンネルの施工では、切羽に穿孔された装薬孔に爆薬や込め物(アンコ、粘土)を含む被装填物を装填する作業を作業員が切羽に近接して行うことから、肌落ちや落石等の切羽崩落に対する作業安全性が大きな課題となっている。また、装薬孔に被装填物を装填する作業は、装薬孔に被装填物を挿入し、込め棒で突いて装填する単純作業の繰り返しであることから、作業環境や作業姿勢などの厳しい苦渋作業である。切羽の正面視規模が大きくなり、装薬孔が多くなるに従い、作業安全性の低下と作業苦渋性の増加、装填作業時間が長時間に及ぶといった課題は一層顕著になる。
以上のことから、切羽に穿孔された装薬孔に爆薬等の被装填物を装填する作業において、作業安全性が高く、作業苦渋性が少なく、効率的な装填作業を実現できる爆薬装填システムが望まれている。
【0003】
ここで、特許文献1には、爆薬と込め物を装薬孔に装填する作業を遠隔操作で行う爆薬装填装置が開示されている。この爆薬装填装置は、爆薬供給装置と、込め物供給装置と、供給された爆薬もしくは込め物を装薬孔に圧送する圧送装置と、これらの各種装置を制御する制御装置とを備えている。込め物供給装置は、込め物置場から込め物落下部まで込め物を搬送するための一系統の搬送装置と、込め物落下部から落下する複数の込め物を貯留する単一もしくは複数の貯留装置と、単一もしくは複数の貯留装置の下端から落下する込め物を装填ホースまで導く複数の落下路を備えている。
この爆薬装填装置では、爆薬供給装置から供給された爆薬と込め物供給装置から供給された込め物が一つの装填機に個別に送られ、装填機に連通する充填ホースと充填パイプを介して、圧送装置によって装薬孔へ個別に圧送されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-113197号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の爆薬装填装置によれば、遠隔操作によって爆薬と込め物を装薬孔に装填できることから、作業安全性が高くなり、作業苦渋性を少なくできる。しかしながら、装薬孔に対して爆薬と込め物を個別に圧送して装填すること、言い換えれば、爆薬と込め物を連続的もしくは同時に装填できないことから、装填作業の効率性に関しては改善の余地がある。
【0006】
本発明は、切羽に穿孔された装薬孔に爆薬等の被装填物を装填する作業において、作業安全性が高く、作業苦渋性が少なく、効率的な装填作業を実現できる爆薬装填システムと、この爆薬装填システムを搭載した切羽穿孔機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成すべく、本発明による爆薬装填システムの一態様は、
切羽に形成されている装薬孔に対して、少なくとも爆薬を含む被装填物を装填する、爆薬装填システムであって、
前記被装填物を供給する、供給装置と、
前記供給装置から供給された前記被装填物を前記装薬孔に送り出す、送り出し装置とを有し、
前記供給装置は、複数の前記被装填物を収容する収容容器と、該収容容器から受け取った1つの該被装填物を供給する供給機構とを有し、
前記収容容器は、上方収容部と、該上方収容部の下方から延びて複数の前記被装填物を列状に整列させ、前記供給機構に対して該被装填物を1つずつ供給する、下方供給部とを備え、
前記上方収容部の底面のうち、少なくとも下方供給部側の領域が、回動軸を介して上下動する跳ね板により形成され、該跳ね板が第1アクチュエータにて上下動するようになっていることを特徴とする。
【0008】
本態様によれば、収容容器が、上方収容部と、上方収容部の下方から延びて複数の被装填物を列状に整列させ、供給機構に対して被装填物を1つずつ供給する下方供給部とを備え、上方収容部の底面のうち、下方供給部側の領域が、回動軸を介して上下動する跳ね板により形成されていることにより、供給機構に対して被装填物を1つずつ供給する下方供給部における被装填物の詰まりを抑制でき、被装填物が詰まることによる被装填物の供給不能を防止しながら、供給装置から供給された被装填物を装薬孔に送り出し、効率的な装填作業を実現することができる。
ここで、下方供給部は、1つの被装填物の直径もしくは最大断面寸法程度の高さを有して、斜め下方等に延設する線形を有することにより、被装填物を1つずつ供給機構に供給することができる。
例えば、被装填物が円柱状の外形を呈している、カートリッジ式含水爆薬である場合、下方供給部は、被装填物の直径程度の高さを備え、当該円柱状の長さ程度の幅を備えて斜め下方に延びる形態となる。複数の被装填物を一度に収容可能な寸法大の上方収容部と、上方収容部から被装填物を1つずつ下方へ供給する下方供給部の側面視形状は、全体として例えば漏斗状を呈している。
【0009】
跳ね板を上下動させる第1アクチュエータとしては、シリンダ機構等が挙げられ、シリンダ機構を構成するピストンロッドの往復動により、跳ね板を上下動させることができる。さらには、第1アクチュエータにモータが適用され、モータの回転シャフトにカムが取り付けられていて、モータの回転によってカムが跳ね板を間欠的に押し上げる形態であってもよい。
【0010】
また、「少なくとも爆薬を含む被装填物」とは、被装填物が爆薬のみからなる形態と、爆薬と込め物からなる形態を含んでいる。例えば、被装填物が爆薬と込め物により形成される場合は、本システムを適用することにより、爆薬と込め物を連続的に、もしくは同時に装薬孔に送り出すことが可能になる。
【0011】
また、本発明による爆薬装填システムの他の態様は、
前記跳ね板のうち、下方供給部側の領域の端部に、下方へくの字状に屈曲する屈曲部が設けられており、
前記跳ね板が上方に移動した際に、前記被装填物が該跳ね板の下方空間に入り込むことを前記屈曲部が防止することを特徴とする。
【0012】
本態様によれば、跳ね板のうち、下方供給部側の領域の端部に下方へくの字状に屈曲する屈曲部が設けられていることにより、被装填物が跳ね板の下方空間に入り込むことを防止できる。
【0013】
また、本発明による爆薬装填システムの他の態様において、
前記跳ね板のうち、下方供給部側の領域の上面には、前記回動軸に平行な凸部が設けられていることを特徴とする。
【0014】
本態様によれば、跳ね板のうち、下方供給部側の領域の上面において回動軸に平行な凸部が設けられていることにより、凸部にて跳ね板の後方に積層している複数の被装填物を堰き止め、下方供給部の上に積層して落下を待機している被装填物に対して、跳ね板の後方に積層している複数の被装填物から押込力が作用し、落下を待機している被装填物の落下が作用する押込力によって阻害されることを解消できる。
仮に、落下を待機している複数の被装填物に対して、跳ね板の後方に積層している複数の被装填物が荷重(押込力)を付与するように接触してきた場合、作用する荷重に起因する摩擦力によって、落下を待機している被装填物の落下が阻害されることになる。
【0015】
また、仮に、落下を待機している被装填物と、跳ね板の後方に積層している複数の被装填物との間に多少の摩擦力がある場合でも、凸部を備えた跳ね板が上下動することによって双方の間の接触(荷重を付与された状態での接触)を縁切りすることができ、この縁切りによって、落下を待機している被装填物の落下を保証することができる。
【0016】
また、本発明による爆薬装填システムの他の態様において、
前記跳ね板のうち、下方供給部側の領域の端部には、該跳ね板から上方へ傾斜する反り部が設けられていることを特徴とする。
【0017】
本態様によれば、跳ね板のうち、下方供給部側の領域の端部において跳ね板から上方へ傾斜する反り部が設けられていることにより、跳ね板の上下動による反り部の上下動によって、その上方にある複数の被装填物を蹴り上げ、この蹴り上げによって、落下を待機している被装填物と、跳ね板の後方に積層している複数の被装填物とを縁切りすることができる。すなわち、反り部の上下動の軌跡に沿って、相互に接触する被装填物を縁切りすることができる。また、反り部による蹴り上げによって、落下を待機している複数の被装填物の中から複数の被装填物が下方供給部に同時に落下することが抑制され、被装填物を1つずつ落下させることが可能になる。
【0018】
また、本発明による爆薬装填システムの他の態様において、
前記送り出し装置は、前記被装填物が送り出される送り出し系統と、該送り出し系統において該被装填物を移動させる送り出し手段とを備えており、
前記送り出し系統が、前記供給装置から前記被装填物を受け取る第1系統と、該第1系統から移動してきた前記被装填物を前記装薬孔まで送り出す第2系統と、を備えていることを特徴とする。
【0019】
本態様によれば、送り出し装置を構成する送り出し系統の第1系統に対して供給装置から被装填物が供給され、第2系統を介して送り出し手段にて被装填物を装薬孔に送り出して装填することから、効率的な装填作業を実現することができる。
また、被装填物が爆薬と込め物により形成される場合は、本システムが爆薬と込め物に固有の供給装置(爆薬供給装置、込め物供給装置)を備え、第1系統に沿って爆薬供給装置と込め物供給装置が直列状に配設される形態であってもよいし、一つの供給装置が爆薬供給部と込め物供給部を備え、一つの供給装置から爆薬と込め物が第1系統に供給される形態であってもよい。
爆薬としては、親ダイ(爆薬と雷管を含む)と増しダイを使用するケースと、増しダイのみを使用するケースがあるが、例えば親ダイと増しダイを使用するケースでは、爆薬供給装置がさらに親ダイ供給装置と増しダイ供給装置を第1系統に沿って直列状に備えていてもよい。また、装薬孔に複数の増しダイを装填するケースに対応するべく、複数の増しダイ供給装置を第1系統に沿って直列状に備えていてもよい。
【0020】
また、複数の被装填物が複数の装薬孔に対して、順次、連続的に供給されるに当たり、被装填物を第2系統に送り出す第1系統は、直線性を備えているのが望ましいことから、第1系統は比較的剛性のあるパイプにより形成されているのがよい。一方、第1系統から供給された被装填物を装薬孔に送り出す第2系統は、切羽に設けられている装薬孔までの距離に応じた長さを有し、作業員のハンドリング性が良好であり、第1系統と同様にある程度の剛性を有して直線性を担保できることが好ましいことから、ホースとパイプの組み合わせにより形成されるのがよい。
【0021】
また、本発明による爆薬装填システムの他の態様において、
前記供給機構は、第2アクチュエータと、該第2アクチュエータによって回転する過程で受け取り溝を介して前記被装填物を受け取る回転体とを備え、
前記受け取り溝が前記第1系統の方向に配向した際に、該受け取り溝から前記被装填物が該第1系統へ供給されることを特徴とする。
【0022】
本態様によれば、収容容器から供給される被装填物を受け取り溝を備えた回転体で受け取り、回転体が回転して受け取り溝が第1系統に配向した際に被装填物が第1系統に供給される(例えば落下する)ことにより、被装填物を効率的かつ確実に第1系統に供給することが可能になる。
【0023】
また、本発明による爆薬装填システムの他の態様において、
前記第1系統は、前記供給装置から供給された前記被装填物の重量を計測する重量計、もしくは前記被装填物が前記回転体に供給されたことを検知するレーザ距離センサを備えていることを特徴とする。
【0024】
本態様によれば、供給装置から供給された被装填物の重量を計測する重量計、もしくは被装填物が回転体に供給されたことを検知するレーザ距離センサを第1系統が備えていることにより、収容容器から1つの被装填物が第1系統や回転体に供給されていることを保証することができる。
ここで、例えば、レーザ距離センサが設けられている場合は、下方供給部の下方で、かつ回転体の上方のうち、例えば円柱状の被装填物の長手方向の左右端領域に対応する2箇所に、2つのレーザ距離センサが設けられていることにより、1つの被装填物が斜め姿勢でなく、水平姿勢で正しく落下して回転体の受け取り溝に収容されたことを保証することができる。すなわち、例えば1つの被装填物が斜めに落下することや、複数の被装填物が同時に落下することを防止できる。
1つの被装填物が斜めに落下して受け取り溝に収容される場合は、その後の回転体の回転の際に、斜め姿勢故に正しく受け取り溝に収容されていない被装填物が回転体にて挟まれ、回転体の回転が阻害される危険性がある。また、例えばリミットスイッチ等の物理的な接触によって被装填物を検知するセンサの場合は、リミットスイッチに個体差があることから、リミットスイッチが被装填物を正しく検知せず、結果として複数個の被装填物が受け取り溝に収容される危険性もあるが、レーザ距離センサを適用することにより、これらの危険性は生じない。
【0025】
また、本発明による切羽穿孔機の一態様は、
台車と、
前記台車に対して旋回自在かつ起伏自在に装着されているブームとを備え、
前記爆薬装填システムを構成する、前記供給装置が前記台車に搭載されており、
前記第2系統の一部もしくは全部が前記ブームに搭載されていることを特徴とする。
【0026】
本態様によれば、本発明の爆薬装填システムを搭載した切羽穿孔機を使用して、ブームを移動させたり伸長させながら第2系統の先端を装填対象の装薬孔に位置決めし、爆薬装填システムを作動して被装填物を装薬孔に装填することにより、切羽から作業員が離れた遠隔作業が実現され、作業員の切羽への近接作業が解消されることから、作業安全性が高められ、作業苦渋性が解消される。さらに、爆薬装填システムを備えた切羽穿孔機を使用することにより、効率的な装填作業を実現できる。
ここで、切羽穿孔機は一つもしくは複数のブームを備え、ブームの先端にはマンケージが設けられ、マンケージに乗り込んだ作業員が爆薬装填システムの第2系統の先端を装薬孔に位置決めする形態であってもよい。この場合でも、マンケージに乗り込んだ作業員が切羽から例えば2m程度離れた位置にいる状態で、第2系統を構成する装填パイプ等の先端を装薬孔に位置決めすることにより、作業員の作業安全性を保証することができる。尚、本態様の他に、爆薬装填システムを構成する供給装置は、ブームを備えていない搬送用の車両に搭載されてもよい。
【0027】
また、本発明による切羽穿孔機の他の態様は、
前記ブームに対して、穿孔システムと装薬孔清掃システムの少なくとも一方がさらに搭載されていることを特徴とする。
【0028】
本態様によれば、ブームに対して穿孔システムと装薬孔清掃システムの少なくとも一方がさらに搭載されていることにより、切羽に対する装薬孔の穿孔と、装薬孔の清掃と、清掃された装薬孔に対する爆薬等の装填を、一つのブームにて連続的に行うことができ、装薬孔の造成から爆薬等の装填までの一連の作業を効率的に行うことが可能になる。
ここで、ブームの周囲に、穿孔システムを構成する穿孔ドリフターと、装薬孔清掃システムを構成する清掃ロッドと、爆薬装填システムを構成する第2系統(の装填ホース)が取り付けられており、切羽の装薬孔の位置にブームが位置決めされた後、ブーム(の回転ユニット)を回転することによって、穿孔ドリフターや清掃ロッド、第2系統の装填ホースのいずれかを所定位置に位置決めし、所望する作業を実行することができる。
【0029】
例えば、穿孔ドリフターにて所定長の装薬孔を造成した後、ブームの回転ユニットを回転させて清掃ロッドを装薬孔に位置決めし、装薬孔の清掃を行い、その後にブームの回転ユニットを回転させて装填ホースを位置決めし、被装填物を連続的に装薬孔に装填することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明の爆薬装填システムと切羽穿孔機によれば、切羽に穿孔された装薬孔に爆薬等の被装填物を装填する作業において、作業安全性が高く、作業苦渋性が少なく、効率的な装填作業を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】実施形態に係る切羽穿孔機の一例の全体構成を示す図であって、実施形態に係る爆薬装填システムの一例の全体構成をともに示す図である。
図2】切羽穿孔機のブームの先端の回転ユニット周りの構成を示す斜視図である。
図3】併設されている3基の供給装置の一例の正面図である。
図4図3のIV方向の矢視図であって、併設されている3基の供給装置の一例の平面図であり、そのうちの1基の供給装置を構成する収容容器が外箱から張り出し、収容容器の側面にある収容扉が開いている状態を示す図である。
図5図3のV-V矢視図であって、供給装置の内部を側方から見た図である。
図6図5に対応する図であって、外箱から収容容器は張り出している状態を示す図である。
図7】上下動する跳ね板の凸部と反り部による作用を説明する図である。
図8】制御装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
図9】制御装置の機能構成の一例を示す図である。
図10】供給装置から第1系統に被装填物が供給された状態を示す図である。
図11】第2系統の途中位置に被装填物が送り出された状態を示す図である。
図12】第2系統から装薬孔に被装填物を送り出している状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、実施形態に係る爆薬装填システムと切羽穿孔機について、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0033】
[実施形態に係る爆薬装填システムと切羽穿孔機]
図1乃至図12を参照して、実施形態に係る爆薬装填システムと切羽穿孔機の一例について説明する。ここで、図1は、実施形態に係る切羽穿孔機の一例の全体構成を示す図であって、実施形態に係る爆薬装填システムの一例の全体構成をともに示す図である。また、図2は、切羽穿孔機のブームの先端の回転ユニット周りの構成を示す斜視図である。
【0034】
図1は、発破により岩盤Gを穿孔して山岳トンネルを施工する過程で造成される切羽Kにおいて、複数の装薬孔Hが形成されており、切羽Kの坑口側に切羽穿孔機100が位置決めされ、一つの装薬孔Hに対して被装填物P(図5,6参照)を装填している状況を示している。
【0035】
切羽穿孔機100は、台車10と、台車10に対して旋回及び起伏自在(X1方向、X3方向)に装着されている複数のブーム14,16とを備え、台車10には爆薬装填システム50が搭載されている。ここで、図示を省略するが、爆薬装填システム50は、切羽穿孔機100を構成する台車10の他に、搬送用の車両に搭載されてもよい。
【0036】
台車10にはオペレータキャビン12があり、オペレータキャビン12には、爆薬装填システム50を構成する制御装置40が収容されている。
【0037】
台車10に装着されている一方のブーム14は、先端にマンケージ15を回動自在に備え、軸方向であるX4方向への伸縮も可能なケージブームであり、ケージブーム14のX3方向への起伏に応じてマンケージ15は常時水平姿勢を維持できるようになっており、マンケージ15に搭乗した作業員が各種作業やオペレータへの指示を実行できるようになっている。
【0038】
一方、台車10に装着されている他方のブーム16は、爆薬装填作業等を実行する作業ブームであり、軸方向であるX2方向に伸縮可能であり、先端に回転ユニット17を備えている。
【0039】
図2に示すように、回転ユニット17の周囲には、爆薬装填システム50を構成する装填パイプ33cの他、不図示の穿孔システムを構成する穿孔ロッド39Aと、不図示の装薬孔清掃システムを構成する清掃ロッド39Bが取り付けられている。
【0040】
回転ユニット17がX10方向に回転することにより、選択されたパイプやロッドを作動状態とできる。例えば、最初に穿孔ロッド39Aを選定し、穿孔システムを駆動して切羽Kに装薬孔Hを造成し、次いで、回転ユニット17を回動して清掃ロッド39Bを装薬孔Hに位置決めし、装薬孔Hに清掃ロッド39Bを挿入して装薬孔清掃システムを駆動し、清掃ロッド39Bから高圧エアや高圧水等を噴射して(もしくはスクリュー上の清掃器具を適用して)装薬孔Hの清掃を行う。その後、回転ユニット17を回動して装填パイプ33cを装薬孔Hに位置決めし、図1に示すように装薬孔Hに装填パイプ33cを挿入し、装薬孔Hに爆薬を含む被装填物を装填する。
【0041】
このように、回転ユニット17が複数種の作業用ロッドやパイプを併設することにより、一つのブーム16にて複数種の作業を連続的に実行することが可能になる。ここで、図1では、一本の作業用ブーム16を図示しているが、台車10に複数の作業用ブームが設けられていてもよいし、複数の作業用ブームが各種作業(穿孔作業、清掃作業、装填作業)に固有のロッドやパイプを備えていてもよい。
【0042】
切羽穿孔機100を構成する台車10に搭載される爆薬装填システム50は、被装填物を供給する供給装置20と、供給装置20から供給された被装填物を装薬孔Hに送り出す送り出し装置30とを有する。さらに、図示例の爆薬装填システム50は、供給装置20と送り出し装置30を制御する制御装置40を有する。ここで、爆薬装填システムが制御装置を備えていない形態であってもよい。
【0043】
台車10には、複数の被装填物が収容される3基の供給装置20A乃至20Cが、送り出し装置30を構成する第1系統32に沿ってその上方に直列状に並列配設されている。被装填物は少なくとも爆薬を含み、爆薬のみを有する形態と、爆薬と込め物(装薬孔Hを閉塞する断面寸法を備える粘土(アンコ))の双方を有する形態がある。ここで、3基の供給装置20A乃至20Cがそれぞれ、親ダイ、増しダイ、込め物を第1系統32に供給するように構成されてもよい。被装填物は、例えば、薬包径φ25mm乃至30mm程度で長さ200mm程度のカートリッジ式含水爆薬と、雷管とを備えている。
【0044】
直列状に配設された複数の供給装置20A,20B,20Cはそれぞれ、複数の装薬孔Hに装填される被装填物を第1系統32に対してY1方向乃至Y3方向に供給する。
【0045】
例えば、供給装置20Aから被装填物Pが供給され、供給装置20Aに収容されている被装填物Pが第1系統32に落下した段階で、次に供給装置20Bから被装填物Pが供給され、供給装置20Bに収容されている被装填物P第1系統32に落下した段階で、最後に供給装置20Cから被装填物が供給される。
【0046】
供給装置20に対して制御装置40から駆動指令信号が送信され、供給装置20の駆動により第1系統32に対して被装填物Pが供給される。この供給装置20の具体的な構成については以下で詳説する。
【0047】
図1に戻り、送り出し装置30は、供給装置20から供給された被装填物Pを送り出すルートを形成する送り出し系統31と、送り出し系統31の途中に介在するボールバルブ34と、二種類の送り出し手段である第1送り出し手段35と第2送り出し手段36とを有する。
【0048】
送り出し系統31は、供給装置20から被装填物Pを受け取る第1系統32と、第1系統32から移動してきた被装填物Pを装薬孔Hまで送り出す第2系統33とを有する。
【0049】
第1系統32は、直列状に配設された各供給装置20A乃至20Cから被装填物Pを受け取り、第2系統33に送り出すルートであることから直線性を要し、従って、比較的剛性のあるスチールパイプや硬質樹脂等により形成される装填パイプによって形成されるのがよい。
【0050】
一方、第2系統33は、第1系統32との境界から切羽Kの装薬孔Hまでの比較的長い長さを有し、かつ、その途中位置では作業員の良好なハンドリング性を備えているのが好ましく、さらに、装薬孔Hへの挿入先端領域は直線性を備えているのが好ましい。そのため、第1系統32と接続される側は直線性を担保できる装填パイプ33aを備え、途中位置はハンドリング性が良好な装填ホース33bを備え、先端の装薬孔H側は装填パイプ33cを備えるユニット構造であるのがよい。装填ホース33bは、ある程度の剛性と変形性をともに備える素材である、例えば比較的硬質の樹脂や蛇腹管等により形成される。
【0051】
第1系統32と第2系統33の境界には、ボールバルブ34が設けられている。第1系統32の送り出し方向上流側(トンネルの坑口側)には第1送り出し手段35が設けられており、第1系統32に各被装填物Pが供給された後、第1送り出し手段35に対して制御装置40から駆動指令信号が送信され、第1送り出し手段35の駆動によって被装填物PがY5方向に第2系統33の途中位置(例えば、装填パイプ33aの途中位置)まで送り出される。
【0052】
ボールバルブ34を通過して第2系統33の途中位置まで送り出された被装填物Pは、この途中位置に停止され、ボールバルブ34によって第1系統32へ戻されること(逆走)が抑止される。
【0053】
ボールバルブ34は、貫通孔34bを備えた回転体34aを有する制御弁であり、被装填物Pが第2系統33の途中位置まで送り出された後、制御装置40から駆動指令信号が送信されると、回転体34aが回転して貫通孔34bが第1系統32及び第2系統33との連通状態を解除され、閉制御されるようになっている。尚、制御弁は、図示例のボールバルブの他にも、開度の調整が自在な逆止弁や、ヒンジ構造の弁であって、被装填物Pが第1系統32から第2系統33に送り出された後に自動的に弁が閉まる形態等であってもよい。
【0054】
ボールバルブ34を閉制御した後、装填パイプ33aに通じている第2送り出し手段36に対して制御装置40から駆動指令信号が送信され、第2送り出し手段36の駆動によって被装填物PがY8方向とY9方向に連続的に装填ホース33bと装填パイプ33cに送り出された後、装薬孔Hに装填される。
【0055】
ここで、第1系統32において被装填物Pを送り出す第1送り出し手段35は、コンプレッサにより形成される第1圧送機であり、第1圧送機35から第1系統32に供給される圧力エアにより、被装填物Pが圧送されるようになっている。尚、第1送り出し手段35は、図示例のコンプレッサの他に、シリンダ機構と、このシリンダ機構によって第1系統32を往復動する押し込み棒とにより形成されるユニット(図示せず)により構成されてもよい。
【0056】
一方、第2系統33において被装填物Pを送り出す第2送り出し手段36も、コンプレッサにより形成される第2圧送機である。第2圧送機36と第2系統33を連通する流路には、水タンク37に通じる流路が連通しており、水タンク37からY6方向に供給された潤滑水が、第2圧送機36からY7方向に圧送される圧力エアによって第2系統33に供給され、被装填物Pと潤滑水が圧力エアにより装薬孔Hへ圧送される。
【0057】
次に、図3乃至図7を参照して、供給装置20の構成について説明する。ここで、図3は、併設されている3基の供給装置の一例の正面図である。また、図4は、図3のIV方向の矢視図であって、併設されている3基の供給装置の一例の平面図であり、そのうちの1基の供給装置を構成する収容容器が外箱から張り出し、収容容器の側面にある収容扉が開いている状態を示す図であり、図5は、図3のV-V矢視図であって、供給装置の内部を側方から見た図であり、図6は、図5に対応する図であって、外箱から収容容器は張り出している状態を示す図である。さらに、図7は、上下動する跳ね板の凸部と反り部による作用を説明する図である。ここで、図5には、収容容器22に収容される多数の被装填物Pの図示を省略している。
【0058】
図示例の供給装置20は、前面21aに開口21bを備えた外箱21と、開口21bから出入り自在に外箱21の内部に収容されている収容容器22と、収容容器22から受け取った1つの被装填物Pを第1系統32に供給する供給機構23とを有する。
【0059】
図示例では、併設する3基の供給装置20A、20B,20Cがいずれも同じ構造を有しており、各供給装置20の下方に第1系統32が配設されている。
【0060】
図4に示すように、外箱21から収容容器22が前方へZ1方向にスライドして張り出すようになっており、収容容器22の側面に蝶番を介して開閉自在に設けられている収容扉22dがZ2方向に開くことにより、収容容器22の内部が開放され、収容容器22の側方から複数の被装填物Pを整列させ、積層させた状態で収容できるようになっている。
【0061】
図3に示すように、外箱21の前面21aの下方には排出扉22bが蝶番を介して開閉自在に設けられており、排出扉22bのほぼ全域が透明板22eにより形成され、透明板22eを介して内部が視認できるようになっている。外箱21に収容容器22が収容された状態において、排出扉22bの上に収容容器22の前面22aが位置合わせされ、双方がロックキー22hにてロックされるようになっている。外箱21から収容容器22をスライドさせる際は、ロックキー22hを解除して前方に引き出すことになる。
【0062】
図6に示すように、収容容器22の上端には複数の車輪を内蔵するスライドレール22gが設けられ、外箱21の上方にも複数の車輪を内蔵するスライドレール21cが設けられており、双方のスライドレール21c、22gが位置合わせされ、双方の備える車輪が回転することにより、外箱21から収容容器22が前方へZ1方向に引き出されるとともに、反対方向に押し込まれた際に外箱21へ収容されるようになっている。
【0063】
図5図6に示すように、収容容器22は、多数の被装填物Pを整列及び積層した状態で収容する上方収容部22Aと、上方収容部22Aの下方から延びて複数の被装填物Pを列状に整列させ、供給機構23に対して被装填物Pを1つずつ供給する、下方供給部22Bとを備える。
【0064】
図5図6に示すように、多数の被装填物Pを一度に収容可能な寸法大の上方収容部22Aと、上方収容部22Aから被装填物Pを1つずつ下方へ供給する下方供給部22Bの側面視形状は、全体として例えば漏斗状を呈している。下方供給部22Bは、上方収容部22Aの一端(図示例は前方端)から斜め下方へ延び、屈曲して鉛直下方へ延びる線形を有している。
【0065】
また、下方供給部22Bの上下の高さ寸法は、円柱状の被装填物Pの断面直径と同程度の高さを有しており、この高さ寸法と線形により、被装填物Pを1つずつ、緩やかにZ7方向に送り出して、下方に位置する供給機構23に供給することができるようになっている。このことにより、急激かつ激しい送り出しによる被装填物Pの破損を防止することができる。
【0066】
図5に示すように、上方収容部22Aの底面24のうち、一方の端部は回動端24dとなり、この回動端24dに回動軸24eが設けられている。また、底面24の途中位置の下面には、シリンダ機構により形成される第1アクチュエータ25のピストンロッドが取り付けられている。さらに、底面24における下方供給部側の領域24aの端部は、くの字状に屈曲した屈曲部24bを備えている。
【0067】
第1アクチュエータ25を作動させて、ピストンロッドを斜め上下方向へZ5方向に往復動させることにより、底面24は回動軸24eを中心に僅かに上下方向に回動し、この上下方向の回動によって底面24は斜め上下方向へZ6方向に往復動する。
【0068】
この底面24の往復動により、図6に示すように上方収容部22Aの内部に多数の被装填物Pが密に収容されている場合でも、底面24の往復動によって複数の被装填物Pの密着固定した状態を解除し、複数の被装填物Pが上方収容部22Aの内部で詰まって移動しない事態となることを防止しながら、下方供給部22Bへの被装填物Pの移動を保証することができる。
【0069】
このように、底面24は回動軸24eを中心に上下方向に往復動し、この動作によって複数の被装填物Pを下方から突き上げて相互の密着固定状態を解除することから、跳ね板と称することもできる。
【0070】
また、跳ね板24における下方供給部側の領域24aの端部に、くの字状に屈曲した屈曲部24bが設けられていることにより、跳ね板24が上方へ上がった際に一部の被装填物Pが跳ね板24の下方空間24cに入り込むことを抑止できる。このことにより、下方空間24cに被装填物Pが入り込んで、跳ね板24の往復動が阻害されることが防止される。
【0071】
図5図6に示すように、跳ね板24のうち、下方供給部側の領域24aの上面には、回動軸24eに平行な凸部24fが設けられている。さらに、跳ね板24のうち、下方供給部側の領域24aの端部には、跳ね板24から上方へ傾斜する反り部24gが設けられている。尚、図示例は、凸部24fと反り部24gが一体の部材であり、この一体の部材が跳ね板24の上面に溶接接合等により固定されている。ここで、凸部24fと反り部24gが別体の部材であって、双方が跳ね板24の上面に固定されている形態であってもよい。
【0072】
図7に示すように、跳ね板24のうち、下方供給部側の領域24aの上面において、回動軸24eに平行な凸部24fが設けられていることにより、凸部24fにて跳ね板24の後方に積層している複数の被装填物P2を堰き止め、下方供給部22Bの上に積層して落下を待機している複数の被装填物P1に対して、複数の被装填物P2から一点鎖線で示す押込力Qが作用して、落下を待機している被装填物P1の落下が押込力Qによって阻害されることを解消できる。
【0073】
仮に、落下を待機している複数の被装填物P1に対して、複数の被装填物P2が荷重(押込力Q)を付与するように接触してきた場合、作用する荷重Qに起因する摩擦力によって、落下を待機している被装填物P1の落下が阻害されることになる。
【0074】
また、跳ね板24のうち、下方供給部側の領域24aの端部において跳ね板24から上方へ傾斜する反り部24gが設けられていることにより、跳ね板24のZ6方向の上方への回動による反り部24gの上方への回動によって、その上方にある複数の被装填物P2を上方へZ8方向に蹴り上げ、この蹴り上げによって、落下を待機している複数の被装填物P1と、跳ね板24の後方に積層している複数の被装填物P2とを縁切りすることができる。
【0075】
すなわち、反り部24gの先端の上下動の軌跡に沿う仮想面Lに沿って、相互に接触する被装填物P1,P2を縁切りすることができる。また、反り部24gによる蹴り上げによって、落下を待機している複数の被装填物P1の中から複数の被装填物P1が下方供給部22Bに同時に落下することが抑制され、被装填物P1を1つずつ落下させることが可能になる。
【0076】
図5に示すように、収容容器22が外箱21の内部に収容されている状態で、収容容器22からその下方にある供給機構23に対して被装填物Pが供給される。
【0077】
供給機構23は、モータにより形成される第2アクチュエータ26と、第2アクチュエータ26によって回転される回転体27とを有する。回転体27には受け取り溝27aが設けられており、受け取り溝27aが下方供給部22Bに位置合わせされた際に1つの被装填物Pが受け取り溝27aにて受け取られるようになっている。
【0078】
被装填物Pが受け取り溝27aにて受け取られている回転体27が回転軸を中心にZ8方向に回転し、受け取り溝27aが斜め下方位置に到達した際に被装填物Pが自重によって徐々に動き出す。
【0079】
回転体27の側方には、下方にある第1系統32に被装填物Pを緩やかに案内するべく、斜め方向に僅かに湾曲した態様で延びているガイド29が設けられている。回転体27の回転に応じて受け取り溝27aの外側へ移動した被装填物Pは、ガイド29に沿って案内されながら第1系統32に衝撃無く供給される。
【0080】
回転体27の上方には、さらにレーザ距離センサ28が設けられており、レーザ距離センサ28の前方を被装填物Pが通過した際に、当該レーザ距離センサ28にて被装填物Pが第1系統32に1つの被装填物Pが供給されたことが検知される。
【0081】
図3図4に示すように、各供給装置20の下方の回転体27の上方の左右の2箇所に、一対のレーザ距離センサ28が設置されている。より具体的には、左右の一対のレーザ距離センサ28の設置位置は、水平姿勢で落下する円柱状の被装填物Pの長手方向の左右端領域に対応する位置に設定されている。
【0082】
このように、左右の2箇所に一対のレーザ距離センサ28が設置されていることにより、1つの被装填物Pが斜め姿勢でなく、水平姿勢で正しく落下して回転体27の受け取り溝27aに収容されたことを保証できる。さらに、複数の被装填物Pが同時に落下することを防止できる。一対のレーザ距離センサ28による検知データは、制御装置40に送信されるようになっている。
【0083】
ここで、図示を省略するが、レーザ距離センサ28に代わり、回転体27の下方に重量計が設けられていて、重量計によって被装填物Pが第1系統32に供給されたことが検知されるとともに、被装填物Pの重量が検知されてもよい。
【0084】
図5に示すように、下方供給部22Bの下面には排出扉22fがZ4方向に回動自在に設けられており、外箱21の前面には、別途の排出扉22bがZ3方向に回動自在に設けられている。そして、排出扉22bには透明板22eが設けられており、排出扉22fには不図示の内部確認用のスリットが設けられている。
【0085】
収容容器22から被装填物Pを取り出す際には、一方の排出扉22bをZ3方向に回動して開き、次いで他方の排出扉22fをZ4方向に回動して開くことにより、下方供給部22Bから複数の被装填物Pが連続的かつ効率的に排出されることになる。
【0086】
また、排出扉22bに透明板22eが設けられ、排出扉22fに不図示の内部確認用のスリットが設けられていることにより、外側から下方供給部22Bの内部や回転体27を視認することができ、下方供給部22Bにおいて複数の被装填物Pが詰まり無く移動していることや、1つの被装填物Pが回転体27の受け取り溝27aに正しい姿勢で受け取られていること等を確認することができる。
【0087】
また、図6に示すように、収容容器22の側方において回動自在な収容扉22dにも透明板22eが設けられている。この透明板22eにより、収容容器22に収容されている多数の被装填物Pの収容姿勢を確認することができる。
【0088】
次に、図8乃至図12を参照して、制御装置による爆薬装填システムの制御内容の一例について説明する。ここで、図8は、制御装置のハードウェア構成の一例を示す図であり、図9は、制御装置の機能構成の一例を示す図である。また、図10は、供給装置から第1系統に被装填物が供給された状態を示す図であり、図11は、第2系統の途中位置に被装填物が送り出された状態を示す図であり、図12は、第2系統から装薬孔に被装填物を送り出している状態を示す図である。
【0089】
図8に示すように、制御装置40は、接続バス46により相互に接続されているCPU(Central Processing Unit)41、主記憶装置42、補助記憶装置43、通信IF(interface)44、及び入出力IF45を備えている。主記憶装置42と補助記憶装置43は、コンピュータが読み取り可能な記録媒体である。尚、上記の構成要素はそれぞれ個別に設けられてもよいし、一部の構成要素を設けないようにしてもよい。
【0090】
CPU41は、MPU(Microprocessor)やプロセッサとも呼ばれ、CPU41は、単一のプロセッサであってもよいし、マルチプロセッサであってもよい。CPU41は、コンピュータからなる制御装置40の全体の制御を行う中央演算処理装置である。CPU41は、例えば、補助記憶装置43に記憶されたプログラムを主記憶装置42の作業領域にて実行可能に展開し、プログラムの実行を通じて周辺機器の制御を行うことにより、所定の目的に合致した機能を提供する。
【0091】
主記憶装置42は、CPU41が実行するコンピュータプログラムや、CPU41が処理するデータ等を記憶する。主記憶装置42は、例えば、フラッシュメモリ、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)を含む。補助記憶装置43は、各種のプログラム及び各種のデータを読み書き自在に記録媒体に格納し、外部記憶装置とも呼ばれる。補助記憶装置43には、例えば、OS(Operating System)、各種プログラム、各種テーブル等が格納される。OSは、例えば、通信IF44を介して接続される外部装置等とのデータの受け渡しを行う通信インターフェースプログラムを含む。外部装置等には、例えば、第1圧送機35や第2圧送機36、ボールバルブ34、レーザ距離センサ28等が備える通信器(いずれも図示せず)が含まれる。尚、ネットワークには、インターネット等の公衆ネットワーク、携帯電話網等の無線ネットワーク、VPN(Virtual Private Network)等の専用ネットワーク、LAN(Local Area Network)等が含まれる。
【0092】
補助記憶装置43は、例えば、主記憶装置42を補助する記憶領域として使用され、CPU41が実行するコンピュータプログラムや、CPU41が処理するデータ等を記憶する。補助記憶装置43は、不揮発性半導体メモリ(フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable ROM))を含むシリコンディスク、ハードディスクドライブ(HDD:Hard Disk Drive)装置、ソリッドステートドライブ装置等である。また、補助記憶装置43として、CDドライブ装置、DVDドライブ装置、BDドライブ装置といった着脱可能な記録媒体の駆動装置が例示され、着脱可能な記録媒体として、CD、DVD、BD、USB(Universal Serial Bus)メモリ、SD(Secure Digital)メモリカード等が例示される。
【0093】
通信IF44は、制御装置40が接続するネットワークとのインターフェイスである。通信IF44は、ネットワークを介して、レーザ距離センサ28から第1系統32に被装填物Pが供給されたことを示す検知データを受信する。また、第1系統32において被装填物Pを送り出す際には、第1圧送機35に対して駆動指令信号を送信し、第2系統33において被装填物Pを装薬孔Hに送り出す際には、ボールバルブ34を閉制御した後、第2圧送機36に対して駆動指令信号を送信する。
【0094】
入出力IF45は、制御装置40に接続する機器との間でデータの入出力を行うインターフェイスである。入出力IF45には、例えば、キーボード、タッチパネルやマウス等のポインティングデバイス、マイクロフォン等の入力デバイス等が接続する。制御装置40は、入出力IF45を介し、入力デバイスを操作する操作者からの操作指示等を受け付ける。
【0095】
また、入出力IF45には、例えば、液晶パネル(LCD:Liquid Crystal Display)や有機ELパネル(EL:Electroluminescence)等の表示デバイス、プリンタ、スピーカ等の出力デバイスが接続される。例えば、制御装置40内に格納されている、切羽Kにおける各装薬孔Hのうち、被装填物Pの装填対象となる装薬孔Hが表示デバイスに表示される。
【0096】
図9に示すように、制御装置40は、CPU41によるプログラムの実行により、少なくとも、通信部402、供給装置駆動部404、送り出し装置駆動部406、ボールバルブ駆動部408、及び格納部410の各種機能を提供する。尚、上記処理機能の少なくとも一部が、DSP(Digital Signal Processor)、GPU(Graphics Processing Unit)等によって提供されてもよく、同様に、上記処理機能の少なくとも一部が、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、数値演算プロセッサ、画像処理プロセッサ等の専用LSI(large scale integration)やその他のデジタル回路等であってもよい。
【0097】
通信部402は、ネットワークを介して、各供給装置20、第1圧送機35や第2圧送機36、ボールバルブ34、レーザ距離センサ28の備える通信IFに通信可能に接続される。
【0098】
図10に示すように、制御装置40の供給装置駆動部404から供給装置20Aの供給機構23(を構成する第2アクチュエータ26)に対して駆動指令信号S0が送信され、供給装置20Aから被装填物Pが第1系統32に供給される。
【0099】
そして、供給装置20Aから第1系統32に供給される過程で、レーザ距離センサ28が被装填物Pの通過を検知し、検知データS1が制御装置40の通信部402に対して送信され、通信部402にて受信された検知データが格納部410に記憶される。
【0100】
検知データが格納部410に記憶されたことを受けて、図11に示すように、制御装置40の送り出し装置駆動部406から第1圧送機35へ駆動指令信号S2が送信される。
【0101】
ここで、このような自動的な駆動指令信号S2の送信の他にも、検知データが格納部410に記憶された段階で、被装填物Pの送り出し準備が完了した旨の報知を表示デバイスに表示し、この表示を受けて、作業員が装置駆動部406を介して第1圧送機35へ駆動指令信号S2を送信する操作を行ってもよい。
【0102】
駆動指令信号S2を受信した第1圧送機35は、圧力エアを第1系統32に供給し、供給された圧力エアにより、被装填物Pで第1系統32からボールバルブ34を介し、第2系統33の装填パイプ33aの途中位置までY5方向に送り出される。
【0103】
第2系統33の所定位置に被装填物Pが停止されたら、図12に示すように、制御装置40のボールバルブ駆動部408から、ボールバルブ34を閉制御する駆動指令信号S3が送信され、駆動指令信号S3を受信したボールバルブ34は完全に閉じた状態となる。
【0104】
次に、制御装置40の送り出し装置駆動部406から、第2圧送機36と第2系統33を繋ぐ流路の途中にある制御弁36aに対して開制御する駆動指令信号S4が送信され、さらに、送り出し装置駆動部406から第2圧送機36に対して駆動指令信号S5が送信される。
【0105】
駆動指令信号S5を受信した第2圧送機36は圧力エアを供給し、圧力エアは水タンク37からY6方向に供給された潤滑水を第2系統33に送り出しながら、所定位置に停止している被装填物Pを後方からY7方向に押し込み、被装填物Pを第2系統33から切羽Kの装薬孔HへY8方向に送り出すことにより、被装填物Pの装填を行う。
【0106】
図示する爆薬装填システム50を備えた切羽穿孔機100を使用することにより、作業員は切羽Kに近接して作業苦渋性の高い爆薬装填作業を行う必要がなくなることから、切羽Kに穿孔された装薬孔Hに爆薬等の被装填物Pを装填する作業において、作業安全性が高く、作業苦渋性の解消された装填作業を実現できる。また、爆薬装填システム50により、効率的な装填作業を実現できる。
【0107】
尚、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、ここで示した構成に本発明が何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。例えば、図示例は、切羽穿孔機100に搭載された爆薬装填システム50を用いて各構成要素を制御する形態であるが、リモコン(リモートコントロール)を用いて各構成要素を制御する形態であってもよい。
【符号の説明】
【0108】
10:台車
12:操作室(オペレータキャビン)
14:ケージブーム(ブーム)
15:マンケージ(作業台)
16:作業ブーム(ブーム)
17:回転ユニット
20,20A~20D:供給装置
21:外箱
21a:前面
21b:開口
21c:スライドレール
22:収容容器
22A:上方収容部
22B:下方供給部
22a:前面
22b:排出扉
22c:側面
22d:収容扉
22e:透明板
22f:排出扉
22g:スライドレール
22h:ロックキー
23:供給機構
24:底面(跳ね板)
24a:下方供給部側の領域
24b:屈曲部(くの字状の屈曲部)
24c:下方空間
24d:回動端
24e:回動軸
24f:凸部
24g:反り部
25:第1アクチュエータ
26:第2アクチュエータ
27:回転体
27a:受け取り溝
28:レーザ距離センサ
29:ガイド
30:送り出し装置
31:送り出し系統
32:第1系統(装填パイプ)
33:第2系統
33a:装填パイプ
33b:装填ホース
33c:装填パイプ
34:ボールバルブ
34a:回転体
34b:貫通孔
35:第1送り出し手段(送り出し手段、第1圧送機)
36:第2送り出し手段(送り出し手段、第2圧送機)
36a:制御弁
37:水タンク
38:重量計
39A:穿孔ロッド
39B:清掃ロッド
40:制御装置
50:爆薬装填システム
100:切羽穿孔機
G:岩盤
K:切羽
H:装薬孔
P,P1,P2:被装填物(爆薬)
Q:押込力(荷重)
L:仮想面
図1
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図3
図4
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図12