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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126531
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】冷凍施設
(51)【国際特許分類】
   F25D 17/08 20060101AFI20240912BHJP
   F24F 7/10 20060101ALI20240912BHJP
   F24F 13/02 20060101ALI20240912BHJP
   F25D 23/06 20060101ALI20240912BHJP
   F25D 21/04 20060101ALN20240912BHJP
【FI】
F25D17/08 301
F24F7/10 A
F24F13/02 B
F25D23/06 303Z
F25D21/04 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034941
(22)【出願日】2023-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】本間 瑞基
【テーマコード(参考)】
3L080
3L102
3L345
【Fターム(参考)】
3L080AA02
3L080AC02
3L080AD03
3L080AE04
3L080BB05
3L080BE10
3L102JA02
3L102LE01
3L345AA06
3L345AA14
3L345AA19
3L345DD17
3L345DD21
3L345KK04
(57)【要約】
【課題】地下ピットの外周の側壁や基礎梁に貫通スリーブを設けることを不要にし、人通口に蓋やカバーを設置することを不要にしながら、人通口の気密性を確保しつつ外気給気対象エリアに外気を効果的に給気して凍上の防止を図ることのできる、冷凍施設を提供すること。
【解決手段】冷凍施設60は、地下ピット30と冷凍庫20が収容される建屋10とを有し、地下ピット30は、外周の側壁32と、複数の地下空間31に区切る複数の基礎梁35を備え、側壁32の第1点検口33と基礎梁35の第2点検口36に連続する変形ダクト40が通され、屋外にある送風機50により変形ダクト40に外気が給気された際に、変形ダクト40が膨らんで第1点検口33と第2点検口36と気密に密着し、外気給気対象エリアA1に外気が給気され、送風機50による外気の給気を停止した際に、変形ダクト40が萎んで第1点検口33と第2点検口36が開放される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部が地下に埋設される地下ピットと、該地下ピットの上にあって冷凍庫が収容される建屋とを有し、該地下ピットは、外周の側壁と、該側壁の内部を複数の地下空間に区切る複数の基礎梁とを備え、該側壁には第1点検口が設けられ、該基礎梁における該地下空間に臨む箇所には、隣接する地下空間同士を連通させる第2点検口が設けられている、冷凍施設であって、
前記第1点検口と前記第2点検口に対して、連続する変形ダクトが通されており、
屋外にある送風機により、前記変形ダクトの屋外側開口から外気が給気された際に、該変形ダクトが膨らんで前記第1点検口及び前記第2点検口の各エッジと気密に密着し、該変形ダクトの屋内側開口を介して前記地下ピットにおける外気給気対象エリアに外気が給気され、該送風機による外気の給気を停止した際に、該変形ダクトが萎んで該第1点検口と該第2点検口が開放されることを特徴とする、冷凍施設。
【請求項2】
前記変形ダクトは、前記第1点検口と前記第2点検口に通されている、主ダクトと、該主ダクトの途中から分岐して該主ダクトとは異なる該第2点検口に通されている枝ダクトとを有し、該主ダクトの一端に前記屋外側開口があり、少なくとも該枝ダクトの一端に前記屋内側開口があることを特徴とする、請求項1に記載の冷凍施設。
【請求項3】
複数の前記枝ダクトは、
一端に前記屋内側開口を備えて、外気を前記外気給気対象エリアに給気するための、給気用枝ダクトと、
一端が閉塞されて、外気の漏れを防止するために前記第2点検口を閉塞するための、閉塞用枝ダクトとを有し、
前記主ダクトに対して、前記給気用枝ダクトと前記閉塞用枝ダクトが設けられていることを特徴とする、請求項2に記載の冷凍施設。
【請求項4】
前記変形ダクトのうち、前記屋内側開口がある先端側が先細りとされていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の冷凍施設。
【請求項5】
前記屋内側開口がある先端側が、側面視でテーパー状に先細りとされている、もしくは、
側面視で階段状に先細りとされていることを特徴とする、請求項4に記載の冷凍施設。
【請求項6】
前記変形ダクトが、ビニールダクトと布製ダクトのいずれか一種であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の冷凍施設。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍施設に関する。
【背景技術】
【0002】
食品工場をはじめとする冷凍施設においては、大規模な冷凍庫が建屋内に装備されており、庫内の温度がマイナスであることから、この冷熱が建屋下方の地盤へ伝熱されることに起因して凍上が発生する恐れがある。凍上のメカニズムは以下の通りである。まず、冷凍庫からの伝熱によって地盤凍結線が発生し、アイスレンズの発生と地中の水分移動が生じる。ここで、アイスレンズとは、地中水分の凍結過程において、水分が凍結面付近に集まり、レンズ状の氷晶が形成される現象のことである。その後、アイスレンズが増長し、地盤の隆起に至る。このように、地中水分の凍結と体積膨張によって地盤が隆起することにより、施設が傾斜する等の被害が生じ得る。
【0003】
この凍上を防止する対策として、凍上防止管を設置する、所謂通気管工法と、地下ピットを構築して施設の直下から凍上対象の地盤そのものを排除する、所謂二重床工法を挙げることができる。
【0004】
ところで、地下ピットを設ける二重床工法においては、床下空間の中の特に中央部やその近傍における通気量が少ない場合に、床下空間が低温化し、凍上に至る恐れがある。この際の凍上対策として、床下空間にダクトと送風機にて温かい外気を給気し、加温する方法が挙げられる。この方法において、外気の給気効率を高めるために径の大きなダクトを施工しようとすると、基礎梁に貫通スリーブを設ける必要が生じ、貫通スリーブ周りの補強のためのコストが生じるといった課題があらたに発生する。
【0005】
また、基礎梁には、床下空間のメンテナンスの際に人が通ることのできる人通口が一般に設けられているが、上記のように外気を給気した際に、人通口が流路となって想定外の地下空間に外気が流れ、外気を給気したいエリアに十分な給気ができなくなるといった恐れもある。そこで、この対策として、給気の必要のないエリアに外気が流れる流路の途中にある人通口を、気密性のある蓋やカバーで塞ぐ方策が挙げられるが、人通口に蓋やカバーを取り付ける手間とコストがかかることに加えて、床下空間のメンテナンスの際には、蓋やカバーを取り外して人通口を通過し、通過後に蓋やカバーを人通口に戻す作業が生じ、メンテナンス時の作業性が低下するといった課題が発生する。
【0006】
従って、建屋の下に地下ピットが設けられている冷凍施設において、地下ピットを構成する外周の側壁や基礎梁に貫通スリーブを設けることを不要にし、人通口に蓋やカバーを設置することを不要にしながら、人通口の気密性を確保しつつ外気給気対象エリアに外気を効果的に給気して凍上の防止を図ることのできる、冷凍施設が望まれる。
【0007】
ここで、特許文献1には、冷蔵室の床の下方に形成された、凍上防止用床下空間部を備えた冷蔵倉庫が提案されている。この冷蔵倉庫は、外部の空気を床下空間部に導くための複数の外気導入部を床下空間部の全幅にわたって冷蔵室の後方に所定間隔をもって配設し、冷蔵室の前方の荷捌場の内部と、冷蔵室の下方にのみ対応する床下空間部を連通連結し、送風ファンと複数の吸込用開口部を有する低温空気導入路を設け、外気導入部から床下空間部に導入した空気を、冷蔵室の床を介して冷却し、複数の吸込用開口部を通して低温空気導入路から荷捌場へ圧送導入し、荷捌場の内部を、除湿・低温化及び陽圧化するように構成している。低温空気導入路の吹出し口を、荷捌場の内部のエアコンディショナの吸込み口近傍において吸込み口へ向けて配設し、吹出し口から低温空気を吸込み口に送り込むように構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第6539420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載の冷蔵倉庫によれば、冷蔵室の前方に配設されている荷捌場の内部を除湿・低温化するために必要な消費電力を、著しく低減できるとしている。しかしながら、上記するように、地下ピットを備えた冷凍施設において、貫通スリーブを設けることを不要にする等しながら、外気給気対象エリアに外気を効果的に給気することのできる手段を開示するものではない。
【0010】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、建屋の下に地下ピットが設けられている冷凍施設において、地下ピットを構成する外周の側壁や基礎梁に貫通スリーブを設けることを不要にし、人通口に蓋やカバーを設置することを不要にしながら、人通口の気密性を確保しつつ外気給気対象エリアに外気を効果的に給気して凍上の防止を図ることのできる、冷凍施設を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成すべく、本発明による冷凍施設の一態様は、
少なくとも一部が地下に埋設される地下ピットと、該地下ピットの上にあって冷凍庫が収容される建屋とを有し、該地下ピットは、外周の側壁と、該側壁の内部を複数の地下空間に区切る複数の基礎梁とを備え、該側壁には第1点検口が設けられ、該基礎梁における該地下空間に臨む箇所には、隣接する地下空間同士を連通させる第2点検口が設けられている、冷凍施設であって、
前記第1点検口と前記第2点検口に対して、連続する変形ダクトが通されており、
屋外にある送風機により、前記変形ダクトの屋外側開口から外気が給気された際に、該変形ダクトが膨らんで前記第1点検口及び前記第2点検口の各エッジと気密に密着し、該変形ダクトの屋内側開口を介して前記地下ピットにおける外気給気対象エリアに外気が給気され、該送風機による外気の給気を停止した際に、該変形ダクトが萎んで該第1点検口と該第2点検口が開放されることを特徴とする。
【0012】
本態様によれば、冷凍庫(例えば0℃以下の低温室)の下方にある地下ピットの備える外周の側壁と複数の基礎梁にそれぞれ設けられている、第1点検口と第2点検口に対して連続する変形ダクトが通されていて、送風機にて変形ダクトに外気が給気された際に変形ダクトが膨らんで第1点検口と第2点検口の各エッジと気密に密着し、変形ダクトの屋内側開口を介して地下ピットにおける外気給気対象エリアに外気が給気され、送風機による外気の給気を停止した際に変形ダクトが萎んで第1点検口と第2点検口が開放されることにより、地下ピットの外周の側壁や基礎梁に貫通スリーブを設けることを不要にし、人通口に蓋やカバーを設置することを不要にしながら、人通口の気密性を確保しつつ外気給気対象エリアに外気を効果的に給気することができる。このことにより、人通口である第2点検口と変形ダクトとの間の隙間から外気が漏れることを抑制しながら、例えば地下ピットの中央エリアやその近傍における凍上を効果的に防止することが可能になる。
【0013】
ここで、例えば基礎梁に設けられている第2点検口は、人通口として機能する。送風機は、例えば屋外に常時設置されており、外気給気対象エリアへの外気の給気が必要となる場合に駆動され、変形ダクトを介して外気給気対象エリアへ外気を給気する。
【0014】
変形ダクト故に、外気が給気されていない場合は萎んでおり、従って、第2点検口は人通口として機能する。そして、この人通口に対して蓋やカバー等を設置する必要はなく、外気が給気されていない常時においては開放された状態となっている。そのため、人通口である第2点検口を利用した床下空間のメンテナンス時の作業性が低下するといった問題は生じない。
【0015】
対して、外気が給気された際は、変形ダクトが膨らみ、第1点検口と第2点検口の開口形状に応じて、膨らんだ変形ダクトが各点検口のエッジと気密に密着することができる。
【0016】
また、本発明による冷凍施設の他の態様において、
前記変形ダクトは、前記第1点検口と前記第2点検口に通されている、主ダクトと、該主ダクトの途中から分岐して該主ダクトとは異なる該第2点検口に通されている枝ダクトとを有し、該主ダクトの一端に前記屋外側開口があり、少なくとも該枝ダクトの一端に前記屋内側開口があることを特徴とする。
【0017】
本態様によれば、変形ダクトが、主ダクトと、主ダクトの途中から分岐する枝ダクトとを有し、主ダクトの一端にある屋外側開口から給気された外気が、枝ダクトの一端にある屋内側開口を介して外気給気対象エリアに給気されることにより、多数の基礎梁があることに付随して多数の第2点検口がある場合であっても、シンプルな構成の変形ダクトにて外気給気対象エリアへの効果的な外気の給気を実現することができる。
【0018】
ここで、「少なくとも枝ダクトの一端に屋内側開口がある」とは、枝ダクトの一端にのみ屋内側開口がある形態と、枝ダクトの一端に屋内側開口があることに加えて、主ダクトの他端(その一端には屋外側開口がある)にも屋内側開口がある形態を含んでいる。
【0019】
また、本発明による冷凍施設の他の態様において、
複数の前記枝ダクトは、
一端に前記屋内側開口を備えて、外気を前記外気給気対象エリアに給気するための、給気用枝ダクトと、
一端が閉塞されて、外気の漏れを防止するために前記第2点検口を閉塞するための、閉塞用枝ダクトとを有し、
前記主ダクトに対して、前記給気用枝ダクトと前記閉塞用枝ダクトが設けられていることを特徴とする。
【0020】
本態様によれば、主ダクトに複数の枝ダクトが設けられ、そのうちの一部の枝ダクトはその一端に屋内側開口を備えて外気を外気給気対象エリアに給気するための給気用枝ダクトであり、そのうちの残りの枝ダクトはその一端が閉塞されて、外気の漏れを防止するために第2点検口を閉塞するための閉塞用枝ダクトであることにより、複数の枝ダクトにて閉塞したい第2点検口を閉塞し、外気給気対象エリアへ外気を給気するためのルートの途中にある第2点検口を外気の給気流路として利用することができる。
【0021】
また、本発明による冷凍施設の他の態様は、
前記変形ダクトのうち、前記屋内側開口がある先端側が先細りとされていることを特徴とする。
【0022】
本態様によれば、変形ダクトのうち、屋内側開口がある先端側が先細りとされていることにより、変形ダクトに給気した際に変形ダクトの内部の静圧を高めることができ、変形ダクトを膨らみ易くすることができる。
【0023】
また、本発明による冷凍施設の他の態様は、
前記屋内側開口がある先端側が、側面視でテーパー状に先細りとされている、もしくは、
側面視で階段状に先細りとされていることを特徴とする。
【0024】
本態様によれば、屋内側開口がある先端側が、側面視でテーパー状に先細りとされている形態や側面視で階段状に先細りとされている形態であることにより、いずれの形態であっても変形ダクトを膨らみ易くすることができる。
【0025】
また、本発明による冷凍施設の他の態様は、
前記変形ダクトが、ビニールダクトと布製ダクトのいずれか一種であることを特徴とする。
【0026】
本態様によれば、変形ダクトが、ビニールダクトと布製ダクトのいずれか一種であることにより、いずれの素材であっても、給気の際に効果的に膨らみ、給気を停止した際に効果的に萎んで第1点検口と第2点検口を速やかに開放することができる。ビニールダクトは、相対的に変形性が高く、より一層短時間に膨らんだ状態と萎んだ状態に移行でき、対して、布製ダクトは、相対的に耐摩耗性が高く、萎んだ状態で第2点検口等のエッジの下方に載置されている状態で人が通過する際に踏まれた場合でも、破損する可能性が低くなる。
【発明の効果】
【0027】
以上の説明から理解できるように、本発明の冷凍施設によれば、建屋の下に地下ピットが設けられている冷凍施設において、地下ピットを構成する外周の側壁や基礎梁に貫通スリーブを設けることを不要にし、人通口に蓋やカバーを設置することを不要にしながら、人通口の気密性を確保しつつ外気給気対象エリアに外気を効果的に給気して凍上の防止を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】実施形態に係る冷凍施設の一例の一部の縦断面図である。
図2】実施形態に係る冷凍施設の地下ピットの一例の平面図である。
図3A】基礎梁の第2点検口の正面図であって、第2点検口に通されている変形ダクトが萎んでいる状態をともに示す図である。
図3B】(a)は、基礎梁の第2点検口の正面図であって、第2点検口に通されている変形ダクトが膨らんでいる状態をともに示す図であり、(b)は、(a)のb-b矢視図である。
図4】(a),(b)はいずれも、給気用枝ダクトの先端側の先細り形態を示す縦断面図であり、(c)は、主ダクトの他端もしくは閉塞用枝ダクトの一端を示す縦断面図である。
図5】実施形態に係る冷凍施設の地下ピットの他の例の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、実施形態に係る冷凍施設の一例について、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0030】
[実施形態に係る冷凍施設]
図1乃至図5を参照して、実施形態に係る冷凍施設について説明する。ここで、図1は、実施形態に係る冷凍施設の一例の一部の縦断面図であり、図2は、実施形態に係る冷凍施設の地下ピットの一例の平面図である。また、図3Aは、基礎梁の第2点検口の正面図であって、第2点検口に通されている変形ダクトが萎んでいる状態をともに示す図である。さらに、図3B(a)は、基礎梁の第2点検口の正面図であって、第2点検口に通されている変形ダクトが膨らんでいる状態をともに示す図であり、図3B(b)は、(a)のb-b矢視図である。
【0031】
図1にその一部を示すように、冷凍施設60は、地下Gを掘削して一部が埋設される地下ピット30と、地下ピット30の上にあって冷凍庫20が収容される建屋10とを有する。
【0032】
冷凍施設60は、地下ピット30を有する二重床工法にて構築される施設であるが、図2に示すように、地下ピット30の外周の側壁32の近傍エリアは、外気の熱影響を受け易く、温まり易いことから、凍上の危険性は極めて少ない。これに対し、地下ピット30の中央部やその近傍のエリアは、外気の影響を受け難いため、凍上の危険性がある。
【0033】
図2では、平面視における地下ピット30の中央に凍上発生エリアA2があるものとし、凍上発生エリアA2を包囲して温まり難いと想定される一点鎖線で示すエリアを、凍上対策エリアA1に設定する。そして、この凍上対策エリアA1に対して外気を給気することにより、凍上対策エリアA1を外気にて温め、凍上を防止するものである。このことから、凍上対策エリアA1は、外気給気対象エリアとなる。
【0034】
地下ピット30は、外周の側壁32と、上スラブ32A及び下スラブ32Bと、側壁32の内部に例えば平面視格子状に設けられている複数の基礎梁35(図2参照)とを有し、複数の基礎梁35と側壁32とにより、複数の平面視矩形の地下空間31が形成される。
【0035】
尚、地盤Gの上には不図示の砕石層が敷設され、砕石層の上に例えば図示例の下スラブ32Bが設けられており、この下スラブ32Bは土間コンクリートスラブであってもよい。
【0036】
冷凍庫20は、その内部が0℃以下(例えば-25℃程度)に設定される貯蔵庫であり、その周囲が断熱材フォーム22により包囲されている。ここで、断熱材フォーム22は、発泡ポリスチレンや発泡スチレン、ポリスチレン、スチレン等のフォーム材により形成される。
【0037】
冷凍庫20(の断熱材フォーム22)の側面と建屋10の壁11との間には、壁空間13が形成されている。ここで、図示例の建屋10は、例えば鉄筋コンクリート製の建屋であるが、外壁が、金属製の外装材及び内装材が溝形鋼等の形鋼材による下地材により接合されている形態等、様々な構造仕様の外壁であってよい。また、図示を省略するが、建屋10の天井は、鋼板やステンレス、ガリバリウム鋼板、これらの板材に合成樹脂塗装やメッキが施された波板や折板等からなる金属屋根により形成されてよい。さらに、建屋10は、平屋建ての他に、2階建て等の複数階建ての建屋であってもよい。
【0038】
図2に示すように、地下ピット30は、平面視矩形の外周の側壁32の内部に、複数の格子状の基礎梁35が設けられており、側壁32と複数の基礎梁35により、あるいは複数の基礎梁35により、平面視矩形の複数の地下空間31が形成されている。
【0039】
図2に示す例では、平面視矩形の側壁32のうち、矩形の上辺の左側と下辺の右側の2箇所に第1点検口33が設けられている。第1点検口33は、地下ピット30の内部への外気の給気を行うための点検口であり、人通口ではない。
【0040】
対して、各基礎梁35における地下空間31に臨む箇所には、隣接する地下空間31同士を連通させる第2点検口36が設けられている。
【0041】
第1点検口33と複数の第2点検口36に対して、連続する変形ダクト40が通されている。変形ダクト40は、第1点検口33と複数の第2点検口36に通されている直線状の主ダクト41と、主ダクト41の途中から分岐して、主ダクト41とは異なる第2点検口36に通されている複数(図示例は3つ)の枝ダクト45とを有する。
【0042】
主ダクト41の一端は、第1点検口33から屋外側に張り出した位置に設けられている屋外側開口42であり、屋外側開口42に対応する位置に送風機50が設置されている。
【0043】
一方、主ダクト41の他端は、閉塞端43となっている。また、各枝ダクト45は、一端に屋内側開口46を備えている給気用枝ダクト45Aである。
【0044】
ここで、変形ダクト40には、ビニールダクトや布製ダクトが適用される。ビニールダクトと布製ダクトのいずれであっても、給気の際に効果的に膨らみ、給気を停止した際に効果的に萎んで第1点検口33と第2点検口36を速やかに開放することができる。
【0045】
変形ダクト40がビニールダクトである場合は、相対的に変形性が高くなり、より一層短時間に膨らんだ状態と萎んだ状態に移行できる。これに対して、変形ダクト40が布製ダクトである場合は、相対的に耐摩耗性が高くなり、萎んだ状態で第2点検口36等のエッジ36a(図3A参照)の下方に載置されている状態で人が通過する際に踏まれた場合でも、破損する可能性が低くなる。
【0046】
送風機50を駆動すると、屋外側開口42を介して外気が主ダクト41へX1方向に給気され、主ダクト41を流通する外気は、各給気用枝ダクト45Aに流入し、各給気用枝ダクト45Aの屋内側開口46を介して、外気給気対象エリアA1へX2方向に給気される。
【0047】
図示例では、左右に配設された2系統の変形ダクト40を介して、左右の複数箇所から外気給気対象エリアA1に対して外気が給気されるため、外気給気対象エリアA1の全域に効果的に外気が給気されることになる。
【0048】
ここで、図3を参照して、変形ダクト40の状態変化について説明する。
【0049】
基礎梁35の第2点検口36に通されている変形ダクト40は、送風機50による外気の給気が行われていない通常の状態においては、図3Aに示すように萎んだ状態で第2点検口36の下方に位置している。尚、図示例の第2点検口36の外周は、正面視円形のエッジ36aを有している。ここで、図示を省略するが、図3Aに示す変形ダクト40の萎んだ状態は、側壁32の第1点検口33においても同様である。ここで、第1点検口33と第2点検口36の正面視形状は、円形の丸孔以外にも、正面視矩形(正方形や長方形)、楕円形等であってもよい。
【0050】
図3Aからも明らかなように、変形ダクト40に外気が給気されていない場合は、第1点検口33,第2点検口36ともに開放されている。第1点検口33は、人通口でないことから、金網等の柵が設置され得るが、第2点検口36は人通口となっており、蓋やカバー等は設置されていない。そのため、図3Aに示す状態では、各第2点検口36が外気にて膨らんだ変形ダクト40で閉塞されていないことから、人通口である各第2点検口36を介して各地下空間31にスムーズに移動できるようになっている。
【0051】
一方、外気給気対象エリアA1に外気を給気するべく、変形ダクト40に対して外気が給気された場合は、図3B(a)に示すように、変形ダクト40が外気からのエア圧Pを受けて膨らみ、第2点検口36のエッジ36aと膨らんだ状態の変形ダクト40が気密に密着する。この際、膨らんだ変形ダクト40は、第1点検口33や第2点検口36のエッジ形状に左右されることなく、当該エッジ形状に応じて変形しながら気密に密着することができる。
【0052】
図3B(a)のb-b矢視図である図3B(b)に示すように、変形ダクト40は外気からのエア圧Pを受けて、第2点検口36のエッジ36aから基礎梁35の高さ方向の途中位置まで盛り上がった状態となり、双方が強固に密着することにより、変形ダクト40と第2点検口36との間に隙間が形成されることはなく、隙間を介して外気給気対象エリアA1へ提供された外気が漏れることが効果的に防止される。
【0053】
そして、一定時間もしくは一定期間に亘る外気給気対象エリアA1への外気の給気を終了させるべく、送風機50の駆動を停止することにより、変形ダクト40は図3Aに示すように萎んだ状態に戻り、第2点検口36が再度人通口として機能することになる。
【0054】
次に、図4を参照して、給気用枝ダクト45Aの先端形状の例と、閉塞用枝ダクト45Bの先端形状の例について説明する。ここで、図4(a),(b)はいずれも、給気用枝ダクトの先端側の先細り形態を示す縦断面図であり、図4(c)は、主ダクトの他端もしくは閉塞用枝ダクトの一端を示す縦断面図である。
【0055】
図4(a)に示す例は、給気用枝ダクト45Aの先端側の先細り形態が、側面視でテーパー状に先細りとされている、テーパー状の先細り先端46Aを備えている形態である。一方、図4(b)に示す例は、給気用枝ダクト45Aの先端側の先細り形態が、側面視で階段状に先細りとされている、階段状の先細り先端46Bを備えている形態である。
【0056】
いずれの形態であっても、給気用枝ダクト45Aのうち、屋内側開口がある先端側が先細りとされていることにより、給気用枝ダクト45Aを外気が流通して屋内側開口46を介してX2方向に給気される過程で、給気用枝ダクト45Aの内部の静圧を高めることができ、給気用枝ダクト45Aを膨らみ易くすることができる。
【0057】
また、図4(c)に示すように、主ダクト41の閉塞端43や、以下の図5を参照して説明する閉塞用枝ダクト45Bの閉塞端47は、端部が完全に閉塞されて外気の流通が遮断される。
【0058】
図2に戻り、地下ピット30では、外気給気対象エリアA1に対して複数の給気用枝ダクト45Aから外気がX2方向に給気され、外気給気対象エリアA1の全域に外気が給気される。そして、外気給気対象エリアA1の外側にある一部の第2点検口36を介して、外気給気対象エリアA1から冷熱を奪った外気がX3方向に排気される。
【0059】
一方、図5は、地下ピットの他の例の平面図である。図5に示す地下ピット30Aは、変形ダクト40Aが、主ダクト41の途中から分岐する給気用枝ダクト45Aを備える他に、一端が閉塞された閉塞端47を有し、外気の漏れを防止するために第2点検口36を閉塞するための閉塞用枝ダクト45Bをさらに備え、例えば、閉塞用枝ダクト45Bが、外気給気対象エリアA1の外周にある第2点検口36の一部を閉塞している点において、地下ピット30と相違する。
【0060】
地下ピット30Aによれば、外気給気対象エリアA1に給気された外気が当該外気給気対象エリアA1の外周へ排気される際に、外気が過度に排気されることで外気給気対象エリアA1が外気にて十分に温められることを阻害する恐れを解消できる。
【0061】
図示する地下ピット30,30Aを備えた冷凍施設60によれば、地下ピット30,30Aの外周の側壁32や基礎梁35に貫通スリーブを設けることを不要にし、人通口(第2点検口36)に蓋やカバーを設置することを不要にしながら、人通口(第2点検口36)の気密性を確保しつつ外気給気対象エリアA1に外気を効果的に給気することができる。このことにより、人通口である第2点検口36と変形ダクト40との間の隙間から外気が漏れることを抑制しながら、例えば地下ピット30,30Aの中央エリアやその近傍における凍上を効果的に防止することが変形ダクト可能になる。
【0062】
尚、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、ここで示した構成に本発明が何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0063】
10:建屋
11:外壁
12:
20:冷凍庫
30,30A:地下ピット
31:地下空間
32:側壁(外周の側壁)
32A:上スラブ
32B:下スラブ
33:第1点検口
35:基礎梁
36:第2点検口
40:変形ダクト
41:主ダクト
42:屋外側開口
43:閉塞端
45:枝ダクト
45A:給気用枝ダクト
45B:閉塞用枝ダクト
46:屋内側開口
46A:テーパー状の先細り先端
46B:階段状の先細り先端
47:閉塞端
50:送風機
60:冷凍施設
G:地下(地盤)
A1:凍上対策エリア(外気給気対象エリア)
A2:凍上発生エリア
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5