(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126573
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】ブレーキ喚起装置及びブレーキ喚起方法
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20240912BHJP
【FI】
G08G1/16 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023035007
(22)【出願日】2023-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西澤 浩光
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181CC04
5H181CC12
5H181CC14
5H181FF04
5H181FF25
5H181FF27
5H181FF33
5H181FF35
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL07
5H181LL08
5H181LL20
(57)【要約】
【課題】横断待機歩行者を見落とすことなく、横断歩道の手前で徐行を促すことができるブレーキ喚起装置及びブレーキ喚起方法を提供する。
【解決手段】 ブレーキ喚起装置10は、車両100の前方にある横断歩道27及び横断歩道27から所定の横断可能範囲29内にいる歩行者26を検知する検知部12と、検知部12が歩行者26を検知した場合に運転者に報知をする報知部13と、報知の後に車両100の徐行への移行の有無を判定する判定部14と、報知の後に車両100が徐行に移行しない場合に減速させる注意喚起徐行をするブレーキ発動部15と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前方にある横断歩道及び前記横断歩道から所定の横断可能範囲内にいる者を検知する検知部と、
前記検知部が前記者を検知した場合に運転者に報知をする報知部と、
前記報知の後に前記車両の徐行への移行の有無を判定する判定部と、
前記報知の後に前記車両が徐行に移行しない場合に減速させる注意喚起徐行をするブレーキ発動部と、を備えることを特徴とするブレーキ喚起装置。
【請求項2】
前記車両が走行する車線の信号機が青色の場合に前記報知を禁止する請求項1に記載のブレーキ喚起装置。
【請求項3】
前記報知が既に行われている場合、前記信号機が青色であっても既に発動している前記報知を継続する請求項1に記載のブレーキ喚起装置。
【請求項4】
前記横断可能範囲の内部にいて前記横断歩道から離れる向きに移動する前記者は前記報知の対象外とする請求項1に記載のブレーキ喚起装置。
【請求項5】
前記検知部は、前記横断歩道へ向かう前記者の移動速度が大きいほど前記横断可能範囲を拡大する請求項1に記載のブレーキ喚起装置。
【請求項6】
前記報知部は、所定の高さ内かつ所定の距離内に前記報知部の死角を有する場合に前記報知をする請求項1に記載のブレーキ喚起装置。
【請求項7】
前記車両の周辺の風景を撮像する撮像部を備え、
前記検知部は、撮像された前記風景から車線上のダイヤマークを検知して前記車両と前記横断歩道との位置関係を算出する請求項1に記載のブレーキ喚起装置。
【請求項8】
前記ブレーキ発動部は、前記注意喚起徐行により前記車両の走行速度を所定の徐行速度の上限値以下にまで減速させる請求項1に記載のブレーキ喚起装置。
【請求項9】
前記報知部は、前記横断歩道から所定の第1車間時間または所定の第1距離のときに前記報知をし、
前記ブレーキ発動部は、前記横断歩道から所定の第2車間時間または所定の第2距離のときに前記注意喚起徐行をする請求項1に記載のブレーキ喚起装置。
【請求項10】
車両の前方にある横断歩道及び前記横断歩道から所定の横断可能範囲内にいる者を検知するステップと、
前記者を検知した場合に運転者に報知をするステップと、
前記報知の後に前記車両の徐行への移行の有無を判定するステップと、
前記報知の後に前記車両が徐行に移行しない場合に減速させる注意喚起徐行をするステップと、を含むことを特徴とするブレーキ喚起方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、横断歩道付近を走行する車両のブレーキ喚起技術に関する。
【背景技術】
【0002】
走行する車両と歩行者との接触事故の割合は、横断歩道付近において高いことが知られている。近年、このような横断歩道付近における接触事故を回避するための技術が開発されている。例えば、横断している歩行者がいる横断歩道において、右折または左折待ちの状態にいる運転者が車両を発進させようとした場合に警告を行う技術が開示されている。
【0003】
また、横断歩道に向かって走行する車両には、道路交通法により、車両は、横断歩道を横断している又は横断しようとする歩行者がいないことが明らかな場合を除き、横断歩道の手前で停止できるような速度で走行する義務、つまり徐行する義務が課されている。また、このような車両には、さらに、横断している又は横断しようとする歩行者がいるときは、横断歩道の直前で一時停止する義務が課されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の技術では、歩行者が横断歩道を横断していなければ報知されない。従来の技術では、横断歩道の手前で横断歩道を横断しようと待機している歩行者(以下、「横断待機歩行者」と呼ぶ。)については運転者が注意せざるを得ない。歩行者が突然、素早く横断歩道へ侵入すると、この歩行者を見落として車両が横断歩道を通過してしまうおそれがあった。特に夜間では、横断待機歩行者が見えにくい場合もあり見落とすおそれがあった。そこで、横断待機歩行者を見落とすことがなく横断歩道の手前で徐行を促すことが求められていた。
【0006】
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、横断待機歩行者を見落とすことなく、横断歩道の手前で徐行を促すことができるブレーキ喚起装置及びブレーキ喚起方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態に係るブレーキ喚起装置は、車両の前方にある横断歩道及び前記横断歩道から所定の横断可能範囲内にいる者を検知する検知部と、前記検知部が前記者を検知した場合に運転者に報知をする報知部と、前記報知の後に前記車両の徐行への移行の有無を判定する判定部と、前記報知の後に前記車両が徐行に移行しない場合に減速させる注意喚起徐行をするブレーキ発動部と、を備えるものである。
【0008】
本実施形態に係るブレーキ喚起方法は、車両の前方にある横断歩道及び前記横断歩道から所定の横断可能範囲内にいる者を検知するステップと、前記者を検知した場合に運転者に報知をするステップと、前記報知の後に前記車両の徐行への移行の有無を判定するステップと、前記報知の後に前記車両が徐行に移行しない場合に減速させる注意喚起徐行をするステップと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、横断待機歩行者を見落とすことなく、横断歩道の手前で徐行を促すことができるブレーキ喚起装置及びブレーキ喚起方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】運転席から見たインストルメントパネル周辺部の概略図。
【
図3】車両の進行先に横断歩道がある場合の道路の模式図。
【
図4】ブレーキ喚起装置の動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
なお、以下の実施形態において「前方」及び「側方」は、車両の運転席に着座した運転者を基準にして、この運転者から見た向きで規定する。また、「歩行者」の用語には、自転車や、キックボード、ベビーカー、車椅子などの身体が露出する乗り物に乗っている人も含まれる。また、「横断待機歩行者」の用語には、実際に横断歩道を渡るために横断歩道の周辺で待機している歩行者に加えて、横断歩道から離れた位置から待機をせずに横断歩道を横断する者も含まれるものとする。
【0012】
図1は、ブレーキ喚起装置10を搭載した車両100の構成図である。ただし、
図1では車両100のうち、例えばエンジンなど、ブレーキ喚起装置10と関連性の低い構成は、図示を省略している。
【0013】
実施形態にかかるブレーキ喚起装置10は、
図1に示されるように、周辺状況取得部11、検知部12、報知部13、判定部14、及びブレーキ発動部15を備える。ただし、後述するように、これらの構成11~15のうち周辺状況取得部11、判定部14、及びブレーキ発動部15は、必須の構成ではない。
【0014】
また、ブレーキ喚起装置10は、
図1に示されるように、ブレーキシステム21、報知出力部22、及び車輪速センサー23に車内ネットワーク24を介して情報交換可能に接続される。車内ネットワーク24は、例えば、CAN-FD(Controller Area Network with Flexible Data Rate)のバスで構成される。
以下、ブレーキ喚起装置10の各構成11~15、及びこれらの各構成11~15とブレーキ喚起装置10に接続される周辺機器21~23との関係について、詳述する。
【0015】
周辺状況取得部11は、車両100の前方から側方までの範囲を中心とした車両外部の物体及び表示の配置情報を取得する。周辺状況取得部11は、例えば、前方カメラ(撮像部)16、GPS17、及びミリ波レーダー18の少なくとも1つで構成される。
【0016】
ここで、
図2は、運転席から見たインストルメントパネル25周辺部の概略図である。
前方カメラ16は、例えば、インストルメントパネル25の中央上面に設置されるステレオカメラである。ステレオカメラは、配置位置の僅かに異なる2つのレンズで車室内からフロントガラスを通して車両100の前方を撮像して画像データを取得する。ステレオカメラにより、車両100の前方の物体を立体的に把握することができるため、物体までの距離を高い精度で計測することができる。また、前方カメラ16では、前方の風景画像を連続的に取得することで、歩行者26の移動向きを特定することが可能である。なお、前方カメラ16の設置位置は、車両100の前方を含む画像データが取得できれば、上述の配置位置やレンズ数に限定されない。
【0017】
また、周辺状況取得部11は、人工衛星を利用して車両100の位置を測定するGPS(Global Positioning System)17であってもよい。また、これら前方カメラ16及びGPS17にミリ波レーダー18を組み合わせてもよい。ミリ波レーダー18は、ミリ波帯の電波を使って対象物との距離、速度、及び配置角度を測定するものである。GPS17やミリ波レーダー18でも、歩行者26の移動向きを特定することが可能である。なお、周辺状況取得部11を構成する構成16~18は、近年の車両100に標準設備として搭載されていることが多い。よって、周辺状況取得部11は、ブレーキ喚起装置10のために特別に設置せずに、既存のものを流用してもよい。
【0018】
また、
図3は、車両100の進行先に横断歩道27がある場合の道路28の模式図である。
検知部12は、
図3に示されるように、周辺状況取得部11が取得した車両100外部の物体及び表示の配置情報から、車両100の前方にある横断歩道27及びこの横断歩道27から車両100までの距離を検知する。また、検知部12は、この配置情報から、この横断歩道27から所定の横断可能範囲29内にいる歩行者26を横断待機歩行者26aとして検知する。横断可能範囲29とは、横断歩道側信号機が青信号の場合に横断歩道27を渡る可能性がある歩行者26が存在しうる範囲をいう。つまり、横断可能範囲29内にいる歩行者26は、横断待機歩行者26aとなることになる。
【0019】
ただし、検知部12は、横断可能範囲29の内部にいて歩行者26がいても、この歩行者26が横断歩道27から離れる向きに移動している場合には、検知の対象外とするのが好ましい。横断歩道27から離れるように移動する歩行者26は、横断歩道27を横断する意思がないと考えられるためである。横断する意思のない歩行者26を検知の対象外とすることで、報知部13による不要な報知を抑制することができる。
【0020】
また、横断歩道27付近で立ち止まっている歩行者26の中には、横断歩道27を渡る意思のない者もいる。このような歩行者26は、画像解析により、顔の向きや体の向きで判断可能である。そこで、検知部12は、このように横断可能範囲29の内部にいるものの横断の意思がない歩行者26も検知の対象外にしてもよい。
【0021】
また、検知部12は、横断歩道27へ向かう歩行者26の移動速度が大きいほど横断可能範囲29を拡大することが好ましい。つまり、横断歩道27へ向かう歩行者26の移動速度が大きい高速歩行者26bは、拡大横断可能範囲29aに入っていれば横断待機歩行者26aとする。高速歩行者26bは、横断歩道27から離れていても、横断歩道27を渡る可能性が高いためである。このように、検知部12が用いる横断可能範囲29を変動的にすることで、横断歩道27にかけ込んでくる可能性のある歩行者26を早期に検知して早期に運転者に報知することができる。この結果、運転者は自らブレーキペダル21aを踏み込んで歩行者26のかけ込み横断に対応することができる。
【0022】
また、検知部12は、車線上に表示されたダイヤマーク30を検知可能であることが望ましい。日本国においては、ダイヤマーク30を横断歩道27の30m手前及び50m手前の路面上にそれぞれ表示することで、前方に横断歩道27があること、及びこの横断歩道27までの距離を運転者に把握可能にしている。
【0023】
路面上に描画された横断歩道27は、道路28に直立する歩行者26と異なり、車室内の前方カメラ16からでは検知しづらい。つまり、前方カメラ16では、横断歩道27の検知距離が歩行者26を検知する検知距離に比較して短くなる。そこで、検知部12は、このダイヤマーク30を利用して車両100から横断歩道27までの距離を算出することが望ましい。ダイヤマーク30を利用して横断歩道27までの距離を把握することで、前方カメラ16が横断歩道27を直接検知するより手前の位置で早期に横断歩道27の有無及び位置を検知することができ、安心及び安全な運転が可能になる。
【0024】
なお、
図3では、横断可能範囲29の典型的な一例として横断歩道27の両側方端部にそれぞれかまぼこ形の範囲を示しているが、横断可能範囲29の形状はこれに限定されない。例えば、横断歩道27全体を含む形状の横断可能範囲29であってもよい。また、横断可能範囲29の手前の歩道38から横断歩道27に向けて斜めに横断しようとする歩行者26がいることもある。このような歩行者26も検知可能とするために、横断歩道27の手前側の道路28の一部も横断可能範囲29にしてもよい。なお、横断歩道27の検知は前方カメラ16の画像から取得して、横断待機歩行者26aはミリ波レーダー18で検知するなど、横断歩道27の検知方法と横断待機歩行者26aの検知方法とが異なっていてもよい。
【0025】
報知部13は、検知部12が横断待機歩行者26aを検知した場合に報知出力部22に報知指令を送信して、運転者にその旨を報知する。運転者は報知出力部22による報知により、横断待機歩行者26aがいる横断歩道27が前方にあることを把握する。
【0026】
ここで、報知出力部22は、
図2に示されるように、報知部13からの要求に応じて適時に横断歩行者がいる横断歩道27が前方にあることを知らせる報知を出力するヒューマンインターフェースである。報知出力部22は、例えば、インストルメントパネル25のハンドル31の背部の位置に嵌め込まれたメータパネル32である。ブレーキ喚起装置10は、例えば、メータパネル32上の周辺部に設けられた注意ランプ33や文字が点灯することで、運転者に横断待機歩行者26aがいることを報知する。また、報知出力部22は、インストルメントパネル25の、運転席と助手席との間に設置されたナビゲーションシステムであってもよい。なお、報知出力部22は、画面上への表示に限定されない。報知の態様は、スピーカーからの音声や、ハンドル31の振動、さらにこれらの組み合わせなど運転者が報知に気づく態様であればその態様は特に限定されない。
【0027】
なお、報知部13は、横断可能範囲29内に検知部12の死角を有する場合にも報知をする。死角は、例えば、横断歩道27付近の樹木34や、看板、緊急停車車などによって稀ながら発生することがある。検知部12が横断待機歩行者26aを検知しなかった場合も、検知部12の死角となる死角エリア35には横断待機歩行者26aがいる可能性があるためである。なお、横断可能範囲29内に死角があった場合にも、その死角が小さく横断待機歩行者26aが隠れ得ない大きさである場合にまで報知をすると運転者を戸惑わせる。そこで、不要な報知の乱発を回避するため、死角エリア35は、所定の高さ内かつ所定の距離内に限定されることが好ましい。
【0028】
判定部14は、報知部13による報知の後に運転者自らブレーキペダル21aを踏むことでブレーキシステム21を発動させて車両100を徐行させたか否か、を判定する。
【0029】
なお、報知部13による報知のタイミング及び判定部14による判定のタイミングは、車間時間で規定するのが望ましい。車間時間は、周辺状況取得部11から取得される横断歩道27までの距離及び車輪速センサー23で計測される車両100の走行速度から算出することができる。車間時間で規定することにより、車両100の走行速度が速いほど早めに報知がなされるため、走行速度が速い場合でも、運転者が自ら徐行するための時間を確保することができる。
【0030】
例えば、報知部13による報知のタイミングは、横断歩道27から所定の第1車間時間T1になったときと規定され、判定部14による判定のタイミングは、横断歩道27から所定の第2車間時間T2になったときと規定する。このとき、判定部14による判定は報知部13による報知よりも後に実行されるものであるため、第2車間時間T2は第1車間時間T1より短い。なお、第1車間時間T1及び第2車間時間T2に代えて、第1距離D1及び第2距離D2で報知及び判定のタイミングを規定してもよい。また、報知のタイミングは車間時間で規定して、判定のタイミングは距離で規定してもよい。
【0031】
ブレーキ発動部15は、報知の後に車両100が徐行に移行しない場合に、ブレーキシステム21を自動で発動することで注意喚起徐行をする。注意喚起徐行とは、車両100の走行速度を一段階減速させることで、運転者に車両100にブレーキをかける局面であることを喚起させるための動作である。ブレーキ発動部15は、注意喚起徐行により、例えば約5km/h以下など所定の徐行速度の上限値以下の走行速度まで落とすことが好ましい。この徐行速度の上限値は、注意喚起徐行の後、すぐに運転者自身による徐行に移行できなくても、横断歩道27の手前の停止線36で一時停止できるような余裕をもたせて設定される上限値である。
【0032】
なお、車両100が走行する車線の信号機37が青色の場合にまで、報知部13による報知及びブレーキ発動部15による注意喚起徐行が実施されると、運転者が困惑する。そこで、不要な報知及び注意喚起徐行を抑制する観点から、このような場合には、報知部13による報知及びブレーキ発動部15による注意喚起徐行は禁止されることが望ましい。ここで禁止とは、制御作動していない状態から、制御作動する状態にしないことをいう。
【0033】
ただし、これら報知及び注意喚起徐行の少なくとも一方が既に行われている場合、信号機37が青色であっても既に発動している報知及び注意喚起徐行の少なくとも一方を継続する。青信号であるにも関わらずブレーキ喚起装置10が注意喚起作動をしている場合は、信号が切り替わった直後などの可能性が高いためである。このような場合、例えば、身体にハンディキャップを抱えた人や、重い荷物も持った人が横断歩道27を渡り切れていない可能性があるためである。また、駆け込みで横断歩道27を渡ろうとする人や、間違えて横断歩道27を渡ろうとする人がいる可能性もあるためである。このような信号の切り替わり直後の状況では、ブレーキ喚起装置10により徐行又は一時停止を促すことで、より安全に運転することができる。また、このような状況で報知及び注意喚起徐行が継続しても運転者は困惑しにくいと考えられることに加えて、安心な運転を妨げることがないと考えられる。
【0034】
なお、ブレーキ喚起装置10の各構成は、CPU等のプロセッサ、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、或いはHDD(Hard Disk Drive)等の記憶装置、を具備するコンピュータとして構成することができる。
この場合、ブレーキ喚起装置10のうち、検知部12、判定部14、報知部13、及びブレーキ発動部15の機能は、記憶装置に記憶された所定のプログラムをプロセッサが実行することによって実現することができる。また、このようなソフトウェア処理に換えて、ASIC(Application Specific Integration Circuit)やFPGA(Field-Programmable Gate Array)等のハードウェアで実現することもできる。
【0035】
次に、
図4のフローチャートを用いて、ブレーキ喚起装置10の動作について説明する。
なお、ステップS10は、「S10」のように略記する。また、ステップS12以降も同様に略記する。
【0036】
まず、横断歩道27を検知するまでは、報知部13による報知もブレーキ発動部15による注意喚起徐行もしない(S10においてNOの場合S11へ進む、END)。
検知部12が横断歩道27を検知した場合、横断待機歩行者26aの有無が確認される(S10においてYESの場合S12へ進む)。
【0037】
横断待機歩行者26aが検知されていない場合、横断可能範囲29に検知部12からの死角の有無が確認される(S12においてNOの場合S13へ進む)。
横断可能範囲29に死角がない場合、歩行者26が突然横断歩道27を歩行するおそれはない。よって、報知部13による報知も、ブレーキ発動部15による注意喚起徐行もされないまま車両100は横断歩道27を通過する(S13においてNOの場合S11へ進む)。
横断可能範囲29内に死角がある場合、又は、横断待機歩行者26aが検知された場合、車両100の直進先における信号機37の有無が確認される(S12においてYESの場合、またはS13においてYESの場合、S14へ進む)。
【0038】
車両100の直進先に青色に点灯した信号機37がある場合(S14においてYESの場合、かつ、S15においてYESの場合S16へ進む)、報知部13による報知及びブレーキ発動部15による注意喚起徐行を禁止する。車両100が横断歩道27へ進入可能なときにまで注意喚起をすると、却って運転者を困惑させるためである。ただし、信号機37が青色に点灯している場合でも、既に報知または注意喚起徐行が発動している場合には、これら報知または注意喚起徐行を継続する。報知または注意喚起徐行の後に信号機37が青色に切り替わったと考えられ、渡り切れていない歩行者36等がいる可能性があるためである。
【0039】
信号機37がない場合又は信号機37があっても信号機37が赤色又は黄色に点灯していた場合、横断歩道27までの距離が第1車間時間T1又は第1距離D1より小さいか否かが確認される(S14においてNO又はS15においてNOの場合、S17へ進む)。
【0040】
横断歩道27までの距離が第1車間時間T1又は第1距離D1より小さくなるまでは報知部13による報知はされないまま車両100は直進する(S17の条件が満たされるまでS17を繰り返す)。
一方、横断歩道27までの距離が第1車間時間T1又は第1距離D1より小さい場合、報知部13が報知をする(S17においてYESの場合S18へ進む)。
【0041】
運転者自らのブレーキペダル21aの踏み込みがあったと判定部14が判定した場合、注意喚起徐行がされずに車両100は横断歩道27に進入する(S19においてYESの場合S21へ進む)。
一方、報知部13の報知の後にも運転者自らによるブレーキペダル21aの踏み込みがないと判定部14が判定した場合、ブレーキ発動部15が注意喚起徐行を開始する(S19においてNOの場合、S20へ進む)。
【0042】
報知と注意喚起徐行は、車両100が横断歩道27を通過するまで継続される(S21においてNOの場合S18へ進む)。
そして、車両100が横断歩道27を通過した場合、報知を解除して注意喚起徐行を終了する(S21においてYESの場合S22へ進む、END)。
【0043】
以上のように、実施形態に係るブレーキ喚起装置10によれば、報知部13によりブレーキをかける必要のある状況であることを報知することで、横断待機歩行者26aを見落とすことなく、横断歩道27の手前で徐行を促すことができる。また、報知により運転者が徐行や一時停止を行わないときにブレーキ発動部15がブレーキをかけることで、運転者による徐行又は一時停止をさらに促すことができる。よって、より確実に横断待機歩行者26aがいる横断歩道27において、車両100を徐行又は一時停止させることができる。特に夜間には、運転者の肉眼では見落とす可能性が高くなるため、ブレーキ喚起装置10により、見落としの可能性を抑制することで、より安心及び安全に運転することができる。
【0044】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0045】
例えば、路上に表示されたダイヤマークで横断歩道の有無及び距離を計測する例を説明したが、日本国外では、ダイヤマークに代わる表示により横断歩道の有無及び距離を運転者に知らせることが考えられる。この場合、検知部は、当該国のルールの乗っ取った表示を検知可能にすれば日本国内と同様に徐行又は一時停止の促進に利用することができる。
【符号の説明】
【0046】
10…ブレーキ喚起装置、11…周辺状況取得部、12…検知部、13…報知部、14…判定部、15…ブレーキ発動部、16…前方カメラ、17…GPS、18…ミリ波レーダー、21(21a)…ブレーキシステム(ブレーキペダル)、22…報知出力部、23…車輪速センサー、24…車内ネットワーク、25…インストルメントパネル、26(26a、26b)…歩行者(横断待機歩行者,高速歩行者)、27…横断歩道、28…道路、29(29a)…横断可能範囲(拡大横断可能範囲)、30…ダイヤマーク、31…ハンドル、32…メータパネル、33…注意ランプ、34…樹木、35…死角エリア、36…停止線、37…信号機、38…歩道、100…車両、D1…第1距離、D2…第2距離、T1…第1車間時間、T2…第2車間時間。