(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126574
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】エア供給装置、金型装置、プレス成形品の製造装置、およびプレス成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 43/50 20060101AFI20240912BHJP
B29C 33/46 20060101ALI20240912BHJP
B29C 43/34 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
B29C43/50
B29C33/46
B29C43/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023035009
(22)【出願日】2023-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 元教
【テーマコード(参考)】
4F202
4F204
【Fターム(参考)】
4F202CA09
4F202CB01
4F202CM14
4F202CM16
4F202CN01
4F202CN05
4F204AA24A
4F204AJ08
4F204FA01
4F204FB01
4F204FF01
4F204FN11
4F204FN15
4F204FN20
4F204FQ15
(57)【要約】
【課題】エア供給による成形品の離型に際し、エア供給路の樹脂詰まりを防止する。
【解決手段】エア供給装置は、エアにより第1入子(12)および第2入子(13)を離間させ第3エア供給路(R3)を開ける一方、エアが供給されないときには、第1入子(12)および第2入子(13)同士を接近させ第3エア供給路(R3)を閉じる開閉機構(4)を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エア供給源と、
前記エア供給源からのエアを、一対の金型により成形された熱可塑性樹脂組成物からなる成形体へエアを供給するエア供給路と、を備えるエア供給装置であって、
前記エア供給路は、前記一対の金型の何れか一方に備えられた、互いに離接可能な第1及び第2の入子によって構成されており、
前記エア供給源からのエアにより前記第1及び第2の入子を離間させ前記エア供給路を開ける一方、前記エア供給源からエアが供給されないときには、前記第1及び第2の入子同士を接近させ前記エア供給路を閉じる開閉機構を備える、エア供給装置。
【請求項2】
前記開閉機構は、
前記エア供給源からのエアの供給により、前記第1および第2の入子の互いの離間距離を0.005mm以上とし、
前記エア供給源からエアが供給されないときには、前記第1及び第2の入子の互いの離間距離を0.005mm未満とする、ように構成されている、請求項1に記載のエア供給装置。
【請求項3】
前記第1および第2の入子の前記成形体と接する部分において、前記第1および第2の入子の接合面は、前記成形において前記一対の金型が互いに近づく方向と略垂直な方向に形成される、請求項1または2に記載のエア供給装置。
【請求項4】
前記エア供給源からのエアが前記第1及び第2の入子の何れかに当たるように構成されている、請求項1または2に記載のエア供給装置。
【請求項5】
前記開閉機構は、前記エア供給源からのエアによる前記第1及び第2の入子の離間距離を制限するストップボルトを備える、請求項1または2に記載のエア供給装置。
【請求項6】
前記一対の金型の成形面は、曲面及び/又は凹凸面を含む、請求項1または2に記載のエア供給装置。
【請求項7】
請求項1または2に記載のエア供給装置からエアが供給される、熱可塑性樹脂を含む溶融樹脂組成物を成形する一対の金型を備えた、金型装置であって、
前記一対の金型の何れか一方は、
前記エア供給路を構成する、互いに離接可能な第1及び第2の入子を備え、
前記エア供給源からのエアにより前記第1及び第2の入子を離間させ前記エア供給路を開ける一方、前記エア供給源からエアが供給されないときには、前記第1及び第2の入子同士を接近させ前記エア供給路を閉じるように構成されている、金型装置。
【請求項8】
請求項7に記載の金型装置を備える、プレス成形品の製造装置。
【請求項9】
熱可塑性樹脂を含む溶融樹脂組成物を吐出部から吐出することにより一対の金型間に供給する樹脂供給工程と、
前記一対の金型を閉じて、流動可能な前記溶融樹脂組成物を熱プレスする熱プレス工程と、
前記一対の金型を閉じたまま、流動可能な前記溶融樹脂組成物を冷却プレスする冷却プレス工程と、
前記一対の金型を型開きして、エア供給装置を用いて、前記一対の金型からプレス成形品を離型する離型工程と、を含み、
前記エア供給装置は、前記一対の金型間へエアを供給するためのエア供給源と、前記一対の金型間の空間と連通するエア供給路と、を備える、エア供給装置であって、
前記エア供給路は、前記一対の金型の何れか一方に備えられた、互いに離接可能な第1及び第2の入子によって構成されており、
前記エア供給源からのエアにより前記第1及び第2の入子を離間させ前記エア供給路を開ける一方、前記エア供給源からエアが供給されないときには、前記第1及び第2の入子同士を接近させ前記エア供給路を閉じる開閉機構を備えており、
前記樹脂供給工程、前記熱プレス工程、および冷却プレス工程では、前記開閉機構により前記エア供給路を閉じる一方、前記離型工程では、前記開閉機構により前記エア供給路を開く工程を含む、プレス成形品の製造方法。
【請求項10】
前記熱プレス工程において、前記一対の金型の温度は、60~180℃である、請求項9に記載のプレス成形品の製造方法。
【請求項11】
前記熱可塑性樹脂は、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂である、請求項9または10に記載のプレス成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エア供給装置、金型装置、プレス成形品の製造装置、およびプレス成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂を加熱して溶融樹脂組成物とし、当該溶融樹脂組成物を一対の金型間に注入して、一対の金型を閉じてプレス成形し、冷却して成形品を得る技術が知られている。そして、当該成形品を金型から離型するために、一対の金型の型開き後、一方の金型に付いた成形品に対してエアを供給するエア供給装置が提案されている。
【0003】
例えば特許文献1には、開閉自在の空気噴出用エアノズル機構を備えた、プレス成形品の製造装置が開示されている。特許文献1の製造装置では、空気噴出用エアノズル機構は、可動型および固定型からなる一対の金型間に成形されたプレス成形品に対してエアを噴出する構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
エア供給による成形品の離型技術においては、従来、一対の金型のうちプレス成形品が付く金型にエア供給路が予め設けられている。そして、エア供給路を介して、一対の金型間にある成形品に対してエアを供給することによって、成形品を離型する。
【0006】
エア供給路は、予め金型に設けられているので、金型への溶融樹脂組成物の充填時およびプレス成形時においても、開いたままである。それゆえ、溶融樹脂組成物の粘弾性が小さい場合等は、金型内の溶融樹脂組成物がエア供給路に浸透するおそれがある。その結果、この溶融樹脂組成物の浸透により、成形品の離型時に、エア供給路に樹脂詰まりが生じ、成形品に対してエアを供給できないといった課題があった。
【0007】
本発明の一態様は、エア供給による成形品の離型に際し、エア供給路の樹脂詰まりを防止し得る、エア供給装置、金型装置、プレス成形品の製造装置、およびプレス成形品の製造方法を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るエア供給装置は、エア供給源と、前記エア供給源からのエアを、一対の金型により成形された熱可塑性樹脂組成物からなる成形体へエアを供給するエア供給路と、を備えるエア供給装置であって、前記エア供給路は、前記一対の金型の何れか一方に備えられた、互いに離接可能な第1及び第2の入子によって構成されており、前記エア供給源からのエアにより前記第1及び第2の入子を離間させ前記エア供給路を開ける一方、前記エア供給源からエアが供給されないときには、前記第1及び第2の入子同士を接近させ前記エア供給路を閉じる開閉機構を備える、構成である。
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るプレス成形品の製造方法は、熱可塑性樹脂を含む溶融樹脂組成物を吐出部から吐出することにより一対の金型間に供給する樹脂供給工程と、前記一対の金型を閉じて、流動可能な前記溶融樹脂組成物を熱プレスする熱プレス工程と、前記一対の金型を閉じたまま、流動可能な前記溶融樹脂組成物を冷却プレスする冷却プレス工程と、前記一対の金型を型開きして、エア供給装置を用いて、前記一対の金型からプレス成形品を離型する離型工程と、を含み、前記エア供給装置は、前記一対の金型間へエアを供給するためのエア供給源と、前記一対の金型間の空間と連通するエア供給路と、を備える、エア供給装置であって、前記エア供給路は、前記一対の金型の何れか一方に備えられた、互いに離接可能な第1及び第2の入子によって構成されており、前記エア供給源からのエアにより前記第1及び第2の入子を離間させ前記エア供給路を開ける一方、前記エア供給源からエアが供給されないときには、前記第1及び第2の入子同士を接近させ前記エア供給路を閉じる開閉機構を備えており、前記樹脂供給工程、前記熱プレス工程、および冷却プレス工程では、前記開閉機構により前記エア供給路を閉じる一方、前記離型工程では、前記開閉機構により前記エア供給路を開く工程を含む、方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、エア供給による成形品の離型に際し、エア供給路の樹脂詰まりを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係るプレス成形品の製造装置の概略構成を示すフロー図である。
【
図2】
図1に示す製造装置において、離型装置によるプレス成形体離型時の金型装置の状態を概略的に示す断面図である。
【
図3】
図2に示すエア供給装置に備えられた開閉機構の構成例を概略的に示す断面図であり、下金型にエアが供給されていないときの状態を示す。
【
図4】
図3に示す開閉機構の、下金型にエアが供給されたときの状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の一形態について、以下に詳細に説明する。なお、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上、B以下」を意味する。また、本明細書中に記載された文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。
【0013】
(プレス成形品の製造装置)
図1は、本実施形態に係るプレス成形品の製造装置100の概略構成を示すフロー図である。
図1に示すように、製造装置100は、溶融樹脂生成装置20と、供給装置30と、熱プレス装置40と、冷却プレス装置50と、離型装置60と、金型予熱装置70と、トリミング装置80と、を備えている。
【0014】
本実施形態に係る金型装置に備えられた金型本体11は、供給装置30と、熱プレス装置40と、冷却プレス装置50と、離型装置60と、金型予熱装置70と、の間を循環する。
図1には、製造装置100の各種装置間を循環する金型装置10の金型本体11の状態も示している((I)~(V)の状態)。
【0015】
溶融樹脂生成装置20は、熱可塑性樹脂組成物を加熱して溶融樹脂組成物を生成する。溶融樹脂生成装置20は、熱可塑性樹脂組成物の原料を投入するための原料投入部を備えている。そして、溶融樹脂生成装置20は、当該原料投入部から投入された原料を溶融混練する溶融混練装置を備えている。溶融混練装置としては、特に限定されず、押出機、ニーダー、バンバリミキサー、およびロール等が挙げられる。生産性と利便性優れることから、溶融混練装置としては、押出機が好ましく、2軸押出機がさらに好ましい。
【0016】
また、溶融樹脂生成装置20は、必要に応じて、原料を混合する混合装置を備えていてもよい。混合装置としては、特に限定されず、リボンブレンダー、フラッシュブレンダー、タンブラーミキサー、スーパーミキサーなどが挙げられる。
【0017】
供給装置30は、溶融樹脂生成装置20にて生成された溶融樹脂組成物Paを吐出する吐出部を有する。吐出部の構成としては、溶融樹脂組成物Paを吐出可能な構成であれば、特に限定されず、従来公知の構成を採用することができる。プレス成形体の生産性の向上の観点では、吐出部は、溶融樹脂組成物Paを定量的に吐出可能な構成であることが好ましい。このような吐出部の構成としては、例えば、ギアポンプを備えた構成、自動開閉ノズルを備えた構成などが挙げられる。吐出部の具体例は、プランジャー式吐出機、プリプランジャー式吐出機、スクリュー式吐出機である。供給装置30は、吐出部を介して、金型本体11へ流動性の溶融樹脂組成物Paを供給する。
【0018】
金型本体11は、下金型11Aと上金型11Bとからなっている。製造装置100では、供給装置30は、溶融樹脂組成物Paを下金型11Aへ吐出するようになっている。所定量の溶融樹脂組成物Paが供給された下金型11Aは、上金型11Bと仮接合される。仮接合状態とは、下金型11Aと上金型11Bとがガイドピン等により位置が固定されているが、下金型11Aと上金型11Bとの間に10~20mmの隙間がある状態をいう。
図1の(II)では、当該仮接合の状態を模式的に示している。そして、下金型11Aおよび上金型11Bは、仮接合した状態で熱プレス装置40へ搬送される。なお、下金型11Aおよび上金型11Bは、成形品の生産スピード等に応じて、仮接合した状態で、熱プレス装置40の前段にて待機され得る。
【0019】
熱プレス装置40において、金型本体11は、溶融樹脂組成物Paが供給された下金型11Aと上金型11Bとが仮接合した状態となっている(
図1に示す(II)の状態)。熱プレス装置40は、下金型11Aおよび上金型11B同士をプレスするためのプレス板を有する。このプレス板にはヒータが搭載されていても良い。熱プレス装置40では、プレス板を移動させることによって、下金型11Aと上金型11Bとが完全に接合される。このように、熱プレス装置40にて、金型本体11内の溶融樹脂組成物Paは、上下に熱プレス成形される。溶融樹脂組成物Paの熱プレス成形後、金型本体11は、熱プレス装置40から取り外される。そして、金型本体11は、冷却プレス装置50へ搬送される。冷却プレス装置50では、金型本体11は、下金型11Aと上金型11Bとが完全に接合した状態となっている(
図1に示す(III)の状態)。
図1の(III)では、当該完全に接合した状態を、仮接合の状態と区別するために模式的に示している。
【0020】
冷却プレス装置50では、金型本体11は、所定温度に冷却されるとともに、プレスが掛けられる。これにより、金型本体11内の溶融樹脂組成物Paは、プレス成形されるとともに冷却され、プレス成形体Pbとなる。その後、金型本体11内のプレス成形体Pbは、離型装置60へ搬送される。
【0021】
離型装置60は、搬送ハンド61を備えている。離型装置60では、まず、金型本体11は、型開きされ、下金型11Aおよびプレス成形体Pbと、上金型11Bとに分離される。金型本体11の型開きにより、プレス成形体Pbは、下金型11A側に保持されることになる。搬送ハンド61は、プレス成形体Pbに吸着し、下金型11Aからプレス成形体Pbを下金型11Aから離型する(
図1に示す(VI)の状態)。下金型11Aから離型したプレス成形体Pbは、搬送ハンド61により、トリミング装置80へ搬送される。トリミング装置80にて、プレス成形体Pbは、端材がトリミングされ、プレス成形品となる。
【0022】
また、離型装置60では、プレス成形体Pbが離型した下金型11Aおよび上金型11Bは、金型予熱装置70にて予備加熱され、供給装置30へ搬送される。下金型11Aおよび上金型11Bは、(V)の状態のように別々に分離された状態で予備加熱されてもよいし、互いに接合した状態で予備加熱されてもよい。金型予熱の熱効率の観点では、下金型11Aおよび上金型11Bが接合した状態で予備加熱されることが好ましい。なお、下金型11Aおよび上金型11Bは、成形品の生産スピード等に応じて、供給装置30の前段にて待機され得る。
【0023】
(金型装置10)
金型装置10は、プレス成形体Pbを下金型11Aから離型するために、エア供給装置からプレス成形体Pbに対してエアが供給される構成となっている。当該エア供給装置は、下金型11Aに設けられている。
図2は、離型装置60によるプレス成形体離型時の金型装置10の状態を概略的に示す断面図である。なお、図面を簡便にする観点から、
図2では、上金型11Bおよびプレス成形体を省略している。また、
図2に示す金型装置10は、プレス成形体を下金型11Aから離型するためにエアを供給する前の状態を示す。
【0024】
図1に示す搬送ハンド61は、プレス成形体に吸着する吸着パット62を備えている。搬送ハンド61は、プレス成形体を吸着パット62に吸着して、下金型11Aから離型する。
【0025】
図2に示すように、金型装置10の下金型11Aは、互いに離接可能な第1入子12および第2入子13を備えている。第1入子12は、第2入子13の上に配置されている。第1入子12と第2入子13とは互いに嵌合し、下金型11Aの成形面を構成する。
【0026】
(エア供給装置1)
金型装置10には、プレス成形体に対してエアを供給するエア供給装置1が設けられている。エア供給装置1は、エア供給源2と、エアブロック3と、エア供給路Rと、を備えている。エアブロック3は、下金型11Aの下部に接して設けられている。
【0027】
エア供給源2は、下金型11Aへ供給するエアを生成するものである。エア供給源2は、下金型11Aへ供給するエアを生成できるものであれば、従来公知の装置を適用できる。エア供給源2は、例えば、エア放出ポンプである。
【0028】
エア供給路Rは、エア供給源2からのエアを金型本体により成形されたプレス成形体へ供給する通路である。エア供給路Rは、第1エア供給路R1と、第2エア供給路R2と、を備えている。第1エア供給路R1は、エアブロック3に設けられている。エアブロック3において、第1エア供給路R1は、下側から延び、第2入子13と接する上端面まで延びている。また、第2エア供給路R2は、第2入子13に設けられ、第1エア供給路R1と連通する。第2入子13において、第2エア供給路R2は、第1入子12と接する面まで延びている。エア供給装置1は、エア供給源2からのエアが第1エア供給路R1および第2エア供給路R2を通過して第1入子12に当たるように構成されている。
【0029】
ここで、エア供給装置1は、エア供給源2からのエアにより第1入子12および第2入子13を離間しエア供給路Rを開ける開閉機構を備えている。当該開閉機構は、エア供給源2からのエアが供給されないときには、第1入子12および第2入子13同士を接近させ、エア供給路Rを閉じる。
【0030】
エア供給装置1によれば、上記開閉機構を備えていることにより、プレス成形時等のエア供給によるプレス成形体の離型前の状態では、下金型11Aにエアが供給されないので、開閉機構により、エア供給路Rは、閉じた状態であり、第1エア供給路R1および第2エア供給路R2と、金型本体11(
図1参照)の成形空間とは連通しない。それゆえ、当該成形空間内の溶融樹脂組成物は、第1エア供給路R1および第2エア供給路R2に浸透することがない。一方、エア供給によるプレス成形体の離型に際し、エア供給源2から下金型11Aにエアが供給されるので、当該エアにより、開閉機構は、第1入子12と第2入子13とを離間させ、エア供給路Rを開く。その結果、開閉機構により、第1エア供給路R1および第2エア供給路R2と、金型本体11(
図1参照)の成形空間とは連通し、エア供給源2からのエアがプレス成形体へ供給されることになる。このように、エア供給装置1によれば、上記開閉機構により、プレス成形時等のエア供給によるプレス成形体の離型前の状態にはエア供給路Rが閉じ溶融樹脂組成物が浸透しないので、エア供給によるプレス成形体の離型に際しエア供給路Rの樹脂詰まりを防止することができるという効果を奏する。
【0031】
エア供給装置1によれば、プレス成形に用いる溶融樹脂組成物の粘弾性が比較的低い場合であっても、開閉機構によりエア供給路Rを確実に閉じることができる。それゆえ、溶融樹脂組成物の粘弾性が比較的低い場合、特に、溶融樹脂組成物がポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)等のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂を含有する場合、上記効果を奏する金型装置10は特に有効である。
【0032】
溶融樹脂組成物がポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)等のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂を含有する場合、上記開閉機構は、(a)エア供給源2からのエアにより、第1入子12および第2入子13の互いの離間距離を0.005mm以上とし、(b)エア供給源2からエアが供給されないときには、第1入子12および第2入子13の互いの離間距離を0.005mm未満とする、ように構成されていることが好ましい。第1入子12および第2入子13の互いの離間距離をこのように設定することにより、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂を含有する溶融樹脂組成物のエア供給路Rへの浸透を防止することができる。
【0033】
なお、
図2に示す構成では、エア供給装置1は、下金型11Aに備えられていた。しかし、エア供給装置1は、これに限定されず、下金型および上金型の何れか一方に備えられていればよい。下金型および上金型の何れにエア供給装置1が備えられるかは、金型分離の際に、プレス成形体が保持される金型に依存する。金型分離の際にプレス成形体が上金型に保持される場合、エア供給装置1は、上金型に備えられる。
【0034】
また、本実施形態に係る金型装置10は、熱可塑性樹脂を含む溶融樹脂組成物を成形する一対の金型である金型本体11を備えている。そして、金型本体11を構成する下金型および上金型の何れか一方、例えば下金型11Aは、エア供給路Rを構成する、互いに離接可能な第1入子12及び第2入子13を備えている。そして、当該下金型11Aは、エア供給源2からのエアにより第1入子12及び第2入子13を離間させエア供給路Rを開ける一方、エア供給源2からエアが供給されないときには、第1入子12及び第2入子13同士を接近させエア供給路Rを閉じるように構成されている。本実施形態に係る金型装置10によれば、上述した本実施形態に係るエア供給装置と同様の効果を奏する。
【0035】
(開閉機構の構成例)
開閉機構の構成は、上記効果を奏する構成であれば、特に限定されない。エア供給装置1における開閉機構の構成例について、
図3および
図4を参照して、以下に説明する。
図3および
図4は、
図2に示すエア供給装置1に備えられた開閉機構の構成例を概略的に示す断面図であり、
図3は、下金型11Aにエアが供給されていないときの状態を示し、
図4は、下金型11Aにエアが供給されたときの状態を示す。
【0036】
図3に示す状態は、より具体的には、プレス成形以前の下金型11Aの状態であり、下金型11Aに流動性の溶融樹脂組成物Paが充填されている。一方、
図4に示す状態は、下金型11Aからプレス成形体Pbを離型するときの下金型11Aの状態であり、下金型11Aの成形面にプレス成形体Pbが保持されている。
【0037】
図3および
図4に示すように、下金型11Aには、
図2に示すエア供給装置1の構成要素の1つである開閉機構4が設けられている。開閉機構4は、ストップボルト4aを備えている。ストップボルト4aは、エア供給源からのエアによる第1入子12および第2入子13の離間距離を制限する機能を有する。
【0038】
ストップボルト4aは、第1入子12と第2入子13とを連結する部材であり、第2入子13の下側の面から上方に突出して設けられている。ストップボルト4aは、ネジ部4bと、本体部4cと、フランジ部4dと、を有する柱状部材である。ストップボルト4aは、その先端(上端)から、ネジ部4b、本体部4c、フランジ部4dの順に設けられている。ネジ部4bは、ネジ部4bよりも径が小さく、フランジ部4dは、本体部4cよりも径が大きくなっている。また、第2入子13は、ストップボルト4aを収容する収容部14を有している。収容部14内で、ストップボルト4aは、フランジ部4dが第2入子13側に位置し、かつ当該ストップボルト4aの軸が一対の金型のプレス方向と平行となるように配置されている。また、ストップボルト4aにおいて、ネジ部4bは、第1入子12と締結している一方、第2入子13とは締結していない。また、本体部4cは、第2入子13を貫通し、第2入子13に対して上下に移動可能になっている。フランジ部4dは、収容部14内を上下に移動可能になっている。フランジ部4dの上側の端面4eと収容部14の上面14aとは当接する。
【0039】
ストップボルト4aは、エア供給時の第2入子13に対する第1入子12の上下移動に連動して、上下に移動可能になっている。より具体的には、
図3に示すように、プレス成形以前の下金型11Aの状態では、ストップボルト4aは、フランジ部4dの上側の端面4eと収容部14の上面14aとの所定距離Lだけ離間するように、収容部14に収容されている。ずなわち、ストップボルト4aは、上下方向に移動可能なように、所定距離Lのあそびを持たせて収容部14に収容されている。
【0040】
図3に示す状態では、下金型11Aにエアが供給されていないので、下金型11Aの成形面の近傍Cにおいて、第1入子12と第2入子13とは互いに接近しており、エア供給路は閉じた状態になっている。このため、
図3に示す状態では、溶融樹脂組成物Paは、エア供給路に浸透することがない。
【0041】
一方、下金型11Aからプレス成形体Pbを離型するとき、
図2に示すように、下金型11Aにエアが供給される。
図2に示すように、エア供給源2からのエアが第1エア供給路R1および第2エア供給路R2を通過して第1入子12に当たると、
図4に示すように、第1入子12は、第2入子13に対して上方に移動する。その結果、第1入子12と第2入子13とは離間する。第2入子13に対する第1入子12の上方への移動に連動して、ストップボルト4aも上方へ移動する。そして、フランジ部4dの端面4eが収容部14の上面14aに当接することによって、第1入子12の上方への移動が制限される。その結果、下金型11Aにエアが供給されると、第1入子12と第2入子13とに隙間Dが生じ、下金型11Aの成形面の近傍Cまで繋がる第3エア供給路R3が形成される。なお、第3エア供給路R3は、
図2に示す第2エア供給路R2と連通する。開閉機構4においては、ストップボルト4aの所定距離L(あそび量)は、第1入子12と第2入子13との離間距離(第3エア供給路R3の大きさ)に相当する。それゆえ、第1入子12と第2入子13との離間距離は、所定距離L(あそび量)を設定することで適宜設定できる。
【0042】
下金型11Aへのエア供給が停止されると、下金型11Aは、
図4に示す状態から
図3に示す状態に戻る。すなわち、下金型11Aへのエア供給が停止されると、第1入子12は、その自重により下方へ落下し、第2入子13と接合する。その結果、第1入子12と第2入子13との間に隙間Dが生じなくなり、第3エア供給路R3は閉じる。
【0043】
以上のように、ストップボルト4aの作用により、開閉機構4は、エア供給源からのエアにより第1入子12および第2入子13を離間し第3エア供給路R3を開ける一方、エア供給源からのエアが供給されないときには、第1入子12および第2入子13同士を接近させ、第3エア供給路R3を閉じる。よって、開閉機構4により、プレス成形時等のエア供給によるプレス成形体の離型前の状態には第3エア供給路R3が閉じ溶融樹脂組成物Paが浸透しないので、エア供給によるプレス成形体Pbの離型に際し第3エア供給路R3の樹脂詰まりを防止することができるという効果を奏する。
【0044】
なお、
図2~4に示す構成では、エア供給源2からのエアが第1入子12に当たる構成であった。しかし、本実施形態に係るエア供給装置1は、エア供給源2からのエアが第1入子12および第2入子13の何れかに当たる構成であればよい。それゆえ、エア供給装置1は、エア供給源2からのエアが第2入子13に当たる構成であってもよい。
【0045】
ここで、金型装置10により成形されるプレス成形体は、上側に底部を有し、下側が開放した有底円筒状の蓋であり、下端部の周囲につばが形成されている。下金型11Aにおいて、第1入子12の成形部分は、上記プレス成形体における、底部および当該底部に連結する側壁部の一部の内面に相当する。また、第2入子13の成形部分は、上記プレス成形体における、側壁部の一部およびつばの内面に相当する。プレス成形体の側壁部の内面は、第1入子12および第2入子13の両方によって成形される。なお、図示していないが、上金型11Bの成形部分は、プレス成形体の外面に相当する。このように、下金型11Aおよび上金型からなる一対の金型の成形面は、曲面及び/又は凹凸面を含むことが好ましい。エア供給装置1によれば、曲面及び/又は凹凸面を含む成形面を含む一対の金型に対しても、曲面及び/又は凹凸面を構成する第1入子12および第2入子13を設け、第3エア供給路R3形成することができる。なお、特許文献1に開示された開閉自在の空気噴出用エアノズル機構は、凹凸のない平面状の成形面に対して設けられるものである。プレス成形体の成形精度及び金型強度上の観点から、成形面の曲面及び/又は凹凸面に対して、特許文献1の空気噴出用エアノズル機構を設けることは困難である。
【0046】
また、本実施形態に係るエア供給装置では、第1入子12および第2入子13のプレス成形体Pbと接する部分(下金型11Aの成形面の近傍C)において、第1入子12および第2入子13の接合面は、一対の金型が互いに近づく方向(すなわち、プレス成形における一対の金型のプレス方向;
図3および
図4に示す上下方向)と略垂直な方向に形成されることが好ましい。このような構成では、エア供給時に開く第3エア供給路R3は、下金型11Aの成形面の近傍Cにおいて、プレス方向に対して略垂直に延びることになる。プレス成形時において、一対の金型内に充填された溶融樹脂組成物のプレス方向の内圧に比べ、当該プレス方向に略垂直な方向の内圧の方がはるかに低くなる。それゆえ、溶融樹脂組成物の内圧の影響を受けくいプレス方向に対して略垂直な方向に第1入子12および第2入子13の接合面を設けることにより、溶融樹脂組成物のエア供給路への浸透をさらに防止できる。なお、ここでいう「プレス方向に対して略垂直な方向」は、プレス方向に対する角度が90°の方向も含む。当該方向は、プレス方向に対する角度が90±10°の方向を意味する。
【0047】
なお、上記では、本実施形態に係るエア供給装置1は、プレス成形用の金型に備えられた態様であった。しかし、エア供給装置1が備えられる金型は、プレス成形用の金型に限定されず、下金型と上金型との一対の金型であればよい。エア供給装置1は、射出成型用の金型に備えられていてもよい。
【0048】
(プレス成形品の製造方法)
本実施形態に係るプレス成形品の製造方法は、樹脂供給工程と、熱プレス工程と、冷却プレス工程と、離型工程と、を含む。上記樹脂供給工程では、熱可塑性樹脂を含む溶融樹脂組成物を吐出部から吐出することにより一対の金型間に供給する。上記熱プレス工程では、前記一対の金型を閉じて、流動可能な前記溶融樹脂組成物を熱プレスする。上記冷却プレス工程では、前記一対の金型を閉じたまま、流動可能な前記溶融樹脂組成物を冷却プレスする。そして、上記離型工程では、前記一対の金型を型開きして、エア供給装置を用いて、前記一対の金型からプレス成形品(プレス成形体)を離型する。
【0049】
本実施形態に係るプレス成形品の製造方法において使用される上記エア供給装置は、前記一対の金型間へエアを供給するためのエア供給源と、前記一対の金型間の空間と連通するエア供給路と、を備える、エア供給装置である。そして、前記エア供給路は、前記一対の金型の何れか一方に備えられた、互いに離接可能な第1及び第2の入子によって構成されており、上記エア供給装置は、前記エア供給源からのエアにより前記第1及び第2の入子を離間させ前記エア供給路を開ける一方、前記エア供給源からエアが供給されないときには、前記第1及び第2の入子同士を接近させ前記エア供給路を閉じる開閉機構を備えている。
【0050】
そして、本実施形態に係るプレス成形品の製造方法は、前記樹脂供給工程、前記熱プレス工程、および冷却プレス工程では、前記開閉機構により前記エア供給路を閉じる一方、前記離型工程では、前記開閉機構により前記エア供給路を開くことを特徴としている。
【0051】
本実施形態に係るプレス成形品の製造方法によれば、上述した本実施形態に係るエア供給装置と同様の効果を奏する。
【0052】
本実施形態に係るプレス成形品の製造方法は、上記特徴を有していれば特に限定されないが、例えば、
図1に示す製造装置100および
図2~
図4に示すエア供給装置1を用いた方法が挙げられる。以下、一例として、
図1に示す製造装置100および
図2~
図4に示すエア供給装置1を用いたプレス成形品の製造方法について、説明する。
【0053】
樹脂供給工程において使用される溶融樹脂組成物は、熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物を加熱することによって得られる。上記樹脂組成物の加熱方法は、熱可塑性樹脂の溶融樹脂組成物を形成できる方法であれば、従来公知の方法を採用することができる。好ましくは、上記加熱方法は、樹脂組成物を溶融混練する溶融混練工程を含む。当該溶融混練工程には、例えば
図1に示す溶融樹脂生成装置20が使用される。
【0054】
溶融混練工程の態様としては、溶融混練された樹脂組成物を得ることができる限り、特に限定されない。溶融混練工程の具体例としては、例えば以下(a1)および(a2)の方法が挙げられる:
(a1)混合装置などによる混合またはブレンドによって、熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物を調製する。その後、当該樹脂組成物を溶融混練装置に供給し、溶融混練する方法;
(a2)熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物の原料を溶融混練装置に供給し、溶融混練装置内で樹脂組成物を調製する(完成させる)とともに、当該樹脂組成物を溶融混練する方法。
【0055】
前記(a1)の方法において、熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物の原料を混合またはブレンド(ドライブレンド)する順序は特に限定されない。前記(a2)の方法において、熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物の原料を溶融混練装置に供給する順序は特に限定されない。
【0056】
前記(a1)の方法において、混合装置としては、特に限定されず、リボンブレンダー、フラッシュブレンダー、タンブラーミキサー、スーパーミキサーなどが挙げられる。
【0057】
前記(a1)および(a2)の方法において、溶融混練装置としては、特に限定されず、押出機、ニーダー、バンバリミキサー、およびロール等が挙げられる。生産性と利便性優れることから、溶融混練装置としては、押出機が好ましく、2軸押出機がさらに好ましい。
【0058】
溶融混練工程において、樹脂組成物を溶融混練するときの温度は、熱可塑性樹脂の物性(融点、重量平均分子量等)および使用する添加剤の種類等によるため一概には規定できない。樹脂組成物を溶融混練するときの温度に関して、例えば、熱可塑性樹脂がポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂(以下、「P3HA系樹脂」と称する場合がある。)である場合、吐出部から吐出される溶融混練された樹脂組成物の温度(以下、組成物温度と称する場合がある。)を140℃~180℃とすることが好ましく、145℃~170℃とすることがより好ましく、150℃~165℃とすることがさらに好ましい。組成物温度が140℃未満である場合、P3HA系樹脂の未溶融物が発生してしまう場合がある。一方、組成物温度が180℃以上である場合、P3HA系樹脂が熱分解してしまう場合がある。
【0059】
また、上記樹脂供給工程では、上記溶融樹脂組成物を吐出部から吐出することにより下金型11Aおよび上金型11Bからなる一対の金型間に供給する。上記樹脂供給工程では、上記溶融樹脂組成物を溶融状態のまま吐出部から一対の金型へ吐出する。そして、これにより、溶融状態の上記溶融樹脂組成物を一対の金型間に供給する。
【0060】
上記溶融樹脂組成物の金型間への供給方法は、吐出部から吐出された溶融樹脂組成物を一対の金型間に供給できれば、特に限定されない。一対の金型間に確実に溶融樹脂組成物を供給できる観点から、まず、吐出部から下金型11Aへ溶融樹脂組成物を吐出し、下金型11Aに所定量の溶融樹脂組成物を供給した後、当該下金型11Aに上金型11Bを載置することにより、一対の金型間に溶融樹脂組成物を供給することが好ましい。
【0061】
また、上記樹脂供給工程において、吐出部の構成としては、溶融樹脂組成物を吐出可能な構成であれば、特に限定されず、従来公知の構成を採用することができる。プレス成形体の生産性の向上の観点では、吐出部は、上記で例示したものが挙げられる。
【0062】
また、上記熱プレス成形工程では、前記一対の金型を閉じて流動可能な前記溶融樹脂組成物を熱プレスする。上記樹脂供給工程では、上記溶融樹脂組成物は溶融状態のまま上記一対の金型間に供給されるので、上記熱プレス成形工程にて前記一対の金型を閉じても、上記溶融樹脂組成物は一対の金型内の空間を流動可能である。
【0063】
上記樹脂供給工程にて溶融状態の上記溶融樹脂組成物を一対の金型間に供給した後、上記熱プレス成形工程では、当該一対の金型に対して、熱プレス装置40を用いて熱プレスを行う。特に、熱可塑性樹脂としてP3HA系樹脂を用いる場合、熱プレス工程において、一対の金型の温度は、60℃~180℃であり、120℃~160℃であることが好ましい。当該温度範囲で加熱した一対の金型により熱プレスを行ったとき、溶融樹脂組成物は、粘弾性が低く、エア供給路に浸透しやすくなる特性を有する。このような特性を有する溶融樹脂組成物に対して、本実施形態に係るプレス成形品の製造方法を適用することは、エア供給路の樹脂詰まりを防止する観点で特に有効である。
【0064】
熱プレス装置40による一対の金型のプレス圧力は、特に限定されないが、50KN~300KNであることが好ましく、100KN~200KNであることがより好ましい。上記プレス圧力が上記数値範囲内に設定されていることにより、厚みの均一なプレス成形体が得られやすいという利点がある。
【0065】
また、熱プレス装置40による一対の金型のプレス時間は、特に限定されないが、5秒~60秒であることが好ましく、10秒~30秒であることがより好ましい。上記プレス時間が上記数値範囲内に設定されていることにより、厚みの均一なプレス成形体が得られやすいという利点がある。
【0066】
上記熱プレス工程が完了した後、冷却プレス工程にて、冷却プレス装置50を用いて、前記一対の金型を閉じたまま、流動可能な前記溶融樹脂組成物を冷却プレスする。冷却プレスする際のプレス圧力は、特に限定されないが、10KN~100KNであることが好ましく、30KN~50KNであることがより好ましい。上記プレス圧力が上記数値範囲内に設定されていることにより、厚みの均一なプレス成形体がという利点がある。
【0067】
また、冷却プレスする際のプレス時間は、特に限定されないが、60秒~600秒であることが好ましく、120秒~300秒であることがより好ましい。上記プレス時間が上記数値範囲内に設定されていることにより、P3HA系樹脂の固化が十分に進み、プレス成形体の取り出しが容易になるという利点がある。
【0068】
また、冷却プレス時の金型本体11の冷却温度は、特に限定されないが、10℃~60℃であることが好ましく、20℃~50℃であることがより好ましい。金型本体11の冷却温度が上記数値範囲内に設定されていることにより、P3HA系樹脂の固化が十分に進み、プレス成形体の取り出しが容易になるという利点がある。
【0069】
冷却プレス工程後、離型工程にて、一対の金型を型開きして、エア供給装置を用いて、前記一対の金型からプレス成形品を離型することによって、プレス成形品を得ることができる。上記離型工程にて使用されるエア供給装置は、例えば、
図2に示すエア供給装置1であって、
図3および
図4に示す開閉機構4を備えた装置が挙げられる。
【0070】
本実施形態に係るプレス成形品の製造方法では、前記樹脂供給工程、前記熱プレス工程、および冷却プレス工程では、前記開閉機構により前記エア供給路を閉じる一方、前記離型工程では、前記開閉機構により前記エア供給路を開くので、エア供給によるプレス成形体の離型に際しエア供給路の樹脂詰まりを防止することができるという効果を奏する。
【0071】
なお、一対の金型間に供給された溶融樹脂組成物を流動可能とするために、金型予熱装置70により、一対の金型は予め加熱されていることが好ましい。一対の金型の加熱温度は、上記溶融樹脂組成物の組成物温度を維持できる温度であればよく、好ましくは、上記溶融樹脂組成物の組成物温度±30℃であり、より好ましくは上記溶融樹脂組成物の組成物温度と同じ温度である。
【0072】
(熱可塑性樹脂)
本実施形態に係るプレス成形品の製造方法において使用される樹脂組成物は、熱可塑性樹脂を含む。当該熱可塑性樹脂は、特に限定されない。好ましい熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリアミド、アクリロニトリル、ブタジエン、ポリスチレン、アクリル系ポリマー等の汎用樹脂のほか、例えば、P3HA系樹脂、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリブチレンサクシネートテレフタレート、ポリカプロラクトン等の生分解性樹脂が挙げられる。本製造方法において、熱可塑性樹脂は1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0073】
特に、本実施形態に係るプレス成形品の製造方法において使用される熱可塑性樹脂は、P3HA系樹脂であることが好ましい。本明細書において、「P3HA系樹脂」とは、一般式:〔-CHR-CH2-CO-O-〕で示される3-ヒドロキシアルカン酸繰り返し単位(式中、Rは、CnH2n+1で表されるアルキル基で、nは、1以上15以下の整数である。)を繰り返し単位として含む、ポリヒドロキシアルカノエートである。
【0074】
より具体的には、P3HA系樹脂としては、3-ヒドロキシブチレート(3HB)単位を含むのが好ましい。3HB単位を含むP3HA系樹脂としては、例えば、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)(P3HB)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバレレート)(P3HB3HV)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(P3HB3HH)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバレレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(P3HB3HV3HH)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-4-ヒドロキシブチレート)(P3HB4HB)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシオクタノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシデカノエート)等が挙げられる。P3HA系樹脂としては、1種のみ含んでいても良く、2種以上含んでも良い。
【0075】
P3HA系樹脂としては、微生物により産生されるP3HA系樹脂(微生物産生P3HA系樹脂)が好ましい。微生物産生P3HA系樹脂は、通常、D体(R体)のポリヒドロキシアルカノエートモノマー単位のみから構成される。微生物産生P3HA系樹脂の中でも、工業的生産が容易である点から、P3HB、P3HB3HH、P3HB3HV、P3HB3HV3HH、P3HB4HBが好ましく、P3HB、P3HB3HH、P3HB3HV、P3HB4HBがより好ましい。
【0076】
P3HA系樹脂は、例えば、国際公開第2010/013483号公報に記載された方法によっても製造され得る。P3HA系樹脂の市販品としては、例えば、株式会社カネカ「カネカ生分解性ポリマー PHBH(登録商標)」等が挙げられる。
【0077】
また、前記P3HA系樹脂は、3HB単位と他のヒドロキシアルカノエート単位との共重合体を少なくとも1種含み、前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂における3-ヒドロキシブチレート単位が、全繰り返し単位(100モル%)中、65.0~99.0モル%であり、好ましくは68.0~98.5モル%であり、より好ましくは70.0~98.5モル%であり、さらに好ましくは、70.0~98.0モル%であるのが好ましい。
【0078】
3HB繰り返し単位の組成比が90.0モル%以上であることにより、P3HA系樹脂の剛性がより向上し、また、結晶化速度が速くなり、バリが低減される、生産性向上する傾向がある。一方、3HB繰り返し単位の組成比が99.0モル%以下であることにより、融点が熱分解温度を下回るため、安定かつ連続生産が可能となる。なお、P3HA系樹脂のモノマー組成比は、ガスクロマトグラフィー等によって測定することができる(例えば、国際公開第2014/020838号参照)。
【0079】
P3HA系樹脂の分子量は、目的とする用途で実質的に十分な物性を示すものであればよく、特に限定されない。P3HA系樹脂の重量平均分子量の範囲は、10万~100万が好ましく、より好ましくは15万~70万、さらに好ましくは20万~50万、特に好ましくは25万~45万である。重量平均分子量が10万以上であると、適度な機械的強度が得られる。また、分子量が100万以下であると溶融粘度の上昇を抑制することができ、成形性に優れる。
【0080】
前記重量平均分子量の測定方法は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)(昭和電工社製「Shodex GPC-101」)を用い、カラムにポリスチレンゲル(昭和電工社製「Shodex K-804」)を用い、クロロホルムを移動相とし、ポリスチレン換算した場合の分子量として求めることができる。この際、検量線は重量平均分子量31,400、197,000、668,000、1,920,000のポリスチレンを使用して作成する。当該GPCにおけるカラムとしては、前記分子量を測定するのに適切なカラムを使用すればよい。
【0081】
また、前記樹脂組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で、熱可塑性樹脂と共に使用可能な添加剤が含まれていてもよい。そのような添加剤としては、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、シリカなどの無機充填剤、顔料、染料などの着色剤、活性炭、ゼオライト等の臭気吸収剤、バニリン、デキストリン等の香料、可塑剤、酸化防止剤、抗酸化剤、耐候性改良剤、紫外線吸収剤、結晶核剤、滑剤、離型剤、撥水剤、抗菌剤、摺動性改良剤等が挙げられる。添加剤としては1種のみが含まれていてもよいし。2種以上が含まれていてもよい。これら添加剤の含有量は、その使用目的に応じて当業者が適宜設定可能である。
【0082】
本実施形態によれば、プレス成形の原料としてP3HA系樹脂を用いた場合、廃棄による海洋汚染を抑制することができ、これにより、例えば、目標12「持続可能な消費生産形態を確保する」や目標14「持続可能な開発のために、海・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する」等の持続可能な開発目標(SDGs)の達成に貢献できる。
【0083】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0084】
すなわち、本発明の一実施形態は、以下である。
<1>エア供給源と、
前記エア供給源からのエアを、一対の金型により成形された熱可塑性樹脂組成物からなる成形体へエアを供給するエア供給路と、を備えるエア供給装置であって、
前記エア供給路は、前記一対の金型の何れか一方に備えられた、互いに離接可能な第1及び第2の入子によって構成されており、
前記エア供給源からのエアにより前記第1及び第2の入子を離間させ前記エア供給路を開ける一方、前記エア供給源からエアが供給されないときには、前記第1及び第2の入子同士を接近させ前記エア供給路を閉じる開閉機構を備える、エア供給装置。
<2>前記開閉機構は、
前記エア供給源からのエアの供給により、前記第1および第2の入子の互いの離間距離を0.005mm以上とし、
前記エア供給源からエアが供給されないときには、前記第1及び第2の入子の互いの離間距離を0.005mm未満とする、ように構成されている、<1>のエア供給装置。
<3>前記第1および第2の入子の前記成形体と接する部分において、前記第1および第2の入子の接合面は、前記成形において前記一対の金型が互いに近づく方向と略垂直な方向に形成される、<1>または<2>のエア供給装置。
<4>前記エア供給源からのエアが前記第1及び第2の入子の何れかに当たるように構成されている、<1>~<3>の何れかのエア供給装置。
<5>前記開閉機構は、前記エア供給源からのエアによる前記第1及び第2の入子の離間距離を制限するストップボルトを備える、<1>~<4>の何れかのエア供給装置。
<6>前記一対の金型の成形面は、曲面及び/又は凹凸面を含む、<1>~<5>の何れかのエア供給装置。
<7><1>~<6>の何れかのエア供給装置からエアが供給される、熱可塑性樹脂を含む溶融樹脂組成物を成形する一対の金型を備えた、金型装置であって、
前記一対の金型の何れか一方は、
前記エア供給路を構成する、互いに離接可能な第1及び第2の入子を備え、
前記エア供給源からのエアにより前記第1及び第2の入子を離間させ前記エア供給路を開ける一方、前記エア供給源からエアが供給されないときには、前記第1及び第2の入子同士を接近させ前記エア供給路を閉じるように構成されている、金型装置。
<8><7>の金型装置を備える、プレス成形品の製造装置。
<9>熱可塑性樹脂を含む溶融樹脂組成物を吐出部から吐出することにより一対の金型間に供給する樹脂供給工程と、
前記一対の金型を閉じて、流動可能な前記溶融樹脂組成物を熱プレスする熱プレス工程と、
前記一対の金型を閉じたまま、流動可能な前記溶融樹脂組成物を冷却プレスする冷却プレス工程と、
前記一対の金型を型開きして、エア供給装置を用いて、前記一対の金型からプレス成形品を離型する離型工程と、を含み、
前記エア供給装置は、前記一対の金型間へエアを供給するためのエア供給源と、前記一対の金型間の空間と連通するエア供給路と、を備える、エア供給装置であって、
前記エア供給路は、前記一対の金型の何れか一方に備えられた、互いに離接可能な第1及び第2の入子によって構成されており、
前記エア供給源からのエアにより前記第1及び第2の入子を離間させ前記エア供給路を開ける一方、前記エア供給源からエアが供給されないときには、前記第1及び第2の入子同士を接近させ前記エア供給路を閉じる開閉機構を備えており、
前記樹脂供給工程、前記熱プレス工程、および冷却プレス工程では、前記開閉機構により前記エア供給路を閉じる一方、前記離型工程では、前記開閉機構により前記エア供給路を開く工程を含む、プレス成形品の製造方法。
<10>前記熱プレス工程において、前記一対の金型の温度は、60~180℃である、<9>のプレス成形品の製造方法。
<11>前記熱可塑性樹脂は、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂である、<9>または<10>のプレス成形品の製造方法。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、P3HA系樹脂を用いたプレス成形体の製造の分野、その他の分野に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0086】
1 エア供給装置
2 エア供給源
4 開閉機構
4a ストップボルト
10 金型装置
11 金型本体(一対の金型)
11A 下金型
11B 上金型
12 第1入子
13 第2入子
100 製造装置(プレス成形品の製造装置)