(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126577
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】酸素吸収性樹脂組成物、成形体、多層構造体及び容器
(51)【国際特許分類】
C08L 23/18 20060101AFI20240912BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20240912BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20240912BHJP
C08K 3/01 20180101ALI20240912BHJP
C08K 3/10 20180101ALI20240912BHJP
C08L 23/02 20060101ALI20240912BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
C08L23/18
B32B27/32
B32B27/18 G
C08K3/01
C08K3/10
C08L23/02
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023035014
(22)【出願日】2023-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 正隆
(72)【発明者】
【氏名】輪胡 宏学
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
3E086AB01
3E086AD01
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(57)【要約】
【課題】酸素吸収性能及び臭気抑制能に優れた酸素吸収性樹脂組成物、並びにこれを用いた成形体、多層構造体及び容器を提供する。
【解決手段】ポリメチルペンテン樹脂(A)と、該ポリメチルペンテン樹脂(A)以外のポリオレフィン樹脂(B)と、脱酸素剤組成物(C)とを含む酸素吸収性樹脂組成物であって、前記脱酸素剤組成物(C)が、鉄粉を主成分として含み、前記ポリオレフィン樹脂(B)に対する前記ポリメチルペンテン樹脂(A)の質量比〔(A)/(B)〕が、5/95以上80/20以下であり、前記ポリメチルペンテン樹脂(A)と前記ポリオレフィン樹脂(B)とが相分離構造を形成し、前記相分離構造が前記ポリオレフィン樹脂(B)からなる連続相(b)中に前記ポリメチルペンテン樹脂(A)からなる非連続相(a)が分散された海島構造であり、前記脱酸素剤組成物(C)が前記非連続相(a)中に存在する、酸素吸収性樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリメチルペンテン樹脂(A)と、該ポリメチルペンテン樹脂(A)以外のポリオレフィン樹脂(B)と、脱酸素剤組成物(C)とを含む酸素吸収性樹脂組成物であって、
前記脱酸素剤組成物(C)が、鉄粉を主成分として含み、
前記ポリオレフィン樹脂(B)に対する前記ポリメチルペンテン樹脂(A)の質量比〔(A)/(B)〕が、5/95以上80/20以下であり、
前記ポリメチルペンテン樹脂(A)と前記ポリオレフィン樹脂(B)とが相分離構造を形成し、
前記相分離構造が前記ポリオレフィン樹脂(B)からなる連続相(b)中に前記ポリメチルペンテン樹脂(A)からなる非連続相(a)が分散された海島構造であり、
前記脱酸素剤組成物(C)が前記非連続相(a)中に存在する、酸素吸収性樹脂組成物。
【請求項2】
前記脱酸素剤組成物(C)の含有量が、前記ポリメチルペンテン樹脂(A)100質量部に対して、10質量部以上500質量部以下である、請求項1に記載の酸素吸収性樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリオレフィン樹脂(B)が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン及びエチレン-プロピレンコポリマーからなる群から選択される1種以上である、請求項1又は2に記載の酸素吸収性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の酸素吸収性樹脂組成物からなる、成形体。
【請求項5】
前記成形体が、フィルム又はシートである、請求項4に記載の成形体。
【請求項6】
請求項5に記載の成形体であるフィルム又はシートを含む、多層構造体。
【請求項7】
ガスバリア層、接着層及び酸素吸収層がこの順に積層された多層構造を有する多層構造体であって、
前記酸素吸収層が請求項5に記載の成形体であるフィルム又はシートからなる、請求項6に記載の多層構造体。
【請求項8】
前記多層構造体が、多層フィルム又は多層シートである、請求項6又は7に記載の多層構造体。
【請求項9】
請求項6~8のいずれか1項に記載の多層構造体からなる、容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素吸収性樹脂組成物、並びにこれを用いた成形体、多層構造体及び容器に関する。
【背景技術】
【0002】
食品や医薬品、金属製品に代表される、酸素の影響を受けて変質し易い各種製品の酸化を防止する目的で、酸素除去を行う脱酸素剤が従来より使用されている。この脱酸素剤として初期に開発され現在も多く使用されている形態は、粒状又は粉状の脱酸素剤組成物を小袋に詰めたものである。これを改良するものとして、より取扱いが容易で適用範囲が広く、誤食などの問題のない安全な脱酸素体として、脱酸素剤組成物を固定したフィルム又はシート状の形態が考えられている。このようなフィルム又はシート状の脱酸素体は、例えば包装容器や包装袋として用いることができ、包装容器や包装袋自体に酸素吸収性能を持たせることができる。
【0003】
一般に、脱酸素剤組成物をフィルム又はシートの形状で用いるためには、熱可塑性樹脂をマトリックス成分に利用して、粒状又は粉状の脱酸素剤組成物を複合化する方法が簡便に用いられている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
脱酸素剤組成物をフィルム又はシートの形状とした包装材料は、それ自体に酸素吸収性能を持たせることができる。しかしながら、このような酸素吸収性能を有する包装材料を用いて油を含む被保存物品を保存すると、酸素吸収性樹脂組成物中の脱酸素剤組成物と被保存物中の油とが接触して反応し、独特の臭気が発生することがあった。
そのため、臭気抑制性能に優れた包装材料として使用できる樹脂材料が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明の要旨構成は、以下のとおりである。
[1] ポリメチルペンテン樹脂(A)と、該ポリメチルペンテン樹脂(A)以外のポリオレフィン樹脂(B)と、脱酸素剤組成物(C)とを含む酸素吸収性樹脂組成物であって、
前記脱酸素剤組成物(C)が、鉄粉を主成分として含み、
前記ポリオレフィン樹脂(B)に対する前記ポリメチルペンテン樹脂(A)の質量比〔(A)/(B)〕が、5/95以上80/20以下であり、
前記ポリメチルペンテン樹脂(A)と前記ポリオレフィン樹脂(B)とが相分離構造を形成し、
前記相分離構造が前記ポリオレフィン樹脂(B)からなる連続相(b)中に前記ポリメチルペンテン樹脂(A)からなる非連続相(a)が分散された海島構造であり、
前記脱酸素剤組成物(C)が前記非連続相(a)中に存在する、酸素吸収性樹脂組成物。
[2] 前記脱酸素剤組成物(C)の含有量が、前記ポリメチルペンテン樹脂(A)100質量部に対して、10質量部以上500質量部以下である、上記[1]に記載の酸素吸収性樹脂組成物。
[3] 前記ポリオレフィン樹脂(B)が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン及びエチレン-プロピレンコポリマーからなる群から選択される1種以上である、上記[1]又は[2]に記載の酸素吸収性樹脂組成物。
[4] 上記[1]~[3]のいずれか1項に記載の酸素吸収性樹脂組成物からなる、成形体。
[5] 前記成形体が、フィルム又はシートである、上記[4]に記載の成形体。
[6] 上記[5]に記載の成形体であるフィルム又はシートを含む、多層構造体。
[7] ガスバリア層、接着層及び酸素吸収層がこの順に積層された多層構造を有する多層構造体であって、
前記酸素吸収層が上記[5]に記載の成形体であるフィルム又はシートからなる、上記[6]に記載の多層構造体。
[8] 前記多層構造体が、多層フィルム又は多層シートである、上記[6]又は[7]に記載の多層構造体。
[9] 上記[6]~[8]のいずれか1項に記載の多層構造体からなる、容器。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、酸素吸収性能及び臭気抑制能に優れた酸素吸収性樹脂組成物、並びにこれを用いた成形体、多層構造体及び容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の酸素吸収性樹脂組成物(実施例4)のフィルムを樹脂埋め加工後に、フィルムの厚さ方向に垂直な断面を切り出して加工し、電界放出形走査電子顕微鏡(FE-SEM)で観察した、SEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に従う酸素吸収性樹脂組成物、並びにこれを用いた成形体、多層構造体及び容器の実施形態について、以下で詳細に説明する。
なお、本明細書において、数値の記載に関する「A~B」という用語は、「A以上B以下」(A<Bの場合)又は「A以下B以上」(A>Bの場合)を意味する。また、本発明において、好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
【0010】
[酸素吸収性樹脂組成物]
本発明の酸素吸収性樹脂組成物は、ポリメチルペンテン樹脂(A)と、該ポリメチルペンテン樹脂(A)以外のポリオレフィン樹脂(B)と、脱酸素剤組成物(C)とを含み、前記脱酸素剤組成物(C)が、鉄粉を主成分として含み、前記ポリオレフィン樹脂(B)に対する前記ポリメチルペンテン樹脂(A)の質量比〔(A)/(B)〕が、5/95以上80/20以下であり、前記ポリメチルペンテン樹脂(A)と前記ポリオレフィン樹脂(B)とが相分離構造を形成し、前記相分離構造が前記ポリオレフィン樹脂(B)からなる連続相(b)中に前記ポリメチルペンテン樹脂(A)からなる非連続相(a)が分散された海島構造であり、前記脱酸素剤組成物(C)が前記非連続相(a)中に存在する。
【0011】
本発明の酸素吸収性樹脂組成物は、上述のようにポリメチルペンテン樹脂(A)(以下「(A)成分」ともいう)とポリオレフィン樹脂(B)(以下、「(B)成分」ともいう)とが相分離構造を形成している。当該相分離構造は、ポリオレフィン樹脂(B)からなる連続相(b)中にポリメチルペンテン樹脂(A)からなる非連続相(a)が分散された海島構造である。
本明細書において「海島構造」とは、相分離構造ドメインのうちの1種が連続相(海)を形成しており、他のドメインが非連続相(島)を形成している相分離構造のことをいう。
【0012】
更に、本発明の酸素吸収性樹脂組成物は、脱酸素剤組成物(C)(以下、「(C)成分」ともいう)を含有するが、脱酸素剤組成物(C)は非連続相(a)中に存在する。
本明細書において「脱酸素剤組成物(C)は非連続相(a)中に存在する」とは、主として、脱酸素剤組成物(C)がポリメチルペンテン樹脂(A)に被覆されている状態や、ポリメチルペンテン樹脂(A)からなる非連続相(a)中に包埋されている状態を指す。 なお、本発明の効果を妨げない範囲で、脱酸素剤組成物(C)の一部は、ポリオレフィン樹脂(B)からなる連続相(b)中や、非連続相(a)と連続相(b)との界面上にも存在してもよい。
また「ポリオレフィン樹脂(B)からなる連続相(b)中にポリメチルペンテン樹脂(A)からなる非連続相(a)が分散された海島構造」とは、ポリメチルペンテン樹脂(A)が単独で非連続相(a)を形成している場合だけでなく、ポリメチルペンテン樹脂(A)が脱酸素剤組成物(C)を被覆した状態で、全体として、連続相(b)中に島状に分散している場合も含まれる。
【0013】
本発明の酸素吸収性樹脂組成物において、上記所定の海島構造と、脱酸素剤組成物(C)の存在位置を確認する方法は、必ずしも限定されないが、例えば、酸素吸収性樹脂組成物の製造方法から上記構成を推定する方法や、電界放出形走査電子顕微鏡(FE-SEM)等の顕微鏡観察によって確認する方法が挙げられる。具体的には、実施例に記載の方法により確認することができる。
【0014】
上記特徴を有する本発明の酸素吸収性樹脂組成物が、優れた酸素吸収性能及び臭気抑制能を発揮し得る理由については定かではないが、次のような理由が考えられる。
【0015】
従来、マトリックス成分としての熱可塑性樹脂には、(1)樹脂としての加工性に優れる、(2)マトリックス成分として、粒状又は粉状の脱酸素剤組成物を比較的均一に分散できる、(3)適度な酸素透過性を有する、(4)他の樹脂との相溶性に優れる、(5)適度な柔軟性を有し、フィルム又はシート状に成形した際に脱酸素剤組成物の粒子が突き出すことを防止できる等の理由から、ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂が広く用いられてきた。
しかし、ポリエチレン樹脂等のポリオレフィン樹脂(B)を用いた酸素吸収性樹脂組成物は、フィルム又はシート状に成形して油を含む被保存物品を保存すると、酸素吸収性樹脂組成物中の脱酸素剤組成物(C)と被保存物中の油とが接触して反応し、独特の臭気が発生するという問題があった。
このような臭気発生の問題は、特に、脱酸素剤組成物(C)が、鉄粉を主成分として含む場合により顕著であった。その理由は、必ずしも明らかではないが、一つには、脱酸素剤組成物中の鉄粉が油と反応した結果、鉄と油との反応物が生成し、該反応物から鉄臭のような独特の臭気が発生していると考えられる。
【0016】
また、従来の、ポリエチレン樹脂等のポリオレフィン樹脂(B)を用いた酸素吸収性樹脂組成物において、上記のような臭気発生の問題が生じる原因としては、まず、ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂(B)が、比較的耐油性が低い樹脂であることが挙げられる。
また、ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂(B)は、融点が比較的低く、柔軟性も乏しいため、酸素吸収性樹脂組成物をフィルム又はシート状に成形する際に、脱酸素剤組成物(C)の粒子が突き出して、脱酸素剤組成物(C)の表面が外界に露出する場合があることが挙げられる。
そこで、本発明者等は、脱酸素剤組成物(C)の表面が外界に露出することを防止できる酸素吸収性樹脂組成物を検討し、上記問題点を解決する観点からポリメチルペンテン樹脂(A)に着目した。
【0017】
まず、本発明に用いるポリメチルペンテン樹脂(A)は相溶性が低い樹脂であるため、該ポリメチルペンテン樹脂(A)以外のポリオレフィン樹脂(B)とは互いに相溶せず、相分離構造(ミクロ相分離構造)を形成することができる。
本発明者等は更なる検討を重ねた結果、酸素吸収性樹脂組成物においてポリメチルペンテン樹脂(A)と、ポリオレフィン樹脂(B)とを、特定の比率で調製することにより、(A)成分と(B)成分との相分離構造を、(B)成分からなる連続相(b)中に(A)成分からなる非連続相(a)が分散された海島構造とすることができ、特に脱酸素剤組成物(C)を(A)成分からなる非連続相(a)中に存在させることにより、酸素吸収性能及び臭気抑制性能に優れたフィルム及びシートが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0018】
まず、(B)成分からなる連続相(b)中に(A)成分からなる非連続相(a)が分散された海島構造では、非連続相(a)は(B)成分からなる連続相(b)に囲まれた状態となる。このような相分離構造において、脱酸素剤組成物(C)を(A)成分からなる非連続相(a)中に存在させることで、仮に(C)成分の粒子が非連続相(a)から突き出したとしても、非連続相(a)の外側には(B)成分からなる連続相(b)があることから、(C)成分の粒子表面が外界に露出することを効果的に防止できると考えられる。
また、ポリメチルペンテン樹脂(A)は、ポリエチレン樹脂のようなポリオレフィン樹脂(B)に比べてガラス転移温度が高いため、酸素吸収性樹脂組成物をフィルム又はシート状に成形する際の加熱によって可塑性は示すものの、ポリエチレン樹脂程には流動しないため、脱酸素剤組成物(C)の粒子表面を良好に被覆でき、該粒子表面が外界に露出することを効果的に防止できると考えられる。
更に、ポリメチルペンテン樹脂(A)は、そもそも耐油性が高いため、脱酸素剤組成物(C)を(A)成分からなる非連続相(a)中に存在させることにより、脱酸素剤組成物(C)が油と接触することを効果的に防止できると考えられる。
このような本発明の酸素吸収性樹脂組成物によれば、該酸素吸収性樹脂組成物をフィルム又はシート状に成形して、油を含む食品等の被保存物を保存する場合も、油と脱酸素剤組成物(C)とが接触して反応することを抑制でき、独特の臭気が発生することを抑制できると推察される。
【0019】
また、本発明に用いるポリメチルペンテン樹脂(A)は、ポリエチレン樹脂のようなポリオレフィン樹脂(B)に比べて酸素透過性が高いため、脱酸素剤組成物(C)と油との接触は抑制されるが、脱酸素剤組成物(C)と酸素との接触及び反応は適度に確保できるため、脱酸素剤組成物(C)の酸素吸収性能を向上できると推察される。
【0020】
上記のような効果は、脱酸素剤組成物(C)が(A)成分からなる非連続相(a)中に存在することにより奏されるが、本発明の効果を妨げない範囲で、脱酸素剤組成物(C)の一部は、ポリオレフィン樹脂(B)からなる連続相(b)中や、非連続相(a)と連続相(b)との界面上にも存在してもよい。
しかし、脱酸素剤組成物(C)が非連続相(a)中に存在する割合が低下する程、上記のような効果は低下するため、脱酸素剤組成物(C)の全量を100質量%としたときに、脱酸素剤組成物(C)が非連続相(a)中に存在する割合は、好ましくは60質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上であり、更に好ましくは90質量%以上であり、より更に好ましくは95質量%以上である。
なお、脱酸素剤組成物(C)の存在割合は、例えば、酸素吸収性樹脂組成物からなるフィルム又はシート状の任意の断面を観察して、そこに存在する(C)成分の面積比率から推定することができる。例えば、任意の断面において、全ての(C)成分の面積を100%とし、非連続相(a)中に存在する脱酸素剤組成物(C)の面積比率(%)を算出すればよい。更に断面ごとのバラつきを考慮し、少なくとも任意の3か所以上の断面で面積比率を平均化することが好ましい。
また、上記のような効果を更に高める観点では、脱酸素剤組成物(C)は、実質的に(A)成分からなる非連続相(a)のみに存在することが特に好ましい。
【0021】
脱酸素剤組成物(C)をポリメチルペンテン樹脂(A)からなる非連続相(a)中に存在させる方法は、特に限定されないが、例えば、酸素吸収性樹脂組成物の製造工程において、(C)成分を(A)成分に分散させておいたマスターバッチ(X)を予め作製し、該マスターバッチ(X)と(B)成分とを混練して、酸素吸収性樹脂組成物を得る方法が挙げられる。
【0022】
以下、本発明の酸素吸収性樹脂組成物に含まれる各成分について説明する。
【0023】
<ポリメチルペンテン樹脂(A)>
ポリメチルペンテン樹脂(A)は熱可塑性樹脂であり、酸素吸収性樹脂組成物のマトリックス成分として機能する。また、(A)成分と(B)成分との相分離構造(海島構造)においては、(A)成分は非連続相(a)である。
本発明で用いられるポリメチルペンテン樹脂(A)としては、例えば4-メチル-1-ペンテン及び3-メチル-1-ペンテンからなる群から選択される1種を重合体成分として用いて得られた重合体、或いはこれらのメチルペンテンを共重合体成分として用いて得られた共重合体を好ましく用いることができる。中でも、入手容易性の観点で、4-メチル-1-ペンテン(共)重合体が好ましい。
【0024】
上記(共)重合体は、4-メチル-1-ペンテン及び3-メチル-1-ペンテンからなる群から選択される1種以上のオレフィンを(共)重合体成分として用いて得られたものである。この特定のオレフィン(共)重合体は、4-メチル-1-ペンテン又は3-メチル-1-ペンテンの単独重合体、若しくはこれら相互の共重合体、更に他の共重合可能なモノマー、例えばエチレン又は炭素数3~20のα-オレフィン、スチレン、アクリロニトリル、塩化ビニル、酢酸ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等との共重合体が例示できる。なお、他の共重合可能なモノマーの中でも、炭素数7~20のα-オレフィンが好ましく、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、および1-オクタデセンからなる群から選択される1種以上が特に好ましい。(共)重合体の構成単位中、4-メチル-1-ペンテン又は3-メチル-1-ペンテンに由来する構成単位は、合計で、好ましくは50~100モル%、さらに好ましくは80~100モル%である。
【0025】
本発明において好ましく用いられる4-メチル-1-ペンテン(共)重合体の、ASTM D1238に準じ、荷重5kg、温度260℃の条件で測定したメルトフローレート(MFR)は、用途に応じ種々決定されるが、通常1~50g/10分、好ましくは2~40g/10分、さらに好ましくは5~30g/10分の範囲である。4-メチル-1-ペンテン(共)重合体のメルトフローレートが上記のような範囲内にあると、得られるフィルムの外観及びフィルム成形性が良好である。
また、本発明において好ましく用いられる4-メチル-1-ペンテン(共)重合体の融点は、例えば100~250℃、好ましくは150~240℃、より好ましくは200~240℃の範囲にあるのが望ましい。
【0026】
本発明で用いられるポリメチルペンテン樹脂(A)の市販品例としては、三井化学株式会社製のTPX(登録商標)シリーズ等が挙げられる。
【0027】
酸素吸収性樹脂組成物中のポリメチルペンテン樹脂(A)の含有量は、例えば2質量%以上90質量%以下、好ましくは4質量%以上80質量%以下、より好ましくは5質量%以上70質量%以下、更に好ましくは8質量%以上65質量%以下、より更に好ましく8質量%以上50質量%以下である。
【0028】
<ポリオレフィン樹脂(B)>
本発明で用いられるポリオレフィン樹脂(B)は、上記ポリメチルペンテン樹脂(A)以外のポリオレフィン樹脂である。
ポリオレフィン樹脂(B)は熱可塑性樹脂であり、酸素吸収性樹脂組成物のマトリックス成分として機能する。
本発明で用いられるポリオレフィン樹脂(B)は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン、エチレン-プロピレンランダムコポリマー、エチレン-プロピレンブロックコポリマー等のポリオレフィン類;エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸エステル共重合体等のポリオレフィン共重合体;上記ポリオレフィン類又は上記ポリオレフィン共重合体とシリコン樹脂とのグラフト重合物等が挙げられる。中でも、ポリオレフィン樹脂(B)は、好ましくはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン及びエチレン-プロピレンコポリマーからなる群から選択される1種以上、より好ましくはポリエチレン、ポリプロピレン及びエチレン-プロピレンコポリマーからなる群から選択される1種以上、更に好ましくはポリエチレン及びポリプロピレンからなる群から選択される1種以上、より更に好ましくはポリエチレンである。ポリエチレンの中でも、ガス透過性の観点から低密度ポリエチレンが好ましく、直鎖状低密度ポリエチレンがより好ましい。
ポリオレフィン樹脂(B)は、上記成分を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0029】
酸素吸収性樹脂組成物中のポリオレフィン樹脂(B)の含有量は、例えば10質量%以上90質量%以下、好ましくは10質量%以上80質量%以下、より好ましくは15質量%以上76質量%以下、更に好ましくは30質量%以上73質量%以下である。
【0030】
酸素吸収性樹脂組成物中のポリメチルペンテン樹脂(A)及びポリオレフィン樹脂(B)の合計含有量は、好ましくは34質量%以上90質量%以下、より好ましくは50質量%以上90質量%以下、更に好ましくは55質量%以上85質量%以下である。
【0031】
酸素吸収性樹脂組成物中のポリオレフィン樹脂(B)に対するポリメチルペンテン樹脂(A)の質量比〔(A)/(B)〕は、5/95以上80/20以下である。上記範囲内とすることにより、(A)成分と(B)成分との相分離構造を所定の海島構造とすることができ、更に脱酸素剤組成物(C)を(A)成分からなる非連続相(a)中に存在させることによって、優れた酸素吸収性能及び臭気抑制能を発揮し得る。
一方、質量比〔(A)/(B)〕が5/95未満、80/20超の酸素吸収性樹脂組成物では、(A)成分と(B)成分との相分離構造を所定の海島構造とすることができないため、酸素吸収性能及び臭気抑制性能が劣る。
【0032】
特に、質量比〔(A)/(B)〕が5/95未満である場合は、脱酸素剤組成物(C)の周囲にはポリオレフィン樹脂(B)が存在する可能性がある。ポリオレフィン樹脂(B)は、ポリメチルペンテン樹脂(A)に比べてガラス転移温度が低いため、酸素吸収性樹脂組成物をフィルム又はシート状に成形する際に、脱酸素剤組成物(C)の粒子が突き出し、脱酸素剤組成物(C)の表面が外界に露出する可能性がある。これにより、油と脱酸素剤組成物(C)との接触が生じ、臭気が発生し易くなる傾向にある。また、ポリオレフィン樹脂(B)は、ポリメチルペンテン樹脂(A)に比べて酸素透過性が低いため、脱酸素剤組成物(C)がポリオレフィン樹脂(B)中に包埋されている状態では、油との接触は抑制されるものの、酸素との接触も抑制されるため、脱酸素剤組成物(C)の本来の酸素吸収性能が発揮されない傾向にある。
【0033】
一方、質量比〔(A)/(B)〕が80/20超である場合は、ポリオレフィン樹脂(B)が連続相(b)を形成できなくなる。その結果、(A)成分は(B)成分に囲まれた相分離構造とはならず、(A)成分からなる非連続相(a)中に存在する脱酸素剤組成物(C)の粒子が突き出した場合、(C)成分の表面が外界に露出する可能性がある。これにより、油と脱酸素剤組成物(C)との接触が生じ、臭気が発生し易くなる傾向にある。
【0034】
本発明の酸素吸収性樹脂組成物において、優れた酸素吸収性能及び臭気抑制能を発揮する観点から、質量比〔(A)/(B)〕は、好ましくは5/95以上70/30以下、より好ましくは10/90以上60/40以下、更に好ましくは10/90以上50/50以下、より更に好ましくは10/90以上40/60以下である。
【0035】
<脱酸素剤組成物(C)>
脱酸素剤組成物(C)は、粒状又は粉状で用いられ、上記ポリメチルペンテン樹脂(A)及びポリオレフィン樹脂(B)の樹脂マトリックス中に分散して、酸素吸収性能を発揮する成分である。
【0036】
脱酸素剤組成物(C)は、鉄粉を主成分として含む。
このような脱酸素剤組成物(C)としては、特に鉄粉とハロゲン化金属とからなる脱酸素剤組成物が好ましく、鉄粉にハロゲン化金属を付着させた脱酸素剤組成物がより好ましい。
脱酸素剤組成物中の鉄粉の含有量は、例えば80質量%以上、好ましくは85質量%以上、より好ましくは86質量%以上であり、また例えば100質量%以下であり、好ましくは99.9質量%以下であり、好ましくは99質量%以下である。具体的には、脱酸素剤組成物中の鉄粉の含有量は、例えば80質量%以上100質量%以下、好ましくは85質量%以上99.9質量%以下、より好ましくは86質量%以上99質量%以下である。
【0037】
脱酸素剤組成物に用いられる鉄粉としては、樹脂中に分散可能で脱酸素反応を起こすことができるものであれば特に制限はなく、通常脱酸素剤組成物として用いられる鉄粉を使用することができる。鉄粉は、鉄(0価の金属鉄)の表面が露出したものが好ましいが、本発明の効果を妨げない範囲で、通常の金属表面のように極薄い酸化被膜を有するものであってもよい。鉄粉の具体例としては、還元鉄粉、海綿鉄粉、噴霧鉄粉、鉄研削粉、電解鉄粉、粉砕鉄等を用いることができる。また、不純物としての酸素及びケイ素等の含量が少ない鉄粉が好ましく、金属鉄含量が95質量%以上である鉄粉が特に好ましい。
【0038】
鉄粉の平均粒子径は、好ましくは300μm以下、より好ましくは200μm以下、更に好ましくは10~200μm、更に好ましくは20~100μmである。また鉄粉の最大粒子径は、好ましくは500μm以下、より好ましくは400μm以下、更に好ましくは50~350μm、更に好ましくは50~300μmである。外観が良好な成形体を得る観点からは、鉄粉の粒子径は小さいほど平滑な酸素吸収層を形成できるので好ましいが、コストの観点からは、成形体の外観に大きな影響を与えない範囲であれば鉄粉の粒子径は多少大きくてもよい。
なお、鉄粉の最大粒子径及び平均粒子径は実施例に記載の方法により測定される。
【0039】
脱酸素剤組成物(C)は、必要に応じて、上記主剤以外の成分を含んでいてもよい。
具体的には、脱酸素剤組成物(C)が、鉄粉を主剤とするものである場合、例えば、ハロゲン化金属を含有することが好ましい。
【0040】
ハロゲン化金属は、金属鉄の酸素吸収反応に触媒的に作用するものである。金属の好ましい具体例としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、銅、亜鉛、アルミニウム、スズ、鉄、コバルト及びニッケルからなる群から選択される1種以上が挙げられる。特に、リチウム、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム及び鉄からなる群から選択される1種以上が好ましい。また、ハロゲン化物の好ましい具体例としては、塩化物、臭化物、ヨウ化物が挙げられ、特に塩化物が好ましい。
脱酸素剤組成物中のハロゲン化金属の含有量は、鉄粉100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上20質量部以下であり、より好ましくは0.1質量部以上5質量部以下である。ハロゲン化金属の金属は実質的に全量が鉄粉に付着して、脱酸素剤組成物中に遊離しているハロゲン化金属が殆どない状態が好ましく、ハロゲン化金属が有効に作用する際には、0.1質量%以上5質量部以下で十分である。
また、ハロゲン化金属は、水溶液にして鉄粉に被覆させることが好ましい。
【0041】
本発明では、脱酸素剤組成物として、ハロゲン化金属で表面を被覆した鉄粉組成物を好適に使用することができる。該鉄粉組成物は、鉄粉にハロゲン化金属水溶液を混合した後、乾燥して水分を除去することで調製することができる。
上記ハロゲン化金属は、鉄粉と容易に分離しない方法で添加することが好ましく、例えば、ボールミル、スピードミル等を用いて、粉砕かつ混合し、鉄粉表面の凹部にハロゲン化金属微粒子を埋め込む方法や、バインダーを用いて鉄粉表面にハロゲン化金属微粒子を付着させる方法、ハロゲン化金属水溶液と鉄粉とを混合乾燥して金属鉄表面にハロゲン化金属微粒子を付着させる方法が好ましい。
【0042】
脱酸素剤組成物(C)の含有量は、ポリメチルペンテン樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは10質量部以上600質量部以下、より好ましくは10質量部以上500質量部以下、更に好ましくは20質量部以上500質量部以下、より更に好ましくは30質量部以上500質量部以下、より更に好ましくは40質量部以上500質量部以下である。脱酸素剤組成物(C)の含有量が上記範囲内であると、脱酸素剤組成物(C)を(A)成分からなる非連続相(a)に良好に存在させることができるため、優れた酸素吸収性能及び臭気抑制能を発揮し得る。なお、酸素吸収性樹脂組成物の作製時の作業性の観点からは、脱酸素剤組成物(C)の含有量は、ポリメチルペンテン樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは300質量部以下である。
また、酸素吸収性樹脂組成物中の脱酸素剤組成物(C)の含有量は、好ましくは10質量%以上66質量%以下であり、より好ましくは10質量%以上50質量%以下であり、更に好ましくは15質量%以上45質量%以下である。脱酸素剤組成物(C)の含有量が上記範囲内であると、酸素吸収性能が向上し、臭気抑制能も発揮される。
【0043】
<他の成分(D)>
酸素吸収性樹脂組成物は、上記成分(A)~(C)以外の他の成分(D)を含有してもよい。
他の成分(D)としては、例えば上記成分(A)及び(B)以外の熱可塑性樹脂(d)や、各種添加剤が挙げられる。
熱可塑性樹脂(d)としては、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド;アイオノマー;エラストマー等が挙げられる。
また、添加剤としては、酸化カルシウム等の消泡剤や、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の滑剤、フェノール系又はリン系等の酸化防止剤、酸化チタン等の有機系若しくは無機系の染料又は顔料等の着色剤、シラン系又はチタネート系等の分散剤、ポリアクリル酸系の吸水剤、シリカ又はクレー等の充填剤、ゼオライト又は活性炭等のガス吸着剤等が挙げられる。
【0044】
酸素吸収性樹脂組成物が上記成分(A)及び(B)以外の熱可塑性樹脂(d)を含む場合、酸素吸収性樹脂組成物中の成分(A)及び(B)の合計含有量に対する該熱可塑性樹脂(d)の質量比〔(d)/(A)+(B)〕は、例えば0.5/99.5以下、好ましくは0.1/99.9以下である。また、酸素吸収性樹脂組成物は、上記成分(A)及び(B)以外の熱可塑性樹脂(d)を含まないことが好ましい。
【0045】
また、酸素吸収性樹脂組成物が添加剤を含む場合、酸素吸収性樹脂組成物中の添加剤の含有量は、例えば5質量%以下である。
【0046】
<製造方法>
本発明の酸素吸収性樹脂組成物の製造方法は、例えば以下の好適例が挙げられる。
本発明の酸素吸収性樹脂組成物の製造方法は、好ましくは、ポリメチルペンテン樹脂(A)と脱酸素剤組成物(C)とを混練してマスターバッチ(X)を得る工程(I)と、前記マスターバッチ(X)とポリオレフィン樹脂(B)とを混練し、酸素吸収性樹脂組成物を得る工程(II)と、を有する。
特に、上記工程(I)でポリメチルペンテン樹脂(A)と脱酸素剤組成物(C)とを予め混錬(予備混練)してマスターバッチ(X)を得ることにより、ポリメチルペンテン樹脂(A)で脱酸素剤組成物(C)を良好に被覆することができる。更に上記工程(II)でマスターバッチ(X)とポリオレフィン樹脂(B)とを混練することにより、良好に所定の海島構造を形成することができ、また、ポリメチルペンテン樹脂(A)からなる非連続相(a)中に適切に脱酸素剤組成物(C)を存在させることができる。
なお、添加剤を添加する場合、添加剤を均一に分散させる観点から、添加剤をポリオレフィン樹脂(B)に混練してマスターバッチ(Y)を調製し、次いで、マスターバッチ(X)とマスターバッチ(Y)とを混練することが好ましい。
【0047】
[成形体]
本発明の成形体は、本発明の酸素吸収性樹脂組成物からなる。このような成形体は、優れた酸素吸収性能及び臭気抑制能を発揮できる。
【0048】
本成形体は、本発明の酸素吸収性樹脂組成物を成形したものであれば特に限定はされないが、例えば、フィルム又はシートあることが好ましい。
なお、本明細書では、JIS Z0108:2012の「包装用語」規格に基づき、厚さが250μm未満の膜状の成形体を「フィルム」と称し、厚さ250μm以上の板状の成形体を「シート」と称する。
【0049】
成形体の厚さや形状等は特に限定されないが、成形体がフィルムである場合、その厚さは、例えば10μm以上250μm未満、好ましくは10μm以上200μm以下、より好ましくは50μm以上200μm以下であり、また成形体がシートである場合、その厚さは、例えば250μm以上1000μm以下であり、好ましくは300μm以上600μm以下である。成形体の厚さは、用途に応じて適宜選択することが好ましい。
【0050】
上記成形体は公知の方法により作製することができる。
具体的には、成形体が、フィルム又はシートである場合、(1)押出機で酸素吸収性樹脂組成物を溶融混練した後、ストランドダイより押出、冷却し、ペレタイザーでペレット化し、酸素吸収性樹脂組成物からなるペレットをプレスしてフィルム又はシートを得てもよいし、(2)押出機で酸素吸収性樹脂組成物を溶融混練した後、Tダイより製膜してフィルム又はシートを得てもよい。
【0051】
なお、溶融混練や、押出に関する条件は、公知の条件とすることができるが、脱酸素剤組成物(C)をポリメチルペンテン樹脂(A)からなる非連続相(a)中に良好に存在させる観点からは、ポリメチルペンテン樹脂(A)が流動しすぎない条件とすることが好ましい。これにより、溶融混練や、押出時の加熱により、脱酸素剤組成物(C)がポリメチルペンテン樹脂(A)からなる非連続相(a)から離脱することを防止できる。
具体的には、混練温度は好ましくは240~280℃であり、押出温度は好ましくは250~280℃である。
【0052】
[多層構造体]
本発明の多層構造体は、本発明の成形体であるフィルム又はシートを含む。このような多層構造体は、酸素吸収性能及び臭気抑制能に優れる。
多層構造体の構成は特に限定されないが、例えばガスバリア層、接着層及び酸素吸収層がこの順に積層された多層構造を有するものが好ましい。
【0053】
<ガスバリア層>
上記ガスバリア層は、外部から進入する酸素を遮断する役割を果たす。
ガスバリア層は、その目的に応じて、上記多層構造体中に1層でもよく、2層以上設けてもよい。2層以上設けることで、外部からの酸素の侵入をより効率的に抑制することができる。
ガスバリア層は、無機蒸着フィルム、金属薄膜、又はエチレンビニルアルコール共重合体及びポリアミド樹脂等のガスバリア樹脂からなる群から選択される1種以上を含む層であることが好ましく、ガスバリア性の観点から、無機蒸着フィルムがより好ましい。
【0054】
ガスバリア層の厚さは、構成する材料によって異なるが、例えば無機蒸着フィルムである場合、好ましくは0.01~100μmであり、より好ましくは0.5~50μmであり、より更に好ましくは1~30μmである。
ガスバリア層は1種類の材料からなっていてもよく、複数の材料からなっていてもよい。複数の材料からなる場合、積層して用いてもよく、積層して用いることでより高いバリア効果を発揮することができる。
【0055】
<接着層>
接着層は、接着性樹脂を主成分として含む。
接着性樹脂としては、特に限定されず、公知の接着性熱可塑性樹脂を用いることができる。例えば、オレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン類、ポリエステル系樹脂、ポリイソシアネート系樹脂等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0056】
<酸素吸収層>
酸素吸収層は、本発明の成形体であるフィルムからなることが好ましい。すなわち、酸素吸収層は、ポリメチルペンテン樹脂(A)と、該ポリメチルペンテン樹脂(A)以外のポリオレフィン樹脂(B)と、脱酸素剤組成物(C)とを含み、(B)成分に対する(A)成分の質量比〔(A)/(B)〕が、5/95以上80/20以下であり、(A)成分と(B)成分とが相分離構造を形成し、該相分離構造が(B)成分からなる連続相(b)中に(A)成分からなる非連続相(a)が分散された海島構造であり、(C)成分が非連続相(a)中に存在する酸素吸収性樹脂組成物からなる。したがって、酸素吸収層は、前記[酸素吸収性樹脂組成物]の項に記載した各成分、各比率及び相分離構造であることが好ましい。
【0057】
好適な酸素吸収層の厚さは、成形体の厚さと同様であり、成形体がフィルムである場合は、例えば10μm以上250μm未満、好ましくは10μm以上200μm以下、より好ましくは20μm以上200μm以下であり、成形体がシートである場合は、例えば250μm以上1000μm以下であり、好ましくは300μm以上600μm以下である。
酸素吸収層の厚さが上記の範囲であると、酸素吸収性能及び臭気抑制能に優れ、また経済性及び加工性が良好となる。
【0058】
<その他の層>
また、上記多層構造体は、必要に応じて、上記ガスバリア層、接着層、及び酸素吸収層以外の他の層を有していてもよい。
他の層としては、例えば表基材層や、酸素透過層、シーラント層等が挙げられる。
【0059】
表基材層は、上記ガスバリア層側に配置される層であり、ガスバリア層の保護層の役割を果たすと共に、本多層積層体の意匠性や強度を向上する役割を果たす。
酸素透過層は、上記酸素吸収層側に配置される層であり、容器内の収納物が酸素吸収層に直接接触するのを防ぐ隔離層の役割を果たすと共に、酸素吸収層がその酸素吸収機能を十分に発揮できるように容器内の酸素を迅速かつ効率よく透過する役割を果たす。
シーラント層は、上記酸素吸収層側に配置される層であり、本発明の多層構造体を例えば袋状の包装材として用いる場合などに、最内層としてヒートシールする役割を果たす。なお、酸素透過層は、シーラント層を兼ねてもよい。
上記他の層は、特に限定されるものではなく、各層として公知のものを使用することができる。
【0060】
本発明の多層構造体は、本発明の成形体であるフィルム又はシートを含むものであれば特に限定はされないが、好ましくは多層フィルム又は多層シートであり、より好ましくは多層フィルムである。
なお、本明細書では、JIS Z0108:2012の「包装用語」規格に基づき、厚さが250μm未満の膜状の多層構造体を「多層フィルム」と称し、厚さ250μm以上の板状の多層構造体を「多層シート」と称する。
【0061】
また、多層構造体の厚さは特に限定されないが、多層構造体が多層フィルムである場合、その厚さは、例えば20μm以上250μm未満、好ましくは50μm以上250μm未満、より好ましくは100μm以上220μm以下であり、また多層構造体が多層シートである場合、その厚さは、例えば250μm以上1000μm以下であり、好ましくは300μm以上600μm以下である。
【0062】
上記多層構造体は公知の方法により作製することができる。
具体的には、上記の各層は、各層材料の性状、加工目的、加工工程等に応じて、共押出し法、各種ラミネート法、各種コーティング法などの公知の方法を適宜組み合わせて積層することができる。具体的には、(1)ガスバリア層及び酸素吸収層の各層に対応するフィルム又はシートを予め作製又は準備し、少なくとも一方の層に、接着性樹脂を酢酸エチル等の溶剤に溶かした接着剤を塗布して乾燥し、ラミネーターにより2層をドライラミネートして、ガスバリア層、接着層及び酸素吸収層が外層から内層へこの順に積層された層構成を有する多層構造体を得る方法や、(2)ガスバリア層、接着層及び酸素吸収層の各層に対応する押出機で各層を構成する材料を溶融混練した後、T-ダイ、サーキュラーダイ等の多層多重ダイスを通して同時溶融押出することによって、ガスバリア層、接着層及び酸素吸収層が外層から内層へこの順に積層された層構成を有する多層構造体を得る方法等が挙げられる。
【0063】
[容器]
本発明の容器は、本発明の多層構造体からなる。本発明の多層構造体は、酸素吸収性能及び臭気抑制能に優れるため、種々の物品の包装容器に適している。
【0064】
本発明の容器の形態は特に限定されず、蓋材、トレー、パウチ及びラミネートチューブ等が挙げられ、これらの中でもトレー及びパウチが好ましい。
【0065】
また、容器の被保存物としては、例えばチョコレート菓子、果肉入りゼリー、羊羹、プリン等の菓子類;パイン、みかん、桃、あんず、なし、りんご等の果物類;飲料水、茶飲料、コーヒー飲料、清涼飲料水、ジュース、アルコール飲料、牛乳、乳製品等の飲料;液体だし、マヨネーズ、ケチャップ、ソース、醤油、ドレッシング、味噌、すり下ろし香辛料等の調味料、スープ、シチュー、カレー、煮物、漬物、乳幼児用調理食品、介護調理食品等の調理食品;ジャム、クリーム、チョコレートペースト、ゼリー等のペースト状食品;ツナ、魚貝等の水産製品;チーズ、バター等の乳加工品;牛肉、豚肉、鶏肉等の食肉類;サラミ、ソーセージ、ハム等の畜肉加工品;レタス、大根、キュウリ、にんじん、じゃがいも等の野菜類;卵;そば、うどん、ラーメン等の生麺及びゆで麺等の麺類;精米、調湿米、無洗米等の調理前の米類;調理された炊飯米、五目飯、赤飯、米粥等の加工米製品;粉末スープ、だしの素等の粉末調味料、粉末コーヒー、乳幼児用粉末ミルク、粉末ダイエット食品等の乾燥食品;農薬、殺虫剤等の化学品;医薬品;化粧品;ペットフード;シャンプー、リンス、洗剤等の雑貨品;種々の物品を挙げることができる。
【0066】
これらの中では、脂質を1質量%以上50質量%以下含む食品に対して、本発明は特に好適である。このような食品は、酸素により変質し易いことに加えて、上記独特の臭気発生の問題を招来し易い。しかし、本実施形態の多層体を包装容器等として用いることより、上記独特の臭気が発生することを効果的に抑制することができる。
そのような食品として、より具体的には、脂質を1質量%以上50質量%以下含むチョコレート菓子、及び脂質を1質量%以上50質量%以下含む食肉類(例えば牛肉)が挙げられる。上記チョコレート菓子の場合、常温(例えば25℃)で保存する際に本実施形態の包装容器等が特に有用であり、食肉類の場合、冷蔵条件(例えば5℃以上10℃以下)で保存する際に本実施形態の包装容器等が特に有用である。
【0067】
上記容器は公知の方法により作製することができる。
例えば、本発明の多層シートを加熱成形することで、所定の形状の容器に成形することができる。成形方法としては、真空成形、圧空成形、プラグアシスト成形等を適用することができる。
【0068】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の概念及び特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含み、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
【実施例0069】
以下、実施例及び比較例を用いて本実施形態を詳しく説明するが、本実施形態は本発明の作用効果を奏する限りにおいて適宜変更することができる。
【0070】
<材料>
実施例及び比較例で使用した材料を以下に示す。
・ポリメチルペンテン樹脂(A):4-メチル-1-ペンテンをベースとする共重合体(三井化学株式会社製「TPX(登録商標) DX845」)
・ポリオレフィン樹脂(B):直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE、日本ポリエチレン株式会社製「KC580S」)
・鉄粉:平均粒子径31.9μm、最大粒子径55.0μm
[鉄粉の粒子径の測定]
上記鉄粉の粒子径の測定は、レーザー回折散乱式粒度分布測定器(株式会社セイシン企業製「SKレーザーマイクロンサイザーLMS-2000e」)を用いて、JIS Z8825:2013に準拠して行った。
試料調製は、ミクロスパーテル2杯の鉄粉をイソプロピルアルコール120mlに投入し、超音波処理を1分間行い、分散処理を行った。
続いて、着磁器/脱磁器(新潟精機株式会社製「マグネタッチMT-F」)を使用して脱磁処理を行った後、上記測定器の分散ユニットに試料を入れて循環式にて鉄粉の粒子径の測定を行った。
なお、鉄粉の平均粒子径及び最大粒子径はそれぞれ、体積基準粒度分布における累積頻度50%の粒子径(D50)及び累積頻度90%の粒子径(D90)の値とした。
・塩化カルシウム:株式会社トクヤマ製、試薬
【0071】
(製造例1:脱酸素剤組成物(C)の作製)
まず、水に塩化カルシウムを質量比1:1の割合で混合して、塩化カルシウム混合水溶液を得た。
次に、鉄粉を加熱ジャケット付き真空混合乾燥機中に入れ、130℃、10mmHgの減圧下で加熱乾燥しつつ、鉄粉100質量部に対し、塩化カルシウム混合水溶液2質量部を、噴霧して、塩化カルシウムを鉄粉表面に付着させた粒状の脱酸素剤組成物(C)を調製した。
【0072】
<酸素吸収性樹脂組成物、並びにこれを用いた成形体及び多層構造体の作製>
(実施例1)
ポリメチルペンテン樹脂(A)と、製造例1で作製した脱酸素剤組成物(C)とを、質量比〔(A)/(C)〕が4/20となるように配合し、小型二軸セグメント押出機(株式会社東洋精機製作所製「2D15W」)を用いて、溶融混練し(温度260~270℃、混練時間10分)、ストランドダイより押出、冷却し、ペレタイザーで切断して混練ペレット(X)を得た(工程I)。
次に、得られた混練ペレット(X)と、ポリオレフィン樹脂(B)とを、質量比〔(X)/(B)〕が24/76となるように配合し、ドライブレンドした後、ラボプラストミル(株式会社東洋精機製作所製「4C150」)を用い、混練押出(温度:260~270℃、混練時間:約5分)をし、Tダイより製膜を行い、酸素吸収性樹脂組成物からなる成形体であるフィルム(単層、厚さ:130μm)を得た(工程II)。
【0073】
(実施例2~6、並びに比較例2)
実施例2~6、並びに比較例2は、ポリメチルペンテン樹脂(A)と、ポリオレフィン樹脂(B)との配合比を表1に示す値に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、フィルムを作製した。
【0074】
(比較例1)
比較例1は、ポリメチルペンテン樹脂(A)を用いなかった以外は、実施例1と同様の方法で、フィルムを作製した。
【0075】
(比較例3)
まず、ポリメチルペンテン樹脂(A)と、ポリオレフィン樹脂(B)とを、質量比〔(A)/(B)〕が57.2/22.8となるように配合し、ドライブレンドした。次に、酸素吸収性樹脂組成物中の脱酸素剤組成物(C)の含有量が20質量%となるように、製造例1で作製した脱酸素剤組成物を加えて、ラボプラストミル(株式会社東洋精機製作所製「4C150」)を用い、混練押出(温度:260~270℃、混練時間:約5分)をし、Tダイより製膜を行い、酸素吸収性樹脂組成物からなる成形体であるフィルム(単層、厚さ:100μm)を得た。
【0076】
<評価>
実施例及び比較例で作製したフィルムを用いて以下の評価を行った。結果を表1に示す。
(酸素吸収量)
酸素吸収量の測定は、上記実施例及び比較例で作製したフィルムを用いて、以下の方法により行った。
まず、上記実施例及び比較例で作製したフィルムを63mm×76mmの寸法でカットし、測定用サンプルを得た。
上記測定用サンプル2枚を、25℃の空気500mlと、10mlのイオン交換水で濡らした脱脂綿と共に、アルミニウム箔ラミネートプラスチックフィルム袋(株式会社サンエー化研製、サイズ220mm×200mm、以下「アルミバリア袋」という)に収容し、開口部をヒートシールして封止した。更に、この時のアルミバリア袋内の酸素濃度(初期酸素濃度)を測定した。
そして、上記アルミバリア袋を速やかに25℃の恒温槽に入れ、7日間保持した後、アルミバリア袋内の酸素濃度(保存後の酸素濃度)を測定し、酸素吸収量(初期酸素濃度-保存後の酸素濃度)を算出した。
なお、酸素濃度は、ガス分析計(MOCON社製「Check Mate 3」)を使用して測定した。測定は、ガス分析計に付随しているサンプルリング用シリコンチューブの先端にある中空針を、アルミバリア袋に予め貼り付けておいたサンプリング用ゴムシートから袋内部に挿入して、アルミバリア袋内の酸素濃度を計測することにより行った。
上記測定は3回行い、その平均値を各実施例又は比較例のサンプルの酸素吸収量として評価した。酸素吸収量が多いものほど、酸素吸収性能に優れていることを意味する。本実施例では、酸素吸収量が24.0ml以上であるものを良好と評価した。
【0077】
(臭気の評価)
臭気の評価は、上記実施例及び比較例で作製したフィルムを用いて、以下の方法により行った。
まず、上記実施例及び比較例で作製したフィルムを63mm×76mmの寸法でカットし、測定用サンプルを得た。
次に、6mlのイオン交換水及び3mlのサラダ油のそれぞれを、スポイトを使って、脱脂綿(大きさ75mm×140mm)に、渦巻き状に滴下し、更に該脱脂綿に力を加えて、水及び油が脱脂綿の全体に染み渡ったことを確認した。
上記水と油で満遍なく濡らした脱脂綿を長手方向の半分に折り、該半分折の脱脂綿(75mm×70mm)の内側(谷折り側)に上記測定用サンプル1枚を挟んだ状態で、25℃の空気500mlと共に、アルミニウム箔ラミネートプラスチックフィルム袋(株式会社サンエー化研製、サイズ180mm×250mm、以下「アルミバリア袋」という)に収容し、開口部をヒートシールして封止した。
そして、上記アルミバリア袋を速やかに25℃の恒温槽に入れ、5日間保持した後、上記アルミバリア袋を開封し、臭いパネラーが袋内の臭いを嗅いだ。
上記評価は臭いパネラー3名によって行い、まず、独特の臭いの要因とされている「鉄臭」の有無を確認した。更に、下記の評価基準に従って、臭いの強さを判定し、臭いパネラー3名の内、最も強く臭いを感じたパネラーの臭いの強さの判定結果を、各実施例又は比較例のサンプルの臭いの強さとして評価した。本実施例では、臭いの強さが「A」又は「B」であるものを良好と評価した。
鉄臭を感じたパネラーの数と、臭いの強さの評価結果を表1に示す。
<評価基準>
A:臭いは感じられない
B:意識的に嗅ぐと臭う程度の弱い臭い
C:長くは嗅げない程度の強い臭い
D:すぐ嗅げなくなる強烈な臭い
【0078】
【0079】
表1に示すように、所定の組成となるように、ポリメチルペンテン樹脂(A)と、脱酸素剤組成物(C)とを予め混錬してマスターバッチ(X)を作製し(工程I)、該マスターバッチ(X)と、ポリオレフィン樹脂(B)と混錬して(工程II)作製された脱酸素剤組成物は、ポリメチルペンテン樹脂(A)とポリオレフィン樹脂(B)とが相分離構造を形成し、該相分離構造がポリオレフィン樹脂(B)からなる連続相(b)中にポリメチルペンテン樹脂(A)からなる非連続相(a)が分散された海島構造となり、脱酸素剤組成物(C)が非連続相(a)中に存在するため、優れた酸素吸収性能及び臭気抑制能を発揮し得ることが確認された(実施例1~6)。
【0080】
一方、ポリメチルペンテン樹脂(A)を含まない酸素吸収性樹脂組成物(比較例1)は、上記本発明の酸素吸収性樹脂組成物(実施例1~6)に比べて、酸素吸収能及び臭気抑制能に劣ることが確認された。
また、ポリオレフィン樹脂(B)に対するポリメチルペンテン樹脂(A)の質量比〔(A)/(B)〕が80/20を超える場合は、相分離構造は形成されるものの、ポリメチルペンテン樹脂(A)からなる連続相(a)に、ポリオレフィン樹脂(B)からなる非連続相(b)が分散された海島構造となり、本発明で規定する所定の海島構造とは逆の海島構造となる。そのため、上記本発明の酸素吸収性樹脂組成物(実施例1~6)に比べて、酸素吸収能及び臭気抑制能に劣ることが確認された(比較例2)。
また、ポリメチルペンテン樹脂(A)と、ポリオレフィン樹脂(B)とを予め混錬せず(工程Iを行わず)に、ポリメチルペンテン樹脂(A)とポリオレフィン樹脂(B)と脱酸素剤組成物(C)とを一括して混練押出して作製された脱酸素剤組成物は、脱酸素剤組成物(C)が主に連続相(b)に存在するため、酸素吸収能及び臭気抑制能に劣ることが確認された(比較例3)。
【0081】
(構造観察)
更に、以下の方法により、実施例4で作製した酸素吸収性樹脂組成物の構造観察を行った。
まず、実施例4で作製したフィルムを1mm×5mmの寸法でカットし、観察用試料を得た。
次に、上記観察用試料を樹脂に包埋し、室温(25℃±5℃、以下において同じ。)にて、ウルトラミクロトームを用いて、フィルムの厚さ方向に垂直な切断面を加工した(断面出し)。
より鮮明に、海島構造を判別するために、上記加工面に対し、RuO
4による気相染色を1時間施した。
その後、再度、室温にて、ウルトラミクロトームを用いて、切断面を加工した(仕上げ処理)。
作製した観察用試料の加工面を、電界放出形走査電子顕微鏡(FE-SEM、株式会社日立ハイテク製「SU8220」)を用いて、加工面の垂直方向から加速電圧2kVにて1000倍の二次電子像を観察し、断面写真(SEM画像、縦95.3μm×横127μm)を得た(
図1)。
上記ウルトラミクロトームによる室温加工においては、ポリメチルペンテン樹脂(A)に対応する部分は、ガラス転移温度(Tg)が概ね室温よりも高いため、断面はフラットに加工される。一方、LLDPEに対応する部分は、ガラス転移温度(Tg)が概ね室温よりも低いため、断面にシワが寄ったように加工される。
そのため、
図1に示されるように、上記断面写真においては、ポリメチルペンテン樹脂(A)の相はフラットな面として観察され、ポリオレフィン樹脂(B)であるLLDPEの相はシワが寄った面として観察される。
観察の結果、実施例4の酸素吸収性樹脂組成物では、LLDPEの相に対応するシワのよった面が連続相(A)を成し、ポリメチルペンテン樹脂(A)の相に対応するフラットな面が非連続相(B)として、連続相(A)の中に島状に点在している、海島構造が観察された。更に、脱酸素剤組成物(C)は、主に非連続相(a)中に、包埋されるように配置されていることを確認した。