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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126578
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】クレーン車
(51)【国際特許分類】
   B66C 23/88 20060101AFI20240912BHJP
   B66C 23/40 20060101ALI20240912BHJP
   B66C 23/90 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
B66C23/88 Z
B66C23/40
B66C23/90 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023035015
(22)【出願日】2023-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】000148759
【氏名又は名称】株式会社タダノ
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】都倉 里佳
(72)【発明者】
【氏名】小原 敬
【テーマコード(参考)】
3F205
【Fターム(参考)】
3F205AA06
3F205HA04
(57)【要約】
【課題】クレーン車において、供給する動力を、車両エンジンとAPUとの間で切り替えたときに、ブームやウインチ等のクレーンの動作が変化するのを防止する。
【解決手段】クレーン100は、走行装置10と、旋回台20と、キャビン40と、車両エンジン13と、APU90と、車両エンジンモードとAPUモードとを選択的に切り替える動力制御装置90と、を備え、動力制御装置90は、ブームを動作させる操作系に対する操作の入力を検出したとき、車両エンジンモードとAPUモードとの切り替えを行わず、操作系に対する操作の入力を検出しないとき、車両エンジンモードとAPUモードとの切り替えを可能とした。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行装置と、
前記走行装置の上方に配置された、前記走行装置に対して旋回可能に設けられた旋回台と、
前記旋回台に設けられたブーム及び操縦室と、
前記走行装置に設けられた、前記走行装置、前記ブーム及び前記操縦室に動力を供給する主動力装置と、
前記旋回台に設けられた、前記走行装置及び前記ブームに動力を供給せず、前記操縦室に動力を供給する補助動力装置と、
前記主動力装置の動力の供給による主動力モードと前記補助動力装置の動力の供給による補助動力モードとを選択的に切り替える動力制御装置と、を備え、
前記動力制御装置は、前記ブームを動作させる操作系に対する操作の入力を検出したとき、前記主動力モードと前記補助動力モードとの切り替えを行わず、前記操作系に対する操作の入力を検出しないとき、前記主動力モードと前記補助動力モードとの切り替えを可能とした、クレーン車。
【請求項2】
前記動力制御装置は、
前記ブームへの吊り荷による負荷を検出したとき、又は、前記操作系に対する操作の入力を検出したとき、前記主動力モードから前記補助動力モードへの切り替えを行わず、
前記ブームへの吊り荷の負荷を検出しないとき、かつ、前記操作系に対する操作の入力を検出しないとき、前記主動力モードから前記補助動力モードへの切り替えを可能とした、請求項1に記載のクレーン車。
【請求項3】
前記動力制御装置は、
特定の条件を満たした場合に前記主動力モードから前記補助動力モードに切り替え又は前記補助動力モードから前記主動力モードに切り替える自動切替モードが選択されているとき、
前記動力制御装置は、前記ブームを動作させる操作系に対する操作の入力を検出したとき、前記主動力モードと前記補助動力モードとの切り替えを行わず、前記操作系に対する操作の入力を検出しないとき、前記主動力モードと前記補助動力モードとの切り替えを可能とした、請求項1又は2に記載のクレーン車。
【請求項4】
前記主動力モードにおいて、前記走行装置に設けられたアウトリガーの張り出し量を検出する張り出し量センサを備え、
前記動力制御装置は、前記主動力モードにおいて前記張り出し量センサによって検出された前記張り出し量を記憶する記憶部を備え、
前記補助動力装置は、前記補助動力モードにおいて、前記記憶部に記憶された前記張り出し量に基づいて前記クレーンの負荷状態を算出する、請求項1又は2に記載のクレーン車。
【請求項5】
前記主動力モードにおいて、前記走行装置に設けられたアウトリガーの張り出し量を検出する張り出し量センサを備え、
前記動力制御装置は、前記主動力モードにおいて前記張り出し量センサによって検出された前記張り出し量を記憶する記憶部を備え、
前記補助動力装置は、前記補助動力モードにおいて、前記記憶部に記憶された前記張り出し量に基づいて前記クレーンの負荷状態を算出する、請求項3に記載のクレーン車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーン車に関する。
【背景技術】
【0002】
ラフテレーンクレーン等の自走可能のクレーン車は、走行装置と、旋回台と、クレーン部分としてブーム(ジブを含む)と、を備えている。走行装置は、走行するための装備を有する車体であり、骨格となるキャリアフレームに、走行用及びブームによるクレーン作業用の動力源であるエンジンと、エンジンの動力を路面に伝達する走行用の車輪等と、作業時の安定性を向上させるためのアウトリガー等とを備えている。旋回台は、走行装置の上方に配置され、走行装置に対して水平面内で旋回可能に設けられている。旋回台は、走行装置に設けられたエンジンによって駆動される。
【0003】
ブームは、旋回台に設けられ、旋回台とともに走行装置に対して旋回する。また、クレーン車は、ブームの伸縮と、旋回台に対する起伏及び旋回台の旋回と、ウインチによる吊り荷ワイヤーの巻き上げ、繰り出しとにより、荷物を上げ下げしたり別の位置に移動したりする。クレーン車は、旋回台に設けられた操縦室(キャビン)において、作業者が走行時の運転操作とブームによるクレーン作業の操作を行う。
【0004】
ところで、クレーン車は、走行していないときやクレーン作業を行っていないときはエンジンを停止して、二酸化炭素(CO)等の温室効果ガスの排出を低減することが要請されている。一方、クレーン車は、エンジンが停止しているときにも、作業者の利便性のために、操縦室内の空気調和装置(エアコンディショナー)や、その他のアクセサリー電源(USB(Universal Serial Bus;登録商標)端子等に供給する電力等)の稼働が求められる。
【0005】
そこで、クレーン車は、走行装置に設けられた走行用やクレーン作業用のエンジン(以下、車両エンジンという。)とは別に、補助動力装置(APU;Auxiliary Power Unit)を備えることが提案されている。APUは、車両エンジンが停止している期間中における、主に操縦室内で使用される電力を賄うものであり、例えば、操縦室内の空気調和や操縦室内で使用されるモニタやUSB(登録商標)端子等のアクセサリー部品に電力を供給する。
【0006】
ところで、動力の供給が車両エンジンである場合に、クレーン作業のための操作を行っている状態、すなわちクレーン作業のための操作部に対して何らかの入力が有る状態で、動力の供給をAPUに切り替えると、ブームやウインチへ供給する動力が遮断されるため、ブームやウインチの動作が急に停止することが起こりうる。また、これとは反対に、動力の供給がAPUである場合に、クレーン作業のための操作部に対して何らかの入力が有る状態で、動力の供給を車両エンジンに切り替えると、停止しているブームやウインチが急に動作し始めることが起こりうる。
【0007】
そこで、供給する動力を、車両エンジンとAPUとの間で切り替えたときに、ブームやウインチ等のクレーンの動作が変化するのを防止することが求められる。
【0008】
ここで、主電源と補助電源とを切り替えて使用する高所作業車において、電源電圧の低下を作業者に報知することで、主電源と補助電源との間での作業者による電源の手動での切り替えを規制する制御装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭59-190200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、特許文献1の技術は、電源電圧の低下を作業者に報知するに過ぎず、主電源と補助電源との切り替えを制限するものではない。また、特許文献1の技術は、主電源の供給によっても補助電源の供給によってもブームを動作させることができ、主電源と補助電源との間で、ブームに対する機能に差異が無い。
【0011】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであって、供給する動力を、車両エンジンとAPUとの間で切り替えたときに、ブームやウインチ等のクレーンの動作が変化するのを防止することができるクレーン車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、走行装置と、前記走行装置の上方に配置された、前記走行装置に対して旋回可能に設けられた旋回台と、前記旋回台に設けられたブーム及び操縦室と、前記走行装置に設けられた、前記走行装置、前記ブーム及び前記操縦室に動力を供給する主動力装置と、前記旋回台に設けられた、前記走行装置及び前記ブームに動力を供給せず、前記操縦室に動力を供給する補助動力装置と、前記主動力装置の動力の供給による主動力モードと前記補助動力装置の動力の供給による補助動力モードとを選択的に切り替える動力制御装置と、を備え、前記動力制御装置は、前記ブームを動作させる操作系に対する操作の入力を検出したとき、前記主動力モードと前記補助動力モードとの切り替えを行わず、前記操作系に対する操作の入力を検出しないとき、前記主動力モードと前記補助動力モードとの切り替えを可能とした、クレーン車である。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るクレーン車によれば、供給する動力を、車両エンジンとAPUとの間で切り替えたときに、ブームやウインチ等のクレーンの動作が変化するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】ラフテレーンクレーンを右前方から見た斜視図である。
図2】ラフテレーンクレーンを左後方から見た斜視図である。
図3】ラフテレーンクレーンが備える動力制御装置の構成を示すブロック図である。
図4】実施例1の動力制御装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図5】実施例1の変形例の動力制御装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図6】実施例2の動力制御装置の動作の一例を示すフローチャート(その1)である。
図7】実施例2の動力制御装置の動作の一例を示すフローチャート(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係るクレーン車の実施形態は、図面を用いて以下のように説明される。図1はラフテレーンクレーン100を右前方から見た斜視図、図2はラフテレーンクレーン100を左後方から見た斜視図である。図示のラフテレーンクレーン100は、本発明に係るクレーン車の一実施形態である。
【0016】
[クレーンの全体構成]
ラフテレーンクレーン100(以下、単に、クレーン100という。)は、図1に示すように、走行装置10と、旋回台20と、ブーム30と、操縦室(キャビン)40と、ウインチ50と、を備えている。また、クレーン100は、走行装置10に設けられた車両エンジン13(主動力装置)と、車両エンジン13とは別の動力装置として、APU(Auxiliary Power Unit:補助動力装置)80と、動力制御装置90と、を備えている。
【0017】
走行装置10は、道路等の地面を走行するための装備を有する車体である。走行装置10は、車体の骨格となるキャリアフレーム11に、車両エンジン13と、車輪14と、アウトリガー12等と、を備えている。
【0018】
車両エンジン13は、キャリアフレーム11の前後方向Lの後部に設けられている。車両エンジン13は、例えば、軽油を燃料として動力を発生する内燃機関(ディーゼルエンジン)であり、走行装置10に走行するための動力を供給する。また、車両エンジン13は、PTOを介して、ブーム30、ウインチ50、旋回台20及びアウトリガー12に、クレーン作業のための動力をそれぞれ供給する。なお、ベントソレノイドへの出力がオフになると、ベント停止させたり、各クレーン作動部の比例弁に出力して個別にリリーフさせたりすることで、クレーン作業のための操作が停止される。
【0019】
また、車両エンジン13が発生した動力は、車両エンジン13に付属して設けられた発電機によって電力に変換され、走行装置10やキャビン40等に設けられた電気系に、それぞれを動作させる電力を供給する。車両エンジン13の発電機は、例えば電圧48Vの電力を出力する。
【0020】
そして、車両エンジン13の発電機が発電した電力を供給するキャビン40内の電気系としては、例えば、キャビン40内の空気調和装置(エアコンディショナー)、クレーン作業の稼働状況(ブーム30の姿勢等)や負荷率等の負荷状態等を表示するモニタ装置(MFD:マルチファンクションディスプレイ)や、各種の機器が接続されるUSB(登録商標)端子等のアクセサリー部品、動力制御装置90、クレーン作業のための、キャビン40内に設置された操作系への操作の入力の有無を検出する各種センサなどである。
【0021】
車輪14は、キャリアフレーム11の車幅方向Wの左右と、前後方向Lの前後であって、後述する前後のアウトリガー12a,12bの間にそれぞれ設けられている。車輪14は、車両エンジン13の動力を地面に伝達して回転することで、走行装置10を走行させる。
【0022】
アウトリガー12は、前側の車輪14の近くに設けられたフロントアウトリガー12aと、後ろ側の車輪14の近くに設けられたリヤアウトリガー12bと、を有している。アウトリガー12は、車両エンジン13が発生する動力によって、張り出し状態と格納状態の間で動作する。各アウトリガー12a,12bには、それぞれの張り出し量を検出する張り出し量センサ15a,15bが設けられている。なお、張り出し量センサ15a,15bは車両エンジン13から供給された電力によって動作するため、後述する車両エンジンモードでは動作するが、APU80からは電力が供給されないので、APUモードでは動作しない。
【0023】
各アウトリガー12a,12bは、張り出し状態では、キャリアフレーム11から車幅方向Wの外側に張り出して地面に接地することで、車輪14による走行を阻止するとともに、ブーム30によって吊り荷を上げ下げしたり移動させたりするクレーン作業時におけるクレーン100の車体の姿勢を安定させる。各アウトリガー12a,12bは、格納状態では、車幅方向Wの内側に格納されて地面から上方に離れることで、車輪14による走行を可能にしている。
【0024】
旋回台20は、キャリアフレーム11の上方で、前後方向Lの約中央に配置されている。旋回台20は、回転中心が走行装置10の車幅方向Wの中心に一致するように設けられ、走行装置10に対して回転中心回りに水平面内で旋回可能に設けられている。旋回台20は、車両エンジン13によって駆動されて旋回する。
【0025】
ブーム30、ウインチ50及びキャビン40は、旋回台20上に設けられていて、旋回台20と一体に、走行装置10に対して旋回する。ブーム30は、内部に設けられた伸縮シリンダを伸縮させることで伸縮し、起伏シリンダを伸縮させることで起伏する。伸縮シリンダの伸縮及び起伏シリンダの伸縮は、車両エンジン13からPTOを介して供給された動力によって行われる。
【0026】
ウインチ50は、巻かれたワイヤー51を繰り出すことで、ワイヤー51によって吊られたフック部52を降下させ、ワイヤー51を巻き上げることでフック部52を上昇させる。ウインチ50によるワイヤー51の巻き上げ及び繰り出しは、車両エンジン13からPTOを介して供給された動力によって行われる。
【0027】
そして、クレーン100は、フック部52に荷を掛けた状態で、ブーム30を伸縮したり、起伏したり、ワイヤー51を巻き上げ又は繰り出し、旋回台20を旋回させることによって、荷を上げ下げしたり、荷の位置を変える。
【0028】
キャビン40は、本実施形態のクレーン100においてはブーム30に対して車幅方向Wの左側に設けられているが、ブーム30に対して右側に設けられていてもよい。
【0029】
(APU)
APU80は、旋回台20に又は旋回台20とともに旋回するキャビン40等に設けられている。APU80は、車両エンジン13が停止している期間中の動力を賄うものであり、主にキャビン40内で使用される電力を供給する。APU80は走行装置10に接続されていないため、APU80の動力によってクレーン100を走行させることはできず、また、APU80はPTOを有しないため、ブーム30、ウインチ50及び旋回台20を動作させる、といったクレーン作業のための動力や電力を供給しない。
【0030】
APU80が電力を供給するキャビン40内の電気系としては、例えば、キャビン40内の空気調和装置、クレーン作業の稼働状況(ブーム30の姿勢等)や負荷率等の負荷状態等を表示するモニタ装置、各種の機器が接続されるUSB(登録商標)端子等のアクセサリー部品、動力制御装置90、クレーン作業のための、キャビン40内に設置された操作系への操作の入力の有無を検出する各種センサである。
【0031】
APU80は、一例として、本体81と、バッテリ及びDC-DCコンバータで構成された電気系部品82と、燃料タンク83と、APUコントローラ84と、エバポレータ85と、コンデンサ86と、を備えている。
【0032】
本体81は、一例としてディーゼルエンジンであるが、電力を生成する動力源であればよく、ディーゼルエンジンに限定されない。本体81は、ディーゼルエンジンの他、具体的には、蓄電池や、外部から電力を受けて出力する受電出力部等であってもよい。本体81としてのディーゼルエンジン(サブエンジン)は、車両エンジン13に比べて小型で、燃料消費量(例えば、単位出力当たりの燃料消費量)が少なく、車両エンジン13よりも燃料消費の効率が良い(燃費が良い)ものである。したがって、APU80は、車両エンジン13に比べて、燃料消費量の低減と二酸化炭素の排出を低減する。
【0033】
燃料タンク83は、サブエンジンを駆動するための燃料を貯蔵したタンクである。したがって、本体81が、ディーゼルエンジン等の内燃機関ではなく燃料を必要としないものである場合は、APU80は燃料タンク83を備えない。また、クレーン100は、車両エンジン13を駆動するための燃料を貯蔵したタンクを、燃料タンク83とは別に、走行装置10に備えている。したがって、APU80が、走行装置10に備えられた燃料タンクの燃料をサブエンジンに供給してサブエンジンを駆動する場合も、APU80は、燃料タンク83を備えない。
【0034】
電気系部品82におけるバッテリは、サブエンジンを始動するとともに、サブエンジンの駆動中に発生した電気を充電して貯蔵する。電気系部品82におけるDC-DCコンバータは、サブエンジンで発生した電力の電圧を、車両エンジン13の発電機で発生した電力の電圧まで昇圧するものである。
【0035】
車両エンジン13の発電機で発生した電力の電圧は、一例として24[V]に設定されているため、キャビン40内に装備されている空気調和装置やモニタ装置、動力制御装置、USB(登録商標)電源等の電気系は、電圧24[V]で動作するように設定されている。一方、サブエンジンで発生した電力の電圧は、一例として12[V]に設定されている。
【0036】
このため、電気系部品82におけるDC-DCコンバータは、この電圧12[V]の電力を、キャビン40内に装備されている電気機器で利用するために、サブエンジンの発電機で発生した電力の電圧を、車両エンジン13の発電機で発生した電力の電圧24[V]まで昇圧する。したがって、サブエンジンの発電機で発生した電力の電圧が、車両エンジン13の発電機で発生した電力の電圧と同じある場合は、APU80は、電気系部品82におけるDC-DCコンバータを備えない。
【0037】
APUコントローラ84、エバポレータ85及びコンデンサ86は、サブエンジンを動力源としてキャビン40内の空気調和を行うものである。キャビン40内の空気調和装置としては、車両エンジン13を動力源とするものが別に設けられている。つまり、クレーン100は、走行装置10に設けられた車両エンジン13を動力源とする空気調和装置(メインエアコンディショナ)と、サブエンジンを動力源とする空気調和装置(サブエアコンディショナ;APUコントローラ84、エバポレータ85及びコンデンサ86)との2系統の空気調和装置を備えている。
【0038】
そして、キャビン40用の空気調和装置は、車両エンジン13を駆動している車両エンジンモードではメインエアコンディショナが選択され、APU80が駆動しているAPUモードではサブエアコンディショナが選択される。そして、キャビン40内の空気調和は、選択された空気調和装置によって行われる。
【0039】
本実施形態において、APU80の主要な構成ではないAPUコントローラ84、エバポレータ85及びコンデンサ86は、キャビン40と同じ、ブーム30に対して左側に配置されている。
【0040】
APUコントローラ84、エバポレータ85及びコンデンサ86は、上述したように、キャビン40の内部の空気調和を行うため、キャビン40の近くに配置されることが好ましい。特に、エバポレータ85は、キャビン40内の熱交換器であるため、キャビン40内に配置されている。また、APUコントローラ84は電子部品を含むため、雨水や雪等の水気に晒されず、かつ高温になる外気に暴露されないことが必要であるため、エバポレータ85と同様、キャビン40内に配置されている。コンデンサ86は、キャビン40内で必要とされる熱交換とは反対の熱交換を行うため、キャビン40の外に配置されている。
【0041】
なお、APUコントローラ84は、サブエアコンディショナの動作の制御、本体81の駆動の制御、燃料タンク83のポンプの駆動の制御、電気系部品(DC-DCコンバータ、バッテリ)82の作動の制御、モニタ装置の作動の制御及びキャビン40内に設けられたUSB(登録商標)端子等のアクセサリー部品への電力の供給(アクセサリー電源)の制御等を行う。
【0042】
<実施例1>
(動力制御装置)
図3図1,2に示したクレーン100が備える実施例1の動力制御装置90の構成を示すブロック図、図4は実施例1の動力制御装置90の動作の一例を示すフローチャートである。
【0043】
実施例1の動力制御装置90は、クレーン100に対して、車両エンジン13による動力の供給とAPU80による動力の供給とを択一的に切り替えて実行する制御を行う。動力制御装置90は、図3に示すように、操作検出部91と、操作有無判定部92と、動力切替部93と、記憶部94と、を備えている。
【0044】
動力制御装置90は、車両エンジンモードにおいては車両エンジン13からの電力供給で動作し、APUモードにおいてはAPUからの電力供給で動作する。動力制御装置90は、後述する動作の他、クレーン100の負荷状態の演算等を行う。
【0045】
動力制御装置90は、キャビン40内に設けられている。キャビン40には、モニタ装置が設けられている。モニタ装置は、例えばタッチパネル式であり、作業者がモニタ装置に表示されたボタンのアイコンをタッチすることで、そのアイコンに対応して設定された機能が実行される。
【0046】
モニタ装置には、前述したクレーン作業の稼働状況(ブーム30の姿勢等)や負荷状態等の他に、車両エンジンモード(主動力モード)を示す車両エンジンモードボタンのアイコンと、APUモード(補助動力モード)を示すAPUモードボタンのアイコンと、が表示されている。車両エンジンモードボタンのアイコンは車両エンジンモードに対応したスイッチであり、APUモードボタンのアイコンはAPUモードに対応したスイッチである。
【0047】
なお、車両エンジンモードに対応したスイッチやAPUモードに対応したスイッチとしては、モニタ装置に表示された車両エンジンモードボタンのアイコンやAPUモードボタンのアイコンに限定されず、オンとオフとを物理的に切り替えるメカニカルなスイッチであってもよい。また、メカニカルなスイッチとしては、車両エンジンモードのオンとオフとを切り替えるスイッチとAPUモードのオンとオフとを切り替えるスイッチとの、2つの個別のスイッチに代えて、車両エンジンモードとAPUモードとを択一的に切り替える単一のスイッチであってもよい。
【0048】
そして、車両エンジンモードは、車両エンジン13を駆動して、車両エンジン13によって発生した動力や電力をクレーン100に供給する動力モードであり、APUモードは、APU80を駆動して、APU80によって発生した動力や電力をクレーン100に供給する動力モードである。
【0049】
車両エンジンモードは、キャビン40の電力を供給するだけでなく、走行装置10によってクレーン100を走行させたり、ブーム30やウインチ50を作動させるクレーン作業を行ったりすることができる。一方、APUモードは、キャビン40に電力を供給することはできるが、クレーン100を走行させたりクレーン作業を行ったりすることはできない。
【0050】
動力制御装置90は、車両エンジンモードボタンのアイコンがタッチされた(動力モードとして車両エンジンモードが選択された)ときは、所定条件に応じて、クレーン100に供給する動力を車両エンジン13による動力に切り替え、APUモードボタンのアイコンがタッチされた(動力モードとしてAPUモードが選択された)ときは、所定条件に応じて、クレーン100に供給する動力をAPU80による動力に切り替える。所定条件は、例えば、後述するクレーン作業のための操作系への入力が無いことである。
【0051】
動力制御装置90の操作検出部91は、クレーン作業のための操作系に対する入力の有無を検出する。クレーン作業のための操作系は、例えば、ブーム30の起伏動作を操作する起伏操作レバーと、ブーム30の伸縮動作を操作する伸縮操作レバーと、ウインチ50の繰り出し動作及び巻き上げ動作を操作するウインチ操作レバーと、これらの各操作レバーに対応して各動作の動作速度を操作する操作ペダル等である。
【0052】
したがって、操作検出部91は、起伏操作レバーや起伏操作ペダルに対する、起伏の動作を行わせ、起伏動作の速度を調整する操作の入力の有無、伸縮操作レバーや伸縮操作ペダルに対する、伸縮の動作を行わせ、伸縮動作の速度を調整する操作の入力の有無、ウインチ操作レバーに対する、ワイヤー51の繰り出し又は巻き上げの動作を行わせ、その動作の速度を調整する操作の入力の有無、及び旋回レバーに対する、旋回台20の旋回の動作を行わせ、旋回動作の速度を調整する操作の入力の有無を検出する。
【0053】
操作検出部91は、これらの操作系への操作の入力の有無の検出を、それぞれの操作系に予め設けられている検出センサからの出力信号を取得することによって行ってもよいし、それぞれの操作系に予め設けられている検出センサを操作検出部91として用いてもよい。
【0054】
動力制御装置90の操作有無判定部92は、操作検出部91の検出結果が、全ての操作系について入力が無いか、又は全ての操作系のうち1つでも入力が有るか、の別を判定して出力する。全ての操作系について入力が無い場合は、起伏操作レバー、起伏操作ペダル、伸縮操作レバー、伸縮操作ペダル、ウインチ操作レバー、ウインチ操作ペダル及び旋回レバーの全てに対して、操作の入力が無い場合である。
【0055】
一方、全ての操作系のうち1つでも入力が有る場合は、起伏操作レバー、起伏操作ペダル、伸縮操作レバー、伸縮操作ペダル、ウインチ操作レバー、ウインチ操作ペダル及び旋回レバーのうち少なくとも1つに対して、操作の入力が有る場合である。
【0056】
動力制御装置90の動力切替部93は、操作有無判定部92が、全ての操作系に対して操作の入力が全て無いと判定したとき、車両エンジンモードからAPUモードに切り替え可能とし、又はAPUモードから車両エンジンモードに切り替え可能とする。
【0057】
そして、動力切替部93は、車両エンジン13によって動力が供給されている車両エンジンモードにおいて、モニタ装置のAPUモードボタンがタッチされたとき、上述した車両エンジンモードからAPUモードに切り替え可能の状態であれば、車両エンジンモードからAPUモードに実際に切り替えるように、駆動している車両エンジン13を停止させるとともに停止しているAPU80を駆動させる。
【0058】
また、動力切替部93は、APU80によって動力が供給されているAPUモードにおいて、モニタ装置の車両エンジンモードボタンがタッチされたとき、上述したAPUモードから車両エンジンモードに切り替え可能の状態であれば、APUモードから車両エンジンモードに実際に切り替えるように、駆動しているAPU80を停止させるとともに停止している車両エンジン13を駆動させる。
【0059】
一方、動力制御装置90の動力切替部93は、操作有無判定部92が、操作系の入力が有ると判定したとき、車両エンジンモードとAPUモードとの間で相互に、動力モードの切り替えを阻止する。
【0060】
したがって、動力切替部93が、動力モードの切り替えを阻止しているときは、モニタ装置のAPUモードボタンがタッチされたり、車両エンジンモードボタンがタッチされたりしても、動力モードの切り替えを行わずに、それまでの動力モードでの駆動を継続する。
【0061】
記憶部94は、車両エンジンモードにおいて張り出し量センサ15a,15bによって検出された各アウトリガー12a,12bの張り出し量を記憶する。
【0062】
上述した動力制御装置90の動作は、図4に示したフローチャートを参照して説明される。
【0063】
クレーン100は、車両エンジンモード又はAPUモードが選択されて電源が投入され、スタートする。このスタートの処理においては、クレーン100は、車両エンジンモードで車両エンジン13が駆動されて車両エンジン13による動力の供給により電源が投入されるか、又は、APUモードでAPU80が駆動されてAPU80による動力の供給により電源が投入される。車両エンジン13による動力の供給又はAPU80による動力の供給により、動力制御装置90に電力が供給されて、動力制御装置90が作動する。
【0064】
電源が投入されたスタート後の最初に、操作検出部91が、上述した操作系への入力の有無を検出する(図4においてS1)。つまり、動力制御装置90は、クレーン100がスタートした時点で、クレーン作業の操作系がクレーン作業を行わせる操作状態になっていないことをチェックする。
【0065】
そして、操作検出部91の検出の結果、操作有無判定部92が全ての操作系への操作の入力が無いと判定したとき(S1においてYESの場合)は、動力切替部93の制御により、最初に選択された動力モード(車両エンジンモード又はAPUモード)での駆動(動力の供給)が行われる(S2)。なお、動力切替部93が車両エンジンモードで動力の供給に切り替えたとき、PTOがオンになって車両エンジン13にPTOが接続されていれば、クレーン作業が可能となる。
【0066】
一方、操作検出部91の検出の結果、操作有無判定部92が1つでも操作系への操作の入力が有ると判定したとき(S1においてNOの場合)は、動力切替部93の制御により、最初に選択された動力モード(車両エンジンモード又はAPUモード)での駆動(動力の供給)は行わずに、全ての操作系への操作の入力が無いと判定されるまで待つ(S1の処理を繰り返す)。このとき、動力制御装置90は、同時に、ベントソレノイドへの出力をオフとすることで、ベント停止させたり、各クレーン作動部の比例弁に出力して個別にリリーフさせたりすることで、クレーン作業のためのブーム30、ウインチ50及び旋回台20の動作を停止させる(操作停止出力)。
【0067】
その後、全ての操作系への操作の入力が無くなると(S1においてYESの場合)は、動力切替部93の制御により、最初に選択された動力モード(車両エンジンモード又はAPUモード)での駆動(動力の供給)が行われる(S2)。
【0068】
選択された動力モード(車両エンジンモード又はAPUモード)での運転が行われた後、動力切替部93は、モニタ装置に対する、APUモードへの切り替えのためのAPUモードボタンへのタッチ操作の検出(S3)又は車両エンジンモードへの切り替えのための車両エンジンモードボタンへのタッチ操作の検出(S5)を待つ。
【0069】
動力切替部93は、APUモードボタンへのタッチ操作も車両エンジンモードボタンへのタッチ操作も検出されないとき(S3においてNO、かつS5においてNO)は、S2において駆動している動力モードを継続する。
【0070】
動力切替部93は、APUモードボタンへのタッチ操作を検出する(S3においてYES)と、APUモードに切り替えることを記憶する(S4)。このS4の処理の時点においては、APUモードへの切り替えは行われない。動力切替部93は、車両エンジンモードボタンへのタッチ操作を検出する(S5においてYES)と、車両エンジンモードに切り替えることを記憶する(S6)。このS6の処理の時点は、車両エンジンモードへの切り替えは行われない。
【0071】
S4の処理においてAPUモードに切り替えることを記憶した後、又はS6の処理において車両エンジンモードに切り替えることを記憶した後、S1の処理と同様、操作検出部91が操作系への操作の入力の有無を取得する(S7)。
【0072】
そして、操作検出部91の検出の結果、操作有無判定部92が全ての操作系への操作の入力が無いと判定したとき(S7においてYES)は、その判定結果を動力切替部93に出力する。一方、操作検出部91の検出の結果、操作有無判定部92が1つでも操作系への操作の入力が有ると判定したとき(S7においてNO)は、操作有無判定部92は、全ての操作系への操作の入力が無くなるまで待つ(S7)。
【0073】
動力切替部93は、操作有無判定部92から、全ての操作系への操作の入力が無いとの判定結果を受ける(S7においてYES)と、S4の処理で記憶したAPUモードへの切り替えの記憶にしたがって動力モードをAPUモードに切り替え(S8)、又はS6の処理で記憶した車両エンジンモードへの切り替えの記憶にしたがって動力モードを車両エンジンモードに切り替える(S8)。そして、動力モードを切り替えた後は、S3の処理及びS5の処理に戻って、APUモードボタンへのタッチ操作又は車両エンジンモードボタンへのタッチ操作を待つ。
【0074】
一方、動力切替部93は、操作有無判定部92から、全ての操作系への操作の入力が無いとの判定結果を受ける(S7においてYES)までは、S4の処理で記憶したAPUモードへの切り替えの記憶やS6の処理で記憶した車両エンジンモードへの切り替えの記憶に拘わらず、動力モードの切り替えを行わずに、元の動力モードでの駆動を継続する。
【0075】
このように、実施例1のクレーン100によれば、クレーン100に供給する動力を、車両エンジン13とAPU80との間で切り替える際に、ブーム30やウインチ50等のクレーン作業のための全ての操作系への操作の入力が無いことを条件としている。
【0076】
したがって、クレーン100は、例えば車両エンジンモードにおいて動作していたブーム30やウインチ50が、APUモードに切り替えられた瞬間に動力の供給が遮断されて、急停止するという事態が発生するのを防止する。
【0077】
クレーン作業によって動いていたブーム30やウインチ50が急停止した場合、クレーン作業で吊られていた荷物は、慣性によって大きく振れることが起こりうる。
【0078】
しかし、実施例1のクレーン100は、ブーム30やウインチ50が動作しているとき(操作系に操作の入力が有るとき)は、車両エンジンモードからAPUモードに切り替えることがないため、ブーム30やウインチ50が急停止することが無く、したがって、吊り荷が大きく振れる、という事態の発生を防止することができる。
【0079】
また、クレーン100は、APUモードにおいて停止してブーム30やウインチ50が、車両エンジンモードに切り替えて動力が供給されることで、急に動き始めるという事態が発生するのを防止する。
【0080】
すなわち、APUモードにおいては、クレーン作業のための動力がブーム30やウインチ50に供給されないため、クレーン作業の操作系に操作の入力が有っても、ブーム30やウインチ50は動作しない。このため、APUモードにおいては、クレーン作業の操作系に操作の入力が有っても、そのことに作業者は気が付かない。
【0081】
そして、作業者が、操作系に操作の入力が有ることに気が付かないまま、動力モードを車両エンジンモードに切り替えると、APUモードにおいては停止していたブーム30やウインチ50に、車両エンジンモードに切り替えた瞬間に動力が供給されて、操作系への操作の入力にしたがってブーム30やウインチ50が急に動き出すことが起こりうる。
【0082】
しかし、実施例1のクレーン100は、ブーム30やウインチ50を動作させる操作系に操作の入力が有るときは、APUモードから車両エンジンモードに切り替えることがないため、ブーム30やウインチ50が、作業者が意図しないで急に動きだす、という事態の発生を防止することができる。
【0083】
なお、実施例1のクレーン100は、動力制御装置90が、動力モードを車両エンジンモードに切り替えている期間中は、車両エンジン13によって発生した電力により、張り出し量センサ15a,15bによってアウトリガー12a,12bの張り出し量がリアルタイムに検出される。したがって、クレーン100は、車両エンジンモードにおいては、張り出し量センサ15a,15bによってリアルタイムに検出されたアウトリガー12a,12bの張り出し量に基づいて、クレーン100の制御装置(図示省略)がクレーン100の稼働状況(ブーム30の姿勢等)や負荷率等を算出して、負荷状態等をモニタ装置に表示することができる。
【0084】
一方、クレーン100は、動力制御装置90が、動力モードをAPUモードに切り替えている期間中は、張り出し量センサ15a,15bに電力が供給されないため、アウトリガー12a,12bの張り出し量をリアルタイムに検出することはできない。しかし、動力制御装置90の記憶部94は、APUモードに切り替えられる直前の、車両エンジンモードの期間中に張り出し量センサ15a,15bによって検出されたアウトリガー12a,12bの張り出し量を記憶している。
【0085】
したがって、クレーン100は、APUモードにおいては、記憶部94に記憶されたアウトリガー12a,12bの張り出し量に基づいて、APUコントローラ84がクレーン100の稼働状況(ブーム30の姿勢等)や負荷率等を算出して、負荷状態等をモニタ装置に表示することができる。
【0086】
APUコントローラ84が算出したクレーン100の負荷状態等は、張り出し量センサ15a,15bからリアルタイムに検出された検出値に基づいて算出されたものではないが、APUモードにおいては、アウトリガー12は動作しない。したがって、アウトリガー12は、APUモードに切り替わる直前の車両エンジンモードで動作していたときから張り出し量が変化していない。
【0087】
このため、APUモードにおいて、記憶部94に記憶されたアウトリガー12a,12bの張り出し量に基づいて算出されたクレーン100の負荷状態等は、リアルタイムに検出された張り出し量に基づいて算出したものと比べて、精度的に劣らない。
【0088】
なお、クレーン100の負荷状態等を算出するには、上述したアウトリガー12の張り出し量の他に、ブーム30の伸縮長さ及び起伏角度、旋回台20の旋回角度、並びにウインチ50のワイヤー51に掛かる吊り荷の負荷などのデータが必要であるが、これらのデータは、APUモードにおいて、APUコントローラ84がリアルタイムに取得することができる。
【0089】
<実施例1の変形例>
図5図1,2に示したクレーン100が備える実施例1の変形例の動力制御装置90の動作の一例を示すフローチャートである。実施例1の動力制御装置90は、少なくとも1つの操作系に対して操作の入力を検出したときは、車両エンジンモードとAPUモードとの間で相互に、動力モードの切り替えを阻止する。
【0090】
これに対して、図5に示した変形例の動力制御装置90のフローチャートは、車両エンジンモードからAPUモードに切り替える所定の条件として、全ての操作系に対して操作の入力が検出されないことに、ウインチ50のワイヤー51に対する吊り荷による負荷が無いこと、すなわち、フック部52に吊り荷がつられていないことを加えたものである。この変形例の動力制御装置90における上記の付加的な条件は、APUモードから車両エンジンモードに切り替える所定の条件には含まない。
【0091】
なお、ウインチ50のワイヤー51に対する負荷が無いことは、例えば、ブーム長、ブーム角度をそれぞれ検出するセンサによる検出結果と、モニタ装置(MFD)でオペレータにより入力設定されたワイヤー51の掛け数と、起伏シリンダの内圧を検出するセンサによる検出結果とに基づいて、操作検出部91が反力を換算する演算を行うことで検出することができる。
【0092】
そして、操作検出部91は、ウインチ50のワイヤー51に対する負荷が無いとの検出は、他の操作系に対して操作の入力が無いとの検出と同様に扱い、一方、ウインチ50のワイヤー51に対する負荷が有るとの検出は、他の操作系に対して操作の入力が有るとの検出と同様に扱うことで、操作有無判定部92が操作の有無として判定する。
【0093】
上述した変形例における動力制御装置90の動作は、図5に示したフローチャートに示したものとなる。なお、図5に示したフローチャートにおけるS11~S14の処理は、図4に示したフローチャートにおけるS1~S4の処理に対応した同じ処理であり、また、図5に示したフローチャートにおけるS16~S19の処理は、図4に示したフローチャートにおけるS5~S8の処理に対応した同じ処理であるため説明を省略する。
【0094】
一方、図5におけるS15の処理は、上述したように、動力切替部93が、車両エンジンモードからAPUモードに切り替える所定の条件として、操作有無判定部92が、図4におけるS7の処理に代えて、全ての操作系に対して操作の入力が検出されないこと及びウインチ50のワイヤー51に対して無負荷であることの検出を判定する処理である。
【0095】
そして、S15の処理において、全ての操作系に対して操作の入力が検出されないこと及びウインチ50のワイヤー51に対して無負荷である判定結果(S15においてYES)の場合は、動力切替部93が、車両エンジンモードからAPUモードに切り替える処理を行い(S19)、S15の処理において、1つでも操作系に対して操作の入力が検出されたとき又はウインチ50のワイヤー51に対して無負荷でない判定結果(S15においてNO)の場合は、動力切替部93は、動力モードを切り替えることが無く、元の車両エンジンモードが継続される。
【0096】
このように、変形例のクレーン100は、車両エンジンモードからAPUモードに切り替える所定の条件として、ウインチ50のワイヤー51に対して無負荷であることも所定の条件に付加していることにより、仮に、ブーム30の起伏シリンダや伸縮シリンダにおけるピストンシールの損傷などによって内部リークでシリンダのストローク保持機能が損なわれる状況に陥った場合であっても、動力モードがAPUモードに切り替えられるのを防止することができる。
【0097】
すなわち、車両エンジンモードにおいては、ウインチ50に対して、ワイヤー51を上げ下げする動力を供給することができる。したがって、クレーン100は、ブーム30の起伏シリンダや伸縮シリンダのストローク保持機能が損なわれる状況に陥って、ブーム30が伏せ始めたり短くなり始めたりしても、ワイヤー51を繰り出すことで吊り荷を素早く着地させることでクレーン100の負荷状態を軽減することができる。また、クレーン100は、これとは反対に、ワイヤー51を巻き上げて、吊り荷を着地させず、又は着地の速度を遅くして吊り荷に加わる衝撃を抑制することもできる。
【0098】
<実施例2>
図6図1,2に示したクレーン100が備える実施例2の動力制御装置90の動作を示すフローチャート(その1)、図7は実施例2の動力制御装置90の動作を示すフローチャート(その2)である。
【0099】
実施例1の動力制御装置90は、車両エンジンモードとAPUモードとのいずれか一方を、作業者が手動で選択し、所定の条件を満たしたときに、手動で選択された動力モードに切り替えるものである。
【0100】
これに対して、実施例2の動力制御装置90は、作業者が選択することのできる動力モードは、実施例1と同じく、車両エンジンモードとAPUモードとの2つであるが、手動での切り替えの他に、車両エンジンモードにおいて特定の条件を満たしたときに、自動的にAPUモードに切り替える自動切替モードを備えている。自動切替モードは、手動切り替えの車両エンジンモードと手動切り替えのAPUモードと同様に、モニタ装置に、自動切替モードボタンのアイコンとして選択可能に表示されている。
【0101】
つまり、モニタ装置には、手動切り替え用の車両エンジンモードボタンのアイコン、手動切り替え用のAPUモードボタンのアイコン、及び自動切り替えの自動切替モードボタンのアイコン、という選択可能の3つのスイッチが表示されている。
【0102】
自動切替モードボタンのアイコンがタッチされて自動切替モードが選択されているとき、動力制御装置90は、特定の条件が満たされると、動力モードを、車両エンジンモードからAPUモードに切り替える制御を行う。ここで、特定の条件は、例えば、クレーン作業のための操作系に一定時間(例えば、20分間以上)、操作の入力が無い状態が継続したことである。なお、特定の条件は、クレーン作業のための操作系に一定時間、操作の入力が無い状態が継続したこと、に限定されるものではなく、他の条件を適用することもできる。
【0103】
なお、動力制御装置90は、自動切替モードにおいても、上述した特定の条件が満たされたときに、無条件で、車両エンジンモードからAPUモードに切り替えるのではなく、実施形態1及び変形例と同様に、全ての操作系に対する操作の入力が無いという所定の条件が満たされることを前提としている。
【0104】
本発明に係るクレーン車において、自動切替モードが、動力モードを、車両エンジンモードからAPUモードに切り替える特定の条件は、上述した操作なしの状態が一定時間、継続した場合に限るものではない。
【0105】
このように構成された実施例2のクレーン100における動力制御装置90は、図6,7に示したフローチャートに示すように処理を行う。
【0106】
実施形態2のクレーン100は、まず、車両エンジンモード又はAPUモードによって電源の投入が行われる(START)。この段階では、クレーン100は、車両エンジンモード又はAPUモードのいずれかの動力モードで、動力モードを設定する処理のためにのみ電力が供給される。また、車両エンジンモードの場合は、車両エンジン13が動力の供給を行い、PTOが車両エンジン13に接続されているときは、クレーン作業のための動力の供給も行われる。
【0107】
電源の投入後、動力制御装置90は、前回、電源がオフにされたときに記憶部94に記憶された、アウトリガー12の張り出し量センサ15a,15bによって検出された値を読み出す(S21)。
【0108】
次いで、動力制御装置90は、電源がオフにされたか否かを検出する(S22)。動力制御装置90は、電源がオフにされたことを検出したとき(S22においてYES)は、張り出し量センサ15a,15bによって検出された値を記憶部94に記憶して(S23)、動力制御装置90は電源をオフにし、処理を終了する(END)。
【0109】
動力制御装置90は、電源がオフにされたことを検出しなかったとき(S22においてNO)は、電源が投入された直後か否かを判定する(S24)。動力制御装置90は、電源が投入されてから最初にこの判定を行うときは、電源が投入された直後であると判定し(S24においてYES)、電源が投入されてから2回目にこの判定を行うときは、電源が投入された直後でないと判定する(S24においてNO)。
【0110】
動力制御装置90が、電源が投入された直後であると判定したとき(S24においてYES)は、動力制御装置90は、最初の電源の投入がAPUモードであるか否かを判定する(S25)。そして、動力制御装置90は、最初の電源の投入がAPUモードであると判定したとき(S25においてYES)は、動力モードをAPUモードに設定する(S26)。このとき、動力制御装置90は、APUモードであることを記憶するのみであり、APUモードでの動力の供給は行わない。
【0111】
一方、動力制御装置90は、最初の電源の投入がAPUモードでないと判定したとき(S25においてNO)は、動力モードを車両エンジンモードに設定する(S27)。このとき、動力制御装置90は、車両エンジンモードであることを記憶するのみであり、車両エンジンモードでの実際の動力の供給は行わない。
【0112】
動力制御装置90が、S24の処理において、電源が投入された直後でないと判定したとき(S24においてNO)、及びS26の処理又はS27の処理によって動力モードを設定した後、動力制御装置90の操作検出部91は、クレーン作業のための操作系に操作の入力が無いか(クレーン作動装置入力信号OFF)否かを判定する(S28)。
【0113】
動力制御装置90が、操作系に操作の入力が有ると判定したとき(S28においてNO)は、動力制御装置90は、操作系への操作の入力を強制的にオフにして、操作系への操作の入力が無い状態とする(S29)。その後、動力制御装置90は、S26の処理又はS27の処理において記憶した動力モードがAPUモードか否かを判定する(S30)。
【0114】
動力制御装置90が記憶した動力モードが、S26の処理によるAPUモードであるとき(S30においてYES)は、動力制御装置90の動力切替部93は、APU80による動力及び電力の供給を開始させるAPUモード信号を出力してAPUモードを開始する(S31)。そして、動力制御装置90は、操作系への操作の入力を強制的にオフに設定する(S32)。その後、動力制御装置90は、図7に示すS53の処理に進む。
【0115】
ここで、動力制御装置90は、操作系への操作の入力を強制的にオフに設定する(S32)が、この操作系への操作の入力を強制的にオフにする処理は、APUモードでは、操作系への操作があっても、実際のクレーン作業の動作を無効にするための処理であり、動力モードをAPUモードに切り替える条件の処理ではない。
【0116】
操作系への操作の入力を動力制御装置90が強制的にオフに設定する後述のS37の処理、S44の処理、S50の処理についても、S32の処理と同じ理由で行われるものであり、動力モードをAPUモードに切り替える条件の処理ではない。
【0117】
動力制御装置90が記憶した動力モードが、S27の処理による車両エンジンモードであるとき(S30においてNO)は、動力制御装置90の動力切替部93は、車両エンジン13による動力及び電力の供給を開始させる車両エンジンモード信号を出力して車両エンジンモードを開始する(S33)。その後、動力制御装置90は、図7に示すS53の処理に進む。
【0118】
動力制御装置90が、S28の処理において、操作系に操作の入力が無いと判定したとき(S28においてYES)は、動力制御装置90は、S26の処理又はS27の処理において記憶した動力モードがAPUモードか否かを判定する(S34)。
【0119】
動力制御装置90が記憶した動力モードが、S26の処理によるAPUモードであるとき(S34においてYES)は、クレーン作業のための操作系に操作の入力が無いか(クレーン作動装置入力信号OFF)否かを判定する(S35)。
【0120】
動力制御装置90は、操作系に操作の入力が有ると判定したとき(S35においてNO)は、動力制御装置90の動力切替部93は、APU80による動力及び電力の供給を開始させるAPUモード信号を出力してAPUモードを開始する(S36)。そして、動力制御装置90は、操作系への操作の入力を強制的にオフに設定し(S37)、図7に示す後述のS53の処理に進む。
【0121】
動力制御装置90は、操作系に操作の入力が無いと判定したとき(S35においてYES)は、自動切替モードの判定処理である、図7に示す後述のS40の処理に進む。
【0122】
S34の処理において、動力制御装置90が記憶した動力モードが、S27の処理による車両エンジンモードであるとき(S34においてNO)は、クレーン作業のための操作系に操作の入力が無く、かつワイヤー51への負荷が無負荷か(クレーン作動装置入力信号OFF&無負荷)否かを判定する(S38)。
【0123】
動力制御装置90は、操作系に操作の入力が有るか、又は無負荷でないと判定したとき(S38においてNO)は、動力制御装置90の動力切替部93は、車両エンジン13による動力及び電力の供給を開始させる車両エンジンモード信号を出力して車両エンジンモードを開始し(S39)、図7に示す後述のS53の処理に進む。
【0124】
動力制御装置90は、操作系に操作の入力が無く、かつ無負荷と判定したとき(S38においてYES)は、自動切替モードの判定処理である、図7に示す後述のS40の処理に進む。
【0125】
動力制御装置90は、APUモード(S34においてYES)において、操作系に操作の入力が無いと判定したとき(S35においてYES)、又は車両エンジンモード(S34においてNO)において、操作系に操作の入力が無く、かつ無負荷と判定したとき(S38においてYES)、図7に示したS40の処理に進む。
【0126】
ここで、S40以降の処理(Sの数値が40以上の処理)は、最初に電源が投入されたときの動力モードから他の動力モードに切り替える処理が行われたときの動作を示す。すなわち、作業者がモニタ装置に表示された車両エンジンモードボタン、APUモードボタン、自動切替モードボタンのいずれかにタッチした場合の処理である。
【0127】
まず、動力制御装置90は、モニタ装置に表示された3つの動力モードのボタンのうち自動切替モードボタンが選択されたか否かを判定する(S40)。
【0128】
動力制御装置90は、自動切替モードボタンが選択された(モード判定自動設定)と判定したとき(S40においてYES)は、自動切替モードによる切り替えが、特定条件を満たしたAPUモードに設定するべきか否かを判定する(S41)。
【0129】
動力制御装置90の動力切替部93は、APUモードに設定するべきと判定したとき(S41においてYES)は、動力モードをAPUモードに設定する(S42)。このとき、動力制御装置90は、APUモードであることを記憶するのみであり、APUモードへの切替は行われない。
【0130】
その後、動力制御装置90の動力切替部93は、動力モードを、記憶したAPUモードに対応して、APU80による動力及び電力の供給を開始させるAPUモード信号を出力してAPUモードを開始する(S43)。そして、動力制御装置90は、操作系への操作の入力を強制的にオフに設定する(S44)。その後、動力制御装置90は、S53の処理に進む。
【0131】
動力制御装置90の動力切替部93は、特定条件を満たしていないためAPUモードに設定するべきでないと判定したとき(S41においてNO)は、動力モードを車両エンジンモードに設定する(S45)。このとき、動力制御装置90は、車両エンジンモードであることを記憶するのみであり、車両エンジンモードへの切り替えは行われない。
【0132】
その後、動力制御装置90の動力切替部93は、動力モードを、記憶した車両エンジンモードに対応して、車両エンジン13による動力及び電力の供給を開始させる車両エンジンモード信号を出力して車両エンジンモードを開始する(S46)。その後、動力制御装置90は、S53の処理に進む。
【0133】
動力制御装置90は、S40の処理において、自動切替モードボタンが選択されていないと判定したとき(S40においてNO)は、APUモードボタンが選択されたか(手動でAPUに切り替え)をさらに判定する(S47)。
【0134】
動力制御装置90の動力切替部93は、S47の処理において、APUモードボタンが選択されたと判定したとき(S47においてYES)は、動力モードをAPUモードに設定する(S48)。このとき、動力制御装置90は、APUモードであることを記憶するのみであり、APUモードへの切り替えは行われない。
【0135】
その後、動力制御装置90の動力切替部93は、動力モードを、記憶したAPUモードに対応して、APU80による動力及び電力の供給を開始させるAPUモード信号を出力してAPUモードを開始する(S49)。そして、動力制御装置90は、操作系への操作の入力を強制的にオフに設定する(S50)。なお、動力制御装置90の動力切替部93が、動力モードをAPUモードに切り替える条件である、操作系への操作の入力が無いことは、S35の処理又はS38の処理によって満たされている。その後、動力制御装置90は、S53の処理に進む。
【0136】
動力制御装置90の動力切替部93は、S47の処理において、車両エンジンモードボタンが選択されたと判定したとき(S47においてNO)は、動力モードを車両エンジンモードに設定する(S51)。このとき、動力制御装置90は、車両エンジンモードであることを記憶するのみであり、車両エンジンモードへの切り替えは行われない。
【0137】
その後、動力制御装置90の動力切替部93は、動力モードを、記憶した車両エンジンモードに対応して、車両エンジン13による動力及び電力の供給を開始させる車両エンジンモード信号を出力して車両エンジンモードを開始する(S52)。その後、動力制御装置90は、S53の処理に進む。
【0138】
動力制御装置90は、S53の処理において、現在の動力モードがAPUモードであるか否かを判定する。そして、動力モードがAPUモードであると判定したとき(S53においてYES)は、動力制御装置90は、記憶部94から、車両エンジンモードからAPUモードに切り替えられる直前に記憶部94に記憶された、アウトリガー12の張り出し量センサ15a、15bによって検出された値を読み出し、その読み出した値に基づいてクレーン100の稼働状況(ブーム30の姿勢等)や負荷率等の負荷状態を算出し、その算出された結果をモニタ装置に出力する(S54)。その後、動力制御装置90は、S22の処理に戻る。
【0139】
動力制御装置90は、S53の処理において、現在の動力モードがAPUモードでないと判定したとき(S53においてNO)は、動力モードは車両エンジンモードであるため、現時点のリアルタイムのアウトリガー12の張り出し量センサ15a,15bが正常に機能しているか否かを判定する(S55)。動力制御装置90は、張り出し量センサ15a,15bの出力値が定格の範囲であるときは張り出し量センサ15a,15bが正常に機能していると判定し、定格の範囲でないときは張り出し量センサ15a,15bが正常に機能していないと判定する。
【0140】
動力制御装置90は、S55の処理において、張り出し量センサ15a,15bが正常に機能していると判定したとき(S55においてYES)は、アウトリガー12の張り出し量センサ15a,15bによってリアルタイムに検出された値に基づいてクレーン100の稼働状況(ブーム30の姿勢等)や負荷率等の負荷状態を算出し、その算出された結果をモニタ装置に出力する(S56)。その後、動力制御装置90は、S22の処理に戻る。
【0141】
動力制御装置90は、S55の処理において、張り出し量センサ15a,15bが正常に機能していないと判定したとき(S55においてNO)は、クレーン100の稼働状況(ブーム30の姿勢等)や負荷率等の負荷状態を算出せず、モニタ装置に表示しないようにする(S57)。その後、動力制御装置90は、S22の処理に戻る。
【0142】
以上、詳細に説明したように、実施例2の動力制御装置90によれば、実施例1及び変形例と同様、クレーン100に供給する動力を、車両エンジン13とAPU80との間で切り替える際に、ブーム30やウインチ50等のクレーン作業のための全ての操作系への操作の入力が無いことを条件としている。
【0143】
したがって、実施例2のクレーン100は、例えば車両エンジンモードにおいて動作していたブーム30やウインチ50が、APUモードに切り替えられた瞬間に動力の供給が遮断されて、急停止するという事態が発生するのを防止する。
【0144】
また、実施例2のクレーン100は、APUモードにおいて停止してブーム30やウインチ50が、車両エンジンモードに切り替えられて動力が供給されることで、急に動き始めるという事態が発生するのを防止する。
【0145】
また、実施例2のクレーン100は、動力制御装置90が、動力モードをAPUモードに切り替えている期間中は、APUモードに切り替えられる直前の、車両エンジンモードの期間中に張り出し量センサ15a,15bによって検出されたアウトリガー12a,12bの張り出し量に基づいて、APUコントローラ84がクレーン100の稼働状況(ブーム30の姿勢等)や負荷率等の負荷状態等を算出して、その負荷状態等をモニタ装置に表示することができる。
【0146】
また、実施例2の動力制御装置90は、動力モードの手動での切り替えの場合だけに限らず、自動切替モードにおいても、APUモードに切り替えられた瞬間に動力の供給が遮断されて、急停止するという事態が発生するのを防止することができる。
【0147】
実施例2の動力制御装置90は、自動切替モードが、車両エンジンモードからAPUモードに自動的に切り替える動力モードであるが、APUモードから車両エンジンモードに自動的に切り替える動力モードを適用することもでき、また、動力モードを相互に自動的に切り替えてもよい。
【0148】
実施例2の動力制御装置90は、APUモードに切り替えたときは、操作系への操作の入力を強制的にオフに設定する(S32,S37,S44,S50の各処理)が、車両エンジンモードへ切り替えた場合も、所定の条件下では、操作系への操作の入力を強制的にオフにする処理を適用してもよい。
【符号の説明】
【0149】
10 走行装置
13 車両エンジン(主動力装置)
20 旋回台
30 ブーム
40 キャビン(操縦室)
80 APU(補助動力装置)
90 動力制御装置
100 ラフテレーンクレーン(クレーン車)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7