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特開2024-126588エレベータ内の電気器具の操作具及び操作方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126588
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】エレベータ内の電気器具の操作具及び操作方法
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/00 20060101AFI20240912BHJP
【FI】
B66B5/00 D
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023035056
(22)【出願日】2023-03-07
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-06-12
(71)【出願人】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114421
【弁理士】
【氏名又は名称】薬丸 誠一
(72)【発明者】
【氏名】松本 英丸
(72)【発明者】
【氏名】田中 剛史
(72)【発明者】
【氏名】岩木 隆彦
【テーマコード(参考)】
3F304
【Fターム(参考)】
3F304BA02
(57)【要約】
【課題】エレベータ内において手が届かないところにある電気器具(たとえばブレーカ)のスイッチを簡単に切替え操作することができるエレベータ内の電気器具の操作具及び操作方法を提供する。
【解決手段】操作具5は、操作者側に位置する電気器具26のスイッチ26aを反対側に押すためにスイッチ26aに当てる当て部55と、操作者側と反対側に位置するスイッチ26aを操作者側に引くためにスイッチ26aに掛ける掛け部57とを備える。この操作具5を使用することにより、作業員が電気器具26のあるところまで移動しなくても、スイッチ26aを簡単に切替え操作することができる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータ内において手が届かないところにある電気器具のスイッチを切替え操作するためのエレベータ内の電気器具の操作具であって、
長尺な操作棒と、
操作棒の端部に構成され、操作者側に位置するスイッチを反対側に押すためにスイッチに当てる当て部と、
操作棒の端部に構成され、操作者側と反対側に位置するスイッチを操作者側に引くためにスイッチに掛ける掛け部とを備える
エレベータ内の電気器具の操作具。
【請求項2】
掛け部は、変形可能かつ変形後の形状を保持可能な環状体である
請求項1に記載のエレベータ内の電気器具の操作具。
【請求項3】
環状体は、変形可能な線材の両端部を操作棒の端部に固定することにより構成される
請求項2に記載のエレベータ内の電気器具の操作具。
【請求項4】
当て部は、操作棒の端部よりも剛性が低く、操作棒の端部よりも摩擦係数が大きい材質のキャップである
請求項1に記載のエレベータ内の電気器具の操作具。
【請求項5】
昇降路内の所定の高さ箇所で停止するかごと昇降路の壁面との間の空間部に位置して手が届かないところにある電気器具のスイッチを切替え操作するためのエレベータ内の電気器具の操作方法であって、
かごの上に安全柵を設置した上で、かごの上から請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の操作具を電気器具に向けてかごと昇降路の壁面との間の空間部に通し、
当て部をスイッチに当て、操作具を下げて、スイッチを押し下げる、又は、掛け部をスイッチに掛け、操作具を上げて、スイッチを引き上げる、の少なくとも一方を行う
エレベータ内の電気器具の操作方法。
【請求項6】
操作具は伸縮式であり、かごが所定の階床に着床して停止する場合に必要な操作具の長さを標準長さとし、
かごが所定の階床よりも上方又は下方にずれて停止する場合のずれ量を確認し、このずれ量に応じて操作具の長さを変更する
請求項5に記載のエレベータ内の電気器具の操作方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータ内において手が届かないところにある電気器具のスイッチを切替え操作するためのエレベータ内の電気器具の操作具及び操作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図8に示すように、エレベータ1は、昇降路2と、かご3と、かご3の駆動機構4とを備える。昇降路2は、階層を有する建物内において上下方向に延びる。かご3は、駆動機構4の駆動により、昇降路2内を昇降し、駆動機構4の駆動停止により、指定された階床に停止する。
【0003】
かご3は、かご室30と、かご枠31と、かごドア33とを備える。かご枠31は、かご室30を囲むように配置され、上枠と、下枠と、縦枠31aとを備える。上枠は、かご室30の上方に配置される。下枠は、かご室30の下方に配置される。縦枠31aは、上枠及び下枠を連結し、かご室30の側方に配置される。縦枠31aの上部及び下部には、ガイドシュー32,32が取り付けられる。昇降路2内には、かご3の両側方において上下方向に延びる一対のガイドレール20,20が配置される。かご3の上下左右の4つのガイドシュー32,…が一対のガイドレール20,20を摺動することにより、かご3は、一対のガイドレール20,20に案内されて昇降路2内を昇降可能となる。かごドア33は、敷居34の上を横方向に移動してかご3の前面の開口(出入口)を開閉して人の乗り降りを可能とする。かごドア33には、両開き式と片開き式とがある。
【0004】
これに対し、各階床の乗場21は、三方枠22と、乗場ドア23とを備える。三方枠22は、壁面に形成され、枠内がかご3の開口に対応した大きさの開口(出入口)となる。乗場ドア23は、敷居24の上を横方向に移動して三方枠22内の開口を開閉して人の乗り降りを可能とする。乗場ドア23にも、かごドア33に対応して、両開き式と片開き式とがある。乗場ドア23は、通常は閉となっており、階床に停止したかご3のかごドア33の開閉動作に従動して開閉される。
【0005】
昇降路2は、底部付近にピット2Aを有する。ピット2Aの底面は、最下階の床面よりも下に位置する。最下階の床面からピット2Aの底面までの距離(深さ)は、一例として、1.5m以上である。また、当該深さは、一例として、3m未満である。
【0006】
駆動機構4は、巻上機40と、カウンターウェイト41と、主ロープ42とを備える。巻上機40は、昇降路2内の下部に配置される。カウンターウェイト41は、昇降路2の壁面とかご3との間に形成される空間に配置され、昇降路2内を昇降する。主ロープ42は、一端が昇降路2内の上部に固定され、巻上機40の駆動シーブ(綱車)を含む適宜のシーブに巻き掛けられ、他端が昇降路2内の上部に固定される。巻上機40の駆動シーブが回転駆動することにより、主ロープ42が走行し、これに伴い、かご3及びカウンターウェイト41が互いに逆方向に昇降路2内を昇降する。
【0007】
図9及び図10に示すように、昇降路2内には、受電盤25が配置される(たとえば特許文献1)。受電盤25には、建物側から電源ケーブルが引き込まれ、エレベータ1は、この電力により稼働する。巻上機40が昇降路2内に配置される、いわゆる機械室なしタイプ(マシンルームレスタイプ)のエレベータでは、電圧降下の影響を少なくするため、受電盤25は、巻上機40の近傍に配置されるのが好ましい。また、受電盤25は、保守員等の作業員がアプローチしやすい箇所に配置されるのが好ましい。これらのことから、受電盤25は、昇降路2内における最下階の乗場出入口の近傍箇所、より詳しくは、最下階の床面から所定の高さ位置かつ最下階の乗場出入口から手が届く所定の範囲内における昇降路2の壁面に直接又はブラケット等を介して間接的に設置される。
【0008】
エレベータ1のメンテナンスの際、作業員は、最下階の乗場ドア23を開放し、安全のため、受電盤25のブレーカ26のスイッチ26aを下げ、エレベータ1側の電源(受電盤25の二次側)を切ってから、最下階の乗場出入口から昇降路2内に入る。
【0009】
また、ブレーカ26は、停電後、復電したにもかかわらず、制御盤の機能が復帰しない場合等において、電源リセットをするためにも使用される。電源リセットとは、スイッチ26aを下げ、ブレーカ26を一旦OFFにした後、スイッチ26aを上げ、ブレーカ26を再度ONにするという手順を指す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006-137514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、かご3が最下階に着床しているときに停電が生じた場合、図11に示すように、最下階の乗場出入口はかご3で塞がれ、ブレーカ26のスイッチ26aを触ることができない。このような場合、作業員は、最下階の1つ上の階の乗場出入口からかご3の上に下りるか、かご室30内から天井板を外してかご3の上に上がってから、かご3と昇降路2の壁面との間の空間部のうち、作業員が通ることができる間隔を有するカウンターウェイト41の通過部を通ってピット2Aに下り、そこから受電盤25が設置される昇降路2の壁面とかご3との間の狭い空間部を上り、手を伸ばしてブレーカ26のスイッチ26aを切替え操作するという非常に煩雑な作業を行う必要がある。
【0012】
そこで、本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、エレベータ内において手が届かないところにある電気器具のスイッチを簡単に切替え操作することができるエレベータ内の電気器具の操作具及び操作方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係るエレベータ内の電気器具の操作具は、
エレベータ内において手が届かないところにある電気器具のスイッチを切替え操作するためのエレベータ内の電気器具の操作具であって、
長尺な操作棒と、
操作棒の端部に構成され、操作者側に位置するスイッチを反対側に押すためにスイッチに当てる当て部と、
操作棒の端部に構成され、操作者側と反対側に位置するスイッチを操作者側に引くためにスイッチに掛ける掛け部とを備える
エレベータ内の電気器具の操作具である。
【0014】
ここで、本発明に係るエレベータ内の電気器具の操作具の一態様として、
掛け部は、変形可能かつ変形後の形状を保持可能な環状体である
との構成を採用することができる。
【0015】
また、この場合、
環状体は、変形可能な線材の両端部を操作棒の端部に固定することにより構成される
との構成を採用することができる。
【0016】
また、本発明に係るエレベータ内の電気器具の操作具の他態様として、
当て部は、操作棒の端部よりも剛性が低く、操作棒の端部よりも摩擦係数が大きい材質のキャップである
との構成を採用することができる。
【0017】
また、本発明に係るエレベータ内の電気器具の操作方法は、
昇降路内の所定の高さ箇所で停止するかごと昇降路の壁面との間の空間部に位置して手が届かないところにある電気器具のスイッチを切替え操作するためのエレベータ内の電気器具の操作方法であって、
かごの上に安全柵を設置した上で、かごの上から上記いずれかの操作具を電気器具に向けてかごと昇降路の壁面との間の空間部に通し、
当て部をスイッチに当て、操作具を下げて、スイッチを押し下げる、又は、掛け部をスイッチに掛け、操作具を上げて、スイッチを引き上げる、の少なくとも一方を行う
エレベータ内の電気器具の操作方法である。
【0018】
ここで、本発明に係るエレベータ内の電気器具の操作方法の一態様として、
操作具は伸縮式であり、かごが所定の階床に着床して停止する場合に必要な操作具の長さを標準長さとし、
かごが所定の階床よりも上方又は下方にずれて停止する場合のずれ量を確認し、このずれ量に応じて操作具の長さを変更する
との方法を採用することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、電気器具が手の届かないところにあっても、操作具を用いることにより電気器具のスイッチを切替え操作することができる。このため、本発明によれば、作業員が電気器具のあるところまで移動しなくても、スイッチを簡単に切替え操作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本実施形態に係るブレーカの操作具の正面図である。
図2図2(a)は、ブレーカの操作具の一方の端部に構成される当て部の正面図である。図2(b)は、当て部を分解した状態の正面図である。
図3図3(a)は、ブレーカの操作具の他方の端部に構成される掛け部の正面図である。図3(b)は、掛け部の側面図である。図3(c)は、掛け部を分解した状態の正面図である。
図4図4は、本実施形態に係るブレーカの操作方法の説明図である。
図5図5(a)は、ブレーカの操作方法の一工程として、当て部をブレーカのスイッチに当てた状態の説明図である。図5(b)は、ブレーカの操作方法の一工程として、掛け部をブレーカのスイッチに掛けた状態の説明図である。
図6図6は、本実施形態の別パターンに係るブレーカの操作方法の説明図である。
図7図7(a)は、他実施形態に係るブレーカの操作具の一方の端部に構成される当て部・掛け部の正面図である。図7(b)は、当て部・掛け部の側面図である。
図8図8は、エレベータの斜視図である。
図9図9は、エレベータの最下階側部分の一部断面側面図である。
図10図10(a)は、昇降路の壁面に設置される受電盤の上部の正面図である。図10(b)は、受電盤の上部の側面図である。
図11図11は、エレベータの最下階側部分であって、かごが最下階に着床した状態の一部断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、電気器具をブレーカとする、本実施形態に係るエレベータ内のブレーカの操作具(以下、単に「操作具」という)について説明する。なお、操作具は、上記背景技術欄で説明した一般的なエレベータを対象とするものである。
【0022】
図1に示すように、操作具5は、操作棒50と、当て部55と、掛け部57とを備える。当て部55は、操作棒50の一方の端部に構成される。掛け部57は、操作棒50の他方の端部に構成される。操作具5は、全体として長尺である。
【0023】
操作棒50は、外棒51と、内棒52とを備える。外棒51は、円筒棒である。内棒52は、外棒51よりも外径が小さい円筒棒又は丸棒であり、外棒51と同じ程度の長さを有し、外棒51内に挿入される。外棒51の先端部に設けられる固定部53を軸回りに回転して緩めると、内棒52は出退自在となり、固定具53を逆回りに回転して締めると、内棒52は固定される。このように、操作棒50ひいては操作具5は伸縮式である。
【0024】
図2に示すように、当て部55は、止め穴56aを有して操作棒50の端部(内棒52の先端部)に外嵌される端末部材56である。端末部材56は、内棒52の外径よりも大きい外径を有し、操作棒50の端部における膨大端部となる。端末部材56の先端部は、外周部が円弧面等の曲面部56bであり、この内側が平坦面状となっている。
【0025】
端末部材56は、操作棒50の端部(内棒52の先端部)よりも剛性が低く、操作棒50の端部(内棒52の先端部)よりも摩擦係数が大きく、弾性を有する材質である。本実施形態においては、端末部材56は、ゴムキャップである。
【0026】
図3に示すように、掛け部57は、所定の大きさ以上の力を加えることにより変形可能かつ変形後の形状を保持可能な環状体である。環状体は、変形可能な線材58の両端部を操作棒50の端部(外棒51の基端部)に固定することにより構成される。なお、所定の大きさ以上の力とは、真っ直ぐかつ水平にした線材58を特定の点で固定してこれを固定端とし、固定端から長手方向に50mm離れた点に対して鉛直方向に加える力が3N以上の力をいう。本実施形態においては、線材58は、DCM株式会社製の商品名「くねくねしタイ∞」(登録商標)である。
【0027】
線材58は、断面形状が円形であり、両端部が操作棒50の端部(外棒51の基端部)の周方向180度離れた対向箇所に配置された状態でホースバンド等のバンド59で結束されて、操作棒50の端部に固定される。この場合、操作棒50の端部(外棒51の基端部)は膨大端部51aを有し、線材58の両端部は膨大端部58a,58aを有する。膨大端部51aによりバンド59は操作棒50から抜けない。また、膨大端部58aにより線材58はバンド59から抜けない。これら2つの抜け止めの少なくとも一方の抜け止めにより、線材58は、操作棒50から外れることなく、操作棒50に強固に固定される。
【0028】
本実施形態に係る操作具5の構成は、以上のとおりである。次に、操作具5の使用方法(エレベータ1内のブレーカ26の操作方法)について説明する。
【0029】
かご3が最下階に着床しているときに停電が生じ、復電後に電源リセットを行う必要がある場合、まず、作業員は、図4に示すように、操作具5を携帯して、最下階の1つ上の階の乗場出入口からかご3の上に下りるか、かご室30内から天井板を外してかご3の上に上がる。このとき、操作具5は、かご3が最下階に着床して停止する場合に必要な操作具5の長さ(標準長さ)L1とされる。次に、作業員は、かご3の上に安全柵35を設置する。安全柵35は、通常は折り畳まれてかご3の上に収納されている。
【0030】
次に、作業員は、操作具5をブレーカ26に向けてかご3と昇降路2の壁面との間の空間部に通す。次に、作業員は、図5(a)に示すように、当て部55をブレーカ26のスイッチ26aに当て、操作具5を下げて、スイッチ26aを押し下げ、ブレーカ26を一旦OFFにする。次に、作業員は、操作具5を反対に持ち替えた後、図5(b)に示すように、掛け部57をスイッチ26aに掛け、操作具5を上げて、スイッチ26aを引き上げ、ブレーカ26を再度ONにする。これにより電源リセットが完了する。
【0031】
なお、図6に示すように、かご3が最下階よりも上方にずれて停止する場合は、作業員は、かご3の上に上がる前に、ずれ量Dを確認する。そして、作業員は、かご3の上に上がる前に、又は、かご3の上に上がってから、このずれ量Dに応じて操作具5を標準長さL1よりも長い長さL2に伸ばす。ずれ量Dの確認方法としては、i)階床位置検出片28(昇降路2内において各階床の乗場出入口周辺に設けられる)と、着床検出センサ36(かご3の所定箇所に設けられ、可視光線、赤外線等の発光素子及び受光素子を備え、階床位置検出片28を検出する)との離隔距離を測定する、ii)かご3の床面と乗場21の床面の段差を測定する、といった方法がある。なお、場合によれば、かご3が階床よりも下方にずれて停止することもあり得るが、この場合も同様にして、ずれ量を確認し、このずれ量Dに応じて操作具5を標準長さL1よりも短い長さに縮める。
【0032】
以上のとおり、本実施形態に係る操作具5によれば、ブレーカ26が手の届かないところにあっても、操作具5を用いることによりブレーカ26のスイッチ26aを切替え操作することができる。このため、本実施形態に係る操作具5によれば、作業員がブレーカ26のあるところまで移動しなくても、スイッチ26aを簡単に切替え操作することができる。
【0033】
また、本実施形態に係る操作具5によれば、掛け部57は、変形可能かつ変形後の形状を保持可能な環状体である。図5に示すように、ブレーカ26のスイッチ26aは、受電盤25の筐体25aの正面から突出し、水平軸回りに揺動するが、スイッチ26aの上方には、ランプ27(受電盤25の一次側が活線となっていることを表示する)が設けられ、ランプ27も受電盤25の筐体25aの正面から突出する。しかし、掛け部57は、先端部を基端部よりも操作棒50の軸直交方向に変位させる等、ランプ27を回避するように形状を変形することができる。また、各々の作業員が環状体を作業しやすい広がり具合や曲げ具合に調整し、スイッチ26aに掛けやすくすることができる。このため、本実施形態に係る操作具5によれば、スイッチ26aの切替え操作を円滑に行うことができる。
【0034】
また、本実施形態に係る操作具5によれば、掛け部57を構成する線材58は、断面形状が円形であり、角部を有さない。これにより、操作具5を下げる際に、掛け部57の先端部が受電盤25の筐体25aの上面やランプ27の突出部分に引っ掛かったとしても、線材58の弾性も相まって、その引っ掛かりは容易に解消され得る。このため、本実施形態に係る操作具5によれば、この点においても、スイッチ26aの切替え操作を円滑に行うことができる。
【0035】
また、本実施形態に係る操作具5によれば、当て部55を構成する端末部材56は、操作棒50の端部よりも剛性が低く、操作棒50の端部よりも摩擦係数が大きい材質である。しかも、端末部材56の先端部の外周部の内側の部分は平坦面状である。これにより、当て部55とスイッチ26aとは優しくしっかりと接触し、かつ、滑りにくい(ずれにくい)。このため、本実施形態に係る操作具5によれば、この点においても、スイッチ26aの切替え操作を円滑に行うことができ、また、スイッチ26aに傷が付くのを防止することができる。
【0036】
また、本実施形態に係る操作具5によれば、当て部55を構成する端末部材56の先端部の外周部は円弧面等の曲面部56bである。これにより、操作具5を下げる際に、当て部55の先端部が受電盤25の筐体25aの上面やランプ27の突出部分に引っ掛かったとしても、その引っ掛かりは容易に解消され得る。このため、本実施形態に係る操作具5によれば、この点においても、スイッチ26aの切替え操作を円滑に行うことができる。
【0037】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0038】
上記実施形態においては、操作棒50の一方の端部に当て部55が構成され、他方の端部に掛け部57が構成される。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。図7に示すように、操作棒50の1つの端部に当て部55と掛け部57の両方が構成されるものであってもよい。この場合、端末部材56は、操作棒50の端部の膨大端部51aを兼ねる。
【0039】
また、上記実施形態においては、掛け部57は環状体である。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。掛け部は、フック形状であってもよく、要はブレーカのスイッチに掛けることができるものであればどのような形態であってもよい。
【0040】
また、上記実施形態においては、ブレーカ26のスイッチ26aは、2点間を揺動移動する揺動式である。しかし、本発明が対象とするブレーカはこれに限定されるものではない。スイッチは、2点間を直動移動する直動式であってもよい。また、ブレーカは、漏電検知機能を有する漏電ブレーカであってもよい。
【0041】
また、上記実施形態においては、当て部55でブレーカ26のスイッチ26aを第1状態(ON)から第2状態(OFF)に切替え、掛け部57でスイッチ26aを第2状態(OFF)から第1状態(ON)に切替える。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。ブレーカ26の向きが逆の場合は、掛け部57でスイッチ26aを第1状態(ON)から第2状態(OFF)に切替え、当て部55でスイッチ26aを第2状態(OFF)から第1状態(ON)に切替えることとなる。
【0042】
また、上記実施形態においては、かご3が最下階に着床することを前提としている。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。近年、浸水対策として、電気系統は、最下階の1つ上の階又はさらにもう1つ上の階(最下階が1階であれば、2階又は3階)に移動させる、あるいは、これらの階にサブを設ける、という流れにある。要は、本発明は、階数を問わず、所定階から触れるスイッチがかごが所定階又はこの付近に停止しているために触れないという事態に対して有効な発明である。
【0043】
また、上記実施形態においては、操作具5は、かご3と昇降路2の壁面との間の空間部に位置して手が届かないところにあるブレーカ26のスイッチ26aを切替え操作する。しかし、操作対象はブレーカに限定されず、また、操作場所も限定されない。本発明が有効となるあらゆるケースに適用することができる。
【符号の説明】
【0044】
1…エレベータ、2…昇降路、2A…ピット、20…ガイドレール、21…乗場、22…三方枠、23…乗場ドア、24…敷居、25…受電盤、25a…筐体、26…ブレーカ(配線用遮断器)、26a…スイッチ(ハンドル)、27…ランプ、28…階床位置検出片、3…かご、30…かご室、31…かご枠、31a…縦枠、32…ガイドシュー、33…かごドア、34…敷居、35…安全柵、36…着床検出センサ、4…駆動機構、40…巻上機、41…カウンターウェイト、42…主ロープ、5…操作具、50…操作棒、51…外棒、51a…膨大端部、52…内棒、53…固定部、55…当て部、56…端末部材(ゴムキャップ)、56a…止め穴、56b…曲面部、57…掛け部、58…線材、58a…膨大端部、59…バンド
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11