(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126604
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】山留材の接合構造
(51)【国際特許分類】
E02D 17/04 20060101AFI20240912BHJP
E02D 5/20 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
E02D17/04
E02D5/20 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023035094
(22)【出願日】2023-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】512064619
【氏名又は名称】株式会社オトワコーエイ
(71)【出願人】
【識別番号】512256454
【氏名又は名称】KSコンサルタント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095577
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 富雅
(74)【代理人】
【識別番号】100100424
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 知公
(72)【発明者】
【氏名】小島 一彦
(72)【発明者】
【氏名】北岡 茂樹
【テーマコード(参考)】
2D049
【Fターム(参考)】
2D049GE06
2D049GE07
(57)【要約】
【課題】山留材の端板どうしを接合する新規構成の接合構造を提案する。
【解決手段】この発明は、第1山留材と第2山留材とを軸方向に接合する接合構造であって、第1山留材は第1端板を備え、第2山留材は第1端板に対面して接合される第2端板を備え、第1端板及び第2端板が傾斜している。第1端板は第1山留材を構成するH形鋼のウエブの軸方向に第1角度で傾斜し、第2端板は第1端板と平行に傾斜している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1山留材と第2山留材とを軸方向に接合する接合構造であって、
前記第1山留材は第1端板を備え、前記第2山留材は前記第1端板に対面して接合される第2端板を備え、
前記第1端板及び前記第2端板が傾斜している、山留材の接合構造。
【請求項2】
前記第1端板は前記第1山留材を構成するH形鋼のウエブの軸方向に第1角度で傾斜し、前記第2端板は前記第1端板と平行である、請求項1に記載の接合構造。
【請求項3】
前記第1端板において前記H形鋼の上下フランジ部に接する縁は平行であり、かつ前記上下フランジ部の側縁に対して垂直であり、前記第2端板において前記H形鋼の上下フランジ部に接する縁は平行であり、かつ前記上限フランジ部の側縁に対して垂直である、請求項2に記載の接合構造
【請求項4】
前記第1端板と前記第2端板とを結合するボルトとして、前記第1端板側から挿入される第1ボルトと前記第2端板側から挿入される第2ボルトとを備えている、請求項3に記載の接合構造。
【請求項5】
前記第1山留材と前記第2山留材の上下フランジの外側に添接板が固定される、請求項1に記載の接合構造。
【請求項6】
前記添接板は前記第1及び第2端板より短い、請求項5に記載の接合構造。
【請求項7】
H形鋼の両端に端板を設けてなる山留材であって、
H形鋼の一端の端板は該H形鋼の上フランジとの間の第1の挟角で前記H形鋼のウエブの軸方向に傾斜しており、
前記他端の端板は前記H形鋼の下フランジとの間に前記第1の挟角で前記H形鋼のウエブの軸方向に傾斜している、山留材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、山留材の接合構造の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
山留材はH形鋼の端部に端板を設けた構造であり、H形鋼の上下のフランジや端板にはボルトを通すための穴が規格された位置にあけられている。
この端板は、H形鋼の両端においてウエブやフランジに対して垂直に設けられている。第1山留材と第2山留材とを軸方向に接続するには、第1山留材の上下フランジ部と第2山留材の上下フランジ部に、第1山留材と第2山留材にかけ渡されるように添接板を当てつけ、各フランジ部へボルト締めすることが一般的であった。
第1山留材の一方の端板に第2山留材の一方の端板を対面させ、両端板の穴に締結部材を通して、両端板を固定する方式も提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
特許文献1 特許第6924999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
端板の面積は制限されるので、そこに適用できるボルトの数が制限される。
背景技術で説明した端板と端板とを接合する技術では、ボルト1つ当たりの締結力を上げるために、また、第1山留材と第2山留材に曲げ応力がかかったときの破壊を防止するため、高圧ボルトが採用されることとなるが、高圧ボルトを締め付けるには専用の治具が必要となる。
山留材を連結するときに汎用的に用いられるボルト及びそのための治具、即ち、添接板をフランジ部へ固定するときに使用する汎用的なボルト及びそのための治具をそのまま端板の連結に適用することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記課題を解決すべく、鋭意検討を重ねてきた結果、端板を傾斜させればよいことに気付き、この発明の第1局面に規定の接合構造に想到した。
この発明の第1局面は次の様に規定される。即ち、
第1山留材と第2山留材とを軸方向に接合する接合構造であって、
前記第1山留材は第1端板を備え、前記第2山留材は前記第1端板に対面して接合される第2端板を備え、
前記第1端板及び前記第2端板が傾斜している、山留材の接合構造。
【0006】
このように規定される第1局面の接合構造によれば、第1端板及び第2端板を傾斜させたので、その面積が大きくなり、両者間の摩擦力も向上する。また両者の面積が大きくなることで適用できるボルトの数が増える。そのため、両者間の接合力が大きくなる。
【0007】
この発明の第2局面は次のように規定される。即ち、
第1局面に規定の接合構造において、前記第1端板は前記第1山留材を構成するH形鋼のウエブの軸方向に第1角度で傾斜し、前記第2端板は前記第1端板と平行に傾斜している。
H形鋼のウエブの軸方向に各端板を傾斜させることにより、幅方向に傾斜させた場合に比べて、任意かつ大きな角度で端板を傾斜させられる。よって、端板に広い面積を与えられるので、両者間に大きな摩擦力を確保できるとともに、端板-端板の接合により多くのボルトを適用でき、第1山留材と第2山留材との接合が安定する。
【0008】
この発明の第3局面は次のように規定される。即ち、
第2局面に規定の接合構造において、前記第1端板において前記H形鋼の上下フランジ部に接する縁は平行であり、かつ前記上下フランジ部の側縁に対して垂直であり、前記第2端板において前記H形鋼の上下フランジ部に接する縁は平行であり、かつ前記上下フランジ部の側縁に対して垂直である。
このように規定される第3局面に規定の接合構造によれば、第1端板及び第2端板傾斜しつつも真上を向いている。よって、山留材を構成するH形鋼のフランジ部に掛かった垂直方向(上方から)の力が、第1端板及び第2端板に対しても垂直方向にかかることとなり、両者の間に最大の摩擦力を得られ、接合構造として機械的に安定する。
【0009】
この発明の第4局面は次のように規定される。即ち、
第3局面に規定の接合構造において、前記第1端板と前記第2端板とを結合するボルトとして、前記第1端板側から挿入される第1ボルトと前記第2端板側から挿入される第2ボルトとを備えている。
第1端板を傾斜させたため、第1端板と一方のフランジ部との角度が広くなる一方、第1端板と他方のフランジ部との角度が狭くなる。第1端板と一方のフランジ部との間には広い空間が確保されるので、この空間において締結作業を行うことには何の抵抗もない。他方、第1端板と他方のフランジ部との間の狭くなった空間において締結作業を行うことは困難である。具体的には、比較的狭い空間側からボルトを挿入し、比較的広い空間においてナットの締め付け作業を行う。
【0010】
この発明の第5局面は次のように規定される。即ち、
第1局面に規定の接合構造において、前記第1山留材と前記第2山留材の上下フランジの外側に添接板が固定される。
第1山留材と第2山留材とへ、従来から適用されている添接板を適用することを何ら避けるものではない。
しかしながら、この添接板は、従来用いられていたものに比べて、短く、例えば、第1端板や第2端板より短くすることができる(第6局面)。添接板の固定はその全面の穴へボルトを挿入することが一般的であるため、短くなった添接板を用いれば、第1山留材と第2山留材との接合作業、更にはその分解作業に手間がかからなくなる。
【0011】
この発明の第7局面は次のように規定される。
H形鋼の両端に端板を設けてなる山留材であって、
H形鋼の一端の端板は該H形鋼の上フランジとの間に第1の挟角で前記H形鋼のウエブ方向に傾斜しており、
前記他端の端板は前記H形鋼の下フランジとの間に前記第1の挟角で前記H形鋼のウエブ方向に傾斜している、山留材。
このように規定される第7局面の山留材の1つめを第1山留材としてその一端側の端板を第1端板とし、2つめを第2山留材としてその他端側の端板を第2端板とすることで、第1局面に規定の接合構造の構築が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1はこの発明の実施形態の山留材を示す斜視図である。
【
図2】
図2は山留材の接合構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明の実施形態について説明する。
図1は、この発明の実施形態の第1山留材1aと第2山留材1bとを示す。
各山留材1a、1bは、H形鋼部分2の両端に端板6、7を備えた構造である。
端板6、7は鋼板からなり、H形鋼部分2の上フランジ部3、下フランジ部4及びウエブ5の端部にそれぞれ溶接される。端板6、7にはボルト通し穴8が形成されている。H形鋼の上下フランジ部3、4にもボルト通し穴が形成されているものとする。
第1端板6は下フランジ部4との間に、挟角αをもって、ウエブ5の軸方向に傾斜している。同様に、第2端板7は上フランジ部3との間に、挟角αをもって、ウエブ5の軸方向に傾斜している。即ち、第1端板6と第2端板7とは平行となる。
第1端板6と第2端板7の傾斜角度を規定する挟角αは、
30度~60度とすることができる。30度以上とすることで各端板に十分な面積が確保され、60度以下とすることで上下フランジ部と端板とで挟まれる空間に所望の広さを確保できる。
【0014】
第1端板6はウエブ5の軸方向に傾斜しており、その上縁61と下縁62とは平行であり、かつ上縁61と上フランジ部3の側縁とは垂直となり、下縁62と下フランジ部4の側縁とは垂直になる。同様に第2端板7はウエブ5の軸方向に傾斜しており、その上縁71と下縁72は平行であり、かつ上縁71と上フランジ部3の側縁とは垂直であり、下縁72と下フランジ部4の側縁とは垂直である。
【0015】
このように構成された第1山留材1aと第2山留材1bとの接合状態を
図2に示す。
図2において、第1山留材1aの第1端板6と下フランジ部4との間に形成される空間30aは狭く、治具を差し込み難いので、こちらかボルトを差し込み、反対側の空間においてナット締めを行う。
同様に第2山留材1bの第2端板7と上フランジ部3との間に形成される空間20bは狭いので、こちらかボルトを差し込み、反対側の空間においてナット締めを行う。
【0016】
このように構成される山留材の接合構造によれば、第1山留材1aの第1端板6と第2山留材1bの第2端板7とが重ね合わされて、ボルトにより、締結される。第1端板6と第2端板7とはウエブ5の軸方向に傾斜しているため、従来例のような垂直な端板よりも、大きな面積を有する。
その結果、第1端板6と第2端板7との間に大きな摩擦力を得ることができ、かつ、多くのボルトを配置することが可能となる。
更には、第1端板6と第2端板7の側面とウエブ5の側面とは垂直である。即ち、上下フランジ部3、4に対して垂直にかかる力は、第1端板6及び第2端板7に対しても垂直にかかる。これにより、第1端板6と第2端板7との間に強い摩擦力を確保できる。
【0017】
図2に示すように、第1山留材1aと第2山留材1bの各上フランジ部3と下フランジ部4とに添接板10をかけ渡すこともできる。添接板10は汎用的な鋼板に穴をあけた構成である。この穴にボルトを差し込んで締結する。
この添接板10は、第1端板6や第2端板7よりも短くすることができる。これにより、添接板10の取付作業が容易になる。
【0018】
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
【符号の説明】
【0019】
1a 第1山留材
1b 第2山留材
3 上フランジ部
4 下フランジ部
5 ウエブ
6 第1端板
7 第2端板
10 添接板