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  • 特開-トルクレンチ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126615
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】トルクレンチ
(51)【国際特許分類】
   B25B 23/142 20060101AFI20240912BHJP
   B25B 21/00 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
B25B23/142
B25B21/00 530D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023035108
(22)【出願日】2023-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】000151690
【氏名又は名称】株式会社東日製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【弁理士】
【氏名又は名称】久松 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 聖司
(72)【発明者】
【氏名】桑村 英憲
(72)【発明者】
【氏名】坂元 一星
【テーマコード(参考)】
3C038
【Fターム(参考)】
3C038AA01
3C038BC01
3C038EA06
(57)【要約】
【課題】 駆動ユニットを介してトルクレンチ本体に不要な外力が作用することを抑制する。
【解決手段】 トルクレンチ(1)は、トルクレンチ本体(10)と、駆動ユニット(20)と、ベアリング(41)と、ピン(43)とを有する。トルクレンチ本体(10)は、ラチェット(122)を含むヘッド(12)を備える。駆動ユニット(20)は、駆動源からの駆動力をラチェット(122)に伝達する回転軸(22)を備える。ベアリング(41)は、ヘッド(12)に固定される内輪(41a)を含んでおり、ヘッド(12)及び駆動ユニット(20)を回転軸(22)の周りで相対的に回転させる。ピン(43)は、駆動ユニット(20)の外装を構成するケース(21)に対して着脱可能に取り付けられ、ケース(21)を貫通した状態でベアリング(41)の外輪(41b)をケース(21)に固定する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラチェットを含むヘッドを備えたトルクレンチ本体と、
駆動源からの駆動力を前記ラチェットに伝達する回転軸を備えた駆動ユニットと、
前記ヘッドに固定される内輪を含み、前記ヘッド及び前記駆動ユニットを前記回転軸の周りで相対的に回転させるベアリングと、
前記駆動ユニットの外装を構成するケースに対して着脱可能に取り付けられ、前記ケースを貫通した状態で前記ベアリングの外輪を前記ケースに固定するピンと、を有することを特徴とするトルクレンチ。
【請求項2】
前記ヘッドは、前記回転軸の軸方向に突出して前記内輪を支持する支持部を有しており、
前記内輪は、前記回転軸の軸方向において、前記支持部に形成された段差部と、前記支持部に固定される止め輪とによって挟まれて固定されていることを特徴とする請求項1に記載のトルクレンチ。
【請求項3】
前記外輪は、前記回転軸の軸方向において、前記ピンと、前記ケースに形成された段差部とによって挟まれて固定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のトルクレンチ。
【請求項4】
前記ケースは、この内面において、前記ピンの一部と係合する凹部を有することを特徴とする請求項3に記載のトルクレンチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動源により目標トルク値よりも低いトルク値まで締結部材を仮締めした後、手動により目標トルク値まで締結部材を締め付ける半自動式のトルクレンチに関する。
【背景技術】
【0002】
半自動式のトルクレンチでは、手動式のトルクレンチ本体に駆動ユニットを取り付けており、駆動ユニットは、電動モータやエアモータ等の駆動源と、駆動源の出力を減速する減速機とを備えている。ここで、特許文献1に記載のナットランナ付トルクレンチのように、駆動ユニットがトルクレンチ本体に一体的に固定されることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公昭49-38640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
駆動ユニットがトルクレンチ本体に固定されていると、駆動ユニットによって締結部材を仮締めした後に、トルクレンチ本体を手動で操作して締結部材を締め付けるとき、駆動ユニットを介してトルクレンチ本体に不要な外力が作用してしまうことがある。具体的には、外力が駆動ユニットに作用したとき、この外力が駆動ユニットを介してトルクレンチ本体に伝達されてしまう。この場合には、トルクレンチ本体の手動操作によって締結部材を目標トルク値まで締め付けようとするとき、締付け時のトルク値に悪影響を与えてしまうことがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明であるトルクレンチは、トルクレンチ本体と、駆動ユニットと、ベアリングと、ピンとを有する。トルクレンチ本体は、ラチェットを含むヘッドを備えている。駆動ユニットは、駆動源からの駆動力をラチェットに伝達する回転軸を備えている。ベアリングは、ヘッドに固定される内輪を含んでおり、ヘッド及び駆動ユニットを回転軸の周りで相対的に回転させる。ピンは、駆動ユニットの外装を構成するケースに対して着脱可能に取り付けられ、ケースを貫通した状態でベアリングの外輪をケースに固定する。
【0006】
ヘッドには、回転軸の軸方向に突出して内輪を支持する支持部を設けることができる。ここで、内輪は、回転軸の軸方向において、支持部に形成された段差部と、支持部に固定される止め輪とによって挟まれて固定することができる。
【0007】
外輪は、回転軸の軸方向において、ピンと、ケースに形成された段差部とによって挟まれて固定することができる。ケースの内面には、ピンの一部と係合する凹部を設けることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、トルクレンチ本体及び駆動ユニットがベアリングを介して接続されているため、駆動ユニットに作用した外力がトルクレンチ本体に伝達されることを抑制できる。例えば、駆動ユニットによって締結部材の仮締めを行った後、トルクレンチ本体を操作して締結部材を目標トルク値まで締め付けるとき、駆動ユニットに作用した外力がトルクレンチ本体に伝達されて、トルクレンチ本体による締付け時のトルク値に悪影響を与えてしまうことを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】半自動式のトルクレンチの外観図である。
図2】トルクレンチの一部の内部構造を示す拡大図である。
図3図2に示す内部構造のA-A断面図である。
図4図2に示す内部構造を分離させた状態を示す図である。
図5図3に示す内部構造を分離させた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施形態である半自動式のトルクレンチについて、図1図5を用いて説明する。図1はトルクレンチの外観図である。図2及び図3は、トルクレンチの一部の内部構造を示す図であり、図3図2におけるA-A断面図である。図4は、図2に示す内部構造を分離させた状態を示す図であり、図5は、図3に示す内部構造を分離させた状態を示す図である。
【0011】
図1に示すように、トルクレンチ1は、作業者が手動で操作するトルクレンチ本体10と、電動モータやエアモータなどの駆動源を含む駆動ユニット20とを有する。
【0012】
トルクレンチ本体10は、作業者が握るハンドル11と、ハンドル11の先端に対して回転可能に接続されたヘッド12とを有する。ハンドル11の内部には、締付け時のトルク値が予め設定された目標トルク値に到達したときにトルクの伝達を解除するトグル機構(不図示)が配置されている。
【0013】
トグル機構としては、公知の機構を採用することができる。例えば、目標トルク値を設定するためのトグルバネと、トグルバネの端部に当接するトグルシートと、トグルシート及びヘッド12(後述するヘッド本体121)を連結するリンク機構とによって、トグル機構を構成することができる。締付け時のトルク値が目標トルク値に到達したときには、リンク機構が作動することにより、トグルシートからヘッド12への力の伝達が解除され、作業者は締付けトルク値が目標トルク値に到達したことを把握することができる。
【0014】
図2及び図3に示すように、ヘッド12は、ヘッド本体121及びラチェット122を有する。ヘッド本体121には、ラチェット122を収容する貫通孔121aが形成されており、ラチェット122は、ヘッド本体121により回転可能に保持されている。ラチェット122において、軸周りに延びる外周面にはラチェット歯122aが形成されており、ヘッド本体121の貫通孔121aにはラチェット爪(不図示)が配置されている。ラチェット爪は、バネの付勢力を受けて、ラチェット歯122aに係合する。
【0015】
ヘッド本体121を一方向に回転させると、ラチェット爪がラチェット歯122aに係合した状態が維持され、ラチェット122は、ヘッド本体121と共に一方向に回転する。一方、ヘッド本体121を他方向に回転させると、ラチェット歯122aがバネの付勢力に抗してラチェット爪を押し込んでラチェット爪との係合を解除することにより、ラチェット122に対してヘッド本体121が相対的に回転する。
【0016】
ラチェット122には、ヘッド本体121から下方に突出する角軸部122bが形成されており、角軸部122bにはソケット(不図示)が取り付けられる。ボルトやナット等の締結部材に対してソケットを取り付けた後、ラチェット122を一方向に回転させることにより、締結部材を締め付けることができる。
【0017】
駆動ユニット20の外装を構成するケース21の内部には、駆動源(不図示)が配置されている。駆動源には減速機構(不図示)が接続されており、減速機構(不図示)には回転軸22が接続されている。これにより、駆動源の駆動力が減速機構を介して回転軸22に伝達され、回転軸22を所定の軸回りに回転させることができる。
【0018】
回転軸22の先端部22aは、ラチェット122の上面に形成された凹部122cに挿入され、先端部22a及び凹部122cは、回転軸22の回転方向において互いに係合する。これにより、駆動源からの駆動力によって回転軸22を回転させることにより、ラチェット122を回転させることができる。
【0019】
図4及び図5に示すように、ヘッド本体121の上面には、上方(回転軸22の軸方向)に突出する円筒形状の支持部121bが形成されており、支持部121bは、ベアリング41を支持するために用いられる。支持部121bの外周面には、止め輪42が固定される溝部121b1と、ベアリング41の一端を支持する段差部121b2とが形成されている。
【0020】
ベアリング41は、ケース21の内周面とヘッド本体121の支持部121bの外周面との間に配置されており、内輪41aと、外輪41bと、内輪41a及び外輪41bの間に配置される複数の転動体41cとを有する。内輪41aはヘッド本体121の支持部121bの外周面に対して固定され、外輪41bはケース21の内周面に対して固定される。
【0021】
ベアリング41の内輪41aをヘッド本体121の支持部121bに固定するときには、止め輪42と、支持部121bに形成された段差部121b2とが用いられる。ここで、内輪41aの上端が止め輪42に当接するとともに、内輪41aの下端が段差部121b2に当接することにより、回転軸22の軸方向において内輪41aを固定することができる。
【0022】
ベアリング41の外輪41bをケース21に固定するときには、ケース21の内面に形成された段差部21aと、ケース21の内部に挿入されるピン43とが用いられる。本実施形態では、2つのピン43を用いており、各ピン43は円柱状に形成されており、図5の紙面と直交する方向に延びている。
【0023】
図5に示すように、ケース21の内面には、ピン43の一部と係合する凹部21bが形成されており、凹部21bはピン43の外周面に沿った形状に形成されている。ケース21には、ケース21の外部からケース21の内部にピン43を挿入するための一対の貫通孔(不図示)が形成されており、一対の貫通孔はピン43の両端を支持する。ケース21の貫通孔にピン43を挿入すると、ピン43はケース21の凹部21bと係合する。
【0024】
なお、本実施形態では、ピン43を挿入するために、ケース21に一対の貫通孔を形成しているが、これに限るものではない。例えば、ケース21に1つの貫通孔を形成するだけでもよく、この貫通孔を用いてケース21の内部にピン43を挿入することができる。また、本実施形態では、図3の紙面と直交する方向からピン43を挿入するようにしているが、これに限るものではない。具体的には、図2の紙面と直交する方向からピン43を挿入するようにしてもよい。この場合には、図2の紙面と直交する方向からピン43を挿入できるように、ケース21に貫通孔を形成すればよい。
【0025】
外輪41bの上端はケース21の段差部21aに当接するとともに、外輪41bの下端はピン43に当接する。ここで、ピン43は、ケース21の貫通孔(不図示)や凹部21bによって位置決めされているため、外輪41bの下端を支持することができる。これにより、回転軸22の軸方向において、外輪41bを固定することができる。
【0026】
本実施形態であるトルクレンチ1を用いて締結部材を締め付けるときには、まず、駆動ユニット20によって回転軸22を回転させることにより、ラチェット122を回転させる。この締付け作業は仮締めであり、目標トルク値よりも低いトルク値まで締結部材が締め付けられる。仮締めを行った後、作業者はトルクレンチ本体10を操作することにより、目標トルク値まで締結部材を締め付けて締付作業を完了する。
【0027】
本実施形態によれば、ヘッド12及び駆動ユニット20は、ベアリング41を介して接続されているため、回転軸22の軸回りにおいて相対的に回転することができる。これにより、駆動ユニット20に外力が加えられて駆動ユニット20が回転軸22の軸回りの方向に変位しようとするとき、駆動ユニット20だけを変位させることができ、駆動ユニット20の変位がヘッド12に伝達されない。
【0028】
したがって、駆動ユニット20によって締結部材を仮締めした後に、トルクレンチ本体10の操作によって締結部材を締め付けるとき、駆動ユニット20からトルクレンチ本体10(ヘッド12)に不要な外力が作用してしまうことを抑制できる。そして、締結部材の締付けを完了させたときのトルク値に悪影響を与えることを抑制でき、締付け完了時のトルク値を目標トルク値とすることができる。
【0029】
本実施形態によれば、駆動ユニット20のケース21にピン43を挿入することにより、駆動ユニット20をヘッド12(ヘッド本体121の支持部121b)に容易に取り付けることができる。また、ピン43を駆動ユニット20のケース21から取り外すことにより、駆動ユニット20をヘッド12(ヘッド本体121の支持部121b)から容易に取り外すことができる。これにより、トルクレンチ本体10から駆動ユニット20を取り外して、駆動ユニット20だけのメンテナンス等を行うことができる。なお、ピン43をケース21から取り外したとき、止め輪42及び支持部121bの段差部121b2によって、ベアリング41を支持部121bに固定したままとすることができる。
【符号の説明】
【0030】
1:トルクレンチ、10:トルクレンチ本体、12:ヘッド、121:ヘッド本体、
121b:支持部、121b2:段差部、122:ラチェット、20:駆動ユニット、
21:ケース、21a:段差部、21b:凹部、22:回転軸、41:ベアリング、
41a:内輪、41b:外輪、42:止め輪、43:ピン
図1
図2
図3
図4
図5