IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 本田技研工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-電気化学モジュール 図1
  • 特開-電気化学モジュール 図2
  • 特開-電気化学モジュール 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126619
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】電気化学モジュール
(51)【国際特許分類】
   C25B 15/08 20060101AFI20240912BHJP
   C25B 15/021 20210101ALI20240912BHJP
   C25B 9/23 20210101ALI20240912BHJP
   C25B 1/02 20060101ALI20240912BHJP
   C25B 1/04 20210101ALI20240912BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20240912BHJP
   C25B 13/02 20060101ALI20240912BHJP
   C25B 9/77 20210101ALI20240912BHJP
   C25B 9/05 20210101ALI20240912BHJP
   C25B 9/67 20210101ALI20240912BHJP
【FI】
C25B15/08 302
C25B15/021
C25B9/23
C25B1/02
C25B1/04
C25B9/00 A
C25B9/00 Z
C25B13/02 301
C25B9/77
C25B9/05
C25B9/67
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023035126
(22)【出願日】2023-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003683
【氏名又は名称】弁理士法人桐朋
(72)【発明者】
【氏名】本多 徹
(72)【発明者】
【氏名】依田 順
【テーマコード(参考)】
4K021
【Fターム(参考)】
4K021AA01
4K021BA02
4K021BC01
4K021BC05
4K021CA08
4K021CA09
4K021CA12
4K021DB04
4K021DB31
4K021DB43
4K021DB49
4K021DB53
4K021DC01
4K021DC03
4K021EA05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】電気化学反応の処理量を増加させつつ、積層方向の寸法増加を抑制した電気化学モジュールを提供する。
【解決手段】電解質膜34aとアノード電極34bとカソード電極34cとを有する膜電極構造体34を複数積層した電気化学モジュール12に関する。複数の膜電極構造体34は、アノード電極34b同士が向かい合う第1領域46とカソード電極34c同士が向かい合う第2領域48とが積層方向に交互に現れるように積層される。さらに、第1領域46及び第2領域48の少なくとも一方に、隣接する2つの膜電極構造体34に共有される共通流路50、52が設けられる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質膜と前記電解質膜を挟むアノード電極とカソード電極とを有する膜電極構造体を複数積層した電気化学モジュールであって、
複数の前記膜電極構造体は、前記アノード電極同士が向かい合う第1領域と、前記カソード電極同士が向かい合う第2領域とが積層方向に交互に現れるように積層され、
前記第1領域と前記第2領域の少なくとも一方に、隣接する2つの前記膜電極構造体に共有される共通流路を備えた、電気化学モジュール。
【請求項2】
請求項1記載の電気化学モジュールであって、前記共通流路は、前記第1領域及び前記第2領域の各々に設けられる、電気化学モジュール。
【請求項3】
請求項2記載の電気化学モジュールであって、前記第1領域及び前記第2領域のいずれか一方の前記共通流路は、隣接する2つの前記膜電極構造体で昇圧された高圧流体を流通させる、電気化学モジュール。
【請求項4】
請求項3記載の電気化学モジュールであって、前記高圧流体を流通させる前記共通流路に配置され、隣接する2つの前記膜電極構造体を離間させるスペーサを有する、電気化学モジュール。
【請求項5】
請求項4記載の電気化学モジュールであって、前記スペーサは、隣接する前記膜電極構造体の電極同士を電気的に導通させる、電気化学モジュール。
【請求項6】
請求項3~5のいずれか1項に記載の電気化学モジュールであって、低圧の流体が流通する前記共通流路に配置され、隣接する2つの前記膜電極構造体に流体を供給するサポートプレートを備えた、電気化学モジュール。
【請求項7】
請求項6記載の電気化学モジュールであって、前記サポートプレートは、内部に冷媒を流通させる冷媒流路を有し、前記冷媒流路は、隣接する2つの前記膜電極構造体を冷却する、電気化学モジュール。
【請求項8】
請求項6記載の電気化学モジュールであって、前記サポートプレートは、隣接する前記膜電極構造体の電極同士の電気的な導通を阻止する、電気化学モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解質膜を複数積層した電気化学モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、より多くの人々に、手ごろで、信頼でき、持続可能かつ先進的なエネルギーを届けるべく、エネルギー利用の効率化に貢献する電気化学モジュールに関する研究開発が行われている。
【0003】
このような電気化学モジュールとして、例えば、差圧式高圧水電解装置や電気化学式水素ポンプ等がある。これらの電気化学モジュールは、電解質膜を含む単位セルを複数積層した構造を有する(例えば、特許文献1)。各々の単位セルは、電解質膜をアノード電極とカソード電極とで挟んだ膜電極構造体と、アノード電極及びカソード電極の各々にガスや水等の流体を供給する流路と、流路を形成する一対のセパレータ板と、を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-89229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電気化学モジュールにおいて、電気化学反応による処理量を増加させる場合には、単位セルの積層数を増加させる必要がある。ところが、単位セルの積層数を増加させると、電気化学モジュールが単位セルの積層方向に大型化してしまう。
【0006】
本発明は、上述の課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下の開示の一観点は、電解質膜と前記電解質膜を挟むアノード電極とカソード電極とを有する膜電極構造体を複数積層した電気化学モジュールであって、複数の前記膜電極構造体は、前記アノード電極同士が向かい合う第1領域と、前記カソード電極同士が向かい合う第2領域とが積層方向に交互に現れるように積層され、前記第1領域と前記第2領域の少なくとも一方に、隣接する2つの前記膜電極構造体に共有される共通流路を備えた、電気化学モジュールにある。
【発明の効果】
【0008】
上述の電気化学モジュールは、電気化学反応の処理量を増加させつつ、積層方向の寸法増加を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態に係る水素ポンプの斜視図である。
図2図2は、図1の水素ポンプの分解斜視図である。
図3図3は、図1の電気化学モジュールの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1に示される実施形態に係る水素ポンプ10は、電気化学反応により水素を昇圧する電気化学式水素ポンプである。水素ポンプ10は、余剰な電力で製造した水素を圧縮して貯蔵するエネルギー貯蔵システムや、移動体に水素を供給する水素ステーション等に利用される。
【0011】
図2に示されるように、水素ポンプ10は、電気化学モジュール12と、一対の絶縁プレート14と、シリンダユニット16と、一対のエンドプレート18と、スタットボルト20と、を有する。電気化学モジュール12は、複数の単位構造22を積層した構造を有する。本明細書において、電気化学モジュール12の単位構造22が積層される方向(膜電極構造体34の厚さ方向)は、積層方向と呼ばれる。また、積層方向において、一方の方向(図1の下方)は第1方向と呼ばれ、第1方向と反対の方向は第2方向と呼ばれる。
【0012】
電気化学モジュール12は、一対の絶縁プレート14で挟まれてエンドプレート18から絶縁される。シリンダユニット16は、一方のエンドプレート18と、絶縁プレート14との間に配置される。シリンダユニット16は、弾性部材を内蔵し、電気化学モジュール12に所定の圧縮力を付与する。
【0013】
一対のエンドプレート18は、電気化学モジュール12及びシリンダユニット16を積層方向の第1方向と第2方向とから挟み込み、電気化学モジュール12に所定の締結荷重を付与する。エンドプレート18の締結荷重は、複数のスタットボルト20を一対のエンドプレート18に取り付け、ナット24で締め込むことで発生される。
【0014】
電気化学モジュール12は、円柱形状を有する。電気化学モジュール12は、中心部に積層方向に延びる第1連通孔26を有する。第1連通孔26は電気化学反応で電解質膜34aから出力される水素の流路となる(図3参照)。第1連通孔26は、絶縁プレート14、シリンダユニット16及びエンドプレート18の各々の中心部に設けられた、第1連通孔28に連通する。
【0015】
電気化学モジュール12は、その側部に冷媒を供給する一対の冷媒給排部30と、低圧の水素ガスを供給する一対の水素給排部32とを有する。図2に示されるように、一対の冷媒給排部30は、周方向に180°離れて配置される。一方の冷媒給排部30は、冷媒を供給する第2連通孔30aを有し、他方の冷媒給排部30は冷媒を排出する第3連通孔30bを有する。また、一対の水素給排部32は、周方向に180°離れて配置される。水素給排部32は、冷媒給排部30と周方向に90°離れた位置に配置される。一方の水素給排部32は、水素を供給する第4連通孔32aを有し、他方の水素給排部32は水素を排出する第5連通孔32bを有する。一対の水素給排部32を結ぶ方向は、第3方向と呼ばれ、一対の冷媒給排部30を結ぶ方向は第4方向と呼ばれる。この第3方向と第4方向とは直交する。
【0016】
電気化学モジュール12は、複数の単位構造22を積層して構成される。なお、本明細書では、単位構造22は、積層方向に繰り返される構造の最小単位を指す用語として使用される。本実施形態では、後述されるように、1つの単位構造22に2層の電解質膜34aが含まれる。また、電気化学モジュール12を構成する単位構造22の積層数は、図示の例に限定されない。実用的な処理量を実現する電気化学モジュール12は、数層~数百層の単位構造22を含み得る。以下、電気化学モジュール12及び単位構造22の詳細が説明される。
【0017】
図3に示される電気化学モジュール12では、2つの単位構造22が積層されている。各々の単位構造22は、第1膜電極構造体341と、第2膜電極構造体342と、第1サポートプレート361と、第2サポートプレート362と、導電プレート38と、スペーサ40と、パッキン42と、耐圧胴部44と、を主な構成部材として有する。第1膜電極構造体341と第2膜電極構造体342とは、膜電極構造体34と総称される。
【0018】
膜電極構造体34は、電解質膜34aと、アノード電極34bとカソード電極34cと、樹脂枠34dとを備える。電解質膜34a、アノード電極34b及びカソード電極34cは、電気化学反が行われる反応領域35Aに位置し、樹脂枠34dは、反応領域35Aを取り囲む周辺領域35Bに位置する。アノード電極34bは供給された水素ガスからHイオン(プロトン)を生成する。電解質膜34aは、アノード電極34bのプロトンをカソード電極34cに移動させる。カソード電極34cは、プロトンから水素ガスを生成する。膜電極構造体34は、アノード電極34bと、カソード電極34cとの間に電圧が印加されることで、アノード電極34bからカソード電極34cに水素ガスを移動させる。
【0019】
樹脂枠34dは、電解質膜34aに接合されて電解質膜34aを支持する円形リング状の樹脂部材である。樹脂枠34dは、膜電極構造体34の周辺領域35Bに位置し、電解質膜34a(反応領域35A)の周囲を囲む。樹脂枠34dは、パッキン42及び耐圧胴部44と当接して、膜電極構造体34の隙間を封止して、水素ガスの漏洩を阻止する。
【0020】
第1膜電極構造体341は、アノード電極34bが第1方向を向き、カソード電極34cが第2方向を向く向きで配置された膜電極構造体34である。第2膜電極構造体342は、アノード電極34bが第2方向を向き、カソード電極34cが第1方向を向く向きで配置された膜電極構造体34である。電気化学モジュール12において、第1膜電極構造体341と、第2膜電極構造体342とは、積層方向に交互に配置される。
【0021】
第1膜電極構造体341と、これの第2方向に隣接する第2膜電極構造体342との間には、カソード電極34cが向き合った第1領域46が形成される。2つの単位構造22の接合部分に、第2領域48が形成される。すなわち、第2領域48は、一方の単位構造22に属する第1膜電極構造体341と、他の単位構造22に属する第2膜電極構造体342との間に形成される。第1領域46と、第2領域48とは、積層方向に交互に現れる。
【0022】
第1領域46には、一対の導電プレート38と、スペーサ40とが配置される。一対の導電プレート38は、スペーサ40を積層方向から挟み込む。一方の導電プレート38は、第1膜電極構造体341のカソード電極34cに当接し、他方の導電プレート38は、第2膜電極構造体342のカソード電極34cに当接する。導電プレート38は、多孔質の導電材料よりなる。導電プレート38は、第1膜電極構造体341のカソード電極34cで発生した水素を透過させる。また、導電プレート38は、カソード電極34cに電流を供給する給電経路の一部を構成する。
【0023】
スペーサ40は、一対の導電プレート38の間に位置する。スペーサ40は、例えば、ステンレス鋼等の導電性と適度な弾性を有する金属プレートから形成される。スペーサ40は、導電プレート38を介して第1領域46で向かい合う一対のカソード電極34cを電気的に接続する。スペーサ40は、平坦部40aと平坦部40aから積層方向に突出した複数の板バネ部40bとを有する。平坦部40aが一方の導電プレート38に当接し、板バネ部40bが他方の導電プレート38に当接することで、一対の導電プレート38を離間させる。
【0024】
スペーサ40は、一対の導電プレート38の間に水素ガスが流通可能なカソード共通流路50を形成する。カソード共通流路50は、積層方向に隣接する第1膜電極構造体341及び第2膜電極構造体342に共有される流路である。カソード共通流路50は、一対のカソード電極34cで生成された水素ガスを集めて、第1連通孔26、28(図2)に向けて流通させる。
【0025】
第1領域46の、周辺領域35Bには、パッキン42と、耐圧胴部44とが配置される。パッキン42は、耐圧胴部44の内側に位置し、反応領域35Aを取り囲む円形のリング状に形成される。パッキン42は、ゴム等の弾性材料によって形成される。パッキン42は、第1膜電極構造体341の樹脂枠34dと第2膜電極構造体342の樹脂枠34dとに密着し、カソード共通流路50を封止する。
【0026】
耐圧胴部44は、円形リング状に形成される。耐圧胴部44の内径は、パッキン42の外径よりも大きい。耐圧胴部44は、カソード共通流路50の内圧によって変形しない強度を有する。耐圧胴部44は、パッキン42の周囲を取り囲み、パッキン42の膨張を阻止して、パッキン42の気密性を保つ。
【0027】
第2領域48には、一方の単位構造22に属する第1サポートプレート361と、他方の単位構造22に属する第2サポートプレート362とが配置される。第2領域48において、第1サポートプレート361と第2サポートプレート362とは、拡散接合等の方法によって接合されて一体的なサポートプレート36を形成する。サポートプレート36は、第1領域46と第2領域48のとの圧力差による膜電極構造体34の変形応力を受け止める。また、サポートプレート36は、第2領域48に水素ガスが流通可能なアノード共通流路52を形成する。
【0028】
第1サポートプレート361と第2サポートプレート362とは、同一形状の部材である。第1サポートプレート361は、膜電極構造体34に向かい合う外面36aが、第2方向側に配置される。第2サポートプレート362は、膜電極構造体34に向かい合う外面36aが、第1方向側に配置される。すなわち、第1サポートプレート361と第2サポートプレート362とは、積層方向に互いに逆向きに配置されている。積層された単位構造22の内部では、第1サポートプレート361及び第2サポートプレート362が互いに接合されて一体的化されたサポートプレート36を構成する。
【0029】
第1サポートプレート361及び第2サポートプレート362は、外面36aに、開放溝52aを有する。開放溝52aは、膜電極構造体34の反応領域35Aに向かい合う部分に配置される。開放溝52aは、第3方向に延在する。開放溝52aは、膜電極構造体34に向けて開口する。開放溝52aは、アノード共通流路52の一部を構成し、第1膜電極構造体341及び第2膜電極構造体342に低圧の水素ガスを供給する。
【0030】
また、第1サポートプレート361は、第2サポートプレート362に向き合う内面36bに、閉鎖溝52bと冷媒溝54aとを有する。閉鎖溝52bは、膜電極構造体34の反応領域35Aの外側に位置する。つまり、閉鎖溝52bは、周辺領域35Bに位置する。閉鎖溝52bは、第1サポートプレート361と、第2サポートプレート362とが接合されると、積層方向に閉じられた流路を構成する。閉鎖溝52bは、貫通孔52cを介して外面36aの開放溝52aに連通する。アノード共通流路52は、閉鎖溝52b、貫通孔52c及び開放溝52aとで構成される。アノード共通流路52は、第3方向の一端が第4連通孔32aに連通し、第3方向の他端が第5連通孔32bに連通する。アノード共通流路52は、サポートプレート36に隣接する2つの膜電極構造体34に共有され、水素ガスを流通させる。
【0031】
冷媒溝54aは、図3の紙面に垂直な方向である第4方向に延びる。冷媒溝54aは、第1サポートプレート361と第2サポートプレート362とが接合されると、積層方向に閉塞され、第4方向に延在する冷媒流路54を構成する。冷媒流路54は、冷媒として例えば水を流通させる。冷媒流路54は、電気化学反応によって発熱した膜電極構造体34を冷却する。
【0032】
第2領域48を挟む一対のアノード電極34bは、互いに電気的に絶縁される。これらのアノード電極34bの導通を阻止するべく、サポートプレート36の少なくとも一部は、絶縁体で構成されることが好ましい。
【0033】
第1方向の端部に位置する第1サポートプレート361と、第2方向の端部に位置する第2サポートプレート362とには、それぞれ端部セパレータ56が取り付けられている。端部セパレータ56は、第1サポートプレート361の内面36b及び第2サポートプレート362の内面36bをそれぞれ覆う。端部セパレータ56は、閉鎖溝52b及び冷媒溝54aを積層方向に閉塞し、水素ガス及び冷媒の漏洩を阻止する。
【0034】
電気化学モジュール12において、第1領域46を挟む一対の膜電極構造体34のカソード電極34cが互いに電気的に接続される。また、第1領域46を挟む膜電極構造体34のアノード電極34bが互いに電気的に接続される。すなわち、1つの単位構造22に属するアノード電極34b同士が互いに電気的に接続され、カソード電極34c同士がスペーサ40を介して互いに電気的に接続される。この場合、図示のように、電源装置58は、各々の単位構造22のアノード電極34bとカソード電極34cとのそれぞれに、並列に駆動電流を供給してもよい。
【0035】
また、電気化学モジュール12において、複数の単位構造22が直列に接続されてもよい。この場合には、例えば、第1方向側に位置する単位構造22のアノード電極34bは、第2方向側に隣接する単位構造22のカソード電極34cに電気的に接続される。このような接続を全ての単位構造22に対して行うことで、複数の単位構造22の直列接続が実現される。
【0036】
本実施形態の電気化学モジュール12は、以上のように構成される。電気化学モジュール12は、以下のように動作する。
【0037】
電気化学モジュール12のサポートプレート36のアノード共通流路52には、水素給排部32を通じて低圧の水素ガスが供給される。水素ガスは、膜電極構造体34のアノード電極34bに供給される。
【0038】
膜電極構造体34は、電気化学的に水素ガスを高圧側のカソード共通流路50に移動させる。膜電極構造体34による水素ガスの移動は、圧力差に抗して行われる。その結果、水素ガスが昇圧される。2つの膜電極構造体34で生成された水素ガスは、カソード共通流路50を通じて第1連通孔26、28に導かれる。以上のようにして、電気化学モジュール12は、水素ガスを昇圧させる。
【0039】
以上に説明された本実施形態の電気化学モジュール12は、一対のカソード電極34cが向かい合う第1領域46に、第1膜電極構造体341と第2膜電極構造体342とに共有されるカソード共通流路50を有する。このため、電気化学モジュール12は、膜電極構造体34毎に一対のセパレータを配置する従来の装置に比べて、セパレータの枚数を減らすことができ、電気化学モジュール12は、積層方向の寸法を抑制できる。
【0040】
(第1実施形態の変形例1)
以上の説明では、水素ポンプ10の電気化学モジュール12の例が示されたが、本実施形態はこれに限定されない。電気化学モジュール12は、水電解装置に利用できる。この場合には、電気化学モジュール12は、アノード共通流路52から供給された水を電気分解し、カソード共通流路50に水素ガスを発生させ、アノード共通流路52に酸素ガスを発生させる。
【0041】
(第1実施形態の変形例2)
電気化学モジュール12は、電解質膜34aにOHイオンを移動させるアニオン伝導膜を用いて水電解装置を構成できる。この場合には、膜電極構造体34のアノード電極34b及びカソード電極34cの向きが、図3と逆向きに配置される。また、第1領域46にサポートプレート36が配置され、第2領域48に導電プレート38及びスペーサ40が配置される。第2領域48のアノード共通流路52が第1連通孔26、28に連通する。また第1領域46のカソード共通流路50は、第4連通孔32a及び第5連通孔32bに連通する。この場合には、電気化学モジュール12には、カソード共通流路50から水が供給される。電気化学モジュール12は、カソード共通流路50から水素を出力し、アノード共通流路52から高圧の酸素ガスを出力する。
【0042】
上述した開示に関し、さらに以下の付記が開示される。
【0043】
(付記1)開示の一観点は、電解質膜34aと前記電解質膜を挟むアノード電極34bとカソード電極34cとを有する膜電極構造体34を複数積層した電気化学モジュール12であって、複数の前記膜電極構造体は、前記アノード電極同士が向かい合う第1領域46と、前記カソード電極同士が向かい合う第2領域48とが積層方向に交互に現れるように積層され、前記第1領域と前記第2領域の少なくとも一方に、隣接する2つの前記膜電極構造体に共有される共通流路50、52を備える。この電気化学モジュールは、共通流路へのセパレータの配置が不要となるため、積層方向の寸法を抑制できる。
【0044】
(付記2)付記1記載の電気化学モジュールであって、前記共通流路は、前記第1領域及び前記第2領域の各々に設けられてもよい。この電気化学モジュールは、共通流路を増やすことで、さらに積層方向の寸法を抑制できる。
【0045】
(付記3)付記2記載の電気化学モジュールであって、前記第1領域及び前記第2領域のいずれか一方の前記共通流路は、隣接する2つの前記膜電極構造体で昇圧された高圧流体を流通させてもよい。この電気化学モジュールは、高圧に耐える厚手のセパレータを不要とすることで、積層方向の厚さを抑制できる。
【0046】
(付記4)付記3記載の電気化学モジュールは、前記高圧流体を流通させる前記共通流路に配置され、隣接する2つの前記膜電極構造体を離間させるスペーサ40を有してもよい。この電気化学モジュールは、第1領域に形成される共通流路の閉塞を防止できる。
【0047】
(付記5)付記4記載の電気化学モジュールであって、前記スペーサは、隣接する前記膜電極構造体の電極同士を電気的に導通させてもよい。この電気化学モジュールは、配線構造を簡素化できる。
【0048】
(付記6)付記3~5のいずれか1に記載の電気化学モジュールは、低圧の流体が流通する前記共通流路に配置され、隣接する2つの前記膜電極構造体に流体を供給するサポートプレート36を備えてもよい。この電気化学モジュールは、圧力差によって低圧側の共通流路の閉塞を防止できる。
【0049】
(付記7)付記6記載の電気化学モジュールは、前記サポートプレートが内部に冷媒を流通させる冷媒流路54を有し、前記冷媒流路は、隣接する2つの前記膜電極構造体を冷却してもよい。この電気化学モジュールは、2つの膜電極構造体を1つのサポートプレートで冷却できるため、積層方向の厚さをさらに抑制できる。
【0050】
(付記8)付記6又は7記載の電気化学モジュールであって、前記サポートプレートは、隣接する前記膜電極構造体の電極同士の電気的な導通を阻止してもよい。この電気化学モジュールは、単位構造の間を電気的に絶縁することで、複数の単位構造を直列に接続することを可能とする。
【0051】
なお、本発明は、上述した開示に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得る。
【符号の説明】
【0052】
10…水素ポンプ 12…電気化学モジュール
22…単位構造 26、28…第1連通孔
34…膜電極構造体 34a…電解質膜
34b…アノード電極 34c…カソード電極
36…サポートプレート 40…スペーサ
46…第1領域 48…第2領域
54…冷媒流路 341…第1膜電極構造体
342…第2膜電極構造体
図1
図2
図3