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特開2024-126621トリガー式液体吐出器及びトリガー式スプレー容器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126621
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】トリガー式液体吐出器及びトリガー式スプレー容器
(51)【国際特許分類】
   B05B 11/10 20230101AFI20240912BHJP
   B65D 47/34 20060101ALI20240912BHJP
   B05B 11/00 20230101ALI20240912BHJP
【FI】
B05B11/10 102B
B65D47/34 100
B65D47/34 200
B05B11/00 102B
B05B11/00 102G
B05B11/10 102G
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023035128
(22)【出願日】2023-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001612
【氏名又は名称】弁理士法人きさらぎ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】板持 伸弥
(72)【発明者】
【氏名】児玉 大輔
(72)【発明者】
【氏名】青山 涼平
【テーマコード(参考)】
3E084
【Fターム(参考)】
3E084AA12
3E084AB01
3E084BA02
3E084CA01
3E084DA01
3E084EB02
3E084FA09
3E084GB11
3E084KB01
3E084KB06
3E084LB02
3E084LD22
(57)【要約】
【課題】液体の吐出距離を増加させることが可能なトリガー式液体吐出器及びトリガー式スプレー容器に関する。
【解決手段】容器本体内の液体を吸引及び圧送可能なポンプが内蔵された本体部と、ポンプを作動させる操作レバーと、ポンプの作動によって液体を吐出させる液吐出ノズルとを備えるトリガー式液体吐出器であって、液吐出ノズルは、液体を吐出可能な液吐出口と、ポンプから圧送された液体を液吐出口に向けて流通させるノズル流路と、液吐出口とノズル流路との間に形成され、液吐出口及びノズル流路に連通する流速緩衝領域とを有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体内の液体を吸引及び圧送可能なポンプが内蔵された本体部と、前記ポンプを作動させる操作レバーと、前記ポンプの作動によって液体を吐出させる液吐出ノズルとを備えるトリガー式液体吐出器であって、
前記液吐出ノズルは、
液体を吐出可能な液吐出口と、
前記ポンプから圧送された液体を前記液吐出口に向けて流通させるノズル流路と、
前記液吐出口と前記ノズル流路との間に形成され、前記液吐出口及び前記ノズル流路に連通する流速緩衝領域と
を有する
トリガー式液体吐出器。
【請求項2】
前記液吐出口の開口部体積に対する前記流速緩衝領域の空間体積の大きさが、5倍以上3000倍以下である
請求項1に記載のトリガー式液体吐出器。
【請求項3】
前記ノズル流路は、複数設けられている
請求項1又は2に記載のトリガー式液体吐出器。
【請求項4】
前記液吐出口と前記ノズル流路とが同一直線上に配置されていない
請求項1~3のいずれか1項に記載のトリガー式液体吐出器。
【請求項5】
前記液吐出ノズルは、
円状の前壁部及び該前壁部の外周縁部全域から後方に向けて延びる周壁部を有する外側本体部と、
前記外側本体部の内部かつ後方側に設けられており、前記前壁部に対向する円状の前面部及び該前面部に対向する円状の後面部を有する内側本体部と
を更に備え、
前記液吐出口は、前記前壁部の中心部に設けられており、
前記ノズル流路は、前記前面部から前記後面部に亘って貫通して形成されており、
前記流速緩衝領域は、前記前壁部の内面と、前記周壁部の内周面と、前記前面部とにより画定された円柱状の空間である
請求項1~4のいずれか1項に記載のトリガー式液体吐出器。
【請求項6】
液体を収容可能な容器本体と、
請求項1~5のいずれか1項に記載のトリガー式液体吐出器と
を備えるトリガー式スプレー容器。
【請求項7】
前記容器本体は、粘度が1mPa・s以上500mPa・s以下の液体を収容可能に構成されている
請求項6に記載のトリガー式スプレー容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリガー式液体吐出器及びトリガー式スプレー容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、液体を吐出可能な液吐出ノズルを備えるトリガー式液体吐出器が知られている。例えば、特許文献1には、キャップを回転させることにより、共用溝部から第1溝部を介してノズル孔へ開通する直噴射モードと、共用溝部から第2溝部及びスピン溝を介してノズル孔へ開通する霧噴出モードとを切り替え可能なノズル機構を備えるトリガー式液体吐出器が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-087530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のトリガー式液体吐出器において、ノズル機構が霧噴出モードである場合、液体がスピン溝を流れることにより、ノズル孔からは流れに強弱がある状態の液体が噴出されるため、ノズル孔から噴出された液体が回転して広がり、液体の舞い散り等が生じることとなる。また、ノズル機構が直噴射モードである場合、液体がスピン溝を流れないため、ノズル孔からは直進性の高い液体が噴出されるものの、第1溝部を流れる液体の流れは均一化されておらず、流速に強弱が発生した状態で噴出されるため、ノズル孔から噴出された液体に回転と類似した液の広がりが発生し、舞い散り等が生じることとなる。このような液体の舞い散り等は、液体の噴出距離が低下する原因となっている。
【0005】
本発明は、液体の吐出距離を増加させることが可能なトリガー式液体吐出器及びトリガー式スプレー容器に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るトリガー式液体吐出器は、容器本体内の液体を吸引及び圧送可能なポンプが内蔵された本体部と、前記ポンプを作動させる操作レバーと、前記ポンプの作動によって液体を吐出させる液吐出ノズルとを備えるトリガー式液体吐出器であって、前記液吐出ノズルは、液体を吐出可能な液吐出口と、前記ポンプから圧送された液体を前記液吐出口に向けて流通させるノズル流路と、前記液吐出口と前記ノズル流路との間に形成され、前記液吐出口及び前記ノズル流路に連通する流速緩衝領域とを有する。
【0007】
また、本発明に係るトリガー式スプレー容器は、液体を収容可能な容器本体と、上記トリガー式液体吐出器とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明のトリガー式液体吐出器及びトリガー式スプレー容器によれば、液体の吐出距離を増加させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係るトリガー式スプレー容器の構成を示す概略図である。
図2】本実施形態に係る液吐出ノズルを示す断面斜視図である。
図3】本実施形態に係る液吐出ノズルの液吐出方向に沿う断面を示す断面図である。
図4】実施例に係るトリガー式液体吐出器から吐出された液体の吐出直後の状態を撮影した画像である。
図5】比較例に係るトリガー式液体吐出器から吐出された液体の吐出直後の状態を撮影した画像である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。また、本実施形態においては、各構成要素の縮尺や寸法が誇張されて示されている場合や、一部の構成要素が省略されている場合がある。
【0011】
[トリガー式スプレー容器の全体構成]
図1に示すように、本実施形態に係るトリガー式スプレー容器1は、液体を収容可能な容器本体100と、容器本体100に対して取り付け可能であり、使用者の手動操作によって容器本体100内の液体を吐出させることが可能なトリガー式液体吐出器200とを備えている。また、本実施形態に係るトリガー式スプレー容器1は、例えば、住居用洗剤、カビ取り剤、整髪剤、芳香剤及び消臭剤等の液体を吐出させる用途で用いることが可能である。
【0012】
以下、本実施形態において、説明の便宜上、トリガー式液体吐出器200による液体の吐出方向(後述する液吐出口311aの液吐出方向)を「前方」、これとは反対の方向を「後方」として説明する場合がある。また、容器本体100にトリガー式液体吐出器200を取り付けた状態(図1の状態)において、トリガー式液体吐出器200が位置する側を「上方」、容器本体100が位置する側を「下方」として説明する場合がある。
【0013】
[容器本体の構成]
図1に示すように、容器本体100は、上部に小径円筒状の口筒部110を有する有底筒状に形成された容器であり、その内部空間において、液体を収容可能に構成されている。なお、このような容器本体100は、種々の公知の構成を採用可能であるため、その詳細な説明を省略する。
【0014】
[トリガー式液体吐出器の構成]
図1に示すように、トリガー式液体吐出器200は、容器本体100内の液体を吸引及び圧送可能なポンプ220が内蔵された本体部210と、ポンプ220を作動させる操作レバー230(トリガー)と、ポンプ220の作動によって液体を吐出させる液吐出ノズル240とを備えている。
【0015】
なお、本実施形態に係るトリガー式液体吐出器200において、液吐出ノズル240に関する構成以外の構成については、種々の公知のトリガー式液体吐出器の構成を採用可能であるため、以下では一例に関する簡略的な説明にとどめ、その詳細な説明は省略する。
【0016】
本体部210は、容器本体100の口筒部110に装着可能に構成された装着キャップ211と、装着キャップ211から上方に向けて延出した縦筒部212と、縦筒部212の上端部から前方に向けて延出して液吐出ノズル240に接続された横筒部213と、縦筒部212の中途部から前方に向けて延在する円筒状の保持部214と、保持部214内に保持されたポンプ220と、縦筒部212、横筒部213、保持部214、ポンプ220及び操作レバー230の一部を覆い隠すヘッドカバー215とを備えている。
【0017】
縦筒部212は、装着キャップ211の上部開口(図示せず)に挿通される円筒状のネック部212aを下端に有している。ネック部212aは、装着キャップ211に比して、操作レバー230の揺動方向に対して交差する方向の幅(すなわち、径)が小さい。また、縦筒部212は、円筒状のインテイク212bをその内部に有している。インテイク212bは、その下端が容器本体100内に延在するパイプ216に連通されると共に、その上端が横筒部213の後端に連通されており、これにより、パイプ216、インテイク212b及び横筒部213によって容器本体100から液吐出ノズル240に至る送給経路が形成されている。インテイク212bには、後述するポンプ室224に連通する連通孔212cが形成されると共に、連通孔212cの上流側及び下流側にそれぞれ吸入弁212d及び吐出弁212eが配されており、ポンプ220の作動によって、容器本体100からポンプ室224内への液体の吸引と、ポンプ室224から液吐出ノズル240への圧送を行うことが可能に構成されている。
【0018】
ポンプ220は、保持部214に嵌合保持される円筒状のシリンダ221と、シリンダ221の内側において往復動可能に収容されたピストン222とを備えている。ピストン222は、シリンダ221よりも小径に形成されており、これにより、その外周面とシリンダ221の内周面との間に隙間が形成されている。ピストン222の後端部には、シリンダ221の内周面に対して摺動可能に液密に当接する環状のシール部223が突設されており、該シール部223によってシリンダ221の内側を封止することにより、シール部223よりも後方側にポンプ室224を形成するよう構成されている。ピストン222は、その前端部が操作レバー230に係合されると共に、その内部に設けられたコイルスプリング225によって操作レバー230を押し戻す方向(ポンプ室224の拡張方向)に向けて付勢されている。
【0019】
操作レバー230は、その上端部(基端部)が本体部210の横筒部213の先端部側において揺動可能に枢着され、縦筒部212、保持部214及び装着キャップ211と対向するよう、該横筒部213から下方(容器本体100側)に向けて垂下して設けられている。操作レバー230の後面は、上述のとおりピストン222の前端部に係合されており、該操作レバー230の往復動によってピストン222を往復動させるよう構成されている。本実施形態に係るトリガー式液体吐出器200は、このように垂下された操作レバー230により、操作レバー230と、本体部210の装着キャップ211、縦筒部212及び横筒部213との間に空間が形成され、該空間内にポンプ220のピストン222が配置されている。
【0020】
図1図3に示すように、液吐出ノズル240は、本体部210の横筒部213の先端部に設けられるノズル本体部300と、ノズル本体部300を覆うノズルカバー400とを備えている。なお、ノズル本体部300は、本体部210に対して着脱可能に構成されていても良いし、着脱不能に構成されていても良い。
【0021】
ノズル本体部300は、液体を吐出可能な液吐出口311aを有する外側本体部310と、外側本体部310の内部かつ後方側に設けられた内側本体部320とを備えている。
【0022】
外側本体部310は、円状の前壁部311と、前壁部311の外周縁部全域から後方に向けて延びる周壁部312とを有しており、全体として後方側が開放された円筒状に形成されている。この前壁部311の中心部には、液吐出口311aが形成されている。液吐出口311aは、前壁部311の外面から内面に亘って貫通して形成された開口である。なお、本実施形態において、前壁部311は、円状に形成されているものとして説明したが、これに限定されず、例えば、正方形形状を有していても良いし、矩形形状を有していても良いし、三角形状を有していても良いし、他の形状を有していても良い。
【0023】
内側本体部320は、外側本体部310の前壁部311に対向する円状の前面部321及び前面部321に対向する円状の後面部322と、前面部321の外周縁から後面部322の外周縁に亘って設けられた周面部323とを有しており、全体として円柱状に形成されている。前面部321及び後面部322は、同形同大に形成されており、内側本体部320を外側本体部310内に嵌合させることが可能な大きさを有している。内側本体部320は、外側本体部310の内部かつ後方側に設けられており、前後方向の長さが外側本体部310よりも短く形成されている。なお、本実施形態において、内側本体部320は、円柱状に形成されているものとして説明したが、これに限定されず、例えば、角柱状に形成されていても良い。
【0024】
また、内側本体部320は、その上端部と下端部に、ポンプ220から圧送された液体を液吐出口311aに向けて流通させるノズル流路324を有している。すなわち、本実施形態において、液吐出口311aとノズル流路324とは、同一直線上に配置されていない。ノズル流路324は、前面部321から後面部322に亘って貫通して形成された開口であり、本体部210の送給経路に連通している。なお、本実施形態では、ノズル流路324は、内側本体部320の上端部と下端部に設けられているものとして説明したが、これに限定されず、内側本体部320のいずれの位置に設けられていても良いし、1つ乃至3つ以上設けられても良い。
【0025】
また、ノズル本体部300は、液吐出口311aとノズル流路324との間に形成され、液吐出口311a及びノズル流路324に連通する流速緩衝領域330を有している。ここで、「流速緩衝領域」とは、ノズル流路324から流通される液体の流速を均一にするための空間である。本実施形態において、流速緩衝領域330は、前壁部311の内面と、周壁部312の内周面と、前面部321とにより画定された円柱状の空間である。なお、本実施形態において、流速緩衝領域330は、円柱状の空間であるものとして説明したが、これに限定されず、例えば、角柱状の空間であっても良い。
【0026】
また、本実施形態において、液吐出口311aの開口部体積(液吐出口311aの最小径における体積)に対する流速緩衝領域330の空間体積の大きさが、5倍以上3000倍以下であることが好ましく、20倍以上1500倍以下であることがより好ましく、50倍以上800倍以下であることが最も好ましい。例えば、液吐出口311aの最小径が0.8mm、液吐出口311aの最小径における液吐出方向に沿う長さが0.25mm、液吐出口311aの開口部体積が(0.8/2)×3.14(円周率)×0.25mmで0.1256mmであり、流速緩衝領域330の径が3.5mm、流速緩衝領域330の液吐出方向に沿う長さが9.2mm、流速緩衝領域330の空間体積が(3.5/2)×3.14(円周率)×9.2で88.4695mmである場合には、液吐出口311aの開口部体積に対する流速緩衝領域330の空間体積の大きさが88.4695/0.1256で704.375倍になり、上記の関係を満たすことになる。流速緩衝領域330の空間体積がこのような大きさであることにより、ノズル流路324から流通される液体の流速を均一にすることができるという利点がある。また、流速緩衝領域330の空間体積の大きさが大きければ大きい程、より低粘度の液体の流速も均一にすることができる。
【0027】
[本実施形態に係るトリガー式スプレー容器の使用方法]
まず、本実施形態に係るトリガー式スプレー容器1の動作について説明する。本実施形態に係るトリガー式スプレー容器1は、トリガー式液体吐出器200の操作レバー230を容器本体100に接近させるよう牽曳してピストン222をシリンダ221に対して後退させることで、ポンプ室224内の液体を加圧し、該加圧力によって吸入弁212dを弁座に押し付けて閉状態を維持しつつ吐出弁212eを弁座から離間させて開状態に変位させることで、ポンプ室224内の液体を送給経路を介して液吐出ノズル240の液吐出口311aから外部に吐出させることが可能である。
【0028】
本実施形態では、液吐出口311aとノズル流路324との間に流速緩衝領域330が形成されているため、液吐出口311aから流れに強弱がある状態の液体が吐出されず、直進性の高い液体が吐出される。そのため、液吐出口311aから吐出される液体の吐出距離が増加する。
【0029】
また、トリガー式スプレー容器1は、液体の吐出後、操作レバー230を解放すると、コイルスプリング225の付勢力によってピストン222及び操作レバー230が前方に押し戻され、これによってポンプ室224内が負圧となり、該負圧によって吸入弁212dを弁座から離間させて開状態に変位させつつ吐出弁212eを弁座に押し付けて閉状態とすることで、容器本体100内の液体をパイプ216を介してポンプ室224内に流入させることが可能である。このような操作レバー230の牽曳と解放を繰り返すことにより、容器本体100内の液体を液吐出ノズル240から連続的に吐出することが可能である。
【0030】
トリガー式スプレー容器1がこのような動作をするため、トリガー式スプレー容器1を使用する使用者は、トリガー式スプレー容器1を把持した状態において、トリガー式液体吐出器200の操作レバー230を容器本体100に向けて牽曳することにより、被吐出対象に向けて容器本体100内の液体を吐出することができる。
【0031】
なお、本実施形態に係るトリガー式液体吐出器200は、液体の粘度に関係なく液体の吐出距離を増加させることができるが、特に液体が低粘度である場合には、従来のトリガー式液体吐出器(例えば、特許文献1に記載のトリガー式液体吐出器)との差がより顕著になる。この場合の液体の粘度としては、1mPa・s以上500mPa・s以下であることが好ましく、1mPa・s以上100mPa・s以下であることがより好ましく、1mPa・s以上10mPa・s以下であることが最も好ましい。
【0032】
[本実施形態に係るトリガー式液体吐出器の利点]
このように、本実施形態に係るトリガー式液体吐出器200は、容器本体100内の液体を吸引及び圧送可能なポンプ220が内蔵された本体部210と、ポンプ220を作動させる操作レバー230と、ポンプ220の作動によって液体を吐出させる液吐出ノズル240とを備えるトリガー式液体吐出器200であって、液吐出ノズル240は、液体を吐出可能な液吐出口311aと、ポンプ220から圧送された液体を液吐出口311aに向けて流通させるノズル流路324と、液吐出口311aとノズル流路324との間に形成され、液吐出口311a及びノズル流路324に連通する流速緩衝領域330とを有している。
【0033】
このような構成を備えるトリガー式液体吐出器200によれば、液吐出口311aとノズル流路324との間に溝が形成されておらず、流速緩衝領域330が形成されているため、液吐出口311aから流れに強弱がある状態の液体が吐出されず、直進性の高い液体が吐出される。これにより、液体の吐出距離を増加させることが可能になるという利点があり、従来のトリガー式液体吐出器の液体の吐出距離と比べて、少なくとも2倍以上の吐出距離にすることができるという利点がある。また、直進性の高い液体を吐出することができるため、狙った場所に向けて正確に液体を吐出することができるという利点がある。
【0034】
また、本実施形態に係るトリガー式液体吐出器200において、ノズル流路324は、複数設けられている。このような構成を備えるトリガー式液体吐出器200によれば、一度の吐出操作で多量の液体を吐出することができるという利点がある。
【0035】
さらに、本実施形態に係るトリガー式液体吐出器200において、液吐出口311aとノズル流路324とが同一直線上に配置されていない。このような構成を備えるトリガー式液体吐出器200によれば、液吐出口311aとノズル流路324とが同一直線上に配置されておらず、直進性の高い液体が吐出されにくい構造であっても、流速緩衝領域330において、液体の流速を均一にすることができるため、直進性の高い液体を吐出することができるという利点がある。
【0036】
また、本実施形態に係るトリガー式液体吐出器200において、液吐出ノズル240は、円状の前壁部311及び該前壁部311の外周縁部全域から後方に向けて延びる周壁部312を有する外側本体部310と、外側本体部310の内部かつ後方側に設けられており、前壁部311に対向する円状の前面部321及び該前面部321に対向する円状の後面部322を有する内側本体部320とを更に備え、液吐出口311aは、前壁部311の中心部に設けられており、ノズル流路324は、前面部321から後面部322に亘って貫通して形成されており、流速緩衝領域330は、前壁部311の内面と、周壁部312の内周面と、前面部321とにより画定された円柱状の空間である。このような構成を備えるトリガー式液体吐出器200によれば、流速緩衝領域330が前壁部311の内面と、周壁部312の内周面と、前面部321とにより画定された円柱状の空間であり、液吐出口311aとノズル流路324との間に液体の流速の均一化を阻害する要因となる溝等が一切形成されていないため、ノズル流路324から流通される液体の流速を均一にし、これにより直進性の高い液体を吐出することができるという利点がある。
【実施例0037】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、これらは本発明の目的を限定するものではない。
【0038】
本発明者は、本実施形態に係るトリガー式液体吐出器200と同一の構成を有するトリガー式液体吐出器(実施例)と、本実施形態に係る流速緩衝領域330を備えずに特許文献1に記載の第2溝部及びスピン溝を備えること以外は本実施形態に係るトリガー式液体吐出器200と同一の構成を有するトリガー式液体吐出器(比較例)とを用いて、液吐出口311aから吐出される液体の直進性についての比較実験を行った。実施例及び比較例に係るトリガー式液体吐出器は、いずれも本実施形態に係る容器本体100と同一の構成を備える容器本体に取り付けた状態で使用し、液体は、粘度が3.5mPa・sである衣類用消臭剤(P&G社製:商品名ファブリーズ)を用いた。
【0039】
実施例及び比較例に係るトリガー式液体吐出器は、液吐出口311aの最小径を0.8mm、液吐出口311aの最小径における液吐出方向に沿う長さを0.25mmとし、液吐出口311aの開口部体積を(0.8/2)×3.14(円周率)×0.25mmで0.1256mmとした。また、実施例に係るトリガー式液体吐出器は、液吐出口311aの開口部体積に対する流速緩衝領域330の空間体積の大きさを704.375倍とした。流速緩衝領域330は、その径が3.5mm、流速緩衝領域330の液吐出方向に沿う長さが9.2mm、流速緩衝領域330の空間体積が(3.5/2)×3.14(円周率)×9.2で88.4695mmとした。
【0040】
比較実験において、吐出直後の液体を高速カメラ(Vision research社製:商品名Phantom LC310)で撮影し、液吐出口311aから吐出される液体の直進性を比較した。図4に示すように、実施例に係るトリガー式液体吐出器で液体を吐出した場合、吐出された液体の流れに強弱はなく、直進している状態であった。一方、図5に示すように、比較例に係るトリガー式液体吐出器で液体を吐出した場合、吐出された液体の流れに強弱があるため、舞い散りが生じていた。
【0041】
上記の比較実験から、実施例に係るトリガー式液体吐出器から吐出される液体の方が、直進性が高いことがわかる。よって、トリガー式液体吐出器が流速緩衝領域330を備えることにより、直進性の高い液体を吐出することが可能となり、その結果、液体の吐出距離を増加させることができることがわかる。
【符号の説明】
【0042】
1 :トリガー式スプレー容器
100 :容器本体
110 :口筒部
200 :トリガー式液体吐出器
210 :本体部
211 :装着キャップ
212 :縦筒部
212a :ネック部
212b :インテイク
212c :連通孔
212d :吸入弁
212e :吐出弁
213 :横筒部
214 :保持部
215 :ヘッドカバー
216 :パイプ
220 :ポンプ
221 :シリンダ
222 :ピストン
223 :シール部
224 :ポンプ室
225 :コイルスプリング
230 :操作レバー
240 :液吐出ノズル
300 :ノズル本体部
310 :外側本体部
311 :前壁部
311a :液吐出口
312 :周壁部
320 :内側本体部
321 :前面部
322 :後面部
323 :周面部
324 :ノズル流路
330 :流速緩衝領域
400 :ノズルカバー
図1
図2
図3
図4
図5