IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 能美防災株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-水噴霧設備 図1
  • 特開-水噴霧設備 図2
  • 特開-水噴霧設備 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126624
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】水噴霧設備
(51)【国際特許分類】
   E21F 5/00 20060101AFI20240912BHJP
   A62C 3/00 20060101ALN20240912BHJP
【FI】
E21F5/00
A62C3/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023035132
(22)【出願日】2023-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127845
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 壽彦
(72)【発明者】
【氏名】本郷 裕文
(57)【要約】
【課題】冷却効果を効率的に向上させた水噴霧設備を提供する。
【解決手段】本発明に係る水噴霧設備1は、火災時に水が供給される水噴霧用配管8と、水噴霧用配管8に設けられた複数の水噴霧ノズル5とを備え、火災が生じた際に防護対象領域に水を噴霧するものであって、水噴霧ノズル5の近傍に配設された複数のミスト噴霧ノズル9と、ミスト噴霧ノズル9に、水噴霧ノズル5へ供給する水よりも高圧の水を供給するミスト噴霧用配管11とを備え、水噴霧ノズル5からの水噴霧と同時期に、ミスト噴霧ノズル9からミストを噴霧可能に構成されていることを特徴とするものである。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
火災時に水が供給される水噴霧用配管と、該水噴霧用配管に設けられた複数の水噴霧ノズルとを備え、火災が生じた際に防護対象領域に水を噴霧する水噴霧設備であって、
該水噴霧ノズルの近傍に配設された複数のミスト噴霧ノズルと、
該ミスト噴霧ノズルに、前記水噴霧ノズルへ供給する水よりも高圧の水を供給するミスト噴霧用配管とを備え、
前記水噴霧ノズルからの水噴霧と同時期に、前記ミスト噴霧ノズルからミストを噴霧可能に構成されていることを特徴とする水噴霧設備。
【請求項2】
軸方向に区画分けされたトンネルの各区画に、
トンネル軸方向に延在するように設けられた水噴霧用配管と、該水噴霧用配管に設けられた複数の水噴霧ノズルとを備え、
前記トンネル内で火災が生じた際に火災位置に該当する区画の前記水噴霧ノズルから水噴霧を行う水噴霧設備において、
前記水噴霧ノズルの近傍に配設された複数のミスト噴霧ノズルと、
該ミスト噴霧ノズルに、前記水噴霧ノズルへ供給する水よりも高圧の水を供給するミスト噴霧用配管とをさらに備え、
前記水噴霧ノズルからの水噴霧と同時期に、水噴霧を行っている区画と同一区画の前記ミスト噴霧ノズルからミストを噴霧可能に構成されていることを特徴とする水噴霧設備。
【請求項3】
前記ミスト噴霧用配管は前記水噴霧用配管に供給する水の一部を前記ミスト噴霧ノズルに供給するものであり、
該ミスト噴霧用配管には、水を昇圧する昇圧ポンプが設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の水噴霧設備。
【請求項4】
前記昇圧ポンプは、
前記水噴霧用配管に供給する水の流れによって回転する駆動用羽根車と、
該駆動用羽根車と連結され、該駆動用羽根車に連動する加圧部と、を有し、
前記加圧部によって前記ミスト噴霧用配管に供給する水を昇圧することを特徴とする請求項3記載の水噴霧設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災が生じた際に防護対象領域に水を噴霧する水噴霧設備に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車専用道路等のトンネル内には、火災時にトンネル内に水を噴霧する水噴霧設備が設置されている。この水噴霧設備は、トンネル内で発生した火災の熱によってトンネルの内壁が損傷するのを防ぐために設置されるものであり、火災時にトンネル内に水を噴霧することでトンネル内壁やトンネル内空間を冷却し、トンネル躯体を保護している。
図3は、トンネルに設置される一般的な水噴霧設備27を模式的に示したものである。以下図3に基づいてその概要を説明する。
【0003】
トンネル3には、トンネル3の軸方向に沿って配水本管15が設けられており、火災時には図示しない貯水槽から給水ポンプによって配水本管15に水が供給される。
配水本管15には、トンネル内壁に沿って立ち上がる立上り管7がトンネル軸方向一定の間隔毎に接続され、各立上り管7の上端にはトンネル軸方向に延びる水噴霧用配管8が接続されている。そして、水噴霧用配管8には複数の水噴霧ノズル5が設けられている。
また、立上り管7の途中には水噴霧用配管8への給水を制御する自動弁装置17が設けられている。
【0004】
トンネル3内で火災が発生すると、火災が発生した区画の自動弁装置17が開放され、当該区画の水噴霧ノズル5から車道やトンネル天井面に向けて水が噴霧される。
従来の水噴霧設備27では、上記立上り管7、自動弁装置17、水噴霧用配管8及び複数の水噴霧ノズル5をトンネル軸方向に所定間隔で設けることにより、トンネル3内をトンネル軸方向に区画分けし、区画単位で水噴霧を実施できるようにしている。
【0005】
このようなトンネル内に水を噴霧する水噴霧設備の一例が、例えば特許文献1に開示されている。
特許文献1の「トンネル内消火システム」は、火災発生時にトンネル内壁に対して水を噴射することでトンネル内壁を冷却するトンネル内壁冷却手段を備えており、火炎や熱によるトンネル内壁の損傷を防止するとしている。
【0006】
また、特許文献2には、水噴霧設備の他の例として、トンネル空間内に微小水滴(ミスト)を噴霧して水滴の蒸散時の気化熱を利用することにより、トンネル内空間の温度を低下させる「トンネル内降温用噴霧システム」が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003-278500号公報
【特許文献2】特許第5420776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1のような一般的な水噴霧設備の場合、噴霧する水の粒子径が大きいため冷却効果に限界があり、さらなる冷却効果の向上が求められていた。
【0009】
これに対し、特許文献2のように、粒子径が小さいミストを用いた冷却方法の場合、高い冷却効果が期待できる。
しかし、粒子径が小さいミストは遠方まで届きにくく、トンネル3の片側の側壁から噴霧した場合、トンネル3の横断面全体にミストを拡散させることが難しかった。
また、ミストを発生させるためには、一般的な水噴霧設備よりも高圧の水を必要とするため、一般的な水噴霧設備に用いられるポンプよりも高圧のポンプを別途設ける必要もあった。
【0010】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、冷却効果を効率的に向上させた水噴霧設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)本発明に係る水噴霧設備は、火災時に水が供給される水噴霧用配管と、該水噴霧用配管に設けられた複数の水噴霧ノズルとを備え、火災が生じた際に防護対象領域に水を噴霧するものであって、
該水噴霧ノズルの近傍に配設された複数のミスト噴霧ノズルと、
該ミスト噴霧ノズルに、前記水噴霧ノズルへ供給する水よりも高圧の水を供給するミスト噴霧用配管とを備え、
前記水噴霧ノズルからの水噴霧と同時期に、前記ミスト噴霧ノズルからミストを噴霧可能に構成されていることを特徴とするものである。
【0012】
(2)また、本発明に係る水噴霧設備は、軸方向に区画分けされたトンネルの各区画に、
トンネル軸方向に延在するように設けられた水噴霧用配管と、該水噴霧用配管に設けられた複数の水噴霧ノズルとを備え、
前記トンネル内で火災が生じた際に火災位置に該当する区画の前記水噴霧ノズルから水噴霧を行うものにおいて、
前記水噴霧ノズルの近傍に配設された複数のミスト噴霧ノズルと、
該ミスト噴霧ノズルに、前記水噴霧ノズルへ供給する水よりも高圧の水を供給するミスト噴霧用配管とをさらに備え、
前記水噴霧ノズルからの水噴霧と同時期に、水噴霧を行っている区画と同一区画の前記ミスト噴霧ノズルからミストを噴霧可能に構成されていることを特徴とするものである。
【0013】
(3)また、上記(1)又は(2)に記載のものにおいて、前記ミスト噴霧用配管は前記水噴霧用配管に供給する水の一部を前記ミスト噴霧ノズルに供給するものであり、
該ミスト噴霧用配管には、水を昇圧する昇圧ポンプが設けられていることを特徴とするものである。
【0014】
(4)また、上記(3)に記載のものにおいて、前記昇圧ポンプは、
前記水噴霧用配管に供給する水の流れによって回転する駆動用羽根車と、
該駆動用羽根車と連結され、該駆動用羽根車に連動する加圧部と、を有し、
前記加圧部によって前記ミスト噴霧用配管に供給する水を昇圧することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明においては、水噴霧とミスト噴霧を同時期に行うことにより、冷却効果を効率的に向上させることができる。具体的には、ミスト噴霧によって対象領域の気温が低下するので水噴霧による冷却効果が向上すると共に、水噴霧によって発生する気流がミストを拡散させるので、遠方までミストが届きやすくなり、これらの相乗効果によって効率的に冷却効果が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施の形態にかかる水噴霧設備の説明図である。
図2図1の水噴霧設備を設けたトンネルの軸方向直交断面図である。
図3】一般的な水噴霧設備の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施の形態に係る水噴霧設備1について図1図2に基づいて説明する。
本実施の形態の水噴霧設備1は、トンネル内に設置され、火災時に水を噴霧することで火災の熱からトンネル躯体を保護するものであり、トンネル軸方向に所定間隔で設定された放水区画に対し、火災位置に応じて区画単位で放水を行うように構成されている。
図1は、水噴霧設備1における一区画に設けられる構成機器を模式的に示したものである。図2は、図1の水噴霧設備1を設けたトンネル3の軸方向直交断面図である。
【0018】
図1図2において、水噴霧ノズル及び水噴霧に係る周辺設備は、図3に示した一般的な水噴霧設備27と同様であるため、対応する部分には同一の符号を付している。
また、下記の説明で用いる「水噴霧」、「ミスト噴霧」とは、どちらも配水本管から供給される水をトンネル内に噴霧するものであるが、噴霧する水滴の粒子径や噴霧水圧に違いがある。この違いについては後述する。
【0019】
図1図2に示すように、本実施の形態の水噴霧設備1は、軸方向に区画分けされたトンネルの各区画に、立上り管7と、水噴霧用配管8と、水噴霧用ノズル5と、ミスト噴霧ノズル9と、ミスト噴霧用配管11と、昇圧ポンプ13とを備えている。
【0020】
トンネル3にはトンネル3の軸方向に沿って配水本管15が設けられており、火災時には図示しない貯水槽から給水ポンプによって配水本管15に水が供給される。なお、配水本管15に供給される水は、適した噴霧水圧(例えば0.34MPa程度)で水噴霧が行われるよう、自動弁装置17によって圧力が調整される。
【0021】
配水本管15には、トンネル内壁に沿って立ち上がるように設置された立上り管7が接続されている。立上り管7には、給水を制御するとともに二次側圧力を調整する自動弁装置17が設けられており、図示しない制御装置によって遠隔で開閉制御が可能となっている。
【0022】
立上り管7の上端には、トンネル軸方向に延在するように設けられた水噴霧用配管8が
接続されている。そして、水噴霧用配管8には離間して配置された複数(図1の例では10個)の水噴霧ノズル5が設けられている。
【0023】
水噴霧ノズル5は、立上り管7から供給された水をトンネル3の天井面や車道にむけて噴霧するノズルであり、トンネル横断面全体に水を噴霧できるよう、放射パターンの異なる近投用ノズル5a、遠投用ノズル5bを有している(図2参照)。
水噴霧ノズル5から放出される水の粒子径は概ね0.1~4mm程度、平均すると0.5~1.5mm程度が好ましく、一般的なトンネルに設けられる水噴霧設備と同様の水噴霧ノズルを適用できる。
【0024】
立上り管7の自動弁装置17の二次側には、トンネル側壁に沿って立ち上がるように配設されたミスト噴霧用配管11が接続されている。ミスト噴霧用配管11の上端には、トンネル軸方向に延在するように設けられた枝管12が接続されており、枝管12には複数のミスト噴霧ノズル9が設けられている。
【0025】
ミスト噴霧ノズル9は、水噴霧ノズル5から行われる水噴霧の水滴よりも小径のミスト(微小水滴)を噴霧するノズルであり、水噴霧ノズル5の近傍にそれぞれ1個ずつ、計10個設けられている。なお、本実施の形態では各区画の水噴霧ノズル5の数量を10個としているが、これに限定されず、また、区画ごとに数量が異なってもよい。
【0026】
ミスト噴霧ノズル9から噴霧するミストの平均粒子径としては8~160μm程度が好ましい。なお、ミストの噴霧水圧が低いとミストの平均粒子径が大きくなるとともに噴霧流量が少なくなり、冷却効果が小さくなる。他方、噴霧水圧が高いとミストの平均粒子径が小さくなるとともに噴霧流量が多くなり、冷却効果が高くなる。しかし、噴霧水圧が高すぎると配管などに大きな負荷が加わり、安全上好ましくないので、ミストの噴霧水圧は、0.5MPa~10MPaの間が好ましい。
【0027】
また、ミスト噴霧ノズル9は、図2に示すように、水噴霧ノズル5の上方に配置するのが好ましい。その理由は下記の通りである。
例えば、水噴霧ノズル5の下方からミストを噴霧すると、噴霧されたミストは近投用ノズル5aから放出される水に巻き込まれやすい。近投用ノズル5aからは下向きに水が放出されているので、この場合ミストが遠方まで拡散されにくい。
一方、水噴霧ノズル5の上方からミストを噴霧すると、遠投用ノズル5bからの放水にミストが誘引されるので、ミストが遠方まで到達しやすくなり、高い拡散効果が期待できる。
【0028】
火災発生時には、火災が発生した区画の自動弁装置17を開放することで、配水本管15の水が立上り管7に流入し、立上り管7から水噴霧用配管8に水が供給されて水噴霧ノズル5から当該区画に対し水が噴霧される。
また、立上り管7を通流する水の一部がミスト噴霧用配管11に流入し、ミスト噴霧用配管11から枝管12を介してミスト噴霧ノズル9に水が供給される。これにより、水噴霧ノズル5からの水噴霧と同時期に、同一区画のミスト噴霧ノズル9からミストが噴霧される。
【0029】
上記のように本実施の形態の水噴霧設備1は、水噴霧用配管8に供給する水の一部をミスト噴霧ノズル9に供給するように構成されている。
前述したように、火災時に配水本管15に供給される水は、図示しない給水ポンプによって加圧送水されており、この加圧された水を自動弁装置17によって所定の水圧に調整、水噴霧用配管8に供給して、水噴霧ノズル5から適切な噴霧水圧(例えば0.34MPa程度)で水噴霧が行われるようにしている。
【0030】
一方、ミスト噴霧に好適な噴霧水圧は0.5MPa~10MPa程度であるため、本例のように水噴霧用配管8に供給する水の一部を用いてミスト噴霧を行う場合には、この水を適切な水圧に昇圧してからミスト噴霧ノズル9に供給する必要がある。
そこで、本実施の形態では、ミスト噴霧ノズル9に供給する水を昇圧するための昇圧ポンプ13を設けている。
【0031】
昇圧ポンプ13は、立上り管7を通流する水によって回転する駆動用羽根車19と、ミスト噴霧用配管11に設けられ、駆動用羽根車19と連結された昇圧用羽根車21を内蔵した遠心ポンプ23(本発明の加圧部)によって構成されている。
【0032】
遠心ポンプ23は、例えば渦巻きポンプやタービンポンプのように、羽根車の回転力によって通流する水に遠心力を付加し、水を昇圧するポンプである。
立上り管7に水が通流すると、その水流によって立上り管7の内部に設けられた駆動用羽根車19が回転する。駆動用羽根車19が回転すると、これに連動して駆動用羽根車19に連結された昇圧用羽根車21も回転する。
【0033】
ミスト噴霧用配管11に設けられた遠心ポンプ23の内部で昇圧用羽根車21が回転することにより、遠心ポンプ23に流入した水に遠心力が加わり、水が加圧される。加圧された水が遠心ポンプ23の2次側に排出され、枝管12を介して各ミスト噴霧ノズル9に供給される。
【0034】
このように、本実施の形態の昇圧ポンプ13は、立上り管7の水流を利用して遠心ポンプ23を駆動させるので、遠心ポンプ23を動作させるための電源が不要となって効率的である。
なお、上記ではミスト噴霧用配管11の水を昇圧するポンプとして遠心力を利用したポンプの例を挙げたが、本発明の昇圧ポンプはこの限りではなく、昇圧用羽根車21の回転力によって水を昇圧する他の形式のポンプを用いてもよい。
【0035】
また、上記には、駆動用羽根車に連動する昇圧用羽根車の回転力を利用して水を加圧する例を挙げたが、本発明の昇圧ポンプはこれに限らない。例えば、昇圧ポンプの加圧部として、プランジャーの往復運動によって水を加圧するプランジャーポンプを用いることもできる。この場合には、駆動用羽根車とプランジャーとを、駆動用羽根車の回転力を往復運動に変換する機構(例えばクランク機構)を介して接続するとよい。
【0036】
なお、ミスト噴霧ノズル9はトンネル3内の高い位置に設置されるため(図2参照)、遠心ポンプ23によって加圧された水をミスト噴霧ノズル9に移送する過程で水圧の低下が生じる。したがって、昇圧ポンプ13の加圧力は、上記の圧力低下を考慮し、適した噴霧圧力(0.5MPa~10MPa)でミスト噴霧ノズル9からミストを噴霧できるよう、高めに設定するとよい。
【0037】
上記のように構成された本実施の形態の水噴霧設備1の動作について説明する。
トンネル3内で火災が発生すると、各区画に設置された火災検知器25(図3参照)によって火災が検知され、火災検知信号が発報される。火災検知信号が発報されると、配水本管に水が供給され、火災発生が検知された区画の自動弁装置17が開放される。
【0038】
自動弁装置17が開放されると、当該区画の立上り管7に配水本管15の水が流入し、水噴霧用配管8に水が供給される。また、立上り管7に流入した水の一部はミスト噴霧用配管11に流入する。この時、立上り管7を通流する水によって駆動用羽根車19が回転する。
【0039】
水噴霧用配管8から水噴霧ノズル5に水が供給されると、水噴霧ノズル5の近投用ノズル5a及び遠投用ノズル5bから当該区画に水噴霧が行われる。これによりトンネル壁面及びトンネル内空間が冷却されると共に、トンネル3内に空気の流れが発生する。
【0040】
一方、ミスト噴霧用配管11に流入した水は遠心ポンプ23に流入する。
遠心ポンプ23の内部では、駆動用羽根車19の回転に連動して昇圧用羽根車21が回転しており、昇圧用羽根車21の回転力によって遠心ポンプ23に流入した水に遠心力が加えられる。
この遠心力によって昇圧された水は枝管12を介して各ミスト噴霧ノズル9に供給され、当該区画にミストが噴霧される。ミストを発生させることで、ミスト蒸散時の気化熱によりトンネル3内の気温が低下する。
【0041】
また、前述したように、水噴霧ノズル5からの水噴霧によってトンネル3内には気流が生じている。この気流によってミスト噴霧ノズル9から噴霧されたミストは拡散される。このミストの拡散効果によって、ミストによる冷却効果はさらに向上し、効率的にトンネル3内を冷却することができる。
【0042】
上記のように、本実施の形態では、水噴霧と同時期にミストを噴霧することにより、水噴霧による冷却効果を向上させることができる。また、水噴霧によって発生する気流によってミストがトンネル3内に拡散されるので、水噴霧とミスト噴霧の相乗効果により効率的にトンネル内を冷却することができる。
【0043】
なお、上述した実施の形態は、水噴霧ノズル5に供給する水の水流によってミスト噴霧用の水を昇圧するポンプを駆動させるものであったが、本発明はこれに限らない。例えば、電力で駆動するポンプをミスト噴霧用配管11に設けるようにし、立上り管7の水流を利用せずにミスト噴霧用配管11の水を昇圧しても構わない。
【0044】
また、上述した実施の形態では、立上り管7を通流する水の一部をミスト噴霧用配管11に供給するものであったが、本発明はこれに限定されるものでもない。例えばミスト噴霧用配管11の下端を立上り管7ではなく配水本管15に接続して、配水本管15から直接ミスト噴霧用の水を給水するようにしてもよい。
この場合には立上り管7とミスト噴霧用配管11にそれぞれ制御弁装置を設けるようにし、火災が発生した区画の立上り管7とミスト噴霧用配管11とでそれぞれの制御弁を開放すれば、同一区画で水噴霧とミスト噴霧を実施できる。
【0045】
さらに、上記のように水噴霧とミスト噴霧を別制御できるようにした場合には、水噴霧と同一区画でミスト噴霧を行うと共に、隣接する他の区画でミスト噴霧のみを行うこともできる。
例えば、トンネルにA、B、C、D、Eの区画が設定されており、区画Cで火災が発生した場合、区画Cで水噴霧を行うと同時に、区画C及びこれに隣接する区画、即ち区画B、C、Dでミスト噴霧を行うようにしてもよい。
【0046】
また、上記は配水本管に供給される水を昇圧してミスト噴霧に用いるものであったが、例えばミスト噴霧に適した高圧水を配水本管以外から供給するようにしてもよい。
【0047】
なお、上述した本実施の形態では、トンネル内に設置されて区画単位で水噴霧を行う水噴霧設備を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限らない。本発明の水噴霧設備はトンネル以外の場所に設置してもよいし、防護対象領域全体に水を噴霧するように構成されていてもよい。この場合にも、水噴霧ノズルからの水噴霧と同時期に、水噴霧ノズルの近傍に設置されたミスト噴霧ノズルからミストを噴霧することで、本実施の形態と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0048】
1 水噴霧設備
3 トンネル
5 水噴霧ノズル
5a 近投用ノズル
5b 遠投用ノズル
7 立上り管
8 水噴霧用配管
9 ミスト噴霧ノズル
11 ミスト噴霧用配管
12 枝管
13 昇圧ポンプ
15 配水本管
17 自動弁装置
19 駆動用羽根車
21 昇圧用羽根車
23 遠心ポンプ
25 火災検知器
27 水噴霧設備(一般例)
図1
図2
図3