(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126627
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】ガス中で電流を遮断する装置
(51)【国際特許分類】
H01H 33/16 20060101AFI20240912BHJP
H02B 13/035 20060101ALI20240912BHJP
H02B 13/075 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
H01H33/16
H02B13/035 301H
H02B13/075
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023035146
(22)【出願日】2023-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100210240
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 友幸
(72)【発明者】
【氏名】植田 喜延
【テーマコード(参考)】
5G017
5G027
【Fターム(参考)】
5G017BB02
5G017BB03
5G027AA03
5G027CA08
(57)【要約】 (修正有)
【課題】並切り型の断路器や接地開閉器などの装置の電流遮断性能を簡易な構造で向上させる。
【解決手段】タンク内のガス中に配置される開閉接点1を備える。この開閉接点1は可動電極5と固定側コンタクト2とを備え、可動電極5を固定側コンタクト2と離間させることで電流を遮断する。この可動電極5は、先端部に複数段の導電性シリコーンゴム6を備える。この導電性シリコーンゴム6の各段6a~6eの導電率を、先端側が小さくなるように変化させている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンク内のガス中に配置される開閉接点を備え、
前記開閉接点の可動電極を固定側コンタクトと離間させることで電流を遮断する装置であって、
前記可動電極は、先端部に複数段の導電性シリコーンゴムを備え、
前記導電性シリコーンゴムの各段の導電率を、先端側が小さくなるように変化させたことを特徴とするガス中で電流を遮断する装置。
【請求項2】
並み切り形の断路器または接地開閉器であることを特徴とする請求項1記載のガス中で電流を遮断する装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開閉接点の動作によりガス中で電流を遮断する装置であって、例えば電流を開閉する責務のある並切り形の断路器および接地開閉器に関する。
【背景技術】
【0002】
並切り型の断路器および接地開閉器は、簡単な構造をしており、コスト的に有利である。ところが、近年の地球温暖化対策として電流遮断性能の高いSF6ガス(六フッ化硫黄ガス)に替わって、ドライエアなどの代替えガスの採用が進んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平03-081920号公報
【特許文献2】特許第5555365号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】”JEC 電気学会 電気規格調査会標準規格 交流断路器及び接地開閉器” JEC-2310:2014
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した代替えガスは、電流遮断性能が低いため、電流開閉の要求に十分に応えられない場合がある。そこで、電流遮断性能を高める方式として非特許文献1の抵抗付き断路器が提案されている。
【0006】
しかしながら、非特許文献1の抵抗付き断路器は、大型化や複雑化によるコスト面の問題を生じるおそれがある。また、特許文献1には大型化することなく大電流を遮断可能な断路器が提案されているものの、可動側電極および固定側電極の構造(形状)が複雑なため、製造工程が増加し、やはりコスト面での問題が生じるおそれがある。
【0007】
本発明は、このような従来の問題を解決するためになされ、並切り型の断路器や接地開閉器などの装置において電流遮断性能を簡易な構造で向上させることを解決課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明は、タンク内のガス中に配置される開閉接点を備え、
前記開閉接点の可動電極を固定側コンタクトと離間させることで電流を遮断する装置であって、
前記可動電極は、先端部に複数段の導電性シリコーンゴムを備え、
前記導電性シリコーンゴムの各段の導電率を、先端側が小さくなるように変化させたことを特徴としている。
【0009】
(2)なお、前記装置は、例えば並み切り形の断路器または接地開閉器として用いられる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、並切り型の断路器や接地開閉器などの装置において電流遮断性能を簡易な構造で向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係る装置の開閉接点の構成図。
【
図2】(a)は可動電極が閉路位置にある状態図、(b)は(a)の状態から可動電極を引き抜いて固定側コンタクトが導電性シリコーンゴムと接触した状態図、(c)は(b)の状態から可動電極をさらに引き抜いて固定側コンタクトが導電率の低い導電性シリコーンゴムと接触した状態図、(d)は(c)の状態から可動電極をさらに引き抜いて導電性シリコーンゴムと可動電極とが離間した状態図。
【
図3】(a)動作開始後「5ms」で抵抗値「750Ω」のときのシミュレーション結果を示すグラフ、(b)は同抵抗値「11.7Ω」のときのシミュレーション結果を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態に係る装置を説明する。この装置は、例えば並切り形の断路器や接地開閉器などに適用される。すなわち、可動電極の先端部に導電率の異なる材質を複数段に適用することで過電圧を抑制しつつアーク電流を限流し、消弧能力を高めることができる。
【0013】
(1)構成例
図1中の1は前記装置の開閉接点(開閉部)を示し、開閉接点1はガス絶縁開閉装置の絶縁ガス(ドライエアなど)を充填したタンク内のガス中に配置される。
【0014】
開閉接点1は、図示省略の電気配線を介して主回路に接続される固定側コンタクト2と、開放する主回路(前記断路器の場合)/接地回路(接地開閉器の場合)に図示省略の電気配線を介して接続される可動側コンタクト3と、固定側コンタクト2と接離することで両者2,3間を開閉する可動電極5と、操作機構(リンク機構など)の操作に応じて可動電極5を動作させる絶縁ロッド4とを備えている。
【0015】
可動電極5は可動側コンタクト3と常時接触し、その基端部に絶縁ロッド4の先端部が一体接合されている。この可動電極5の先端部には、導電性シリコーンゴム6が装着されている。
【0016】
この導電性シリコーンゴム6は、導電率の異なる複数段6a~6eを備え、カーボンなどの導電性材料の配合を各段6a~6eで変化させている。具体的には各段6a~6eの導電率は、矢印Pに示すように、「6a→6b→6c→6d→6e」の順で先端側にいくに従って小さくなっている。
【0017】
なお、特許文献2には、開閉装置のプラグプッシングにおいて先端接続部に導電性ゴムを用いた構成が記載されているものの、前記装置の開閉接点1は導電性シリコーンゴム6の導電性材料の配合を各段6a~6eで変化させる点で特許文献2と相違する。
【0018】
(2)開閉接点1の動作
図2に基づき開閉接点1の動作を説明する。
図2(a)は開閉接点の閉状態を示している。
【0019】
操作機構の操作によって可動電極5が
図2(a)の閉路位置から矢印Q方向に引き抜かれると、
図2(b)に示すように、固定側コンタクト2は導電性シリコーンゴム6と接触する。
【0020】
そして、さらに可動電極5を矢印Q方向に引き抜いていくと、
図2(c)に示すように、固定側コンタクト2は導電性シリコーンゴム6の導電率の小さい部分に接触する。
【0021】
すなわち、固定側コンタクト2が導電性シリコーンゴム6の「6b~6e→6c~6e→6d,6e→6e」の部分に順に接触し、徐々に両者2,6間の抵抗値が大きくなる。その結果、前記各回路の電流が抑制され、
図2(d)に示すように、両者2,6が離間した時にアーク電流を消弧可能な大きさとすることができる。
【0022】
したがって、可動電極5の先端に導電率を変化させた複数段6a~6eの導電性シリコーンゴム6を装着した簡単な構成を採用することで前記断路器や接地開閉器などの電流遮断性能を向上させることが可能となる。これにより製造工程の簡素化やコストの抑制などの効果も得られる。
【0023】
また、固定側コンタクト2と導電性シリコーンゴム6とが接触しているときの初期の抵抗値の変化が緩やかなため、短時間で大きな電流変化をもたらすことがなく、過電圧(サージ電圧)を抑制することもできる。この点を
図3のシミュレーション結果に基づき以下に説明する。
【0024】
(3)シミュレーション結果
図3(a)(b)は、初期の抵抗値の変化率の大小に応じたサージ電圧のシミュレーション結果を示している。ここでは「線間電圧3.3kV」・「400A」の電流を「0.24秒」から「0.8秒」までの「40ms」間で最終的に抵抗値が「6kΩ」となるように調整したシミュレーション結果を示している。
【0025】
ただし、
図3(a)は動作開始後「5ms」時点の抵抗値「750Ω」のシミュレーション結果を示し、
図3(b)は同抵抗値「11.7Ω」のシミュレーション結果を示し、それぞれ上から順に「抵抗値」・「電圧」・「電流」の時間的変化を示している。
【0026】
図3(a)では、初期の抵抗値の変化率が大きいため、電流が急激に下がり、絶対値で「15kV」を超えるサージ電圧を発生させた。一方、
図3(b)では、初期の抵抗値の変化率が小さく電流の変化が緩やかなため、サージ電圧を発生させなかった。なお、動作開始後「10ms」(
図3(b)の「0.250」が相当)を超えると抵抗値が大きくなるため、電流が十分に小さくなり、抵抗値の変化が大きくても問題は生じない。
【0027】
図3(b)のシミュレーション結果によれば、前述のように開閉接点1は固定側コンタクト2と導電性シリコーンゴム6の接触がなくなるときの抵抗値が十分に大きいため、
図3(a)の場合と同様にアーク電流を抑制可能な効果を得られることが確認された。
【0028】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載した範囲内で変形して実施することができる。例えば本発明の装置は、前記断路器や接地開閉器に限らず、ガス中で電流を遮断する装置全般に適用することが可能である。
【0029】
また、導電性シリコーンゴム6の段数・各段の幅および導電率の大きさは、使用する絶縁ガス中でのアーク消弧能力、絶縁回復力、要求される電流開閉能力、導電性シリコーンゴム6の絶縁耐力、熱的および機械的耐久性、可動電極5の動作速度などから個別的に決定されるものとする。
【符号の説明】
【0030】
1…開閉接点
2…固定側コンタクト
3…可動側コンタクト
4…絶縁ロッド
5…可動電極
6…絶縁性シリコーンゴム
6a~6e…絶縁性シリコーンゴムの先端部の各段