(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126628
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】デバイス及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/02 20060101AFI20240912BHJP
B81B 1/00 20060101ALI20240912BHJP
B81C 1/00 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
H01L23/02 Z
B81B1/00
B81C1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023035148
(22)【出願日】2023-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000108753
【氏名又は名称】タツモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】五十川 良則
【テーマコード(参考)】
3C081
【Fターム(参考)】
3C081AA17
3C081BA30
3C081CA17
3C081CA32
3C081EA02
3C081EA41
(57)【要約】 (修正有)
【課題】キャビティを備えたデバイスにおいて当該キャビティの内圧を効率良く且つ精度良く制御するデバイス及びデバイスの製造方法を提供する。
【解決手段】キャビティ3を備えたデバイスを製造する方法であって、接合ステップS1と、内圧調整ステップS2と、を備える。接合ステップS1では、2つの接合対象W1及びW2を接合することにより、キャビティ3を形成すると共に、そのキャビティ3内に、レーザー光の照射によってキャビティ3内のガスの吸着が可能になるガス吸着材51を封止する。接合ステップS1の後、内圧調整ステップS2において、ガス吸着材51へのレーザー光の照射によってキャビティ3の内圧を調整する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビティを備えたデバイスを製造する方法であって、
2つの接合対象を接合することにより、前記キャビティを形成すると共に、そのキャビティ内に、光の照射によって当該キャビティ内のガスの吸着が可能になるガス吸着材を封止する接合ステップと、
前記接合ステップの後、前記ガス吸着材への光の照射によって前記キャビティの内圧を調整する内圧調整ステップと、
を備える、デバイスの製造方法。
【請求項2】
前記接合ステップでは、前記キャビティ内に、前記ガス吸着材に加えて、光の照射によって当該キャビティ内へのガスの発生が可能になるガス発生材を更に封止し、
前記内圧調整ステップでは、前記ガス吸着材及び前記ガス発生材の少なくとも何れか一方への光の照射によって前記キャビティの内圧を調整する、請求項1に記載のデバイスの製造方法。
【請求項3】
キャビティを備えたデバイスを製造する方法であって、
2つの接合対象を接合することにより、前記キャビティを形成すると共に、そのキャビティ内に、光の照射によって当該キャビティ内へのガスの発生が可能になるガス発生材を封止する接合ステップと、
前記接合ステップの後、前記ガス発生材への光の照射によって前記キャビティの内圧を調整する内圧調整ステップと、
を備える、デバイスの製造方法。
【請求項4】
前記内圧調整ステップでは、前記キャビティの内圧を測定し、当該内圧の測定値に基づいて、その内圧が所定範囲内となるように光の照射を行う、請求項1~3の何れかに記載のデバイスの製造方法。
【請求項5】
キャビティを備えたデバイスを複数製造する方法であって、
2つの接合対象を接合することにより、前記キャビティを複数形成すると共に、各キャビティ内に、光の照射によって当該キャビティの内圧を調整することを可能にする内圧調整材を封止するステップであり、前記キャビティごとに、前記内圧調整材として、光の照射によって当該キャビティ内のガスの吸着が可能になるガス吸着材、及び、光の照射によって当該キャビティ内へのガスの発生が可能になるガス発生材、の少なくとも何れか一方を封止する、接合ステップと、
前記接合ステップの後、前記複数のキャビティについてそれぞれの内圧を測定し、当該複数のキャビティのうちの前記内圧の測定値が所定範囲外であったものを対象キャビティとして、当該対象キャビティ内の前記内圧調整材への光の照射によって当該対象キャビティの内圧を前記所定範囲内となるように調整する内圧調整ステップと、
を備え、デバイスの製造方法。
【請求項6】
複数のキャビティを備えたデバイスを製造する方法であって、
2つの接合対象を接合することにより、前記複数のキャビティを形成すると共に、当該複数のキャビティの少なくとも何れか1つのキャビティを対象キャビティとして、当該対象キャビティ内に、光の照射によって当該対象キャビティの内圧を調整することを可能にする内圧調整材を封止するステップであり、前記対象キャビティごとに、前記内圧調整材として、光の照射によって当該対象キャビティ内のガスの吸着が可能になるガス吸着材、及び、光の照射によって当該対象キャビティ内へのガスの発生が可能になるガス発生材、の少なくとも何れか一方を封止する、接合ステップと、
前記接合ステップの後、前記対象キャビティごとに、その対象キャビティ内の前記内圧調整材への光の照射によって当該対象キャビティの内圧を調整する内圧調整ステップと、
を備え、デバイスの製造方法。
【請求項7】
2つの接合対象で構成されたキャビティと、
前記キャビティ内に封止されており、光の照射によって当該キャビティ内へのガスの発生が可能になるガス発生材と、
を備える、デバイス。
【請求項8】
前記キャビティ内に封止されており、光の照射によって当該キャビティ内のガスの吸着が可能になるガス吸着材、
を更に備える、請求項7に記載のデバイス。
【請求項9】
2つの接合対象で構成された複数のキャビティと、
前記複数のキャビティの少なくとも何れか1つのキャビティを対象キャビティとして、当該対象キャビティ内に封止されており、光の照射によって当該対象キャビティの内圧を調整することを可能にする内圧調整材と、
を備え、
前記対象キャビティごとに、前記内圧調整材は、光の照射によって当該対象キャビティ内のガスの吸着が可能になるガス吸着材、及び、光の照射によって当該対象キャビティ内へのガスの発生が可能になるガス発生材、の少なくとも何れか一方を含む、デバイス。
【請求項10】
前記キャビティの内圧を測定するための内圧測定回路の少なくとも一部
を更に備える、請求項7~9の何れかに記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサや電子回路などの要素を封止するためのキャビティを備えたデバイスの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)などのデバイスには、センサ(加速度センサやジャイロセンサ等)、微小機械(アクチュエータ等)、電子回路などの要素がキャビティ内に封止されたものが多く存在する(例えば、特許文献1参照)。そのようなデバイスは、2つの接合対象(キャビティとなる窪みが設けられた接合対象と、その窪みを塞ぐ接合対象)を接合することでキャビティが形成され、それと同時に当該キャビティ内に各種要素が封止されることによって構成される。
【0003】
一方、キャビティ内に封止される要素の種類によっては、当該要素の性能を高める上で、キャビティの内圧が適切な値になっていることが重要になる場合がある。一例として、要素が加速度センサの場合、キャビティの内圧は、空気抵抗で加速度センサに減衰を生じさせることができるように適度に低い値になっていることが好ましい。他の例として、要素がジャイロセンサの場合、キャビティの内圧は、できるだけ低くなっていること(換言すれば、真空度ができるだけ高くなっていること)が好ましい。
【0004】
そして従来、キャビティの内圧を適切な値に調整する方法として、チャンバの内圧を、目標とするキャビティの内圧となるように調整し、そのチャンバ内で上述した2つの接合対象を接合するという方法が用いられていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した従来の方法には、次のような問題がある。キャビティの内圧をできるだけ低くしたい場合には、上記チャンバの内圧をできるだけ低く調整しておく必要があり、そのような調整には長時間を要することになる。また、2つの接合対象の接合時に当該接合対象への加熱が必要である場合には、その加熱によってキャビティ内の各種要素までもが加熱され、それが原因で当該要素からガスが発生するおそれがある。各種要素からガスが発生すると、そのガスが原因で、キャビティの内圧を目標値まで低下させることが難しくなってしまう。このように、従来の方法では、キャビティの内圧を効率良く且つ精度良く制御することが難しかった。
【0007】
そこで本発明の目的は、キャビティを備えたデバイスにおいて当該キャビティの内圧を効率良く且つ精度良く制御することを可能にする技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るデバイスの製造方法の第1態様は、キャビティを備えたデバイスを製造する方法であり、接合ステップと、内圧調整ステップと、を備える。接合ステップでは、2つの接合対象を接合することにより、キャビティを形成すると共に、そのキャビティ内に、光の照射によって当該キャビティ内のガスの吸着が可能になるガス吸着材を封止する。接合ステップの後、内圧調整ステップにおいて、ガス吸着材への光の照射によってキャビティの内圧を調整する。
【0009】
上記製造方法の第1態様によれば、ガス吸着材を光の照射対象(具体的には、光の照射による加熱対象)とすることにより、キャビティ内に封止する要素(センサなど)を加熱することなしに、ガス吸着材にキャビティ内のガスを吸着させて当該キャビティの内圧を低下させることができる。換言すれば、キャビティ内に封止する要素(センサなど)が、加熱されたとすると当該キャビティの内圧に影響(ガスの発生や吸着など)を与えてしまうようなものであったとしても、上記製造方法の第1態様によれば、キャビティ内に封止する要素(センサなど)の加熱を回避できるため、当該要素からの影響を受けずに、ガス吸着材だけでキャビティの内圧を低下させることができる。従って、キャビティの内圧を短時間で効率良く低下させることができる。また、ガス吸着材への光の照射条件を調整することにより、キャビティの内圧を精度良く制御することができる。
【0010】
上記製造方法の第1態様において、接合ステップでは、キャビティ内に、ガス吸着材に加えて、光の照射によって当該キャビティ内へのガスの発生が可能になるガス発生材を更に封止してもよい。この場合、内圧調整ステップでは、ガス吸着材及びガス発生材の少なくとも何れか一方への光の照射によってキャビティの内圧を調整してもよい。この構成によれば、ガス吸着材及びガス発生材を光の照射対象(具体的には、光の照射による加熱対象)として、当該照射対象に対して選択的に光の照射を行うことにより、キャビティ内に封止する要素(センサなど)を加熱することなしに、ガス吸着材にキャビティ内のガスを吸着させて当該キャビティの内圧を低下させることができ、且つ、ガス発生材からキャビティ内へガスを発生させて当該キャビティの内圧を上昇させることができる。換言すれば、キャビティ内に封止する要素(センサなど)からの影響を受けずに、ガス吸着材及びガス発生材を選択的に利用することによってキャビティの内圧を調整することができる。従って、キャビティの内圧を短時間で効率良く調整することができる。また、ガス吸着材及びガス発生材への光の照射条件を調整することにより、キャビティの内圧を精度良く制御することができる。
【0011】
本発明に係るデバイスの製造方法の第2態様は、キャビティを備えたデバイスを製造する方法であり、接合ステップと、内圧調整ステップと、を備える。接合ステップでは、2つの接合対象を接合することにより、キャビティを形成すると共に、そのキャビティ内に、光の照射によって当該キャビティ内へのガスの発生が可能になるガス発生材を封止する。接合ステップの後、内圧調整ステップにおいて、ガス発生材への光の照射によってキャビティの内圧を調整する。
【0012】
上記製造方法の第2態様によれば、ガス発生材を光の照射対象(具体的には、光の照射による加熱対象)とすることにより、キャビティ内に封止する要素(センサなど)を加熱することなしに、ガス発生材からキャビティ内へガスを発生させて当該キャビティの内圧を上昇させることができる。換言すれば、キャビティ内に封止する要素(センサなど)が、加熱されたとすると当該キャビティの内圧に影響を与えてしまうようなものであったとしても、上記製造方法の第2の態様によれば、キャビティ内に封止する要素(センサなど)の加熱を回避できるため、当該要素からの影響を受けずに、ガス発生材だけでキャビティの内圧を上昇させることができる。従って、キャビティの内圧を短時間で効率良く上昇させることができる。また、ガス発生材への光の照射条件を調整することにより、キャビティの内圧を精度良く制御することができる。
【0013】
上記製造方法の第1態様又は第2態様において、内圧調整ステップでは、キャビティの内圧を測定し、当該内圧の測定値に基づいて、その内圧が所定範囲内となるように光の照射を行ってもよい。この構成によれば、キャビティ内にセンサなどの要素を封止する場合に、当該キャビティの内圧を、当該要素に適した値に精度良く調整することが可能になる。
【0014】
本発明に係るデバイスの製造方法の第3態様は、キャビティを備えたデバイスを複数製造する方法であり、接合ステップと、内圧調整ステップと、を備える。接合ステップでは、2つの接合対象を接合することにより、キャビティを複数形成すると共に、各キャビティ内に、光の照射によって当該キャビティの内圧を調整することを可能にする内圧調整材を封止する。このとき、キャビティごとに、内圧調整材として、光の照射によって当該キャビティ内のガスの吸着が可能になるガス吸着材、及び、光の照射によって当該キャビティ内へのガスの発生が可能になるガス発生材、の少なくとも何れか一方を封止する。接合ステップの後、内圧調整ステップにおいて、複数のキャビティについてそれぞれの内圧を測定し、当該複数のキャビティのうちの内圧の測定値が所定範囲外であったものを対象キャビティとして、当該対象キャビティ内の内圧調整材への光の照射によって当該対象キャビティの内圧を所定範囲内となるように調整する。
【0015】
本発明に係るデバイスの製造方法の第4態様は、複数のキャビティを備えたデバイスを製造する方法であり、接合ステップと、内圧調整ステップと、を備える。接合ステップでは、2つの接合対象を接合することにより、複数のキャビティを形成すると共に、当該複数のキャビティの少なくとも何れか1つのキャビティを対象キャビティとして、当該対象キャビティ内に、光の照射によって当該対象キャビティの内圧を調整することを可能にする内圧調整材を封止する。このとき、対象キャビティごとに、内圧調整材として、光の照射によって当該対象キャビティ内のガスの吸着が可能になるガス吸着材、及び、光の照射によって当該対象キャビティ内へのガスの発生が可能になるガス発生材、の少なくとも何れか一方を封止する。接合ステップの後、内圧調整ステップにおいて、対象キャビティごとに、その対象キャビティ内の内圧調整材への光の照射によって当該対象キャビティの内圧を調整する。
【0016】
上記製造方法の第3態様又は第4態様によれば、内圧調整材を光の照射対象(具体的には、光の照射による加熱対象)とすることにより、各キャビティ内に封止する要素(センサなど)を加熱することなしに、内圧調整材としてガス吸着材が封止されている場合には当該ガス吸着材にキャビティ内のガスを吸着させて当該キャビティの内圧を低下させることができ、内圧調整材としてガス発生材が封止されている場合には当該ガス発生材からキャビティ内へガスを発生させて当該キャビティの内圧を上昇させることがでる。換言すれば、各キャビティ内に封止する要素(センサなど)が、加熱されたとすると当該キャビティの内圧に影響(ガスの発生など)を与えてしまうようなものであったとしても、上記製造方法の第3態様によれば、各キャビティ内に封止する要素(センサなど)の加熱を回避できるため、当該要素からの影響を受けずに、内圧調整材だけで(当該内圧調整材としてガス吸着材及びガス発生材の両方が封止されている場合には、それらを選択的に利用することにより)キャビティの内圧を調整することができる。従って、キャビティの内圧を短時間で効率良く調整することができる。また、キャビティごとに内圧調整材への光の照射条件を調整することにより、各キャビティの内圧を精度良く制御することができる。
【0017】
そして、上記製造方法の第3態様では、複数のキャビティのうちの内圧の測定値が所定範囲外であったキャビティ(対象キャビティ)だけを対象として、内圧調整材への光の照射により、内圧を、所定範囲内となるように調整することが可能になっている。具体的には、対象キャビティごとに、内圧を測定値から所定範囲内へ変化させることができる照射条件を求め、その照射条件で内圧調整材への光の照射を行うことができる。これにより、全てのキャビティの内圧を所定範囲内に収めることが可能になる。従って、キャビティの内圧についてのデバイス間のバラツキを小さくすることができ、その結果として、デバイス性能のバラツキを小さくすることが可能になる。
【0018】
また、上記製造方法の第4態様では、複数のキャビティのうちの少なくとも1つのキャビティ(対象キャビティ)を対象として、当該対象キャビティごとに内圧を調整することが可能になっている。具体的には、対象キャビティごとに、当該対象キャビティに封止する要素(センサなど)に適した内圧へ変化させるための光の照射条件を求め、その照射条件で内圧調整材への光の照射を行うことができる。従って、1つのデバイスにおいて異なる要素を別々のキャビティ(対象キャビティを含む)に封止すると共に、当該キャビティごとに、そのキャビティに封止する要素に適した内圧に調整することができる。よって、内圧によって性能が左右される複数種の要素を1つのデバイスに搭載することが可能になる。
【0019】
本発明に係るデバイスの第1態様は、2つの接合対象で構成されたキャビティと、当該キャビティ内に封止されたガス発生材と、を備える。ガス発生材は、光の照射によって当該キャビティ内へのガスの発生が可能になる。
【0020】
上記デバイスの第1態様において、当該デバイスは、キャビティ内に封止されたガス吸着材を更に備えていてもよい。ガス吸着材は、光の照射によって当該キャビティ内のガスの吸着が可能になる。
【0021】
本発明に係るデバイスの第2態様は、2つの接合対象で構成された複数のキャビティと、内圧調整材と、を備える。内圧調整材は、複数のキャビティの少なくとも何れか1つのキャビティを対象キャビティとして、当該対象キャビティ内に封止されており、光の照射によって当該対象キャビティの内圧を調整することを可能にするものである。具体的には、対象キャビティごとに、内圧調整材は、光の照射によって当該対象キャビティ内のガスの吸着が可能になるガス吸着材、及び、光の照射によって当該対象キャビティ内へのガスの発生が可能になるガス発生材、の少なくとも何れか一方を含む。
【0022】
上記デバイスの第1態様又は第2態様において、当該デバイスは、キャビティの内圧を測定するための内圧測定回路の少なくとも一部を更に備えていてもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、キャビティを備えたデバイスにおいて当該キャビティの内圧を効率良く且つ精度良く制御することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】(A)第1実施形態に係る製造方法によって製造されるデバイスの一例を概念的に示した断面図、及び(B)蓋部を除いて示した当該デバイスの平面図である。
【
図2】第1実施形態に係る製造方法を処理順に示した概念図である。
【
図3】(A)第2実施形態に係る製造方法によって製造されるデバイスの一例を概念的に示した断面図、及び(B)蓋部を除いて示した当該デバイスの平面図である。
【
図4】第2実施形態に係る製造方法を処理順に示した概念図である。
【
図5】(A)第1変形例に係る製造方法によって製造されるデバイスの一例を概念的に示した断面図、及び(B)蓋部を除いて示した当該デバイスの平面図である。
【
図6】第1変形例に係る製造方法を処理順に示した概念図である。
【
図7】(A)第3変形例に係る製造方法によって製造されるデバイスの一例を概念的に示した断面図、及び(B)蓋部を除いて示した当該デバイスの平面図である。
【
図8】第3変形例に係る製造方法を処理順に示した概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[1]第1実施形態
[1-1]デバイスの構成
図1(A)は、第1実施形態に係る製造方法によって製造されるデバイスの一例を概念的に示した断面図である。このデバイスは、ベース部1と、蓋部2と、キャビティ3と、要素4と、内圧調整材5と、を備える。
図1(B)は、蓋部2を除いて示したデバイスの平面図であり、
図1(A)は、
図1(B)に示されるIA-IA線での断面図である。
【0026】
ベース部1及び蓋部2は、基板などの基材で構成される部分であり、互いに接合されている。具体的には、キャビティ3となる窪み10がベース部1に設けられており、この窪み10を塞いだ状態で蓋部2がベース部1に接合されている。これにより、キャビティ3が、ベース部1と蓋部2とによって密閉された内部空間として形成されている。
【0027】
そして、このキャビティ3内に要素4が封止されている。ここで、要素4は、センサ(加速度センサやジャイロセンサ等)、微小機械(アクチュエータ等)、電子回路など、デバイスの機能の少なくとも一部を担う部分である。
【0028】
一方、キャビティ3内に封止される要素4の種類によっては、当該要素4の性能を高める上で、キャビティ3の内圧が適切な値になっていることが重要になる場合がある。一例として、要素4が加速度センサの場合、キャビティ3の内圧は、空気抵抗で加速度センサに減衰を生じさせることができるように適度に低い値になっていることが好ましい。他の例として、要素4がジャイロセンサの場合、キャビティ3の内圧は、できるだけ低くなっていること(換言すれば、真空度ができるだけ高くなっていること)が好ましい。
【0029】
そこで、キャビティ3の内圧を効率良く且つ精度良く制御することを可能にするべく、キャビティ3内には、内圧調整材5が更に封止されている。ここで、内圧調整材5は、レーザ光やフラッシュランプなどの光の照射によってキャビティ3の内圧を調整することを可能にする部分である。本実施形態では、内圧調整材5として、光の照射によってガスの吸着が可能になるガス吸着材51がキャビティ3内に封止されている。以下では、このような内圧調整材5を用いたデバイスの製造方法について具体的に説明する。
【0030】
[1-2]デバイスの製造方法
図2は、第1実施形態に係る製造方法を処理順に示した概念図である。
図2の例では、複数のデバイスを纏めて製造する場合の製造方法が示されている。この製造方法では、接合ステップS1、内圧調整ステップS2、及び切断ステップS3が、この順に実行される。以下、各ステップについて具体的に説明する。尚、この製造方法は、デバイスを1つだけ製造する場合にも適用できる。その場合、切断ステップS3は省略することができる。
【0031】
<接合ステップS1>
接合ステップS1では、2つの接合対象W1及びW2を接合する。ここで、接合対象W1は、基板などの基材で構成されており、切断によって個片化されることでベース部1となる領域R1を複数含んでいる。そして、各領域R1には、キャビティ3となる窪み10が設けられている。また、接合対象W2は、基板などの基材で構成されており、接合対象W1の切断によって当該接合対象W1と共に個片化されることで蓋部2になる。
【0032】
具体的な構成として、接合ステップS1では、先ず、各領域R1の窪み10内の所定位置(例えば、その領域R1に形成されている電子回路に正しく接続されることになる位置)に要素4を設置する(ステップS11)。更に、各領域R1の窪み10内には、要素4の設置位置(上記所定位置)とは異なる位置に内圧調整材5(本実施形態では、ガス吸着材51)を設置する。
【0033】
その後、2つの接合対象W1及びW2を接合して全ての窪み10を接合対象W2で塞ぐことにより、各領域R1においてキャビティ3を形成すると共に、そのキャビティ3内に要素4と内圧調整材5とを封止する(ステップS12)。
【0034】
<内圧調整ステップS2>
内圧調整ステップS2では、各キャビティ3内の内圧調整材5(本実施形態では、ガス吸着材51)に光を照射することにより、当該キャビティ3の内圧を調整する。具体的には、各キャビティ3内のガス吸着材51にレーザ光を照射することにより、当該ガス吸着材51を加熱する。これにより、各キャビティ3内においてガス吸着材51にガスが吸着し、その結果として当該キャビティ3内の内圧が低下する。このとき、レーザ光の照射条件(出力、照射時間、ガス吸着材51における照射範囲など)を適宜調整することにより、ガス吸着材51に吸着させるガスの量を調整することができ、それによってキャビティ3の内圧を調整することができる。
【0035】
このようにガス吸着材51をレーザ光の照射対象(具体的には、レーザ光の照射による加熱対象)とすることにより、各キャビティ3内に封止する要素4(センサなど)を加熱することなしに、ガス吸着材51にキャビティ3内のガスを吸着させて当該キャビティ3の内圧を低下させることができる。換言すれば、各キャビティ3内に封止する要素4(センサなど)が、加熱されたとすると当該キャビティ3の内圧に影響(ガスの発生や吸着など)を与えてしまうようなものであったとしても、上述した処理によれば、各キャビティ3内に封止する要素4(センサなど)の加熱を回避できるため、当該要素4からの影響を受けずに、ガス吸着材51だけでキャビティ3の内圧を低下させることができる。従って、キャビティ3の内圧を短時間で効率良く低下させることができる。また、ガス吸着材51へのレーザ光の照射条件(出力、照射時間、ガス吸着材51における照射範囲など)を調整することにより、キャビティ3の内圧を精度良く制御することができる。
【0036】
尚、内圧調整ステップS2では、レーザ光に代えて、フラッシュランプ(例えば、面発光のフラッシュランプ)の光をガス吸着材51に照射してもよい。この場合、フラッシュランプの光を選択的に遮断できるマスクを用いることにより、ガス吸着材51に照射する光だけを取り出すことができる。
【0037】
<切断ステップS3>
切断ステップS3では、2つの接合対象W1及びW2に切断加工を施すことにより、接合対象W1が含む複数の領域R1をそれぞれ個片化する(不図示)。具体的には、複数の領域R1を区分けする境界線Lr(
図2の内圧調整ステップS2参照)に沿って2つの接合対象W1及びW2を切断することにより、当該複数の領域R1をそれぞれ個片化する。このときの切断方法には、ブレードダイシング法、プラズマエッチング法、レーザアブレーション法などを用いることができる。これにより、キャビティ3内に要素4が封止されたデバイスが製造される。また本実施形態では、キャビティ3の内圧が要素4に適した値に精度良く制御されたデバイスが得られる。
【0038】
[2]第2実施形態
第2実施形態では、ガス吸着材51に代えて、レーザ光やフラッシュランプなどの光の照射によってガスの発生が可能になるガス発生材52を内圧調整材5として用いた場合について説明する。
【0039】
[2-1]デバイスの構成
図3(A)は、第2実施形態に係る製造方法によって製造されるデバイスの一例を概念的に示した断面図である。
図3(B)は、蓋部2を除いて示したデバイスの平面図であり、
図3(A)は、
図3(B)に示されるIIIA-IIIA線での断面図である。第2実施形態では、デバイスは、ガス吸着材51に代えてガス発生材52を備える。デバイスの他の構成については、第1実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0040】
[2-2]デバイスの製造方法
図4は、第2実施形態に係る製造方法を処理順に示した概念図である。以下では、第1実施形態と異なる構成について具体的に説明する。
【0041】
<接合ステップS1>
接合ステップS1では、各領域R1の窪み10内にガス発生材52を設置する(ステップS11)。具体的には、各領域R1の窪み10内において、要素4の設置位置(所定位置)とは異なる位置にガス発生材52を設置する。その後、2つの接合対象W1及びW2を接合して全ての窪み10を接合対象W2で塞ぐことにより、各領域R1においてキャビティ3を形成すると共に、そのキャビティ3内に要素4とガス発生材52とを封止する(ステップS12)。
【0042】
<内圧調整ステップS2>
内圧調整ステップS2では、各キャビティ3内のガス発生材52に光を照射することにより、当該キャビティ3の内圧を調整する。具体的には、各キャビティ3内のガス発生材52にレーザ光を照射することにより、当該ガス発生材52を加熱する。これにより、各キャビティ3内においてガス発生材52からガスが発生し、その結果として当該キャビティ3内の内圧が上昇する。このとき、レーザ光の照射条件(出力、照射時間、ガス発生材52における照射範囲など)を適宜調整することにより、ガス発生材52に発生させるガスの量を調整することができ、それによってキャビティ3の内圧を調整することができる。
【0043】
このようにガス発生材52をレーザ光の照射対象(具体的には、レーザ光の照射による加熱対象)とすることにより、各キャビティ3内に封止する要素4(センサなど)を加熱することなしに、ガス発生材52からキャビティ3内へガスを発生させて当該キャビティ3の内圧を上昇させることができる。換言すれば、各キャビティ3内に封止する要素4(センサなど)が、加熱されたとすると当該キャビティ3の内圧に影響(ガスの発生や吸着など)を与えてしまうようなものであったとしても、上述した処理によれば、各キャビティ3内に封止する要素4(センサなど)の加熱を回避できるため、当該要素4からの影響を受けずに、ガス発生材52だけでキャビティ3の内圧を上昇させることができる。従って、キャビティ3の内圧を短時間で効率良く上昇させることができる。また、ガス発生材52へのレーザ光の照射条件(出力、照射時間、ガス発生材52における照射範囲など)を調整することにより、キャビティ3の内圧を精度良く制御することができる。よって、キャビティ3の内圧が要素4に適した値に精度良く制御されたデバイスを製造することができる。
【0044】
尚、内圧調整ステップS2では、レーザ光に代えて、フラッシュランプ(例えば、面発光のフラッシュランプ)の光をガス発生材52に照射してもよい。この場合、フラッシュランプの光を選択的に遮断できるマスクを用いることにより、ガス発生材52に照射する光だけを取り出すことができる。
【0045】
[3]変形例
[3-1]第1変形例
上述した第1実施形態及び第2実施形態に係る製造方法は、それらを組み合わせたものに適宜変更することができる。以下、具体的に説明する。
【0046】
[3-1-1]デバイスの構成
図5(A)は、第1変形例に係る製造方法によって製造されるデバイスの一例を概念的に示した断面図である。
図5(B)は、蓋部2を除いて示したデバイスの平面図であり、
図5(A)は、
図5(B)に示されるVA-VA線での断面図である。第1変形例では、デバイスは、内圧調整材5としてガス吸着材51及びガス発生材52を両方備える。デバイスの他の構成については、第1実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0047】
[3-1-2]デバイスの製造方法
図6は、第1変形例に係る製造方法を処理順に示した概念図である。以下では、第1実施形態や第2実施形態と異なる構成について具体的に説明する。
【0048】
<接合ステップS1>
接合ステップS1では、各領域R1の窪み10内にガス吸着材51及びガス発生材52を両方設置する(ステップS11)。具体的には、各領域R1の窪み10内において、要素4の設置位置(所定位置)とは異なる位置にガス吸着材51及びガス発生材52をそれぞれ設置する。その後、2つの接合対象W1及びW2を接合して全ての窪み10を接合対象W2で塞ぐことにより、各領域R1においてキャビティ3を形成すると共に、そのキャビティ3内に要素4と内圧調整材5(ここでは、ガス吸着材51及びガス発生材52を両方)とを封止する(ステップS12)。
【0049】
<内圧調整ステップS2>
内圧調整ステップS2では、各キャビティ3内の内圧調整材5に光を照射することにより、当該キャビティ3の内圧を調整する。具体的には、各キャビティ3内のガス吸着材51及びガス発生材52の少なくとも何れか一方に光(レーザ光やフラッシュランプの光など)を照射することにより、当該光の照射対象を加熱する。これにより、光の照射対象がガス吸着材51である場合には、各キャビティ3内においてガス吸着材51にガスが吸着して当該キャビティ3内の内圧が低下し、光の照射対象がガス発生材52である場合には、各キャビティ3内においてガス発生材52からガスが発生して当該キャビティ3内の内圧が上昇する。このとき、照射対象の選択と、当該照射対象への光の照射条件(出力、照射時間、照射対象における照射範囲など)を適宜調整することにより、ガス吸着材51に吸着させるガスの量と、ガス発生材52に発生させるガスの量と、を選択的に調整することができ、それによってキャビティ3の内圧を調整することができる。
【0050】
このようにガス吸着材51及びガス発生材52を光の照射対象(具体的には、光の照射による加熱対象)として、当該照射対象に対して選択的に光の照射を行うことにより、各キャビティ3内に封止する要素4(センサなど)を加熱することなしに、ガス吸着材51にキャビティ3内のガスを吸着させて当該キャビティ3の内圧を低下させることができ、且つ、ガス発生材52からキャビティ3内へガスを発生させて当該キャビティ3の内圧を上昇させることができる。換言すれば、キャビティ3内に封止する要素4(センサなど)からの影響を受けずに、ガス吸着材51及びガス発生材52を選択的に利用することによってキャビティ3の内圧を調整することができる。従って、キャビティ3の内圧を短時間で効率良く調整することができる。また、ガス吸着材51及びガス発生材52への光の照射条件(出力、照射時間、照射対象における照射範囲など)を調整することにより、キャビティ3の内圧を精度良く制御することができる。
【0051】
[3-2]第2変形例
上述した何れの製造方法においても、複数のデバイスを纏めて製造する場合には、内圧調整ステップS2において、各キャビティ3の内圧を測定し、当該内圧の測定値に基づいて、その内圧が所定範囲内となるように光の照射を行ってもよい。この場合、接合対象W1又はW2として、各キャビティ3の内圧を測定するための内圧測定回路(センサや配線を含む)を基板などの基材に作り込んだものが用いられる。
【0052】
この内圧測定回路は、製造される各デバイスに残存することになる。具体例として、製造方法に切断ステップS3が含まれている場合には、内圧測定回路は、接合対象W1及びW2と共に切断されて部分的に各デバイスに残存することになる。この場合、内圧測定回路は、切断ステップS3の実行後には各デバイスでは何ら回路として機能しなくなるものに限らず、切断ステップS3の実行後においても各デバイスにて内圧測定回路として機能するように作り込まれててもよい。他の具体例として、製造方法に切断ステップS3が含まれていない場合には、内圧測定回路は、そのままデバイスに残存することなる。尚、内圧測定回路は、切断ステップS3での切断加工で各デバイスから完全に分離して除去できるように作り込まれてもよい。
【0053】
このような第2変形例によれば、キャビティ3の内圧を、当該キャビティ3に封止される要素4に適した値に精度良く調整することが可能になる。このとき、全てのキャビティ3の内圧を同じ照射条件で一律に調整してもよいし、以下のようにそれぞれに適した照射条件で個別に調整してもよい。
【0054】
具体的には、内圧調整ステップS2において、複数のキャビティ3についてそれぞれの内圧を測定し、当該複数のキャビティ3のうちの内圧の測定値が所定範囲外であったものを対象キャビティ3tとする。そして、当該対象キャビティ3t内の内圧調整材5だけに光の照射(当該内圧調整材5としてガス吸着材51及びガス発生材52の両方が封止されている場合には、それらに対する選択的な光の照射。即ち、ガス吸着材51及びガス発生材52の選択的な利用)を行うことにより、当該対象キャビティ3tの内圧を所定範囲内となるように個別に調整してもよい。より具体的には、対象キャビティ3tごとに、内圧を測定値から所定範囲内へ変化させることができる照射条件を求め、その照射条件で内圧調整材5への光の照射を行うことができる。
【0055】
これにより、全てのキャビティ3の内圧を所定範囲内に収めることが可能になる。従って、キャビティ3の内圧についてのデバイス間のバラツキを小さくすることができ、その結果として、デバイス性能のバラツキを小さくすることが可能になる。
【0056】
また、上述した第2変形例の方法(内圧の測定値を用いる方法)を第1変形例に適用することにより、キャビティ3の内圧を所定範囲内に収めることが容易になる。具体的には、内圧の測定値が所定範囲の上限値より高かった場合において、ガス吸着材51への光の照射によりキャビティ3の内圧を低下させた場合、その結果として、キャビティ3の内圧が所定範囲を通り越して下限値より低くなってしまうといった事態が起こり得る。このような事態が起きた場合でも、第1変形例によれば、ガス吸着材51に代えてガス発生材52を光の照射対象として選択することにより、再び所定範囲内へ向けた内圧の調整が可能になる。また、内圧の測定値が所定範囲の下限値より低かった場合において、ガス発生材52への光の照射によりキャビティ3の内圧を上昇させた場合、その結果として、キャビティ3の内圧が所定範囲を通り越して上限値より高くなってしまうといった事態が起こり得る。このような事態が起きた場合でも、第1変形例によれば、ガス発生材52に代えてガス吸着材51を光の照射対象として選択することにより、再び所定範囲内へ向けた内圧の調整が可能になる。
【0057】
[3-3]第3変形例
[3-3-1]デバイスの構成
図7(A)は、第3変形例に係る製造方法によって製造されるデバイスの一例を概念的に示した断面図である。
図7(B)は、蓋部2を除いて示したデバイスの平面図であり、
図7(A)は、
図7(B)に示されるVIIA-VIIA線での断面図である。
【0058】
第3変形例では、デバイスは、キャビティ3を複数備えている。具体的には、このデバイスは、ベース部1と蓋部2との接合によって互いに独立に密閉された複数のキャビティ3を備えている。そして、各キャビティ3内に、1つ又は複数の要素4が封止されている。ここで本変形例では、デバイスに搭載する複数の要素4が、それらに必要とされる内圧に応じて幾つかのグループに振り分けられている。一例として、複数の要素4のうちの、必要とされる内圧の許容範囲が重なっているものを1つのグループに纏めることにより、当該複数の要素4を幾つかのグループに振り分けることができる。そして、それらのグループに1対1で対応させてキャビティ3が設けられている。換言すれば、グループごとに要素4に適した内圧に調整することが可能となるように、各グループに対応させてキャビティ3が設けられている。
【0059】
図7(B)の例では、デバイスは4つの要素4A~4Dを備えている。具体例として、要素4Aは加速度センサ、要素4Bはジャイロセンサ、要素4CはLSI、要素4Dは圧力センサである。ここで、加速度センサは、内圧が適度に低い値になっている場合に高い性能を発揮することができる。また、ジャイロセンサは、内圧ができるだけ低い値になっている場合に高い性能を発揮することができる。一方、LSI及び圧力センサは、内圧が大気圧のままであっても十分に高い性能を発揮することができる。そこで
図7(B)の例では、要素4AをグループG1、要素4BをグループG2、要素4C及び4DをグループG3として、それらのグループG1~G3に1対1で対応させて3つのキャビティ31~33が設けられている。
【0060】
また本変形例では、複数のキャビティ3のうちの少なくとも1つのキャビティ3が対象キャビティ3tとされる。ここで、対象キャビティ3tは、当該複数のキャビティ3のうちの内圧の調整(封止された要素4の性能を高めるための内圧の調整)が必要なキャビティ3である。そして、当該対象キャビティ3t内には、内圧調整材5が更に封止されている。具体的には、ガス吸着材51及びガス発生材52の少なくとも何れか一方が、内圧調整材5として、対象キャビティ3t内に封止される。また、対象キャビティ3tが複数ある場合には、対象キャビティ3tごとに、その対象キャビティ3tに封止される要素4が必要とする内圧に応じて、ガス吸着材51及びガス発生材52の少なくとも何れか一方が、内圧調整材5として、当該対象キャビティ3t内に封止される。
【0061】
図7(B)の例では、内圧の調整が必要な2つのキャビティ31及び32内の何れにもガス吸着材51だけが封止された場合が示されている。
【0062】
[3-3-2]デバイスの製造方法
図8は、第3変形例に係る製造方法を処理順に示した概念図である。
図8の例では、
図7(A)及び
図7(B)に示されたデバイスを複数纏めて製造する場合の製造方法が示されている。この製造方法では、接合ステップS1、内圧調整ステップS2、及び切断ステップS3が、この順に実行される。以下、各ステップについて具体的に説明する。尚、この製造方法は、デバイスを1つだけ製造する場合にも適用できる。その場合、切断ステップS3は省略することができる。
【0063】
<接合ステップS1>
接合ステップS1では、2つの接合対象W1及びW2を接合する。ここで、接合対象W1は、基板などの基材で構成されており、切断によって個片化されることでベース部1となる領域R1を複数含んでいる。そして、各領域R1には、キャビティ31~33となる3つの窪み101~103(但し、
図8には、窪み103は現れていない)が設けられている。また、接合対象W2は、基板などの基材で構成されており、接合対象W1の切断によって当該接合対象W1と共に個片化されることで蓋部2になる。
【0064】
具体的な構成として、接合ステップS1では、先ず、各領域R1において、キャビティ31~33となる3つの窪み101~103内の所定位置(例えば、その領域R1に形成されている電子回路に正しく接続されることになる位置)に、当該キャビティ31~33に対応したグループG1~G3内の要素4をそれぞれ設置する(ステップS11)。より具体的には、窪み101内の所定位置に要素4A(例えば、加速度センサ)、窪み102内の所定位置に要素4B(例えば、ジャイロセンサ)、窪み103内の2つの所定位置に要素4C及び4B(例えば、LSI及び圧力センサ)をそれぞれ設置する。
【0065】
更に、ステップS11では、各領域R1に設けられた3つの窪み101~103のうちの対象キャビティ3tとなる窪み10(
図8の例では、窪み101及び102)内において、要素4の設置位置(上記所定位置)とは異なる位置に内圧調整材5(
図8の例では、窪み101及び102の何れに対してもガス吸着材51)を設置する。
【0066】
その後、2つの接合対象W1及びW2を接合して全ての窪み10を接合対象W2で塞ぐことにより、各領域R1において、互いに独立に密閉された3つのキャビティ31~33を形成すると共に、当該キャビティ31~33内のそれぞれに各種要素4を封止し、且つ、そのうちの対象キャビティ3t(
図8の例では、キャビティ31及び32)内には内圧調整材5をも封止する(ステップS12)。
【0067】
<内圧調整ステップS2>
内圧調整ステップS2では、対象キャビティ3tごとに、当該対象キャビティ3t内の内圧調整材5(
図8の例では、ガス吸着材51)に光を照射することによって内圧を調整する。具体的には、各対象キャビティ3t内のガス吸着材51にレーザ光を照射することによって内圧を調整する。ここで、対象キャビティ3t(
図8の例では、キャビティ31及び32)は、互いに独立に密閉され、且つ、他のキャビティ3とも独立に密閉されている。このため、対象キャビティ3tの内圧を個別に調整することができる。
【0068】
具体的には、対象キャビティ3tごとに、当該対象キャビティ3tに封止する要素4(センサなど)に適した内圧へ変化させるためのレーザ光の照射条件(出力、照射時間、ガス吸着材51における照射範囲など)を求め、その照射条件でガス吸着材51へのレーザ光の照射を行うことができる。換言すれば、対象キャビティ3tごとにレーザ光の照射条件を適宜調整することにより、対象キャビティ3tごとにガス吸着材51に吸着させるガスの量を調整することができ、その結果として、対象キャビティ3tごとに内圧を調整することができる。従って、各対象キャビティ3tの内圧を、当該対象キャビティ3t内に封止する要素4に適した内圧となるように精度良く調整することができる。
【0069】
このように、本変形例の製造方法によれば、1つのデバイスにおいて異なる要素4を別々のキャビティ3(対象キャビティ3tを含む)に封止すると共に、当該キャビティ3ごとに、そのキャビティ3に封止する要素4に適した内圧に調整することができる。従って、内圧によって性能が左右される複数種の要素4を1つのデバイスに搭載することが可能になる。
【0070】
尚、内圧調整ステップS2では、レーザ光に代えて、フラッシュランプ(例えば、面発光のフラッシュランプ)の光をガス吸着材51に照射してもよい。この場合、フラッシュランプの光を選択的に遮断できるマスクを用いることにより、ガス吸着材51に照射する光だけを取り出すことができる。
【0071】
<切断ステップS3>
切断ステップS3では、2つの接合対象W1及びW2に切断加工を施すことにより、接合対象W1が含む複数の領域R1をそれぞれ個片化する(不図示)。具体的には、複数の領域R1を区分けする境界線Lr(
図8の内圧調整ステップS2参照)に沿って2つの接合対象W1及びW2を切断することにより、当該複数の領域R1をそれぞれ個片化する。このときの切断方法には、ブレードダイシング法、プラズマエッチング法、レーザアブレーション法などを用いることができる。これにより、複数のキャビティ3内に要素4が封止されたデバイスが製造される。また本変形例では、各キャビティ3の内圧が要素4に適した値に精度良く制御されたデバイスが得られる。
【0072】
尚、上述した本変形例の製造方法は、
図7(A)及び
図7(B)に例示した構成を備えたデバイスを製造する場合に限らず、各部構成が変更されたデバイス(具体的には、キャビティ3の数、対象キャビティ3tの数、及びそれらのキャビティ3に封止する要素4の種類(当該要素4のグループ化の方法を含む)などの構成が変更されたデバイス)を製造する場合にも適用できる。
【0073】
更に、各対象キャビティ3t内には、内圧調整材5としてガス吸着材51が封止される場合に限らず、当該対象キャビティ3t内に封止される要素4が必要とする内圧に応じて、第2実施形態のようにガス吸着材51に代えてガス発生材52が封止されてもよい。
【0074】
また、各対象キャビティ3t内には、第2変形例のようにガス吸着材51及びガス発生材52の両方が封止されてもよい。これにより、各対象キャビティ3tの内圧を、当該対象キャビティ3t内に封止される要素4に適した値に精度良く調整することが容易になる。
【0075】
[3-4]他の変形例
内圧調整材5への照射に用いる光は、接合対象W1又はW2を透過することができ、且つ、内圧調整材5への照射によって当該内圧調整材5を加熱することができるものであれば、レーザ光やフラッシュランプの光以外の光に適宜変更されてもよい。
【0076】
また、内圧調整材5の材料や当該内圧調整材5への照射に用いる光は、光の照射による加熱でガスを吸着又は発生させるものに限らず、加熱を伴わずガスを吸着又は発生させることができるもの(例えば、アブレーションのような現象を生じさせるものなど)に適宜変更されてもよい。
【0077】
上述の実施形態及び変形例の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態や変形例ではなく、特許請求の範囲によって示される。更に、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0078】
また、上述の実施形態や変形例からは、発明の対象として、デバイスの製造方法を構成する幾つかのステップが部分的に抽出されてもよいし、各ステップが個々に抽出されてもよい。また、発明の対象として、上述の実施形態や変形例を選択的に組み合わせたものが抽出されてもよい。
【符号の説明】
【0079】
1 ベース部
2 蓋部
3 キャビティ
3t 対象キャビティ
4 要素
4A、4B、4C、4D 要素
5 内圧調整材
10 窪み
31、32、33 キャビティ
51 ガス吸着材
52 ガス発生材
G1、G2、G3 グループ
Lr 境界線
R1 領域
S1 接合ステップ
S2 内圧調整ステップ
S3 切断ステップ
W1、W2 接合対象
101、102、103 窪み