(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024012663
(43)【公開日】2024-01-30
(54)【発明の名称】定着装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20240123BHJP
【FI】
G03G15/20 555
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023197441
(22)【出願日】2023-11-21
(62)【分割の表示】P 2019199884の分割
【原出願日】2019-11-01
(71)【出願人】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菊地 和彦
(57)【要約】
【課題】ヒータと定着フィルムとの間で熱交換を行う熱伝導部材を備えた加熱定着装置において、定着フィルムの温度をより効率よく制御することができる定着装置を提供することである。
【解決手段】実施形態の定着装置は、定着部材と、ヒータと、ヒータ温度計と、第1の熱伝導部材と、を持つ。定着部材は、記録媒体を加熱し記録材を定着させる。ヒータは、前記定着部材を加熱する。ヒータ温度計は、前記ヒータの温度を検知する。第1の熱伝導部材は、前記ヒータ温度計が検知する温度が第1の温度である場合に、前記ヒータに接し、且つ前記定着部材から離間した第1の状態をとり、前記ヒータ温度計が検知する温度が前記第1の温度より高い第2の温度である場合に、前記ヒータに接し、且つ前記定着部材に当接した第2の状態をとる。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体を加熱し記録材を定着させる定着部材と、
前記定着部材を加熱するヒータと、
前記ヒータの温度を検知するヒータ温度計と、
前記ヒータ温度計が検知する温度が第1の温度である場合に、前記ヒータに接し、且つ前記定着部材から離間した第1の状態をとり、前記ヒータ温度計が検知する温度が前記第1の温度より高い第2の温度である場合に、前記ヒータに接し、且つ前記定着部材に当接した第2の状態をとる第1の熱伝導部材と、
を備える定着装置。
【請求項2】
前記ヒータは、発熱するヒータユニットを備え、
前記ヒータユニットは、発熱体が配置される基板を備え、
前記第1の熱伝導部材は、前記基板と前記定着部材とのいずれよりも熱伝導率が高い、
請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記ヒータは、発熱するヒータユニットと、前記ヒータユニットと接する第2の熱伝導部材と、を備え、
前記ヒータ温度計は、前記第2の熱伝導部材の温度を検知する、
請求項1に記載の定着装置。
【請求項4】
前記ヒータユニットは、発熱体が配置される基板を備え、
前記第1の熱伝導部材と前記第2の熱伝導部材とは、前記基板と前記定着部材とのいずれよりも熱伝導率が高い、
請求項3に記載の定着装置。
【請求項5】
前記第1の熱伝導部材と前記第2の熱伝導部材とは、前記基板よりも熱伝導率が高く、
前記基板は前記定着部材よりも熱伝導率が高い、
請求項4に記載の定着装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、定着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フィルム状の定着ベルト(以下「定着フィルム」という。)を用いた、いわゆるオンデマンド加熱定着装置(以下「定着装置」という。)によって記録媒体に記録材を定着させる画像形成装置が開発されている。このような定着装置では、ヒータ基材の定着フィルムとの接触面とは反対側に熱伝導性の高い部材(以下「熱伝導部材」という。)を配置される場合がある。この場合、熱伝導部材は、その一部が定着フィルムに接触するように配置される。このような構成によれば、熱伝導部材を介して検知される記録媒体の温度変化に基づいてヒータの温度制御を行うことで、画像形成処理の生産性を向上させることができる。また、このような構成によれば、ヒータの熱が熱伝導部材に分散することにより、ヒータ基材の過度な昇温を抑制することができる。さらに、このような構成によれば、ヒータから定着フィルムとの接触面とは反対側に発散する熱を定着フィルムの加熱に利用することができる。
【0003】
しかしながら、このような定着装置では熱容量の大きい部材が熱伝導部材として用いられることが多く、熱伝導部材の温度を上昇させるのに時間がかかる。そして、熱伝導部材の温度が所定の温度に上昇するまでの間には定着フィルムの熱が熱伝導部材に奪われることになり、定着フィルムの加熱が阻害される。このため、従来の定着装置では、熱伝導部材の温度が低い状態から、画像形成処理を実行可能な状態に遷移させるまでに多くの時間が費やされてしまう可能性があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-187599号公報
【特許文献2】特開2016-057388号公報
【特許文献3】特開2017-142428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、ヒータと定着フィルムとの間で熱交換を行う熱伝導部材を備えた加熱定着装置において、定着フィルムの温度をより効率よく制御することができる定着装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の定着装置は、定着部材と、ヒータと、ヒータ温度計と、第1の熱伝導部材と、を持つ。定着部材は、記録媒体を加熱し記録材を定着させる。ヒータは、前記定着部材を加熱する。ヒータ温度計は、前記ヒータの温度を検知する。第1の熱伝導部材は、前記ヒータ温度計が検知する温度が第1の温度である場合に、前記ヒータに接し、且つ前記定着部材から離間した第1の状態をとり、前記ヒータ温度計が検知する温度が前記第1の温度より高い第2の温度である場合に、前記ヒータに接し、且つ前記定着部材に当接した第2の状態をとる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1の実施形態の画像形成装置の構成の概略を示す図。
【
図2】第1の実施形態の画像形成装置のハードウェア構成の具体例を示す図。
【
図4】第1の実施形態のヒータユニットの正面断面図。
【
図6】第1の実施形態の熱伝導部材、ヒータユニット、筒状ベルトの正面断面図。
【
図7】第1の実施形態のヒータ温度計及びサーモスタットの平面図。
【
図8】第1の実施形態の加熱装置の電気回路図である。
【
図9】第1の実施形態の定着装置の詳細な構成例を示す図。
【
図10】第1の実施形態における状態制御処理の流れを示すフローチャート。
【
図11】第2の実施形態における状態制御処理の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態の定着装置を、図面を参照して説明する。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態の画像形成装置の構成の概略を示す図である。第1の実施形態の画像形成装置100は、例えば複合機である。画像形成装置100は、ハウジング10と、ディスプレイ1と、スキャナ部2と、画像形成ユニット3と、シート供給部4と、搬送部5と、排紙トレイ7と、反転ユニット9と、コントロールパネル8と、制御部6と、を備える。なお、画像形成ユニット3は、トナー像を定着させる装置であってもよいし、インクジェット式の装置であってもよい。
【0010】
画像形成装置100は、トナー等の現像剤を用いてシートS上に画像を形成する。シートSは、例えば紙やラベル用紙である。シートSは、その表面に画像形成装置100が画像を形成できる物であればどのような物であってもよい。
【0011】
ハウジング10は、画像形成装置100の外形を形成する。ディスプレイ1は、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等の画像表示装置である。ディスプレイ1は、画像形成装置100に関する種々の情報を表示する。
【0012】
スキャナ部2は、読み取り対象の画像情報を光の明暗として読み取る。スキャナ部2は、読み取られた画像情報を記録する。スキャナ部2は、生成した画像情報を画像形成ユニット3に出力する。なお、記録された画像情報は、ネットワークを介して他の情報処理装置に送信されてもよい。
【0013】
画像形成ユニット3は、スキャナ部2から受信した画像情報又は外部から受信した画像情報に基づいて、トナー等の記録剤により出力画像(以下、トナー像という)を形成する。画像形成ユニット3は、トナー像をシートSの表面上に転写する。画像形成ユニット3は、シートSの表面上のトナー像を加熱及び加圧して、トナー像をシートSに定着させる。画像形成ユニット3の詳細は後述される。なお、シートSは、シート供給部4によって供給されるシートであってもよいし、手指しされたシートであってもよい。
【0014】
シート供給部4は、画像形成ユニット3がトナー像を形成するタイミングに合わせて、シートSを1枚ずつ搬送部5に供給する。シート供給部4は、シート収容部20と、ピックアップローラ21と、を備える。
【0015】
シート収容部20は、所定のサイズ及び種類のシートSを収納する。ピックアップローラ21は、シート収容部20からシートSを1枚ずつ取り出す。ピックアップローラ21は、取り出したシートSを搬送部5へ供給する。
【0016】
搬送部5は、シート供給部4から供給されるシートSを画像形成ユニット3に搬送する。搬送部5は、搬送ローラ23と、レジストローラ24と、を備える。搬送ローラ23は、ピックアップローラ21から供給されるシートSをレジストローラ24へ搬送する。搬送ローラ23は、シートSの搬送方向の先端をレジストローラ24のニップNに突き当てる。
【0017】
レジストローラ24は、ニップNにおいてシートSを撓ませることにより、搬送方向でのシートSの先端の位置を整える。レジストローラ24は、画像形成ユニット3がトナー像をシートSに転写するタイミングに応じてシートSを搬送する。
【0018】
画像形成ユニット3について説明する。画像形成ユニット3は、複数の画像形成部25と、レーザ走査ユニット26と、中間転写ベルト27と、転写部28と、定着装置30と、を備える。画像形成部25は、感光体ドラム25dを備える。画像形成部25は、スキャナ部2又は外部からの画像情報に応じたトナー像を感光体ドラム25dに形成する。複数の画像形成部25Y,25M,25C,25Kは、それぞれイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのトナーによるトナー像を形成する。
【0019】
感光体ドラム25dの周囲には、帯電器、現像器などが配置される。帯電器は、感光体ドラム25dの表面を帯電させる。現像器は、イエロー、マゼンタ、シアン、及びブラックのトナーを含む現像剤を収容する。現像器は、感光体ドラム25d上の静電潜像を現像する。この結果、感光体ドラム25d上には、各色のトナーによるトナー像が形成される。
【0020】
レーザ走査ユニット26は、帯電した感光体ドラム25dにレーザ光Lを走査して感光体ドラム25dを露光する。レーザ走査ユニット26は、各色の画像形成部25Y,25M,25C,25Kの感光体ドラム25dを、各別のレーザ光LY,LM,LC,LKで露光する。これによりレーザ走査ユニット26は、感光体ドラム25dに静電潜像を形成する。
【0021】
中間転写ベルト27には、感光体ドラム25dの表面のトナー像が1次転写される。転写部28は、中間転写ベルト27上に1次転写されたトナー像を2次転写位置においてシートSの表面上に転写する。定着装置30は、シートSに転写されたトナー像を加熱及び加圧して、トナー像をシートSに定着させる。定着装置30の詳細は後述される。
【0022】
反転ユニット9は、シートSの裏面に画像を形成するためシートSを反転させる。反転ユニット9は、定着装置30から排出されるシートSを、スイッチバックにより表裏反転させる。反転ユニット9は、反転したシートSをレジストローラ24に向けて搬送する。
【0023】
排紙トレイ7は、画像が形成されて排出されたシートSを載置する。コントロールパネル8は、複数のボタンを備える。コントロールパネル8は、ユーザの操作を受け付ける。コントロールパネル8は、ユーザによって行われた操作に応じた信号を、画像形成装置100の制御部6に出力する。なお、ディスプレイ1とコントロールパネル8とは一体のタッチパネルとして構成されてもよい。制御部6は、画像形成装置100の各部の制御を行う。制御部6の詳細は後述される。
【0024】
図2は、第1の実施形態の画像形成装置100のハードウェア構成の具体例を示す図である。画像形成装置100は、バスで接続されたCPU(Central Processing Unit)91、メモリ92、補助記憶装置93などを備え、プログラムを実行する。画像形成装置100は、プログラムの実行によってスキャナ部2、画像形成ユニット3、シート供給部4、搬送部5、反転ユニット9、コントロールパネル8、通信部90を備える装置として機能する。なお、画像形成装置100の各機能の全て又は一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やPLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されてもよい。プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置である。プログラムは、電気通信回線を介して送信されてもよい。
【0025】
CPU91は、メモリ92及び補助記憶装置93に記憶されたプログラムを実行することによって制御部6として機能する。制御部6は、画像形成装置100の各機能部の動作を制御する。補助記憶装置93は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置などの記憶装置を用いて構成される。補助記憶装置93は、画像形成装置100に関する各種情報を記憶する。通信部90は、自装置を外部装置に接続するための通信インタフェースを含んで構成される。通信部90は、通信インタフェースを介して外部装置と通信する。
【0026】
定着装置30について詳しく説明する。
図3は、第1の実施形態の加熱装置の正面断面図である。第1の実施形態の加熱装置は、定着装置30である。定着装置30は、加圧ローラ30pと、フィルムユニット30hと、を備える。
【0027】
加圧ローラ30pは、フィルムユニット30hとの間でニップNを形成する。加圧ローラ30pは、ニップNに進入したシートSのトナー像tを加圧する。加圧ローラ30pは、自転してシートSを搬送する。加圧ローラ30pは、芯金32と、弾性層33と、離型層34と、を備える。このように、加圧ローラ30pは、定着フィルム35に表面を押圧可能であって回転駆動可能である。
【0028】
芯金32は、ステンレス等の金属材料により円柱状に形成される。芯金32の軸方向の両端部は、回転可能に支持される。芯金32は、モータ(不図示)により回転駆動される。芯金32は、カム部材(不図示)に当接する。カム部材は、回転することにより、芯金32をフィルムユニット30hに対して接近及び離反させる。
【0029】
弾性層33は、シリコーンゴム等の弾性材料で形成される。弾性層33は、芯金32の外周面上に一定の厚さで形成される。離型層34は、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)などの樹脂材料で形成される。離型層は、弾性層33の外周面上に形成される。加圧ローラ30pの外周面の硬度は、ASKER-C硬度計で9.8Nの荷重において、40°~70°であることが望ましい。これにより、ニップNの面積と加圧ローラ30pの耐久性が確保される。
【0030】
加圧ローラ30pは、カム部材の回転によりフィルムユニット30hに対して接近及び離反することが可能である。加圧ローラ30pをフィルムユニット30hに接近させ、加圧バネにより押圧すると、ニップNが形成される。一方、定着装置30でシートSのジャムが発生した場合において、加圧ローラ30pをフィルムユニット30hから離反させることにより、シートSを取り除くことができる。また、スリープ時など定着フィルム35が回転停止している状態において、加圧ローラ30pをフィルムユニット30hから離反させることにより、定着フィルム35の塑性変形が防止される。
【0031】
加圧ローラ30pは、モータにより回転駆動される。ニップNが形成された状態で加圧ローラ30pが回転すると、フィルムユニット30hの定着フィルム35が従動回転する。加圧ローラ30pは、ニップNにシートSが配置された状態で回転することにより、シートSを搬送方向Wに搬送する。
【0032】
フィルムユニット30hは、ニップNに進入したシートSのトナー像tを加熱する。フィルムユニット30hは、定着フィルム35と、ヒータユニット40と、熱伝導部材49と、支持部材36と、ステイ38と、ヒータ温度計62と、サーモスタット68と、フィルム温度計64と、を備える。
【0033】
定着フィルム35は、筒状に形成される。定着フィルム35は、内周側から順に、基層と、弾性層と、離型層と、を備える。基層は、ニッケル(Ni)等の材料により筒状に形成される。弾性層は、基層の外周面上に積層配置される。弾性層は、シリコーンゴム等の弾性材料で形成される。離型層は、弾性層の外周面上に積層配置される。離型層は、PFA樹脂などの材料で形成される。
【0034】
図4は、
図5のIV-IV線におけるヒータユニットの正面断面図である。
図5は、ヒータユニットの底面図(+z方向から見た図)である。ヒータユニット40は、基板(発熱体基板)41と、発熱体セット45と、配線セット55と、を備える。
【0035】
基板41は、ステンレス等の金属材料又は窒化アルミニウム等のセラミック材料などで形成される。基板41は、長細い長方形の板状に形成される。基板41は、定着フィルム35の径方向の内側に配置される。基板41は、定着フィルム35の軸方向を長手方向とする。
【0036】
本願において、x方向、y方向及びz方向が以下のように定義される。y方向は基板41の長手方向である。y方向は、定着フィルム35の幅方向に平行である。後述されるように、+y方向は中央部発熱体45aから第1端部発熱体45b1に向かう方向である。x方向は基板41の短手方向であり、+x方向はシートSの搬送方向(下流側の方向)である。z方向は基板41の法線方向であり、+z方向は基板41に対して発熱体セット45が配置される方向である。基板41の+z方向の面には、ガラス材料等により絶縁層43が形成される。
【0037】
発熱体セット45は、基板41に配置される。発熱体セット45は、
図4に示されるように、絶縁層43の+z方向の面に形成される。発熱体セット45は、TCR(抵抗温度係数)材により形成される。例えば、発熱体セット45は、銀・パラジウム合金等により形成される。発熱体セット45の外形は、y方向を長手方向とし、x方向を短手方向とする長方形状に形成される。
【0038】
図5に示されるように、発熱体セット45は、y方向に並んで配置された、第1端部発熱体45b1と、中央部発熱体45aと、第2端部発熱体45b2と、を備える。中央部発熱体45aは、発熱体セット45のy方向の中央部に配置される。中央部発熱体45aは、y方向に並んで配置される複数の小発熱体を組み合わせて構成されてもよい。第1端部発熱体45b1は、中央部発熱体45aの+y方向であって、発熱体セット45の+y方向の端部に配置される。第2端部発熱体45b2は、中央部発熱体45aの-y方向であって、発熱体セット45の-y方向の端部に配置される。中央部発熱体45aと第1端部発熱体45b1との境界線は、x方向と平行に配置されてもよく、x方向と交差して配置されてもよい。中央部発熱体45aと第2端部発熱体45b2との境界線についても同様である。
【0039】
発熱体セット45は、通電により発熱する。中央部発熱体45aの電気抵抗値は、第1端部発熱体45b1及び第2端部発熱体45b2の電気抵抗値より小さい。y方向の幅が小さいシートSは、定着装置30のy方向の中央部を通過する。この場合に制御部6は、中央部発熱体45aのみを発熱させる。一方で制御部6は、y方向の幅が大きいシートSの場合に、発熱体セット45の全体を発熱させる。そのため、中央部発熱体45aと、第1端部発熱体45b1及び第2端部発熱体45b2とは、相互に独立して発熱を制御される。また第1端部発熱体45b1及び第2端部発熱体45b2は、同様に発熱を制御される。
【0040】
配線セット55は、銀等の金属材料で形成される。配線セット55は、中央部接点52aと、中央部配線53aと、端部接点52bと、第1端部配線53b1と、第2端部配線53b2と、共通接点58と、共通配線57と、を備える。
【0041】
中央部接点52aは、発熱体セット45の-y方向に配置される。中央部配線53aは、発熱体セット45の+x方向に配置される。中央部配線53aは、中央部発熱体45aの+x方向の端辺と、中央部接点52aとを接続する。
【0042】
端部接点52bは、中央部接点52aの-y方向に配置される。第1端部配線53b1は、発熱体セット45の+x方向であって、中央部配線53aの+x方向に配置される。第1端部配線53b1は、第1端部発熱体45b1の+x方向の端辺と、端部接点52bの+x方向の端部とを接続する。第2端部配線53b2は、発熱体セット45の+x方向であって、中央部配線53aの-x方向に配置される。第2端部配線53b2は、第2端部発熱体45b2の+x方向の端辺と、端部接点52bの-x方向の端部とを接続する。
【0043】
共通接点58は、発熱体セット45の+y方向に配置される。共通配線57は、発熱体セット45の-x方向に配置される。共通配線57は、中央部発熱体45a、第1端部発熱体45b1及び第2端部発熱体45b2の-x方向の端辺と、共通接点58とを接続する。
【0044】
このように、発熱体セット45の+x方向には、第2端部配線53b2、中央部配線53a及び第1端部配線53b1が配置される。これに対して、発熱体セット45の-x方向には、共通配線57のみが配置される。そのため、発熱体セット45のx方向の中心45cは、基板41のx方向の中心41cより、-x方向に配置される。
【0045】
図3に示されるように、加圧ローラ30pの中心pcとフィルムユニット30hの中心hcとを結ぶ直線CLが定義される。基板41のx方向の中心41cは、直線CLより、+x方向に配置される。これにより、ニップNの+x方向に基板41が伸びるため、ニップNを通過したシートSがフィルムユニット30hから容易に剥離される。
発熱体セット45のx方向の中心45cは、直線CL上に配置される。発熱体セット45は、全体がニップNの領域内に含まれて、ニップNの中心に配置される。これにより、ニップNの熱分布が均等になり、ニップNを通過するシートSが均等に加熱される。
【0046】
図4に示されるように、絶縁層43の+z方向の面に、発熱体セット45及び配線セット55が形成される。発熱体セット45及び配線セット55を覆うように、ガラス材料等により保護層46が形成される。保護層46は、ヒータユニット40と定着フィルム35との摺動性を向上させる。
【0047】
図3に示されるように、ヒータユニット40は、定着フィルム35の内側に配置される。定着フィルム35の内周面には潤滑剤(不図示)が塗布されている。ヒータユニット40は、潤滑剤を介して定着フィルム35の内周面に接触する。ヒータユニット40が発熱すると、潤滑剤の粘度が低下する。これにより、ヒータユニット40と定着フィルム35との摺動性が確保される。このように、定着フィルム35は、一方の面でヒータユニット40に接触しながらヒータユニット40の表面を摺動する帯状の薄膜である。
【0048】
熱伝導部材49は、銅などの熱伝導率の高い金属材料により形成される。熱伝導部材49の外形は、ヒータユニット40の基板41の外形と同等である。熱伝導部材49は、ヒータユニット40の-z方向の面に接触して配置される。
【0049】
支持部材36は、液晶ポリマーなどの樹脂材料により形成される。支持部材36は、ヒータユニット40の-z方向と、x方向の両側とを覆うように配置される。支持部材36は、熱伝導部材49を介してヒータユニット40を支持する。支持部材36のx方向の両端部には丸面取りが形成される。支持部材36は、ヒータユニット40のx方向の両端部において、定着フィルム35の内周面を支持する。
【0050】
定着装置30を通過するシートSが加熱されるとき、シートSのサイズに応じてヒータユニット40に温度分布が発生する。ヒータユニット40が局所的に高温になると、その温度は、樹脂材料で形成される支持部材36の耐熱温度を上回る可能性がある。熱伝導部材49は、ヒータユニット40の温度分布を平均化させる。これにより、支持部材36の耐熱性が確保される。
【0051】
図6は、熱伝導部材、ヒータユニット、及び筒状ベルトの正面断面図である。熱伝導部材49は、ヒータユニット40の定着フィルム35とは接触しないほうの面に配置されている。また、熱伝導部材49は、ヒータユニット40における発熱分布がピークとなる位置で当該ヒータユニット40に接触しないように構成されている。具体的には、
図6に示すように、ヒータユニット40と熱伝導部材49とは、a1及びa2の領域で接している。そして、非接触の部分は、熱伝導部材49の溝部を形成している。溝部の幅は、ヒータユニット40の発熱体セット45の幅に対して、それぞれ長さd1及び長さd2だけ広く設定されている。例えば、ヒータユニット40の発熱体セット45の幅は、4.5~4.9[mm]であり、上記溝部の幅は5[mm]程度である。
【0052】
図3に示されるステイ38は、鋼板材料等により形成される。ステイ38のy方向に垂直な断面はU字状に形成される。ステイ38は、U字の開口部を支持部材36で塞ぐように、支持部材36の-z方向に装着される。ステイ38はy方向に伸びる。ステイ38のy方向の両端部は、画像形成装置100のハウジングに固定される。これにより、フィルムユニット30hが画像形成装置100に支持される。ステイ38は、フィルムユニット30hの曲げ剛性を向上させる。ステイ38のy方向の両端部付近には、定着フィルム35のy方向への移動を規制するフランジ31が装着される。
【0053】
ヒータ温度計62は、熱伝導部材49を挟んでヒータユニット40の-z方向に配置される。例えば、ヒータ温度計62はサーミスタである。ヒータ温度計62は、支持部材36の-z方向の面に装着されて支持される。ヒータ温度計62の感温素子は、支持部材36をz方向に貫通する孔を通って、熱伝導部材49に接触する。ヒータ温度計62は、熱伝導部材49を介してヒータユニット40の温度を測定する。
【0054】
サーモスタット68は、ヒータ温度計62と同様に配置される。サーモスタット68は、後述される電気回路に組み込まれる。サーモスタット68は、熱伝導部材49を介して検知したヒータユニット40の温度が所定温度を超えた場合に、発熱体セット45への通電を遮断する。
【0055】
図7は、ヒータ温度計及びサーモスタットの平面図(-z方向から見た図)である。
図7では、支持部材36の記載は省略されている。なお、ヒータ温度計62、サーモスタット68及びフィルム温度計64の配置に関する以下の説明は、それぞれの感温素子の配置を説明するものである。
【0056】
複数のヒータ温度計62(中央部ヒータ温度計62a,端部ヒータ温度計62b)が、y方向に並んで配置される。複数のヒータ温度計62は、発熱体セット45のy方向の範囲内に配置される。複数のヒータ温度計62は、発熱体セット45のx方向の中心に配置される。すなわちz方向から見て、複数のヒータ温度計62と発熱体セット45とは、少なくとも一部において重なる。複数のサーモスタット68(中央部サーモスタット68a,端部サーモスタット68b)についても、前述された複数のヒータ温度計62と同様に配置される。
【0057】
複数のヒータ温度計62は、中央部ヒータ温度計62aと、端部ヒータ温度計62bと、を備える。中央部ヒータ温度計62aは、中央部発熱体45aの温度を測定する。中央部ヒータ温度計62aは、中央部発熱体45aの範囲内に配置される。すなわちz方向から見て、中央部ヒータ温度計62aと中央部発熱体45aとは重なる。
【0058】
端部ヒータ温度計62bは、第2端部発熱体45b2の温度を測定する。前述されたように、第1端部発熱体45b1及び第2端部発熱体45b2は、同様に発熱を制御される。そのため、第1端部発熱体45b1の温度と第2端部発熱体45b2の温度とは同等である。端部ヒータ温度計62bは、第2端部発熱体45b2の範囲内に配置される。すなわちz方向から見て、端部ヒータ温度計62bと第2端部発熱体45b2とは重なる。
【0059】
複数のサーモスタット68は、中央部サーモスタット68aと、端部サーモスタット68bと、を備える。中央部サーモスタット68aは、中央部発熱体45aの温度が所定温度を超えた場合に、発熱体セット45への通電を遮断する。中央部サーモスタット68aは、中央部発熱体45aの範囲内に配置される。すなわちz方向から見て、中央部サーモスタット68aと中央部発熱体45aとは重なる。
【0060】
端部サーモスタット68bは、第1端部発熱体45b1の温度が所定温度を超えた場合に、発熱体セット45への通電を遮断する。前述されたように、第1端部発熱体45b1及び第2端部発熱体45b2は、同様に発熱を制御される。そのため、第1端部発熱体45b1の温度と第2端部発熱体45b2の温度とは同等である。端部サーモスタット68bは、第1端部発熱体45b1の範囲内に配置される。すなわちz方向から見て、端部サーモスタット68bと第1端部発熱体45b1とは重なる。
【0061】
以上により、中央部発熱体45aの範囲内に、中央部ヒータ温度計62a及び中央部サーモスタット68aが配置される。これにより、中央部発熱体45aの温度が測定される。また、中央部発熱体45aの温度が所定温度を超えた場合に、発熱体セット45への通電が遮断される。一方、第1端部発熱体45b1及び第2端部発熱体45b2の範囲内に、端部ヒータ温度計62b及び端部サーモスタット68bが配置される。これにより、第1端部発熱体45b1及び第2端部発熱体45b2の温度が測定される。また、第1端部発熱体45b1及び第2端部発熱体45b2の温度が所定温度を超えた場合に、発熱体セット45への通電が遮断される。
【0062】
複数のヒータ温度計62及び複数のサーモスタット68は、y方向に沿って交互に並んで配置される。前述されたように、中央部発熱体45aの+y方向に、第1端部発熱体45b1が配置される。この第1端部発熱体45b1の範囲内に、端部サーモスタット68bが配置される。中央部ヒータ温度計62aは、中央部発熱体45aのy方向の中心より+y方向に配置される。中央部サーモスタット68aは、中央部発熱体45aのy方向の中心より-y方向に配置される。前述されたように、中央部発熱体45aの-y方向に、第2端部発熱体45b2が配置される。この第2端部発熱体45b2の範囲内に、端部ヒータ温度計62bが配置される。これにより、+y方向から-y方向にかけて、端部サーモスタット68b、中央部ヒータ温度計62a、中央部サーモスタット68a及び端部ヒータ温度計62bが、この順に並んで配置される。
【0063】
一般にサーモスタット68は、温度変化に伴うバイメタルの湾曲変形を利用して、電気回路を接続及び遮断する。サーモスタットは、バイメタルの形状に合わせて長細く形成される。また、サーモスタット68の長手方向の両端部から外側に向かって端子が伸びる。この端子には、外部配線のコネクタがカシメによって接続される。そのため、サーモスタット68の長手方向の外側にスペースを確保する必要がある。定着装置30ではx方向に空間的な余裕がないため、サーモスタット68の長手方向はy方向に沿って配置される。このとき、複数のサーモスタット68をy方向に隣り合わせて配置すると、外部配線の接続スペースを確保することが困難になる。
【0064】
前述されたように、複数のヒータ温度計62及び複数のサーモスタット68は、y方向に沿って交互に並んで配置される。これにより、サーモスタット68のy方向の隣にはヒータ温度計62が配置される。そのため、サーモスタット68に対する外部配線の接続スペースを確保することができる。また、サーモスタット68及びヒータ温度計62のy方向におけるレイアウトの自由度が高まる。これにより、最適な位置にサーモスタット68及びヒータ温度計62を配置して、定着装置30の温度を制御することができる。さらに、複数のサーモスタット68に接続される交流配線と、複数のヒータ温度計62に接続される直流配線との分離が容易になる。これにより、電気回路におけるノイズの発生が抑制される。
【0065】
フィルム温度計64は、
図3に示されるように、定着フィルム35の内側であって、ヒータユニット40の+x方向に配置される。フィルム温度計64は、定着フィルム35の内周面に接触して、定着フィルム35の温度を測定する。以下、フィルム温度計64の検知温度を「第1の検知温度」という。
【0066】
図8は、第1の実施形態の加熱装置の電気回路図である。
図8には、
図5の底面図が紙面の上方に、
図8の平面図が紙面の下方に、それぞれ配置されている。また
図8には、下方の平面図の上方に、定着フィルム35の断面と共に複数のフィルム温度計64が記載されている。複数のフィルム温度計64は、中央部フィルム温度計64aと、端部フィルム温度計64bと、を備える。
【0067】
中央部フィルム温度計64aは、定着フィルム35のy方向の中央部に接触する。中央部フィルム温度計64aは、中央部発熱体45aのy方向の範囲内で、定着フィルム35に接触する。中央部フィルム温度計64aは、定着フィルム35のy方向の中央部の温度を測定する。
【0068】
端部フィルム温度計64bは、定着フィルム35の-y方向の端部に接触する。端部フィルム温度計64bは、第2端部発熱体45b2のy方向の範囲内で、定着フィルム35に接触する。端部フィルム温度計64bは、定着フィルム35の-y方向の端部の温度を測定する。前述されたように、第1端部発熱体45b1及び第2端部発熱体45b2は、同様に発熱を制御される。そのため、定着フィルム35の-y方向の端部の温度と、+y方向の端部の温度とは同等である。
【0069】
電源95は、中央部トライアック96aを介して、中央部接点52aに接続される。電源95は、端部トライアック96bを介して、端部接点52bに接続される。制御部6は、中央部トライアック96a及び端部トライアック96bのON/OFFを、相互に独立して制御する。
【0070】
制御部6が中央部トライアック96aをONにすると、電源95から中央部発熱体45aに通電される。これにより、中央部発熱体45aが発熱する。制御部6が端部トライアック96bをONにすると、電源95から第1端部発熱体45b1及び第2端部発熱体45b2に通電される。これにより、第1端部発熱体45b1及び第2端部発熱体45b2が発熱する。以上により、中央部発熱体45aと、第1端部発熱体45b1及び第2端部発熱体45b2とは、相互に独立して発熱を制御される。中央部発熱体45a、第1端部発熱体45b1及び第2端部発熱体45b2は、電源95に対して並列に接続される。
【0071】
電源95は、中央部サーモスタット68a及び端部サーモスタット68bを介して、共通接点58に接続される。中央部サーモスタット68a及び端部サーモスタット68bは、直列に接続される。中央部発熱体45aの温度が異常に上昇すると、中央部サーモスタット68aの検知温度が所定温度を超える。このとき中央部サーモスタット68aは、電源95から発熱体セット45の全体への通電を遮断する。
【0072】
第1端部発熱体45b1の温度が異常に上昇すると、端部サーモスタット68bの検知温度が所定温度を超える。このとき端部サーモスタット68bは、電源95から発熱体セット45の全体への通電を遮断する。前述されたように、第1端部発熱体45b1及び第2端部発熱体45b2は、同様に発熱を制御される。そのため、第2端部発熱体45b2の温度が異常に上昇するとき、第1端部発熱体45b1の温度も同様に上昇する。したがって、第2端部発熱体45b2の温度が異常に上昇した場合も同様に、端部サーモスタット68bは、電源95から発熱体セット45の全体への通電を遮断する。
【0073】
制御部6は、中央部ヒータ温度計62aにより、中央部発熱体45aの温度を測定する。制御部6は、端部ヒータ温度計62bにより、第2端部発熱体45b2の温度を測定する。第2端部発熱体45b2の温度は、第1端部発熱体45b1の温度と同等である。制御部6は、定着装置30の始動時(ウォーミングアップ時)及び一時休止状態(スリープ状態)からの復帰時に、ヒータ温度計62により発熱体セット45の温度を測定する。
【0074】
制御部6は、定着装置30の始動時及び一時休止状態からの復帰時に、中央部発熱体45a又は第2端部発熱体45b2の少なくとも一方の温度が所定の温度よりも低い場合に、発熱体セット45を短時間だけ発熱させる。その後に制御部6は、加圧ローラ30pの回転を開始する。発熱体セット45の発熱により、定着フィルム35の内周面に塗布された潤滑剤の粘度が低下する。これにより、加圧ローラ30pの回転開始時におけるヒータユニット40と定着フィルム35との摺動性が確保される。
【0075】
制御部6は、中央部フィルム温度計64aにより、定着フィルム35のy方向の中央部の温度を測定する。制御部6は、端部フィルム温度計64bにより、定着フィルム35の-y方向の端部の温度を測定する。定着フィルム35の-y方向の端部の温度は、定着フィルム35の+y方向の端部の温度と同等である。制御部6は、定着装置30の運転時に、定着フィルム35のy方向の中央部及び端部の温度を測定する。
【0076】
制御部6は、中央部トライアック96a及び端部トライアック96bにより、発熱体セット45に供給する電力を位相制御又は波数制御する。制御部6は、定着フィルム35のy方向の中央部の温度測定結果に基づいて、中央部発熱体45aへの通電を制御する。制御部6は、定着フィルム35のy方向の端部の温度測定結果に基づいて、第1端部発熱体45b1及び第2端部発熱体45b2への通電を制御する。
【0077】
図9は、第1の実施形態の定着装置の詳細な構成例を示す図である。第1の実施形態の定着装置30は、上記の熱伝導部材49に加え、第2の熱伝導部材71と、第2の熱伝導部材71の位置を制御するための駆動部72とを備える。以下では、第2の熱伝導部材71と区別するため、熱伝導部材49を第1の熱伝導部材49と記載する。
【0078】
例えば、第2の熱伝導部材71は、長手方向に垂直な断面の形状がコの字形である柱状部材(一般にチャンネルと呼ばれる)を用いて構成される。第2の熱伝導部材71は第1の熱伝導部材49の短手方向の一端をコの字の内側に包むように配置される。このような構成をとるため、第1の熱伝導部材49の幅はヒータユニット40の幅よりも+x方向に長くとられている。また、この場合、ニップNの幅はヒータユニット40の幅と同程度、又はそれ以下の長さにとられ、第1の熱伝導部材49の定着フィルム35との当接動作を阻害しない。第2の熱伝導部材71は、駆動部72によって
図9(A)に示す第1の状態又は
図9(B)に示す第2の状態に制御される。
【0079】
第1の状態は、第2の熱伝導部材71がコの字の内下面で第1の熱伝導部材49と当接している状態である。第2の状態は、第2の熱伝導部材71がコの字の外下面で定着フィルム35に当接しており、コの字形の内上面で第1の熱伝導部材49に当接している状態である。第2の熱伝導部材71は、第2の状態において、シートの搬送方向Wに対してニップNよりも上流側の定着フィルム35と当接するように配置される。また、第2の熱伝導部材71はヒータユニット40に接しないように配置される。
【0080】
なお、
図9では、第2の熱伝導部材71のコの字の内右面は第1の熱伝導部材49の側面に当接しないように配置されているがこれは一例である。第2の熱伝導部材71は、その上下運動が阻害されない限り、コの字の内右面が第1の熱伝導部材49に当接するように配置されてもよい。
【0081】
一方、駆動部72は、例えば回転軸72aと、回転軸72aに固定され、回転軸72aとともに回転する回転体72bとを用いて構成される。例えば回転軸72aは図示しないモータ等の回転駆動部に連結され、y軸と平行な軸を回転軸として回転する。例えばモータの駆動は制御部6によって制御される。駆動部72は回転体72bを回転軸72aとともに回転させてその位置を変化させることにより第2の熱伝導部材71を第1の状態又は第2の状態に制御する。
【0082】
例えば第1の状態では、回転体72bが第2の熱伝導部材71に接しない位置にくるように駆動部72が制御される。この場合、第2の熱伝導部材71は、図示しないバネ部材等によって-z方向に押し上げられることで第1の状態に制御される。一方、第2の状態においては、回転体72bが第2の熱伝導部材71を+z方向に押し込む位置にくるように駆動部72が制御される。
【0083】
なお、このような構成は、第2の熱伝導部材71を第1の状態又は第2の状態に制御する方法の一例である。第1の状態又は第2の状態に制御することができれば、第2の熱伝導部材71の状態の制御は他のどのような方法で実現されてもよい。例えば、駆動部72は、モータの回転運動を往復運動に変換する機構を備え、z軸方向の往復運動によって第2の熱伝導部材71の位置を変化させてもよい。
【0084】
このように構成される定着装置30は、ヒータユニット40に生じた熱を定着フィルム35に直接的に伝える第1の伝熱経路に加えて第2の伝熱経路を形成することができる。第2の伝熱経路は、ヒータユニット40に生じた熱を第2の熱伝導部材71を介して定着フィルム35に伝える伝熱経路である。これにより定着装置30は、ヒータユニット40に生じた熱を必要に応じて第2の伝熱経路を介して定着フィルム35に供給することができる。そのため、定着フィルム35の加熱に要する時間を短縮することが可能となる。
【0085】
図10は、第1の実施形態において第2の熱伝導部材71を第1の状態又は第2の状態に制御する処理(以下「状態制御処理」という。)の流れを示すフローチャートである。まず、制御部6は、自装置(画像形成装置100)に対して画像形成処理の実行を要求する信号(以下「要求信号」という。)を入力する(ACT101)。この要求信号は、通信部90を介して他の通信装置から受信されるものであってもよいし、コントロールパネル8の操作によって入力されるものであってもよい。この要求信号の入力に応じ、画像形成装置100では要求信号によって通知された設定での画像形成処理が開始される。
【0086】
続いて、制御部6は、ヒータ温度計62の検知温度(以下「第2の検知温度」という。)を取得する(ACT102)。制御部6は、第2の検知温度が所定の閾値T未満であるか否かを判定する(ACT103)。第2の検知温度が閾値T未満である場合(ACT103-YES)、制御部6は第2の熱伝導部材71を第1の状態に遷移させる(ACT104)。例えば
図9の例では、制御部6は第2の熱伝導部材71を
図9(B)の状態から
図9(A)の状態に遷移させる。なお、第2の熱伝導部材71が既に第1の状態にある場合、ACT104は省略されてもよい。
【0087】
第2の熱伝導部材71を第1の状態に遷移させると、続いて制御部6はACT101に応じて開始された画像形成処理が終了したか否かを判定する(ACT105)。当該画像形成処理が終了がしていない場合(ACT105-NO)、制御部6はACT102に処理を戻す。一方、当該画像形成処理が終了している場合(ACT105-YES)、制御部6は第2の熱伝導部材71の状態制御処理を終了する。
【0088】
一方、第2の検知温度が閾値T以上である場合(ACT103-NO)、制御部6は第2の熱伝導部材71を第2の状態に遷移させる(ACT106)。例えば
図9の例では、制御部6は第2の熱伝導部材71を
図9(A)の状態から
図9(B)の状態に遷移させる。なお、第2の熱伝導部材71が既に第2の状態にある場合、ACT105は省略されてもよい。
【0089】
第2の熱伝導部材71を第2の状態に遷移させると、続いて制御部6はACT101に応じて開始された画像形成処理が終了したか否かを判定する(ACT107)。当該画像形成処理が終了がしていない場合(ACT107-NO)、制御部6はACT107を繰り返し実行する。一方、当該画像形成処理が終了している場合(ACT107-YES)、制御部6は第2の熱伝導部材71の状態制御処理を終了する。
【0090】
以上説明した第2の熱伝導部材71の状態制御処理において、閾値Tは定着フィルム35のニップNよりも上流側における温度、又はそれよりも高い温度に設定される。例えば閾値Tは140℃程度にすることができる。閾値Tをこのような値に設定することにより、第2の熱伝導部材71が十分に加熱されていない場合には、第2の熱伝導部材71を定着フィルム35から離反させることができる。そのため、この場合、定着フィルム35の加熱時において、定着フィルム35の熱が第2の熱伝導部材71に奪われてしまうことを抑制することができる。
【0091】
また、一方では、閾値Tを上記のような値に設定することにより、第2の熱伝導部材71が十分に加熱されている場合に、第2の熱伝導部材71を定着フィルム35に当接させることができる。そのため、この場合、第1の熱伝導部材49の熱を定着フィルム35の加熱に利用することが可能となり、定着フィルム35の加熱に要する時間を短縮することができる。なお、定着フィルム35の加熱を効率よく行うためには第2の熱伝導部材71の熱伝導率が第1の熱伝導部材49の熱伝導率よりも低いことが望ましい。例えば典型的には、各部位の熱伝導率が、第1の熱伝導部材49>第2の熱伝導部材71>ヒータユニット40の基盤41>定着フィルム35の関係にあるとよい。
【0092】
このように構成された第1の実施形態の定着装置30によれば、ヒータユニットと定着フィルムとの間で熱交換を行う熱伝導部材を備えた加熱定着装置において、定着フィルムの温度をより効率よく制御することが可能となる。
【0093】
一般に、熱伝導部材49をヒータユニット40の裏面に設置することによってヒータユニット40の裏側の熱容量が増加し、非通紙部の温度上昇が緩和される。これにより、サイズの小さいシート等に対する画像形成処理の生産性を向上させることができる一方で、定着フィルム35の昇温が遅くなることが知られている。これに対して、第1の実施形態の定着装置30によれば、定着フィルム35との接離を制御可能な第2の熱伝導部材71を備えることにより、生産性向上と定着フィルムの昇温遅延とのトレードオフを改善することが可能になる。
【0094】
(第2の実施形態)
第2の実施形態の画像形成装置は、通常モード又は低電力モードのいずれかの動作モードで動作することができる点で第1の実施形態の画像形成装置と異なる。通常モードは通常時の動作モードであり、低電力モードは通常モードでの動作時における消費電力よりも低い消費電力で動作する動作モードである。例えば低電力モードの一例として、一部の機能を停止させた状態で動作するスリープモードや省電力モードなどの動作モードが挙げられる。第2の実施形態の画像形成装置は、このような動作モードに応じて第2の熱伝導部材の状態を制御するものである。なお、第2の実施形態の画像形成装置は、第1の実施形態の画像形成装置と同様のハードウェア構成を有する。そのため、以下では第2の実施形態の画像形成装置の詳細について、
図1~
図9と同じ符号を用いて説明する。
【0095】
図11は、第2の実施形態における第2の熱伝導部材71の状態制御処理の流れを示すフローチャートである。ここでは、第1の実施形態における状態制御処理と同様の処理については
図10と同じ符号を付すことにより説明を省略する。この場合、制御部6は要求信号を入力する(ACT101)と、自装置(画像形成装置100)の動作モードが低電力モードであるか否かを判定する(ACT201)。
【0096】
自装置の動作モードが低電力モードでない場合(ACT201-YES)、制御部6は第2の熱伝導部材71を第2の状態に遷移させる(ACT106)。すなわち、この場合、制御部6は第2の熱伝導部材71を定着フィルム35に当接させる。一方、自装置の動作モードが低電力モードである場合(ACT201-NO)、制御部6は第2の熱伝導部材71を第1の状態に遷移させる(ACT104)。すなわち、この場合、制御部6は第2の熱伝導部材71を定着フィルム35から離反させる。
【0097】
一般に、画像形成装置は、レディ状態と待機状態との間で状態遷移するように制御される。レディ状態は画像形成処理が実行可能な状態であり、待機状態は画像形成処理の実行要求を待機している状態である。例えば、待機状態には、低電力で動作する低電力モードでの動作状態と、スリープモードでの動作状態が含まれる。スリープモードは、低電力モードよりもさらに消費電力を低減して動作する動作モードである。
【0098】
一般に、待機状態の画像形成装置は、要求信号の入力に応じてレディ状態に遷移する準備動作(以下「ウォームアップ」という。)を開始し、ウォームアップの完了によりレディ状態に遷移する。一方、レディ状態の画像形成装置は、画像形成処理の終了に応じて低電力モードに移行するように制御される。また、低電力モードで動作している画像形成装置は、未使用時間が所定時間以上継続した場合にスリープモードに移行するように制御される。
【0099】
待機状態でない、すなわちレディ状態にある画像形成装置においては、第2の熱伝導部材71は十分に加熱された状態にある。そのため、要求信号の入力時に画像形成装置が待機状態にない場合には、第2の検知温度によらずに第2の熱伝導部材71を定着フィルム35に当接させる。これにより、第2の実施形態の定着装置30は、より効率よく定着フィルム35を定着温度に維持することができる。
【0100】
一方、待機状態にある画像形成装置においては第2の熱伝導部材71が十分に加熱されていない可能性が高い。そのため、要求信号の入力時に画像形成装置が待機状態にある場合には、第2の検知温度によらずに、一旦、第2の熱伝導部材71を定着フィルム35から離反させる。そして、ウォームアップ中又はレディ状態において第2の検知温度が閾値T以上となった場合に第2の熱伝導部材71を定着フィルム35に当接させる。これにより、第2の実施形態の定着装置30は、第2の熱伝導部材71によって定着フィルム35の熱が奪われてしまうことを抑制することができる。
【0101】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、ヒータユニット40(ヒータの一例)によって加熱された自身の熱により、自身に圧接された記録媒体を加熱することで、その記録媒体に塗布された記録材を当該記録媒体に定着させる定着フィルム35(定着部材の一例)と、ヒータユニット40に接するように配置され、その一部が定着フィルム35と接する第1の状態と、定着フィルム35と接しない第2の状態とのいずれかの状態に制御可能である熱伝導部材49及び71(熱伝導部材の一例)と、を持つことにより、ヒータと定着フィルムとの間で熱交換を行う熱伝導部材を備えた加熱定着装置において、定着フィルムの温度をより効率よく制御することができる。なお、熱伝導部材49は第1の熱伝導部材の一例であり、熱伝導部材71は第2の熱伝導部材の一例である。
【0102】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0103】
100…画像形成装置、1…ディスプレイ、2…スキャナ部、3…画像形成ユニット、4…シート供給部、5…搬送部、6…制御部、7…排紙トレイ、8…コントロールパネル、9…反転ユニット、10…ハウジング、20…シート収容部、21…ピックアップローラ、23…搬送ローラ、24…レジストローラ、25…複数の画像形成部、25,25Y,25M,25C,25K…画像形成部、25d…感光体ドラム、26…レーザ走査ユニット、27…中間転写ベルト、28…転写部、30…定着装置、30h…フィルムユニット、30p…加圧ローラ、31…フランジ、32…芯金、33…弾性層、34…離型層、35…定着フィルム、36…支持部材、38…ステイ、40…ヒータユニット、41…基板、43…絶縁層、45…発熱体セット、45a…中央部発熱体、45b1…第1端部発熱体、45b2…第2端部発熱体、46…保護層、49…第1の熱伝導部材、52a…中央部接点、52b…端部接点、53a…中央部配線、53b1…第1端部配線、53b2…第2端部配線、55…配線セット、57…共通配線、58…共通接点、62…ヒータ温度計、62a…中央部ヒータ温度計、62b…端部ヒータ温度計、64…フィルム温度計、64a…中央部フィルム温度計、64b…端部フィルム温度計、68…サーモスタット、68a…中央部サーモスタット、68b…端部サーモスタット、71…第2の熱伝導部材、72…駆動部、72a…回転軸、72b…回転体、90…通信部、92…メモリ、93…補助記憶装置、95…電源、96a…中央部トライアック、96b…端部トライアック、L,LC,LK,LM,LY…レーザ光、N…ニップ、S…シート、t…トナー像