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特開2024-126636運動支援装置、運動支援方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126636
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】運動支援装置、運動支援方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/107 20060101AFI20240912BHJP
   A61B 5/11 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
A61B5/107 300
A61B5/11 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023035163
(22)【出願日】2023-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 勝彦
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038VA04
4C038VA12
4C038VB35
4C038VC20
(57)【要約】
【課題】ユーザが走行又は歩行している際における姿勢を適切に評価することが可能な運動支援装置、運動支援方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】運動支援装置1において、指標取得部101は、ユーザが平地を走行又は歩行している際におけるユーザの体の傾斜の大きさを示す第1の指標と、ユーザが勾配を有する地形を走行又は歩行している際におけるユーザの体の傾斜の大きさを示す第2の指標と、勾配の大きさを示す第3の指標と、を取得する。姿勢評価部102は、指標取得部101により取得された第1の指標、第2の指標及び第3の指標に基づいて、ユーザが勾配を有する地形を走行又は歩行している際におけるユーザの姿勢を評価する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザが平地を走行又は歩行している際における前記ユーザの体の傾斜の大きさを示す第1の指標と、前記ユーザが勾配を有する地形を走行又は歩行している際における前記ユーザの体の傾斜の大きさを示す第2の指標と、前記勾配の大きさを示す第3の指標と、を取得する指標取得手段と、
前記指標取得手段により取得された前記第1の指標、前記第2の指標及び前記第3の指標に基づいて、前記ユーザが前記勾配を有する地形を走行又は歩行している際における前記ユーザの姿勢を評価する姿勢評価手段と、
を備える、
ことを特徴とする運動支援装置。
【請求項2】
前記姿勢評価手段による前記姿勢の評価に基づく出力情報を出力する出力手段をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の運動支援装置。
【請求項3】
前記姿勢評価手段は、前記指標取得手段により取得された前記第1の指標、前記第2の指標及び前記第3の指標に基づく評価値が予め定められた基準を満たすか否かを判定し、
前記出力手段は、前記評価値が前記基準を満たさない場合、前記出力情報として、前記姿勢の改善を促すアドバイスを出力する、
ことを特徴とする請求項2に記載の運動支援装置。
【請求項4】
前記姿勢評価手段は、前記第1の指標及び前記第3の指標に基づく評価基準値と、前記第2の指標と、の差分が閾値を超えるか否かを判定し、前記差分が前記閾値を超える場合に前記ユーザの姿勢が後傾状態であると評価する、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の運動支援装置。
【請求項5】
前記姿勢評価手段は、前記勾配が上り勾配である場合と前記勾配が下り勾配である場合とで異なる前記閾値を用いて、前記差分が前記閾値を超えるか否かを判定する、
ことを特徴とする請求項4に記載の運動支援装置。
【請求項6】
前記運動支援装置は、前記ユーザの体に装着され、
前記指標取得手段は、重力方向に対する前記運動支援装置の傾斜角度に基づいて、前記第1の指標及び前記第2の指標を取得する、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の運動支援装置。
【請求項7】
前記指標取得手段は、
前記ユーザの体の動きに伴う加速度に基づいて、前記ユーザが移動した移動距離を推定し、
気圧に基づいて、前記ユーザが走行又は歩行している場所の高度を推定し、
前記移動距離及び前記高度に基づいて、前記第3の指標を取得する、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の運動支援装置。
【請求項8】
前記指標取得手段は、前記第3の指標に基づいて、前記ユーザが走行又は歩行している場所の地形が前記平地に該当するか、又は、前記勾配を有する地形に該当するかを推定する、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の運動支援装置。
【請求項9】
ユーザが平地を走行又は歩行している際における前記ユーザの体の傾斜の大きさを示す第1の指標と、前記ユーザが勾配を有する地形を走行又は歩行している際における前記ユーザの体の傾斜の大きさを示す第2の指標と、前記勾配の大きさを示す第3の指標と、を取得する指標取得ステップと、
前記指標取得ステップで取得された前記第1の指標、前記第2の指標及び前記第3の指標に基づいて、前記ユーザが前記勾配を有する地形を走行又は歩行している際における前記ユーザの姿勢を評価する姿勢評価ステップと、
を含む、
ことを特徴とする運動支援方法。
【請求項10】
コンピュータを、
ユーザが平地を走行又は歩行している際における前記ユーザの体の傾斜の大きさを示す第1の指標と、前記ユーザが勾配を有する地形を走行又は歩行している際における前記ユーザの体の傾斜の大きさを示す第2の指標と、前記勾配の大きさを示す第3の指標と、を取得する指標取得手段、
前記指標取得手段により取得された前記第1の指標、前記第2の指標及び前記第3の指標に基づいて、前記ユーザが前記勾配を有する地形を走行又は歩行している際における前記ユーザの姿勢を評価する姿勢評価手段、
として機能させる、
ことを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運動支援装置、運動支援方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ユーザの運動を支援する技術が知られている。例えば特許文献1は、歩行のテンポや規則正しさ、左右バランス等の人の歩容を計測する装置を開示している。具体的には、特許文献1に開示された装置は、地形を反映した歩容情報を簡単かつ精度良く求めることで、地形毎の歩き方の変化の確認や最適な歩行コースの選択等を可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-255608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなユーザの運動を支援する技術において、ユーザが走行又は歩行している際におけるユーザの姿勢を評価することが求められている。特に、例えば上り坂、下り坂等のような勾配を有する地形を走行又は歩行する際の姿勢は、適切でない姿勢になりやすい。そのため、勾配を有する地形を走行又は歩行している際におけるユーザの姿勢を適切に評価して、姿勢の改善を図ることができるようにすることが求められている。
【0005】
本発明は、以上のような課題を解決するためのものであり、ユーザが走行又は歩行している際における姿勢を適切に評価することが可能な運動支援装置、運動支援方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る運動支援装置は、
ユーザが平地を走行又は歩行している際における前記ユーザの体の傾斜の大きさを示す第1の指標と、前記ユーザが勾配を有する地形を走行又は歩行している際における前記ユーザの体の傾斜の大きさを示す第2の指標と、前記勾配の大きさを示す第3の指標と、を取得する指標取得手段と、
前記指標取得手段により取得された前記第1の指標、前記第2の指標及び前記第3の指標に基づいて、前記ユーザが前記勾配を有する地形を走行又は歩行している際における前記ユーザの姿勢を評価する姿勢評価手段と、
を備える、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ユーザが走行又は歩行している際における姿勢を適切に評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施の形態に係る運動支援装置をユーザに装着した状態を示す図である。
図2】本発明の実施の形態に係る運動支援装置を装着したユーザが平地を走行する状態を示す図である。
図3】本発明の実施の形態に係る運動支援装置のハードウェア構成を示す図である。
図4】本発明の実施の形態に係る運動支援装置の機能的構成を示す図である。
図5】本発明の実施の形態に係る運動支援装置を装着したユーザが上り坂を走行する状態を示す図である。
図6】本発明の実施の形態に係る運動支援装置を装着したユーザが下り坂を走行する状態を示す図である。
図7】本発明の実施の形態に係る計測データ記憶部に記憶される計測データの例を示す図である。
図8】本発明の実施の形態に係る行動種別指標を推定するルールの例を示す図である。
図9】本発明の実施の形態に係る地形指標を推定するルールの例を示す図である。
図10】本発明の実施の形態に係る指標データ記憶部に記憶される指標データの例を示す図である。
図11】本発明の実施の形態に係る運動支援装置を装着したユーザが後傾姿勢で上り坂を走行する状態を示す図である。
図12】本発明の実施の形態に係る運動支援装置を装着したユーザが後傾姿勢で下り坂を走行する状態を示す図である。
図13】本発明の実施の形態に係る運動支援装置により表示されるアドバイスの例を示す図である。
図14】本発明の実施の形態に係る運動支援装置が実行する運動支援処理を説明するためのフローチャートである。
図15】本発明の実施の形態に係る運動支援装置が実行する姿勢評価処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態に係る運動支援装置、運動支援方法及びプログラムについて、図面を参照しながら説明する。図中、互いに同一の構成には、互いに同一の符号を付す。
【0010】
図1に示す本実施の形態に係る運動支援装置1は、ユーザが走行又は歩行している際におけるユーザの姿勢を評価することにより、ユーザの運動を支援する電子機器である。なお、以下では、運動支援装置1は、ユーザが走行している場合を例にとって説明するが、ユーザが歩行している場合についても同様に説明可能である。運動支援装置1は、ユーザの胴体部に装着されて使用される。一例として、運動支援装置1は、ベルトによってユーザの腰の背面中央部に装着される。
【0011】
理解を容易にするため、センサ座標系であるXsYsZs直交座標系を設定する。センサ座標系は、運動支援装置1の位置及び向きを基準とする座標系であって、運動支援装置1の動きに応じて向きを変える。具体的には図2に示すように、ユーザが走行するために体を傾けた場合、それに応じてユーザの体に装着されている運動支援装置1も傾けられる。そのため、センサ座標系であるXsYsZs直交座標系の向きは、ユーザの体の動きに伴って変化する。
【0012】
運動支援装置1は、図3に示すように、各種処理を実行するプロセッサ10と、データ及びプログラムを一時的に記憶する主記憶部11と、ファームウェア及びデータを記憶するROM(Read Only Memory)12と、データ及びプログラムを記憶する補助記憶部13と、計時を行う計時部14と、ユーザの体の加速度を検出する加速度センサ15aと、ユーザの体の角速度を検出するジャイロセンサ15bと、気圧を検出する気圧センサ15cと、ユーザによる入力を受け付ける操作受付部17と、各種画像を表示する表示部18と、外部の機器との間でデータの送受信を行う通信部19と、データ及びコマンドの伝送経路であるシステムバス20と、を備える。
【0013】
プロセッサ10は、CPU(Central Processing Unit)であり、運動支援装置1の各構成要素を統括的に制御する。また、プロセッサ10は、補助記憶部13に記憶されたプログラムを実行することにより、後述する運動支援装置1の各機能を実現する。なお、プロセッサ10は、CPU以外のプロセッサであってもよい。主記憶部11は、RAM(Random Access Memory)を備え、プロセッサ10のワークエリアとして機能する。ROM12は、複数のファームウェアと、プロセッサ10が当該複数のファームウェアを実行する際に使用するデータと、を記憶する。補助記憶部13は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)などの不揮発性メモリを備え、プロセッサ10が各種処理を実行するために用いるプログラム及びデータを不揮発的に記憶する。具体的に、補助記憶部13は、後述する運動支援装置1の各機能を実現するためのプログラムを記憶する。計時部14は、RTC(Real Time Clock)を備え、計時を行う。
【0014】
加速度センサ15aは、センサ座標系であるXsYsZs直交座標系におけるユーザの加速度を検出し、検出結果を表す加速度信号を出力する。具体的に、加速度センサ15aは、3軸加速度センサであり、Xs軸方向、Ys軸方向及びZs軸方向のユーザの加速度を検出する。
【0015】
ジャイロセンサ15bは、XsYsZs直交座標系におけるユーザの角速度又は角加速度を検出し、検出結果を表す角速度信号を出力する。具体的に、ジャイロセンサ15bは、3軸角速度センサであり、Xs軸、Ys軸及びZs軸周りのユーザの角速度又は角加速度を検出する。以下では、ジャイロセンサ15bは、ユーザの角速度を検出する場合を例にとって説明するが、ユーザの角加速度を検出する場合も同様に説明することができる。
【0016】
気圧センサ15cは、大気の圧力を検出し、検出結果を表す気圧信号を出力する。具体的に、気圧センサ15cは、ピエゾ抵抗方式、静電容量方式等のような適宜の方式で、ユーザが存在する位置における気圧を検出する。
【0017】
操作受付部17は、操作スイッチ等の入力デバイスを備え、当該入力デバイスに対するユーザによる操作に従ってデータ及び指示の入力を受け付ける。表示部18は、プロセッサ10による制御に従い、各種画像を表示する。通信部19は、無線通信モジュールを備え、運動支援装置1の外部の機器との間で無線通信を行う。システムバス20は、プロセッサ10~通信部19を相互に接続する。
【0018】
上述したハードウェア構成を備える運動支援装置1は、機能的に、図4に示すように、データ取得部100と、指標取得部101と、姿勢評価部102と、出力部103と、を備える。これらの各部は、プロセッサ10によって実現される。すなわち、プロセッサ10は、補助記憶部13に記憶されたプログラムを実行することにより、これらの各部として機能する。
【0019】
指標取得部101は、指標取得手段の一例である。姿勢評価部102は、姿勢評価手段の一例である。出力部103は、出力手段の一例である。
【0020】
また、運動支援装置1は、時系列データ記憶部131と、計測データ記憶部132と、指標データ記憶部133と、を備える。これらの各部は、補助記憶部13によって実現される。すなわち、これらの各部は、補助記憶部13の記憶領域に構築される。
【0021】
データ取得部100は、加速度センサ15a、ジャイロセンサ15b及び気圧センサ15cにより検出されたデータを取得する。第1に、データ取得部100は、加速度センサ15aにより出力された加速度信号からXs軸方向、Ys軸方向及びZs軸方向におけるユーザの加速度の時系列データを取得する。第2に、データ取得部100は、ジャイロセンサ15bにより出力された角速度信号からXs軸、Ys軸及びZs軸周りのユーザの角速度の時系列データを取得する。第3に、データ取得部100は、気圧センサ15cにより出力された気圧信号からユーザが存在する位置における気圧の時系列データを取得する。データ取得部100は、このような加速度、角速度及び気圧の時系列データを所定のサンプリング周期(例えば200Hz程度)で取得する。
【0022】
データ取得部100は、加速度センサ15aから取得された加速度の時系列データとジャイロセンサ15bから取得された角速度の時系列データとを、XsYsZs直交座標系のデータからXYZ直交座標系のデータに変換する。ここで、XYZ直交座標系は、ワールド座標系とも呼び、図2に示すように、Z軸が重力方向Gに平行に設定され、かつ、X軸及びY軸が水平方向に平行に設定される座標系である。XYZ直交座標系において、X軸は、ユーザの体の左右方向に平行に設定され、ユーザの右手方向を+X軸方向とする。Y軸は、ユーザが移動する進行方向Pに平行に設定され、進行方向Pを+Y軸方向とする。Z軸は、重力方向Gに平行に設定され、鉛直方向上向きを+Z軸方向とする。
【0023】
より詳細に説明すると、図2に示すようにユーザの姿勢が傾斜している場合、ユーザの腰に装着されている運動支援装置1は、ユーザの姿勢の傾斜角度の分だけ傾斜する。そのため、センサ座標系のZs軸は重力方向Gから傾斜し、センサ座標系のYs軸も水平方向から傾斜する。そこで、データ取得部100は、加速度及び角速度の時系列データの座標系をXsYsZs直交座標系からXYZ直交座標系のデータに変換することで、ユーザの姿勢の傾斜による影響を取り除いて加速度及び角速度を解析できるようにする。
【0024】
第1に、データ取得部100は、重力方向Gに対する傾斜を推定して補正する重力方向補正処理を実行する。重力方向補正処理を実行するため、データ取得部100は、予め定められた推定方式を用いて、重力方向Gを推定する。推定方式の一例として、加速度センサ15aの3軸出力とジャイロセンサ15bの3軸出力とをカルマンフィルタやローパスフィルタ等に入力することにより、地面に対する加速度の3軸データと角速度の3軸データとを計算して、重力方向Gを推定する方法がある。
【0025】
重力方向Gを推定すると、データ取得部100は、加速度センサ15a及びジャイロセンサ15bから出力された時系列データを、推定された重力方向Gに平行なZ軸が設定された座標系のデータに変換する。変換後の座標系は、センサ座標系であるXsYsZs座標系を、Z軸が重力方向Gに平行になるように回転させた座標系である。これにより、ユーザの体が前後又は左右に傾斜した場合に生じる、Zs軸方向と重力方向Gとの間の傾斜が補正される。
【0026】
第2に、データ取得部100は、ユーザの進行方向Pに対する傾斜を推定して補正する進行方向補正処理を実行する。進行方向補正処理を実行するため、データ取得部100は、ユーザの進行方向Pを推定する。具体的に説明すると、データ取得部100は、重力方向補正処理が行われた後の角速度の時系列データを積分することにより、ユーザが体を回転させた場合における回転角度を計算する。そして、データ取得部100は、計算した回転角度の分だけ現在のY軸方向から回転した方向を、進行方向Pと推定する。
【0027】
進行方向Pを推定すると、データ取得部100は、重力方向補正処理による変換後の座標系におけるY軸を、推定された進行方向Pに平行となるように揃える。
【0028】
以上のような重力方向補正処理と進行方向補正処理とにより、データ取得部100は、加速度センサ15a及びジャイロセンサ15bから取得した加速度及び角速度の時系列データを、センサ座標系であるXsYsZs座標系のデータから、重力方向Gに平行なZ軸と進行方向Pに平行なY軸とを有するXYZ座標系のデータに変換する。データ取得部100は、XYZ座標系に変換後の加速度と角速度の時系列データを、時系列データ記憶部131に保存する。また、データ取得部100は、気圧センサ15cから取得した気圧の時系列データを、時系列データ記憶部131に保存する。
【0029】
指標取得部101は、ユーザが走行している際におけるユーザの姿勢を評価するための指標を取得する。指標取得部101は、(1)時系列データに基づいて計測データを取得する計測データ取得処理と、(2)計測データに基づいて指標データを取得する指標データ取得処理と、を実行する。
【0030】
(1)第1に、指標取得部101は、所定の単位計測時間(例えば1秒)が経過する毎に、時系列データ記憶部131に記憶されている時系列データに基づいて計測データを取得する。指標取得部101は、計測データとして、行動種別actと、姿勢角度θと、移動距離distと、高度altと、を取得する。
【0031】
(1-1)行動種別actは、ユーザの行動の種別を示す情報であって、具体的には、「走行」、「歩行」、「静止」の何れかを示す。指標取得部101は、ユーザの体の動きに伴う加速度及び角速度に基づいて、ユーザが走行しているか、歩行しているか、又は、静止しているかを推定することで、行動種別actを取得する。
【0032】
行動種別actを推定するために、指標取得部101は、時系列データ記憶部131に記憶されている、加速度センサ15aにより検出された加速度の時系列データと、ジャイロセンサ15bにより検出された角速度の時系列データと、を参照する。加速度及び角速度の特徴が、ユーザが走行している動作の特徴に合致する場合、指標取得部101は、ユーザの行動種別actが「走行」に該当すると推定する。加速度及び角速度の特徴が、ユーザが歩行している動作の特徴に合致する場合、指標取得部101は、ユーザの行動種別actが「歩行」に該当すると推定する。加速度及び角速度の特徴が、ユーザが静止している動作の特徴に合致する場合、指標取得部101は、ユーザの行動種別actが「静止」に該当すると推定する。
【0033】
より詳細には、指標取得部101は、機械学習により生成された識別器を用いて、ユーザの行動種別actが、走行、歩行、静止の何れに該当するかを判定する。具体的に説明すると、指標取得部101は、事前の機械学習により、走行、歩行、静止時における加速度及び角速度の時系列データの特徴量を学習し、加速度及び角速度の時系列データの入力に対して、対応する行動種別として走行、歩行又は静止の情報を出力する識別器を生成する。指標取得部101は、生成した識別器に対して、加速度センサ15aにより検出された加速度の時系列データとジャイロセンサ15bにより検出された角速度の時系列データとを入力する。そして、指標取得部101は、その入力に対して識別器から出力される走行、歩行又は静止の情報を、ユーザの行動種別actであると推定する。
【0034】
(1-2)姿勢角度θは、ユーザの体の傾斜の大きさを示す値である。より詳細には、姿勢角度θは、ユーザの胴体部が重力方向Gに対してどの程度傾斜しているかを示す値である。指標取得部101は、データ取得部100が加速度及び角速度の時系列データの座標系をXsYsZs直交座標系からXYZ直交座標系に変換した際における、Zs軸をZ軸に回転させた回転角度を姿勢角度θとして取得する。言い換えると、指標取得部101は、重力方向Gに対する運動支援装置1の傾斜角度を姿勢角度θとして取得する。なお、前傾方向を姿勢角度θの正方向とし、後傾方向を姿勢角度θの負方向とする。
【0035】
具体的には、図2に示すようにユーザが平地を走行している場合、姿勢角度θは、センサ座標系のZs軸方向とワールド座標系のZ軸方向とがなす角度θ1に相当する。平地走行時には、重力方向Gと走行面の法線とは平行であるため、角度θ1は、走行面の法線を基準とするユーザの胴体部の傾斜角度に相当する。
【0036】
これに対して、図5に示すようにユーザが上り坂を走行している場合、姿勢角度θは角度θ2に相当する。また、図6に示すようにユーザが下り坂を走行している場合、姿勢角度θは角度θ3に相当する。坂道走行時には、重力方向Gと走行面の法線とは平行にならないため、角度θ2,θ3は、走行面の法線が基準ではなく、重力方向Gを基準とするユーザの胴体部の傾斜角度に相当する。
【0037】
(1-3)移動距離distは、ユーザが走行により単位計測時間に水平方向に移動した距離を示す値である。指標取得部101は、ユーザの体の動きに伴う加速度に基づいて、移動距離distを推定する。具体的に説明すると、指標取得部101は、時系列データ記憶部131に記憶されている、加速度センサ15aにより検出された加速度の時系列データを参照する。指標取得部101は、加速度の時系列データに基づいて、単位計測時間前から現時点までの間にユーザが進行方向Pに移動した距離を計算することで、移動距離distを推定する。
【0038】
(1-4)高度altは、ユーザが居る場所の、基準面(例えば海面)からの鉛直方向の距離を示す値である。指標取得部101は、気圧に基づいて、高度altを推定する。具体的に説明すると、指標取得部101は、時系列データ記憶部131に記憶されている、気圧センサ15cにより検出された気圧の時系列データを参照する。指標取得部101は、気圧センサ15cにより検出された気圧の時系列データから、単位計測時間(1秒)における気圧の平均値を計算する。そして、指標取得部101は、気圧値と高度との間の対応関係に基づいて、計算した気圧の平均値から高度altを推定する。
【0039】
指標取得部101は、このような行動種別act、姿勢角度θ、移動距離dist及び高度altを取得する計測データ取得処理を、単位計測時間(1秒)が経過する毎に実行する。これにより、指標取得部101は、単位計測時間毎の行動種別act[1]、act[2]、・・・、姿勢角度θ[1]、θ[2]、・・・、移動距離dist[1]、dist[2]、・・・及び高度alt[1]、alt[2]、・・・を取得し、計測データ記憶部132に保存する。計測データ記憶部132は、図7に示すように、計測データとして、単位計測時間毎の行動種別act[1]、act[2]、・・・、姿勢角度θ[1]、θ[2]、・・・、移動距離dist[1]、dist[2]、・・・及び高度alt[1]、alt[2]、・・・を記憶する。
【0040】
(2)第2に、指標取得部101は、所定の既定時間δ(例えば60秒)が経過する毎に、計測データ記憶部132に記憶されている計測データに基づいて指標データを取得する。指標取得部101は、指標データとして、行動種別指標ACTIONと、姿勢角度指標ATTITUDEと、勾配指標SLOPEと、地形指標GEOGRAPHYと、を取得する。
【0041】
(2-1)行動種別指標ACTIONは、ユーザの行動の種別を示す指標であって、具体的には、「走行」、「歩行」、「静止」の何れかを示す。指標取得部101は、ユーザの体の動きに伴う加速度及び角速度に基づいて、ユーザが走行しているか、歩行しているか、又は、静止しているかを推定する。
【0042】
具体的に説明すると、指標取得部101は、単位計測時間毎の行動種別act[1]、act[2]、・・・に基づいて、行動種別指標ACTIONを導出する。指標取得部101は、一例として図8に示すルールに従って、既定時間δにおける行動種別act[1]、act[2]、・・・、act[δ]から、その既定時間δにおける行動種別指標ACTIONを導出する。
【0043】
第1に、指標取得部101は、既定時間δにおける行動種別act[1]、act[2]、・・・、act[δ]の全てが「走行」に該当する場合、その既定時間δにおける行動種別指標ACTIONを「走行」に設定する。第2に、指標取得部101は、既定時間δにおける行動種別act[1]、act[2]、・・・、act[δ]の全てが「歩行」に該当する場合、その既定時間δにおける行動種別指標ACTIONを「歩行」に設定する。第3に、指標取得部101は、既定時間δにおける行動種別act[1]、act[2]、・・・、act[δ]の全てが「静止」に該当する場合、その既定時間δにおける行動種別指標ACTIONを「静止」に設定する。また、これら以外の場合、指標取得部101は、既定時間δにおける行動種別指標ACTIONを「未定」に設定する。
【0044】
(2-2)姿勢角度指標ATTITUDEは、既定時間δにおけるユーザの体の傾斜の大きさを示す指標である。指標取得部101は、単位計測時間毎の姿勢角度θ[1]、θ[2]、・・・に基づいて、姿勢角度指標ATTITUDEを導出する。
【0045】
具体的に説明すると、指標取得部101は、以下の(1)式に従って、既定時間δにおける姿勢角度θ[1]、θ[2]、…、θ[δ]の平均値を計算することで、その既定時間δにおける姿勢角度指標ATTITUDEを導出する。なお、(1)式において、Σθ[k]は、k=1からk=δまでのθ[k]の和(θ[1]+θ[2]+,・・・,+θ[δ])を意味する。
【0046】
ATTITUDE = (1/δ)×Σθ[k] ・・・(1)
【0047】
図2に示すようにユーザが平地を走行している際に取得された姿勢角度指標ATTITUDEは、第1の指標の一例である。図5又は図6に示すようにユーザが勾配を有する地形を走行している際に取得された姿勢角度指標ATTITUDEは、第2の指標の一例である。
【0048】
(2-3)勾配指標SLOPEは、ユーザが居る場所の勾配の大きさを示す指標である。指標取得部101は、単位計測時間毎の移動距離dist[1]、dist[2]、・・・と単位計測時間毎の高度alt[1]、alt[2]、・・・とに基づいて、勾配指標SLOPEを取得する。勾配指標SLOPEは、ユーザが居る地形の勾配の大きさを示す第3の指標の一例である。
【0049】
具体的に説明すると、指標取得部101は、以下の(2)~(4)式に従って、勾配指標SLOPEを導出する。但し、勾配指標SLOPEの正負は、上り勾配を正方向とし、下り勾配を負方向とする。なお、(3)式において、Σdist[k]は、k=1からk=δまでのdist[k]の和(dist[1]+dist[2]+,・・・,+dist[δ])を意味する。
【0050】
SLOPE = tan-1(DIFFALT/DIST) ・・・(2)
DIST = Σdist[k] ・・・(3)
DIFFALT = alt[δ]-alt[1] ・・・(4)
【0051】
第1に、指標取得部101は、上記(3)式に従って、既定時間δにおける移動距離dist[1]、dist[2]、…、dist[δ]の和を計算することで、移動距離DISTを導出する。第2に、指標取得部101は、上記(4)式に従って、既定時間δにおける高度alt[1]と高度alt[δ]との差分を計算することで、高度差DIFFALTを導出する。第3に、指標取得部101は、上記(2)式に従って、高度差DIFFALTを移動距離DISTで除算した値の逆正接を計算することで、勾配指標SLOPEを導出する。
【0052】
(2-4)地形指標GEOGRAPHYは、ユーザが走行している場所の地形の種別を示す指標である。具体的には、地形指標GEOGRAPHYは、「平地」、「上り坂」、「下り坂」、「上り階段」及び「下り階段」の何れかを示す。
【0053】
指標取得部101は、図9に示すルールに従って、勾配指標SLOPEから地形指標GEOGRAPHYを導出する。これにより、指標取得部101は、第3の指標である勾配指標SLOPEに基づいて、ユーザが走行している場所の地形が平地に該当するか、又は、勾配を有する地形に該当するかを推定する。
【0054】
第1に、指標取得部101は、勾配指標SLOPEが-20°以下である場合、地形指標GEOGRAPHYを「下り階段」に設定する。第2に、指標取得部101は、勾配指標SLOPEが-20°より大きくかつ-5°以下である場合、地形指標GEOGRAPHYを「下り坂」に設定する。第3に、指標取得部101は、勾配指標SLOPEが-5°より大きくかつ5°未満である場合、地形指標GEOGRAPHYを「平地」に設定する。第4に、指標取得部101は、勾配指標SLOPEが5°以上かつ20°未満である場合、地形指標GEOGRAPHYを「上り坂」に設定する。第5に、指標取得部101は、勾配指標SLOPEが20°以上である場合、地形指標GEOGRAPHYを「上り階段」に設定する。
【0055】
指標取得部101は、このような行動種別指標ACTION、姿勢角度指標ATTITUDE、勾配指標SLOPE及び地形指標GEOGRAPHYを取得する指標データ取得処理を、既定時間δ(60秒)が経過する毎に実行する。これにより、指標取得部101は、既定時間δ毎の行動種別指標ACTION[1]、ACTION[2]、・・・、姿勢角度指標ATTITUDE[1]、ATTITUDE[2]、・・・、勾配指標SLOPE[1]、SLOPE[2]、・・・及び地形指標GEOGRAPHY[1]、GEOGRAPHY[2]、・・・を取得し、指標データ記憶部133に保存する。指標データ記憶部133は、図10に示すように、指標データとして、既定時間δ毎の行動種別act[1]、act[2]、・・・、姿勢角度θ[1]、θ[2]、・・・、勾配指標SLOPE[1]、SLOPE[2]、・・・及び地形指標GEOGRAPHY[1]、GEOGRAPHY[2]、・・・を記憶する。なお、図10におけるnは、既定時間δが経過した回数を表す。
【0056】
図4に戻って、姿勢評価部102は、指標取得部101により取得された複数の指標に基づいて、ユーザが勾配を有する地形を走行している際におけるユーザの姿勢を評価する。ここで、勾配を有する地形は、具体的には、上り坂又は下り坂である坂道に相当する。ユーザが坂道を走行する際、ユーザの姿勢が適切でないと、疲労の増大や怪我の誘発の可能性が高まる。そこで、姿勢評価部102は、ユーザが平地を走行している際の姿勢を基準として、ユーザが勾配を有する地形を走行している際の姿勢が適切であるかを評価する。
【0057】
ユーザの姿勢を評価するために、姿勢評価部102は、第1の指標である平地走行時の姿勢角度指標ATTITUDE、第2の指標である坂道走行時の姿勢角度指標ATTITUDE、及び、第3の指標である勾配指標SLOPEに基づいて評価値を計算し、評価値が予め定められた基準を満たすか否かを判定する。
【0058】
より詳細には、姿勢評価部102は、指標データ記憶部133に記憶されている行動種別指標ACTION[n]と姿勢角度指標ATTITUDE[n]と勾配指標SLOPE[n]と地形指標GEOGRAPHY[n]との組合せを参照する。姿勢評価部102は、既定時間δが経過する毎に、指標データ記憶部133に記憶されているこれら複数の指標の最新の組合せを参照して、ユーザの姿勢を評価する。
【0059】
まず、姿勢評価部102は、行動種別指標ACTION[n]と地形指標GEOGRAPHY[n]とを参照して、ユーザの行動種別とユーザが居る場所の地形とを判定する。判定の結果、行動種別指標ACTION[n]が「走行」に該当し、かつ、地形指標GEOGRAPHY[n]が「平地」に該当する場合、姿勢評価部102は、ユーザが平地を走行していると判定する。一方で、行動種別指標ACTION[n]が「走行」に該当し、かつ、地形指標GEOGRAPHY[n]が「上り坂」又は「下り坂」に該当する場合、姿勢評価部102は、ユーザが勾配を有する地形である坂道を走行していると判定する。
【0060】
行動種別指標ACTION[n]が「走行」に該当し、かつ、地形指標GEOGRAPHY[n]が「平地」に該当する場合、同じ単位計測時間における姿勢角度指標ATTITUDE[n]は、平地走行時におけるユーザの体の傾斜の大きさを示す第1の指標に相当する。この場合、姿勢評価部102は、平地走行時の姿勢角度指標ATTITUDEの平均値を示す変数であるAVE_ATTITUDE_FLATを更新する。具体的に説明すると、第1に、姿勢評価部102は、指標データ記憶部133に記憶されている、行動種別指標ACTIONが「走行」に該当し、かつ、地形指標GEOGRAPHYが「平地」に該当する場合の姿勢角度指標ATTITUDEを抽出する。第2に、姿勢評価部102は、抽出した姿勢角度指標ATTITUDEの平均値を算出し、AVE_ATTITUDE_FLATを、算出した平均値に更新する。これにより、AVE_ATTITUDE_FLATは、ユーザが平地を走行していると姿勢評価部102が判定する毎に、最新の平地走行時の姿勢角度指標ATTITUDE[n]に応じて更新される。
【0061】
なお、AVE_ATTITUDE_FLATの値は、坂道走行時のユーザの走行姿勢を評価する際に使用される。そのため、姿勢評価部102は、AVE_ATTITUDE_FLATの値を補助記憶部13に保存することで保持する。
【0062】
行動種別指標ACTION[n]が「走行」に該当し、かつ、地形指標GEOGRAPHY[n]が「上り坂」又は「下り坂」に該当する場合、同じ単位計測時間における姿勢角度指標ATTITUDE[n]は、坂道走行時におけるユーザの体の傾斜の大きさを示す第2の指標に相当する。この場合、姿勢評価部102は、走行姿勢の評価基準値であるReferenceATTITUDEUpDownを、以下の(5)式に従って計算する。
【0063】
ReferenceATTITUDEUpDown = AVE_ATTITUDE_FLAT - SLOPE[n] ・・・(5)
【0064】
具体的には、姿勢評価部102は、補助記憶部13に保持されているAVE_ATTITUDE_FLATの値と、勾配指標SLOPE[n]と、の差分を計算することで、ReferenceATTITUDEUpDownを計算する。ReferenceATTITUDEUpDownは、平地走行時の走行面に対する傾斜角度と同じ傾斜角度でユーザが上り坂又は下り坂を走行した場合における、ユーザの体の姿勢角度(すなわち、重力方向Gに対する傾斜角度)に相当する。ReferenceATTITUDEUpDownは、第1の指標及び第3の指標に基づく評価基準値の一例である。
【0065】
次に、姿勢評価部102は、走行姿勢の評価値であるEvaluationATTITUDEUpDownを、以下の(6)式に従って計算する。
【0066】
EvaluationATTITUDEUpDown = ReferenceATTITUDEUpDown - ATTITUDE[n] ・・・(6)
【0067】
具体的には、姿勢評価部102は、上記で計算した評価基準値であるReferenceATTITUDEUpDownと、第2の指標である坂道走行時の姿勢角度指標ATTITUDE[n]と、の差分を計算することで、EvaluationATTITUDEUpDownを計算する。EvaluationATTITUDEUpDownは、走行面を基準としたユーザの体の傾斜角度が、平地走行時と坂道走行時とでどの程度異なるかを表している。
【0068】
例えば、平地走行時と坂道走行時とで走行面に対するユーザの体の傾斜角度が同じである場合、EvaluationATTITUDEUpDownの値は0になる。平地走行時よりも坂道走行時の方が走行面に対する前傾姿勢の度合いが大きい場合、EvaluationATTITUDEUpDownの値は負の値になる。平地走行時よりも坂道走行時の方が走行面に対する後傾姿勢の度合いが大きい場合、EvaluationATTITUDEUpDownの値は正の値になる。
【0069】
その後、姿勢評価部102は、EvaluationATTITUDEUpDownの値が予め定められた基準を満たすか否かを判定することで、走行姿勢を評価する。ここで、坂道走行時には、多少前傾姿勢で走行する方が、膝に負担がかかりにくく、疲れにくい。本実施の形態では、坂道走行時の姿勢は平地走行時の姿勢と同じであることが、ユーザにとって負担が少ない理想的な姿勢であると想定する。従って、姿勢評価部102は、平地走行時と坂道走行時とで、走行面の法線に対するユーザの体の傾斜角度が一致するような姿勢で走行することが理想であると想定して、坂道走行時におけるユーザの姿勢を評価する。
【0070】
より詳細には、姿勢評価部102は、EvaluationATTITUDEUpDownの値が閾値を超えるか否かを判定することで、ユーザの姿勢に改善が必要であるか否かを判定する。姿勢評価部102は、「上り坂走行」の場合には閾値としてThresholdUpを使用し、「下り坂走行」の場合には閾値としてThresholdDownを使用する。
【0071】
具体的に説明すると、姿勢評価部102は、ユーザが上り坂を走行している際において、以下の(7)式を満たす場合は走行姿勢が後傾状態であると評価し、それ以外の場合は走行姿勢が後傾状態でないと評価する。これに対して、姿勢評価部102は、ユーザが下り坂を走行している際において、以下の(8)式を満たす場合は走行姿勢が後傾状態であると評価し、それ以外の場合は走行姿勢が後傾状態でないと評価する。
【0072】
EvaluationATTITUDEUpDown > ThresholdUp ・・・(7)
EvaluationATTITUDEUpDown > ThresholdDown ・・・(8)
【0073】
閾値であるThresholdUp及びThresholdDownの値は、適宜の値に予め設定される。一例として、ThresholdUp及びThresholdDownの値は、0に設定される。この場合、上記(7)式及び(8)式の関係は、坂道走行時において、平地走行時よりも走行面の法線に対してユーザの体が傾斜している場合に成立する。
【0074】
具体的には図11に示すように、ユーザが上り坂を走行している際において、姿勢角度指標ATTITUDE[n]がReferenceATTITUDEUpDownよりも小さい場合に、姿勢評価部102は、走行姿勢が後傾状態であると判定する。また、図12に示すように、ユーザが下り坂を走行している際において、姿勢角度指標ATTITUDE[n]がReferenceATTITUDEUpDownよりも小さい場合に、姿勢評価部102は、走行姿勢が後傾状態であると判定する。
【0075】
図4に戻って、出力部103は、姿勢評価部102による姿勢の評価に基づく出力情報を出力する。具体的には、出力部103は、姿勢評価部102によりEvaluationATTITUDEUpDownの値が予め定められた基準を満たさない、すなわち閾値を超えると判定された場合、出力情報として、姿勢の改善を促すアドバイスを出力する。
【0076】
一例として、出力部103は、姿勢評価部102によりEvaluationATTITUDEUpDownの値が予め定められた基準を満たさないと判定された場合、図13に示すような『下り坂走行時に、走行姿勢が後傾状態となっています。下り坂走行時には、もう少し前傾姿勢を意識して走行しましょう!』というアドバイスを表示部18に表示する。
【0077】
或いは、出力部103は、出力情報を表示部18に表示することに限らず、このようなアドバイスを、スピーカから音声で出力してもよい。また、出力部103は、振動部を振動させる、点灯部を点灯させる等により、出力情報として警告をユーザに報知するようにしてもよい。更には、出力部103は、通信部19を介して運動支援装置1の外部の機器と通信し、出力情報を外部の機器に出力するようにしてもよい。そして、出力部103は、外部の機器の表示部、スピーカ等から、上述のようなアドバイスを出力するようにしてもよい。外部の機器は、例えば、ユーザが把持するスマートフォン、スマートウォッチ等であってもよい。
【0078】
出力部103は、このような姿勢の改善を促すアドバイスを、ユーザが坂道を走行している際に出力する。具体的には、坂道走行時に姿勢評価部102により評価値が予め定められた基準を満たさないと判定された場合、出力部103は、その坂道走行の最中に、姿勢の改善を促すアドバイスを出力する。これにより、ユーザは、坂道走行中にアドバイスを確認することができるため、好ましくない姿勢で走行を続けることを回避することができる。
【0079】
また、出力部103は、運動支援装置1による計測終了後に、出力情報として、走行レポートを出力する。例えば、出力部103は、図10に示したような、姿勢角度指標ATTITUDE、行動種別指標ACTION、勾配指標SLOPE及び地形指標GEOGRAPHYの時系列データを、表示部18に表示する、又は、通信部19を介して外部の機器に出力する。これにより、走行時のユーザの姿勢に関する詳細な情報を得ることができ、走行時の姿勢の改善につなげることができる。
【0080】
以下、上述したハードウェア構成及び機能的構成を備える運動支援装置1が実行する運動支援処理について説明する。ユーザは静止しており、運動支援装置1は、ユーザの腰の背中側中央部に装着されているものとする。運動支援装置1は、工場出荷時の状態であるものとする。すなわち、時系列データ記憶部131、計測データ記憶部132、指標データ記憶部133には、データが記憶されていないものとする。また、AVE_ATTITUDE_FLATは、初期値である0に設定され、補助記憶部13に保存されているものとする。この状態において、ユーザが、操作受付部17を操作することにより運動支援処理の開始を指示すると、プロセッサ10が、図14のフローチャートに示す運動支援処理を開始する。
【0081】
図14のフローチャートに示す運動支援処理が開始されると、データ取得部100は、加速度センサ15a、ジャイロセンサ15b及び気圧センサ15cによる時系列データの取得を開始する(ステップS101)。以後、データ取得部100は、予め設定されたサンプリング周期(例えば5ミリ秒)が経過するごとに、加速度センサ15aから出力された加速度信号と、ジャイロセンサ15bから出力された角速度信号と、気圧センサ15cから出力された気圧信号と、をサンプリングし、時系列データ記憶部131に保存する。
【0082】
その際、データ取得部100は、加速度及び角速度の時系列データに対して、重力方向補正処理と進行方向補正処理とを実行する。これにより、データ取得部100は、加速度及び角速度の時系列データの座標系を、センサ座標系であるXsYsZs直交座標系からワールド座標系であるXYZ直交座標系に変換する。ステップS101は、データ取得ステップの一例である。
【0083】
時系列データの取得を開始すると、指標取得部101は、単位計測時間(1秒)が経過する毎に、計測データを取得する(ステップS102)。具体的に説明すると、指標取得部101は、時系列データ記憶部131に記憶されている最新の単位計測時間の加速度、角速度及び気圧の時系列データに基づいて、ユーザの行動種別act、姿勢角度θ、移動距離dist及び高度altを取得し、計測データ記憶部132に保存する。
【0084】
計測データを取得すると、指標取得部101は、既定時間δ(60秒)が経過したか否かを判定する(ステップS103)。既定時間δが経過していない場合(ステップS103;NO)、指標取得部101は、処理をステップS102に戻す。そして、指標取得部101は、既定時間δが経過するまで、単位計測時間が経過する毎に計測データを取得する処理を繰り返す。
【0085】
これに対して、既定時間δが経過した場合(ステップS103;YES)、指標取得部101は、指標データを取得する(ステップS104)。具体的に説明すると、指標取得部101は、計測データ記憶部132に記憶されている最新の既定時間δの計測データに基づいて、行動種別指標ACTION、姿勢角度指標ATTITUDE、勾配指標SLOPE及び地形指標GEOGRAPHYを取得し、指標データ記憶部133に保存する。ステップS102~S104は、指標取得ステップの一例である。
【0086】
指標データを取得すると、プロセッサ10は、指標データ記憶部133に記憶されている最新の指標データに基づいて、ユーザの姿勢を評価する(ステップS105)。ステップS105における姿勢評価処理の詳細は、図15を参照して説明する。
【0087】
姿勢評価処理を開始すると、姿勢評価部102は、指標データ記憶部133に記憶されている最新の行動種別指標ACTIONと最新の地形指標GEOGRAPHYとに基づいて、ユーザの行動種別とユーザが居る場所の地形とを判定する(ステップS201)。
【0088】
ステップS201の判定の結果、ユーザが平地を走行していると判定した場合(ステップS201;平地を走行)、姿勢評価部102は、AVE_ATTITUDE_FLATを更新する(ステップS202)。具体的に説明すると、姿勢評価部102は、平地走行時の姿勢角度指標ATTITUDEの平均値を示す変数であるAVE_ATTITUDE_FLATを、指標データ記憶部133に記憶されている最新の姿勢角度指標ATTITUDEに基づいて更新する。そして、姿勢評価部102は、AVE_ATTITUDE_FLATの値を、補助記憶部13に保存する。
【0089】
ステップS201の判定の結果、ユーザが坂道を走行していると判定した場合(ステップS201;坂道を走行)、姿勢評価部102は、上記(5)及び(6)式に従って、姿勢の評価値を計算する(ステップS203)。具体的に説明すると、姿勢評価部102は、上記(5)式に従って、補助記憶部13に記憶されたAVE_ATTITUDE_FLATの値と指標データ記憶部133に記憶されている最新の勾配指標SLOPEとから、ReferenceATTITUDEUpDownの値を計算する。そして、姿勢評価部102は、上記(6)式に従って、計算したReferenceATTITUDEUpDownの値と指標データ記憶部133に記憶されている最新の姿勢角度指標ATTITUDEとから、EvaluationATTITUDEUpDownを計算する。但し、AVE_ATTITUDE_FLATの値が初期値である0である場合、すなわちステップS202の処理が未だ実行されていない場合、姿勢評価部102は、姿勢評価処理を中止し、処理を図14の運動支援処理に戻す。
【0090】
姿勢の評価値を計算すると、姿勢評価部102は、ユーザの姿勢に改善が必要であるか否かを判定する(ステップS204)。具体的に説明すると、姿勢評価部102は、計算した評価値が予め定められた基準を満たさない場合に、ユーザの姿勢に改善が必要であると判定する。ステップS201~S204は、姿勢評価ステップの一例である。
【0091】
ユーザの姿勢に改善が必要であると判定した場合(ステップS204;YES)、出力部103は、姿勢の改善を促すアドバイスを出力する(ステップS205)。一例として、出力部103は、図13に示したようなアドバイスを表示部18に表示する。これに対して、ユーザの姿勢に改善が必要でないと判定した場合(ステップS204;NO)、姿勢評価部102は、ステップS205をスキップする。ステップS205は、出力ステップの一例である。
【0092】
一方で、ステップS201の判定の結果、ユーザが平地を走行しておらず、坂道も走行していないと判定した場合(ステップS201;その他)、姿勢評価部102は、ステップS202~S207の処理をスキップする。以上により、図15に示した姿勢評価処理を終了する。
【0093】
図14に戻って、ユーザの姿勢を評価すると、プロセッサ10は、計測終了か否かを判定する(ステップS106)。ユーザが操作受付部17を操作することにより運動支援処理の終了を指示すると、プロセッサ10は、計測終了であると判定する。計測終了でない場合(ステップS106;NO)、プロセッサ10は、処理をステップS102に戻して、ステップS102~S106の処理を繰り返す。
【0094】
計測終了である場合(ステップS106;YES)、出力部103は、走行レポートを出力する(ステップS107)。例えば、出力部103は、図10に示したような各指標の時系列データを表示部18に表示する、又は、通信部19を介して外部の機器に出力する。以上により、図14に示した運動支援処理は終了する。
【0095】
運動支援処理が終了した時点において補助記憶部13に記憶されたAVE_ATTITUDE_FLATの値と指標データ記憶部133に記憶された指標データとは、次回の運動支援処理まで保持され、次回の運動支援処理において使用される。具体的に、次回の運動支援処理の開始時、AVE_ATTITUDE_FLATの値は、今回の運動支援処理の終了時のAVE_ATTITUDE_FLATの値に設定されている。これにより、次回の運動支援処理では、ステップS202の処理が実行されない限り、ステップS203において、今回の運動支援処理の終了時のAVE_ATTITUDE_FLATに基づいて姿勢の評価値の計算が行われる。また、次回の運動支援処理では、ステップS202において、指標データ記憶部133に記憶された、今回の運動支援処理の終了時の指標データと、次回の運動支援処理で取得された指標データと、に基づいてAVE_ATTITUDE_FLATが更新される。具体的に説明すると、ステップS202において、姿勢評価部102は、指標データ記憶部133に記憶されている、今回の運動支援処理の終了時の指標データと、次回の運動支援処理で取得された指標データとから、行動種別指標ACTIONが「走行」に該当し、かつ、地形指標GEOGRAPHYが「平地」に該当する場合の姿勢角度指標ATTITUDEを抽出する。姿勢評価部102は、抽出した姿勢角度指標ATTITUDEの平均値を算出し、AVE_ATTITUDE_FLATを、算出した平均値に更新する。
【0096】
以上説明したように、本実施の形態に係る運動支援装置1は、ユーザが平地を走行している際におけるユーザの体の傾斜の大きさを示す第1の指標と、ユーザが坂道を走行している際におけるユーザの体の傾斜の大きさを示す第2の指標と、坂道の勾配の大きさを示す第3の指標と、を取得し、これらの指標に基づいて、ユーザが勾配を有する地形を走行している際におけるユーザの姿勢を評価する。同じユーザの平地走行時の姿勢と坂道走行時の姿勢とを比較するため、本実施の形態に係る運動支援装置1は、個人差を考慮して適切にユーザの姿勢を評価することができる。その結果として、例えば、ユーザ毎にランニングコースの地形(平地/上り坂/下り坂)に関する得意/不得意を評価することができ、運動能力の向上に向けたコーチング等の提供が可能となる。
【0097】
また、本実施の形態に係る運動支援装置1は、坂道走行時における評価値が予め定められた基準を満たさない場合、姿勢の改善を促すアドバイスを出力する。これにより、ユーザは、坂道走行中に好ましくない姿勢になったとしても、アドバイスを確認することですぐに姿勢の改善を図ることができる。その結果、疲労の増大や怪我の誘発の可能性を抑えることができる。
【0098】
(変形例)
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。
【0099】
例えば、上記実施の形態では、運動支援装置1は、ユーザが勾配を有する地形を走行している際におけるユーザの姿勢を評価した。しかしながら、運動支援装置1は、ユーザが勾配を有する地形を歩行している際におけるユーザの姿勢を評価してもよい。具体的には、上記実施の形態の説明における「走行」を「歩行」に置き換えることで、「走行」だけでなく「歩行」についても同様に説明することができる。走行時と同様に歩行時についても、同じユーザの平地歩行時の姿勢と坂道歩行時の姿勢とを比較することで、個人差を考慮して適切にユーザの姿勢を評価することができる。その結果として、ユーザは歩行時の姿勢の改善を図ることができるため、疲労の増大や怪我の誘発の可能性を抑えることができる。
【0100】
上記実施の形態では、データ取得部100は、加速度センサ15aの3軸出力とジャイロセンサ15bの3軸出力とをカルマンフィルタやローパスフィルタ等に入力することにより、重力方向Gを推定した。しかしながら、データ取得部100は、カルマンフィルタやローパスフィルタ以外の推定方式を採用して、重力方向Gを推定してもよい。例えば、運動支援装置1が地磁気センサを備えており、データ取得部100は、地磁気センサにより検出される地磁気の方向に基づいて重力方向Gを推定してもよい。
【0101】
上記実施の形態では、指標取得部101は、図8に示したルールに従って、既定時間δにおける行動種別act[1]、act[2]、…、act[δ]から、既定時間δにおける行動種別指標ACTIONを導出した。しかしながら、図8に示したルールは一例であって、行動種別指標ACTIONを導出するルールは、図8に示したものに限らない。例えば、指標取得部101は、既定時間δにおける行動種別act[1]、act[2]、…、act[δ]のうちの最も多い行動種別を、その既定時間δにおける行動種別指標ACTIONとして導出してもよい。言い換えると、指標取得部101は、多数決により行動種別指標ACTIONを決定してもよい。
【0102】
上記実施の形態では、姿勢評価部102は、ユーザが上り坂又は下り坂を走行又は歩行する際におけるユーザの姿勢を評価した。しかしながら、勾配を有する地形は、上り坂又は下り坂に限らない。例えば、姿勢評価部102は、ユーザが上り階段又は下り階段を走行又は歩行する際におけるユーザの姿勢を評価してもよい。
【0103】
上記実施の形態では、閾値であるThresholdUp及びThresholdDownの値は0に設定された。しかしながら、閾値は、これ以外の値に設定されてもよい。例えば、姿勢評価部102は、勾配が上り勾配である場合と勾配が下り勾配である場合とで異なる閾値を用いて、EvaluationATTITUDEUpDownの値が閾値を超えるか否かを判定してもよい。
【0104】
具体的には、ThresholdUp及びThresholdDownの値は、走行姿勢の評価基準値であるReferenceATTITUDEUpDownの半分(0.5倍)の値に設定されてもよい。この場合、ユーザが上り坂又は下り坂を走行している際において、姿勢角度指標ATTITUDE[n]がReferenceATTITUDEUpDownの半分よりも小さい場合に、姿勢評価部102は、走行姿勢が後傾状態であると判定する。なお、ReferenceATTITUDEUpDownの値は上り坂と下り坂とで異なる値になるため、ThresholdUp及びThresholdDownも異なる値となる。
【0105】
或いは、上り坂の走行姿勢は、平地の走行姿勢から5°~10°程度後傾になっていても体への負担がそれほど増えないため、ThresholdUpの値は5°~10°程度に設定されてもよい。そして、下り坂の走行姿勢は、上り坂の走行姿勢よりも後傾姿勢になりやすいため、ThresholdDownの値はThresholdUpの値よりも大きい値(例えば15°程度)に設定されてもよい。
【0106】
また、上記実施の形態では、平地走行時と坂道走行時とで走行面の法線に対するユーザの体の傾斜角度が一致する姿勢で走行することが理想であると想定していた。しかしながら、上り坂の走行時には平地走行時よりも多少前傾状態である方が理想であり、下り坂の走行時には平地走行時よりも多少後傾状態である方が理想であると想定することもできる。そのため、ThresholdUpの値は負の値に設定されてもよく、ThresholdDownの値は正の値に設定されてもよい。
【0107】
また、閾値であるThresholdUp及びThresholdDownとして、それぞれ複数段階の値が設定されてもよい。そして、出力部103は、走行姿勢の評価値が第1の閾値を超えた場合と、第2の閾値を超えた場合とで、異なる内容のアドバイスを出力してもよい。また、前回の上り坂走行時の姿勢角度と今回の上り坂走行時の姿勢角度とが異なっている場合に、出力部103は、「前回よりも改善しています」、「前回よりも悪化しています」等のようなアドバイスを出力してもよい。
【0108】
上記実施の形態では、姿勢評価部102は、上記(7)式及び(8)式に従って走行姿勢が後傾状態であると判定した場合に、ユーザの姿勢に改善が必要であると判定した。しかしながら、姿勢評価部102は、走行姿勢が前傾状態であると判定した場合に、ユーザの姿勢に改善が必要であると判定してもよい。具体的には、姿勢評価部102は、EvaluationATTITUDEUpDownの値が予め定められた閾値以下であるか否かを判定することで、ユーザが前傾状態であるか否かを判定する。このように、前傾状態を判定する処理は、上記実施の形態における後傾状態を判定する処理における正負を入れ替えることで、同様に説明することができる。
【0109】
上記実施の形態では、運動支援装置1がユーザの腰の背面中央部に装着されるものとして説明したが、これは一例に過ぎない。運動支援装置1の装着位置は、ユーザの体の動き及び姿勢を検出可能であれば、ユーザの胴体部のうちの任意の位置であってよい。一例として、ユーザの腰の左右方向の端部の何れかに運動支援装置1を装着してもよいし、ユーザの腹部、胸部等に運動支援装置1を装着してもよい。また、上記実施の形態では、運動支援装置1がベルトによりユーザの腰に装着されるものとして説明したが、これは一例に過ぎず、運動支援装置1の装着方法は、任意である。
【0110】
上記実施の形態では、運動支援装置1が単一の装置であるものとして説明したが、これは一例に過ぎず、運動支援装置1の機能を複数の装置によって実現してもよい。つまり、図4に示した運動支援装置1の各部の機能を複数の装置によって実現し、これらの装置が協働することにより運動支援装置1として機能してもよい。一例として、データ取得部100の機能を第1の装置により実現し、それ以外の機能を第2の装置により実現してもよい。この場合、第1の装置がユーザの体に装着される一方で、第2の装置は、スマートフォン、パーソナルコンピュータ、サーバ等のような、ユーザの体に装着されない装置であってもよい。
【0111】
上記実施の形態では、単位計測時間が1秒であり、既定時間δが60秒であるものとして説明したが、これは一例に過ぎない。単位計測時間及び既定時間δは、任意に設定することができる。
【0112】
上記実施の形態では、プロセッサ10が、図4に示した各部として機能するものとして説明した。しかしながら、これは一例に過ぎず、図4に示した各部の機能を専用のハードウェアにより実現してもよい。専用のハードウェアの例としては、単一回路、複合回路、プログラム化されたプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、これらの組み合わせ等を挙げることができる。なお、図4に示した各部の機能それぞれを個別のハードウェアで実現してもよいし、各部の機能をまとめて単一のハードウェアで実現してもよい。
【0113】
なお、図4に示した各部の機能のうち一部の機能を専用のハードウェアによって実現し、残りの機能をソフトウェア又はファームウェアによって実現してもよい。このように、図4に示した各部の機能は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又は、これらの組み合わせによって実現することができる。
【0114】
本発明に係る運動支援装置1の各機能を実現させるためのプログラムを、既存の情報処理装置を制御するプロセッサが実行できるように適用することで、当該既存の情報処理装置を本発明に係る運動支援装置1として機能させることができる。
【0115】
なお、このようなプログラムは、任意の方法により適用できる。例えば、プログラムを、フレキシブルディスク、CD(Compact Disc)-ROM、DVD(Digital Versatile Disc)-ROM、メモリカード等のコンピュータ読み取り可能な非一時的記憶媒体に格納して適用してもよい。或いは、プログラムを搬送波に重畳し、インターネット、LAN(Local Area Network)等の通信ネットワークを介して適用してもよい。具体的に、通信ネットワーク上の掲示板(BBS:Bulletin Board System)にプログラムを掲示して配信してもよい。そして、既存の情報処理装置を制御するプロセッサが、このプログラムを起動し、OS(Operation System)の制御下で、他のアプリケーションプログラムと同様に実行することにより、本発明に係る運動支援装置1の各機能を実現できるように構成してもよい。
【0116】
以上、本発明の実施の形態および変形例について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。本発明は、実施の形態および変形例が適宜組み合わされたもの、それに適宜変更が加えられたものを含む。
【0117】
本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態および変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。つまり、本発明の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内およびそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、本発明の範囲内とみなされる。
【符号の説明】
【0118】
1・・・運動支援装置、10・・・プロセッサ、11・・・主記憶部、12・・・ROM、13・・・補助記憶部、14・・・計時部、15a・・・加速度センサ、15b・・・ジャイロセンサ、15c・・・気圧センサ、17・・・操作受付部、18・・・表示部、19・・・通信部、20・・・システムバス、100・・・データ取得部、101・・・指標取得部、102・・・姿勢評価部、103・・・出力部、131・・・時系列データ記憶部、132・・・計測データ記憶部、133・・・指標データ記憶部、G・・・重力方向、P・・・進行方向
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