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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126641
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】畦塗り機
(51)【国際特許分類】
   A01B 35/00 20060101AFI20240912BHJP
【FI】
A01B35/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023035169
(22)【出願日】2023-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】390010836
【氏名又は名称】小橋工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 忠治
(72)【発明者】
【氏名】松岡 和輝
【テーマコード(参考)】
2B034
【Fターム(参考)】
2B034AA02
2B034BA07
2B034BB01
2B034BC06
2B034DA03
2B034DB12
2B034DB13
2B034DB24
(57)【要約】
【課題】強固な畦を形成可能な法面整畦体を含む畦塗り機を提供すること。
【解決手段】一実施形態の畦塗り機は、複数の整畦板を互いに連結してなる法面整畦体を含む整畦部と、前記整畦部を回転させる動力を伝達する動力伝達部と、を備え、前記整畦板における回転方向の上流側端部は、基準部と、前記基準部よりも回転方向の下流側に端辺を有する土量調整部とを有する。前記土量調整部は、複数設けられていてもよく、2つの土量調整部の間で幅や深さが異なっていてもよい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の整畦板を互いに連結してなる法面整畦体を含む整畦部と、
前記整畦部を回転させる動力を伝達する動力伝達部と、
を備え、
前記整畦板における回転方向の上流側端部は、基準部と、前記基準部よりも回転方向の下流側に端辺を有する土量調整部とを有する、畦塗り機。
【請求項2】
前記土量調整部は、複数設けられている、請求項1に記載の畦塗り機。
【請求項3】
前記土量調整部の少なくとも1つは、他の土量調整部と深さが異なる、請求項2に記載の畦塗り機。
【請求項4】
前記土量調整部の少なくとも1つは、他の土量調整部と幅が異なる、請求項2に記載の畦塗り機。
【請求項5】
複数の整畦板を互いに連結してなる法面整畦体を含む整畦部と、
前記整畦部を回転させる動力を伝達する動力伝達部と、
を備え、
前記整畦板における回転方向の上流側端部は、基準部と、前記基準部よりも回転方向の下流側に端辺を有する土量調整部とを有し、
前記基準部は、前記整畦板の外端部の一部を含む、畦塗り機。
【請求項6】
複数の整畦板を互いに連結してなる法面整畦体を含む整畦部と、
前記整畦部を回転させる動力を伝達する動力伝達部と、
を備え、
前記整畦板における回転方向の上流側端部は、少なくとも2つの基準部と、前記基準部の間に位置し、前記基準部よりも回転方向の下流側に端辺を有する土量調整部とを有する、畦塗り機。
【請求項7】
複数の整畦板を互いに連結してなる法面整畦体を含む整畦部と、
前記整畦部を回転させる動力を伝達する動力伝達部と、
を備え、
前記複数の整畦板の作用面には、回転方向と交差する方向に延在する段差部が設けられている、畦塗り機。
【請求項8】
前記段差部は、前記回転方向と交差する方向において直線部と屈曲部とを含んで延在し、
前記直線部は、前記法面整畦体の外端部に近いほど前記回転方向の上流側に位置する、請求項7に記載の畦塗り機。
【請求項9】
前記複数の整畦板の作用面は、湾曲面であり、
前記湾曲面は、前記回転方向の下流側から上流側に向かうにつれて曲率が大きくなる、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の畦塗り機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、畦塗り機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水田の畦を形成する農作業機として畦塗り機が知られている。一般的に、畦塗り機は、切り崩した旧畦に対して新たに土盛りを行い、畦の法面に当接させた整畦体を回転させて、盛られた土を旧畦に対して押し固めることにより、新畦を形成する。例えば、特許文献1には、複数の整畦板で構成される整畦体において、隣接する整畦板の間に段差部を設けることにより、強く土を押し固めることが可能な畦塗り機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-135149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の畦塗り機は、畦をより強く押し固める必要がある場合は、段差部の高さを高くすることで対応していた。しかしながら、段差部を高くすると作業中における整畦体の振動が増えてしまうため、段差部を高くするには限界があった。また、整畦板を増やして重量を増加させることにより畦を強く押し固めることも可能であるが、その場合は、畦塗り機の製造コストの増加や重量バランスの悪化を招く結果となり、やはり限界があった。このように、従来の畦塗り機は、崩れにくい畦を形成するにあたって、さらに改善の余地があった。
【0005】
本発明の一実施形態の課題は、崩れにくい畦を形成可能な法面整畦体を含む畦塗り機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態における畦塗り機は、複数の整畦板を互いに連結してなる法面整畦体を含む整畦部と、前記整畦部を回転させる動力を伝達する動力伝達部と、を備え、前記整畦板における回転方向の上流側端部は、基準部と、前記基準部よりも回転方向の下流側に端辺を有する土量調整部とを有する。
【0007】
前記土量調整部は、複数設けられていてもよい。このとき、前記土量調整部の少なくとも1つは、他の土量調整部と深さが異なっていてもよい。また、前記土量調整部の少なくとも1つは、他の土量調整部と幅が異なっていてもよい。
【0008】
本発明の一実施形態における畦塗り機は、複数の整畦板を互いに連結してなる法面整畦体を含む整畦部と、前記整畦部を回転させる動力を伝達する動力伝達部と、を備え、前記整畦板における回転方向の上流側端部は、基準部と、前記基準部よりも回転方向の下流側に端辺を有する土量調整部とを有し、前記基準部は、前記整畦板の外端部の一部を含む。
【0009】
本発明の一実施形態における畦塗り機は、複数の整畦板を互いに連結してなる法面整畦体を含む整畦部と、前記整畦部を回転させる動力を伝達する動力伝達部と、を備え、前記整畦板における回転方向の上流側端部は、少なくとも2つの基準部と、前記基準部の間に位置し、前記基準部よりも回転方向の下流側に端辺を有する土量調整部とを有する。
【0010】
本発明の一実施形態における畦塗り機は、複数の整畦板を互いに連結してなる法面整畦体を含む整畦部と、前記整畦部を回転させる動力を伝達する動力伝達部と、を備え、前記複数の整畦板の作用面には、回転方向と交差する方向に延在する段差部が設けられている。
【0011】
前記段差部は、前記回転方向と交差する方向において直線部と屈曲部とを含んで延在していてもよい。このとき、前記直線部は、前記法面整畦体の外周部に近いほど前記回転方向の上流側に位置していてもよい。
【0012】
前記複数の整畦板の作用面は、湾曲面であってもよい。このとき、前記湾曲面は、前記回転方向の下流側から上流側に向かうにつれて曲率が大きくなっていてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一実施形態における畦塗り機は、崩れにくい畦を形成可能な法面整畦体を含む畦塗り機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態における畦塗り機の構成を示す側面図である。
図2】本発明の一実施形態における法面整畦体の構成を示す図である。
図3】本発明の一実施形態における法面整畦体の構成を示す図である。
図4】本発明の一実施形態における法面整畦体を構成する各整畦板の構成を示すでである。
図5】本発明の一実施形態の変形例における法面整畦体を構成する整畦板の構成を示す図である。
図6】本発明の一実施形態の変形例における法面整畦体を構成する整畦板の構成を示す図である。
図7】本発明の一実施形態の変形例における法面整畦体を構成する整畦板の構成を示す図である。
図8】本発明の一実施形態の変形例における法面整畦体を構成する整畦板の構成を示す図である。
図9】本発明の一実施形態における法面整畦体の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態の畦塗り機について説明する。但し、本発明の一実施形態の畦塗り機は、多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に示す例の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、本実施の形態で参照する図面において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0016】
以下の説明において、説明の便宜上、「上」、「下」、「前」、「後」、「右」、「左」といった方向を示す語句を用いるが、本発明の一実施形態の畦塗り機に対して、重力の働く方向が「下」であり、その逆が「上」である。また、作業時における進行方向が「前」であり、その逆が「後」である。さらに、「前」に向かって、右側が「右」であり、左側が「左」である。
【0017】
〈第1実施形態〉
[畦塗り機機の構成]
図1は、本発明の一実施形態における畦塗り機100の構成を模式的に示す側面図である。図1に示すように、本実施形態の畦塗り機100は、装着部110、動力伝達部120、オフセット機構部130、整畦部140、前処理部150及び天場処理部160を備えている。ただし、本実施形態の畦塗り機100の構成は、図1に示した構成に限られるものではない。
【0018】
装着部110は、ロアリンク連結部111、トップリンク連結部112、ヒッチフレーム113、及び入力軸114を含むとともに、トラクタ等の走行機体(図示せず)の3点リンク機構に装着される。なお、畦塗り機100と走行機体との連結は、走行機体の3点リンク機構に装着されるオートヒッチフレームを介してもよい。
【0019】
ヒッチフレーム113は、入力軸114に伝達された動力を動力伝達部120に伝達する機構を備える。入力軸114は、走行機体のPTO軸に対しユニバーサルジョイント等の伝動継手を介して接続される。入力軸114には、走行機体から出力された動力が伝達される。なお、図示は省略するが、装着部110のヒッチフレーム113には、制御部が設けられている。制御部は、演算処理装置、記憶装置、通信装置等を備え、畦塗り機100の動作全般を制御する機能を有する。
【0020】
動力伝達部120は、装着部110に入力された動力を整畦部140、前処理部150及び天場処理部160に伝達する機構である。図示は省略するが、本実施形態の畦塗り機100は、動力伝達部120が、巻き掛け伝動装置で構成されている。具体的には、動力伝達部120は、一対のスプロケット及びローラチェーンを有するチェーン駆動装置で構成されている。ただし、この例に限らず、動力伝達部120は、一対のプーリ及びベルトを有するベルト駆動装置であってもよいし、ユニバーサルジョイントであってもよい。
【0021】
オフセット機構部130は、装着部110と整畦部140との間に配置され、装着部110に対して回動することにより整畦部140を左右方向にオフセット移動させる機構である。オフセット機構部130は、装着部110及び整畦部140に対して回動可能に連結された平行リンク機構を含む。すなわち、オフセット機構部130が装着部110に対して回動することにより、整畦部140の向き(例えば、回転軸の方向)及び姿勢を維持したまま、整畦部140を左右方向に移動させることができる。ただし、オフセット機構部130の具体的な構成は、この例に限られるものではなく、整畦部140を側方にオフセット移動させることが可能な機構であればよい。
【0022】
オフセット機構部130は、第1リンクアーム131、第2リンクアーム132及び第3リンクアーム133を含む。第1リンクアーム131の前方端は、ヒッチフレーム113に回動可能に連結され、後方端は、第3リンクアーム133に回動可能に連結される。また、第2リンクアーム132の前方端は、ヒッチフレーム113に回動可能に連結され、後方端は、第3リンクアーム133に回動可能に連結される。このとき、第1リンクアーム131と第2リンクアーム132とは略平行に配置される。また、第3リンクアーム133は、ヒッチフレーム113に対して略平行に配置される。このように、オフセット機構部130は、ヒッチフレーム113、第1リンクアーム131、第2リンクアーム132及び第3リンクアーム133で構成される平行リンク機構を含む。
【0023】
本実施形態のオフセット機構部130は、図示しないアクチュエータ(例えば、電動シリンダ)を用いて上述の平行リンク機構を作動させることにより、整畦部140を左右方向にオフセット移動させることができる。
【0024】
整畦部140は、回転自在に支持された略円錐台形状の法面整畦体141及び法面整畦体141の頂部に取付基部(図示を省略)を介して取り付けられた上面整畦体142を含む。整畦部140には、動力伝達部120を経由して伝達された動力が回転動力として入力される。法面整畦体141及び上面整畦体142は、入力された動力によって回転し、畦塗り機100の側方位置に畦を形成する。具体的には、法面整畦体141によって畦の法面が整畦され、上面整畦体142によって畦の上面(天場)が整畦される。法面整畦体141の具体的な構造については後述する。
【0025】
前処理部150は、土盛り部とも呼ばれ、旧畦の一部を切り崩して土を整畦部140に供給する役割を有する。前処理部150は、回転可能に設けられた複数の爪151を有し、回転させた複数の爪151を旧畦に接触させて旧畦を切り崩すと共に、整畦部140に向かって土を放擲する。整畦部140では、前処理部150によって放擲された土を切り崩された旧畦に塗り付けることにより新畦を形成する。
【0026】
天場処理部160は、旧畦の天場の一部を切り崩す役割を有する。天場処理部160は、前処理部150と同様に、回転可能に設けられた複数の爪161を有する。天場処理部160は、回転させた複数の爪161を旧畦の天場部分に接触させて旧畦の上面の一部を切り崩す。切り崩された部分には、前処理部150から供給された土が盛られる。土が盛られた上面は、上面整畦体142によって圧せられて整畦される。
【0027】
[法面整畦体の構成]
図2は、本発明の一実施形態における法面整畦体141の構成を示す図である。具体的には、図2(A)は、法面整畦体141を正面から見た図であり、図2(B)は、法面整畦体141を側面から見た図である。
【0028】
図2(A)に示すように、法面整畦体141は、複数の整畦板40を互いに連結して構成される。各整畦板40は、回転方向Rの下流側における端部41(以下、「下流側端部41」と呼ぶ)と、回転方向Rの上流側における端部42(以下、「上流側端部42」と呼ぶ)とを有する。法面整畦体141は、互いに隣接する整畦板40の下流側端部41と上流側端部42とが溶接等で固定されることにより、互いに連結される。ただし、このような連結方法は一例にすぎず、この例に限られるものではない。例えば、法面整畦体のベースとなる環状のフレームを2つ用意し、それぞれの環状のフレームに複数の整畦板40を固定することにより、法面整畦体141を構成してもよい。この場合、各整畦板40は、本実施形態のように互いに直接的に連結されるのではなく、互いにフレームを介して間接的に連結される。また、各整畦板40は、1枚ずつ独立して交換できるようにフレームに連結されていてもよい。
【0029】
法面整畦体141は、畦塗り作業の際、畦塗り機100の左右方向に延在する回転軸20(図2(B)参照)を中心として、回転方向Rに向かって回転する。法面整畦体141を構成する各整畦板40のうち、畦の法面に力を及ぼす面43(以下、「作用面43」という)は、畦に向かって緩やかに突出する湾曲面となっている。作用面43は、回転方向Rに回転しながら畦に押し付けられ、畦の法面の土を押し固める。このように、回転させた法面整畦体141を旧畦に作用させて畦の整畦が行われる。
【0030】
図3は、本発明の一実施形態における法面整畦体141の構成を示す図である。具体的には、図3(A)は、図2(A)において線分A-Aで切断した断面図であり、図3(B)は、図3(A)の一部(具体的には、枠線45の内部)を拡大した拡大図である。
【0031】
図3(A)に示すように、湾曲した整畦板40の曲率半径rは、回転方向Rの下流側から上流側に向かうにつれて大きくなっている。例えば、下流側端部41の近傍における曲率半径r1は、上流側端部42における曲率半径r2よりも小さい。これは、図3(B)に示すように、整畦板40における回転方向Rの下流側に段差部44を設けていることによる。つまり、法面整畦体141は、各整畦板40を連結する部分に段差部44が設けられることにより、各整畦板40の曲率半径が下流側から上流側に向かって増加している。
【0032】
図3(A)において、回転方向Rの下流側では、整畦板40における作用面43の曲率半径r1が上流側に比べて小さいため、畦60の法面を押す圧力は相対的に弱くなる。他方、回転方向Rの上流側では、作用面43の曲率半径r2が下流側に比べて大きいため、畦60の法面を押す圧力は相対的に強くなる。すなわち、法面整畦体141を回転方向Rに向かって回転させた場合、各整畦板40は、下流側から上流側に向かって畦に当接することとなり、徐々に圧力を強めながら畦60の法面を押し固める。これにより、一定の圧力を与える場合に比べて、より崩れにくい畦を形成することができる。なお、法面整畦体141の回転時、整畦板40の基端部46側と外端部47側とでは周速度が異なり、外端部47側のほうが、基端部46側に比べて、周速度が速くなる。そのため、上流側端部42の端辺50(図4参照)の曲率半径r方向における位置が同じ(すなわち回転方向における位置が同じ)であれば、畦の裾側のほうが畦肩側に比べて、崩れにくくなっている。
【0033】
図4は、本発明の一実施形態における法面整畦体141を構成する整畦板40の構成を示す図である。具体的には、図4(A)は、1枚の整畦板40に着目した拡大図であり、図4(B)は、図4(A)において上流側端部42付近を拡大した図である。
【0034】
図4(A)に示すように、本実施形態の整畦板40は、上流側端部42に意図的に複数の段差が設けられている。これらの段差によって、上流側端部42は、複数の部分に区分される。具体的には、整畦板40の上流側端部42は、整畦板40の基端部46から外端部47に向かって第1部分42a、第2部分42b、第3部分42c、及び第4部分42dの4つの部分に区分される。ただし、いくつの部分に区分するかは任意に決定することができ、例えば、2つ又は3つの部分に区分してもよいし、5つ以上の部分に区分してもよい。
【0035】
本実施形態では、第1部分42a及び第4部分42dをそれぞれ基準部と呼ぶ。基準部とは、畦に塗りつける土量の基準となる部分を指す。他方、第2部分42b及び第3部分42cをそれぞれ土量調整部と呼ぶ。土量調整部とは、畦に塗りつける土量が基準部よりも多い部分を指す。本実施形態の整畦板40は、上流側端部42に基準部と土量調整部とを備えることにより、畦の法面を押圧する強さが局所的に異なるとともに、畦の法面に塗り付けられる土量も異なる。さらに、上流側端部42に基準部と土量調整部とを備えることにより、後述する実効長が長くなり、土量調整部がない場合と比較して、土が練られやすくなる。なお、本実施形態では、第1部分42aの端辺50a及び第4部分42dの端辺50dの位置が回転方向Rにおいて同じであるため、第1部分42a及び第4部分42dの両方とも基準部として扱うが、この例に限られるものではない。例えば、第1部分42aの端辺50aの位置と第4部分42dの端辺50dの位置とは互いに異なっていてもよく、その場合は、端辺の位置が回転方向Rの上流側にある方を基準部とし、他方を土量調整部として扱えばよい。
【0036】
図4(B)に示すように、第1部分42aの端辺50a及び第4部分42dの端辺50dは、上流側端部42の端辺50のうち回転方向Rの最も上流側に位置する辺である。これに対し、第2部分42bの端辺50b及び第3部分42cの端辺50cは、基準部(第1部分42a及び第4部分42d)の端辺に比べて回転方向Rの下流側に位置する。特に、第2部分42bの端辺50bは、第3部分42cの端辺50cよりもさらに回転方向Rの下流側に位置する。具体的には、第1部分42aの端辺50aと第2部分42bの端辺50bとの間の距離をH1とし、第1部分42aの端辺50aと第3部分42cの端辺50cとの間の距離をH2としたとき、H1>H2の関係がある。すなわち、上流側端部42の端辺50は、基端部46から外端部47にかけて複数の段差を有し、第2部分42bと第3部分42cとで段差の大きさ(深さ)が異なっている。
【0037】
また、本実施形態では、第1部分42a~第4部分42dを繋ぐ各部分、すなわち42aと42bの間、42bと42cの間、及び42cと42dの間を接続部42kと呼ぶ。そして、42aと42bを接続する端辺、42bと42cを接続する端辺、及び42cと42dを接続する端辺を接続部42kの端辺50kと呼び、端辺50kは、第1部分42a~第4部分42dの各端辺50a~50dに対して傾斜させた構成となっている。なお、端辺50kを傾斜させた構成とはせずに、各部分の間の段差が端辺に対して垂直又は略垂直となる構成とすることも可能であるが、その場合は、第1部分42a~第4部分42dの間に急峻な段差が生じるため、形成する畦にも段差が生じてしまったり、畦に作用する部分が短くなってしまったりするため、傾斜した端辺50kを有する接続部42kを設けた構成とすることが好ましい。なお、接続部42kの端辺50kは、直線状であってもよいし、曲線状であってもよい。
【0038】
また、法面整畦体141によって畦の塗り込みを行う際、上流側端部42の端辺50の実効長が長いほど畦を崩れにくくすることができる。ここで、端辺50の実効長とは、接続部42kの端辺50kを含めた上流側端部42の端辺50の全長を指す。例えば、図4(B)に示す例では、第1部分42a~第4部分42dの各端辺50a~50dと、接続部42kの端辺50kとの合計が上流側端部42の端辺50の実効長となる。したがって、接続部42kの端辺50kが傾斜していると、傾斜していない場合に比べて、端辺50の実効長が長くなる。なお、接続部42kの端辺50kが傾斜していない場合は、接続部42kの端辺50kが後述する土を練る作業に作用しないため、前述する垂直又は略垂直な部分は、実効長に含まれない。端辺50の実効長が長くなると、畦に作用する部分が増えるため、作業時に法面整畦体141が回転するのに伴い、土が十分に練られた状態となる。土を十分に練ることにより、土に含まれる空気を抜く、土に含まれる水分を均質にする等の効果が得られ、整畦した畦が崩れにくくなるという効果が得られる。そのため、接続部42kの端辺50kは、傾斜させた方が崩れにくい畦を形成する上で有利である。
【0039】
ここで、整畦板40における上流側端部42に設けられた土量調整部による作用効果について説明する。前述のとおり、各整畦板40は、回転方向Rの下流側から上流側に向かって徐々に曲率半径rが大きくなる。すなわち、各整畦板40の作用面43は、回転方向Rの下流側から上流側に向かうにつれて、徐々に畦に加える力を増加させる。逆に言えば、各整畦板40の作用面43は、回転方向Rの下流側に位置するほど畦に加える力が減少する。この事を踏まえると、図4(A)に示すように、第2部分42bは、作用面43の上流側端部の端辺50bが最も下流側に位置するため、他の部分(第1部分42a、第3部分42c、第4部分42d)と比較して、畦に加える力が最も小さくなる。他方、第1部分42a及び第4部分42dは、作用面43の上流側端部の端辺50a及び端辺50dが最も上流側に位置するため、他の部分(第2部分42b、第3部分42c)と比較して、畦に加える力が最も大きくなる。
【0040】
また、第2部分42b及び第3部分42cは、それぞれ段差Hが大きいほど(すなわち、端辺が回転方向Rの下流側に位置するほど)盛られた土を滞留させやすいという特長がある。そのため、図4(A)に示す整畦板40を用いて畦の法面の整畦を行った場合、第2部分42bに対応する位置に滞留する土量が最も多く、次いで第3部分42cに対応する位置に滞留する土量が多くなる。したがって、本実施形態の法面整畦体141は、上流側端部42に設ける段差Hの大きさ(すなわち、土量調整部の深さ)を調節することにより、畦の法面の土量を局所的に制御することが可能である。これにより、整畦される畦の形状を制御することができる。例えば、畦の裾部分(特に、水に浸かる部分)や畦の所定の高さ部分(特に、水面の高さの部分)に対応させて土量調整部を設けることにより、水で浸食されやすい部分の畦の土量を増やし、崩れにくい畦を形成することができる。
【0041】
以上のように、各整畦板40は、回転方向に対する上流側端部42の端辺50に対して局所的に凹凸を形成することにより、(法面整畦体141の径方向において、)局所的に畦に塗り付ける土量を制御することができる。つまり、各整畦板40における上流側端部42に設ける土量調整部の深さ(段差H)を調整することにより、畦の法面に盛る土の量を制御することができるので、畦の法面の浸食されやすい位置に対応させて、土量調整部の深さを変えることにより、必要な箇所に土を多く盛ることができ、崩れにくい畦を形成することができる。
【0042】
なお、図4(B)に示すように、本実施形態において、第1部分42a及び第4部分42dの幅は、それぞれL1及びL4であり、第2部分42bの幅は、L2であり、第3部分42cの幅は、L3である。ここでは、L2<L4<L1<L3の関係となっているが、この例に限られるものではない。第1部分42a、第2部分42b、第3部分42c及び第4部分42dの各部分における幅は、それぞれ畦の法面に土を多く盛る量範囲を画定するものであり、畦の法面におけるどの部分に土を多く盛るかに応じて適宜決定すればよい。
【0043】
また、本実施形態では、法面整畦体141を構成する各整畦板40の上流側端部42に対して土量調整部を設けた例を示したが、この例に限られるものではない。例えば、上流側端部42に対して土量調整部を設けた整畦板を1つ置き又は2つ置きに配置して法面整畦体141を構成してもよい。
【0044】
(変形例1)
第1実施形態で説明した整畦板40における土量調整部の配置は、図4(A)に示した構成に限られるものではない。本変形例では、法面整畦体141を図4(A)に示した整畦板40とは異なる整畦板を用いて形成した例について説明する。なお、本変形例において、図4(A)について説明した構成要素と同じ構成要素については、同じ符号を用いて説明を省略することがある。以下に説明する他の変形例についても同様である。
【0045】
図5は、本発明の一実施形態の変形例における法面整畦体141を構成する整畦板40の構成を示す図である。具体的には、図5(A)は、1枚の整畦板40の構成を示す図であり、図5(B)は、図5(A)に示す整畦板40を用いて形成された畦60の法面の断面を示す図である。
【0046】
図5(A)に示すように、本変形例の整畦板40は、基端部46から外端部47に向かうにつれて階段状に段差が設けられている。具体的には、第1部分42aは、基準部であり、第1部分42aの端辺50aが回転方向Rの最も上流側に位置する。第2部分42bは、端辺50bの位置と基準線48(基準部である第1部分42aの端辺50aに沿って示した基準となる線)との間の距離(つまり、段差)がH1である。第3部分42cは、端辺50cの位置と基準線48との間の距離がH2であり、第4部分42dは、端辺50dの位置と基準線48との間の距離がH3である。本変形例では、H3>H2>H1の関係がある。例えば、各距離H1~H3の関係は、H3=2×H2=3×H1であってもよい。以上のように、相対的には、第1部分42aの上流側端部の端辺50aが回転方向Rの最も上流側に位置し、第2部分42bの上流側端部の端辺50b、第3部分42cの上流側端部の端辺50c、第4部分42dの上流側端部の端辺50dの順に下流側に位置する。
【0047】
本変形例の場合、第1部分42a~第4部分42dの上流側端部42が階段状になっており、相対的に第4部分42dにより畦60の法面に盛られる土の量が最も多くなる。逆に、相対的に第1部分42aにより畦60の法面に盛られる土の量が最も少なくなる。すなわち、本変形例の整畦板40を用いて畦を形成した場合、畦60の法面に対して盛られる土の量は、図5(B)に示すように、肩部62から裾部63に向かうにつれて徐々に増加する。なお、図5(B)において、I~IVの符号は、それぞれ第1部分42a~第4部分42dの各々によって整畦される位置に対応し、Iは、第1部分42aによって整畦される位置、IIは、第2部分42bによって整畦される位置、IIIは、第3部分42cによって整畦される位置、IVは、第4部分42dによって整畦される位置を示している。図5(B)に示すように、畦60の法面の断面は、第1部分42aに対応する法面に沿って示した基準線61を基準としたとき、肩部62から裾部63に向かうにつれて徐々に外側に突出する構成となる。このような構造の畦は、裾部63に近いほど土量が増えて整畦される畦の傾斜が緩やかである。整畦板40に設ける土量調整部の位置や段差の大きさを調整することで、整畦される畦の形を所望の形状に変化させることができる。
【0048】
(変形例2)
図6は、本発明の一実施形態の変形例における法面整畦体141を構成する整畦板40の構成を示す図である。具体的には、図6(A)は、1枚の整畦板40の構成を示す図であり、図6(B)は、図6(A)に示す整畦板40を用いて形成された畦60の法面の断面を示す図である。本変形例では、変形例1で説明した整畦板40における上流側端部42の端辺50に鋸状(ジグザグ状)の凹凸を設けた例を示している。
【0049】
図6(A)に示すように、本変形例の整畦板40は、第1部分42a~第4部分42dの上流側端部42の各端辺50a~50dに対し、それぞれ鋸状の凹凸が設けられている。変形例1で説明したとおり、第1部分42a~第4部分42dの上流側端部42の各端辺50a~50dは、それぞれ基準線48からの距離が異なるため、第1部分42a~第4部分42dによって畦60の法面に盛られる土の量は、相対的に異なるものとなる。なお、図6(B)において、I~IVの符号は、それぞれ第1部分42a~第4部分42dの各々によって整畦される位置に対応し、Iは、第1部分42aによって整畦される位置、IIは、第2部分42bによって整畦される位置、IIIは、第3部分42cによって整畦される位置、IVは、第4部分42dによって整畦される位置を示している。さらに、本変形例では、端辺50の全体に細かい凹凸が設けられているため、それらの凹凸間でも土量差が生じる。その結果、図6(B)に示すように、畦60の法面の断面には、第1部分42a~第4部分42dに対応する法面に、細かい凹凸が生じる。
【0050】
本変形例の場合、巨視的には、第1部分42a~第4部分42dの上流側端部42の端辺50が階段状に変化しており、相対的に第4部分42dによって畦に盛られる土の量が、他の部分(第1部分42a~第3部分42c)によって畦に盛られるが最も多くなる。さらに、微視的には、第1部分42a~第4部分42dごとに細かいサイクルで盛られる土の量が変化している。このような構造の畦は、裾部63に近いほど土量が増えて整畦される畦の傾斜が緩やかである。整畦板40に設ける土量調整部の位置や段差の大きさを調整することで、整畦される畦の形を所望の形状にすることができる。
【0051】
また、本変形例では、第1部分42a~第4部分42dの上流側端部の各端辺50a~50dに鋸状の凹凸が設けられているため、凹凸を設けない場合に比べて、端辺50の実効長が長くなる。そのため、第1実施形態において図4を用いて説明したように、凹凸を設けない場合に比べて、整畦時に土を十分に練ることができ、畦をより崩れにくくすることができる。
【0052】
(変形例3)
図7は、本発明の一実施形態の変形例における法面整畦体141を構成する整畦板40の構成を示す図である。具体的には、図7(A)は、1枚の整畦板40の構成を示す図であり、図7(B)は、図7(A)に示す整畦板40を用いて形成された畦60の法面の断面を示す図である。
【0053】
図7(A)に示すように、本変形例の整畦板40は、上流側端部42に対し、基端部46から外端部47に向かって不規則に段差が設けられている。具体的には、外端部47を含む位置には、基準部として第5部分42eが設けられている。すなわち、第5部分42eの端辺50eの位置と基準線48との間の距離はゼロである。基端部46を含む位置には、第1部分42aが設けられている。第1部分42aの端辺50aの位置と基準線48との間の距離はH1である。
【0054】
図7(A)に示すように、土量調整部として、基端部46から外端部47に向かって順に第1部分42a、第2部分42b、第3部分42c、第4部分42d及び第5部分42eが設けられている。第1部分42aの上流側端部の端辺50aの位置、第2部分42bの上流側端部の端辺50bの位置、第3部分42cの上流側端部の端辺50cの位置、及び第4部分42dの上流側端部の端辺50dの位置と基準線48との間の距離は、それぞれH1、H2、H3及びH4である。本変形例において、各距離H1~H4の関係は、H2>H4>H1>H3である。すなわち、整畦板40の上流側端部42における端辺50は、不規則な段差が形成された構成を有している。この場合においても、最も大きい段差を有する第2部分42bにより畦60の法面に盛られる土の量が最も多くなり、第5部分42eによる畦60の法面に盛られる土の量が最も少なくなる。なお、図7(B)において、I~Vの符号は、それぞれ第1部分42a~第4部分42dの各々によって整畦される位置に対応し、Iは、第1部分42aによって整畦される位置、IIは、第2部分42bによって整畦される位置、IIIは、第3部分42cによって整畦される位置、IVは、第4部分42dによって整畦される位置、Vは、第5部分42eによって整畦される位置を示している。つまり、図7(B)に示すように、端辺50と基準線48との間の距離が大きくなるほど、畦60の法面に盛られる土の量が増加する。このように、畦60の法面に盛る土の量は、整畦板40の上流側端部42に設ける土量調整部の位置及び段差の大きさ(深さ)に応じて制御することが可能である。本変形例では、畦の肩部62から裾部63にかけて必要に応じて土量を増加させている。特に、裾部63のやや上方(水面の高さ)に位置する部分の土量を増加させていることは、水で浸食されやすい部分の崩れにくい畦を形成する上で有効である。
【0055】
(変形例4)
図8は、本発明の一実施形態の変形例における法面整畦体141を構成する整畦板40の構成を示す図である。具体的には、図8(A)は、1枚の整畦板40の構成を示す図であり、図8(B)は、図8(A)に示す整畦板40を用いて形成された畦60の法面の断面を示す図である。本変形例では、整畦板40の上流側端部42の端辺50に鋸状(ジグザグ状)の凹凸を設けた例を示している。
【0056】
図8(A)に示すように、本変形例の整畦板40は、上流側端部42を特に複数の部分に区分することなく、端辺50に対して鋸状に凹部42m及び凸部42nを設けた構成を有する。本変形例では、端辺50に鋸状に凹部42mと凸部42nとが設けられた結果、凹部42mや凸部42nが設けられていない構成に比べて、端辺50の実効長が長くなる。その結果、畦塗り作業の際に、各整畦板40によって土がよく練られた状態となり、整畦した畦が崩れにくくなるという効果が得られる。また、凹部42mと凸部42nとでは土量差が生じるため、図8(B)に示すように、断面視における畦60の法面には、土量差によって生じた凹凸が畦60の法面のほぼ全域にわたって形成される。
【0057】
また、本変形例では、端辺50に対して鋸状の凹凸が設けられているため、凹凸を設けない場合に比べて、端辺50の実効長が長くなる。そのため、第1実施形態において図4を用いて説明したように、凹凸を設けない場合に比べて、畦をよりより崩れにくくすることができる。
【0058】
(変形例5)
第1実施形態では、整畦板40の上流側端部42が複数の部分に区分され、各部分が他の部分と異なる深さ(基準部の端辺と比較した各部分の端辺の位置)を有していたり、他の部分と異なる幅を有していたりする例を示した。しかし、この例に限られるものではなく、各部分の深さや幅は任意である。例えば、整畦板40の上流側端部42が複数の部分に区分されている場合において、ある部分と他の部分とで異なる深さを有し、かつ、同一の幅を有していてもよく、逆に、異なる幅を有し、かつ、同一の深さを有していてもよい。また、ある部分と他の部分とで同一の深さ及び幅を有していてもよい。
【0059】
また、第1実施形態では、基準部が、整畦板40の基端部46に最も近い位置、もしくは外端部47に最も近い位置に配置される例を示したが、この例に限られるものではない。例えば、基準部は、基端部46もしくは外端部47から離れた位置に配置されてもよい。具体的には、基準部と基端部46との間、又は、基準部と外端部47との間に、基準部よりも回転方向Rの下流側に端辺を有する部分を有していてもよい。
【0060】
〈第2実施形態〉
本実施形態は、第1実施形態とは異なる構成の法面整畦体141aを備えた畦塗り機について説明する。具体的には、本実施形態の法面整畦体141aは、法面整畦体141aを構成する各整畦板70の作用面72に段差部73が設けられている。なお、本実施形態において、第1実施形態で説明した構成要素と同じ構成要素については、同じ符号を用いて説明を省略することがある。また、法面整畦体141a以外の畦塗り機としての構成は、第1実施形態と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0061】
図9は、本発明の一実施形態における法面整畦体141aの構成を示す図である。具体的には、図9(A)は、法面整畦体141aの斜視図であり、図9(B)は、図9(A)において線分B-Bで切断した断面図であり、図9(C)は、図9(B)に示した断面図の他の例を示している。
【0062】
図9(A)に示すように、本実施形態の法面整畦体141aは、第1実施形態とは異なり、法面整畦体141aを構成する各整畦板70の上流側端部71に段差が設けられていない。その代わり、整畦板70の作用面72には、回転方向Rと交差する方向に延在する段差部73が設けられている。図9(A)では、段差部73が2箇所設けられた例を示しているが、この例に限られるものではない。
【0063】
図9(B)に示すように、本実施形態では、整畦板70が1枚の金属板で構成され、例えばプレス加工により段差部73が形成されている。ただし、この例に限られるものではなく、図9(C)に示すように、複数の金属板70a~70cを貼り合わせて整畦板70を形成してもよい。このとき、各金属板70a~70cの端部を互いに重畳させて貼り合わせることにより、重畳部分を段差部73として利用することも可能である。
【0064】
また、図9(A)に示すように、段差部73は、直線部73a(後述する第1部分7a、第2部分7b、第3部分7c)と屈曲部73bとを含んで延在する。ここで、直線部73aは、法面整畦体141aの外端部81に近いほど回転方向Rの上流側に位置する。換言すれば、直線部73aは、外端部81に近づくにつれて上流側端部71に近づく。
【0065】
以上のような構造を有する本実施形態の整畦板70は、段差部73が、第1実施形態において上流側端部42に設けられた第1部分42a~第4部分42dと同様に、畦の法面の土量を局所的に制御する効果を奏する。具体的には、複数の直線部73aは、それぞれ回転方向Rにおける位置が異なるため、位置に応じてそれぞれ畦に加える力が異なる。例えば、図9(A)において、第3部分7cは、直線部73aのうち最も上流側に位置するため、畦に加える力が最も大きくなる。他方、第1部分7aは、直線部73aのうち最も下流側に位置するため、畦に加える力が最も小さくなる。第2部分7bは、第1部分7aと第2部分7bの中間程度の力を畦に加えることができる。
【0066】
このように、本実施形態では、整畦板70の作用面72に対して段差部73を設けることにより、局所的に畦に加わる力を変化させることができる。つまり、本実施形態では、上流側端部71以外の場所に段差部73を設けることにより、回転方向と交差する方向に、畦に加わる力がそれぞれ異なる複数の部分を形成することができる。これにより、畦の法面における裾部分から肩部分にかけて、整畦作業中に与えられる圧力に強弱が生まれ、従来よりも強固な畦を形成することができる。
【0067】
また、図9(A)に示す段差部73を設けた場合、作用面72に沿って外端部81に向かって移動する土の流れを局所的に阻害することができ、作用面72上にいわゆる土溜まりを形成することができる。具体的には、整畦作業中、畦の法面に盛られた土は、法面整畦体141aの基端部82から外端部81に向かって作用面72を流れる。このとき、段差部73の屈曲部73bが土の流れを阻害するため、屈曲部73bの周囲に土溜まりが発生する。したがって、畦の法面における裾部分から肩部分にかけて、土量の異なる部分が形成されるため、土量の差により畦の形状を所望の形状にすることができる。
【0068】
以上、本発明について図面を参照しながら説明したが、本発明は前述の各実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、各実施形態を基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除もしくは設計変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。さらに、前述した各実施形態は、相互に矛盾がない限り適宜組み合わせが可能であり、各実施形態に共通する技術事項については、明示の記載がなくても各実施形態に含まれる。
【0069】
また、各実施形態では、整畦板が畦に作用する部分を増やすことにより、畦の法面に対して土量調整や土練りの増加を行うことを例示して説明した。しかしながら、本発明は、畦の法面に対して適用するだけでなく、畦の天面(上面)に対して適用することも可能である。例えば、畦の天面を整畦する上面整畦部を複数の整畦板で構成し、各整畦板の端辺に段差部を設けたり、各整畦板の表面に意図的に段差部を設けたりすることにより、法面と同様に天面の土量調整や土練りの増加を行うことが可能である。
【0070】
前述した各実施形態の態様によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、又は、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0071】
20…回転軸、40…整畦板、50…回転方向Rの上流側における端辺、41…下流側端部、42…上流側端部、43…作用面、44…段差部、60…法面、70…整畦板、70a~70c…金属板、71…上流側端部、72…作用面、73…段差部、73a…直線部、73b…屈曲部、100…畦塗り機、110…装着部、111…ロアリンク連結部、112…トップリンク連結部、113…ヒッチフレーム、114…入力軸、120…動力伝達部、130…オフセット機構部、131…第1リンクアーム、132…第2リンクアーム、133…第3リンクアーム、140…整畦部、141、141a…法面整畦体、81…外端部、82…基端部、142…上面整畦体、150…前処理部、151…爪、160…天場処理部、161…爪
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9