(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126648
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】車両制御装置、車両制御方法、及び車両制御プログラム
(51)【国際特許分類】
G01S 15/46 20060101AFI20240912BHJP
G01S 15/931 20200101ALI20240912BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
G01S15/46
G01S15/931
G08G1/16 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023035180
(22)【出願日】2023-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】322003857
【氏名又は名称】パナソニックオートモーティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石橋 侑也
(72)【発明者】
【氏名】柴田 鉄兵
(72)【発明者】
【氏名】中村 友亮
【テーマコード(参考)】
5H181
5J083
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181CC11
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL04
5H181LL09
5J083AA02
5J083AB13
5J083AC29
5J083AD01
5J083AD04
5J083AD19
5J083AE01
5J083BE23
5J083CB01
(57)【要約】
【課題】車両が旋回して移動する場合における、衝突判定精度を向上させることが可能な車両制御装置、車両制御方法、及び車両制御プログラムを提供する。
【解決手段】車両制御装置30は、車両に搭載され、かつ、音波の送受信によって車両の周辺の物体までの距離を測定するソナー装置10により測定された距離を示す検知時間に基づいて、車両を制御するものであり、直線算出部321は、車両の移動前後におけるソナー装置10の各位置を結ぶ推定直線50を算出する直線算出部321と、算出した推定直線50上に物体が位置しているか否かを判定する判定部322と、推定直線50上に物体が位置している場合、推定直線50と、車両の移動後の検知時間から得られる円弧状の軌跡51との交点53を、物体の位置を示す座標として算出する第1の座標算出部323とを備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、かつ、音波の送受信によって前記車両の周辺の物体までの距離を測定する測距装置により測定された距離を示す検知時間に基づいて、前記車両を制御する車両制御装置であって、
前記車両の移動前後における前記測距装置の各位置を結ぶ直線を算出する直線算出回路と、
算出した前記直線の上に前記物体が位置しているか否かを判定する判定回路と、
前記直線の上に前記物体が位置していると判定された場合、前記直線と、前記車両の移動後の前記検知時間から得られる円弧状の軌跡と、の交点を前記物体の位置を示す座標として算出する第1の座標算出回路と、
を備える車両制御装置。
【請求項2】
前記直線の上に前記物体が位置していないと判定された場合、
前記車両の移動前の前記検知時間から得られる円弧状の軌跡と、前記車両の移動後の前記検知時間から得られる円弧状の軌跡と、の交点を前記物体の位置を示す座標として算出する第2の座標算出回路を備える、
請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記判定回路は、前記車両の移動前の前記検知時間に基づく前記物体までの移動前距離と、前記車両の移動後の前記検知時間に基づく前記物体までの移動後距離との差と、前記車両の移動前後における前記測距装置の移動量と、の差分値が所定の閾値以下である場合、前記直線の上に前記物体が位置していると判定する、
請求項1または2に記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記判定回路は、前記車両の移動後の前記検知時間に基づく前記物体までの移動後距離を示す第1の直線と、前記車両の移動前の前記検知時間に基づく前記物体までの移動前距離を示す第2の直線と、のなす角度が所定の角度以下である場合、前記直線の上に前記物体が位置していると判定する、
請求項1または2に記載の車両制御装置。
【請求項5】
前記第2の座標算出回路が今回算出した前記座標と前回算出した前記座標とが所定距離以下にある場合、前記判定回路の判定結果に関わらず、前記第2の座標算出回路が今回算出した前記座標を選択する選択回路を備える、
請求項2に記載の車両制御装置。
【請求項6】
車両に搭載され、かつ、音波の送受信によって前記車両の周辺の物体までの距離を測定する測距装置により測定された距離を示す検知時間に基づいて、前記車両を制御する車両制御装置による車両制御方法であって、
前記車両の移動前後における前記測距装置の各位置を結ぶ直線を算出するステップと、
算出した前記直線の上に前記物体が位置しているか否かを判定するステップと、
前記直線の上に前記物体が位置していると判定された場合、前記直線と、前記車両の移動後の前記検知時間から得られる円弧状の軌跡と、の交点を前記物体の位置を示す座標として算出するステップと、
を備える車両制御方法。
【請求項7】
車両に搭載され、かつ、音波の送受信によって前記車両の周辺の物体までの距離を測定する測距装置により測定された距離を示す検知時間に基づいて、コンピュータにより前記車両を制御する車両制御プログラムであって、
前記車両の移動前後における前記測距装置の各位置を結ぶ直線を算出するステップと、
算出した前記直線の上に前記物体が位置しているか否かを判定するステップと、
前記直線の上に前記物体が位置していると判定された場合、前記直線と、前記車両の移動後の前記検知時間から得られる円弧状の軌跡と、の交点を前記物体の位置を示す座標として算出するステップと、
を実行する車両制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両制御装置、車両制御方法、及び車両制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
既存の技術として、車両の側方に搭載されたソナー等の測距装置による周辺の物体の検知結果に基づいて、この物体との衝突を回避するために車両を制御(典型的にはブレーキを作動させる制御)する技術が知られている(例えば特許文献1参照)。この種の測距装置は、音波の送受信によって測定された検知時間に基づいて、車両の周辺の物体までの距離を測定する。このため、車両が直進方向に移動する場合、この車両の移動前の検知時間に基づいて得られる、物体が存在し得る複数の位置を結ぶ円弧状の軌跡と、移動後の検知時間に基づいて得られる、物体が存在し得る複数の位置を結ぶ円弧状の軌跡と、の交点を検知された物体の位置として特定できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、既存の技術では、例えば車両が旋回して移動する場合における、物体までの距離の測定についての検討は十分ではない。
【0005】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、車両が旋回して移動する場合における、衝突判定精度を向上させることが可能な車両制御装置、車両制御方法、及び車両制御プログラムの提供に資する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施例の車両制御装置は、車両に搭載され、かつ、音波の送受信によって前記車両の周辺の物体までの距離を測定する測距装置により測定された距離を示す検知時間に基づいて、前記車両を制御する車両制御装置であって、前記車両の移動前後における前記測距装置の各位置を結ぶ直線を算出する直線算出回路と、算出した前記直線の上に前記物体が位置しているか否かを判定する判定回路と、前記直線の上に前記物体が位置していると判定された場合、前記直線と、前記車両の移動後の前記検知時間から得られる円弧状の軌跡と、の交点に基づき、前記物体の位置を示す座標を算出する第1の座標算出回路と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、車両が旋回して移動する場合であっても、衝突判定精度を向上させることができる。なお、ここに記載された効果は必ずしも限定されるものではなく、本明細書中に記載された何れかの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態の車両制御装置を含む車両制御システムの概略構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態のソナー装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態の車両制御装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、実施形態の車両制御装置が有する機能の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、実施形態の車両の移動前後におけるソナー装置の各位置を結ぶ推定直線の算出方法を説明するための図である。
【
図6】
図6は、実施形態の推定直線の上に物体が位置しているか否かの判定方法を説明するための図である。
【
図7】
図7は、実施形態の推定直線の上に物体が位置しているか否かの別の判定方法を説明するための図である。
【
図8】
図8は、実施形態の推定直線の上に物体が位置していると判定された場合における物体の位置を示す座標の算出方法を説明するための図である。
【
図9】
図9は、実施形態の車両の移動後の物体までの距離が実際の距離よりも短い場合に、物体の位置を示す座標の算出方法を説明するための図である。
【
図10】
図10は、実施形態の車両の移動後の物体までの距離が実際の距離よりも長い場合に、物体の位置を示す座標の算出方法を説明するための図である。
【
図11】
図11は、実施形態の推定直線の上に物体が位置していないと判定された場合における物体の位置を示す座標の算出方法を説明するための図である。
【
図12】
図12は、実施形態の推定直線の上に物体が位置しているとの判定が誤認である場合に、実際の物体の位置を示す座標の算出方法を説明するための図である。
【
図13】
図13は、実施形態の側方物体検知部の動作手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら、本開示の実施形態に係る車両制御装置、車両制御方法及び車両制御プログラムを説明する。
【0010】
既存の技術では、例えば車両が旋回して移動する際に、車両の移動前後の測距装置の各位置と物体とが直線上に並んだ場合、この物体までの距離を精度良い測定が困難となることがある。このため、上記した移動前後の円弧状の各軌跡の交点が1つに決まらず、物体の位置を特定することが困難となり、衝突判定精度が低下する可能性がある。
【0011】
本開示に係る車両制御装置、車両制御方法及び車両制御プログラムは、上記に鑑みてなされたものであって、車両が旋回して移動する場合における、衝突判定精度を向上させることができる。
【0012】
車両制御システム1は、
図1に示すように、ソナー装置10と、車両情報検出装置20と、車両制御装置30と、を含む。これらの装置は、例えばCAN(Controller Area Network)等のネットワーク40を介して接続される。なお、車両制御システム1に含まれる装置の種類および数は
図1の例に限られるものではなく、他の装置が含まれる形態であってもよい。例えば、車両制御システム1には、情報を表示可能なディスプレイ等を含むHMI装置が含まれる形態であってもよい。
【0013】
ソナー装置10は、「測距装置」の一例であり、車両に搭載され、かつ、音波(例えば超音波)の送受信によって車両の周辺の物体までの距離を示す検知時間(飛翔時間)を測定可能な装置である。ソナー装置10は、車両の両側にそれぞれ搭載され、車両の側方に向けて音波を送信し、周辺の物体で反射した音波を受信することで物体までの距離を示す検知時間を測定する。車両情報検出装置20は、車速、車両の移動量(どの方向にどれだけ移動したのかを示す量)等の車両情報を検出する装置である。車両制御装置30は、ソナー装置10で測定された検知時間から距離情報を算出し、車両情報検出装置20によって検出された車両情報に基づいて、車両を制御する装置である。なお、本実施形態では、ソナー装置10が検知時間を求めているが、これに限らず、例えば車両制御装置30が検知時間を求めてもよい。
【0014】
次に、ソナー装置10の具体的な構成について説明する。
図2に示すように、ソナー装置10は、圧電素子11と、駆動回路12と、受信回路13と、コントローラ14と、備える。圧電素子11は、コントローラ14の制御の下、駆動回路12により印加された駆動電圧を音圧に変換して出力することで、超音波を発振する。圧電素子11より発振された超音波は、車両の周辺の物体(路面、障害物等)に当たると反射して、その一部はソナー装置10(圧電素子11)に返ってくる。受信回路13は、圧電素子が発振する音圧を電圧に変換し、圧電素子11が発振する音圧に相当する電圧の時間的変化を示すエコー波形を生成することができる。
【0015】
コントローラ14は、駆動回路12を制御し、受信回路13により生成されたエコー波形に基づいて、車両周辺の物体を検出し、検出した物体までの検知時間を生成することができる。コントローラ14は、車両周辺の物体を検出したこと、及び、検知時間を、ネットワーク40を介して車両制御装置30へ送信する。以下の説明では、ソナー装置10からネットワーク40を介して車両制御装置30へ送信される情報を「ソナー情報」と称する場合がある。
【0016】
次に、車両制御装置30の具体的な構成について説明する。
図3に示すように、車両制御装置30は、CPU(Central Processing Unit)31と、ROM(Read Only Memory)32と、RAM(Random Access Memory)33と、通信I/F34と、を備える。
【0017】
CPU31は、プログラムを実行することにより、車両制御装置30の動作を統括的に制御し、車両制御装置30が有する各種の機能を実現する。ROM32は、不揮発性のメモリであり、車両制御装置30を起動させるためのプログラムや該車両制御装置30の動作を制御するためのプログラムを含む各種データを記憶する。RAM33は、CPU31の作業領域を有する揮発性のメモリである。通信I/F34は、ネットワーク40と接続するためのインタフェースである。
【0018】
図4に示すように、車両制御装置30は、車両情報演算部310と、側方物体検知部320と、周辺マップ作成部330と、側方衝突判定部340と、駐車空間作成部350と、車両制御部360と、を有する。
【0019】
車両情報演算部310は、ソナー装置10から送信されたソナー情報、及び車両情報検出装置20から送信された車両情報をそれぞれ取得し、この取得した車両情報に基づいて、各種の演算処理を実行する。具体的には、車両情報演算部310は、取得した車速情報と操舵角情報等から車両の移動量やソナー装置10の位置情報を定期的(所定時間ごと)に演算する。
【0020】
側方物体検知部320は、演算した車両の移動量及びソナー装置10の位置情報と、取得したソナー情報とから車両の側方に存在する物体の位置情報(座標)を検知する。側方物体検知部320は、
図4に示すように、直線算出部321と、判定部322と、第1の座標算出部323と、第2の座標算出部324と、選択部325と、を含む。
【0021】
直線算出部321は、車両の移動前後のソナー装置10の各位置を結ぶ推定直線を算出する。直線算出部321は、
図5に示すように、例えば車両が右旋回する場合に、車両の移動前のソナー装置10の位置情報(座標)と、車両の移動後のソナー装置10の位置情報とに基づき、これら移動前後のソナー装置10の各位置を示す座標を結ぶ推定直線50を算出する。この
図5の例では、車両が右旋回しているので、車両の右側面に搭載されたソナー装置10の各位置情報に基づき推定直線50を算出している。ここで、車両(ソナー装置10)は移動に伴い経時的に位置情報を変化するため、車両の移動後の位置情報とは、地点A(
図5の10(移動前))から地点B(
図5の10(移動後))への移動後、例えば、地点Bで演算された車両の現在(地点B)の位置情報を示すものである。また、車両の移動前の位置情報とは、現在位置に移動する前、例えば、地点Bでの演算よりも所定時間前(前回)に演算された地点Aでの車両の位置情報を示す。このため、直線算出部321は、車両(ソナー装置10)の新たな位置情報が演算されるたびに、新たな推定直線50を算出する。
【0022】
図4に戻って説明を続ける。判定部322は、算出された推定直線50上に物体(
図5の例では他の車両)が位置しているか否かを判定する。この物体は、例えば予め駐車されている車両であるが、車両以外のものであってもよい。判定部322は、
図6に示すように、車両の移動前の検知時間に基づく物体までの検知距離(移動前距離)と、車両の移動後の検知時間に基づく物体までの検知距離(移動後距離)と、車両の移動前後におけるソナー移動量(ソナー装置10の移動量)と、から推定直線50上に物体が位置しているか否かを判定する。具体的には、判定部322は、上記した移動前距離と移動後距離との差と、ソナー移動量との差分値が所定の閾値以下である場合、推定直線50の上に物体が位置していると判定する。例えば、以下の式(1)を満たす場合には、判定部322は、推定直線50の上に物体が位置していると判定する。
【0023】
||移動前距離-移動後距離|-ソナー移動量|≦閾値 (1)
【0024】
この判定手法によれば、車両の移動前後の物体までの検知距離と、車両の移動前後におけるソナー移動量とから、推定直線50の上に物体が位置しているか否かを簡易に判定することができる。なお、この閾値は任意に設定することができるが、小さい値(0に近い値)ほど、推定直線50上に物体が位置しているか否かを精度良く判定することができる。
【0025】
また、推定直線50上に物体が位置しているか否かについての判定は、別の手法を用いてもよい。例えば、判定部322は、
図7に示すように、車両の移動後の検知時間に基づく物体までの検知距離(移動後距離)を示す第1の直線と、車両の移動前の検知時間に基づく物体までの検知距離(移動前距離)を示す第2の直線と、をそれぞれ算出し、これら第1の直線と第2の直線とのなす角度θが所定の角度以下である場合、推定直線50の上に物体が位置していると判定することができる。
【0026】
この判定手法によれば、車両の移動前後の物体までの検知距離を示す第1及び第2の直線を算出するとともに、これら直線のなす角度から、推定直線50の上に物体が位置しているか否かを簡易に判定することができる。なお、この所定角度についても、任意に設定することができるが、小さい値(0度に近い値)ほど、推定直線50上に物体が位置しているか否かを精度良く判定することができる。
【0027】
また、上記した各判定手法では、検知距離(移動前距離及び移動後距離)が小さいほど、許容できるぶれ幅を小さく抑えて精度良く判定ができる。
【0028】
図4に戻って説明を続ける。第1の座標算出部323は、上記した判定手法によって、推定直線50の上に物体が位置していると判定された場合、この物体の位置を示す座標を算出する。具体的には、
図8に示すように、第1の座標算出部323は、推定直線50と、車両の移動後の検知時間から得られる円弧状の軌跡51と、の交点53を検知された物体の位置を示す座標として算出する。この円弧状の軌跡51は、物体が存在し得る複数の位置を結んで生成されるものであり、移動後のソナー装置10を中心、この移動後の検知時間に基づく物体までの検知距離(移動後距離)を半径とした場合に推定される円弧として算出される。本実施形態では、第1の座標算出部323は、推定直線50と、車両の移動後の上記軌跡51と、の交点53を検知された物体の位置を示す座標として算出するため、物体が存在し得る方向及び物体までの距離に基づき、物体の位置を検知することができる。
【0029】
さて、上記したソナー装置10を用いた物体検知においては、車両の移動前の検知時間から得られる円弧状の軌跡と、車両の移動後の検知時間から得られる円弧状の軌跡と、の交点を物体の位置を示す座標として算出することもできる。しかし、ソナー装置10の検知時間に基づく物体までの検知距離は、多少の誤差が生じやすいため、車両の移動前後の円弧状の軌跡の交点を、物体の位置を示す座標として算出する手法では、上記した誤差が物体の位置を検知する精度に影響する。例えば、車両の移動前後のソナー装置10の各位置と物体とが直線上に並んだ場合には、上記した誤差の影響により物体の位置の検知精度に大きく影響することが想定された。
【0030】
例えば、
図9に示すように、車両の移動後の検知時間に基づく物体までの検知距離(移動後距離)が実際よりも短く検知された場合には、車両の移動前の検知時間から得られる円弧状の軌跡52と、車両の移動後の検知時間から得られる円弧状の軌跡51とが交差しないため、上記の手法では、物体の位置を示す座標を算出することが困難である。これに対して、本実施形態では、第1の座標算出部323は、
図9に示すように、推定直線50と、車両の移動後の検知時間から得られる円弧状の軌跡51と、の交点53を検知された物体の位置を示す座標として算出する。この交点53は、実際の物体の位置よりも車両の近くに位置しているものの、推定直線50の上に位置しているため、物体の位置を精度良く検知することができる。
【0031】
また、例えば、
図10に示すように、車両の移動後の検知時間に基づく物体までの検知距離(移動後距離)が実際よりも長く検知された場合には、車両の移動前の検知時間から得られる円弧状の軌跡52と、車両の移動後の検知時間から得られる円弧状の軌跡51との交点54は、物体の実際の位置から大きくずれて生成される。この交点54は、推定直線50を挟んだ両側に生成され、物体の実際の位置に対する交点54のずれ量は、検知距離(移動前距離及び移動後距離)が大きくなるほど大きくなる。これに対して、本実施形態では、第1の座標算出部323は、
図9に示すように、推定直線50と、車両の移動後の検知時間から得られる円弧状の軌跡51と、の交点53を検知された物体の位置を示す座標として算出する。この交点53は、実際の物体の位置よりも車両から遠い側に位置しているものの、推定直線50の上に位置しているため、物体の位置を精度良く検知することができる。
【0032】
このように、本実施形態では、車両の移動前後のソナー装置10の各位置と物体とが直線上に並んだ場合であっても、検知誤差の影響を抑えて物体の位置を精度良く検知することができる。
【0033】
図4に戻って説明を続ける。第2の座標算出部324は、主として、上記した判定手法によって、推定直線50の上に物体が位置していないと判定された場合に、この物体の位置を示す座標を算出する。具体的には、
図11に示すように、第2の座標算出部324は、車両の移動前の検知時間から得られる円弧状の軌跡52と、車両の移動後の検知時間から得られる円弧状の軌跡51と、の交点54を物体の位置を示す座標として算出する。この構成では、車両の移動前後のソナー装置10の各位置と物体とが直線上に並んでいない。このため、例えば、車両の移動後の検知時間に基づく物体までの検知距離(移動後距離)が実際よりも短く(または長く)検知された場合であっても、この検知距離の誤差が物体の位置の検知精度に大きな影響を与えることはなく、物体の位置を精度良く検知することができる。
【0034】
このように、本実施形態では、推定直線50の上に物体が位置していると判定された場合と、推定直線50の上に物体が位置していないと判定された場合とで、物体の位置を示す座標の算出手法を異ならせるため、車両の周囲の物体の位置を精度良く検知することができる。なお、第2の座標算出部324は、推定直線50の上に物体が位置していないと判定された場合以外にも、判定結果に関わらず、車両の移動前後の検知時間から得られる円弧状の軌跡51、52の交点54を算出する動作を行ってもよい。
【0035】
図4に戻って説明を続ける。本実施形態では、上記したように、推定直線50の上に物体が位置していると判定された場合には、第1の座標算出部323が、推定直線50と、車両の移動後の検知時間から得られる円弧状の軌跡51と、の交点53を検知された物体の位置を示す座標として算出している。しかし、推定直線50の上に物体が位置していると判定された場合であっても、実際の物体は、推定直線50の上に位置していない場合があり得るとの知見を得た。このため、選択部325は、第2の座標算出部324が算出した座標が所定条件を満たした場合には、上記した推定直線50の上に物体が位置しているか否かの判定結果に関わらず、第2の座標算出部324が移動後の位置で算出した座標を選択する。
【0036】
ここで、説明の便宜上、第1の座標算出部323が算出した座標を第1の座標といい、第2の座標算出部324が算出した座標を第2の座標という。また、第1の座標算出部323及び第2の座標算出部324がそれぞれ経時的に複数回座標を算出した場合、移動後の位置での算出を今回の算出、この1回前の算出、移動前の位置での算出を前回の算出という。選択部325は、第2の座標算出部324が今回算出した第2の座標と前回算出した第2の座標とが所定距離以下にある場合、上記した推定直線50の上に物体が位置しているか否かの判定結果に関わらず、第2の座標算出部324が今回算出した第2の座標を選択する。ここで、所定距離は、任意に設定される値であるが、2つの第2の座標の位置関係が近傍にあるか否かを判定する距離であるため、少なくとも車両(ソナー装置10)の移動前後の移動量よりも小さい値とすることが好ましい。
【0037】
図12に示すように、車両の移動前1と移動後とのソナー装置10の各位置を結ぶ推定直線50の上に物体が位置していると判定されると、第1の座標算出部323は、推定直線50と、車両の移動後の検知時間から得られる円弧状の軌跡51と、の交点53を第1の座標として算出する。このため、物体は、第1の座標(交点53)に位置していると検知される。
【0038】
一方、第2の座標算出部324は、車両の移動前2の検知時間から得られる円弧状の軌跡52Aと、車両の移動前1の検知時間から得られる円弧状の軌跡52Bと、の交点54Aを物体の位置を示す第2の座標として算出しておく。さらに、第2の座標算出部324は、車両の移動前1の検知時間から得られる円弧状の軌跡52Bと、車両の移動後の検知時間から得られる円弧状の軌跡51と、の交点54Bを物体の位置を示す第2の座標として算出する。そして、選択部325は、第2の座標算出部324が今回算出した第2の座標(交点54B)と前回算出した第2の座標(交点54A)とが所定距離以下にある場合、上記した推定直線50の上に物体が位置しているか否かの判定結果に関わらず、第2の座標算出部324が今回算出した第2の座標(交点54B)を選択する。
【0039】
この構成によれば、推定直線50の上に物体が位置しているとの判定に誤認が生じた場合であっても、物体の位置を精度良く検知することができる。
【0040】
図4の説明を続ける。周辺マップ作成部330は、側方物体検知部320で算出された座標を用いて、車両の周辺の地図(マップ)を作成する。側方衝突判定部340は、作成された地図情報を用いて、車両の(側方の)衝突判定を行う。駐車空間作成部350は、作成された地図情報を用いて、車両が駐車できる駐車空間を作成する。車両制御部360は、衝突すると判定された場合(車両が車両の進行方向に存在する座標に接近した場合)に、車両のブレーキを作動させる制御を行う。また、車両制御部360は、作成された駐車空間に車両を駐車するように、車両の動作させる制御を行う。以上が、本実施形態の車両制御装置30の具体的な構成である。
【0041】
次に、側方物体検知部320の動作について
図13を用いて説明する。まず、第2の座標算出部324は、第2の座標の算出する(ステップS1)。第2の座標算出部324は、車両の移動前の検知時間から得られる円弧状の軌跡52と、車両の移動後の検知時間から得られる円弧状の軌跡51と、の交点54を物体の位置を示す第2の座標として算出する。第2の座標算出部324は、車両の移動に伴い所定時間ごとに、上記した第2の座標を算出し、少なくとも今回算出した第2の座標と、前回算出した第2の座標とをそれぞれ記憶しておく。
【0042】
次に、判定部322は、車両の移動前後のソナー装置10を結ぶ推定直線50の上に物体があるか否かを判定する(ステップS2)。具体的には、直線算出部321は、車両の移動前後のソナー装置10の各位置を結ぶ推定直線を算出する。そして、判定部322は、例えば、車両の移動前の検知時間に基づく物体までの検知距離(移動前距離)と車両の移動後の検知時間に基づく物体までの検知距離(移動後距離)との差と、車両の移動前後におけるソナー移動量と、が所定の閾値以下である場合には、推定直線50の上に物体があると判定する。
【0043】
この判定において、推定直線50の上に物体があると判定された場合(ステップS2;Yes)には、処理をステップS3に移行し、推定直線50の上に物体がないと判定された場合(ステップS2;No)には、処理をステップS6に移行する。
【0044】
次に、第2の座標算出部324は、ステップS1で算出した今回の第2の座標と、前回の第2の座標とが近傍である、例えば、所定距離以下であるか否かを判定する(ステップS3)。第2の座標算出部324は、記憶された今回の第2の座標と、前回の第2の座標とを読みだし、これらが所定距離以下(例えば、少なくとも車両の移動前後におけるソナー移動量以下)であるか否かを判定する。
【0045】
この判定において、今回の第2の座標と前回の第2の座標とが所定距離以下でない場合(ステップS3;No)には、処理をステップS4に移行し、今回の第2の座標と前回の第2の座標とが所定距離以下である場合(ステップS3;Yes)には、処理をステップS6に移行する。
【0046】
次に、第1の座標算出部323は、第1の座標を算出する(ステップS4)。具体的には、第1の座標算出部323は、ステップS2で算出した推定直線50と、車両の移動後の検知時間から得られる円弧状の軌跡51と、の交点53を検知された物体の位置を示す第1の座標として算出する。そして、物体の位置として算出した第1の座標を採用して(ステップS5)、処理を終了する。
【0047】
また、選択部325は、物体の位置として算出した第2の座標を採用する(ステップS6)。具体的には、推定直線50の上に物体がないと判定された場合(ステップS2;No)、または、今回の第2の座標と前回の第2の座標とが所定距離以下である場合(ステップS3;Yes)には、ステップS1で算出した今回(移動後)の第2の座標を選択し、この第2の座標を物体の位置として採用し、処理を終了する。
【0048】
以上に説明したように、本実施形態の車両制御装置30は、車両に搭載され、かつ、音波の送受信によって車両の周辺の物体までの距離を測定するソナー装置10により測定された距離を示す検知時間に基づいて、車両を制御するものであり、車両の移動前後におけるソナー装置10の各位置を結ぶ推定直線50を算出する直線算出部321と、算出した推定直線50の上に物体が位置しているか否かを判定する判定部322と、推定直線50の上に物体が位置していると判定された場合、推定直線50と、車両の移動後の検知時間から得られる円弧状の軌跡51との交点53を、物体の位置を示す座標として算出する第1の座標算出部323と、を備える。この構成によれば、車両の移動前後のソナー装置10の各位置と物体とが推定直線50上に並んだ場合であっても、物体が存在し得る方向及び物体までの距離に基づき、物体の位置を検知することができる。このため、衝突判定精度を向上させることができる。
【0049】
また、本実施形態の車両制御装置30において、直線の上に物体が位置していないと判定された場合、車両の移動前の検知時間から得られる円弧状の軌跡52と、車両の移動後の検知時間から得られる円弧状の軌跡51と、の交点54を物体の位置を示す座標として算出する第2の座標算出部324を備える。この構成によれば、車両の移動前後のソナー装置10の各位置と物体とが推定直線50上に並んでいない場合に、物体の位置を精度良く検知することができる。
【0050】
また、本実施形態の車両制御装置30において、判定部322は、車両の移動前の検知時間に基づく物体までの移動前距離と、車両の移動後の検知時間に基づく物体までの移動後距離との差と、車両の移動前後におけるソナー装置10の移動量と、の差分値が所定の閾値以下である場合、推定直線50の上に物体が位置していると判定する。この構成によれば、推定直線50の上に物体が位置しているか否かを簡易に判定することができる。
【0051】
また、本実施形態の車両制御装置30において、判定部322は、車両の移動後の検知時間に基づく物体までの移動後距離を示す第1の直線と、車両の移動前の検知時間に基づく物体までの移動前距離を示す第2の直線と、のなす角度θが所定の角度以下である場合、推定直線50の上に物体が位置していると判定する。この構成によれば、推定直線50の上に物体が位置しているか否かを簡易に判定することができる。
【0052】
また、本実施形態の車両制御装置30において、第2の座標算出部324が今回算出した第2の座標と前回算出した第2の座標とが所定距離以下にある場合、判定部322の判定結果に関わらず、第2の座標算出部324が今回算出した第2の座標を選択する選択部325を備える。この構成によれば、推定直線50の上に物体が位置しているとの判定に誤認が生じた場合であっても、物体の位置を精度良く検知することができる。
【0053】
以上、本開示の実施形態を説明したが、上述の実施形態は例として提示したものであり、特許請求の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、本開示の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら新規な実施形態およびその変形は、本開示の範囲および要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲の記載とその均等の範囲に含まれる。
【0054】
また、本明細書に記載された実施形態における効果はあくまで例示であって限定されるものでは無く、他の効果があってもよい。
【0055】
また、上述した実施の形態における「・・・部」という表記は、「・・・回路(circuitry)」「・・・アッセンブリ」、「・・・デバイス」、「・・・ユニット」、または、「・・・モジュール」といった他の表記に置換されてもよい。
【0056】
上記の実施形態では、本開示はハードウェアを用いて構成する例にとって説明したが、本開示はハードウェアとの連携においてソフトウェアでも実現することも可能である。
【0057】
また、上記実施形態の説明に用いた各機能ブロックは、典型的には集積回路であるLSI(Large Scale Integrated Circuit)として実現される。集積回路は、上記実施の形態の説明に用いた各機能ブロックを制御し、入力端子と出力端子を備えてもよい。これらは個別に1チップ化されてもよいし、一部または全てを含むように1チップ化されてもよい。ここでは、LSIとしたが、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。
【0058】
また、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路または汎用プロセッサ及びメモリを用いて実現してもよい。LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)、LSI内部の回路セルの接続または設定を再構成可能なリコンフィギュラブル プロセッサ(Reconfigurable Processor)を利用してもよい。
【0059】
さらには、半導体技術の進歩または派生する別技術により、LSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックを集積化してもよい。バイオ技術の適用等が可能性としてありえる。
【符号の説明】
【0060】
1 車両制御システム
10 ソナー装置(測距装置)
20 車両情報検出装置
30 車両制御装置
50 推定直線(直線)
51、52、52A、52B 軌跡
53、54、54A、54B 交点
310 車両情報演算部(車両情報演算回路)
320 側方物体検知部(側方物体検知回路)
321 直線算出部(直線算出回路)
322 判定部(判定回路)
323 第1の座標算出部(第1の座標算出回路)
324 第2の座標算出部(第2の座標算出回路)
325 選択部
330 周辺マップ作成部
340 側方衝突判定部
350 駐車空間作成部
360 車両制御部