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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126651
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】制動装置付き移動体
(51)【国際特許分類】
   E05F 5/02 20060101AFI20240912BHJP
   E06B 3/46 20060101ALI20240912BHJP
   E05F 5/00 20170101ALI20240912BHJP
   E05F 1/16 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
E05F5/02 C
E06B3/46
E05F5/00 D
E05F1/16 B
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023035188
(22)【出願日】2023-03-08
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-06-25
(71)【出願人】
【識別番号】506360631
【氏名又は名称】株式会社三条工機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100097065
【弁理士】
【氏名又は名称】吉井 雅栄
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 豊
【テーマコード(参考)】
2E014
【Fターム(参考)】
2E014AA02
2E014FA05
2E014FB02
(57)【要約】
【課題】往復移動体のソフトな復動完了を達成する制動装置付き移動体を提供すること。
【解決手段】第一ラックギア5を第一移動途中位置P2へ往動移動させた際に第一ラックギア5と第二ラックギア11の連動移動状態を解除する往動時連動解除手段12、往動時連動解除手段12による連動移動解除時に第二ラックギア11を停止状態に保持する第二ラックギア停止保持手段13、往動区間にある第一ラックギア5を第一移動途中位置P2へ復動移動させた際に第一ラックギア5と第二ラックギア11の連動移動を回避する復動時連動回避手段14、第一ラックギア5を第二移動途中位置P3へ復動移動させた際に第二ラックギア11の移動停止状態を解除する復動付勢復帰手段15、及び移動停止解除時の第二ラックギア11と第一ラックギア5を同じ移動量で連動復動移動させる復動時連動手段16を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持母体に往復移動自在に設けられ、少なくとも復動移動に制動力を付与する移動体制動装置を介して前記支持母体に設けられる制動装置付き移動体であって、
前記移動体制動装置は、前記支持母体側に設置可能な筐体と、
この筐体に往復移動可能に設けられ前記移動体に連結可能な連結部とから成り、
前記筐体には、
前記連結部を備えこの連結部を介して前記移動体とともに移動体の往復移動方向に沿って往復移動する第一ラックギアと、
この第一ラックギアと歯合し第一ラックギアの往復移動に伴って連動回動する第一ピニオンギアと、
この第一ピニオンギアの回動軸に設けられて第一ピニオンギアと連動回動する第一ピニオンギアとは直径比若しくはギア比が異なる第二ピニオンギアと、
この第二ピニオンギアと歯合し第二ピニオンギアの回動に伴って前記移動体の往復移動方向に連動移動すると共に、前記第一ピニオンギアと前記第二ピニオンギアの異なる直径比若しくはギア比によって前記第一ラックギアの移動に連動して移動するが第一ラックギアの移動量よりも小さい移動量となる第二ラックギアと、
この第二ラックギアに連結されてこの第二ラックギアを復動方向に移動付勢する付勢体と、
この第二ラックギアに連結されて前記付勢体の付勢力による第二ラックギアの復動移動に制動作用を付与する制動ダンパーと、
前記第一ラックギアを往動始点位置から所定の第一移動途中位置まで往動移動させた際にこの第一ラックギアと前記第二ラックギアとの連動移動状態を解除して、前記第一移動途中位置より先の往動区間を第一ラックギアのフリー移動区間とする往動時連動解除手段と、
この往動時連動解除手段により前記第一ラックギアと前記第二ラックギアとの連動移動状態が解除された際に、連動移動してきた前記第二ラックギアを移動停止状態に保持する第二ラックギア停止保持手段と、
前記フリー移動区間に位置している第一ラックギアを、前記第一移動途中位置まで復動移動させた際に前記第一ラックギアと前記第二ラックギアとが連動移動状態となることを回避して、第一ラックギアを前記第二ラックギア停止保持手段により移動停止状態に保持されている前記第二ラックギアとは非連動状態で復動移動可能とする復動時連動回避手段と、
この復動時連動回避手段により前記第二ラックギアと非連動状態となっている前記第一ラックギアを、前記第一移動途中位置より先の復動区間の第二移動途中位置まで復動移動させた際に、前記第二ラックギア停止保持手段による第二ラックギアの移動停止状態を解除する復動付勢復帰手段と、
この復動付勢復帰手段による第二ラックギアの移動停止状態が解除された際に、この第二ラックギアと前記第一ラックギアとを前記付勢体の付勢力により前記制動ダンパーに制動されながら同じ移動量で連動復動移動させる復動時連動手段とを備えていることを特徴とする制動装置付き移動体。
【請求項2】
前記往動時連動解除手段は、前記第一ラックギアを往動始点位置から所定の第一移動途中位置まで往動移動させると、往動移動したこの第一ラックギアが前記第一ピニオンギアから離脱して第一ラックギアと前記第二ラックギアとの連動移動状態が解除されるように構成されていることを特徴とする請求項1記載の制動装置付き移動体。
【請求項3】
前記第二ラックギア停止保持手段は、前記第二ラックギアに、前記筐体に係止する移動停止用係止部が設けられて構成されていると共に、この移動停止用係止部は、前記第一ラックギアを前記第一移動途中位置まで往動移動させた際に前記筐体に係止して、連動移動してきた前記第二ラックギアを移動停止状態に保持するように構成されていることを特徴とする請求項1記載の制動装置付き移動体。
【請求項4】
前記第二ラックギアに、この第二ラックギアの往動移動に連動して一方向に回動制御されるロック部材が設けられていると共に、このロック部材に前記移動停止用係止部が設けられていて、前記第一ラックギアを前記第一移動途中位置まで往動移動させると、前記第二ラックギアの連動往動移動によりロック部材が一方向に回動制御され、このロック部材の一方向回動により前記移動停止用係止部が前記筐体に係止するように構成されていることを特徴とする請求項3記載の制動装置付き移動体。
【請求項5】
前記復動時連動回避手段は、前記第一ラックギアを前記第一移動途中位置まで復動移動させた際に前記第一ピニオンギアが前記第一ラックギアに歯合しようとすることを回避する復動時歯合回避機構が第一ピニオンギアと第一ラックギアとのいずれか一方若しくは双方に設けられて構成されていることを特徴とする請求項1記載の制動装置付き移動体。
【請求項6】
前記復動時歯合回避機構は、前記第一ピニオンギアが、前記第二ピニオンギアに対し前記回動軸に沿って接離移動可能に設けられていて、この第一ピニオンギアを前記第二ピニオンギアに接近移動させると第二ピニオンギアと連結されてこの第一ピニオンギアが第二ピニオンギアと連動回動し且つ第一ピニオンギアが前記第一ラックギアに歯合可能状態となるように構成されていると共に、第一ピニオンギアを第二ピニオンギアから離反移動させると第二ピニオンギアとの連動回動状態が解除され且つ第一ピニオンギアが第一ラックギアに歯合不能状態となるように構成されており、
前記第一ラックギアを前記第一移動途中位置まで復動移動させた際に前記第一ピニオンギアを前記第二ピニオンギアから離反移動させるピニオン退避誘導部が、第一ピニオンギアと第一ラックギアとのいずれか一方若しくは双方に設けられて構成されていることを特徴とする請求項5記載の制動装置付き移動体。
【請求項7】
前記復動付勢復帰手段は、前記第一ラックギアに、前記フリー移動区間に位置しているこの第一ラックギアを前記第二移動途中位置まで復動移動させた際に前記第二ラックギア停止保持手段により移動停止状態となっている第二ラックギアの移動停止状態を解除誘導するトリガー部が設けられて構成されていることを特徴とする請求項1記載の制動装置付き移動体。
【請求項8】
前記復動付勢復帰手段は、前記第一ラックギアに、前記フリー移動区間に位置しているこの第一ラックギアを前記第二移動途中位置まで復動移動させた際に前記ロック部材を他方向に回動誘導するトリガー部が設けられていて、このトリガー部によるロック部材の他方向回動により前記筐体に係止していた前記移動停止用係止部が筐体から係脱して前記第二ラックギアの移動停止状態が解除されるように構成されていることを特徴とする請求項4記載の制動装置付き移動体。
【請求項9】
前記復動時連動手段は、前記第一ラックギアにトリガー部が設けられ、前記フリー移動区間に位置しているこの第一ラックギアを前記第二移動途中位置まで復動移動させた際に、前記トリガー部が連結される連結受部が前記第二ラックギアに設けられていて、このトリガー部と連結受部の連結により第一ラックギアと第二ラックギアとが連動復動移動可能となるように構成されていることを特徴とする請求項1記載の制動装置付き移動体。
【請求項10】
前記復動時連動手段は、前記第一ラックギアに、前記フリー移動区間に位置しているこの第一ラックギアを前記第二移動途中位置まで復動移動させた際に前記ロック部材を他方向へ回動誘導するトリガー部が設けられ、このトリガー部によりロック部材が他方向へ回動誘導された際にトリガー部が連結される連結受部がロック部材に設けられていて、第一ラックギアを前記第二移動途中位置付近まで復動移動させると、前記トリガー部により前記ロック部材が他方向へ回動誘導されトリガー部が前記連結受部に連結されて第一ラックギアと第二ラックギアとが連動復動移動可能となるように構成されていると共に、ロック部材が他方向へ回動誘導されることにより前記移動停止用係止部が前記筐体から係脱して前記第二ラックギア停止保持手段による第二ラックギアの移動停止状態が解除されるように前記復動付勢復帰手段が構成されていることを特徴とする請求項4記載の制動装置付き移動体。
【請求項11】
前記復動付勢復帰手段により連動復動移動する第一ラックギアと第二ラックギアとが前記往動始点位置に至った際に、前記復動時連動回避手段により非連動状態となっていた第一ラックギアと第二ラックギアとを前記第一ピニオンギアと前記第二ピニオンギアとを介した連動往動移動可能状態に復帰させる往動時ラックギア連動復帰手段を備えていることを特徴とする請求項1記載の制動装置付き移動体。
【請求項12】
前記復動時連動回避手段は、前記第一ラックギアを前記第一移動途中位置まで復動移動させた際に前記第一ピニオンギアが前記第一ラックギアに歯合しようとすることを回避する復動時歯合回避機構が第一ピニオンギアと第一ラックギアとのいずれか一方若しくは双方に設けられて構成されており、
前記往動時ラックギア連動復帰手段は、前記復動付勢復帰手段により連動復動移動する前記第一ラックギアと前記第二ラックギアとが前記往動始点位置に至った際に、前記復動時歯合回避機構により歯合回避状態となっている前記第一ピニオンギアと第一ラックギアとを歯合状態に復帰させる歯合復帰機構が、前記第一ラックギア,前記第一ピニオンギア若しくは前記回動軸に設けられて構成されていることを特徴とする請求項11記載の制動装置付き移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、引戸や引出しなどの移動体のソフトクローズを達成する制動装置付き移動体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、戸体と戸枠体からなる引戸には、下枠にレールを配置し戸体の下部に戸車を設けてレールに乗せて開閉させるタイプと、上枠にレールと戸車を配置し、戸体を上枠から吊り下げて開閉させるタイプがあるが、いずれのタイプにおいても戸枠体に対して左右方向に戸体をスライド移動させて開閉する。
【0003】
このような引戸は、軽い力で操作できることが望ましいが、戸車を改良するなどして開閉操作を軽くすればするほど戸体を勢いよく閉じた時に速度が付き過ぎ、戸先面と戸枠体の縦枠内面が強く衝突し、大きな衝撃音が発生すると共に戸体が跳ね返ってしまう。
【0004】
そこで、このような問題を解消するために従来から引戸を閉鎖位置まで引き込みつつソフトクローズを達成するためのクローザー(制動装置)が実施されている。
【0005】
例えば、特許文献1に開示されている引戸のクローザーは、開閉方向に延在するガイドレールに取り付けられる被捕捉部材と、引戸に取り付けられ、ガイドレールに沿って引戸と共に開閉方向へ移動し、被捕捉部材が取り付けられた所定の位置まで引戸が移動したときに被捕捉部材を捕捉する捕捉引込機構とを備え、捕捉引込機構には、被捕捉部材を捕捉したときに引戸を強制的に閉じる方向へ移動させるばねと、ばねの付勢力を緩衝する直動式のダンパーとが設けられ、引戸を閉じる方向に移動させると、引戸の閉まり際に、捕捉引込機構が戸閉側に位置する被捕捉部材を捕捉し、捕捉引込機構が戸閉側の被捕捉部材を捕捉しながらばねの力で戸開側に移動する。即ち、捕捉引込機構は、捕捉した被捕捉部材を引戸側に引き寄せるように作用し、これにより、引戸は、相対的に閉じる方向へと強制的に移動して引戸が戸閉側の戸当りと当接するまで完全に閉じられるようになるが、この際、前記ダンパーにより引戸の閉じ移動は緩衝されてソフトクローズが達成されるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017-14761公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
引戸が強い勢いで閉められた場合や、重い引戸であっても確実なソフトクローズを達成するためには、前記ダンパーによる制動力をできるだけ強くしたいが、制動力の強いダンパーを採用すると、引戸を閉じる方向に付勢する前記ばねも強い制動力を発揮するダンパーに負けずに引戸を全閉位置(閉鎖状態)まで付勢するように付勢力の強いばねを採用する必要がある。
【0008】
しかしながら、強い付勢力のばねを採用してしまうと、引戸を開こうとする際に大きな開き抵抗を生じて軽い力で操作できなくなってしまう。
【0009】
本発明は、このような問題点に注目し、これを解消しようとするもので、引戸などの移動体を開放(往動)操作する際の移動量は大きく(長く)なるが、強いダンパーと付勢体(ばねなど)を採用しても移動体がこの付勢体に抗する力が小さくなって移動体を往動操作する際の力(付勢体による開き抵抗)を小さくでき(軽い力で操作でき)、尚且つ移動体の自動引込(復動)付勢距離を短く設定可能で、短く設定した自動復動付勢位置まで手動操作で早く移動体を動かせて移動体を早く復動させる(閉じる)ことができる制動装置付き移動体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0011】
支持母体1に往復移動自在に設けられ、少なくとも復動移動に制動力を付与する移動体制動装置Aを介して前記支持母体1に設けられる制動装置付き移動体2であって、
前記移動体制動装置Aは、前記支持母体1側に設置可能な筐体3と、
この筐体3に往復移動可能に設けられ前記移動体2に連結可能な連結部4とから成り、
前記筐体3には、
前記連結部4を備えこの連結部4を介して前記移動体2とともに移動体2の往復移動方向に沿って往復移動する第一ラックギア5と、
この第一ラックギア5と歯合し第一ラックギア5の往復移動に伴って連動回動する第一ピニオンギア6と、
この第一ピニオンギア6の回動軸9に設けられて第一ピニオンギア6と連動回動する第一ピニオンギア6とは直径比若しくはギア比が異なる第二ピニオンギア10と、
この第二ピニオンギア10と歯合し第二ピニオンギア10の回動に伴って前記移動体2の往復移動方向に連動移動すると共に、前記第一ピニオンギア6と前記第二ピニオンギア10の異なる直径比若しくはギア比によって前記第一ラックギア5の移動に連動して移動するが第一ラックギア5の移動量よりも小さい移動量となる第二ラックギア11と、
この第二ラックギア11に連結されてこの第二ラックギア11を復動方向に移動付勢する付勢体7と、
この第二ラックギア11に連結されて前記付勢体7の付勢力による第二ラックギア11の復動移動に制動作用を付与する制動ダンパー8と、
前記第一ラックギア5を往動始点位置P1から所定の第一移動途中位置P2まで往動移動させた際にこの第一ラックギア5と前記第二ラックギア11との連動移動状態を解除して、前記第一移動途中位置P2より先の往動区間を第一ラックギア5のフリー移動区間とする往動時連動解除手段12と、
この往動時連動解除手段12により前記第一ラックギア5と前記第二ラックギア11との連動移動状態が解除された際に、連動移動してきた前記第二ラックギア11を移動停止状態に保持する第二ラックギア停止保持手段13と、
前記フリー移動区間に位置している第一ラックギア5を、前記第一移動途中位置P2まで復動移動させた際に前記第一ラックギア5と前記第二ラックギア11とが連動移動状態となることを回避して、第一ラックギア5を前記第二ラックギア停止保持手段13により移動停止状態に保持されている前記第二ラックギア11とは非連動状態で復動移動可能とする復動時連動回避手段14と、
この復動時連動回避手段14により前記第二ラックギア11と非連動状態となっている前記第一ラックギア5を、前記第一移動途中位置P2より先の復動区間の第二移動途中位置P3まで復動移動させた際に、前記第二ラックギア停止保持手段13による第二ラックギア11の移動停止状態を解除する復動付勢復帰手段15と、
この復動付勢復帰手段15による第二ラックギア11の移動停止状態が解除された際に、この第二ラックギア11と前記第一ラックギア5とを前記付勢体7の付勢力により前記制動ダンパー8に制動されながら同じ移動量で連動復動移動させる復動時連動手段16とを備えていることを特徴とする制動装置付き移動体に係るものである。
【0012】
また、前記往動時連動解除手段12は、前記第一ラックギア5を往動始点位置P1から所定の第一移動途中位置P2まで往動移動させると、往動移動したこの第一ラックギア5が前記第一ピニオンギア6から離脱して第一ラックギア5と前記第二ラックギア11との連動移動状態が解除されるように構成されていることを特徴とする請求項1記載の制動装置付き移動体に係るものである。
【0013】
また、前記第二ラックギア停止保持手段13は、前記第二ラックギア11に、前記筐体3に係止する移動停止用係止部17が設けられて構成されていると共に、この移動停止用係止部17は、前記第一ラックギア5を前記第一移動途中位置P2まで往動移動させた際に前記筐体3に係止して、連動移動してきた前記第二ラックギア11を移動停止状態に保持するように構成されていることを特徴とする請求項1記載の制動装置付き移動体に係るものである。
【0014】
また、前記第二ラックギア11に、この第二ラックギア11の往動移動に連動して一方向に回動制御されるロック部材18が設けられていると共に、このロック部材18に前記移動停止用係止部17が設けられていて、前記第一ラックギア5を前記第一移動途中位置P2まで往動移動させると、前記第二ラックギア11の連動往動移動によりロック部材18が一方向に回動制御され、このロック部材18の一方向回動により前記移動停止用係止部17が前記筐体3に係止するように構成されていることを特徴とする請求項3記載の制動装置付き移動体に係るものである。
【0015】
また、前記復動時連動回避手段14は、前記第一ラックギア5を前記第一移動途中位置P2まで復動移動させた際に前記第一ピニオンギア6が前記第一ラックギア5に歯合しようとすることを回避する復動時歯合回避機構19が第一ピニオンギア6と第一ラックギア5とのいずれか一方若しくは双方に設けられて構成されていることを特徴とする請求項1記載の制動装置付き移動体に係るものである。
【0016】
また、前記復動時歯合回避機構19は、前記第一ピニオンギア6が、前記第二ピニオンギア10に対し前記回動軸9に沿って接離移動可能に設けられていて、この第一ピニオンギア6を前記第二ピニオンギア10に接近移動させると第二ピニオンギア10と連結されてこの第一ピニオンギア6が第二ピニオンギア10と連動回動し且つ第一ピニオンギア6が前記第一ラックギア5に歯合可能状態となるように構成されていると共に、第一ピニオンギア6を第二ピニオンギア10から離反移動させると第二ピニオンギア10との連動回動状態が解除され且つ第一ピニオンギア6が第一ラックギア5に歯合不能状態となるように構成されており、
前記第一ラックギア5を前記第一移動途中位置P2まで復動移動させた際に前記第一ピニオンギア6を前記第二ピニオンギア10から離反移動させるピニオン退避誘導部20が、第一ピニオンギア6と第一ラックギア5とのいずれか一方若しくは双方に設けられて構成されていることを特徴とする請求項5記載の制動装置付き移動体に係るものである。
【0017】
また、前記復動付勢復帰手段15は、前記第一ラックギア5に、前記フリー移動区間に位置しているこの第一ラックギア5を前記第二移動途中位置P3まで復動移動させた際に前記第二ラックギア停止保持手段13により移動停止状態となっている第二ラックギア11の移動停止状態を解除誘導するトリガー部21が設けられて構成されていることを特徴とする請求項1記載の制動装置付き移動体に係るものである。
【0018】
また、前記復動付勢復帰手段15は、前記第一ラックギア5に、前記フリー移動区間に位置しているこの第一ラックギア5を前記第二移動途中位置P3まで復動移動させた際に前記ロック部材18を他方向に回動誘導するトリガー部21が設けられていて、このトリガー部21によるロック部材18の他方向回動により前記筐体3に係止していた前記移動停止用係止部17が筐体3から係脱して前記第二ラックギア11の移動停止状態が解除されるように構成されていることを特徴とする請求項4記載の制動装置付き移動体に係るものである。
【0019】
また、前記復動時連動手段16は、前記第一ラックギア5にトリガー部21が設けられ、前記フリー移動区間に位置しているこの第一ラックギア5を前記第二移動途中位置P3まで復動移動させた際に、前記トリガー部21が連結される連結受部22が前記第二ラックギア11に設けられていて、このトリガー部21と連結受部22の連結により第一ラックギア5と第二ラックギア11とが連動復動移動可能となるように構成されていることを特徴とする請求項1記載の制動装置付き移動体に係るものである。
【0020】
また、前記復動時連動手段16は、前記第一ラックギア5に、前記フリー移動区間に位置しているこの第一ラックギア5を前記第二移動途中位置P3まで復動移動させた際に前記ロック部材18を他方向へ回動誘導するトリガー部21が設けられ、このトリガー部21によりロック部材18が他方向へ回動誘導された際にトリガー部21が連結される連結受部22がロック部材18に設けられていて、第一ラックギア5を前記第二移動途中位置P3付近まで復動移動させると、前記トリガー部21により前記ロック部材18が他方向へ回動誘導されトリガー部21が前記連結受部22に連結されて第一ラックギア5と第二ラックギア11とが連動復動移動可能となるように構成されていると共に、ロック部材18が他方向へ回動誘導されることにより前記移動停止用係止部17が前記筐体3から係脱して前記第二ラックギア停止保持手段13による第二ラックギア11の移動停止状態が解除されるように前記復動付勢復帰手段15が構成されていることを特徴とする請求項4記載の制動装置付き移動体に係るものである。
【0021】
また、前記復動付勢復帰手段15により連動復動移動する第一ラックギア5と第二ラックギア11とが前記往動始点位置P1に至った際に、前記復動時連動回避手段14により非連動状態となっていた第一ラックギア5と第二ラックギア11とを前記第一ピニオンギア6と前記第二ピニオンギア10とを介した連動往動移動可能状態に復帰させる往動時ラックギア連動復帰手段23を備えていることを特徴とする請求項1記載の制動装置付き移動体に係るものである。
【0022】
また、前記復動時連動回避手段14は、前記第一ラックギア5を前記第一移動途中位置P2まで復動移動させた際に前記第一ピニオンギア6が前記第一ラックギア5に歯合しようとすることを回避する復動時歯合回避機構19が第一ピニオンギア6と第一ラックギア5とのいずれか一方若しくは双方に設けられて構成されており、
前記往動時ラックギア連動復帰手段23は、前記復動付勢復帰手段15により連動復動移動する前記第一ラックギア5と前記第二ラックギア11とが前記往動始点位置P1に至った際に、前記復動時歯合回避機構19により歯合回避状態となっている前記第一ピニオンギア6と第一ラックギア5とを歯合状態に復帰させる歯合復帰機構24が、前記第一ラックギア5,前記第一ピニオンギア6若しくは前記回動軸9に設けられて構成されていることを特徴とする請求項11記載の制動装置付き移動体に係るものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明は上述のように構成したから、移動体(第一ラックギア)の往動操作を軽い力で行うことができ、復動操作時には復動付勢復帰手段による自動復動付勢が機能する第二移動途中位置を往動始点位置に近い位置に設定することが容易に可能となり、これにより往動始点位置に近い第二移動途中位置まで手動操作で素早く移動体を動かせて移動体を短時間で復動完了させることができる構成を簡易に設計実現可能となるなど、極めて実用性に優れた制動装置付き移動体となる。
【0024】
また、請求項2記載の発明においては、第一ラックギアを往動始点位置から所定の第一移動途中位置まで往動移動させた際に第一ラックギアと第二ラックギアとの連動移動状態を確実に解除する往動時連動解除手段を、簡易構成により容易に設計実現可能となる一層実用性に優れた制動装置付き移動体となる。
【0025】
また、請求項3,4記載の発明においては、前記往動時連動解除手段により第一ラックギアと第二ラックギアとの連動移動状態が解除された際に、連動移動してきた第二ラックギアを確実に移動停止状態に保持する第二ラックギア停止保持手段を、簡易構成により容易に設計実現可能となる一層実用性に優れた制動装置付き移動体となる。
【0026】
また、請求項5,6記載の発明においては、復動移動操作時に第一ラックギアを前記第二ラックギア停止保持手段により移動停止状態に保持されている第二ラックギアと確実に非連動状態で復動移動可能とする復動時連動回避手段を簡易構成により容易に設計実現可能となる一層実用性に優れた制動装置付き移動体となる。
【0027】
また、請求項7,8記載の発明においては、前記復動時連動回避手段により第二ラックギアと非連動状態となっている第一ラックギアを、前記第一移動途中位置より先の復動区間の第二移動途中位置まで復動移動させた際に、前記第二ラックギア停止保持手段による第二ラックギアの移動停止状態を確実に解除する復動付勢復帰手段を簡易構成にして容易に設計実現可能となる一層実用性に優れた制動装置付き移動体となる。
【0028】
また、請求項9,10記載の発明においては、前記復動付勢復帰手段による第二ラックギアの移動停止状態が解除された際に、第二ラックギアと第一ラックギアとを付勢体の付勢力により確実に同じ移動量で連動復動移動させる復動時連動手段を簡易構成にして容易に設計実現可能となる一層実用性に優れた制動装置付き移動体となり、特に請求項10記載の発明のように構成した場合には、第一ラックギアと第二ラックギアとが連動復動移動可能となった際に、前記第二ラックギア停止保持手段による第二ラックギアの移動停止状態も解除される構成を簡易構成にして容易に設計実現可能となる。
【0029】
また、請求項11,12記載の発明においては、第一ラックギアと第二ラックギアとが往動始点位置若しくは往動始点位置付近に至ると、復動時連動回避手段により非連動状態となっていた第一ラックギアと第二ラックギアとが往動時ラックギア連動復帰手段により第一ピニオンギアと第二ピニオンギアとを介した連動往動移動可能状態に復帰するので、繰り返しの往復移動操作に際しても、確実に軽い力で往動操作が可能となる一層実用性に優れた制動装置付き移動体となり、特に請求項12記載の発明にように構成した場合には、前記作用効果を確実に発揮する前記往動時ラックギア連動復帰手段を簡易構成にして容易に設計実現可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】実施例1の移動体制動装置を示す斜視図である。
図2】実施例1の移動体制動装置を示す、筐体及び第一ピニオン付勢体を省略した分解斜視図である。
図3】実施例1の移動体制動装置を示す、筐体及び第一ピニオン付勢体を省略した図2とは反対方向から視た分解斜視図である。
図4】実施例1の移動体制動装置の第一ピニオンギアと第二ピニオンギアとの連動回動構造を示す部分拡大説明斜視図である。
図5】実施例1の使用状態を示す移動体(引戸)の全閉状態(第一ラックギアの往動開始位置)の正面図である。
図6図5の底面図である。
図7図5の状態から、移動体(引戸(第一ラックギア))を少し往動移動させた状態を示す正面図である。
図8図7の底面図である。
図9図7の状態から、移動体(引戸(第一ラックギア))をさらに往動移動させた状態を示す正面図である。
図10図9の底面図である。
図11図9の状態から、移動体(引戸(第一ラックギア))をさらに往動移動させた状態を示す正面図である。
図12図11の底面図である。
図13図11の状態から、移動体(引戸(第一ラックギア))をさらに往動移動させた状態を示す正面図である。
図14図13の底面図である。
図15図13の状態から、移動体(引戸(第一ラックギア))をさらに往動移動させて所定の第一移動途中位置に位置させた状態(移動体をフリー移動区間に位置させた状態)を示す正面図である。
図16図15の底面図である。
図17図15の状態から、移動体(引戸(第一ラックギア))をさらに往動移動させて第二ラックギアが移動停止状態に保持された状態を示す正面図である。
図18図17の底面図である。
図19図17の状態から、移動体(引戸(第一ラックギア))を復動移動させて前記第一移動途中位置より先の復動区間に位置させた状態を示す正面図である。
図20図19の底面図である。
図21図19の、引戸枠及び引戸を省略した拡大側面図である。
図22図19の状態から、移動体(引戸(第一ラックギア))をさらに復動移動させて前記第一移動途中位置より先の復動区間の第二移動途中位置の少し手前に位置させた状態を示す正面図である。
図23図22の底面図である。
図24図22の、引戸枠及び引戸を省略した拡大側面図である。
図25図22の状態から、移動体(引戸(第一ラックギア))をさらに復動移動させて前記第一移動途中位置より先の復動区間の第二移動途中位置に位置させた状態を示す正面図である。
図26図25の底面図である。
図27図25の、引戸枠及び引戸を省略した拡大側面図である。
図28図25の状態から、移動体(引戸(第一ラックギア・第二ラックギア))が付勢体の付勢力によりダンパー装置による制動作用を受けながら往動始点位置に向かって自動復動移動する様子を示す正面図である。
図29図28の底面図である。
図30図28の、引戸枠及び引戸を省略した拡大側面図である。
図31】移動体(引戸(第一ラックギア))が往動始点位置に至った際に第一ピニオンギアが第二ピニオンギアに接近移動して双方が連動回動状態となった様子を示す拡大側面図である。
図32】実施例2の使用状態を示す概略説明側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の最適な実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示し簡単に説明する。
【0032】
本発明の制動装置付き移動体2は、移動体制動装置Aが連結部4を介して連結されており、この移動体制動装置Aの筐体3が支持母体1側に設置されて支持母体1に往復移動自在に設けられる。尚、請求項1中の「移動体2に連結可能な連結部4」なる記載は、連結部4を介して移動体制動装置Aが移動体2と完全に連結一体化するような構成だけを意味しているのではなく、後述する実施例1のような移動体制動装置Aと移動体2とが分離することも可能な凹凸嵌合連結構造によって連結されているような構成をも含む意味合いで用いている。
【0033】
移動体2を支持母体1に対し往動移動操作すると、この移動体2に連結部4を介して連結されている第一ラックギア5が、筐体3に対し往動始点位置P1から往動移動し、これに伴い第一ラックギア5と歯合する第一ピニオンギア6が連動回動する。
【0034】
第一ピニオンギア6が回動すると、第二ピニオンギア10が連動回動し、第二ピニオンギア10と歯合する第二ラックギア11がこの第二ラックギア11を復動方向に移動付勢する付勢体7の付勢力に抗して筐体3に対して往動移動することになる(第一ラックギア5と第二ラックギア11とが連動して往動移動することになる。)。
【0035】
即ち、移動体2(第一ラックギア5)の往動移動操作は、第二ラックギア11に連結されている付勢体7の付勢力に抗して行われるが、この際、連動回動する第一ピニオンギア6と第二ピニオンギア10とは直径比若しくはギア比が異なるために、前記第一ラックギア5と第二ラックギア11とが連動往動移動するが、第一ラックギア5の移動量よりも第二ラックギア11の移動量は小さくなる。
【0036】
従って、移動体2(第一ラックギア5)を往動操作する際の移動量は大きく(長く)なるが、第一ラックギア5の往動移動量よりも小さい移動量しか第二ラックギア11は往動移動しないので、それだけ付勢体7の付勢力に抗する力(例えば、後述の実施例1のような構造の場合には付勢体7を引っ張る力)も小さくて済むために、軽い力で移動体2を往動操作することができる。
【0037】
そのため、例えば重量のある移動体2に対して確実な制動力を得ようと、強力な制動作用を発揮する制動ダンパー8を採用した場合には、この制動作用に負けずに移動体2を自動引込復動できるだけの強力な付勢力を発揮する付勢体7を採用する必要があるが、このように強力な付勢体7を採用した場合であっても、強力な付勢体7の付勢力に抗して移動体2を往動させる力は小さい力で済むので移動体2の往動操作性に優れる。
【0038】
移動体2(第一ラックギア5)を所定の第一移動途中位置P2まで往動移動させると、往動時連動解除手段12により第一ラックギア5と前記第二ラックギア11との連動移動状態が解除されて、前記第一移動途中位置P2から先の往動区間では第一ラックギア5はフリー移動区間となり、このフリー移動区間では第一ラックギア5と連結されている移動体2を手動で自由に往復移動させることができる。
【0039】
また、往動時連動解除手段12により第一ラックギア5と第二ラックギア11との連動移動状態が解除された際には、連動移動してきた前記第二ラックギア11が第二ラックギア停止保持手段13により移動停止状態(ロック状態)に保持されることとなる(第二ラックギア11は、連動移動してきた位置で前記付勢体7の復帰付勢力が加わった状態のまま移動がロックされた状態に保持される。)。尚、請求項1中の「往動時連動解除手段により前記第一ラックギアと前記第二ラックギアとの連動移動状態が解除された際に、連動移動してきた前記第二ラックギアを移動停止状態に保持する第二ラックギア停止保持手段」なる記載は、第一ラックギア5が往動により第一移動途中位置P2に至ると同時に第二ラックギア停止保持手段13が機能して第二ラックギア11が停止保持される構成だけを意味しているのではなく、第一ラックギア5が第一移動途中位置P2より少し手前の往動区間に至った際や第一移動途中位置P2より少し先の往動区間に至った際に第二ラックギア停止保持手段13が機能するような構成をも含む意味合いで用いている。
【0040】
前記フリー移動区間に位置している移動体2(第一ラックギア5)を往動始点位置P1に戻すべく復動移動操作すると、第一ラックギア5が前記第一移動途中位置P2まで復動移動した際に、復動時連動回避手段14により前記第一ラックギア5と前記第二ラックギア11とが連動移動状態となることが回避され、第一ラックギア5を前記第二ラックギア停止保持手段13により移動停止状態に保持されている前記第二ラックギア11とは非連動状態で復動移動させることが可能となる。尚、請求項1中の「フリー移動区間に位置している第一ラックギアを、前記第一移動途中位置まで復動移動させた際に前記第一ラックギアと前記第二ラックギアとが連動移動状態となることを回避して、第一ラックギアを前記第二ラックギア停止保持手段により移動停止状態に保持されている前記第二ラックギアとは非連動状態で復動移動可能とする復動時連動回避手段」なる記載は、第一ラックギア5が復動により第一移動途中位置P2に至ると同時に復動時連動回避手段14が機能して第一ラックギア5が第二ラックギア11と非連動状態で復動移動させることが可能となる構成だけを意味しているのではなく、第一ラックギア5が第一移動途中位置P2より少し手前の復動区間に至った際や第一移動途中位置P2より少し先の復動区間に至った際に復動時連動回避手段14が機能するような構成をも含む意味合いで用いている。
【0041】
また、この復動時連動回避手段14により前記第二ラックギア11と非連動状態となっている前記第一ラックギア5を、前記第一移動途中位置P2より先の復動区間の第二移動途中位置P3まで移動させると、前記第二ラックギア停止保持手段13によって移動停止状態となっている第二ラックギア11の移動停止状態が復動付勢復帰手段15により解除され、さらにこの復動付勢復帰手段15による第二ラックギア11の移動停止状態が解除された際には、復動時連動手段16によりこの第二ラックギア11と前記第一ラックギア5とが連動復動移動可能となって前記付勢体7の付勢力により前記制動ダンパー8に制動(復動速度が緩和)されながら第二ラックギア11と第一ラックギア5とが同じ移動量で自動的に連動復動移動する。尚、請求項1中の「復動時連動回避手段により前記第二ラックギアと非連動状態となっている前記第一ラックギアを、前記第一移動途中位置より先の復動区間の第二移動途中位置まで復動移動させた際に、前記第二ラックギア停止保持手段による第二ラックギアの移動停止状態を解除する復動付勢復帰手段」なる記載は、第一ラックギア5が復動により第二移動途中位置P3に至ると同時に復動付勢復帰手段15が機能して第二ラックギア11の移動停止状態が解除される構成だけを意味しているのではなく、第一ラックギア5が第二移動途中位置P3より少し手前の復動区間に至った際や第二移動途中位置P3より少し先の復動区間に至った際に復動付勢復帰手段15が機能するような構成をも含む意味合いで用いているものであり、また、請求項1中の「復動付勢復帰手段による第二ラックギアの移動停止状態が解除された際に、この第二ラックギアと前記第一ラックギアとを前記付勢体の付勢力により前記制動ダンパーに制動されながら同じ移動量で連動復動移動させる復動時連動手段」なる記載についても、復動付勢復帰手段15が機能すると同時に復動時連動手段16が機能して第二ラックギア11と前記第一ラックギア5とが連動復動移動可能となる構成だけを意味しているのではなく、第一ラックギア5が復動付勢復帰手段15が機能する復動区間より少し手前の復動区間に至った際(復動付勢復帰手段15が機能する少し前)や復動付勢復帰手段15が機能した復動区間より少し先の復動区間に至った際(復動付勢復帰手段15が機能した少し後)に、復動時連動手段16が機能するような構成をも含む意味合いで用いている。
【0042】
即ち、第一ラックギア5と第二ラックギア11とは、復動時にも前記第二移動途中位置P3から連動移動するが、往動時のような移動量に差を生じながらの(第一ラックギア5の移動量より第二ラックギア11の移動量が小さい移動量となる)連動移動ではなく、前記第二移動途中位置P3から双方が同じ移動量で復動移動して前記往動始点位置P1へと自動的に戻ることになる。
【0043】
従って、本発明によれば、移動体2(第一ラックギア11)の往動操作を軽い力で行うことができ、この往動操作には大きい移動量を有する一方で、付勢体7による復動付勢力を直に受ける第二ラックギア11は小さい移動量となり、その分移動体2(第一ラックギア5)の復動時には前記第一移動途中位置P2より先の復動区間の第二移動途中位置P3からしか付勢体7による自動復動(引込)機能が働かない構成であるが、それ故に前記復動付勢復帰手段15による自動復動付勢が機能する第二移動途中位置P3を前記往動始点位置P1に近い位置に設定することが容易に可能となり、このように構成することで往動始点位置P1に近い第二移動途中位置P3まで手動操作で早く移動体2を動かせて移動体2を早く復動完了させることができる。
【0044】
よって、例えば、本発明の制動装置付き移動体2を引戸枠1A(支持母体1)に対して往復移動する引戸2Aや、キャビネット1B(支持母体1)に対して往復移動する引出し2Bに適用し、移動体2を開く方向への移動が往動移動、閉じる方向への移動が伏動移動となるように構成した場合には、引戸2Aや引出し2Bを軽い力で開けることができ、開けた引戸2Aや引出し2Bを閉じる際には、確実なソフトクローズが達成されるだけでなく、全閉位置(往動始点位置P1)に近く復動付勢が機能する位置(第二移動途中位置P3)まで引戸2Aや引出し2Bを手動操作で早く動かすことができて引戸2Aや引出し2Bが素早く短時間で閉じられる非常に実用的な構成を簡易に設計実現可能となる。
【実施例0045】
本発明の具体的な実施例1について図1図31に基づいて説明する。
【0046】
本実施例は、本発明を引戸2Aに適用した場合である。即ち、本実施例は、引戸枠1A(支持母体1)に往復移動自在に設けられる引戸2A(移動体2)であって、復動(閉動)移動に制動力を付与する移動体制動装置Aを介して前記引戸枠1Aに設けられる制動装置付き引戸2Aを示している(以下、本実施例では、支持母体1を引戸枠1A、移動体2を引戸2Aと称して説明する。)。
【0047】
また、本実施例の前記移動体制動装置Aは、前記引戸枠1A側に設置可能な筐体3と、この筐体3に往復移動可能に設けられ前記引戸2Aに連結可能な連結部4とから構成されている。
【0048】
具体的には、前記移動体制動装置Aは、前記筐体3の下部に下方に向かって凸となる突起形状の前記連結部4が設けられており、この連結部4が引戸2Aの上部に設けられている図示省略の連結用凹部に凹凸嵌合連結されることによって引戸2Aの上部に移動体制動装置Aが設けられている。
【0049】
本実施例の引戸枠1Aへの取付構造について説明すると、引戸枠1Aの上枠部に上方に向かって凹となる横長形状の取付溝25が形成されており、この取付溝25内に前記筐体3の上側半分程度が埋設状態に取付けられることによって引戸2Aが引戸枠1A内に左右方向に往復移動自在に収められている。尚、図面は、一枚の引戸2Aによる片引戸構造を示しているが、引違い戸や引分け戸(両引戸)などの他の引戸にも適用可能である。
【0050】
以下、本実施例の移動体制動装置Aについてさらに詳しく説明する。
【0051】
この移動体制動装置Aの前記筐体3は、図1に示すような引戸2Aの往復移動方向に沿った長さを有する横長の略直方体形状に形成されており、この筐体3内の下部寄りには、筐体3の長さ方向に沿った長さを有する棒状の支持フレーム26を備えている。尚、本実施例では、説明の都合上、筐体3の長さ方向を移動体制動装置Aの左右方向、図1図2における手前側を移動体制動装置A(筐体3)の前側、図1図2における奥側を移動体制動装置A(筐体3)の後側と定めて説明する。
【0052】
また、この筐体3には、前記連結部4を備えこの連結部4を介して前記引戸2Aとともに引戸2Aの往復移動方向に沿って往復移動する第一ラックギア5が設けられている。
【0053】
この第一ラックギア5は、図2に示すように前記筐体3や前記支持フレーム26より短いが筐体3の長さ方向に沿った長さを有する棒状体に形成されており、図1図2における左側の小範囲を除いた上面の広範囲にラック歯5Aが形成されていると共に、中央やや右側寄りの下部に、前記連結部4が下方に向かって突設され、さらに前記ラック歯5Aの後側に、このラック歯5Aの形成範囲に合わせて後述する第一ピニオンギア6が沿設し摺動移動する歯合回避用隔壁32が立設状態に設けられている。
【0054】
また、この第一ラックギア5のラック歯5A下方の前側には、前記支持フレーム26の下部に突設されているガイド凸条27にスライド移動自在に嵌合するスライド用凹部28がこの第一ラックギア5の長さ幅いっぱいに設けられている一方、このスライド用凹部28の反対側(後側)には、前記筐体3内に設けられている図示省略のガイド凹条にスライド移動自在に嵌合するスライド用凸部29がこの第一ラックギア5の長さ幅いっぱいに設けられていて、このスライド用凹部28とスライド用凸部29との二点で支持されていることにより第一ラックギア5は前記支持フレーム26と筐体3に対しその下方側で往復移動自在に設けられていると共に、この第一ラックギア5は、前記筐体3下部に形成されている図示省略の開口窓から前記連結部4を含む下部が筐体3の下方へ露出するようにして設けられている。
【0055】
また、本実施例では、この第一ラックギア5がその左端が筐体3内に収まっていて図1図2において最も右側に位置している状態が往動始点位置P1にある状態となり、この往動始点位置P1で全閉状態の引戸2Aに前記連結部4を介して連結されていて、この往動始点位置P1(引戸2A全閉状態)から図面左側に移動することが往動移動(引戸2Aの開き移動)となり、往動移動後に往動始点位置P1に戻そうと図面右側に移動することが復動移動(引戸2Aの閉じ移動)となるように構成されている。
【0056】
また、この第一ラックギア5は、図1図2における左側端部に前側に向かって小さく突設する丸棒状のトリガー部21が設けられている共に、長さ方向の中央やや右寄り位置から右端部にかけて前側へ水平帯板状に突設する摺動部30が設けられており、さらにこの摺動部30の上面は平坦面に形成されてこの平坦上面が後述するロック部材18を所定の回動状態に維持しつつ摺動させる摺動面31として構成されていると共に、この摺動面31の図面左側端部は左端側ほど下方に存する傾斜面に形成されてこの左端傾斜面が前記ロック部材18を一方向に回動誘導する誘導傾斜面31Aとして構成されている。
【0057】
また、ここで前記支持フレーム26についてさらに説明すると、図2図3図21に示すように、側断面形状が略S字状を呈する形状に構成されており、前側下段部の後面部には前記ガイド凸条27がこの支持フレーム26の長さ幅いっぱいに後方側に向けて突設されていて、このガイド凸条27にガイドされて第一ラックギア5が支持フレーム26(筐体3)に対し筐体3の長さ方向(引戸2Aの往復移動方向)に沿って往復移動自在に設けられている。
【0058】
また、前記筐体3内には、前記第一ラックギア5及び前記支持フレーム26の上方に、この支持フレーム26の長さ方向と直交する前後方向と合致する方向に軸方向を有するようにして回動軸9が軸支されており、さらにこの回動軸9には、第一ピニオンギア6が回動自在に設けられていて、この第一ピニオンギア6が支持フレーム26中ほどの上方に配設されている。
【0059】
また、この第一ピニオンギア6は、支持フレーム26の後側上段部の中ほどに切欠形成された歯合用窓33を介して支持フレーム26下方の前記第一ラックギア5(のラック歯5A)と歯合可能に構成されていて、この歯合用窓33の下方を第一ラックギア5のラック歯5Aが往動通過する際に第一ラックギア5と第一ピニオンギア6とが歯合して、第一ラックギア5の往復移動に伴って第一ピニオンギア6が連動回動するように構成されている。図中符号34は第一ピニオンギア6の側面に同心円状に設けられているガイド用段部、35は支持フレーム26中ほどの上部に設けられて第一ピニオンギア6のガイド用段部34を下方側から摺動自在に支持するギア下受部、36はギア受部35と上下対向状態に筐体3に取付けられて第一ピニオンギア6の前記ガイド用段部34を上方から摺動自在に支持するギア上受部材である。
【0060】
また、この筐体3内には、前記第一ピニオンギア6の回動軸9と同軸上に軸支されて第一ピニオンギア6と連動して回動可能な第二ピニオンギア10が配設されている。
【0061】
また、この第二ピニオンギア10は、前記第一ピニオンギア6とは直径比が異なる第一ピニオンギア6より小径なピニオンギアが採用されていると共に、第一ピニオンギア6とはギア比も異なるものが採用されて構成されている。
【0062】
また、この筐体3には、前記第二ピニオンギア10と歯合し第二ピニオンギア10の回動に伴って前記引戸2Aの往復移動方向に連動移動すると共に、前記第一ピニオンギア6と前記第二ピニオンギア10の異なる直径比とギア比によって前記第一ラックギア5の移動に連動して移動するが第一ラックギア5の移動量よりも小さい移動量となる第二ラックギア11が設けられている。
【0063】
この第一ラックギア5と第二ラックギア11の連動移動に移動量の差を生じさせる前記第一ピニオンギア6と前記第二ピニオンギア10の構成の一例を示すと、例えば、第一ピニオンギア6は、歯数30,歯間ピッチ1mmのものが採用され、第二ピニオンギア10は、歯数20、歯間ピッチ0.5mmのものが採用されていて、第一ラックギア5が第二ラックギア11に対して二倍の移動量で往動移動するように構成されている。
【0064】
また、この第二ラックギア11は、図2に示すように前記第一ラックギア5より短いが前記筐体3の長さ方向に沿った長さを有する棒状体に形成されており、図1図2における左右両端部の小範囲を除いた上面の広範囲にラック歯11Aが形成されている。
【0065】
また、さらにこの第二ラックギア11は、下面が平坦面に形成されてこの平坦下面が、前記支持フレーム26に設けられている支持面37に対して摺動移動自在に支持される摺動用下面38として構成されていると共に、前側面と後側面にはスライド凸条53が突設されてこの前側スライド凸条53が筐体3に設けられている図示省略のガイド凹溝にスライド移動自在に嵌合装着され、後側スライド凸条53が支持フレーム26に設けられているガイド凹溝54にスライド移動自在に嵌合装着されている。即ち、この第二ラックギア11は、支持面37と前後のスライド凸条53の三点で支持されていることにより筐体3と支持フレーム26に対し筐体3内の支持フレーム26の上方側で往復スライド移動自在に設けられている。
【0066】
また、ここで前記支持フレーム26についてさらに説明すると、その前側下段部は図2に示すように図面右端から中ほどよりやや左寄り位置にかけての範囲に設けられており、この前側下段部の上面が平坦面に形成されてこの平坦上面が前記支持面37として構成されていて、この支持面37上に支持されながら前記第二ラックギア11が支持フレーム26(筐体3)に対し筐体3の長さ方向(引戸2Aの往復移動方向)に沿って往復移動自在に設けられている。
【0067】
また、この支持フレーム26の、前側下段部が存在しない図2中ほどから左端にかけての前側面は、後述するロック部材18が沿設状態に移動するロック部材沿設面42として構成され、このロック部材沿設面42には、支持フレーム26の長さ方向に沿った長さを有する前記ガイド凹溝54が形成されている。
【0068】
また、このロック部材沿設面42には、ロック部材18に設けられている誘導突部48が嵌合してロック部材18をその摺動位置によって回動案内制御する案内溝43が刻設されていると共に、ロック部材沿設面42の図2における左端付近に刻設されている案内溝43(第二案内溝43B)付近には、ロック部材18に設けられる後述の移動停止用係止部17が係脱自在に係止する係合部44が設けられている。
【0069】
また、前記第二ラックギア11は、図2における右端の下部に付勢体連結部39が設けられており、この付勢体連結部39に、付勢体7としての抗張弾性を有するコイルばね7の一端が連結され、このコイルばね7の他端が前記筐体3内の右端部に連結されていることにより、第二ラックギア11はコイルばね7によって復動方向(図2における右方向)に移動付勢されるように構成されている。
【0070】
また、第二ラックギア11の図2における右端の上部には、ダンパー連結部40が設けられており、このダンパー連結部40に、制動ダンパー8としての直動ダンパー8の一端が連結され、この直動ダンパー8の他端が前記筐体3内の右端部に連結されていることにより、前記コイルばね7の付勢力による第二ラックギア11の自動復動移動には、この直動ダンパー8の制動作用が付与されるように構成されている。
【0071】
また、この第二ラックギア11は、図2における左端に前方に向けて(第二ラックギア11の長さ方向と直交する方向が軸方向となる)枢軸41が突設されていて、この枢軸41にはロック部材18が回動自在に支持されている。
【0072】
本実施例は、前記第一ラックギア5を往動始点位置P1から所定の第一移動途中位置P2まで往動移動させた際にこの第一ラックギア5と前記第二ラックギア11との連動移動状態を解除して、前記第一移動途中位置P2より先の往動区間を第一ラックギア5のフリー移動区間とする往動時連動解除手段12を備えている。
【0073】
この往動時連動解除手段12について説明すると、前記第一ラックギア5を往動始点位置P1から所定の第一移動途中位置P2まで往動移動させると、往動移動したこの第一ラックギア5が前記第一ピニオンギア6から離脱して(第一ラックギア5が第一ピニオンギア6を通り過ぎて)第一ラックギア5と前記第二ラックギア11との連動移動状態が解除されるように、第一ラックギア5と第一ピニオンギア6との位置関係並びに第一ラックギア5の長さ寸法が設定構成されている。このように本実施例では、第一ラックギア5(引戸2A)が往動移動して第一ピニオンギア6を通過することで離脱する簡易構造の往動時連動解除手段12を採用した場合を示しているが、第一ラックギア5を前記往動始点位置P1から前記第一移動途中位置P2まで往動移動させた際に、第一ラックギア5と第一ピニオンギア6とが機械的に離間して歯合状態(連動状態)が解除されるような構成の往動時連動解除手段12が採用されていても良い。
【0074】
また、本実施例では、この往動時連動解除手段12により前記第一ラックギア5と前記第二ラックギア11との連動移動状態が解除された際に、連動移動してきた前記第二ラックギア11を移動停止状態に保持する第二ラックギア停止保持手段13を備えている。
【0075】
この第二ラックギア停止保持手段13について説明すると、前記第二ラックギア11に、前記筐体3に係止する移動停止用係止部17が設けられて構成されていると共に、この移動停止用係止部17は、前記第一ラックギア5を前記第一移動途中位置P2まで往動移動させた際に前記筐体3に係止して、連動移動してきた前記第二ラックギア11を移動停止状態に保持するように構成されている。
【0076】
さらに詳しくは、前記ロック部材18は、前記第二ラックギア11の往動移動に連動して一方向に回動制御されるように構成されていると共に、このロック部材18に前記移動停止用係止部17が設けられている。即ち、前記第一ラックギア5を前記第一移動途中位置P2まで往動移動させると、前記第二ラックギア11の連動往動移動によりロック部材18が一方向に回動制御され、このロック部材18の回動により前記移動停止用係止部17が前記筐体3に係止するように構成されている。
【0077】
また、ここで前記ロック部材18について説明すると、いびつな円盤形状体に形成されていると共に、外周の一部に前記第一ラックギア5のトリガー部21が係脱自在に係合可能な凹形状の連結受部22が設けられていて、前記枢軸41を支点にこの連結受部22が真下(垂直方向)を向いた状態(初期状態)から図1図2における図面左側に45度程度傾動するまでの範囲で回動自在に設けられている。そして、第一ラックギア5が前記往動始点位置P1にある時、前記トリガー部21が真下方向を向いた状態の連結凹部22に係合係止した状態となるように構成されており、この前記往動始点位置P1にある第一ラックギア5を往動移動させると、この第一ラックギア5と第二ラックギア11の移動量の差によって大きく(早く)移動するトリガー部21が連結受部22を介してロック部材18を図面左側に傾動(一方向に回動)させることとなり(図7参照)、その後の継続的な第一ラックギア5の往動移動によりロック部材18の連結受部22が図面左側に45度程度傾動すると、復動時を示したものであるが図22に示した状態となり、連結受部22からトリガー部21が係脱して第一ラックギア5の往動移動を阻害しないように構成されている(図9参照)。
【0078】
また、このロック部材18は、前記連結受部22の図2における右側に隣接する外周面が、前記摺動面31及び誘導傾斜面31Aに接触する平坦面状の回動誘発部45として構成されていると共に、前記ロック部材沿設面42に臨設させる側面には、前記誘導凸部48が突設されており、前記往動始点位置P1から前記第一ラックギア5を往動移動させると、前記トリガー部21によってロック部材18が一方向に回動制御されるが、このロック部材18の回動に伴って誘導凸部48が前記案内溝43に嵌合することとなり、その後の第一ラックギア5の継続的な往動移動に際して誘導凸部48が案内溝43に嵌合状態のまま移動して、この案内溝43の溝形状に沿ってロック部材18が回動制御されるように構成されている。
【0079】
また、ここで案内溝43についてさらに詳しく説明すると、前記ロック部材沿設面42の中ほどの広範囲に設けられる横長の第一案内溝43Aと、前記ロック部材沿設面42の図2における左端側に設けられる縦長の第二案内溝43Bとから成る。
【0080】
第一案内溝43Aは、支持フレーム26の長さ方向に沿った横長の水平溝と、この水平溝の図2における右端から連続し右端側ほど下方に存するように傾斜して下端が開放する右側傾斜溝と、前記水平溝の左端から連続し左端側ほど下方に存するように傾斜して下端が開放する左側傾斜溝とを有する形状に形成されていて、前記第一ラックギア5が往動移動すると、前記トリガー部21により前記ロック部材18が一方向に回動制御されて前記誘導凸部48が第一案内溝43Aの右側傾斜溝に下端開放部から嵌合し(図7参照)、第一ラックギア5の往動移動が進むにつれ右側傾斜溝に沿って誘導凸部48が移動することによって前記連結受部22が最終的に図面左側に45度程度傾動した状態までロック部材18が回動制御され、誘導凸部48が右側傾斜溝を越えて水平溝に至るとこの傾動状態のままでロック部材18がしばらく往動移動(図9参照)し、この傾動保持状態での往動移動中に連結受部22からトリガー部21が係脱するように構成され、誘導凸部48が水平溝を越えて左側傾斜溝に至るとこの左側傾斜溝に沿って誘導凸部48が移動することによってロック部材18が他(反対)方向へ回動制御され(図11参照)、誘導凸部48が左側傾斜溝を越えて(左側傾斜溝の下端開放部から嵌脱して)この左側傾斜溝と前記第二案内溝43Bとの間の前記支持フレーム26の下縁に沿設すると、前記連結受部22が真下を向いた状態に戻るように構成されている(図13参照)。
【0081】
前記第二案内溝43Bは、下端が開放し上側ほど図2における左側に存するようにして湾曲状に立ち上がる縦長の湾曲溝に形成されていて、前記誘導凸部48が前記第一案内溝43Aの左側傾斜溝をその下端開放部から嵌脱して前記支持フレーム26下縁に沿設してからも第一ラックギア5を往動移動させると、第一ラックギア5の前記誘導傾斜面31Aが前記ロック部材18の回動誘発部45に接触してロック部材18が再び一方向に回動制御され、この一方向回動により前記誘導凸部48が第二案内溝43Bに下端開放部から嵌合するように構成されている(図15参照)。
【0082】
また、前記ロック部材沿設面42の、前記第二案内溝43B上端部の図1図2における右側に隣接する位置には嵌合ブロック46が前方へ向けて突設されており、この嵌合ブロック46の図2における左側面には前記係合部44としての凹部44が設けられている一方、前記ロック部材18には、このロック部材18が一方向へ回動制御されて前記誘導凸部48が前記第二案内溝43Bに嵌合した際に前記嵌合ブロック46に被嵌する被嵌凹部47が前記連結受部22の図3における左側(連結受部22を挟んで前記回動誘発部45の反対側に隣接状態にして凹設されていると共に、この被嵌凹部47には、誘導凸部48が第二案内溝43Bの上端部に至った際に前記係合部44に係脱自在に凹凸係合する前記移動停止用係止部17としての突起17が設けられている。そして、前記誘導凸部48が前記第二案内溝43Bに嵌合しながらロック部材18が一方向へ回動制御されることにより移動停止用係止部17が係合部44(筐体3(支持フレーム26))に凹凸係合係止すると、第二ラックギア11が前記付勢体7による復動付勢力が加わった状態で移動停止状態に保持されるように構成されていると共に、本実施例ではこの移動停止用係止部17と係合部44の凹凸係合係止が前記第一ラックギア5を前記第一移動途中位置P2まで往動移動させて(図15の状態)さらにこの第一移動途中位置P2から少し先の往動区間まで移動させた際に行われるように構成、即ち第一ラックギア5を第一移動途中位置P2より少し先の往動区間まで往動移動させた際に、連動移動してきた第二ラックギア11が移動停止状態に保持されるように設定構成されている(図17参照)。
【0083】
また、本実施例では、前記フリー移動区間に位置している第一ラックギア5を、前記第一移動途中位置P2まで復動移動させた際に前記第一ラックギア5と前記第二ラックギア11とが連動移動状態となることを回避して、第一ラックギア5を前記第二ラックギア停止保持手段13により移動停止状態に保持されている前記第二ラックギア11とは非連動状態で復動移動可能とする復動時連動回避手段14を備えている。
【0084】
この復動時連動回避手段14について説明すると、前記第一ラックギア5を前記第一移動途中位置P2まで復動移動させた際に前記第一ピニオンギア6が前記第一ラックギア5に歯合しようとすることを回避する復動時歯合回避機構19が第一ピニオンギア6と第一ラックギア5とに設けられて構成されている。
【0085】
前記復動時歯合回避機構19は、前記第一ピニオンギア6が、前記第二ピニオンギア10に対し前記回動軸9に沿って接離移動可能に設けられていて、この第一ピニオンギア6を前記回動軸9上で前記第二ピニオンギア10に接近移動させると、第二ピニオンギア10と連結されてこの第一ピニオンギア6が第二ピニオンギア10と連動回動可能且つ第一ピニオンギア6が前記第一ラックギア5に歯合可能状態となり、第一ピニオンギア6を第二ピニオンギア10から離反移動させると、第二ピニオンギア10との連動回動状態が解除されてこの第一ピオニンギア6が第二ピニオンギア10と連動回動不能且つ第一ピニオンギア6が第一ラックギア5に歯合不能状態となるように構成されており、さらに前記第一ラックギア5を前記第一移動途中位置P2まで復動移動させた際に前記第一ピニオンギア6を第二ピニオンギア10から離反移動させるピニオン退避誘導部20が第一ピニオンギア6と第一ラックギア5とに設けられて構成されている。
【0086】
具体的には、前記回動軸9は、図4に示すように前記第二ピニオンギア10に一体的に設けられており、この回動軸9に対して前記第一ピニオンギア6がこの回動軸9の軸方向にスライド移動自在に被嵌(遊嵌)装着されている。
【0087】
また、この第二ピニオンギア10の、前記第一ピニオンギア6への臨設側面には、この第二ピニオンギア10の回動方向にノコギリ刃状に連続する連動係止部49が設けられている一方、この連動係止部49が係脱自在に凹凸係合可能なノコギリ刃形状の連動係合部50が、第一ピニオンギア6の第二ピニオンギア10への臨設側面にその回動方向に連続するように設けられていて(図4参照)、前記回動軸9に沿って第一ピニオンギア6が第二ピニオンギア10に接近移動すると、連動係止部49が連動係合部50に係合係止して第一ピニオンギア6と第二ピニオンギア10とが連動回動可能となると共に、連動係止部49と連動係合部50とが係止状態では、第一ピニオンギア6が前記第一ラックギア5に歯合可能となるように第一ピニオンギア6と第一ラックギア5と第二ピニオンギア10との位置関係が設定構成され、逆に第一ピニオンギア6が第二ピニオンギア10から離間移動すると、連動係止部49と連動係合部50とが係脱して第一ピニオンギア6が前記回動軸9上で第二ピニオンギア10とは無関係に回動可能となると共に、第一ピニオンギア6が第二ピニオンギア10から離間して連動係止部49と連動係合部50とが係脱した状態では、第一ピニオンギア6が、前記第一ラックギア5のラック歯5Aに隣接する前記歯合回避用隔壁32の後方側に位置してラック歯5Aに歯合できなくなり、第一ピニオンギア6は歯合回避用隔壁32の後面に沿って復動移動するように構成されている。
【0088】
また、図4に示すように、前記第一ピニオンギア6の全ての歯車の前側縁が外周側ほど後方へ存する傾斜縁に形成されて、この傾斜縁が前記ピニオン退避誘導部20としてのピニオン側退避誘導部20Aとして構成されている一方、前記第一ラックギア5の図2における右端から数箇所(図3における左端から数箇所(二箇所))のラック歯5Aの後側縁と、前記歯合回避用隔壁32の図2における右端(図3における左端)縁部とが、図2中の右側(図3中の左側)ほど前方へ存する傾斜縁に形成されてこの傾斜縁が前記ピニオン退避誘導部20としてのラック側退避誘導部20Bとして構成されている。
【0089】
従って、前記フリー移動区間に位置している第一ラックギア5を、前記第一移動途中位置P2まで復動移動させると、前記第二ラックギア停止保持手段13により停止している第二ラックギア11に歯合している第二ピニオンギア10は回動不能な状態となっており、それ故第一ラックギア5を第一移動途中位置P2より先の復動区間に移動させようとすると(図19図20参照)、第二ピニオンギア10に接近して連動回動状態となっている第一ピニオンギア6は、その前記ピニオン側退避誘導部20Aに前記ラック側退避誘導部20Bが接することで回動軸9に沿って後側へと誘導移動させられることになり(図21参照)、これにより第一ピニオンギア6が第二ピニオンギア10から離間移動して連動回動状態が回避(解除)されると共に、第一ピニオンギア6は、前記歯合回避用隔壁32の後側へと移動させられてこれ以降の復動区間ではこの歯合回避用隔壁32が第一ピオニンギア6の前側に存在している限り(第一ラックギア5の移動によって歯合回避用隔壁32が第一ピニオンギア6の前側を通り過ぎない限り)第一ラックギア5のラック歯5Aと歯合することができなくなる(図24参照)。そして、第一ラックギア5の復動移動に伴い第一ピニオンギア6は歯合回避用隔壁32の後面に摺動するかたちとなって第一ラックギア5が前記往動始点位置P1付近に至るまでは非歯合状態が継続され(図27図30参照)、その結果第一ラックギア5は前記第二ラックギア停止保持手段13により移動停止状態に保持されている前記第二ラックギア11とは非連動状態で復動移動可能となるように構成されている(図19図20図22図23参照)。
【0090】
即ち、本実施例の復動時連動回避手段14(復動時歯合回避機構19)は、第一ラックギア5が復動により前記第一移動途中位置P2に至ると同時に機能するのではなく、第一ラックギア5が第一移動途中位置P2より少し先の復動区間に至った時に機能するように構成されている。尚、復動時連動回避手段14(復動時歯合回避機構19)は、第一ラックギア5が復動により前記第一移動途中位置P2に至ると同時に機能する構成が採用されていても良いし、第一ラックギア5が第一移動途中位置P2より少し手前の復動区間に至った時に機能する構成が採用されていても良い。
【0091】
また、本実施例では、前記復動時連動回避手段14により前記第二ラックギア11と非連動状態となっている前記第一ラックギア5を、前記第一移動途中位置P2より先の復動区間の第二移動途中位置P3まで復動移動させた際に、この第二ラックギア停止保持手段13による第二ラックギア11の移動停止状態を解除する復動付勢復帰手段15を備えている。
【0092】
この復動付勢復帰手段15は、前記第一ラックギア5の復動移動により前記復動時連動回避手段14が機能した後、この第一ラックギア5をさらに前記第二移動途中位置P3まで復動移動させた際に、前記第二ラックギア停止保持手段13により移動停止状態となっている第二ラックギア11の移動停止状態を解除誘導する前記トリガー部21が設けられて構成されている。
【0093】
さらに詳しくは、前記フリー移動区間に位置しているこの第一ラックギア5を復動移動させて前記復動時連動回避手段14が機能した後も前記第二移動途中位置P3まで継続的に復動移動させた際に、前記ロック部材18を他方向に回動誘導する前記トリガー部21が第一ラックギア5に設けられていて、このトリガー部21によるロック部材18の他方向への回動誘導により、前記筐体3(の支持フレーム26に設けられている係合部44)に係止していた前記移動停止用係止部17が係合部44(筐体3)から係脱して前記第二ラックギア11の移動停止状態が解除されるように構成されている。
【0094】
また、トリガー部21による前記ロック部材18の他方向への回動誘導構造は、前記第一ラックギア5を前記第二移動途中位置P3まで復動移動させると、第二ラックギア停止保持手段13により傾動状態となっている前記連結受部22の図2における右側下部に前記トリガー部21が引っ掛かるようにこの連結受部22の形状が設定構成されており(図22図23参照)、トリガー部21引っ掛かり後も第一ラックギア5を復動移動させると、移動するトリガー部21によりロック部材18が他方向へ回動制御されて前記移動停止用係止部17が前記係合部44から係脱し、前記第二ラックギア11の移動停止状態が解除されてこの時点から第二ラックギア11に対するコイルばね7の付勢力が復帰(正常化)して第二ラックギア11が自動的に復動移動を開始するように構成されている(図25図26参照)。
【0095】
即ち、本実施例の復動付勢復帰手段15は、第一ラックギア5が復動により第二移動途中位置P3に至ると同時に機能するのではなく、第一ラックギア5が第二移動途中位置P3より少し先の復動区間に至った時に機能するように構成されている。尚、復動付勢復帰手段15は、第一ラックギア5が復動により前記第二移動途中位置P3に至ると同時に機能する構成が採用されていても良いし、第一ラックギア5が第二移動途中位置P3より少し手前の復動区間に至った時に機能する構成が採用されていても良い。
【0096】
また、本実施例は、前記復動付勢復帰手段15による第二ラックギア11の移動停止状態が解除された際に、この第二ラックギア11と前記第一ラックギア5とを前記付勢体7の付勢力により前記制動ダンパー8に制動されながら同じ移動量で連動復動移動させる復動時連動手段16を備えている。
【0097】
この復動時連動手段16は、前記フリー移動区間に位置しているこの第一ラックギア5を前記第二移動途中位置P3まで復動移動させると、第二ラックギア停止保持手段13により傾動状態となっている前記連結受部22の図2における右側下部に前記トリガー部21が引っ掛かり(図22図23参照)、トリガー部21引っ掛かり後も第一ラックギア5を復動移動させると、トリガー部21によってロック部材18が他方向へ回動制御され、これによって前記移動停止用係止部17が前記係合部44から係脱する(前記復動付勢復帰手段15により前記第二ラックギア停止保持手段13が解除される(図25図26参照))が、このロック部材18の他方向への回動制御によって前記誘導凸部48が前記第二案内溝43Bの下端から嵌脱し連結受部22が真下を向いた状態(初期状態)に戻ると)と、この連結受部22がトリガー部21と連結されて第一ラックギア5と第二ラックギア11とが連結され、これによって第一ラックギア5と第二ラックギア11とが連動復動移動(コイルばね7による自動復動移動)可能となるように構成されている(図28図29参照)。
【0098】
即ち、本実施例の復動時連動手段16は、前記復動付勢復帰手段15と機能を兼用する構造が採用されていて、前記復動付勢復帰手段15による第二ラックギア11の移動停止状態の解除と同時に機能するように構成されている。尚、復動時連動手段16は、復動付勢復帰手段15による第二ラックギア11の移動停止状態が解除される少し前で機能する構成が採用されていても良いし、復動付勢復帰手段15による第二ラックギア11の移動停止状態が解除される少し後に機能する構成が採用されていても良い。
【0099】
また、本実施例では、この復動時連動手段16により第一ラックギア5と第二ラックギア11とが連動自動復動移動する際、前記第二案内溝43Bから嵌脱した後の前記誘導凸部48が、万一前記第一案内溝43Aの図2における左側端部に嵌合して前記ロック部材18が不必要に回動してしまうことを防止する連動復動時ロック部材回動防止手段51を備えている。
【0100】
この連動復動時ロック部材回動防止手段51は、前記第一案内溝43Aが図2における左側ほど溝底が徐々に浅くなるように形成されていて(図6参照)、この第一案内溝43Aの左側浅底部位からは、前記誘導凸部48が簡単には嵌合できないように構成されている。
【0101】
また、前記ロック部材18は、(その軸受孔が)前記枢軸41に対し若干のクリアランスを有していて、このロック部材18が枢軸41を支点に回動自在且つ枢軸41の軸方向に対し若干傾動可能に設けられており、これにより往動時に深さが変化する第一案内溝43Aに対して誘導凸部48が移動する際には、ロック部材18が傾くことで第一案内溝43Aに対する誘導凸部48の移動が許容されるように構成されている(図8図10図12参照)と共に、このロック部材18の前記ロック部材沿設面42に臨設する側面が、ロック部材18の傾きを許容する傾斜面形状であって、且つ第二ラックギア11復動時に前記誘導凸部48が第一案内溝43Aの浅底部位(左側傾斜溝の下端開放部)を通過する際には、誘導凸部48が第一案内溝43Aの浅底部位から嵌合できないようにロック部材18の傾きを抑制する傾斜面形状に形成されて構成されている。
【0102】
また、本実施例では、前記復動付勢復帰手段15により連動復動移動する第一ラックギア5と第二ラックギア11とが前記往動始点位置P1付近に至った際に、前記復動時連動回避手段14により非連動状態となっていた前記第一ラックギア5前記と第二ラックギア11とを、第一ラックギア5と前記第一ピニオンギア6を歯合状態に復帰させることにより連動往動移動可能状態に復帰させる往動時ラックギア連動復帰手段23を備えている。
【0103】
この往動時ラックギア連動復帰手段23は、前記復動付勢復帰手段15及び復動時連動手段16により連動自動復動移動してきた前記第一ラックギア5と前記第二ラックギア11とが前記往動始点位置P1に至った際に、前記復動時歯合回避機構19により前記第二ピニオンギア10から離反移動している前記第一ピニオンギア6を第二ピニオンギア10に接近移動させる歯合復帰機構24が、前記回動軸9と前記第一ラックギア5と前記第一ピニオンギア6とに設けられて構成されている。
【0104】
この歯合復帰機構24について具体的に説明すると、前記回動軸9には、第一ピニオンギア6をこの回動軸9に沿って第二ピニオンギア10に接近移動させる方向に常時付勢する第一ピニオン付勢体52としての抗縮弾性を有するコイルばね52が設けられ(外装され)ている。即ち、前記復動時連動回避手段14(復動時歯合回避機構19)による第一ピニオンギア6の第二ピニオンギア10に対する離間移動は、このコイルばね52の付勢力に抗して行われるように構成されている。
【0105】
また、前記第一ラックギア5の歯合回避用隔壁32は、上述したように第一ラックギア5の全長いっぱいに形成されておらず、図2における左側(図3における右側)にはこの歯合回避用隔壁32のない箇所(無壁部)が存在しており、第一ラックギア5の復動によりこの無壁部が第一ピニオンギア6に至ると、第一ピニオンギア6が前記第二ピニオンギア10に接近移動可能となって前記コイルばね52の付勢力により自動的に第一ピニオンギア6が前記第二ピニオンギア10に接近移動し、前記連動係止部49と前記連動係合部50とが係合係止して第一ピニオンギア6が前記第二ピニオンギア10と連動回動する状態に復帰すると共に、第一ピニオンギア6が前記第一ラックギア5と歯合可能な状態(位置)に復帰するように構成されている(図30図31参照)。
【0106】
即ち、往動させていた第一ラックギア5を復動させて往動始点位置P1に戻すと(開いていた引戸2Aを閉じると)、その操作が行われる都度往動時ラックギア連動復帰手段23(歯合復帰機構24)が機能するように構成されている。
【0107】
また、本実施例の往動時ラックギア連動復帰手段23(歯合復帰機構24)は、復動する第一ラックギア5が往動始点位置P1に至る少し手前の位置で機能するように、前記第一ピニオンギア6と前記歯合回避用隔壁32の位置関係や歯合回避用隔壁32(無壁部)の形成範囲などが設定構成されているが、復動する第一ラックギア5が往動始点位置P1に至ると同時に機能する構成の往動時ラックギア連動復帰手段23(歯合復帰機構24)が採用されていても良い。
【0108】
次に、以上のように構成された本実施例の制動装置付き引戸2Aの作動について説明する。
【0109】
全閉状態(第一ラックギア5が往動始点位置P1にある状態)の引戸2A(図5図6参照)を、開放すべく引戸枠1Aに対し往動移動操作すると、この引戸2Aに連結部4を介して連結されている第一ラックギア5が、筐体3に対し往動始点位置P1から往動移動し、これに伴い第一ラックギア5が往動始点位置P1から少し進んだところで第一ピニオンギア6と歯合して第一ピニオンギア6が連動回動する。
【0110】
すると、この第一ピニオンギア6の回動に伴って第二ピニオンギア10が連動回動し、第二ピニオンギア10と歯合する第二ラックギア11も筐体3に対して往動移動することになる。即ち、引戸2A(第一ラックギア5)を往動操作すると、第二ラックギア11も連動して往動移動することになるが、この第二ラックギア11は、前記コイルばね7によって常時復動方向に引っ張り付勢されているために、引戸2A(第一ラックギア5)の往動操作は、この付勢体7の付勢力に抗して行われる。
【0111】
また、この際、連動回動する第一ピニオンギア6と第二ピニオンギア10とは直径比及びギア比が異なるために、前記第一ラックギア5と第二ラックギア11とが連動往動移動するが、その移動量は、図7図14に示すように第一ラックギア5の移動量に対して第二ラックギア11の移動量は小さくなり(例えば本実施例では第一ラックギア5の移動量に対して第二ラックギア11の移動量はおよそ1/2となり)、従って、引戸2A(第一ラックギア5)を往動操作する(開く)際の移動量は大きく(長く)なるが、コイルばね7に復動(引っ張り)付勢されている第二ラックギア11は小さくしか往動移動せず、それだけコイルばね7を引っ張る力が小さくて済むので、軽い力で引戸2Aを往動操作する(開く)ことができる。
【0112】
また、第一ラックギア5を往動移動させた際には、この第一ラックギア5が第二ラックギア11より大きく移動することからトリガー部21によりロック部材18が一方向に回動制御されて連結受部22が図7に示すように左側に傾動するが、その後も第一ラックギア5の往動移動を継続させるとやがてロック部材18の連結受部22が左側に45度程度まで傾動する状態となって連結受部22からトリガー部21が係脱するので、第一ラックギア5の往動移動がロック部材18によって阻害されることはない。トリガー部21係脱後も第一ラックギア5を往動移動を継続させると、ロック部材18は前記第一案内溝43Aに案内されて元の状態(連結受部22が真下方向を向いた初期状態)に戻る(図5図9参照)。
【0113】
その後も引戸2A(第一ラックギア5)の往動移動を継続させると、引戸2Aが所定の第一移動途中位置P2に至ったところで第一ラックギア5が第一ピニオンギア6から離脱(往動時連動解除手段12)して第一ラックギア5と前記第二ラックギア11との連動移動状態が解除され、前記第一移動途中位置P2から先の往動区間では第一ラックギア5はフリー移動区間となり、このフリー移動区間では引戸2Aを手動で自由に往復移動させることができる(図15図18参照)。
【0114】
また、引戸2A(第一ラックギア5)が第一移動途中位置P2に至る少し手前の往動位置くらいから、第一ラックギア5の前記誘導傾斜面31Aが前記ロック部材18の回動誘発部45に接触してロック部材18が再び一方向に回動制御され、この一方向回動により前記誘導凸部48が第二案内溝43Bに下端開放部から嵌合し、引戸2A(第一ラックギア5)の往動移動に伴い誘導凸部48は第二案内溝43Bを上昇移動していき、引戸2A(第一ラックギア5)が第一移動途中位置P2に至って往動時連動解除手段12により第一ラックギア5と第二ラックギア11との連動移動状態が解除された際には、移動停止用係止部17と係合部44(筐体3(支持フレーム26))とが凹凸係合係止して連動往動移動してきた第二ラックギア11が前記コイルばね7による復動付勢力が加わった状態で移動停止状態にロックされる(第二ラックギア停止保持手段13)と共に、この移動停止用係止部17と係合部44の凹凸係止状態がコイルばね7による復動付勢により簡単には係脱しない状態に保持されることとなる。
【0115】
前記フリー移動区間に位置している引戸2A(第一ラックギア5)を閉じるべく(往動始点位置P1に戻すべく)復動移動操作すると、第一ラックギア5が前記第一移動途中位置P2まで復動移動した際に、前記第二ラックギア停止保持手段13により停止している第二ラックギア11に歯合している第二ピニオンギア10が回動不能な状態となっているため、第二ピニオンギア10に接近して連動回動状態となっている第一ピニオンギア6が、その前記ピニオン側退避誘導部20Aに前記ラック側退避誘導部20Bが接することで離間移動されて第一ピニオンギア6が第一ラックギア5に歯合しようとすること(第一ピニオンギア6と第二ピニオンギア10とが連動回動状態になろうとすること)が回避され(図20図21参照)、さらに引戸2Aを復動させると、第一ピニオンギア6は、前記歯合回避用隔壁32の後側へと移動させられて第一ラックギア5のラック歯5Aと歯合することができない状態(図24参照)となり、その後は第一ラックギア5の復動移動に伴い第一ピニオンギア6が歯合回避用隔壁32の後面に沿うかたちとなってこの復動移動中は非歯合状態となり、これにより第一ラックギア5は前記第二ラックギア停止保持手段13により移動停止状態に保持されている前記第二ラックギア11とは非連動状態で復動移動(復動時連動回避手段14)する(図23図24図26図27図29図30参照)。
【0116】
続いて、この復動時連動回避手段14により前記第二ラックギア11と非連動状態となっている前記第一ラックギア5を、前記第一移動途中位置P2より先の復動区間の第二移動途中位置P3まで復動移動させると、図22に示すように前記第二ラックギア停止保持手段13により傾動状態となっている前記連結受部22の図面右側下部に前記トリガー部21が引っ掛かり、トリガー部21引っ掛かり後も第一ラックギア5を復動移動させると、トリガー部21によってロック部材18が他方向へ回動制御され、このロック部材18の他方向への回動によって前記移動停止用係止部17が前記係合部44から係脱して前記第二ラックギア11の移動停止状態が解除され(復動付勢復帰手段15)、その後も復動を継続すると前記誘導凸部48が前記第二案内溝43Bから嵌脱して前記連結受部22が真下を向いた初期状態に戻り、これによりこの連結受部22がトリガー部21と連結されて第一ラックギア5と第二ラックギア11とが連結され(図25図26参照)、この時点から第一ラックギア5と第二ラックギア11とが連動復動移動可能となり(復動時連動手段16)、その後は前記コイルばね7の付勢力により前記制動ダンパー8に制動(復動速度が緩和)されながら同じ移動量で自動的に連動復動移動して(図28図29参照)第一ラックギア5が往動始点位置P1へと戻り、引戸2Aのソフトクローズが達成される(図5図6参照)。
【0117】
また、前記復動付勢復帰手段15により連動復動移動する第一ラックギア5と第二ラックギア11とが前記往動始点位置P1付近に至ると、前記歯合回避用隔壁32のない無壁部に第一ピニオンギア6が至って、前記コイルばね52の付勢力により自動的に第一ピニオンギア6が前記第二ピニオンギア10に接近移動し、これにより第一ピニオンギア6が前記第二ピニオンギア10と連動回動する状態(前記連動係止部49と前記連動係合部50とが係合係止した状態)に復帰すると共に、第一ピニオンギア6が前記第一ラックギア5と歯合可能な状態(位置)に復帰(往動時ラックギア連動復帰手段23(歯合復帰機構24))することとなり(図30図31参照)、この後再度引戸2Aを開放操作する際には、上記同様の作動を伴う。
【0118】
このように構成した本実施例によれば、引戸2Aの開き操作(往動操作)を軽い力で行うことができ、開けた引戸2Aを閉じ操作(復動操作)する際には、確実なソフトクローズが達成されるだけでなく、全閉位置(往動始点位置P1)に近く自動復動付勢機能が働く位置(第二移動途中位置P3)まで引戸2Aを手動操作で早く動かすことができるので、引戸2Aが素早く短時間で閉じられることになる。
【実施例0119】
本発明の具体的な実施例2について図32に基づいて説明する。
【0120】
本実施例は、本発明を引出し2Bに適用した場合である。即ち、本実施例は、支持母体1としてのキャビネット1Bに往復移動自在に設けられ、復動(閉動)移動に制動力を付与する移動体制動装置Aを介して前記キャビネット1Bに設けられる移動体2としての制動装置付き引出し2Bに係るものである。
【0121】
また、本実施例の移動体制動装置Aは、前記実施例1と同一構造のものが採用されているが、この移動体制動装置Aが実施例1のそれとは上下反転状態で引出し2Bに連結されて制動装置付き引出し2Bが構成されている。そして、この上下反転状態の移動体制動装置Aがキャビネット1Bに取付けられている。図中符号55はキャビネット1Bに設けられているスライド用レール、56は引出し2Bに設けられてスライド用レール55にスライド移動自在に取付けられるスライドバーである。
【0122】
このように構成した本実施例によれば、引出し2Bの引出し(開き)操作(往動操作)を軽い力で行うことができ、引出した(開いた)引出し2Bを押入れ(閉じ)操作(復動操作)する際には、確実なソフトクローズが達成されるだけでなく、全閉位置(往動始点位置P1)に近く自動復動付勢機能が働く位置(第二移動途中位置P3)まで引出し2Bを手動操作で早く動かすことができるので、引出し2Bが素早く短時間で押入れ(閉じ)られることになる。
【0123】
尚、本発明は、実施例1,2に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【符号の説明】
【0124】
1 支持母体
2 移動体
3 筐体
4 連結部
5 第一ラックギア
6 第一ピニオンギア
7 付勢体
8 制動ダンパー
9 回動軸
10 第二ピニオンギア
11 第二ラックギア
12 往動時連動解除手段
13 第二ラックギア停止保持手段
14 復動時連動回避手段
15 復動付勢復帰手段
16 復動時連動手段
17 移動停止用係止部
18 ロック部材
19 復動時歯合回避機構
20 ピニオン退避誘導部
21 トリガー部
22 連結受部
23 往動時ラックギア連動復帰手段
24 歯合復帰機構
A 移動体制動装置
P1 往動始点位置
P2 第一移動途中位置
P3 第二移動途中位置
図1
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