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  • 特開-水噴霧設備 図1
  • 特開-水噴霧設備 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126653
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】水噴霧設備
(51)【国際特許分類】
   A62C 2/08 20060101AFI20240912BHJP
【FI】
A62C2/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023035193
(22)【出願日】2023-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】浦▲崎▼ 宏一
(57)【要約】
【課題】火源と分断された避難経路を容易に形成することのできる水噴霧設備を得る。
【解決手段】あらかじめ決められた領域に設置され、外部指令に基づいて水噴霧を行うことでウォーターカーテンを生成し、領域をウォーターカーテンにより分断する噴霧ノズルを備えた水噴霧設備であって、噴霧ノズルは、スプリンクラー設備による放水量よりも少なくなるように放水量が設定されており、水噴霧を行うことにより火源と分断された避難経路を形成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
あらかじめ決められた領域に設置され、外部指令に基づいて水噴霧を行うことでウォーターカーテンを生成し、前記領域を前記ウォーターカーテンにより分断する噴霧ノズル
を備えた水噴霧設備であって、
前記噴霧ノズルは、
スプリンクラー設備による放水量よりも少なくなるように放水量が設定されており、
前記水噴霧を行うことにより火源と分断された避難経路を形成する
水噴霧設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水噴霧を行うことにより火源と分断された避難経路を形成する水噴霧設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
平成31年4月に発生したノートルダム大聖堂での火災、および令和元年10月末に発生した首里城跡での火災を踏まえ、「国宝・重要文化財(建造物)等の防火対策ガイドライン」が発行されている(例えば、非特許文献1参照)
【0003】
このガイドラインでは、国宝・重要文化財(建造物)や史跡等に所在する建造物の所有者等が総合的な防火対策を検討・実施することができるよう、文化庁、消防庁、国土交通省が連携協力の下、各文化財等の特性ごとに、想定される火災リスク、防火についての基本的な考え方、必要な点検事項と手順、対応策等がまとめて示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】文化庁、国宝・重要文化財(建造物)等の防火対策ガイドライン(https://www.bunka.go.jp/koho_hodo_oshirase/hodohappyo/__icsFiles/afieldfile/2019/09/02/a1420851_02.pdf)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
国宝、重要文化財のうちの木造有形文化財は、建築基準法による適用対象外になっており、内装制限、防火区画の設置、避難階段の設置などが、建築基準法に則ってなされていない状態である。
【0006】
このような国宝、重要文化財に関して、消防法は、適用外ではない。しかしながら、スプリンクラー設備の設置対象は11階以上であり、自動消火設備が設置されていない国宝、重要文化財が多いのが現状となっている。
【0007】
また、最近では、非特許文献1による文化庁のガイドラインにより、スプリンクラー設備の設置が推奨されている。しかしながら、国宝、重要文化財において、自動消火設備の設置を計画している建物は、多くないのが現状である。
【0008】
国宝、重要文化財に限らず、既存の建物において、火災に伴う被害を抑制するためには、消火とは別の観点で、避難経路を確保することも重要となる。
【0009】
本開示は、上記の課題を解決するためになされたものであり、火源と分断された避難経路を容易に形成することのできる水噴霧設備を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示に係る水噴霧設備は、あらかじめ決められた領域に設置され、外部指令に基づいて水噴霧を行うことでウォーターカーテンを生成し、領域をウォーターカーテンにより分断する噴霧ノズルを備えた水噴霧設備であって、噴霧ノズルは、スプリンクラー設備による放水量よりも少なくなるように放水量が設定されており、水噴霧を行うことにより火源と分断された避難経路を形成するものである。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、火源と分断された避難経路を容易に形成することのできる水噴霧設備を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示の実施の形態1に係る水噴霧設備の機能ブロック図である。
図2】本開示の実施の形態1に係る水噴霧設備の具体的な設置例を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の水噴霧設備の好適な実施の形態につき、図面を用いて説明する。
本開示に係る水噴霧設備は、避難経路を確保する観点で、必要なタイミングで、あらかじめ決められた領域にウォーターカーテンを設けることができるように、外部指令に基づいて水噴霧を行うことのできる噴霧ノズルを設置しておく点に技術的特徴を有するものであり、既存の設備に対しても容易に後付けすることができる。
【0014】
実施の形態1.
図1は、本開示の実施の形態1に係る水噴霧設備の機能ブロック図である。本実施の形態1に係る水噴霧設備10は、指令受信部11、加圧送水装置(ポンプ等)12、および噴霧ノズル13を備えている。
【0015】
指令受信部11は、水噴霧を行うための指令を外部指令として受信する。なお、指令受信部11は、火災受信機などの上位装置から火災発生に伴って送信される指令として、外部指令を受信することができる。あるいは、指令受信部11は、操作スイッチを有するリモコン等による操作に基づいて、外部指令を受信することができる。指令受信部11は、外部指令を受信した場合には、加圧送水装置12を起動する。加圧送水装置12から噴霧ノズル13に水が送られると、噴霧ノズル13から放水される。
【0016】
噴霧ノズル13は、火災監視領域内のあらかじめ決められた領域に設置され、外部指令に基づいて水噴霧を行うことでウォーターカーテン14を生成する。ウォーターカーテン14が生成されることで、火災監視領域内の火源と分断された避難経路が形成されることとなる。
【0017】
すなわち、本実施の形態1に係る水噴霧設備は、避難経路を確保することを主目的として、火災監視領域内のあらかじめ決められた領域において、外部指令を受信したタイミングでウォーターカーテン14を生成する。
【0018】
例えば、階段を囲むように噴霧ノズル13を配置することで、ウォーターカーテン14により火災から階段部分を分断し、避難経路を形成することができる。従って、火災監視領域内の火源側にいる避難者は、生成されたウォーターカーテン14を通過することで、火源と分断された避難経路に移動することができる。
【0019】
噴霧ノズル13からの放水量は、消火を目的としないため、スプリンクラー設備による放水量(80L/min)よりも少なく設定することができる。また、火災から階段部分を分断するためには、いわゆるドライミスト設備による放水量(30mL/min)よりも多くなるように設定する必要がある。
【0020】
このような放水量でウォーターカーテン14が生成されることで、火源側から避難経路側に火災に伴う煙が流入することを阻止する、あるいは煙の流入量を低減させることができる。さらに、ウォーターカーテン14の奥に存在する避難経路の視認性を向上させることができる。
【0021】
本実施の形態1に係る水噴霧設備10は、国宝、重要文化財も含め、火災監視を行うべき領域において、火災発生時に避難経路を確保する目的で、容易に後付けにより設置することができる。そこで、本実施の形態1に係る水噴霧設備10の設置に関する具体例を、図2を用いて説明する。
【0022】
図2は、本開示の実施の形態1に係る水噴霧設備10の具体的な設置例を示した説明図である。図2(A)~図2(C)は、それぞれ以下の状態を例示している。
図2(A):建築基準法に則って建設された耐火建築物であって、防火区画として覆われた2箇所の避難経路1a、1bが設けられ、二方向の避難経路1a、1bが確保されているケース。
図2(B):国宝文化財などの木造建築物であって、防火区画として覆われていない1つの避難経路1しか確保されていないケース。
図2(C):図2(B)に示した1つの避難経路1に対して本実施の形態1に係る水噴霧設備10を設置したケース。なお、指令受信部11および加圧送水装置12は、図示を省略している。
【0023】
なお、図2(A)~図2(C)のそれぞれにおいて、上段は火災発生前の状態を示しており、下段は火災発生後の状態を示している。また、図2(A)の耐火建築物における火災監視領域と、図2(B)および図2(C)の木造建築物における火災監視領域とが、同等であるとして例示している。
【0024】
まず、図2(A)について説明する。図2(A)のケースでは、建築基準法に則っているため、2箇所の避難経路1a、1bが防火区画として覆われている。従って、火源2による火災が発生し、煙3が充満したとしても、防火区画の働きにより、避難経路1a、1bのそれぞれには、煙が侵入してこない。また、避難経路1a側に煙が充満している場合には、避難者は避難経路1bを利用して避難することができる。
【0025】
次に、図2(B)について説明する。図2(B)のケースでは、1つの木造階段が避難経路1として存在しており、避難経路1は防火区画としては覆われていない。従って、火源2による火災が発生し、煙3が充満した場合には、避難経路1も煙に覆われてしまい、避難者は、逃げ場を失ってしまうおそれがある。
【0026】
次に、図2(C)について説明する。図2(C)のケースでは、図2(B)で示したように、防火区画で覆われていない避難経路1に対して、本実施の形態1に係る水噴霧設備10が後付けで設置されている。
【0027】
従って、避難経路1は防火区画としては覆われていないが、火源2による火災が発生し、煙3が充満した場合であっても、水噴霧設備10を稼働することで、避難経路1の周辺にウォーターカーテン14を設けることができる。
【0028】
この結果、煙3が避難経路1に侵入することを防止、あるいは抑制することができる。さらに、避難者は、身をかがめながらウォーターカーテン14をくぐることで、煙の侵入が抑制された避難経路1に侵入することができ、木造階段を利用した避難を行うことができる。
【0029】
上述したように、噴霧ノズル13からの放水量は、スプリンクラー設備による放水量よりも少なく、ドライミスト設備による放水量よりも多くなるように設定することができる。従って、避難者は、ウォーターカーテン14の奥に存在する避難経路を容易に視認でき、迅速に避難することができる。
【0030】
なお、噴霧ノズル13は、ウォーターカーテン14を形成したい領域のサイズに応じて、適切な個数、適切なピッチによる噴霧ノズル群として設置することができる。図2(C)では、6個の噴霧ノズル13により噴霧ノズル群が構成されている場合を例示している。
【0031】
以上のように、実施の形態1によれば、例えば、国宝、重要文化財の木造有形文化財の避難用の階段の周りにおいて、防火区画のように囲んだ部分に水噴霧設備を後付けで容易に設置することができる。水噴霧設備による放水量は、消火できることを条件とせず、避難者が視認性を確保しつつ、容易に避難でき、かつ避難経路への煙の侵入を抑制できるようにするための放水量とすることができる。
【0032】
具体的な放水量としては、スプリンクラー設備による放水量よりも少なく、ドライミスト設備による放水量よりも多くなるように設定される。この結果、避難者は、煙の侵入が抑制された避難経路を利用して避難することができる。さらに、ウォーターカーテンの働きにより、避難経路に設けられている階段が燃え落ちることを防止、あるいは遅延させることにも寄与できる。
【0033】
建築基準法施行令第112条では、スプリンタラー設備等の自動消火設備を設置している建物に関しては、条文で防火区画の面積を倍読みしていいと規定されている。すなわち、自動消火設備を設置することの有効性を建築基準法が認めている。しかしながら、文化財などでは、建築基準法で防火区画自体が設置されていない。また、文化財では、建築基準法に則って壁などの構造で防火区画を設けることは、景観等の観点からあまり期待できない。
【0034】
しかしながら、本実施の形態1に係る水噴霧設備であれば、後付けが容易であり、壁などの大掛かりな構造を設けることによる見栄えの悪さも低減することができる。さらに、二方向の避難経路が設けられていない建物に対しても、容易に、煙の侵入を抑制した避難経路を構築することができる。
【符号の説明】
【0035】
1、1a、1b 避難経路、2 火源、3 煙、10 水噴霧設備、11 指令受信部、12 加圧送水装置(ポンプ)、13 噴霧ノズル、14 ウォーターカーテン。
図1
図2