(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126657
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】避難情報提供システム
(51)【国際特許分類】
G08B 27/00 20060101AFI20240912BHJP
G08B 25/00 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
G08B27/00 A
G08B25/00 510M
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023035199
(22)【出願日】2023-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】浦▲崎▼ 宏一
【テーマコード(参考)】
5C087
【Fターム(参考)】
5C087AA02
5C087AA03
5C087AA09
5C087AA19
5C087BB74
5C087DD04
5C087DD23
5C087EE18
5C087FF01
5C087FF02
5C087FF04
5C087GG02
5C087GG09
5C087GG82
(57)【要約】
【課題】避難者の精神的なストレスの低減を図るとともに、避難経路に避難者が殺到してしまうことを未然に防止する。
【解決手段】複数フロアを有する建物の利用者に対して、災害発生時における避難に利用する共用避難経路の混雑状況を避難情報として提供する避難情報提供システムであって、共用避難経路においてフロアごとに設置され、各フロアにおける共用避難経路の混雑状況の指標となる画像を避難状況画像として撮像する複数のカメラと、複数のカメラのそれぞれによって撮像された避難状況画像に基づいて、それぞれのフロアにおいて表示すべきフロア個別の避難情報を生成する制御部と、各フロアにおいて共用避難経路への入口につながる経路である接続経路にフロアごとに設置され、制御部によって生成されたフロア個別の避難情報を表示する複数の表示部とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数フロアを有する建物の利用者に対して、災害発生時における避難に利用する共用避難経路の混雑状況を避難情報として提供する避難情報提供システムであって、
前記共用避難経路においてフロアごとに設置され、各フロアにおける前記共用避難経路の混雑状況の指標となる画像を避難状況画像として撮像する複数のカメラと、
前記複数のカメラのそれぞれによって撮像された前記避難状況画像に基づいて、それぞれのフロアにおいて表示すべきフロア個別の避難情報を生成する制御部と、
各フロアにおいて前記共用避難経路への入口につながる経路である接続経路にフロアごとに設置され、前記制御部によって生成された前記フロア個別の避難情報を表示する複数の表示部と
を備える避難情報提供システム。
【請求項2】
前記制御部は、
前記建物に設置された自動火災報知システムから出火階情報を含む火災信号を受信可能であり、
前記複数のカメラのそれぞれによって撮像された前記避難状況画像に基づいて、それぞれのフロアごとにあらかじめ決められている複数のフロアに関する避難状況画像から構成されたフロア個別の画像情報を生成し、
前記火災信号を受信した時刻、および前記火災信号に含まれている前記出火階情報に基づいて、それぞれのフロアごとに避難を開始すべきタイミングを示すフロア個別の避難開始情報を生成し、
それぞれのフロアに対応するように、前記フロア個別の画像情報、前記フロア個別の避難開始情報、および前記出火階情報を含む情報として前記フロア個別の避難情報を生成し、
生成した前記フロア個別の避難情報を、前記複数の表示部のそれぞれに個別に表示させる
請求項1に記載の避難情報提供システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記フロア個別の画像情報に含まれている前記複数のフロアに関する避難状況画像に対して画像処理を施すことで、フロアごとの定量的な値としてフロア個別の避難混雑度情報を算出し、算出した前記フロア個別の避難混雑度情報を含むように前記フロア個別の避難情報を生成する
請求項2に記載の避難情報提供システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複数フロアを有する建物の利用者に対して、災害発生時における避難に利用する共用避難経路の混雑状況を避難情報として提供する避難情報提供システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
平成12年の建築基準法法改正により、「避難安全性能」に関する性能規定が導入された。これに伴い、「従来の仕様的に行われてきた避難安全計画」に加え、「工学的手法を用いた性能的避難安全計画」を採用することが可能となった。
【0003】
建築基準法では、「避難安全性能」に関し、「階避難安全性能」と「全館避難安全性能」の2つが定義されている。前者の「階避難安全性能」とは、「対象とする階のいずれの室で火災が発生した場合においても、階の全ての避難者が直通階段まで安全に避難できる」性能のことを指す。
【0004】
また、後者の「全館避難安全性能」とは、「建物のいずれの室で火災が発生した場合においても、建物の全ての避難者が地上まで安全に避難できる」性能のことを指す(例えば、非特許文献1参照)。
【0005】
近年では、高さ300mを超える超高層複合ビルが建設されるようになってきた。このような建物においても、「階避難安全性能」と「全館避難安全性能」により、避難安全性能が確保されている。
【0006】
具体例としては、超高層ビルにおいて火災が発生した場合でも、全館避難安全検証法等により非火災フロアでは安全が確保されており、最大5時間かけて安全に避難できるように設計されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】株式会社日本防災研究所、「避難安全検証について(ルートB・C)」(URL:https://www.nichiboken.co.jp/shelterplan)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように、非火災フロアでは、直ちに避難を実施しなくても、安全に避難できるように設計されている。その一方で、火災発生から10分経過すると、火災発生の一斉放送が全館に鳴動するようになっている。
【0009】
従って、非火災フロアにいる人々は、安全に避難できる時間が設計上は確保できていたとしても、一斉放送の鳴動により、不安になってしまうことが考えられる。この結果、避難経路に避難者が殺到し、二次災害を引き起こしてしまうおそれがある。
【0010】
また、一斉放送の後、何時間も建物内に待機させられる場合には、避難者の精神的なストレスも問題になってくる。
【0011】
本開示は、上記の課題を解決するためになされたものであり、避難状況に応じてフロアごとに適切な避難情報を提供し、避難者の精神的なストレスの低減を図るとともに、避難経路に避難者が殺到してしまうことを未然に防止することのできる避難情報提供システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示に係る避難情報提供システムは、複数フロアを有する建物の利用者に対して、災害発生時における避難に利用する共用避難経路の混雑状況を避難情報として提供する避難情報提供システムであって、共用避難経路においてフロアごとに設置され、各フロアにおける共用避難経路の混雑状況の指標となる画像を避難状況画像として撮像する複数のカメラと、複数のカメラのそれぞれによって撮像された避難状況画像に基づいて、それぞれのフロアにおいて表示すべきフロア個別の避難情報を生成する制御部と、各フロアにおいて共用避難経路への入口につながる経路である接続経路にフロアごとに設置され、制御部によって生成されたフロア個別の避難情報を表示する複数の表示部とを備えるものである。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、避難状況に応じてフロアごとに適切な避難情報を提供し、避難経路に避難者が殺到してしまうことを未然に防止することのできる避難情報提供システムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本開示の実施の形態1に係る避難情報提供システムに関する全体構成を示した説明図である。
【
図2】本開示の実施の形態1に係る避難情報提供システムが設けられていない建物での、ある1つのフロアにおけるレイアウトを示した図である。
【
図3】本開示の実施の形態1に係る避難情報提供システムが設けられていない建物で、火災発生後の一斉放送に従って、
図2に示されたフロアの執務エリア内にいる人々が、2つの共用避難経路を用いて避難する状況を示した説明図である。
【
図4】本実施の形態1に係る避難情報提供システムが設けられた建物での、ある1つのフロアにおけるレイアウトを示した図である。
【
図5】本開示の実施の形態1に係る避難情報提供システムが設けられた建物での、ある1つのフロアにおける
図4とは異なるレイアウトを示した図である。
【
図6】本開示の実施の形態1に係る避難情報提供システムにおいて、表示部に表示されるフロア個別の避難情報の具体的なレイアウトを示した図である。
【
図7】本開示の実施の形態1における情報生成部で生成された、ぼかしを入れた画像情報を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示の避難情報提供システムの好適な実施の形態につき、図面を用いて説明する。
本開示に係る避難情報提供システムは、共用避難経路の混雑状況の指標となる画像をフロアごとに撮像し、それぞれのフロアごとに、あらかじめ決められている複数のフロアに関する避難状況画像に基づいて生成されたフロア個別の避難情報を提供することを技術的特徴とするものである。この結果、複数フロアを有する建物の利用者は、在席フロアに応じて、災害発生時における避難に関する適切な情報提供を受けることができる。
【0016】
実施の形態1.
図1は、本開示の実施の形態1に係る避難情報提供システムに関する全体構成を示した説明図である。本実施の形態1に係る避難情報提供システムは、それぞれのフロアに設けられたカメラ1および表示部2と、制御部10とを備えて構成されている。なお、
図1では、災害発生時における避難に利用する共用避難経路が設けられている建物が、1階~N階として構成されている場合を例示している。
【0017】
複数のカメラ1(1)~1(N)は、共用避難経路においてフロアごとに設置されている。複数のカメラ1(1)~1(N)のそれぞれは、各フロアにおける共用避難経路の混雑状況の指標となる画像を避難状況画像として撮像する。
【0018】
なお、共用避難経路として二方向避難経路が設けられている建物では、同一のフロアにおいて、それぞれの共用避難経路に対して個別のカメラ1および表示部2が設置されることとなる。すなわち、n階に設置されるカメラ1(n)および表示部2(n)は、それぞれ2台として構成される。
【0019】
複数の表示部2(1)~2(N)は、各フロアにおいて共用避難経路への入口につながる経路にフロアごとに設置される。そして、複数の表示部2(1)~2(N)には、フロア個別の避難情報が表示され、それぞれのフロアごとの避難者は、表示部2に表示されたフロア個別の避難情報を視認することができる。
【0020】
制御部10は、情報生成部11および表示処理部12を備えている。情報生成部11は、建物に設置された自動火災報知システム100から出火階情報を含む火災信号を受信可能な構成を備えている。
【0021】
そして、情報生成部11は、火災信号を受信した場合には、自動火災報知システム100から取得した火災信号に含まれている出火階情報、および複数のカメラ1(1)~1(N)から連続して取得可能な避難状況画像に基づいて、フロア個別の画像情報およびフロア個別の避難開始情報を生成する。
【0022】
ここで、「フロア個別の画像情報」とは、それぞれのフロアごとにあらかじめ決められている複数のフロアに関する避難状況画像の組合せから構成された画像情報のことである。
【0023】
例えば、情報生成部11は、20階建ての建物において、10階用の「フロア個別の画像情報」を生成する場合には、自身の10階における避難状況画像と、建物から外への出口である1階における避難状況画像と、5フロアごとの5階、15階、20階におけるそれぞれの避難状況画像とから構成された画像情報を10階用の「フロア個別の画像情報」として採用することができる。
【0024】
また、情報生成部11は、これらの避難状況画像の一部に代えて、あるいは追加で、出火階における避難状況画像、自身のフロアの直上階、直下階における避難状況画像などを含むようにして、フロア個別の画像情報を生成することも考えられる。
【0025】
すなわち、情報生成部11は、すべての階における避難状況画像を収集し、その中から、それぞれのフロアごとにあらかじめ決められているフロアの画像を抽出することで、フロア個別の画像情報を生成することができる。この結果、情報生成部11は、共用避難経路を使用して避難する際に参考となる適切な画像情報を、それぞれのフロアに応じて生成することができる。
【0026】
また、「フロア個別の避難開始情報」とは、火災信号を受信した時刻、および火災信号に含まれている出火階情報に基づいて、それぞれのフロアごとに特定される、避難を開始すべきタイミングに関する情報のことである。
【0027】
建物が全館避難安全検証法等に基づいて設計されている場合には、非火災フロアでは、自身の階と出火階との関係から、火災が発生してから安全に避難を完了するまでの時間が、「全館避難安全性能」として確保されている。
【0028】
従って、情報生成部11は、例えば、火災信号を受信した時刻、および火災信号に含まれている出火階情報に基づいて、『避難階段は、下階の避難者でいっぱいです。この階は、火災発生場所から離れていますので安全です。避難は避難階段にいる人が少なくなってから開始します』といった情報を「フロア個別の避難開始情報」として生成することができる。
【0029】
すなわち、情報生成部11は、出火階に関する情報と、「全館避難安全性能」による設計値とを参考に、それぞれのフロアにおいて、避難すべき適切なタイミングを特定し、避難者に「フロア個別の避難開始情報」として提示することができる。この結果、情報生成部11は、共用避難経路に避難者が集中する状況を緩和させることができる。
【0030】
最終的に、情報生成部11は、それぞれのフロアに対応するように、フロア個別の画像情報、およびフロア個別の避難開始情報を含む情報として、フロア個別の避難情報を生成することができる。なお、出火階情報をフロア個別の避難情報に含めることもできる。
【0031】
そして、表示処理部12は、情報生成部11によって生成されたフロア個別の避難情報を、それぞれのフロアに設置されている表示部2(1)~2(N)により、表示させる。表示部2に表示されるフロア個別の避難情報の具体的なレイアウトについては、
図6を用いて後述する。
【0032】
次に、カメラ1および表示部2の設置場所について、図面を用いて説明する。まず、
図2、
図3を用いて、本実施の形態1に係る避難情報提供システムが設けられていない場合の避難について簡単に説明し、その後、
図4~
図7を用いて、本実施の形態1に係る避難情報提供システムの特徴および効果について詳細に説明する。
【0033】
図2は、本開示の実施の形態1に係る避難情報提供システムが設けられていない建物での、ある1つのフロアにおけるレイアウトを示した図である。
図2では、執務エリア21と、二方向避難を可能とするために設けられた2つの共用避難経路22と、共用避難経路22への入口につながる経路である接続経路23とが示されている。
【0034】
図3は、本開示の実施の形態1に係る避難情報提供システムが設けられていない建物で、火災発生後の一斉放送に従って、
図2に示されたフロアの執務エリア21内にいる人々が、2つの共用避難経路22を用いて避難する状況を示した説明図である。
【0035】
他のフロアで火災が発生した後、10分後には、火災が発生したことを知らせる一斉放送が流される。従って、執務エリア21内にいる人々は、接続経路23を経由して2つの共用避難経路22のいずれかを使用して避難することとなる。
【0036】
この際に、本実施の形態1に係る避難情報提供システムが設けられていないため、避難者は、一斉放送以外には避難情報を得ることができず、全てのフロアにおいて
図3に示すように、接続経路23および2つの共用避難経路22に避難者が集中し、効率的な避難が行われないおそれがある。
【0037】
これに対して、
図4は、本実施の形態1に係る避難情報提供システムが設けられた建物での、ある1つのフロアにおけるレイアウトを示した図である。
図4に示したように、2つの共用避難経路22のそれぞれには、共用避難経路22の混雑状況の指標となる画像を撮像するための適切な位置に、カメラ1が設置されている。
【0038】
なお、カメラ1としては、共用避難経路22のエリアをより広く撮像し、混雑度を把握しやすくするために、広角カメラを用いてもよい。また、カメラ1と表示部2が一体となっていてもよい。
【0039】
また、2つの共用避難経路22の入口につながる場所には、個別に表示部2が設けられている。従って、避難者は、表示部2に表示されたフロア個別の避難情報を視認することで、一斉放送以外の避難情報を容易に得ることができ、共用避難経路22に入る前に、避難状況を確認することができる。
【0040】
なお、表示部2は、執務エリア21に設けることも可能である。
図5は、本開示の実施の形態1に係る避難情報提供システムが設けられた建物での、ある1つのフロアにおける
図4とは異なるレイアウトを示した図である。
図5では、執務エリア21内で表示部2を視認することができる位置に表示部2が設けられたレイアウトを例示している。
【0041】
図6は、本開示の実施の形態1に係る避難情報提供システムにおいて、表示部2に表示されるフロア個別の避難情報の具体的なレイアウトを示した図である。
図6に示した表示部2には、5つの画像G(1)~G(5)を表示するためのエリアと、1つのメッセージM(1)を表示するためのエリアとが設けられている。
【0042】
画像G(1)~G(5)は、情報生成部11により生成された「フロア個別の画像情報」に含まれる5枚の画像に相当する。例えば、先の
図5に示したレイアウトを有するフロアに対応する「フロア個別の画像情報」としては、画像G(1)および画像G(2)として、自身のフロアにおける2つの共用避難経路22に関する避難状況画像を表示させることができる。
【0043】
また、残りの画像G(3)~画像G(5)として、あらかじめ決められたその他のフロアにおける避難状況画像を表示させることができる。
【0044】
さらに、メッセージM(1)としては、フロア個別の避難開始情報、および出火階情報を含む情報を文字として表示させることができる。
【0045】
従って、避難者は、表示部2に表示されたフロア個別の避難情報を視認することで、2つの共用避難経路22の混雑状況、出火階の情報、避難を開始すべきタイミングに関する情報などを、避難行動を開始する前に容易に把握することができる。
【0046】
特に、制御部10は、すべてのフロアで一律の避難情報を生成するのではなく、火災信号および各フロアの避難状況画像に基づいて、それぞれのフロアに応じた適切な情報として、フロア個別の避難情報を生成し、避難者に対して情報提供することができる。この結果、避難経路に避難者が殺到してしまうことを未然に防止し、効率的な避難誘導を実現することができる。
【0047】
なお、情報生成部11において、フロア個別の画像情報を生成する目的は、画像情報から混雑状況を把握する点にある。そこで、情報生成部11は、プライバシーを考慮して、カメラ1から取得した避難状況画像に対して、個人の顔が識別できないように、ぼかしを入れる処理を行って、フロア個別の画像情報を生成することもできる。
【0048】
図7は、本開示の実施の形態1における情報生成部11で生成された、ぼかしを入れた画像情報を示した説明図である。
図7に示した画像Gを視認した人は、個人の顔が識別できないようなぼかしが施されているため、個人を識別することはできないが、共用避難経路の混雑度を把握することはできる。
【0049】
また、情報生成部11は、各カメラ1から取得した複数のフロアに関する避難状況画像に対して画像処理を施すことで、フロアごとの定量的な値としてフロア個別の避難混雑度情報を算出することできる。例えば、情報生成部11は、画像処理結果に基づいて、フロア個別の避難混雑度情報として、0%~100%の範囲での混雑度に関する定量的な値を提供することができる。
【0050】
さらに、情報生成部11は、混雑度に関する定量的な値として、フロア個別の避難混雑度情報を生成できた場合には、それぞれのフロアで個別にあらかじめ設定された1以上のフロアでの混雑度が所定の閾値以下となることで、避難開始を促すように、フロア個別の避難開始情報を生成することができる。
【0051】
また、情報生成部11によって生成されたフロア個別の避難情報は、各フロアでの表示部2に表示させる以外にも、防災センター等の上位装置に送信する、建物の管理者が所持する携帯端末に送信するなど、その他の機器に表示させることも可能である。
【0052】
また、表示部2は、火災発生時以外の平常時には、他の用途として活用することが可能である。例えば、食堂、エレベータホールなどにカメラを設置しておくことで、平常時のお昼の時間帯には食堂の画像を表示し、平常時の退社時間帯にはエレベータホールの画像を表示することで、状況に応じた現状の混雑度情報を提供することができる。
【0053】
以上のように、実施の形態1によれば、
図1に示したような構成を備えることで、以下のような効果を実現できる。
(効果1)出火階、および避難者の在席階に応じて、フロア個別の避難情報として適切な情報提供を実現することができる。特に、フロア個別の避難情報には、共用避難経路の混雑状況を把握できるフロア個別の画像情報と、どのタイミングで避難すればよいかを示すフロア個別の避難監視に関する文字情報とが含まれている。
【0054】
従って、避難者は、自身がこれから利用しようとしている共用避難経路の混雑度の現状、自身の滞在フロアが安全であるか否か、どのタイミングで避難を開始すべきかなど、火災発生時の一斉放送からは得ることができない貴重な情報提供を受けることができる。特に、避難者は、たとえ、共用避難経路に入れない状況であっても、現状自分がいる場所が安全であることを視覚により把握でき、災害によるストレスをやわらげ、安心することができる。
【0055】
(効果2)共用避難経路として二方向避難経路が設けられている建物の場合には、両方の避難経路の混雑状況を1画面によるフロア個別の避難情報として提供することができる。従って、避難者は、二方向避難経路のうちのどちらを選択すべきかを、フロア個別の避難情報を視認することで容易に判断できる。
【0056】
(効果3)カメラから取得した複数のフロアに関する避難状況画像に対して画像処理を施すことで、共用避難経路に関してそれぞれのフロアにおける混雑度を定量的に評価することができる。また、定量的な混雑度と所定閾値との比較を行うことで、避難を開始すべきでない状況、避難を開始すべきタイミングなどを、適宜、フロア個別の避難開始情報として提供することができる。
【0057】
従って、避難者の精神的なストレスの低減を図るとともに、避難経路に避難者が殺到してしまうことを未然に防止することのできる避難情報提供システムを実現できる。
【符号の説明】
【0058】
1、1(1)~1(N) カメラ、2、2(1)~2(N) 表示部、10 制御部、11 情報生成部、12 表示処理部、21 執務エリア、22 共用避難経路、23 接続経路、100 自動火災報知システム。