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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126661
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】保健支援装置および保健支援方法
(51)【国際特許分類】
   G16H 20/00 20180101AFI20240912BHJP
【FI】
G16H20/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023035207
(22)【出願日】2023-03-08
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】大崎 高伸
(72)【発明者】
【氏名】田浦 善弘
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA15
(57)【要約】
【課題】地域の特性を考慮して、地域の住人の健康状態を改善する有効な施策の検討を容易にすること。
【解決手段】複数の個人状態値および複数の地域状態値から、アウトカム値を推計するマルチレベルモデルを学習するとともに、複数の地域状態値それぞれの寄与度を算出する学習処理部と、値の変更が困難と想定されている非可変な地域状態値のうちで、寄与度が最も大きい非可変な地域状態値の項目を、最大非可変地域値の項目として算出し、複数の居住地域それぞれに対する最大非可変地域値に基づいて、複数の居住地域を、複数の地域グループに分け、分けた複数の地域グループ毎に、地域グループを特定する地域グループ特定情報と、地域グループに含まれる居住地域それぞれを特定する地域グループ内地域特定情報と、を対応付けて保存する地域グループ分類情報を算出して、出力する、地域分類部と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の居住地域を含む対象領域内に住む個人の健康状態を分析する保健支援装置であって、
記憶部と、学習処理部と、地域分類部とを備え、
前記記憶部は、
分析に用いる、
前記対象領域を特定できる対象領域特定情報と、
前記対象領域に含まれる居住地域を特定できる居住地域特定情報と、
健康に関するアウトカム値と、
前記個人の状態を表す複数の個人状態値と、
前記居住地域の情報に関する複数の地域状態値と、を対応付けた情報を含むマルチレベル入力情報を格納し、
前記学習処理部は、
前記記憶部に格納された前記マルチレベル入力情報に含まれる前記複数の個人状態値および前記複数の地域状態値から、前記記憶部に格納された前記マルチレベル入力情報に含まれる前記アウトカム値を推計するマルチレベルモデルを学習するとともに、前記複数の地域状態値それぞれの寄与度を算出し、
前記地域分類部は、
値の変更が困難と想定されている非可変な地域状態値のうちで、寄与度が最も大きい前記非可変な地域状態値の項目を、最大非可変地域値の項目として算出し、
前記複数の居住地域それぞれに対する前記最大非可変地域値に基づいて、前記複数の居住地域を、複数の地域グループに分け、
分けた前記複数の地域グループ毎に、前記地域グループを特定する地域グループ特定情報と、前記地域グループに含まれる居住地域それぞれを特定する地域グループ内地域特定情報と、を対応付けて保存する地域グループ分類情報を算出して、算出した地域グループ分類情報を出力する、
保健支援装置。
【請求項2】
請求項1に記載の保健支援装置であって、
前記複数の地域状態値として、前記居住地域における前記個人状態値の統計量である地域統計状態値と、前記居住地域の環境の状態を表す地域環境状態値と、の2種類の値を含み、
さらに、入力データ生成部を備えるとともに、ネットワークに接続されており、
対象領域特定情報、居住地域特定情報、個人特定情報、複数の個人状態値それぞれの項目名、前記複数の個人状態値、前記地域環境状態値、を対応付けて保存しているオリジナル情報と、
前期地域統計状態値の項目名、前記地域統計状態値を前記個人状態値から算出する地域統計状態値算出方法、を対応付けて保存している地域統計状態値算出情報と、を格納する保健情報管理サーバに、前記ネットワークを介して接続されており、
前記入力データ生成部は、
前記マルチレベルモデルの学習に用いる、前記居住地域特定情報と、前記アウトカム値の項目と、少なくとも1つの個人状態値の分析項目と、少なくとも1つの地域統計状態値の分析項目と、地域環境状態値の分析項目と、を対応付けて保存している分析条件情報を取得すると、
取得した前記分析条件情報に含まれる、前記地域統計状態値の分析項目それぞれに対して、
前記保健情報管理サーバが格納している前記地域統計状態値算出情報において、前記地域統計状態値の分析項目に対応付けられた地域統計状態値算出方法を取得し、
前記地域統計状態値の分析項目の地域統計状態値の算出に用いる統計用個人状態値を、前記保健情報管理サーバが格納している前記オリジナル情報から取得し、
取得した前記地域統計状態値算出方法と、取得した前記統計用個人状態値とに基づいて、前記地域統計状態値の分析項目の地域統計状態値を取得して、前記記憶部の前記マルチレベル入力情報に保存するとともに、
取得した前記分析条件情報に含まれる、前記居住地域特定情報と、前記アウトカム値の項目と、前記個人状態値の条件項目と、前記地域環境状態値の条件項目と、に対応付けられている、前記アウトカム値、前記個人状態値、前記地域環境状態値、を前記オリジナル情報から取得し、前記マルチレベル入力情報に保存する、保健支援装置。
【請求項3】
請求項1に記載の保健支援装置であって、
さらに、前記複数の地域グループそれぞれに対する、前記居住地域の第1地域状態値に対する、前記居住地域の前記アウトカム値の関連グラフのデータを出力する、グラフ生成部を備える、
保健支援装置。
【請求項4】
請求項3に記載の保健支援装置であって、
前記グラフ生成部は、前記関連グラフに示されている複数の居住地域を、前記関連グラフに示されている複数の居住地域それぞれに対する第2地域状態値で、複数のサブグループに分類し、
前記関連グラフにおいて、前記関連グラフに示されている複数の居住地域に対する、分類されたサブグループの名前を示すサブグループ分類情報を出力する、
保健支援装置。
【請求項5】
記憶装置およびプロセッサを備え、前記プロセッサが複数の居住地域を含む対象領域内に住む個人の健康状態を分析する保健支援装置における保健支援方法であって、
前記記憶装置は、
分析に用いる、
前記対象領域を特定できる対象領域特定情報と、
前記対象領域に含まれる居住地域を特定できる居住地域特定情報と、
健康に関するアウトカム値と、
前記個人の状態を表す複数の個人状態値と、
前記居住地域の情報に関する複数の地域状態値と、を対応付けた情報を含むマルチレベル入力情報を格納し、
前記プロセッサは、
前記記憶装置に格納された前記マルチレベル入力情報に含まれる前記複数の個人状態値および前記複数の地域状態値から、前記記憶部に格納された前記マルチレベル入力情報に含まれる前記アウトカム値を推計するマルチレベルモデルを学習するとともに、前記複数の地域状態値それぞれの寄与度を算出する学習処理と、
値の変更が困難と想定されている非可変な地域状態値のうちで、寄与度が最も大きい前記非可変な地域状態値の項目を、最大非可変地域値の項目として算出し、
前記複数の居住地域それぞれに対する前記最大非可変地域値に基づいて、前記複数の居住地域を、複数の地域グループに分け、
分けた前記複数の地域グループ毎に、前記地域グループを特定する地域グループ特定情報と、前記地域グループに含まれる居住地域それぞれを特定する地域グループ内地域特定情報と、を対応付けて保存する地域グループ分類情報を算出して、算出した地域グループ分類情報を出力する、地域分類処理と、を実行する、
保健支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の居住地域を含む対象領域内の個人の健康状態を分析する保健支援装置および保健支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
データベースに蓄積された情報から、人の健康状態を良好に保つために実施する好適な施策を検討するための有用なデータを生成する技術がある。例えば、特許文献1には、個人の症状に対する複数の処置の候補を、複数のデータベースを用いて推定して送信し、さらに、処置が実行されたと仮定した場合の将来的な個人の状態の情報の送信を行う情報提供システムが記載されている。これにより、個人に対する好適な処置を実行することが容易になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-76102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載されている技術を用いて個人に対する施策に関する有用な情報を得ても、地域の住人の健康状態(例えば、血糖値)を改善するために地域で実施する好適な施策を検討するために有用な情報を得ることは容易ではない。例えば、住人の高齢化などで、地域の住人の健康状態の改善が一層重要な課題になる自治体で、地域で実施する施策の検討が行われる。このとき、地域内の健診情報などを分析して、地域にどのような健康状態の人(例えば、糖尿病や高血圧の患者、血糖値や血圧が高い人)の人数を把握するなどの分析が行われる。しかし、自分の地域の状態だけでは、高齢化などにより避けられない程度の人数なのか、改善の余地があるのかは確認できない。また、地域でこれから実施する施策を検討することは、これまで実施していない施策の効果を検討することが必要となるため、困難である。
【0005】
そこで、複数の地域の状況を比較して、地域で実施する施策を検討する方法がある。この方法では、複数の地域のデータを用いることで、自分の地域の状況に問題があるのかどうかを、自分の地域以外の地域のデータを比較することで把握することができ、これまで実施していない施策の効果をより正確に見積もることが可能になり、その結果、有効な施策を容易に検討できることが期待できる。
【0006】
そして、複数の地域の状況を比較して、地域で実施する施策を検討する場合は、施策で改善する健康状態と有意に関連のある事項に関する状況が類似している地域同士を比較する必要がある。例えば、標高が同等の山間部にあるが、大都市近郊にあり住宅地となっている地域と、過疎の地域と、を比較して、過疎の地域の施策を検討しても、施策による健康状態の改善の効果を正確に見積もることは容易ではない場合がある。そして、地域の状況に関する複数の事項が、相互に関連しあっていることにより、施策で改善しようとしている健康状態と有意に関連のある事項が何かを分析することは、必ずしも容易ではない。以上で説明したように、地域の特性を考慮して、地域に住む人の健康状態を改善する有効な施策の検討を、容易にする技術が望まれている。
【0007】
そこで、本発明の目的は、地域の特性を考慮して、地域の住人の健康状態を改善する有効な施策の検討を容易にする保健支援装置および保健支援方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の保健支援装置の一態様は、複数の居住地域を含む対象領域内に住む個人の健康状態を分析する保健支援装置であって、記憶部と、学習処理部と、地域分類部とを備え、前記記憶部は、分析に用いる、前記対象領域を特定できる対象領域特定情報と、前記対象領域に含まれる居住地域を特定できる居住地域特定情報と、健康に関するアウトカム値と、前記個人の状態を表す複数の個人状態値と、前記居住地域の情報に関する複数の地域状態値と、を対応付けた情報を含むマルチレベル入力情報を格納し、前記学習処理部は、前記記憶部に格納された前記マルチレベル入力情報に含まれる前記複数の個人状態値および前記複数の地域状態値から、前記記憶部に格納された前記マルチレベル入力情報に含まれる前記アウトカム値を推計するマルチレベルモデルを学習するとともに、前記複数の地域状態値それぞれの寄与度を算出し、前記地域分類部は、値の変更が困難と想定されている非可変な地域状態値のうちで、寄与度が最も大きい前記非可変な地域状態値の項目を、最大非可変地域値の項目として算出し、前記複数の居住地域それぞれに対する前記最大非可変地域値に基づいて、前記複数の居住地域を、複数の地域グループに分け、分けた前記複数の地域グループ毎に、前記地域グループを特定する地域グループ特定情報と、前記地域グループに含まれる居住地域それぞれを特定する地域グループ内地域特定情報と、を対応付けて保存する地域グループ分類情報を算出して、算出した地域グループ分類情報を出力する。
【0009】
また、本発明の保健支援装置の保健支援方法の一態様は、記憶装置およびプロセッサを備え、前記プロセッサが複数の居住地域を含む対象領域内に住む個人の健康状態を分析する保健支援装置における保健支援方法であって、前記記憶装置は、分析に用いる、前記対象領域を特定できる対象領域特定情報と、前記対象領域に含まれる居住地域を特定できる居住地域特定情報と、健康に関するアウトカム値と、前記個人の状態を表す複数の個人状態値と、前記居住地域の情報に関する複数の地域状態値と、を対応付けた情報を含むマルチレベル入力情報を格納し、前記プロセッサは、前記記憶装置に格納された前記マルチレベル入力情報に含まれる前記複数の個人状態値および前記複数の地域状態値から、前記記憶部に格納された前記マルチレベル入力情報に含まれる前記アウトカム値を推計するマルチレベルモデルを学習するとともに、前記複数の地域状態値それぞれの寄与度を算出する学習処理と、値の変更が困難と想定されている非可変な地域状態値のうちで、寄与度が最も大きい前記非可変な地域状態値の項目を、最大非可変地域値の項目として算出し、前記複数の居住地域それぞれに対する前記最大非可変地域値に基づいて、前記複数の居住地域を、複数の地域グループに分け、分けた前記複数の地域グループ毎に、前記地域グループを特定する地域グループ特定情報と、前記地域グループに含まれる居住地域それぞれを特定する地域グループ内地域特定情報と、を対応付けて保存する地域グループ分類情報を算出して、算出した地域グループ分類情報を出力する、地域分類処理と、を実行する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の代表的な形態によれば、地域の特性を考慮して、地域の住人の健康状態を改善する有効な施策の検討を容易にする。前述した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施例の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施例の保健支援装置の機能の概要を説明する説明図である。
図2図2は、実施例の保健支援装置の機能ブロック図の一例を示す図である。
図3図3は、保健支援装置のハードウェア構成例を示すブロック図である。
図4図4は、保健情報管理サーバのハードウェア構成例を示すブロック図である。
図5図5は、説明変数管理テーブル31の一例を示す図である。
図6図6は、個人レベル入力テーブル32の一例を示す図である。
図7図7は、地域レベル入力テーブル33の一例を示す図である。
図8図8は、マルチレベル解析結果テーブル35の一例を示す図である。
図9図9は、地域グループ分類テーブル36の一例を示す図である。
図10図10は、領域管理テーブル134の一例を示す図である。
図11図11は、個人属性テーブル131の一例を示す図である。
図12図12は、健康診断テーブル132の一例を示す図である。
図13図13は、レセプトテーブル133の一例を示す図である。
図14図14は、地域可変環境状態テーブル135の一例を示す図である。
図15図15は、地域非可変環境状態テーブル136の一例を示す図である。
図16図16は、分析条件入力画面の一例を示す図である。
図17図17は、実施例のマルチレベル分析処理の例を示すフローチャートである。
図18図18は、分析結果表示画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施例を、図面を用いて説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例の記載内容に限定して解釈されるものではない。本発明の思想ないし趣旨から逸脱しない範囲で、その具体的構成を変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。
【0013】
以下に説明する発明の構成において、同一又は類似する構成又は機能には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0014】
本明細書等における「第1」、「第2」、「第3」等の表記は、構成要素を識別するために付するものであり、必ずしも、数又は順序を限定するものではない。
【0015】
本明細書等において、各種情報の例として、「XXテーブル」との表現にて説明することがあるが、「XXリスト」、「XXキュー」等のデータ構造で表現されてもよい。また、「XXテーブル」は、「XX情報」としてもよい。識別情報について説明する際に、「識別情報」、「識別子」、「名」、「ID」、「番号」等の表現を用いるが、これらについてはお互いに置換が可能である。
【実施例0016】
図1は、実施例1の保健支援装置1の機能の概要を説明する説明図である。図1に示すように、保健支援装置1は、複数の居住地域を含む対象領域内の個人および居住地域の情報を分析する。図1の例では、保健支援装置1は、対象領域内に存在する居住地域A~居住地域Hの健康に関連する情報と、対象領域内に住む人の健康に関連する情報を用いて、マルチレベル分析を行う。そして、図1の例では、保健支援装置1は、マルチレベル分析の結果を用いて、居住地域A~居住地域Hを地域グループ1~3に分けて、地域グループ1~3それぞれにおける関連グラフ(詳細は後述する)をユーザに提示する。ここで、地域グループ1~3は、類似する複数の居住地域をまとめたグループである。これにより、以下に説明するように、保健支援装置1は、地域の特性を考慮して、地域の住人の健康状態を改善する有効な施策の検討を容易にする。そのために、保健支援装置1は、以下に説明する個人状態値、地域状態値、を用いて、マルチレベル分析を行う。
【0017】
個人状態値は、例えば、性別、年齢等の、個人の属性を表す値(以下、個人属性状態値と称する)や、体重、血圧、血糖値等の個人の健康状態を表す値(以下、個人健康状態値と称する)である。そのほか、個人健康状態値には、食習慣や運動習慣など生活習慣を表す値を用いてもよい。
【0018】
地域状態値には、地域統計状態値と、地域環境状態値とがある。地域統計状態値とは、居住地域における個人状態値の統計量である。地域統計状態値は、例えば、居住地域に住む人の平均年齢や、糖尿病発生率である。保健支援装置1は、個人状態値から地域統計状態値を算出できる。
【0019】
また、地域環境状態値とは、居住地域の環境の状態を表す値である。地域環境状態値は、例えば、居住地域の面積や、居住地域内にある医療機関の数(医療機関数)である。
【0020】
以上で説明した、個人に関する個人状態値と、居住地域に関する地域状態値(地域統計状態値および地域環境状態値)との両方を、可変の値と、非可変の値とに分けることができる。可変な値は、値の変更を実施可能と想定している値である。一方、非可変な値は、値の変更が困難であると想定している値である。可変の個人状態値は、例えば、運動習慣があるか否かを表す値である「運動習慣実施」である。
【0021】
保健支援装置1は、マルチレベル分析において、マルチレベルモデルを用いる。マルチレベルモデルは、アウトカム値を目的変数とし、少なくとも1つの個人状態値および少なくとも1つの地域状態値を説明変数とする関数である。ここで、アウトカム値とは、人および社会に与えた影響の大きさを表す値である。アウトカム値は、例えば、個人の健康に関する地域統計状態値である。
【0022】
保健支援装置1は、マルチレベル分析において、説明変数の値から、目的変数の値であるアウトカム値を推計するマルチレベルモデルを学習するとともに、目的変数の説明変数の値である個人状態値、地域統計状態値、地域環境状態値との少なくとも1つの値それぞれの係数および寄与度を算出する。
【0023】
そして、保健支援装置1は、非可変な地域状態値のうちで、寄与度が最も大きい地域状態値(最大非可変地域値と称する)に基づいて、複数の居住地域を、複数の地域グループに分ける。従って、保健支援装置1は、健康状態を表すアウトカム値に対して、地域の特性を表す非可変な地域状態のうちで関連性が最も大きい最大非可変地域値で、居住地域を複数の地域グループに分類する。その結果、保健支援装置1は、アウトカム値との関連が比較的大きい地域の特性が類似する地域をまとめて、複数の居住地域を地域グループに分ける。
【0024】
さらに、保健支援装置1は、地域グループそれぞれに対して、居住地域の地域状態値に対する、居住地域のアウトカム値の関連グラフなどを作成してユーザに提示する。これにより、ユーザは、地域グループ内で、アウトカム値と、個人状態値や地域状態値との関連性を分析して、地域の住人の健康状態の改善に有効な施策を検討できる。従って、保健支援装置1は、地域の特性を考慮して、地域の住人の健康状態を改善する有効な施策の検討を容易にする。
【0025】
<装置構成>
図2は、実施例の保健支援装置1の機能ブロック図の一例を示す図である。図2に示すように、保健支援装置1は、ネットワークNWを介して保健情報管理サーバ100およびユーザ端末500に接続されている。保健支援装置1は、ネットワークNWに接続されたユーザ端末500からアクセスされる。ユーザ端末500のユーザは、ユーザ端末500を用いて、保健支援装置1を操作することができる。保健情報管理サーバ100は、保健支援装置1が行う分析に必要なデータを格納している。保健支援装置1は、保健情報管理サーバ100から、分析に必要なデータを取得して、ユーザ端末500のユーザが指定した分析を行うことができる。
【0026】
ネットワークNWは、有線のネットワークでもよいし、無線のネットワークでもよい。また、ネットワークNWは、インターネットのようなグローバルネットワークであってもよいし、構内ネットワーク(LAN:Local Area Network)であってもよい。また、ネットワークNWとして、USB(Universal Serial Bus)などの有線通信路あるいはBluetooth等の無線通信路を用いてもよい。
【0027】
保健支援装置1は、記憶部11と、入力データ生成部12と、学習処理部13と、地域分類部14と、グラフ生成部15とを備えている。そして、詳細は後述するが、保健情報管理サーバ100は、副記憶装置123を備えている。副記憶装置123には、個人属性テーブル131と、健康診断テーブル132と、レセプトテーブル133と、地域可変環境状態テーブル135と、地域非可変環境状態テーブル136とを格納している。個人属性テーブル131と、健康診断テーブル132と、レセプトテーブル133とは、個人状態値と、個人を識別する個人ID(個人識別情報)と、個人の居住する居住地域を識別する地域ID(地域識別情報)と、を対応付けて保存している個人状態情報である。また、地域可変環境状態テーブル135と、地域非可変環境状態テーブル136は、居住地域を識別する地域ID(地域識別情報)と、複数の地域環境状態値とを対応付けて格納している。
【0028】
保健支援装置1の記憶部11は、図3を用いて後述する保健支援装置1の主記憶装置22であり、保健支援装置1が分析に用いるマルチレベル分析情報(図6に示す個人レベル入力テーブル32の情報と、図7に示す地域レベル入力テーブル33の情報とを含む)を格納する。マルチレベル入力情報は、対象領域を特定できる地域ID(対象領域特定情報)と、対象領域に含まれる居住地域を特定できる地域ID(居住地域特定情報)と、健康に関するアウトカム値と、個人の状態を表す複数の個人状態値と、居住地域の情報に関する複数の地域状態値と、を対応付けた情報を含む。
【0029】
保健支援装置1の入力データ生成部12は、ユーザ端末500から入力された情報に基づいて、マルチレベル分析で使用するデータを、保健情報管理サーバ100の副記憶装置123に格納されたデータから取得して、記憶部11および保健支援装置1の副記憶装置23に保存する。すなわち、入力データ生成部12は、ユーザ端末500から入力された情報に基づいて、個人属性テーブル131、健康診断テーブル132およびレセプトテーブル133から、マルチレベル分析で使用する個人状態値等の個人レベル入力テーブル32に含まれる情報を取得して、主記憶装置22に記憶し、さらに、個人レベル入力テーブル32を保健支援装置1の副記憶装置23に保存する。また、入力データ生成部12は、ユーザ端末500から入力された情報に基づいて、個人レベル入力テーブル32に保存した情報、地域可変環境状態テーブル135および地域非可変環境状態テーブル136から、マルチレベル分析で使用する地域状態値等の地域レベル入力テーブル33に含まれる情報を取得して、主記憶装置22に記憶し、さらに、地域レベル入力テーブル33を副記憶装置23に保存する。
【0030】
学習処理部13は、入力データ生成部12が取得して、主記憶装置22に記憶した、個人レベル入力テーブル32および地域レベル入力テーブル33に含まれる情報(すなわち、マルチレベル入力情報)を用いて、目的変数の値から、目的変数の値であるアウトカム値を推計するマルチレベルモデルを学習する処理を実行する。
【0031】
地域分類部14は、学習処理部13がマルチレベルモデルを学習した結果の情報を用いて、分析対象の対象領域に含まれる居住地域を、複数の地域グループに分け、地域グループと居住地域とを対応付けた情報を保存する。
【0032】
グラフ生成部15は、地域グループそれぞれに対して、居住地域の地域状態値に対する、居住地域のアウトカム値のグラフなどの分析結果の情報を生成して、ユーザ端末500に出力する。
【0033】
<保健支援装置1のハードウェア構成>
図3は、保健支援装置1のハードウェア構成例を示すブロック図である。図3に示すように、保健支援装置1は、プロセッサ21、主記憶装置22、副記憶装置23、入力装置24、出力装置25、ネットワークI/F26、これらを接続するバス27を有している。保健支援装置1は、例えばPCやサーバーコンピューターのような一般的な情報処理装置で実現できる。
【0034】
プロセッサ21は、副記憶装置23に記憶されたデータやプログラムを主記憶装置22に読み出して、プログラムによって定められた処理を実行する。図2を用いて上述した入力データ生成部12は、副記憶装置23に記憶されている入力データ生成プログラム12aをプロセッサ21が主記憶装置22に読み出して実行することにより実現される。同様に、学習処理部13、地域分類部14、グラフ生成部15、それぞれは、プロセッサ21が、学習処理プログラム13a、地域分類プログラム14a、グラフ生成プログラム15aそれぞれを主記憶装置22に読み出して実行することにより実現される。
【0035】
本明細書では、機能部である入力データ生成部12を主語とする文で処理を説明する場合、プロセッサ21が当該機能部を実現するプログラム(入力データ生成プログラム12a)を実行していることを示す。同様に、機能部である学習処理部13、地域分類部14、グラフ生成部15、を主語とする文で処理を説明する場合、プロセッサ21が当該機能部を実現するプログラム(学習処理プログラム13a、地域分類プログラム14a、グラフ生成プログラム15a)を実行していることを示す。
【0036】
主記憶装置22は、RAMなどで、揮発性記憶素子を有し、プロセッサ21が実行するプログラムや、データを記憶する。
【0037】
副記憶装置23は、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)などで、不揮発性記憶素子を有し、プログラムやデータ等を記憶する装置である。副記憶装置23は、入力データ生成プログラム12aと、学習処理プログラム13aと、地域分類プログラム14aと、グラフ生成プログラム15aと、がインストールされている。また、副記憶装置23は、説明変数管理テーブル31と、個人レベル入力テーブル32と、地域レベル入力テーブル33と、モデルストア34と、マルチレベル解析結果テーブル35と、地域グループ分類テーブル36と、領域管理テーブル37と、を格納している。
【0038】
説明変数管理テーブル31は、詳細は図5を用いて後述するが、個人状態値から地域統計状態値を算出する方法や、地域状態値に基づいて居住地域を地域グループに分ける条件等の保健支援装置1の分析方法に関する情報を保存している。
【0039】
個人レベル入力テーブル32は、詳細は図6を用いて後述するが、マルチレベル分析に用いる個人状態値を保存している。
【0040】
地域レベル入力テーブル33は、詳細は図7用いて後述するが、マルチレベル分析に用いる地域状態値を保存している。
【0041】
モデルストア34は、マルチレベル分析に用いるマルチレベルモデルを保存している。マルチレベルモデルは、アウトカム値を目的変数とし、少なくとも1つの個人状態値および少なくとも1つの地域状態値を説明変数とする関数である。
【0042】
マルチレベル解析結果テーブル35は、詳細は図8を用いて後述するが、マルチレベル分析の結果の情報を保存している。
【0043】
地域グループ分類テーブル36は、詳細は図9を用いて後述するが、地域グループの情報と、地域グループに含まれる居住地域の情報とを対応付けて保存している。
【0044】
領域管理テーブル37は、詳細は図10を用いて後述するが、対象領域(例えば、県)に含まれる地域(例えば、市町村)の情報を保存している。
【0045】
入力装置24は、キーボードやマウスなどのユーザの操作を受け付ける装置であり、ユーザの操作により入力された情報を取得する。出力装置25は、ディスプレイなど情報を出力する装置であり、例えば画面への表示により情報をユーザに提示する。なお、保健支援装置1は、入力装置24および出力装置25を兼ねるタッチパネルを備えても良い。
【0046】
ネットワークI/F26は、保健情報管理サーバ100や、ユーザ端末500等の装置と、ネットワークNWを介してデータを送受信可能なインターフェース(送受信装置)である。保健支援装置1は、ネットワークI/F26を用いて、ネットワークNWに接続されている、保健情報管理サーバ100や、ユーザ端末500等の装置とデータの送受信を行うことができる。
【0047】
<保健情報管理サーバ100のハードウェア構成>
図4は、保健情報管理サーバ100のハードウェア構成例を示すブロック図である。図4に示すように、保健情報管理サーバ100は、保健支援装置1と同様のハードウェア資源である、プロセッサ121、主記憶装置122、副記憶装置123、入力装置124、出力装置125、ネットワークI/F126、これらを接続するバス127を有している。保健情報管理サーバ100は、保健支援装置1と同様に、例えばPCやサーバーコンピューターのような一般的な情報処理装置で実現できる。
【0048】
また、保健情報管理サーバ100の副記憶装置123は、個人属性テーブル131と、健康診断テーブル132と、レセプトテーブル133と、領域管理テーブル134と、地域可変環境状態テーブル135と、地域非可変環境状態テーブル136とを格納している。
【0049】
個人属性テーブル131は、詳細は図11を用いて後述するが、個人の属性に関する情報を保存している。
【0050】
健康診断テーブル132は、詳細は図12を用いて後述するが、個人の健康診断の結果の情報を保存している。
【0051】
レセプトテーブル133は、詳細は図13を用いて後述するが、個人の医療機関での診断結果の情報を保存している。
【0052】
領域管理テーブル134は、詳細は図10を用いて後述する保健支援装置1の副記憶装置23に格納されている領域管理テーブル37と同様の情報を保存している。領域管理テーブル134は、対象領域(例えば、県)に含まれる地域(例えば、市町村)の情報を保存している。
【0053】
地域可変環境状態テーブル135は、詳細は図14を用いて後述するが、可変性が可変の地域環境状態値の情報を保存している。
【0054】
地域非可変環境状態テーブル136は、詳細は図15を用いて後述するが、可変性が非可変の地域環境状態値の情報を保存している。
【0055】
<各種データ構造>
次に、図5図15を用いて保健支援装置1で使用される各種データのデータ構成について説明する。なお、図5図15および以下で説明する、説明変数管理テーブル31、個人レベル入力テーブル32、地域レベル入力テーブル33、マルチレベル解析結果テーブル35、地域グループ分類テーブル36、領域管理テーブル37、個人属性テーブル131、健康診断テーブル132、レセプトテーブル133、領域管理テーブル134、地域可変環境状態テーブル135、地域非可変環境状態テーブル136のフィールドの構成は例であり、適宜変更できる。
【0056】
図5は、説明変数管理テーブル31のデータ構成の一例を示す図である。図5に示す説明変数管理テーブル31では、個人項目501と、地域項目502と、情報源503と、地域統計状態値算出方法504と、可変性505と、グループ分け条件506と、をフィールドとするレコードを格納している。
【0057】
個人項目501は、個人状態値の項目を格納するフィールドである。地域項目502は、個人項目501の個人状態値から算出される地域統計状態値の項目を格納するフィールドである。情報源503は、個人項目501の個人状態値を保存しているテーブルの名前を格納するフィールドである。地域統計状態値算出方法504は、個人項目501の個人状態値から、地域項目502の地域状態値を算出する式を格納するフィールドである。
【0058】
可変性505は、個人項目501の個人状態値および地域項目502の地域状態値の可変性が不可か可変かを格納するフィールドである。可変性505の値が「可変」の場合、個人項目501の個人状態値は可変の値(可変個人状態値)であり、かつ、地域項目502の地域統計状態値は可変の値(可変地域状態値)である。一方、可変性505の値が「非可変」の場合、個人項目501の個人状態値は非可変の値(非可変個人状態値)であり、かつ、地域項目502の地域状態値は非可変の値(非可変地域状態値)である。
【0059】
グループ分け条件506は、地域項目502の地域状態値が非可変の値(非可変地域状態値)の場合(、可変性505の値が「非可変」)に、地域項目502の地域統計状態値をもとに、対象領域内の居住地域を地域グループに分類する条件を格納するフィールドである。
【0060】
グループ分け条件506の値は、例として、図5に示すように、「(最大値)-(最小値)/3」、「地域数/3」、「(値- 最低値)/(最大値- 最低値) 閾値:0.1,0.5」を挙げることができる。ここで、「(最大値)-(最小値)/3」とは、次の様に、地域項目の値で、対象領域内の居住地域を、3つの地域グループに分けることを意味する。地域項目の値(例えば平均年齢)に関して、「(対象領域内の居住地域の地域項目の値の最大値 - 対象領域内の居住地域の地域項目の値の最小値」/3」の値を「地域統計状態値レンジ」とする。そして、対象領域内の居住地域を、次の3つの地域項目の値の範囲で、3つの地域グループに分ける。1、「対象領域内の居住地域の最小値」~「対象領域内の居住地域の最小値+地域統計状態値レンジ」。2、「対象領域内の居住地域の最小値+地域統計状態値レンジ」~「対象領域内の居住地域の最小値+2×地域統計状態値レンジ」。3、「対象領域内の居住地域の最小値+2×地域統計状態値レンジ」~「対象領域内の居住地域の最大値」。
【0061】
また、「地域数/3」では、対象領域内の居住地域を、地域項目の値の順に並べる。そして、居住地域を、順位1~順位「居住地域の数/3」、順位「居住地域の数/3」~順位「居住地域の数×2/3」、順位「居住地域の数×2/3」~最下位との3つの値の範囲それぞれで、対象領域内の居住地域を、3つの地域グループに分ける。
【0062】
また、「(値- 最低値)/(最大値- 最低値) 閾値:0.1,0.5」では、次の様に、地域項目の値で、対象領域内の居住地域を、3つの地域グループに分ける。地域項目の値(例えば、人口千人あたりの医療機関の数)から、「(算出対象の地域項目の値- 対象領域内の居住地域の地域項目の値の最小値)/(対象領域内の居住地域の地域項目の値の最大値 - 対象領域内の居住地域の地域項目の値の最小値)」を、「相対地域状態値」とする。そして、対象領域内の居住地域を、次の3つの「相対地域状態値」の値の範囲で、3つの地域グループに分ける。1、0~0.1。2、0.1~0.5。3、0.5~1。
【0063】
以上は、グループ分け条件506の値の例を説明したが、グループ分け条件506の値は、地域項目の値(地域状態値)の区切りを示す値であればよく、以上で説明した例以外の値でもよい。また、以上の説明では、地域グループの数は、3であるが、地域グループの数は2以上の整数であれば、どの整数でも良い。
【0064】
図6は、個人レベル入力テーブル32のデータ構成の一例を示す図である。図6に示す個人レベル入力テーブル32では、個人ID601と、地域ID602と、個人アウトカム値603と、個人状態値604と、をフィールドとするレコードを格納している。個人ID601は、個人を識別する識別子を格納するフィールドである。地域ID602は、個人ID601が割り当てられた個人が居住する居住地域を識別する識別子を格納するフィールドである。
【0065】
個人アウトカム値603は、保健支援装置1がマルチレベル分析に使用するアウトカム値が個人状態値である場合に、アウトカム値とする個人状態値を格納するフィールドである。保健支援装置1がマルチレベル分析に使用するアウトカム値が個人状態値である場合には、後述するように、アウトカム値を算出するために用いる個人状態値がアウトカム値603に保存され、さらに、アウトカム値(地域統計状態値)は、アウトカム値603の値から算出されて、図7に例を示す地域レベル入力テーブル33に保存される。図6のアウトカム値603の例では、個人アウトカム値603の値は腎症発症の有無(腎症発症を発症しているか否か:発症している場合は値が「有」、発症していない場合は値が「無」。)である。後述するが、図6のアウトカム値603の値から算出された、アウトカム値が図7のアウトカム値702に保存される。
【0066】
個人状態値604は、保健支援装置1がマルチレベル分析に使用する複数の個人状態値604a、604b等を格納するフィールドである。図6の個人状態値604の例では、「年齢」の値604aと、「HbA1c」の値604bと、「運動習慣実施」の値604c(運動習慣がある場合は値が「有」、運動習慣がない場合は値が「無」)とを、個人状態値604がフィールドとして有している。個人状態値604に保存される個人状態値のフィールドの数に制限はない。
【0067】
図7は、地域レベル入力テーブル33のデータ構成の一例を示す図である。図7に示す地域レベル入力テーブル33では、地域ID701と、アウトカム値702と、地域グループ703と、地域統計状態値704と、地域環境状態値705と、をフィールドとするレコードを格納している。
【0068】
地域ID701は、居住地域を識別する識別子を格納するフィールドである。
【0069】
アウトカム値702は、地域ID701が割り当てられた居住地域に対するアウトカム値である。アウトカム値702は、図6に示す個人レベル入力テーブル32のアウトカム値603を用いて、図5に示す説明変数管理テーブル31のグループ分け条件506の値の数式で算出される。
【0070】
地域グループ703は、マルチレベル分析の結果に基づいて算出された地域IDの居住地域が属する地域グループの名前を格納するフィールドである。
【0071】
地域統計状態値704は、地域ID701が割り当てられた居住地域に対する地域統計状態値を格納するフィールドである。地域統計状態値704は、可変性が可変の値の地域統計状態値のフィールドである可変地域値704aと、可変性が非可変の値の地域統計状態値のフィールドである非可変地域値704bとを含む。可変地域値704aおよび非可変地域値704bは、複数のフィールドを含む。図7に示す地域レベル入力テーブル33では、可変地域値704aには、値が平均HbA1cのフィールド704a1と、値が運動習慣実施率のフィールド704a2と、を含む。また、図7に示す地域レベル入力テーブル33では、非可変地域値704bには、値が平均年齢の地域統計状態値のフィールド704b1を含む。地域統計状態値704に保存される地域統計状態値のフィールドの数に制限はない。
【0072】
地域環境状態値705は、地域ID701が割り当てられた居住地域に対する地域環境状態値を格納するフィールドである。地域環境状態値705は、可変性が可変の値の地域環境状態値のフィールドである可変地域値705aと、可変性が非可変の値の地域環境状態値のフィールドである非可変地域値705bとを含む。可変地域値705aおよび非可変地域値705bは、複数のフィールドを含む。図7に示す地域レベル入力テーブル33では、可変地域値705aには、項目が平均健康診断受診率の地域環境状態値のフィールド705a1と、項目が重症化予防実施率の地域環境状態値のフィールド705a2と、を含む。また、図7に示す地域レベル入力テーブル33では、非可変地域値705bには、項目が「人口あたり医療機関数」の地域統計状態値のフィールド705b1と、項目が財政力指数の地域統計状態値のフィールド705b2と、項目がポイント事業参加率の地域統計状態値のフィールド705b3と、を含む。地域環境状態値705に保存される地域統計状態値のフィールドの数に制限はない。
【0073】
図8は、マルチレベル解析結果テーブル35のデータ構成の一例を示す図である。図8に示すマルチレベル解析結果テーブル35では、インデックス801と、個人状態値802と、地域統計状態値803と、地域環境状態値804と、をフィールドとするレコードを格納している。インデックス801は、行の値の内容である。図8のマルチレベル解析結果テーブル35では、インデックス801は、1行目の値が項目の分類であることを表す「分類」と、2行の値が項目であることを表す「項目」と、3行の値がマルチレベルモデルの係数であることを表す「係数」と、4行の値がマルチレベルモデルの寄与度であることを表す「寄与度」との値を含む。
【0074】
個人状態値802は、個人状態値に関するマルチレベル分析の結果を格納するフィールドである。個人状態値802は、可変性が可変の値の個人状態値のマルチレベル分析の結果のフィールドである可変個人値802aと、可変性が非可変の値のマルチレベル分析の結果のフィールドである非可変個人値802bとを含む。可変個人値802aおよび非可変個人値802bは、複数のフィールドを含む。これら、可変個人値802aの複数のフィールおよび非可変個人値802bの複数のフィールドには、これらに対する係数および寄与度が保存されている。
【0075】
図8に示すマルチレベル解析結果テーブル35では、例として、可変個人値802aには、項目がHbA1cのフィールド802a1と、項目が運動習慣実施のフィールド802a2と、を含む。また、図8に示すマルチレベル解析結果テーブル35では、非可変個人値802bには、項目が年齢のフィールド802b1を含む。個人状態値802に保存される個人状態値のフィールドの数に制限はない。
【0076】
地域統計状態値803は、地域統計状態値に関するマルチレベル分析の結果を格納するフィールドである。地域統計状態値803は、可変性が可変の値の地域統計状態値のフィールドである可変地域値803aと、可変性が非可変の値の地域統計状態値のフィールドである非可変地域値803bとを含む。可変地域値803aおよび非可変地域値803bは、複数のフィールドを含む。これら、可変地域値803aのフィールドおよび非可変地域値803bのフィールドには、これらに対する係数および寄与度が保存されている。
【0077】
図8に示すマルチレベル解析結果テーブル35では、可変地域値803aには、項目が平均HbA1cのフィールド803a1と、項目が運動習慣実施率のフィールド803a2と、を含む。また、図8に示すマルチレベル解析結果テーブル35では、非可変地域値803bには、項目が平均年齢のフィールド803b1を含む。地域統計状態値803に保存される地域統計状態値のフィールドの数に制限はない。
【0078】
地域環境状態値804は、地域環境状態値に関するマルチレベル分析の結果を格納するフィールドである。地域環境状態値804は、可変性が可変の値の地域環境状態値のフィールドである可変地域値804aと、可変性が非可変の値の地域環境状態値のフィールドである非可変地域値804bとを含む。れら、可変地域値804aのフィールドおよび非可変地域値804bのフィールドには、これらに対する係数および寄与度が保存されている。可変地域値804aおよび非可変地域値804bは、複数のフィールドを含む。地域環境状態値804に保存される地域環境状態値のフィールドの数に制限はない。
【0079】
図8に示すマルチレベル解析結果テーブル35では、可変地域値804aには、項目が健康診断受診率のフィールド804a1と、項目が重症化予防実施率のフィールド804a2と、を含む。また、図8に示すマルチレベル解析結果テーブル35では、非可変地域値804bには、項目が「人口あたり医療機関数」のフィールド804b1と、項目が財政力指数のフィールド804b2と、項目がポイント事業参加率のフィールド804b3と、を含む。
【0080】
図9は、地域グループ分類テーブル36のデータ構成の一例を示す図である。図9に示す地域グループ分類テーブル36では、地域グループ名901と、地域ID902と、をフィールドとするレコードを格納している。
【0081】
地域グループ名901は、地域グループの名前を格納するフィールドである。地域ID902は、地域グループ名901の地域グループに含まれる居住地域の地域IDを格納するフィールドである。
【0082】
図10は、領域管理テーブル37のデータ構成の一例を示す図である。図10に示す領域管理テーブル37では、対象領域名1001と、地域名1002と、地域ID1003と、をフィールドとするレコードを格納している。対象領域名1001は、地域グループの名前を格納するフィールドである。地域名1002は、対象領域名1001の地域グループに含まれる居住地域の名前を格納するフィールドである。地域ID1003は、地域名1002の居住地域を識別する地域IDを格納するフィールドである。
【0083】
図11は、個人属性テーブル131のデータ構成の一例を示す図である。個人属性テーブル131は、個人ID(個人IDを識別する情報)と、個人属性状態値の年度と、地域ID(個人IDで特定できる個人が居住する居住地域を特定できる情報)と、複数の個人属性状態値とを対応付けて保存している。図11に示す個人属性テーブル131では、個人ID1101と、年度1102と、地域ID1103と、個人属性状態値1104と、をフィールドとするレコードを格納している。
【0084】
個人ID1101は、個人を識別する識別子を格納するフィールドである。年度1102は、レコードの情報の年度を格納するフィールドである。地域ID1103は、個人ID1101で特定できる個人が居住する居住地域の地域IDを格納するフィールドである。
【0085】
個人属性状態値1104は、個人ID1101で特定できる個人の複数の個人属性状態値を格納するフィールドである。図11に示す個人属性テーブル131では、個人属性状態値1104には、項目が「性別」のフィールド1104aと、項目が「年齢」のフィールド1104bと、項目が「同居有無」のフィールド1104c(同居者がいる場合は値が「有」で、同居者がいない場合は値が「無」)と、項目が「職業」のフィールド1104dと、を含む。個人属性状態値1104に保存される個人属性状態値のフィールドの数に制限はない。
【0086】
図12は、健康診断テーブル132のデータ構成の一例を示す図である。健康診断テーブル132は、個人ID(個人IDを識別する情報)と、個人健康状態値の年度と、複数の個人健康状態値とを対応付けて保存している。図12に示す健康診断テーブル132では、健診ID1201と、個人ID1202と、受診日1203と、個人健康状態値1204と、をフィールドとするレコードを格納している。健診ID1201は、カルテ等の健康診断の記録を識別する識別子である。個人ID1202は、健診1201の対象者の個人IDである。受診日1203は、健診1201の健康診断の記録がとられた日である。
【0087】
個人健康状態値1204は、個人ID1202で特定できる個人の複数の個人健康状態値を格納するフィールドである。図12に示す健康診断テーブル132では、個人健康状態値1204には、項目が「受診時年齢」の個人健康状態値のフィールド1204aと、項目が「腹囲」のフィールド1204bと、項目が「拡張期血圧」のフィールド1204cと、項目が「収縮期血圧」のフィールド1204dと、項目が「血糖値」の個人健康状態値のフィールド1204eと、項目が「中性脂肪」の個人健康状態値のフィールド1204fとを含む。個人健康状態値1204に保存される個人健康状態値のフィールドの数に制限はない。
【0088】
図13は、レセプトテーブル133のデータ構成の一例を示す図である。レセプトテーブル133は、個人ID(個人IDを識別する情報)と、医療機関での診断結果の情報と、診断結果の年度と、を対応付けて保存している。図13に示すレセプトテーブル133では、レセプトID1301と、医療機関コード1302と、個人ID1303と、診療年月1304と、傷病名1305と、診療行為1306と、医薬品1307と、請求点数1308をフィールドとするレコードを格納している。
【0089】
レセプトID1301は、診断結果を識別する識別子を格納するフィールドである。医療機関コード1302は、診断結果を作成した医療機関を識別する情報を格納するフィールドである。医療機関コード1302に含まれる情報には、医療機関が存在する居住地域を特定できる情報を含んでいる。
【0090】
個人ID1303は、診断結果の対象者の個人IDを格納するフィールドである。診療年月1304は、診断結果が作成された年月を格納するフィールドである。傷病名1305は、診断結果での傷病名を格納するフィールドである。ここで。傷病名1305は、個人がどの病気等に罹っているか否かの情報を含む。そこで、保健支援装置1は、傷病名1305の値から、特定の疾病にかかっているか否かの情報を、個人状態値として取得できる。
【0091】
診療行為1306は、診断結果を作成した時点で実施された診療行為の名前を格納するフィールドである。医薬品1307は、診断結果により個人に処方された医薬品名を格納するフィールドである。請求点数1308は、診断結果の診断による請求点数を格納するフィールドである。傷病名1305~請求点数1308は、レセプトテーブル133の一例であり、レセプトテーブル133のフィールドの数などのレセプトテーブル133の構成は適宜変更できる。
【0092】
なお、領域管理テーブル134は、図10を用いて説明した領域管理テーブル37と同様の構成と同様の情報を保存しているため、図示および説明を省略する。
【0093】
図14は、地域可変環境状態テーブル135のデータ構成の一例を示す図である。地域可変環境状態テーブル135は、地域ID(居住地域を特定できる情報)と、地域環境状態値の年度と、可変性が可変の地域環境状態値とを対応付けて保存している。図14に示す地域可変環境状態テーブル135では、地域ID1401と、年度1402と、健診受診率1403と、保健指導実施率1404と、重症化予防実施率1405と、をフィールドとするレコードを格納している。健診受診率1403と、保健指導実施率1404と、重症化予防実施率1405とは、値が可変尾地域環境状態値のフィールドの例である。
【0094】
地域ID1401は、居住地域を識別する識別子を格納するフィールドである。年度1402は、レコードの情報の年度を格納するフィールドである。健診受診率1403は、地域ID1401の居住地域の健康診断受診率を格納するフィールドである。保健指導実施率1404は、地域ID1401の居住地域の保健指導実施率を格納するフィールドである。重症化予防実施率1405は、地域ID1401の居住地域の重症化予防実施率を格納するフィールドである。地域可変環境状態テーブル135に保存される地域可変環境状態値のフィールドの数に制限はない。
【0095】
図15は、地域非可変環境状態テーブル136のデータ構成の一例を示す図である。地域非可変環境状態テーブル136は、地域ID(居住地域を特定できる情報)と、地域環境状態値の年度と、可変性が非可変の地域環境状態値とを対応付けて保存している。図15に示す地域非可変環境状態テーブル136では、地域ID1501と、年度1502と、地域名称1503と、面積1504と、可住面積1505と、人口1506と、被保険者数1507と、財政力指数1508と、医療機関数1509と、可住面積あたりの被保険者数1510と、10万人あたりの医療機関数1511と、10万人あたりの病床数1512と、をフィールドとするレコードを格納している。
【0096】
地域ID1501は、居住地域を識別する識別子を格納するフィールドである。年度1502は、レコードの情報の年度を格納するフィールドである。地域名称1503は、地域IDの居住地域の名称を格納するフィールドである。
【0097】
面積1504は、地域ID1501の居住地域の面積を格納するフィールドである。可住面積1505は、地域ID1501の居住地域の可住面積を格納するフィールドである。人口1506は、地域ID1501の居住地域の人口を格納するフィールドである。被保険者数1507は、地域ID1501の居住地域の被保険者数を格納するフィールドである。財政力指数1508は、地域ID1501の居住地域の財政力指数を格納するフィールドである。医療機関数1509は、地域ID1501の居住地域に存在する医療機関の数を格納するフィールドである。可住面積あたりの被保険者数1510は、地域ID1501の居住地域の可住面積あたりの被保険者数を格納するフィールドである。10万人あたりの医療機関数1511は、地域ID1501の居住地域の人口10万人あたりの医療機関数を格納するフィールドである。10万人あたりの病床数1512は、地域ID1501の居住地域の人口10万人あたりの病床数を格納するフィールドである。地域非可変環境状態テーブル136に保存される地域非可変環境状態値のフィールドの数に制限はない。
【0098】
なお、個人レベル入力テーブル32(図6参照)、地域レベル入力テーブル33(図7参照)および領域管理テーブル37(図13参照)が、対象領域名(対象領域特定情報)と、対象領域に含まれる居住地域を特定できる地域ID(居住地域特定情報)と、健康に関するアウトカム値と、個人の状態を表す複数の個人状態値と、居住地域の情報に関する複数の地域状態値と、を対応付けた情報を含むマルチレベル入力情報である。
【0099】
また、地域グループ分類テーブル36(図9参照)は、複数の地域グループ毎に、地域グループ名901(地域グループを特定する地域グループ特定情報)と、地域グループに含まれる居住地域それぞれを特定する地域ID(地域グループ内地域特定情報)902と、を対応付けて保存する地域グループ分類情報である。
【0100】
また、個人属性テーブル131(図11参照)、健康診断テーブル132、レセプトテーブル133、領域管理テーブル134、地域可変環境状態テーブル135、地域非可変環境状態テーブル136が、対象領域特定情報、居住地域特定情報、個人特定情報、複数の個人状態値それぞれの項目名、複数の個人状態値、地域環境状態値、を対応付けて保存しているオリジナル情報である。
【0101】
また、説明変数管理テーブル31(図5参照)が、地域統計状態値の項目名、地域統計状態値を個人状態値から算出する地域統計状態値算出方法、を対応付けて保存している地域統計状態値算出情報である。
【0102】
<処理手順>
次に、保健支援装置1の処理手順について説明する。ユーザは、ユーザ端末500を操作して、ユーザ端末500に、保健支援装置1にアクセスさせる。保健支援装置1は、ユーザ端末500からアクセスされると、分析条件の入力に用いる分析条件入力画面の情報である分析条件入力画面情報をユーザ端末500に送信する。分析条件入力画面情報は、分析条件入力画面の構成の情報と、ユーザ端末500に分析条件入力画面を表示させる旨の情報と、を含む。以下に説明するように、分析条件入力画面は、分析対象(分析する時間範囲と、対象領域の範囲等)と、マルチレベル分析に用いるマルチレベル関数の目的変数であるアウトカム値および説明変数である個人状態値の項目および地域状態値の項目を入力できるように構成されている。
【0103】
図16は、ユーザ端末500または保健支援装置1の出力装置25(モニタ)に表示される分析条件入力画面1600の一例を示す説明図である。図16に示す分析条件入力画面1600は、分析対象を入力するために用いる、開始年度選択ボタン1611と、終了年度選択ボタン1612と、対象領域選択ボタン1613と、変数条件選択ボタン1614と、年度条件選択ボタン1615と、値条件選択ボタン1616と、条件削除ボタン1617と、条件追加ボタン1618とを備えている。
【0104】
また、図16の分析条件入力画面1600は、アウトカムモデルの目的変数とするアウトカム値のデータの選択に用いるアウトカム値選択テーブル1620と、アウトカムモデルの説明変数とする個人状態値および地域状態値のデータの選択に用いる目的変数選択テーブル1630と、モデル選択ボタン1640と、分析実行ボタン1650と、を備えている。
【0105】
開始年度選択ボタン1611は、クリックすると、年のリストが表示されて、分析対象のデータの初年度を選択できるようになっている。終了年度選択ボタン1612は、クリックすると、年のリストが表示されて、分析対象のデータの最終年度を選択できるようになっている。保健支援装置1は、後述するマルチレベル分析処理にて、開始年度選択ボタン1611を用いて入力された初年度から、終了年度選択ボタン1612を用いて入力された最終年度までのデータを、マルチレベル分析に用いる。
【0106】
対象領域選択ボタン1613は、クリックすると、対象領域名のリストが表示されて、マルチレベル分析の分析対象の対象領域を選択できるようになっている。
【0107】
変数条件選択ボタン1614は、クリックすると条件設定に用いる変数の項目(アウトカム値、説明変数とする個人状態値の項目および地域状態値の項目)のリストが表示されて、条件設定に用いる変数を選択できるようになっている。
【0108】
年度条件選択ボタン1615は、クリックすると年のリストが表示されて、変数条件選択ボタン1614で選択された変数の情報の年度を選択できるようになっている。値条件選択ボタン1616は、クリックすると値のリストが表示されて、条件とする値を選択できるようになっている。
【0109】
条件削除ボタン1617は、クリックすると、変数条件選択ボタン1614、年度条件選択ボタン1615および値条件選択ボタン1616を用いて設定された条件を削除することができるようになっている。
【0110】
条件追加ボタン1618は、クリックすると、変数条件選択ボタン1614、年度条件選択ボタン1615および値条件選択ボタン1616を用いて、さらなる条件を登録できるようになっている。このように複数の条件を設定できることにより、マルチレベル分析で対象とするデータを、複数の条件で絞り込むことができるようになっている。
【0111】
図16に示す分析条件入力画面1600には、分析対象のデータが、2017年から2021年の、A県内のデータであり、目的変数(アウトカム値)の1年目(2017年)のデータの値が0となっている(値が規定の閾値以下の場合や、症状の値が「無」の場合)データを、分析対象のデータとすることが描かれている。
【0112】
アウトカム値選択テーブル1620は、個人状態値の項目のリストである「個人項目」の列と、個人項目の列に対する地域統計状態値の項目のリストである「地域項目」の列と、「データ年度」の列と、個人状態値および地域統計状態値の可変性を示す「可変性」の列と、を有する。個人項目の列の個人状態値の項目それぞれの左および地域項目の列の地域統計状態値の項目それぞれの左には、チェックボックスが表示されている。
【0113】
個人項目の列のチェックボックス1621、そして、地域項目の列のチェックボックス1622、1623等のチェックボックスがクリックされると、チェックボックスにチェックが入るようになっている。アウトカム値の項目は、チェックの入ったチェックボックス(図16の例では、チェックボックス1623)の右の項目に設定される。また、データ年度の列には、複数の年度選択ボタン1624が1列に並んでいる。チェックの入ったチェックボックスの右の年度選択ボタン1624がクリックされると、年度のリストが表示されて、年度を選択できるようになっている。図16の分析条件入力画面1600には、アウトカム値として、5年目(すなわち、2021年度)のデータのうちの、地域統計項目の値のうちの1つである腎症発症が選択されている。
【0114】
目的変数選択テーブル1630は、個人状態値の項目のリストである「個人項目」の列と、地域環境状態値の項目および「個人項目」の列に対応する地域統状態値の項目のリストである「地域項目」の列と、「データ年度」の列と、個人状態値および地域状態値の可変性を示す「可変性」の列と、個人状態値および地域環境状態値の「分類」(個人属性状態値、個人健康状態値、地域環境状態値のいずれか)の列とを有する。
【0115】
目的変数選択テーブル1630は、アウトカム値選択テーブル1620と同様に、項目名の左にチェックボックスを有しており、チェックボックスがクリックされると、クリックされたチェックボックスにチェックが入るとともに、クリックされたチェックボックスの左に示されている項目が、説明変数の値の項目として設定される。データ年度の列は、アウトカム値選択テーブル1620と同様に、クリックされると、年度のリストが表示されて、年度を選択できるようになっている。
【0116】
モデル選択ボタン1640は、クリックされると、マルチレベル分析に用いるマルチレベル関数のリストが表示されて、マルチレベル分析に用いるマルチレベル関数を選択できるようになっている。
【0117】
分析実行ボタン1650は、クリックされると、分析条件入力画面1600を用いて入力された分析条件の情報(分析条件情報と称する)と、マルチレベル分析処理を実行する指示の情報とを含むマルチレベル分析実行開始情報を、ユーザ端末500が生成して保健支援装置1に送信するようになっている。保健支援装置1は、マルチレベル分析実行開始情報を受信すると、マルチレベル分析処理を実行する。
【0118】
なお、保健支援装置1のユーザが、保健支援装置1の入力装置24を用いて、分析条件を入力する場合、出力装置25に分析条件入力画面1600が表示されて分析条件の情報が入力される。さらに、保健支援装置1のユーザが、分析条件入力画面1600の分析実行ボタン1650をクリックすると、保健支援装置1は、分析条件入力画面1600を用いて入力された分析条件の情報(分析条件情報)を用いて、マルチレベル分析処理を実行するようになっている。
【0119】
図17は、実施例のマルチレベル分析処理の例を示すフローチャートである。保健支援装置1は、マルチレベル分析実行開始情報などに含まれる分析条件情報に基づいて、マルチレベル分析に用いるデータ(マルチレベル入力情報)を、保健情報管理サーバ100から取得して、個人レベル入力テーブル32および地域レベル入力テーブル33に保存する(ステップS101)。ステップS101にて、保健支援装置1は、次のデータ条件1~データ条件6の全てを満たすデータを、保健情報管理サーバ100の副記憶装置33に保存された個人属性テーブル131、健康診断テーブル132、レセプトテーブル133、領域管理テーブル134、地域可変環境状態テーブル135、地域非可変環境状態テーブル136から、マルチレベル入力情報として取得して、副記憶装置23に記憶し、個人状態値を個人レベル入力テーブル32に保存するとともに、地域状態値を地域レベル入力テーブル33に保存する。
【0120】
データ条件1、図16の分析条件入力画面1600に示す開始年度選択ボタン1611および終了年度選択ボタン1612を用いて選択された分析対象のデータの初年度(開始年度)から終了年度の範囲(以下、データ年度収集範囲と称する)のデータ。すなわち、以下のレコードから、データを収集する。個人属性テーブル131(図11参照)で、年度1102が、データ年度収集範囲内の値のレコード。健康診断テーブル132(図12参照)で、受診日1203が、データ年度収集範囲内の値のレコード。レセプトテーブル133(図13参照)で、診療年月1304が、データ年度収集範囲内の値のレコードのデータ。地域可変環境状態テーブル135(図14参照)で、年度1402が、データ年度収集範囲内の値のレコードのデータ。地域非可変環境状態テーブル136(図15参照)のレコードで、年度1502が、データ年度収集範囲内の値のレコード。
データ条件2、分析条件入力画面1600の対象領域選択ボタン1613で設定された対象領域内の居住地域に対応付けられているデータ。すなわち、対象領域選択ボタン1613で設定された対象領域内の居住地域の地域環境状態値と、その居住地域に住む人のデータ。保健支援装置1は、地域グループ分類テーブル36を参照して、対象領域選択ボタン1613で設定された対象領域の名前に対応付けられた地域ID1102を取得し、取得した地域ID1102に対応付けられたデータを分析に用いるデータとする。ここで、個人状態値で、取得した地域ID1102に対応付けられたデータとは、個人属性テーブル131において、地域ID1103が、取得した地域ID1102に含まれるレコードの個人IDが対応付けられている(健康診断テーブル132、レセプトテーブル133のデータ)である。また、地域環境状態値で、取得した地域ID1102に対応付けられたデータとは、地域可変環境状態テーブル135(図14参照)の地域ID1401および地域非可変環境状態テーブル136(図15参照)の地域ID1501が、取得した地域ID1102に含まれるレコードに含まれる地域環境状値である。
データ条件3、分析条件入力画面1600の変数条件選択ボタン1614と、年度条件選択ボタン1615と、値条件選択ボタン1616と、条件削除ボタン1617と、条件追加ボタン1618とで、設定された前提条件のデータに対応付けられているデータ。前提条件が、個人状態値に関する条件の場合には、個人属性テーブル131(図11参照)、健康診断テーブル132(図12参照)およびレセプトテーブル133(図13参照)で前提条件を満たすレコードからデータを収集する。
データ条件4、アウトカム値選択テーブル1620で、設定されたアウトカム値のデータに対応付けられているデータ。
データ条件5、目的変数選択テーブル1630にて設定された地域統計状態値を算出できる個人状態値が存在し、その個人状態値に対応付けられているデータ。すなわち、目的変数選択テーブル1630にて設定された地域統計状態値の算出に用いる個人状態値が保存されている個人に関する個人状態値および地域環境状態値。
データ条件6、目的変数選択テーブル1630にて設定された地域環境状態値が存在する居住地域に対応付けられているデータ。すなわち次のデータである。目的変数選択テーブル1630にて設定されたマルチレベル分析に用いる地域環境状態値の値が、地域可変環境状態テーブル135または地域非可変環境状態テーブル136に保存されている居住地域(環境データ存在居住地域とする)の地域環境状態値。個人属性テーブル131(図11参照)において地域ID1003が環境データ存在居住地域の地域IDに対応付けられたレコード(環境データ存在居住地域内レコードと称する)の情報に含まれる情報。レセプトテーブル133(図11参照)のレコードおよび領域管理テーブル37(図10参照)のレコードで、環境データ存在居住地域内レコードの個人IDに対応付けられたレコードの情報。
【0121】
次に、保健支援装置1は、地域統計状態値を算出するループ処理を開始する(ステップS102)。ループ開始のステップS102からループ終了のステップS104の間に示す処理は、ステップS102にて抽出した地域統計状態値の名前毎に繰り返し行う。ステップS102にて、保健支援装置1は、分析条件情報に含まれる地域統計状態値の項目(図16の目的変数選択テーブル1630にて分析対象に設定された地域統計状態値の項目)およびアウトカム値の項目(アウトカム値が、地域統計状態値であり、個人状態値ではない場合)のうちで、未処理の地域統計状態値の名前の中から1つの地域統計状態値の名前を選択する。
【0122】
次に、保健支援装置1は、ステップS102にて選択した地域統計状態値の名前の地域統計状態値を、ステップS101にて個人レベル入力テーブル32に保存した個人状態値から算出し、地域レベル入力テーブル33に保存する(ステップS103)。ステップS102にて、保健支援装置1は、説明変数管理テーブル31(図5参照)を参照して、説明変数管理テーブル31において、ステップS102にて選択した地域統計状態値の名前に対応付けられた個人項目501の値(地域統計状態値の算出に用いる個人状態値の項目名)と、地域統計状態値算出方法504の値(数式)と、可変性505の値と、を取得する。
【0123】
そして、保健支援装置1は、次の様に、個人レベル入力テーブル32(図6参照)から、地域ID602毎に、居住地域それぞれの地域統計状態値を算出する。すなわち、保健支援装置1は、個人レベル入力テーブル32(図6参照)において、地域ID602が同一のレコードから、上記の個人項目501の値(個人状態値の項目名に対する値または、個人アウトカム値603に対する値)の個人状態値を抽出する。そして保健支援装置1は、抽出した全ての個人状態値を、上記の地域統計状態値算出方法504の値(数式)に当てはめて、得られる値を地域統計状態値とする。そして、保健支援装置1は、地域レベル入力テーブル33に、得られた地域統計状態値を、地域ID602と、上記の可変性505の値とに対応付けて、保存する。以上の処理を、地域ID602毎に繰り返す。
【0124】
次に、保健支援装置1は、ステップS102にて抽出した地域統計状態値の全ての名前について処理が完了したか否かを判定する(ステップS104)。保健支援装置1が、ステップS104にて、ステップS102にて抽出した地域統計状態値の全ての名前について処理が完了していないと判定した場合は、保健支援装置1はステップS102に戻り、処理を継続する。一方、保健支援装置1が、ステップS102にて抽出した地域統計状態値の全ての名前について処理が完了したと判定した場合には、保健支援装置1は、ステップS105の処理を実行する。
【0125】
次に、保健支援装置1は、説明変数の値からアウトカム値を推計するマルチレベルモデルを、分析条件の情報に含まれるマルチレベル関数を用いて学習するとともに、説明変数それぞれの係数および寄与度を算出し、算出した係数および寄与度をマルチレベル解析結果テーブル35に保存する(ステップS105)。ここで、保健支援装置1は、分析条件情報に含まれるマルチレベルモデルの名前に対応するマルチレベルモデル(マルチレベル関数)の数式をモデルストア34から読み出して取得する。また、マルチレベル関数を用いる学習には、個人レベル入力テーブル32(図6参照)および地域レベル入力テーブル33(図7参照)に保存されたデータと、取得したマルチレベル関数とを用いる。そして、学習後のマルチレベル関数の係数(個人状態値および地域状態値それぞれの項の係数)と、係数の寄与度(個人状態値および地域状態値それぞれの寄与度)とを算出し、マルチレベル解析結果テーブル35(図8参照)に、個人状態値および地域状態値それぞれの項目名(個人状態値か、地域統計状態値か、地域環境状態値かに分類する)と、可変性(可変個人値か、非可変個人値か、可変地域値か、非可変地域値かに分類する)と、係数と、寄与度と、を対応付けて保存する。なお、寄与度として、各説明変数を標準化して求めた係数を用いてもよい。これにより、寄与度の比較が容易になる。また、寄与度は、係数そのものにしても良い。寄与度として、変数の有意水準を評価したp値を用いてもよい。
【0126】
次に、保健支援装置1は、非可変の地域統計状態値および地域環境状態値のうちで、寄与度が最も大きい地域状態値に対する項目を、最大非可変地域値の項目として取得する(ステップS106)。ステップS106にて、保健支援装置1は、マルチレベル解析結果テーブル35から、非可変の地域統計状態値の寄与度(非可変地域値803bの列の寄与度の値)および非可変の地域環境状態値の寄与度(非可変地域値806bの列の寄与度の値)を抽出する。そして、保健支援装置1は、抽出した寄与度の値のうちで、最も大きな値の寄与度に対する項目を、最大非可変地域値の項目として算出する。
【0127】
次に、保健支援装置1は、最大非可変地域値に基づき、対象領域内にある居住地域を複数の地域グループに分け、地域グループに含まれる居住地域の情報を保存する(ステップS107)。ステップS107にて、保健支援装置1は、説明変数管理テーブル31を参照して、説明変数管理テーブル31において、ステップS106にて取得した最大非可変地域値の項目に対応付けられているグループ分け条件506の値を取得する。そして、保健支援装置1は、地域レベル入力テーブル33を参照して、地域レベル入力テーブル33において、地域ID701と、地域ID701および最大非可変地域値の項目に対応付けられている地域状態値とを対応付けて保存する。そして、保健支援装置1は、保存した地域状態値を、取得したグループ分け条件506の値で、地域IDを複数の地域グループ(例えば、グループ1~3)に分類する。さらに、保健支援装置1は、地域IDと、分類したグループ名とを対応付けて、地域レベル入力テーブル33に保存する。ここで、地域IDと、グループ名との情報が、地域グループに含まれる情報である。
【0128】
そして、保健支援装置1は、地域レベル入力テーブル33(図6参照)を参照して、地域レベル入力テーブル33において、地域ID601と、地域ID601および最大非可変地域値の項目に対応付けられている地域状態値を、取得したグループ分け条件506の値で分類する。そして、保健支援装置1は、この地域状態値の分類に基づいて地域状態値に対応付けられている地域IDを複数の地域グループ(例えば、グループ1~3)に分類する。さらに、保健支援装置1は、地域IDと、分類したグループの名前とを対応付けて、地域グループ分類テーブル36(図9参照)に保存する。
【0129】
次に、保健支援装置1は、地域グループ毎に、アウトカム値と地域状態値との関連性を示すグラフ等のデータを作成し、作成したグラフのデータを含むマルチレベル分析の分析結果のデータを提示するように出力して、処理を終了する(ステップS108)。ステップS108にて、保健支援装置1は、地域グループに関するグラフのデータと、個人レベル入力テーブル32(図6)および地域レベル入力テーブル33(図7参照)のデータ、マルチレベル解析結果テーブル35に保存されたデータを含む分析結果表示画面内容情報と、分析結果表示画面の構成の情報と、分析結果表示画面を表示させる旨の情報と、を含む分析結果表示画面情報を生成して、ネットワークI/F26に、ユーザ端末500に分析結果表示画面情報を送信するように出力する。また、保健支援装置1は、分析結果表示画面情報をネットワークI/F26に出力しない出力場合には、分析結果表示画面内容情報を主記憶装置22に出力して、出力装置25に分析結果表示画面を表示させる。
【0130】
ここで、保健支援装置1が出力する分析結果表示画面内容情報には、複数の地域グループそれぞれに対する、居住地域の最大非可変地域値(第1地域状態値)に対する、居住地域のアウトカム値の関連グラフのデータと、関連グラフに示されている複数の居住地域を、関連グラフに示されている複数の居住地域それぞれに対する非可変な地域状態値それぞれ(第2地域状態値)で、複数のサブグループに分類し、関連グラフにおいて、関連グラフに示されている複数の居住地域に対する、分類されたサブグループの名前を示すサブグループ分類情報と、を含む。
【0131】
図18は、ユーザ端末500または保健支援装置1の出力装置25(モニタ)に表示される分析結果表示画面の一例を示す説明図である。図18に示す分析結果表示画面1800は、分析対象表示テーブル1810と、個人状態値寄与度テーブル1820と、変数一覧表1830と、関連グラフ1840と、居住地域関連テーブル1850と、を含む。
【0132】
分析対象表示テーブル1810は、マルチレベル分析の分析条件を表示するテーブルである。個人状態値寄与度テーブル1820は、個人状態値の寄与度を表示するテーブルである。個人状態値寄与度テーブル1820は、個人状態値の項目と寄与度とを対応づけた表である。
【0133】
変数一覧表1830は、マルチレベル分析に用いた目的変数の項目(アウトカム値の項目)および説明変数の項目(地域統計状態値および地域環境状態値の項目)の変数の列と、地域状態値それぞれの「係数」の列と、地域状態値それぞれの「寄与度」の列と、関連グラフ1840のグラフの軸を選択する「[表示]」の列と、関連グラフ1840のグラフの軸を表示する「[軸]」の列と、を含む表である。
【0134】
関連グラフ1840は、上記の変数一覧表1830の「[表示]」の列のチェックボックスで選択された項目名の状態値(個人状態値または地域状態値)をX軸とし目的変数の状態値(個人状態値または地域状態値)をY軸とする関連グラフを、地域グループそれぞれについて表示している。
【0135】
変数一覧表1830において、関連グラフ1840のグラフの軸を選択する「[表示]」の列の「[表示変更]」の下には、個人状態値の項目名と、地域状態値(集団)の項目名とを表示している。そして、これらの項目名の左にチェックボックスが表示されている。ユーザがチェックボックスをクリックするなどで、チェックボックスを選択すると、選択したチェックボックスの右に表示されている項目名の状態値(個人状態値または地域状態値)をX軸とし目的変数の状態値(個人状態値または地域状態値)をY軸とする、関連グラフ1840が作成されて表示されるようになっている。
【0136】
また、「軸」の列の値「地域分類」の左にチェックが入っているチェックボックスの項目は、最大非可変地域値の項目である。最大非可変地域値の項目のチェックボックスはクリックしても表示が変更されず、ユーザが選択できないようになっている。これは、最大非可変地域値は、居住地域を地域グループに分類にするために使用しており、最大非可変地域値の項目は、ユーザが選択できないからである。
【0137】
また、変数一覧表1830において、「[軸]」の列で、目的変数(アウトカム値)に対する値は、関連グラフ1840のY軸となっていることを表す値「Y」となっている。
【0138】
また、「[軸]」の列で、値が「X」となっている行の左の説明変数(個人状態値または地域状態値)の項目のチェックボックスをユーザがクリックしてチェックを入れると、関連グラフ1840のX軸はチェックを入れた項目の説明変数の値に変更したグラフが関連グラフ1840に表示されるようになっている。
【0139】
また、変数一覧表1830において、「[軸]」の列で、値が「サブ分類」となっている行の左の説明変数(個人状態値または地域状態値、以下、サブ分類説明変数と称する)は、関連グラフ1840において、居住地域を表す点を囲う実線および破線の楕円で居住地域を分類する説明変数(個人状態値または地域状態値)である。例えば、関連グラフ1840では、実線の楕円で囲われた領域と、破線の楕円で囲われた領域と、それ以外の領域との3つの領域に分かれている。この3つの領域は、説明変数管理テーブル31(図5参照)においてサブ分類説明変数に対応付けられたグループ分け条件506の値(数式)と、居住地域それぞれのサブ分類説明変数の値とに基づいて、図18のステップS107と同様に、居住地域をサブグループに分けた(図18の例では3つのサブグループ、サブグループの数は適宜変更できる)領域である。
【0140】
図18の関連グラフ1840において、実線の楕円で囲った領域は、サブ分類説明変数の値が最も高い領域である。破線の楕円で囲った領域は、サブ分類説明変数の値が中間の領域である。楕円で囲われていない領域は、サブ分類説明変数の値が低い領域である。
【0141】
保健支援装置1がステップS108にて算出して出力する分析結果表示画面内容情報に含まれる、関連グラフにおいて、関連グラフに示されている複数の居住地域に対する、分類されたサブグループの名前を示すサブグループ分類情報には、非可変の地域状態値に対するサブ分類の情報(非可変の地域状態値と、サブグループ名前と、サブグループそれぞれに含まれる居住地域名と、を対応付けた情報)が含まれる。
【0142】
図18では、居住地域のサブ分類を、実線の楕円および破線の楕円で示した。居住地域のサブグループの分類を示す方法は、適宜変更できる。例えば、関連グラフ1840において、居住地域を表す点を、色分けで分類してもよいし、点の大きさで分類してもよいし、点に変えて複数の記号を用いて分類してもよい。また、複数の説明変数(個人状態値または地域状態値)をサブ分類説明変数とし、関連グラフ1840において、複数の態様(点の大きさや、点の色分け等)で、居住領域の複数の分類を示してもよい。
【0143】
居住地域関連テーブル1850は、居住地域の名前を表示する「集団」の列と、最大非可変地域値の値を表示する「群」の列と、関連グラフ1840のX軸の状態値(個人状態値または地域状態値)の値を表示する「X軸」の列と、関連グラフ1840のY軸の状態値(個人状態値または地域状態値)の値(すなわち、アウトカム値)を表示する「Y軸」の列とを含む。「X軸」の列の値は、変数一覧表1830で選択されたチェックボックスの右の項目に応じて変更される。
以上の説明では、目的変数(アウトカム値)として腎症発症の有無などの2値変数を用いる場合を、例として説明した。目的変数の値(アウトカム値)は、例えば、人の健康に関する値であればよい。目的変数の値(アウトカム値)は、検査値(例えば血糖値やHbA1c)等の連続値でもよい。この場合、モデルの選択1640(図16参照)にて、重回帰モデル、一般化線形回帰モデルなどを選択してモデル化を行うことができる。例えば、図16の分析条件入力画面1600にて、目的変数としてHbA1c、説明変数として個人の体重および地域の年齢(平均年齢)などを選択した場合、図18分析結果表示画面1800において、目的変数として個人のHbA1c、説明変数の地域分類として年齢の「集団(平均)」、X軸として個人の体重を選択する。これにより、図18分析結果表示画面1800において、関連グラフ1840には、平均年齢の高、中、低の3つのグループで、X軸が個人の体重、Y軸がHbA1c値となる関連グラフが表示される。その結果、例えば、年齢層が若い地域では、体重とHbA1cとの関連性が強いことが関連グラフ1840から示唆され、一方、年齢層が高い地域では、体重とHbA1cとの関連性が弱いことが関連グラフから示唆される場合など、地域の特性による関連性の違いを理解することが、容易になる場合がある。
【0144】
なお、ステップS101~S104を実行する保健支援装置1のプロセッサ21は、入力データ生成部12である。入力データ生成部12は、マルチレベルモデルの学習に用いる、居住地域特定情報と、アウトカム値の項目と、少なくとも1つの個人状態値の分析項目と、少なくとも1つの地域統計状態値の分析項目と、地域環境状態値の分析項目と、を対応付けて保存している分析条件情報(分析条件入力画面1600を用いて入力された分析条件の情報)を取得すると、取得した分析条件情報に含まれる、地域統計状態値の分析項目それぞれに対して、保健情報管理サーバが格納している地域統計状態値算出情報(説明変数管理テーブル31)において、地域統計状態値の分析項目に対応付けられた地域統計状態値算出方法を取得し、地域統計状態値の分析項目の地域統計状態値の算出に用いる統計用個人状態値を、保健情報管理サーバが格納しているオリジナル情報から取得し、取得した地域統計状態値算出方法と、取得した統計用個人状態値とに基づいて、地域統計状態値の分析項目の地域統計状態値を取得して、記憶部のマルチレベル入力情報に保存するとともに、取得した分析条件情報に含まれる、居住地域特定情報と、アウトカム値の項目と、個人状態値の条件項目と、地域環境状態値の条件項目と、に対応付けられている、アウトカム値、個人状態値、地域環境状態値、をオリジナル情報から取得し、マルチレベル入力情報(個人レベル入力テーブル32、地域レベル入力テーブル33および領域管理テーブル37)に保存する。
【0145】
ステップS105を実行する保健支援装置1のプロセッサ21は、学習処理部13である。学習処理部13は、マルチレベル入力情報(個人レベル入力テーブル32、地域レベル入力テーブル33および領域管理テーブル37)に含まれる複数の個人状態値および複数の地域状態値から、マルチレベル入力情報に含まれるアウトカム値を推計するマルチレベルモデルを学習するとともに、複数の地域状態値それぞれの寄与度を算出する。そして、ステップS105の処理が学習処理である。
【0146】
ステップS106およびS107を実行する保健支援装置1のプロセッサ21は、地域分類部14である。地域分類部14は、値の変更が困難と想定されている非可変な地域状態値のうちで、寄与度が最も大きい非可変な地域状態値の項目を、最大非可変地域値の項目として算出し、複数の居住地域それぞれに対する最大非可変地域値に基づいて、複数の居住地域を、複数の地域グループに分け、分けた複数の地域グループ毎に、地域グループを特定する地域グループ特定情報と、地域グループに含まれる居住地域それぞれを特定する地域グループ内地域特定情報と、を対応付けて保存する地域グループ分類情報(地域グループ分類テーブル36)を算出して、算出した地域グループ分類情報を出力する。そして、ステップS106の処理が地域分類処理である。
【0147】
ステップS108を実行する保健支援装置1のプロセッサ21は、グラフ生成部15である。グラフ生成部15は、複数の地域グループそれぞれに対する、居住地域の最大非可変地域値(第1地域状態値)に対する、居住地域のアウトカム値の関連グラフのデータを出力する。
【0148】
また、グラフ生成部15は、ステップS108にて、関連グラフに示されている複数の居住地域を、関連グラフに示されている複数の居住地域それぞれに対する非可変な地域状態値(第2地域状態値)で、複数のサブグループに分類し、関連グラフにおいて、関連グラフに示されている複数の居住地域に対する、分類されたサブグループの名前を示すサブグループ分類情報を出力する。
【0149】
<発明の効果>
このように、実施例において、保健支援装置1は、学習処理部13が、対象領域内の居住地域の複数の地域状態値および住人の個人状態値から、アウトカム値を推計するマルチレベルモデルを学習するとともに、地域状態値それぞれの寄与度を算出する(図17のマルチレベル分析処理のステップS105)。これにより、保健支援装置1は、対象領域内の複数の地域状態値の寄与度を算出することで、ユーザが、アウトカム値に対する影響が大きい(すなわち、寄与度の値が大きい)地域状態値を特定することを容易にする。
【0150】
さらに、保健支援装置1は、地域分類部14が、非可変な地域状態値のうちで、寄与度が最も大きい最大非可変地域値に基づいて、複数の居住地域を、複数の地域グループに分ける(図17のマルチレベル分析処理のステップS107)。そして、地域分類部14が、地域グループ特定情報と、地域グループ内地域特定情報と、を対応付けて保存する地域グループ分類情報を出力する(図17のマルチレベル分析処理のステップS107)。このように、最大非可変地域値の値によって、地域の特性を考慮して、複数の居住地域を、複数の地域グループに分け、地域グループ毎で、地域の住人の健康状態を改善する有効な施策を検討することができる。
【0151】
従って、保健支援装置1は、地域の特性を考慮して、地域の住人の健康状態を改善する有効な施策の検討を容易にする。すなわち、保健支援装置1は、保健や経済の複数の施策から、実施する地域の特性にあう適切な施策を選択することを容易にする。また、保健支援装置1は、施策が効果を奏するために必要な地域の特性を明らかにすることを容易にする。さらに、保健支援装置1は、施策が十分効果を奏したか否かを、地域の特性を踏まえて明らかにすることを容易にする。
【0152】
また、保健支援装置1の入力データ生成部12は、分析条件情報に含まれる、地域統計状態値の分析項目それぞれに対して、地域統計状態値を取得して、マルチレベル入力情報に保存する。そして、マルチレベル入力情報に保存された、地域統計状態値は、マルチレベルモデルの学習に用いられる。従って、保健支援装置1の入力データ生成部12は、学習処理部13がマルチレベルモデルを学習することを容易にする。ひいては、保健支援装置1の入力データ生成部12は、地域の特性を考慮して、地域の住人の健康状態を改善する有効な施策の検討を容易にする。
【0153】
また、保健支援装置1は、グラフ生成部15が、複数の地域グループそれぞれに対して、居住地域の最大非可変地域値(第1地域状態値)に対する、居住地域のアウトカム値の関連グラフのデータを出力する。これにより、関連グラフをユーザに提示することが容易になる。そして、ユーザは、関連グラフを参照すれば、地域グループそれぞれで、居住地域のアウトカム値と、居住地域の最大非可変地域値(第1地域状態値)との関連の大きさを検討することが容易になる。したがって、保健支援装置1は、居住地域の特性で分類された地域グループそれぞれで、居住地域の最大非可変地域値(第1地域状態値)との関連の大きさの検討を容易にする。
【0154】
また、保健支援装置1は、グラフ生成部15にて、関連グラフに示されている複数の居住地域に対する、サブグループの分類を識別するサブグループ識別情報を出力する。その結果、ユーザは、関連グラフにおいて、関連グラフに示されている複数の居住地域に対する、サブグループの分類を把握することができる。これにより、ユーザは、関連グラフを参照すれば、地域グループそれぞれで、居住地域のアウトカム値と居住地域の第2地域状態値との関連性を検討することが容易になる。従って、保健支援装置1は、ユーザが、地域グループそれぞれで、居住地域のアウトカム値と居住地域の第2地域状態値との関連性を検討することを容易にすることができる。
【0155】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。また、例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために構成を詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、各実施例の構成の一部について、他の構成に追加、削除、置換することが可能である。
【0156】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、実施例の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0157】
1:保健支援装置
11:記憶部
12:入力データ生成部
13:学習処理部
14:地域分類部
15:グラフ生成部
21:プロセッサ
22:主記憶装置
23:副記憶装置
31:説明変数管理テーブル
32:個人レベル入力テーブル
33:地域レベル入力テーブル
34:モデルストア
35:マルチレベル解析結果テーブル
36:地域グループ分類テーブル
24:入力装置
25:出力装置
26:ネットワークI/F
27:バス
100:保健情報管理サーバ
121:プロセッサ
122:主記憶装置
123:副記憶装置
131:個人属性テーブル
132:健康診断テーブル
133:レセプトテーブル
134:領域管理テーブル
135:地域可変環境状態テーブル
136:地域非可変環境状態テーブル
124:入力装置
125:出力装置
126:ネットワークI/F
127:バス
NW:ネットワーク
図1
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