(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126672
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】コンクリートのブリーディング水抑制方法
(51)【国際特許分類】
E04G 21/02 20060101AFI20240912BHJP
B28B 1/30 20060101ALI20240912BHJP
C04B 24/24 20060101ALI20240912BHJP
C04B 28/02 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
E04G21/02 103A
B28B1/30
C04B24/24 Z
C04B28/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023035230
(22)【出願日】2023-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000166432
【氏名又は名称】戸田建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】100104927
【弁理士】
【氏名又は名称】和泉 久志
(72)【発明者】
【氏名】田中 徹
(72)【発明者】
【氏名】守屋 健一
(72)【発明者】
【氏名】錦木 健二
(72)【発明者】
【氏名】赤尾 優弥
【テーマコード(参考)】
2E172
4G052
4G112
【Fターム(参考)】
2E172AA05
2E172AA12
2E172DD07
4G052DA01
4G052DA08
4G052DB12
4G052DC06
4G112PB26
4G112PC01
4G112PE02
(57)【要約】
【課題】ブリーディング水の発生量を適度に抑制し、コンクリート打設時の作業性を低下させない。
【解決手段】コンクリートを上方向に向けて順次層状に打設して行くに当たって、1日のコンクリート打設が完了した翌日に、打設済みコンクリートに新規コンクリートを打ち重ねる際のコンクリートのブリーディング水抑制方法である。打設済みコンクリートに、超遅延剤を添加するとともに、下記の特性を有する吸水性ポリマーを添加する。(1)経過時間と採取した水量の累計との関係において、前記新規コンクリートの打設時にブリーディング水の累計発生量が増加勾配を有すること。(2)新規コンクリートの打設時点におけるブリーディング水の累計発生量が、コンクリートの品質の級に応じて、0.3cm
3/cm
2 以下、0.5cm
3/cm
2 以下及び0.7cm
3/cm
2 以下のいずれかであること。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートを上方向に向けて順次層状に打設して行くに当たって、1日のコンクリート打設が完了した翌日に、打設済みコンクリートに新規コンクリートを打ち重ねる際のコンクリートのブリーディング水抑制方法であって、
前記打設済みコンクリートに、超遅延剤を添加するとともに、下記の特性を有する吸水性ポリマーを添加することを特徴とするコンクリートのブリーディング水抑制方法。
(1)JCI-S-015「小型容器によるコンクリートのブリーディング試験方法」に準じて測定した経過時間と採取した水量の累計との関係において、前記新規コンクリートの打設時にブリーディング水の累計発生量が増加勾配を有すること。
(2)前記新規コンクリートの打設時点におけるブリーディング水の累計発生量が、コンクリートの品質の級に応じて、0.3cm3/cm2 以下、0.5cm3/cm2 以下及び0.7cm3/cm2 以下のいずれかであること。
【請求項2】
前記打設済みコンクリートを打設してから14時間~24時間の間に、前記新規コンクリートを打設する請求項1記載のコンクリートのブリーディング水抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートを上方向に順次層状に打設して行くに当たって、1日のコンクリート打設が完了した翌日に、打設済みコンクリートに新規コンクリートを打ち重ねる際のコンクリートのブリーディング水抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、土木工事等において大規模なコンクリート構造物を構築するに当たって、コンクリートを上方向に向けて順次層状に打設する施工が行われている。この際、1日のコンクリート打設が完了したならば、日付を跨いでコンクリート打設を再開することになるため、打設済みコンクリートと新規コンクリートとの境界面(水平打継目)の一体性がコンクリート品質を確保する上で重要となる。
【0003】
従来は、専らある程度硬化した下層側コンクリートの表面(水平打継目となる)をワイヤーブラシやチッピング等によりレイタンスを除去した後(グリーンカット処理という。)、上層にコンクリートを打設する方法が採用されていたが、この方法は基本的に手作業となるため、多くの手間と時間が掛かるとともに、粉塵の発生を伴うため環境防止対策が必要になるなどの問題があった。
【0004】
そこで、近年は超遅延剤や打継目処理剤を用いた処理方法が提案され実用化されている。前者の超遅延剤は、下記特許文献1に記載されるように、打設済みコンクリートの打継面に存在させ、該打継面が未硬化の状態にて新規コンクリートを打設する際に用いられる。打継面に超遅延剤を存在させることにより、打継面近傍の硬化が遅延され、未硬化状態として新規コンクリートを打設することが可能となり、継目の一体性を確保することができる。
【0005】
ところが、超遅延剤を添加したコンクリートは、セメントの水和反応を遅延させることから、通常のコンクリートよりブリーディング水の発生量が増加する問題があった。
【0006】
このようなブリーディング水に対しては、従来より、次のような処置がとられている。
(1)特に対策を施すことなくコンクリートを打設した後、新規コンクリートを打設する際に発生したブリーディング水の除去作業を行う。
(2)例えば下記特許文献2に記載されるように、打設済みコンクリートに増粘剤を添加し、自由水を拘束することでブリーディング水の発生を抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平4-222771号公報
【特許文献2】特開2000-95552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、ブリーディング水の過剰な発生は、コンクリート構造物の力学性能及び耐久性に悪影響を及ぼすため、避けるべきである。また、ブリーディング水の過剰な発生は、ブリーディング水の除去作業に手間と時間を要するため、作業効率が悪化する問題がある。更に、ブリーディング水の除去が不十分な場合、ブリーディング水によりコンクリート内部に空隙が生じる可能性がある。
【0009】
一方で、ブリーディング水の発生が全く無いと、打設済みコンクリートの乾燥などの影響により、打重ね部の一体性が低下する。
【0010】
ブリーディング水発生抑制の別の方法として、打設済みコンクリートに吸水ポリマーを添加することにより、この吸水ポリマーに自由水を吸収させる方法も提案されている。ところが、従来の吸水ポリマーは、コンクリートへの添加直後(水との接触直後)に吸水を開始するため、コンクリートの軟らかさが著しく低下し、コンクリート打設時のワーカビリティが低下する問題があった。
【0011】
そこで本発明の主たる課題は、ブリーディング水の発生量を適度に抑制し、コンクリート打設時の作業性を低下させないコンクリートのブリーディング水抑制方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、コンクリートを上方向に向けて順次層状に打設して行くに当たって、1日のコンクリート打設が完了した翌日に、打設済みコンクリートに新規コンクリートを打ち重ねる際のコンクリートのブリーディング水抑制方法であって、
前記打設済みコンクリートに、超遅延剤を添加するとともに、下記の特性を有する吸水性ポリマーを添加することを特徴とするコンクリートのブリーディング水抑制方法が提供される。
(1)JCI-S-015「小型容器によるコンクリートのブリーディング試験方法」に準じて測定した経過時間と採取した水量の累計との関係において、前記新規コンクリートの打設時にブリーディング水の累計発生量が増加勾配を有すること。
(2)前記新規コンクリートの打設時点におけるブリーディング水の累計発生量が、コンクリートの品質の級に応じて、0.3cm3/cm2 以下、0.5cm3/cm2 以下及び0.7cm3/cm2 以下のいずれかであること。
【0013】
上記請求項1記載の発明では、打設済みコンクリートに超遅延剤を添加しているため、コンクリートの凝結時間が任意にコントロールでき、打重ね部の一体性が確保できる。
【0014】
また、本発明では、前記打設済みコンクリートに、所定の特性を有する吸水性ポリマーを添加している。この吸水性ポリマーは、第1に、JCI-S-015「小型容器によるコンクリートのブリーディング試験方法」に準じて測定した経過時間と採取した水量の累計との関係において、前記新規コンクリートの打設時にブリーディング水の累計発生量が増加勾配を有している。この特性は、吸水性ポリマーがコンクリートに添加した直後に吸水が完了するのではなく、吸水が緩やかに進行し、打設済みコンクリートを打設した翌日に新規コンクリートを打ち重ねる際も吸水性ポリマーの吸水が継続していることを示している。これによって、ブリーディング水の発生量が適度に抑制でき、コンクリート打設時の作業性が向上する。
【0015】
また、前記吸水性ポリマーは、新規コンクリート打設時点におけるブリーディング水の累計発生量が、コンクリートの品質の級に応じて、 0.3cm3/cm2 以下、0.5cm3/cm2 以下及び0.7cm3/cm2 以下のいずれかである。このような特性を有する吸水性ポリマーを用いることによって、ブリーディング水の発生量を適度に抑制できる。
【0016】
請求項2に係る本発明として、前記打設済みコンクリートを打設してから14時間~24時間の間に、前記新規コンクリートを打設する請求項1記載のコンクリートのブリーディング水抑制方法が提供される。
【0017】
上記請求項2記載の発明では、吸水性ポリマーの吸水が継続しており、打設済みコンクリートが完全に固化していない状態(14時間~24時間の間)で新規コンクリートを打設することによって、打設済みコンクリートと新規コンクリートとの打ち重ね部の一体性を高めることができる。
【発明の効果】
【0018】
以上詳説のとおり本発明によれば、ブリーディング水の発生量が適度に抑制でき、コンクリート打設時の作業性が低下することがない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明に係るコンクリートのブリーディング水抑制方法を実施したコンクリートの断面図である。
【
図2】吸水性ポリマーの吸水試験の結果を示すグラフである。
【
図3】実施例における経過時間と採取した水量の累計との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0021】
本発明に係るコンクリートのブリーディング水抑制方法は、
図1に示されるように、コンクリートを上方向に向けて順次層状に打設して行くに当たって、1日のコンクリート打設が完了した翌日に、打設済みコンクリート1に新規コンクリート2を打ち重ねる際に好適に用いられるものである。本発明では、1日のコンクリート打設が完了し、日付を跨いでコンクリート打設を再開する際、打設済みコンクリート1と新規コンクリート2との打継目3の一体性を確保しつつ、打設済みコンクリート1を打設する際のワーカビリティを低下させないとともに、打設済みコンクリート1のブリーディング水の発生を抑制することにより、翌日新規コンクリート2を打設する際の作業性を改善している。
【0022】
具体的には、打設済みコンクリート1に、超遅延剤を添加するとともに、次の特性を有する吸水性ポリマーを添加している。
(1)JCI-S-015「小型容器によるコンクリートのブリーディング試験方法」に準じて測定した経過時間と採取した水量の累計との関係において、前記新規コンクリートの打設時にブリーディング水の累計発生量が増加勾配を有すること。
(2)新規コンクリート2の打設時点におけるブリーディング水の累計発生量が、コンクリートの品質の級に応じて、0.3cm3/cm2 以下、0.5cm3/cm2 以下及び0.7cm3/cm2 以下のいずれかであること。
【0023】
コンクリートの打設工程では、事前に構造物の規模や形状に基づき、1日のコンクリート打設能力を勘案しながら、コンクリート打設割の計画が決定される。
【0024】
1日のコンクリート打設作業は、通常バイブレータによって締固めを行いながらの作業となるため、1日のコンクリート打設高さを2層以上に分けて打ち込むようにするのが普通である。この際、1層のコンクリート打設高さは締固め能力等を考慮して決定されるが、コンクリートの打込みの1層の高さh1は40~50cm以下を標準としている。
【0025】
コンクリートに使用するセメントの種類は、特に限定されるものではないが、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、白色ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント、低発熱ポルトランドセメントなどの各種ポルトランドセメント、及び高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカセメントなどの混合セメントなどを用いることができる。なお、リグニンスルホン酸塩系やポリオール系、オキシカルボン酸塩系などの一般的な減水剤やAE減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤を使用することが望ましい。中でも、減衰率の大きいポリアルキルアリルスルホン酸塩系やメラミン樹脂スルホン酸塩系などの高性能減水剤、ポリカルボン酸塩系の高性能AE減水剤が好ましい。前記減水剤は、コンクリートの練り混ぜ時に添加してもよいし、練り混ぜが完了したコンクリートに後添加してもよい。
【0026】
前記超遅延剤とは、添加することによりコンクリートの凝結速度を任意に調整する(遅くする)ことができる添加剤であり、セメント粒子の表面に吸着して水とセメントの接触を一時的に遮断してコンクリートの凝結を遅延させるものである。JIS A0203によれば、セメントの水和反応を遅らせ、凝結に要する時間を長くするために用いる混和剤が凝結遅延剤であると定義されている。凝結遅延剤は一般に遅延剤と超遅延剤に分類され、数時間以内の短時間の遅延作用を示す混和剤を遅延剤と呼び、数時間から数日間の長時間の遅延作用を有する混和剤を超遅延剤と呼んでいる。本発明で使用するものは後者の「超遅延剤」である。
【0027】
超遅延剤は、概ね無機系化合物と有機系化合物とに分類される。前者の無機系化合物の超遅延剤としては、塩化亜鉛、炭酸化亜鉛、一酸化鉛、リン酸塩、ケイフッ化物、ホウ砂、マグネシア塩等がある。後者の有機系化合物の超遅延剤としては、糖類やその誘導体、リグニンスルホン酸塩、有機酸やその酸塩、グルコン酸塩などのオキシカルボン酸塩、セルロース誘導体、ポリビニルアルコールなどの水溶性高分子類などが挙げられる。一般的に、有機系化合物の超遅延剤は無機系化合物よりも大きく超遅延剤として使用する場合は有機系化合物が有利とされている。
【0028】
超遅延剤の添加率は、セメントに対して0.1~5重量%、好ましくは0.5~2重量%程度とするのがよい。超遅延剤は、コンクリートの練り混ぜ時に添加してもよいし、練り混ぜが完了したコンクリートに後添加してもよい。
【0029】
ブリーディングとは、JIS A0203「コンクリート用語」によれば、フレッシュコンクリート及びフレッシュモルタルにおいて、固体材料の沈降又は分離によって、練混ぜ水の一部が遊離して上昇する現象である。ブリーディングによる水の上昇は、レイタンスや砂すじの原因となるなど、コンクリートの耐久性に悪影響を及ぼす。本発明では、このブリーディング水を抑制するため、所定の性質を有する吸水性ポリマーを前記打設済みコンクリート1に添加している。
【0030】
前記吸水性ポリマーは、水を高度に吸水して膨潤するポリマーのことであり、架橋構造の親水性物質であり、水との接触により吸水して、一度吸水すると圧力をかけても離水しにくい性質を有するものである。
【0031】
本発明では、前記吸水性ポリマーとして、JCI-S-015「小型容器によるコンクリートのブリーディング試験方法」に準じて測定した経過時間と採取した水量の累計との関係において、新規コンクリートの打設時にブリーディング水の累計発生量が増加勾配を有しているものが用いられる。すなわち、吸水性ポリマーをコンクリートに添加してから所定時間経過後も吸水性能が持続していることを要件としている。通常の吸水性ポリマーは、水と接触した直後に速やかに吸水し、所定量吸水した後は吸水しなくなるが、本発明で用いる吸水性ポリマーは、水と接触した後の吸水が緩やかに進行し、その吸水性能が長時間にわたって持続するものである。このような性質を有する吸水性ポリマーとしては、特開2022-112748号公報に開示されたものを用いることができる。ブリーディング水の累計発生量とは、打設済みコンクリートを打設してから新規コンクリートを打設するまでの間に、表面に上昇したブリーディング水の量のことである。
【0032】
本発明に係る吸水性ポリマー及び従来の吸水性ポリマーについて、吸水試験の結果を
図2に示す。吸水試験の方法は、蒸留水又はアルカリ水の中に吸水性ポリマーを浸漬し、経過時間毎の吸水性ポリマーの重量を測定し、吸水前の重量に対する比率(吸水倍率)を求めた。その結果、本発明に係る吸水性ポリマーは、特にアルカリ水に対して、従来の吸水性ポリマーと比較して初期の吸水が抑制される一方で、長時間に亘って吸水性能が持続するという性質を有する。
【0033】
打設済みコンクリートを打設してから、翌日新規コンクリートを打設するまでの時間としては、約14時間~24時間とすることができる。したがって、この経過時間14時間~24時間のいずれにおいてもブリーディング水の累計発生量が増加勾配を有しているのが望ましい。この新規コンクリートを打設するまでの時間を14時間~24時間とした理由は、1日のコンクリート打設の完了から、翌日のコンクリート打設再開までのインターバルを考慮したものである。例えば、1日のコンクリート打設が18時に完了し、翌日の朝8時から打設を再開する場合、その間のインターバルは14時間であり、1日のコンクリート打設が15時に完了し翌日15時に再開する場合は24時間となる。
【0034】
前記超遅延剤を添加したコンクリートは、
図1に示されるように、1日のコンクリート打設のうち最後の層(最上層)のみとするのが好ましい。
図1では、この超遅延剤を添加した層を超遅延剤添加層1aとして図示している。前記超遅延剤添加層1aの高さh2は、標準的なコンクリート1の打込みの1層の高さh1の1/2~1/3程度の高さとすることが望ましい。
【0035】
なお、翌日、新規コンクリート2を打設する際の打込みの1層の高さh3は、40~50cm以下を標準とする。
【0036】
本発明では、前記吸水性ポリマーを添加することによって、新規コンクリートの打設時点におけるブリーディング水の累計発生量がコンクリートの品質の級に応じて、0.3cm3/cm2 以下、0.5cm3/cm2 以下及び0.7cm3/cm2 以下のいずれかとなるようにしている。コンクリートに要求される性能として、日本建築学会「建築工事標準仕様書・同解説 JASS5 鉄筋コンクリート工事」において、ブリーディング量が示されている。これによると、コンクリートの品質の級に応じて、高級が0.3cm3/cm2 以下、常用が0.5cm3/cm2 以下、簡易が0.7cm3/cm2 以下となっている。同文献によると、耐久性や均一性などを含めたコンクリートの一般的な品質として、「高級」、「常用」、「簡易」の3種に級別しており、品質の級「常用」のコンクリートは、従来、普通に使用されていた程度の品質のコンクリートであり、「高級」のコンクリートは、耐久性などが「常用」よりとくに優れた高い信頼性のある品質のコンクリートであり、「簡易」のコンクリートは、常用のコンクリートほどの品質を必要としない場合に使われるもので、品質の信頼性などは、多少、低くても差し支えないコンクリートであるとされている。本発明においても、同文献に記載されたコンクリートの品質の級に応じたブリーディング量に準じて、新規コンクリート打設時点におけるブリーディング水の累計発生量を規定している。新規コンクリートの打設時点においてブリーディング水の累計発生量が規定値以下であることを満たしていれば、打設済みコンクリートと新規コンクリートとの打重ね部の一体性が確保され、コンクリート構造物の強度や信頼性の低下などを招くことがない。本発明では、打設済みコンクリートを打設してから新規コンクリートを打設するまでの間に、ブリーディング水の累計発生量が上述の規定値以下であることを条件としている。なお、打設済みコンクリートを打設してから新規コンクリートを打設するまでの時間は、前述の通り14時間~24時間とするのが好ましい。
【0037】
前記吸水性ポリマーの添加量は、セメントの種類、水セメント比などによって適宜設定できるが、0.1~10kg/m3 、好ましくは0.5~5kg/m3 、より好ましくは1~3kg/m3 とするのがよい。
【実施例0038】
本発明に係るブリーディング水抑制方法によって打設したコンクリートと、他の方法によって打設したコンクリートとについて、ブリーディング水の累計発生量の試験を行い、本発明の効果を検証した。
【0039】
使用したコンクリートの配合を表1に示す。
【表1】
また、AE減水剤、超遅延剤、高性能AE減水剤は、表2に示す通りである。なお、AE減水剤は、コンクリートの練り混ぜ時に配合し、超遅延剤及び高性能AE減水剤は、既に練り混ぜられたコンクリートに後添加した。
【表2】
コンクリートのスランプ、スランプフロー、空気量、温度は、表3に示す通りである。なお、スランプは、JIS A1101「コンクリートのスランプ試験方法」に準じて測定したもの、スランプフローは、JIS A1150「コンクリートのスランプフロー試験方法」に準じて測定したもの、空気量は、JIS A1128「フレッシュコンクリートの空気量の圧力による試験方法?空気室圧力方法」に準じて測定したもの、温度はJIS A1156「フレッシュコンクリートの温度測定方法」に準じて測定したものである。
【表3】
表3に示されるように、本発明に係るコンクリートのブリーディング水抑制方法を施したコンクリートでは、スランプやスランプフローが若干低下する場合もあるが、コンクリートの柔らかいにはほとんど影響を与えないため、コンクリート打設時の作業性を確保することができる。なお、比較例3のスランプフローは、スランプフローが生じなかったことを示している。
【0040】
コンクリートに添加する吸水性ポリマーの種類及び含有量は、表4に示す通りである。実施例1では、吸水性ポリマーを粒度調整せずにそのまま添加し、実施例2及び実施例3では、吸水性ポリマーを篩にかけることにより、比較的粒度の細かいものを選別して添加した。
【表4】
JCI-S-015-2018「小型容器によるコンクリートのブリーディング試験方法」に準じて測定した経過時間と採取した水量の累計との関係を
図3に示す。
【0041】
図3に示されるように、吸水性ポリマーを含有しない比較例1は、ブリーディング水の発生量が多く、新規コンクリートの打設時(打設済みコンクリートを打設してからの経過時間14時間~24時間の間)において、規定量を大きく上回った。従来の吸水性ポリマーを少量(1kg/m
3 )添加した比較例2は、スランプなどに与える影響は小さく、ワーカビリティを確保することができるが、ブリーディング水の発生量が多く、規定量を上回った。また、従来の吸水性ポリマーの添加量を増加(2kg/m
3 )した場合(比較例3)は、ほとんどスランプせず、コンクリートの流動性が悪いとともに、ブリーディング水の累計発生量の増加が早期に終了し、コンクリートの信頼性の低下が懸念される。
【0042】
一方、本発明に係る吸水性ポリマーを添加した実施例1~3はいずれも、新規コンクリートの打設時(打設済みコンクリートを打設してからの経過時間14時間~24時間の間)において、ブリーディング水の累計発生量が増加勾配を有している。また、スランプやスランプフローについては、吸水性ポリマーを添加しない比較例1と比較して大きな差異はなく、コンクリート打設時の作業性が低下しない。