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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126683
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】回転翼機の推力発生装置
(51)【国際特許分類】
   B64U 50/19 20230101AFI20240912BHJP
   B64U 10/10 20230101ALI20240912BHJP
   B64U 30/21 20230101ALI20240912BHJP
【FI】
B64U50/19
B64U10/10
B64U30/21
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023035242
(22)【出願日】2023-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 龍三郎
(57)【要約】
【課題】 回転翼機の推力発生装置において、駆動ユニットのメンテナンスの作業性を向上させる。
【解決手段】 回転翼機1の推力発生装置10は、回転翼機に設けられたベース11に着脱可能に取り付けられた支持部14と、支持部に回転可能に支持されたロータシャフト15と、ロータシャフトに結合された複数の回転翼16と、支持部又はベースに着脱可能に取り付けられる駆動ユニット18とを有する。駆動ユニットの出力軸71は、ロータシャフトと着脱可能に接続する。駆動ユニットは、電動モータ31と、電動モータの駆動力を減速してロータシャフトに伝達する減速機32とを有する。減速機の出力軸71は駆動ユニットの出力軸をなす。減速機は支持部に着脱可能に取り付けられている。
【選択図】 図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転翼機の推力発生装置であって、
前記回転翼機に設けられたベースに着脱可能に取り付けられた支持部と、
前記支持部に回転可能に支持されたロータシャフトと、
前記ロータシャフトに結合された複数の回転翼と、
前記支持部又は前記ベースに着脱可能に取り付けられる駆動ユニットとを有し、
前記駆動ユニットの出力軸が、前記ロータシャフトと着脱可能に接続する推力発生装置。
【請求項2】
前記駆動ユニットは、電動モータと、前記電動モータの駆動力を減速して前記ロータシャフトに伝達する減速機とを有し、
前記減速機の出力軸が前記駆動ユニットの前記出力軸をなし、
前記減速機が前記支持部に着脱可能に取り付けられている請求項1に記載の推力発生装置。
【請求項3】
前記電動モータは、前記減速機に着脱可能に取り付けられ、
前記電動モータの出力軸が前記減速機の入力軸に着脱可能に接続する請求項2に記載の推力発生装置。
【請求項4】
前記電動モータ、前記減速機、及び前記ロータシャフトが同軸上に配置されている請求項2又は3に記載の推力発生装置。
【請求項5】
前記ロータシャフト及び前記駆動ユニットの前記出力軸の一方にスプライン軸部が設けられ、
前記ロータシャフト及び前記駆動ユニットの前記出力軸の他方に、前記スプライン軸部が嵌合するスプライン孔が設けられている請求項1に記載の推力発生装置。
【請求項6】
前記ベースは、上下方向に貫通する取付孔を有し、
前記支持部は、前記取付孔の縁部に着脱可能に取り付けられ、
前記ロータシャフトは、前記取付孔から上方に延び、
前記駆動ユニットの下端は、前記ベースより下方に配置されている請求項1に記載の推力発生装置。
【請求項7】
前記支持部は、前記ロータシャフトを回転可能に支持する筒形の本体部と、前記本体部から径方向外方に延びる複数のアーム部とを有し、
上下方向から見て前記本体部は、前記取付孔の内側に配置され、
複数の前記アーム部が前記取付孔の前記縁部に着脱可能に取り付けられる請求項6に記載の推力発生装置。
【請求項8】
前記支持部の前記本体部及び前記駆動ユニットのそれぞれは、前記取付孔の前記縁部に対して、隙間を介して配置されている請求項7に記載の推力発生装置。
【請求項9】
前記支持部と前記駆動ユニットとは、前記支持部を貫通して前記駆動ユニットに螺合する複数のボルトによって互いに締結され、
上方から見て、複数の前記ボルトは前記取付孔と重なる位置に配置されている請求項6に記載の推力発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転翼機の推力発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、回転翼機の推力発生装置を開示している。回転翼機は、本体から水平方向に延びる複数のアームを有し、各アームの先端には推力発生装置を支持するための支持部が設けられている。推力発生装置は、支持部に結合された電動モータと、電動モータの出力軸に結合された複数の回転翼とを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-020634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
推力発生装置の定期的なメンテナンスや交換のために、電動モータを機体の支持部から取り外すことがある。この場合、特許文献1に係る推力発生装置では、回転翼が電動モータの出力軸に結合されているため、回転翼も電動モータと共に支持部から取り外される。回転翼は回転翼機の飛行性能に大きな影響を与えるため、取り付け時に位置や角度等の精密な調整が必要になる。そのため、電動モータを取り外す度に、回転翼の調整まで必要になり、メンテナンスの作業性が悪いという問題がある。
【0005】
本発明は、以上の背景を鑑み、回転翼機の推力発生装置において、駆動ユニットのメンテナンスの作業性を向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明のある態様は、回転翼機(1)の推力発生装置(10)であって、前記回転翼機に設けられたベース(11)に着脱可能に取り付けられた支持部(14)と、前記支持部に回転可能に支持されたロータシャフト(15)と、前記ロータシャフトに結合された複数の回転翼(16)と、前記支持部又は前記ベースに着脱可能に取り付けられる駆動ユニット(18)とを有し、前記駆動ユニットの出力軸(71)が、前記ロータシャフトと着脱可能に接続する。
【0007】
この態様によれば、支持部をベースに残した状態で、駆動ユニットのみを支持部及びベースから取り外すことができる。そのため、駆動ユニットが支持部及びベースから取り外されるときに、回転翼及びロータシャフトはベースから取り外す必要がない。これにより、回転翼機の推力発生装置において、駆動ユニットのメンテナンスの作業性を向上させることができる。
【0008】
上記の態様において、前記駆動ユニットは、電動モータ(31)と、前記電動モータの駆動力を減速して前記ロータシャフトに伝達する減速機(32)とを有し、前記減速機の出力軸(71)が前記駆動ユニットの前記出力軸をなし、前記減速機が前記支持部に着脱可能に取り付けられてもよい。
【0009】
この態様によれば、ベースに取り付けられた支持部から電動モータ及び減速機を取り外すことができる。
【0010】
上記の態様において、前記電動モータは、前記減速機に着脱可能に取り付けられ、前記電動モータの出力軸(61)が前記減速機の入力軸(63)に着脱可能に接続してもよい。
【0011】
この態様によれば、減速機が支持部に残された状態で、電動モータのみを取り外すことができる。
【0012】
上記の態様において、前記電動モータ、前記減速機、及び前記ロータシャフトが同軸上に配置されてもよい。
【0013】
この態様によれば、ロータシャフト及び支持部に対して減速機及び電動モータを取り外す方向が一致するため、取り外し作業及び取り付け作業が容易になる。
【0014】
上記の態様において、前記ロータシャフト及び前記駆動ユニットの前記出力軸の一方にスプライン軸部(93)が設けられ、前記ロータシャフト及び前記駆動ユニットの前記出力軸の他方に、前記スプライン軸部が嵌合するスプライン孔(94)が設けられてもよい。
【0015】
この態様によれば、駆動ユニットの出力軸をロータシャフトに着脱可能かつ確実に接続することができる。
【0016】
上記の態様において、前記ベースは、上下方向に貫通する取付孔(12)を有し、前記支持部は、前記取付孔の縁部(25)に着脱可能に取り付けられ、前記ロータシャフトは、前記取付孔から上方に延び、前記駆動ユニットの下端は、前記ベースより下方に配置されてもよい。
【0017】
この態様によれば、ロータシャフト及び回転翼が支持部及びベースに支持された状態において、駆動ユニットを支持部から取り外すことができる。
【0018】
上記の態様において、前記支持部は、前記ロータシャフトを回転可能に支持する筒形の本体部(21)と、前記本体部から径方向外方に延びる複数のアーム部(22)とを有し、上下方向から見て前記本体部は、前記取付孔の内側に配置され、複数の前記アーム部が前記取付孔の前記縁部に着脱可能に取り付けられてもよい。
【0019】
この態様によれば、支持部の本体部を取付孔内に配置することができる。
【0020】
上記の態様において、前記支持部の前記本体部及び前記駆動ユニットのそれぞれは、前記取付孔の前記縁部に対して、隙間(34)を介して配置されてもよい。
【0021】
この態様によれば、回転翼から下方に流れる空気が隙間を通過して駆動ユニットの表面に沿って流れることができる。これにより、駆動ユニットの冷却が可能になる。
【0022】
上記の態様において、前記支持部と前記駆動ユニットとは、前記支持部を貫通して前記駆動ユニットに螺合する複数のボルトによって互いに締結され、上方から見て、複数の前記ボルトは前記取付孔と重なる位置に配置されてもよい。
【0023】
この態様によれば、取付孔の上方から、支持部に駆動ユニットを締結するボルトを着脱することができる。
【発明の効果】
【0024】
以上の構成によれば、回転翼機の推力発生装置において、駆動ユニットのメンテナンスの作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】回転翼機の斜視図
図2】推力発生装置の斜視図
図3】推力発生装置の斜視図
図4】回転翼を省略した状態の推力発生装置の平面図
図5】推力発生装置の垂直断面図
図6】推力発生装置の要部を拡大して示す垂直断面図
図7】減速機の水平断面図
図8】減速機の要部を示す説明図
図9】支持部に対して、減速機及び電動モータを分離した状態の推力発生装置の垂直断面図
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る推力発生装置及び推力発生装置の遊星歯車機構について説明する。推力発生装置は、電動マルチコプターと称される回転翼機に用いられる。
【0027】
図1に示すように、回転翼機1は、前後に延びた本体2と、本体2から左右に延びた前翼3及び後翼4と、前後に延び、前翼3及び後翼4に結合した左右のアーム5とを有する。本体2には、乗員が搭乗するためのキャビンが設けられてもよい。本体2の後端には、前後方向に推力を発生させる一対の後部推力発生装置7が設けられている。前翼3及び後翼4は、前方への移動に対して揚力を発生させる形状に形成されているとよい。
【0028】
各アーム5には、複数の推力発生装置10が設けられている。各推力発生装置10は、上下方向に推力を発生させる。各推力発生装置10は、互いに干渉しないように前後方向に間隔をおいてアーム5に配置されている。各アーム5には、複数の推力発生装置10が取り付けられる複数のベース11が設けられている。
【0029】
各ベース11は同様の構成を有する。また、各推力発生装置10は同様の構成を有する。以下、1つの推力発生装置10について説明する。
【0030】
図2図5に示すように、ベース11は、アーム5に設けられ、上面11A及び下面11Bを有する。上面11A及び下面11Bは、水平面であるとよい。ベース11は、上下方向に貫通する取付孔12を有する。取付孔12は、上面11A及び下面11Bに開口している。取付孔12は、円孔であるとよい。
【0031】
推力発生装置10は、ベース11に着脱可能に取り付けられた支持部14と、支持部14に回転可能に支持されたロータシャフト15と、ロータシャフト15に結合された複数の回転翼16と、支持部14又はベース11に着脱可能に取り付けられる駆動ユニット18とを有する。
【0032】
支持部14は、ロータシャフト15を回転可能に支持する筒形の本体部21と、本体部21から径方向外方に延びる複数のアーム部22とを有する。本体部21は、上下に延びる円筒形に形成されている。本体部21の中央には上下に貫通する軸受孔23が設けられている。本体部21の下端には、径方向外方に拡張したフランジ部24が設けられている。
【0033】
複数のアーム部22は、本体部21の下端部から放射状に延びている。各アーム部22は、本体部21及びフランジ部24に結合しているとよい。複数のアーム部22は、取付孔12の縁部25に着脱可能に取り付けられる。複数のアーム部22によって、支持部14は取付孔12の縁部25に着脱可能に取り付けられる。本実施形では、複数のアーム部22の先端の上面11Aがベース11の下面11Bに締結されている。他の実施形態では、複数のアーム部22の先端の下面11Bがベース11の上面11Aに締結されてもよい。各アーム部22とベース11とは、例えばボルト及びナット等の締結具27によって互いに着脱可能に締結されているとよい。
【0034】
支持部14がベース11に取り付けられた状態において、上下方向から見て本体部21は、取付孔12の内側に配置される。本体部21は取付孔12を通過して上下に延びている。本体部21の直径は、取付孔12の直径よりも小さく形成されている。
【0035】
ロータシャフト15は、上下に延び、軸受29を介して軸受孔23に回転可能に支持されている。ロータシャフト15の上端は、本体部21の上端から上方に突出している。また、ロータシャフト15は、取付孔12から上方に延びている。複数の回転翼16は、ロータシャフト15の上端に結合されている。各回転翼16は、ロータシャフト15を中心として放射状に延びている。軸受29は、軸受孔23の上部に設けられているとよい。軸受29に加えて、追加の軸受が軸受孔23とロータシャフト15との間に設けられてもよい。追加の軸受は、軸受孔23の下部に設けられるとよい。
【0036】
駆動ユニット18は、電動モータ31と、電動モータ31の駆動力を、減速してロータシャフト15に伝達する減速機32とを有する。減速機32の出力軸が駆動ユニット18の出力軸をなす。駆動ユニット18の出力軸は、ロータシャフト15と着脱可能に接続する。
【0037】
減速機32は、支持部14又はベース11に着脱可能に取り付けられている。本実施形態では、減速機32は、支持部14に着脱可能に取り付けられている。電動モータ31は、減速機32に着脱可能に取り付けられている。電動モータ31の出力軸は、減速機32の入力軸に着脱可能に接続している。電動モータ31、減速機32、及びロータシャフト15は、軸線Aに沿って同軸上に配置されている。支持部14の下端に減速機32が取り付けられ、減速機32の下端に電動モータ31が取り付けられる。駆動ユニット18の上部は減速機32によって構成され、駆動ユニット18の下部は電動モータ31によって構成されている。駆動ユニット18の下端は、ベース11より下方に配置されている。
【0038】
支持部14の本体部21及び駆動ユニット18のそれぞれは、取付孔12の縁部25に対して、隙間34を介して配置されている。隙間34は、通気路として機能する。複数の回転翼16にから下方に流れる空気は、隙間34を通過して駆動ユニット18の表面を流れ、駆動ユニット18を冷却する。
【0039】
減速機32は、減速機ケース41を有する。減速機ケース41は、円筒形に形成され、上下方向に延びている。減速機ケース41は、上下に延びる円筒形の周壁42と、周壁42の上端に設けられた上端壁43と、周壁42の下端に設けられた下端壁44とを有する。減速機ケース41の上端壁43は、支持部14のフランジ部24の下面11Bに着脱可能に取り付けられている。支持部14と減速機ケース41とは、複数のボルト46によって着脱可能に締結されているとよい。例えば、ボルト46は、フランジ部24に形成されたボルト孔を通過し、減速機ケース41の上端面に形成された雌ねじ孔に螺合するとよい。
【0040】
減速機ケース41の上端壁43には、上下に貫通する上軸受孔51が形成されている。減速機ケース41の下端壁44には、上下に貫通する下軸受孔52が形成されている。上軸受孔51及び下軸受孔52は、減速機ケース41の内部空間53に接続している。上軸受孔51の上部は、上軸受孔51の下部に対して段違いに拡径されている。
【0041】
電動モータ31は、円筒形のモータケース55を有する。モータケース55は上下方向に延びている。モータケース55の上端面は、減速機ケース41の下端壁44の下面に着脱可能に取り付けられている。減速機ケース41とモータケース55とは、複数のボルトによって着脱可能に締結されているとよい。モータケース55の外径は、減速機ケース41の外径よりも大きく形成されているとよい。減速機ケース41の下端壁44には、径方向外方に突出する複数の締結フランジが設けられているとよい。各締結フランジには上下方向に貫通するボルト孔が形成され、モータケース55の上端面に雌ねじ孔が形成されている。ボルトは、締結フランジのボルト孔を通過し、モータケース55の雌ねじ孔に着脱可能に螺合するとよい。
【0042】
電動モータ31の出力軸であるモータ出力軸61は、上下方向に延び、モータケース55の上端面から上方に突出している。
【0043】
減速機32は、遊星歯車機構である。減速機32は、減速機ケース41に回転可能に支持された第1軸63を有する。第1軸63は、上下に延びている。第1軸63は、下端に第1接続部64を有すると共に上端に接続軸65を有する。第1軸63は、減速機32の入力軸をなす。第1接続部64は、減速機ケース41の下軸受孔52に軸受66を介して回転可能に支持されている。第1軸63の第1接続部64と下軸受孔52との間には、オイルシール67が設けられているとよい。
【0044】
第1接続部64は、モータ出力軸61と同軸に接続する。第1軸63とモータ出力軸61とは、互いに嵌合し、一体に回転する。例えば、第1接続部64は、軸方向に凹む角孔を有し、モータ出力軸61は角孔に嵌合する角柱部を有する。モータ出力軸61と第1軸63との嵌合部の形状は軸方向に着脱自在な構造であればよく、軸方向に延びる細かな凹凸溝による嵌合、いわゆるスプライン嵌合によってモータ出力軸61と第1軸63とは嵌合してもよい。
【0045】
減速機32は、減速機ケース41に回転可能に支持された第2軸71を有する。第2軸71は、第1軸63と同軸に配置されている。第2軸71は、第1軸63の上方に配置され、上下に延びている。第2軸71は、上端に第2接続部72を有すると共に、下端に接続軸65を回転可能に受容する受容孔73を有する。第2軸71は、減速機32の出力軸をなす。受容孔73は、第2軸71の下端面71Aから上方に向けて凹んでいる。受容孔73は、第2軸71と同軸の円孔である。接続軸65の外周面と、受容孔73の内周面とは摺接している。
【0046】
図5図7、及び図8に示すように、第1軸63にはサンギヤ75が結合されている。サンギヤ75は接続軸65の直下に設けられているとよい。サンギヤ75は、第1軸63と同軸の平歯車である。
【0047】
第2軸71には遊星キャリア76が結合されている。遊星キャリア76には、複数の遊星ギヤ77が回転可能に支持されている。各遊星ギヤ77は、平歯車である。本実施形態では、減速機32は、3つの遊星ギヤ77を有する。遊星キャリア76は第2軸71の下端の外周面に結合されている。
【0048】
遊星キャリア76は、第2軸71の下端に結合された円環状の第1プレート81と、第1プレート81から下方に延びる複数の支持軸82と、複数の支持軸82の下端に結合された第2プレート83と、第2プレート83から下方に延びる円筒形の延長筒84とを有する。第1プレート81は、上下を向く平板状に形成され、第2軸71の下端の外周部から径方向外方に延びている。複数の支持軸82は、第2軸71と平行に配置され、第2軸71を中心とした周方向に等間隔に配置されている。各支持軸82は、円柱形に形成されている。第2プレート83は上下を向く平板状に形成されている。第2プレート83は、第1プレート81と間隔をおいて平行に配置されている。第2プレート83の中央部には、上下に貫通する透孔85が形成されている。
【0049】
減速機ケース41の上部には第2軸71を回転可能に支持する軸受86が設けられている。軸受86は、上軸受孔51の下部に設けられ、第2軸71の下部を回転可能に支持している。延長筒84は、軸受87を介して減速機ケース41の内面に回転可能に支持されている。
【0050】
第1軸63は、第2プレート83の透孔85、及び延長筒84の内部を通過して上下に延びている。第1軸63と第2プレート83の透孔85との間には軸受89が設けられているとよい。サンギヤ75は、第1プレート81と第2プレート83との間に配置されている。サンギヤ75は、複数の遊星ギヤ77のそれぞれと噛み合っている。
【0051】
減速機ケース41の内面には、リングギヤ91が設けられている。リングギヤ91は、内歯車であり、サンギヤ75及び遊星ギヤ77と同軸に配置されている。リングギヤ91は、複数の遊星ギヤ77と噛み合う。リングギヤ91は、周壁42の内面に結合されている。
【0052】
ロータシャフト15の下端は、減速機ケース41の上軸受孔51内に突入し、第2軸71部の上端と着脱可能に結合している。ロータシャフト15及び第2軸71(駆動ユニット18の出力軸)の一方に、スプライン軸部93が設けられ、ロータシャフト15及び第2軸71の他方に、スプライン軸部93が嵌合するスプライン孔94が設けられている。本実施形態では、第2軸71の上端にスプライン軸部93が設けられ、ロータシャフト15の下端にスプライン孔94が設けられている。スプライン軸部93がスプライン孔94に嵌合することによって、ロータシャフト15は第2軸71と一体に回転する。ロータシャフト15の下端部は、軸受96を介して上軸受孔51の上部に回転可能に支持されている。
【0053】
軸受29、96は、ラジアル荷重及びアキシアル荷重を支持可能な軸受であるとよい。軸受29、96は、例えば、円錐ころ軸受やアンギュラ玉軸受であるとよい。軸受66、86、87、89は、ラジアル荷重を支持可能な軸受であるとよい。軸受66、86、87、89は、例えば玉軸受や滑り軸受であるとよい。
【0054】
図6に示すように、サンギヤ75の上面75Aと第2軸71の下端面71Aとの間に隙間101が形成されている。第2軸71の下端面71Aは、第1プレート81の下面81Aと同一平面上に配置されている。そのため、サンギヤ75の上面75Aと第1プレート81の下面81Aとの間にも隙間101が形成されている。サンギヤ75の上面11Aの内周部に、下方に向けて凹むと共に、接続軸65を囲むように環状に延びた潤滑油溝102が形成されている。潤滑油溝102は、隙間101に対向している。
【0055】
接続軸65及び受容孔73の一方には接続軸65を中心として螺旋状に上下に延びる螺旋溝105が形成されている。螺旋溝105の下端は、隙間101に接続している。すなわち、螺旋溝105の下端は、サンギヤ75の上面11Aに到達している。また、螺旋溝105の下端は、潤滑油溝102に接続しているとよい。螺旋溝105の上端は、接続軸65の先端に到達している。接続軸65の先端と受容孔73の底部との間には油室107が形成されている。
【0056】
図5及び図8に示すように、第2軸71には、螺旋溝105から第2軸71と減速機ケース41との摺接部に延びる第1潤滑油路108が形成されている。第1潤滑油路108は、螺旋溝105に直接、又は油室107を介して螺旋溝105に接続しているとよい。本実施形態では、第1潤滑油路108は、螺旋溝105から軸受86に直線状に延びている。
【0057】
第2軸71及びロータシャフト15には、螺旋溝105からロータシャフト15と支持部14の摺接部に延びる第2潤滑油路109が形成されている。第2潤滑油路109は、螺旋溝105に直接、又は油室107を介して螺旋溝105に接続しているとよい。本実施形態では、第2潤滑油路109は、油室107から軸受96に直線状に延びている。
【0058】
減速機ケース41内には、潤滑油が貯留されている。第1軸63が回転しているときに、複数の遊星ギヤ77の少なくとも一部が潤滑油内に浸漬している。図5に示すように、潤滑油の油面110は、複数の遊星ギヤ77と同じ高さに配置されている。
【0059】
以下に推力発生装置10の雷サージ保護構造について説明する。回転翼機1の本体2、前翼3、後翼4、及びアーム5のそれぞれの骨格及び外面は、導電性の金属によって形成されている。金属は例えば鉄やアルミニウム等であってよい。アーム5の一部をなすベース11も、導電性の金属によって形成されている。
【0060】
図5に示すように、推力発生装置10を構成する、ロータシャフト15、複数の回転翼16、及び支持部14は、導電性の金属によって形成されている。支持部14はベース11に導通可能に取り付けられている。具体的には、支持部14は、複数のアーム部22においてベース11に導通可能に接触している。図3に示すように、アーム部22には、本体部21からアーム部22の先端に延びるリブ111が設けられている。リブ111は、アーム部22の断面積を拡張し、アーム部22の電気抵抗を低減する。リブ111は、本体部21及びアーム部22の補強構造としても機能する。リブ111の高さは、アーム部22の先端側に向けて低くなっている。
【0061】
図5に示すように、ロータシャフト15は、支持部14に導通可能に支持されている。具体的には、ロータシャフト15と支持部14との間に設けられた軸受29が導電性を有し、ロータシャフト15は軸受29を介して支持部14と導通している。また、支持部14には、ロータシャフト15の外周面に摺接する導電性のブラシ113が設けられてもよい。
【0062】
駆動ユニット18は、第1電気絶縁部115を介して支持部14に取り付けられている。第1電気絶縁部115は、支持部14及び駆動ユニット18の間に介装された独立した電気絶縁材であってもよい。また、第1電気絶縁部115は、支持部14及び駆動ユニット18の少なくとも一方の表面に形成された電気絶縁皮膜であってもよい。
【0063】
駆動ユニット18の出力軸をなす第2軸71は、第2電気絶縁部116を介してロータシャフト15に接続している。第2電気絶縁部116は、第2軸71及びロータシャフト15の間に介装された独立した電気絶縁材であってもよい。また、第2電気絶縁部116は、第2軸71及びロータシャフト15の少なくとも一方の表面に形成された電気絶縁皮膜であってもよい。
【0064】
電気絶縁材は、例えばセラミックスやゴムによって形成されるよい。また、電気絶縁皮膜は、例えばリン酸マンガン等のリン酸塩皮膜、アルマイト皮膜であるとよい。
【0065】
第1電気絶縁部115は、例えば、減速機ケース41と支持部14との間に介装された電気絶縁材であるとよい。第1電気絶縁部115は、減速機ケース41と支持部14とを締結するボルト46と、支持部14との間に設けられるブッシュを含むとよい。ブッシュは、電気絶縁材によって形成され、ボルト46が支持部14に接触しないようにする。また、第1電気絶縁部115は、減速機ケース41と軸受96との間に介装されるとよい。
【0066】
第1電気絶縁部115は、減速機ケース41と支持部14との接触部、減速機ケース41と軸受96との接触部、減速機ケース41とボルト46との接触部に形成された電気絶縁皮膜であってもよい。
【0067】
第2電気絶縁部116は、スプライン軸部93及びスプライン孔94の少なくとも一方に形成された電気絶縁皮膜であるとよい。これにより、大型化を抑制しつつ、ロータシャフト15と駆動ユニット18の出力軸である第2軸71とを電気的に絶縁した状態で接続することができる。
【0068】
複数の回転翼16及びロータシャフト15が駆動ユニット18よりも上方に配置されているため、駆動ユニット18よりも回転翼16及びロータシャフト15に落雷し易くなる。第1電気絶縁部115及び第2電気絶縁部116によって、回転翼16及びロータシャフト15に発生した雷サージは、駆動ユニット18よりもベース11側に流れ易くなるため、駆動ユニット18が雷サージから保護される。また、支持部14と駆動ユニット18とを近づけて配置することができるため、推力発生装置10の大型化を抑制することができる。したがって、推力発生装置10において、大型化を抑制しつつ、駆動ユニット18に雷サージが流れることを抑制することができる。
【0069】
リブ111はアーム部22の断面積を増加させるため、アーム部22の電気抵抗が低下する。これにより、雷サージがアーム部22を介してベース11に流れ易くなる。ブラシ113はロータシャフト15と支持部14と電気的に接続する。これにより、雷サージがロータシャフト15から、第2軸71よりも支持部14に流れ易くなる。
【0070】
駆動ユニット18及び駆動ユニット18出力軸を構成する第2軸71のそれぞれは、ベース11よりも導電率が低い材料によって形成されているとよい。これにより、雷サージがロータシャフト15及び支持部14から、駆動ユニット18及び第2軸71よりもベース11に流れ易くなる。
【0071】
以下に、推力発生装置10の作用及び効果について説明する。電動モータ31の駆動力は、減速機32によって減速され、ロータシャフト15に伝達される。複数の回転翼16を有するロータシャフト15が回転することによって、推力発生装置10は上下方向への推進力を発生させる。
【0072】
減速機32では、サンギヤ75を有する第1軸63が回転することによって、複数の遊星ギヤ77が回転すると共に、複数の遊星ギヤ77を支持する遊星キャリア76及び第2軸71が回転する。このとき、各遊星ギヤ77の少なくとも一部が潤滑油に浸漬しているため、各遊星ギヤ77に付着した潤滑油が各遊星ギヤ77の径方向外方に飛散する。これにより、図6に示すように、潤滑油が、サンギヤ75の上面75Aと第2軸71の下端面71Aとの間に隙間101に進入し、螺旋溝105の下端に到達する。第2軸71は、各ギヤの歯数によって決まる減速比で第1軸63に対して減速されているため、接続軸65は受容孔73に対して相対回転する。これにより、接続軸65、受容孔73、及び螺旋溝105は、スクリューポンプとして機能し、潤滑油を接続軸65の上端側に送る。これにより、潤滑油は、螺旋溝105に接続した第1潤滑油路108を通過して軸受86に送られる。これにより、軸受86が潤滑される。
【0073】
また、図5に示すように、螺旋溝105内の潤滑油は、油室107及び第2潤滑油路109を介して軸受29に送られる。これにより、軸受29が潤滑される。軸受29に供給された潤滑油は、重力によって、軸受29の下方に設けられた軸受96及び軸受86を通過して下方に流れる。これにより、軸受96が潤滑される。油室107が潤滑油を保持する。これにより、第2潤滑油路109に潤滑油をより確実に供給することができる。
【0074】
第2軸71の下端に設けられた遊星キャリア76の第1プレート81は、各遊星ギヤ77から飛散した潤滑油を隙間101に導く。これにより、螺旋溝105の下端に潤滑油が供給され易くなる。潤滑油溝102は、接続軸65の下端部に潤滑油を保持する。これにより、螺旋溝105の下端に潤滑油が供給され易くなる。
【0075】
以上のように、遊星歯車機構の入力軸及び出力軸を構成する第1軸63及び第2軸71を利用して潤滑油を輸送するポンプが形成される。そのため、減速機32において、潤滑構造を小型化することができる。軸受66、87、89は潤滑油中にあり、潤滑されている。
【0076】
図9に示すように、推力発生装置10では、支持部14をベース11に残した状態で、駆動ユニット18のみを支持部14及びベース11から取り外すことができる。そのため、駆動ユニット18が支持部14及びベース11から取り外されるときに、回転翼16及びロータシャフト15はベース11から取り外す必要がない。これにより、回転翼機1の推力発生装置10において、駆動ユニット18のメンテナンスの作業性を向上させることができる。
【0077】
また、減速機32が支持部14に残された状態で、電動モータ31のみを取り外すことができる。電動モータ31、減速機32、及びロータシャフト15が同軸上に配置されている。そのため、ロータシャフト15及び支持部14に対して減速機32及び電動モータ31の取り外す方向が一致するため、取り外し作業及び取り付け作業が容易になる。
【0078】
支持部14に減速機32を取り付けるための各ボルト46が、上方から見て取付孔12と重なる位置に配置されている。そのため、作業者は取付孔12の上方から、ボルト46を着脱することができる。
【0079】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。例えば、軸受86は支持部14の本体部21に支持されてもよい。また、支持部14の各アーム部22は、ベース11の上面11Aに結合されてもよい。この場合、減速機32の上部が取付孔12内に配置されてもよい。
【符号の説明】
【0080】
1 :回転翼機
10 :推力発生装置
11 :ベース
12 :取付孔
14 :支持部
15 :ロータシャフト
16 :回転翼
18 :駆動ユニット
21 :本体部
22 :アーム部
25 :縁部
29、66、86、87、89、96 :軸受
31 :電動モータ
32 :減速機
34 :隙間
41 :減速機ケース
42 :周壁
43 :上端壁
44 :下端壁
46 :ボルト
61 :モータ出力軸
63 :第1軸
64 :第1接続部
65 :接続軸
71 :第2軸
71A :下端面
72 :第2接続部
73 :受容孔
75 :サンギヤ
75A :上面
76 :遊星キャリア
77 :遊星ギヤ
81A :下面
91 :リングギヤ
93 :スプライン軸部
94 :スプライン孔
101 :隙間
102 :潤滑油溝
105 :螺旋溝
107 :油室
108 :第1潤滑油路
109 :第2潤滑油路
111 :リブ
113 :ブラシ
115 :第1電気絶縁部
116 :第2電気絶縁部
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
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図9