(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126694
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】農業用合成樹脂フィルムコーティング剤組成物及びそれを用いた改質フィルム、並びにその製造方法
(51)【国際特許分類】
C09D 201/00 20060101AFI20240912BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20240912BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20240912BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20240912BHJP
【FI】
C09D201/00
C09D5/00 Z
C09D7/61
C09D7/63
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023035256
(22)【出願日】2023-03-08
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-06-26
(71)【出願人】
【識別番号】000210654
【氏名又は名称】竹本油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小河 ほのか
(72)【発明者】
【氏名】横井 淳平
(72)【発明者】
【氏名】藤井 淳介
(72)【発明者】
【氏名】鬼頭 幸彦
(72)【発明者】
【氏名】山田 享弘
(72)【発明者】
【氏名】八田 明生
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038CE021
4J038CF021
4J038CG001
4J038EA011
4J038HA446
4J038JA27
4J038JA43
4J038JB11
4J038KA08
4J038KA09
4J038MA08
4J038MA10
4J038MA14
4J038NA06
4J038NA11
4J038PA06
4J038PB02
4J038PC08
(57)【要約】
【課題】フィルム上に優れた流滴性及び耐湿潤擦傷性を有する被膜部を形成できる農業用合成樹脂フィルムコーティング剤組成物を提供する。
【解決手段】
無機粒子と、バインダー樹脂と、界面活性剤とを含有する農業用合成樹脂フィルムコーティング剤組成物であって、前記無機粒子が下記の無機粒子(A)を含むことを特徴とする農業用合成樹脂フィルムコーティング剤組成物。
無機粒子(A):単一のコロイダルシリカであって、動的光散乱法により測定される平均粒子径が60~90nmであり、下記式1から算出されるCV値が35~55%であるコロイダルシリカ。
CV値(%)=(標準偏差)÷(平均粒子径)×100 ・・・(式1)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機粒子と、バインダー樹脂と、界面活性剤とを含有する農業用合成樹脂フィルムコーティング剤組成物であって、前記無機粒子が下記の無機粒子(A)を含むことを特徴とする農業用合成樹脂フィルムコーティング剤組成物。
無機粒子(A):単一のコロイダルシリカであって、動的光散乱法により測定される平均粒子径が60~90nmであり、下記式1から算出されるCV値が35~55%であるコロイダルシリカ。
CV値(%)=(標準偏差)÷(平均粒子径)×100 ・・・(式1)
【請求項2】
前記無機粒子が、更に下記の無機粒子(B)を含み、
前記無機粒子(A)と前記無機粒子(B)の含有割合の合計を100質量部とした場合に、前記無機粒子(A)を5~30質量部及び、前記無機粒子(B)を70~95質量部の割合で含む、請求項1に記載の農業用合成樹脂フィルムコーティング剤組成物。
無機粒子(B):動的光散乱法により測定される平均粒子径が90nm超、160nm以下であるコロイダルシリカ。
【請求項3】
前記無機粒子(A)と前記無機粒子(B)の含有割合の合計を100質量部とした場合に、前記バインダー樹脂を10~50質量部及び、前記界面活性剤を1~15質量部の割合で含む、請求項2に記載の農業用合成樹脂フィルムコーティング剤組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の農業用合成樹脂フィルムコーティング剤組成物の製造方法であって、
前記無機粒子(A)を前記バインダー樹脂と混合する工程を有することを特徴とする、製造方法。
【請求項5】
合成樹脂フィルムからなるベースフィルム部と、前記ベースフィルム部の表面の少なくとも一部に請求項1~3のいずれか一項に記載の農業用合成樹脂フィルムコーティング剤組成物を含む被膜部とを備えることを特徴とする、改質フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、農業用合成樹脂フィルムコーティング剤組成物及びそれを用いた改質フィルム、並びにその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、農業用ハウスに用いるフィルムとして、ポリエチレン等の合成樹脂製の透明なフィルムが広く使用されている。しかし、一般的に合成樹脂フィルムの表面は疎水性であるため、農業用ハウスに用いた場合に温度や湿度の変化によりその表面に微細な水滴が付着し、結露や曇りを生じやすい。その結果、太陽光線の透過率が低下し、作物の発育不良を招くことがある。さらに、フィルムに付着した水滴が農業用ハウス内の作物上に落下することにより、作物の病害等の原因となることもある。そのため、農業用ハウスに用いるフィルムには、フィルムの内側表面に付着した水滴を作物上に落下させることなくフィルム内面に沿って流下させるという、いわゆる防曇性(流滴性)が求められる。
【0003】
このような性質を農業用フィルムに付与する手段として、合成樹脂フィルム上に改質剤からなる被膜を形成することが知られている。例えば、特許文献1では、バインダー樹脂、平均一次粒子径が異なる少なくとも2種のコロイダルシリカ、及び界面活性剤を、分散剤と混合攪拌することにより調整された防曇性組成物、及びそれを用いた防曇性フィルムが提案されている。また、特許文献2では、無機質コロイド状物質及び合成樹脂バインダーを主成分として含有し、無機質コロイド状物質として粒径20nm以下の無機質コロイド状物質を含む防曇剤組成物を基材フィルムに塗布した農業用フィルムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-065990号公報
【特許文献2】特開2009-202350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
通常、農業用ハウス内は外部と遮断された空間で空気がこもりやすく日光の影響を受けて高温になり、作物等の栽培中はハウス内が湿潤環境となる。そのような湿潤環境下では、展張されたフィルムが農業用ハウスの骨組み等と繰り返し接触すると、摩擦によりフィルム上に形成された被膜が剥離しやすいことが知られている。そして、フィルム上の被膜が剥離すると、その部分の防曇性(流滴性)が低下してしまう。そのため、農業用ハウスに用いる改質フィルムには、湿潤環境における優れた耐擦傷性(耐湿潤擦傷性)が求められる。しかし、従来の農業用改質フィルムは十分な耐湿潤擦傷性を有していない。
【0006】
そこで本発明は、フィルム上に優れた流滴性及び耐湿潤擦傷性を有する被膜部を形成できる農業用合成樹脂フィルムコーティング剤組成物及びそれを用いた改質フィルム、並びにその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を採る。
[1]無機粒子と、バインダー樹脂と、界面活性剤とを含有する農業用合成樹脂フィルムコーティング剤組成物であって、前記無機粒子が下記の無機粒子(A)を含むことを特徴とする農業用合成樹脂フィルムコーティング剤組成物。
無機粒子(A):単一のコロイダルシリカであって、動的光散乱法により測定される平均粒子径が60~90nmであり、下記式1から算出されるCV値が35~55%であるコロイダルシリカ。
CV値(%)=(標準偏差)÷(平均粒子径)×100 ・・・(式1)
[2]前記無機粒子が、更に下記の無機粒子(B)を含み、
前記無機粒子(A)と前記無機粒子(B)の含有割合の合計を100質量部とした場合に、前記無機粒子(A)を5~30質量部及び、前記無機粒子(B)を70~95質量部の割合で含む、[1]の農業用合成樹脂フィルムコーティング剤組成物。
無機粒子(B):動的光散乱法により測定される平均粒子径が90nm超、160nm以下であるコロイダルシリカ。
[3]前記無機粒子(A)と前記無機粒子(B)の含有割合の合計を100質量部とした場合に、前記バインダー樹脂を10~50質量部及び、前記界面活性剤を1~15質量部の割合で含む、[2]の農業用合成樹脂フィルムコーティング剤組成物。
[4][1]~[3]のいずれかの農業用合成樹脂フィルムコーティング剤組成物の製造方法であって、
前記無機粒子(A)を前記バインダー樹脂と混合する工程を有することを特徴とする、製造方法。
[5]合成樹脂フィルムからなるベースフィルム部と、前記ベースフィルム部の表面の少なくとも一部に[1]~[3]のいずれかの農業用合成樹脂フィルムコーティング剤組成物を含む被膜部とを備えることを特徴とする、改質フィルム。
【0008】
なお、本明細書において「○○~△△」で示した数値範囲はその上限及び下限を含む範囲を表す。つまり、「○○~△△」は「○○以上、△△以下」を意味する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、フィルム上に優れた流滴性及び耐湿潤擦傷性を有する被膜部を形成できる農業用合成樹脂フィルムコーティング剤組成物及びそれを用いた改質フィルム、並びにその製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
≪農業用合成樹脂フィルムコーティング剤組成物≫
本発明の農業用合成樹脂フィルムコーティング剤組成物(以下、「コーティング剤組成物」ともいう)は、後述する無機粒子と、バインダー樹脂と、界面活性剤とを含有する。これにより、コーティング剤組成物は農業用合成樹脂フィルムに優れた流滴性(初期流滴性・流滴持続性)及び耐湿潤擦傷性を付与することができる。
【0011】
<無機粒子>
無機粒子は、無機粒子(A)を含み、更に無機粒子(B)を含むことが好ましい。なお、無機粒子は、本発明の効果を阻害しない範囲内で無機粒子(A)及び無機粒子(B)以外の無機粒子を含有してもよい。
【0012】
<無機粒子(A)>
無機粒子(A)は、単一のコロイダルシリカであって、動的光散乱法により測定される平均粒子径が60~90nmであり、下記式1から算出されるCV値が35~55%であるコロイダルシリカであればよく、従来公知のものを使用可能である。
CV値(%)=(標準偏差)÷(平均粒子径)×100 ・・・(式1)
なお、本明細書において無機粒子の「平均粒子径」及び「CV値」とは、無機粒子が含有するコロイダルシリカに含まれるシリカの「平均粒子径」及び「CV値」を意味する。また、無機粒子の「平均粒子径」及び「CV値」は、動的光散乱式粒子径分布測定装置(HORIBA社製,nanoPartica SZ-100V2 Series)を用いて動的光散乱法により体積基準で測定した無機粒子の粒子径分布に基づいて算出される。
【0013】
<コロイダルシリカ>
コロイダルシリカとは、二酸化ケイ素(シリカ)またはその水和物を水などの分散媒に分散させたコロイドである。コロイダルシリカとしては、例えば球状のシリカ粒子の一次粒子が液体に分散してコロイドを形成しているコロイダルシリカ、シリカ粒子の一次粒子が鎖状に結合した鎖状コロイダルシリカ、シリカ粒子の一次粒子が球状に凝集した球状コロイダルシリカ、シリカ粒子の一次粒子が数珠状に結合した数珠状コロイダルシリカなどが挙げられる。本発明のコーティング剤組成物に含有されるコロイダルシリカの種類は特に限定されない。
【0014】
ここで「単一のコロイダルシリカ」とは、1種類のコロイド(分散液)として製造されたコロイダルシリカをいう。そのため、複数種のコロイダルシリカを混合したものは、本明細書における「単一のコロイダルシリカ」には該当しない。したがって、動的光散乱法により測定される平均粒子径が60~90nmであること、及び、上記式1から算出されるCV値が35~55%であること、の少なくとも一方を満たさない複数種のコロイダルシリカを混合して双方の条件を満たすこととなったコロイダルシリカは、本明細書における「単一のコロイダルシリカであって、動的光散乱法により測定される平均粒子径が60~90nmであり、下記式1から算出されるCV値が35~55%であるコロイダルシリカ」には含まれない。また、別の観点からいえば、「単一のコロイダルシリカ」は、通常、動的光散乱法により測定される粒子径分布におけるピークが1つであるコロイダルシリカをいう。
【0015】
<無機粒子(B)>
無機粒子(B)は、動的光散乱法により測定される平均粒子径が90nm超、160nm以下であるコロイダルシリカであればよく、従来公知のものを使用可能である。さらに、平均粒子径が110~140nmのコロイダルシリカがより好ましい。無機粒子(B)は1種又は2種以上を用いることができる。コーティング剤組成物が無機粒子(B)を含有することにより、流滴性を維持しつつ、優れた耐湿潤擦傷性を付与することができる。
【0016】
本発明のコーティング剤組成物が無機粒子(A)と無機粒子(B)とを含む場合、無機粒子(A)と無機粒子(B)の含有割合の合計100質量部に対して、無機粒子(A)を5~30質量部及び、無機粒子(B)を70~95質量部の割合で含有する。無機粒子(A)と無機粒子(B)の配合割合が上記の範囲内であれば、優れた流滴性を維持しつつ、優れた耐湿潤擦傷性を実現することができる。
【0017】
<バインダー樹脂>
バインダー樹脂としては、親水性バインダー樹脂、疎水性バインダー樹脂のいずれであってもよく、従来公知のものが使用可能である。例えば、農業用フィルムは、高温湿潤環境下で表面に付着した水によりバインダー樹脂が流出すると、コロイダルシリカが脱落してしまう。そのため、コロイダルシリカの脱落を抑制するためには疎水性バインダー樹脂を含有することが好ましい。
【0018】
親水性バインダー樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体、酢酸ビニル系水溶性樹脂、ポリエチレンオキサイド、セルロースアシレート、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリビニルブチラール、ポリエーテルエステルアミド、ポリ(N-メチロールアクリルアミド)、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどの変性セルロース、水溶性ポリエステル樹脂、水溶性ポリビニルアセタール、ポリ-N-ビニルアセトアミド、ポリアクリルアミド、ポリアクリロイルモルホリン、ポリヒドロキシアクリルアクリレート、ポリアクリル酸、ポリエーテル系材料等が挙げられる。
【0019】
疎水性バインダー樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。基材フィルムがポリオレフィン系フィルムの場合は、ポリオレフィン系フィルムとの相性から、特に、アクリル系樹脂を用いることが好ましい。また、アクリル系樹脂は耐熱性に優れ、比較的容易かつ安価に入手できることから、かかる観点からも、ベース樹脂として好ましく用いられる。
【0020】
上記アクリル系樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル系単量体の単独又は共重合体、(メタ)アクリル系単量体と他の共重合可能な単量体との共重合体が挙げられる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル系単量体」は、アクリル系単量体及びメタアクリル系単量体の総称であり、他の「(メタ)アクリル」、「(メタ)アクリレート」と記載された部分についても同様である。
【0021】
上記(メタ)アクリル系単量体としては、具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、i-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;アクリル酸又はその中和塩、メタクリル酸又はその中和塩、マレイン酸又はその中和塩、無水マレイン酸又はその中和塩、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等の官能基含有(メタ)アクリレート;ジビニルベンゼン、エチレンジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アリル、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート;N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、ジメチロール(メタ)アクリルアミド等の官能基含有(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。これらの単量体は、1種を単独で又は2種以上を併用することができる。
【0022】
疎水性アクリル系樹脂は水系エマルジョンとして用いるのが好ましい。各単量体を水系媒質中での重合によって得られた水系エマルジョンをそのまま使用してもよく、更にこのものに液状分散媒を加えて希釈したものでもよく、また上記のような重合によって生じた重合体を分別採取し、これを液状分散媒に再分散させて水系エマルジョンとしたものでもよい。
【0023】
<界面活性剤>
界面活性剤としては、特に制限はなく、従来公知のものが使用可能である。ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。これらの中でも、無機粒子の分散性の観点からノニオン界面活性剤が好ましい。これらの界面活性剤は1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用して使用してもよい。
【0024】
≪ノニオン界面活性剤≫
ノニオン界面活性剤としては、特に制限はなく、従来公知のノニオン界面活性剤を適宜選択して採用することができる。例えば、(1)有機酸、有機アルコール、有機アミン及び/又は有機アミドに炭素数2~4のアルキレンオキサイドを付加した化合物、例えば、ポリオキシエチレンジラウリン酸エステル、ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンオレイン酸ジエステル、p-ノニルフェノール、ラウリルアルコール、オレイルアルコール、ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテルメチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンラウリルエーテル、ポリオキシプロピレンラウリルエーテルメチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシブチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンノニルエーテル、ポリオキシプロピレンノニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンオクチルエーテル、2-ヘキシルヘキサノールのエチレンオキサイド付加物、ポリオキシエチレン2-エチル-1-ヘキシルエーテル、ポリオキシエチレンイソノニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルエーテル、二級ドデシルアルコールにエチレンオキサイドを付加した化合物、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシアルキレンテトラデシルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル、ポリオキシエチレンラウロアミドエーテル、ポリオキシアルキレントリスチレン化フェニルエーテル等のエーテル型ノニオン界面活性剤、(2)ポリオキシアルキレンソルビタントリオレート、ポリオキシアルキレンヤシ油、ポリオキシアルキレンヒマシ油、ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油、ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油トリオクタノアート、ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油のマレイン酸エステル、ステアリン酸エステル、又はオレイン酸エステル等のポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステル型ノニオン界面活性剤、(3)ステアリン酸ジエタノールアミド、ジエタノールアミンモノラウロアミド等のアルキルアミド型ノニイオン界面活性剤、(4)ポリオキシエチレンジエタノールアミンモノオレイルアミド、ポリオキシエチレンラウリルアミン、ポリオキシエチレン牛脂アミン等のポリオキシアルキレン脂肪酸アミド型ノニオン界面活性剤等が挙げられる。これらのノニオン界面活性剤は、1種類を単独で使用してもよいし、又は2種類以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0025】
≪アニオン界面活性剤≫
アニオン系界面活性剤としては、特に制限はなく、従来公知のアニオン界面活性剤を適宜選択して採用することができる。例えば(1)ラウリルリン酸エステル塩、セチルリン酸エステル塩、オクチルリン酸エステル塩、オレイルリン酸エステル塩、ステアリルリン酸エステル塩等の脂肪族アルコールのリン酸エステル塩、(2)ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸エステル塩等の脂肪族アルコールにエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれる少なくとも一種のアルキレンオキサイドを付加したもののリン酸エステル塩、(3)ラウリルスルホン酸塩、ミリスチルスルホン酸塩、セチルスルホン酸塩、オレイルスルホン酸塩、ステアリルスルホン酸塩、テトラデカンスルホン酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、二級アルキルスルホン酸(C13~15)塩等の脂肪族スルホン酸塩又は芳香族スルホン酸塩、(4)ラウリル硫酸エステル塩、オレイル硫酸エステル塩、ステアリル硫酸エステル塩等の脂肪族アルコールの硫酸エステル塩、(5)ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレン(ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン)ラウリルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンオレイルエーテル硫酸エステル塩等の脂肪族アルコールにエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれる少なくとも一種のアルキレンオキサイドを付加したものの硫酸エステル塩、(6)ひまし油脂肪酸硫酸エステル塩、ごま油脂肪酸硫酸エステル塩、トール油脂肪酸硫酸エステル塩、大豆油脂肪酸硫酸エステル塩、なたね油脂肪酸硫酸エステル塩、パーム油脂肪酸硫酸エステル塩、豚脂脂肪酸硫酸エステル塩、牛脂脂肪酸硫酸エステル塩、鯨油脂肪酸硫酸エステル塩等の脂肪酸の硫酸エステル塩、(7)ひまし油の硫酸エステル塩、ごま油の硫酸エステル塩、トール油の硫酸エステル塩、大豆油の硫酸エステル塩、菜種油の硫酸エステル塩、パーム油の硫酸エステル塩、豚脂の硫酸エステル塩、牛脂の硫酸エステル塩、鯨油の硫酸エステル塩等の油脂の硫酸エステル塩、(8)ラウリン酸塩、オレイン酸塩、ステアリン酸塩等の脂肪酸塩、(9)ジオクチルスルホコハク酸塩等の脂肪族アルコールのスルホコハク酸エステル塩等が挙げられる。これらのアニオン界面活性剤は、1種類を単独で使用してもよいし、又は2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0026】
≪カチオン界面活性剤≫
カチオン系界面活性剤としては、特に制限はなく、従来公知のカチオン界面活性剤を適宜選択して採用することができる。例えば、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、1,2-ジメチルイミダゾール、トリエタノールアミン等が挙げられる。これらのカチオン界面活性剤は、1種類を単独で使用してもよいし、又は2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0027】
≪両性界面活性剤≫
両性界面活性剤としては、特に制限はなく、従来公知の両面界面活性剤を適宜選択して採用することができる。例えば、ベタイン型両性界面活性剤等が挙げられる。
【0028】
<コーティング剤組成物の配合割合>
コーティング剤組成物において、無機粒子(A)、バインダー樹脂及び界面活性剤の配合割合は任意に設定可能である。コーティング剤組成物がさらに無機粒子(B)を含有する場合、コーティング剤組成物は、無機粒子(A)と無機粒子(B)の含有割合の合計100質量部に対して、バインダー樹脂を10~50質量部、及び、界面活性剤を1~15質量部の割合で含有することが好ましい。さらに、コーティング剤組成物は、バインダー樹脂を20~40質量部、及び、界面活性剤を3~10質量部の割合で含有することがより好ましい。
【0029】
<その他の添加物>
コーティング剤組成物には、その他にも従来公知の添加物を目的に応じて添加することができる。そのような添加物としては、例えば、着色剤、酸化防止剤、光安定剤、難燃剤、帯電防止剤、防黴剤、抗菌剤、防汚剤、紫外線吸収剤、防腐剤、滑剤等が挙げられる。
【0030】
≪コーティング剤組成物の製造方法≫
コーティング剤組成物の製造方法は、無機粒子(A)をバインダー樹脂と混合する工程を含んでいれば、特に限定されない。例えば、バインダー樹脂が溶解又は分散した液体溶媒に無機粒子(A)を混合攪拌して無機粒子(A)を液体溶媒に分散させ、さらに界面活性剤を加えて混合攪拌することにより製造される。あるいは、液体溶媒に界面活性剤を加えて混合攪拌し、さらに、無機粒子(A)とバインダー樹脂との混合物を添加して混合攪拌することにより製造してもよい。または、無機粒子(A)、バインダー樹脂、及び、無機粒子(B)等の他の原料成分を一括で混合してもよい。コーティング剤組成物が他の添加剤を含有する場合、無機粒子を液体溶媒に分散させた後に他の成分と混合することが好ましい。
【0031】
≪改質フィルム≫
本発明の改質フィルムは、合成樹脂フィルムからなるベースフィルム部と、ベースフィルム部の表面の少なくとも一部にコーティング剤組成物を含む被膜部とを備える。改質フィルムの被膜部は、ベースフィルム部の1面側のみに形成されていてもよいし、両面側に形成されていてもよい。
【0032】
<ベースフィルム部>
ベースフィルム部は、合成樹脂フィルムからなるものであれば特に限定されない。ベースフィルム部は熱可塑性樹脂フィルム及び熱硬化性樹脂フィルムのいずれでもよいが、本発明においては熱可塑性樹脂フィルムが好ましい。熱可塑性樹脂としては、例えば、オレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・メタクリル酸アルキルエステル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、環状オレフィン樹脂、アクリル樹脂、芳香族ビニル系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。また、ベースフィルム部は単層でも多層でもよい。
【0033】
オレフィン系樹脂としては、エチレン又は炭素原子数が3以上のα-オレフィンの単独重合体、エチレン・α-オレフィン共重合体、2種以上のα-オレフィンの共重合体等が挙げられる。尚、α-オレフィンとしては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン等が挙げられる。上記オレフィン系樹脂は、好ましくは、エチレン・1-ブテン共重合体、エチレン・1-ヘキセン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン、又はエチレン・プロピレン共重合体である。ポリオレフィン系樹脂は、二つ以上のポリオレフィン系樹脂を混合して用いることもできる。
【0034】
ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等が挙げられる。塩化ビニル系樹脂としては、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル・エチレン共重合体、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。
【0035】
ベースフィルム部には、その他にも従来公知の樹脂用添加剤を目的に応じて添加することができる。そのような添加剤としては、例えば、酸化防止剤、耐候剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、滑剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、防霧剤、保温剤、着色剤等が挙げられる。
【0036】
改質フィルムに用いるベースフィルム部は、コロナ放電処理、大気圧プラズマ処理、火炎処理等により表面処理されているか、あるいは、アンダーコート層が形成された表面を備えてもよい。ベースフィルム部の厚さは、特に限定されない。
【0037】
ベースフィルム部にコーティング剤組成物を含む被膜部を設ける方法は、特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。例えば、グラビアコート法、スプレーコート法、浸漬コート法、ロールコート法、ドクターブレードコート法、ワイヤーバーコート法、エアナイフコート法等を採用することができる。塗布量及び塗膜の厚さは、特に限定されないが、塗膜乾燥後の被膜として0.05~3.0g/m2が好ましく、0.1~2.0g/m2がより好ましい。
【0038】
本発明の合成樹脂フィルムコーティング剤組成物は、合成樹脂フィルムへの塗布に好適であるが、金属又は無機化合物からなる基材、又は、該基材の表面に形成された層を備える複合基材に対して被膜部を形成した場合にも、流滴性及び耐湿潤擦傷性に優れた被膜部を備える物品を形成することができる。
【実施例0039】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、以下の実施例及び比較例において、「部」及び「%」は質量基準である。
【0040】
≪コーティング剤組成物の原料≫
コーティング剤組成物の製造に用いた原料は以下の通りである。
【0041】
<無機粒子(A)>
A-1:平均粒子径77nm、CV値36%のコロイダルシリカ(固形分50%)
A-2:平均粒子径65nm、CV値38%のコロイダルシリカ(固形分40%)
A-3:平均粒子径58nm、CV値31%のコロイダルシリカ(固形分40%)
A-4:平均粒子径16nm、CV値20%のコロイダルシリカ(固形分40%)
A-5:平均粒子径87nm、CV値25%のコロイダルシリカ(固形分40%)
【0042】
<無機粒子(B)>
B-1:平均粒子径128nmのコロイダルシリカ(固形分40%)
B-2:平均粒子径115nmのコロイダルシリカ(固形分40%)
B-3:平均粒子径100nmのコロイダルシリカ(固形分40%)
B-4:平均粒子径303nmのコロイダルシリカ(固形分40%)
【0043】
<バインダー樹脂>
C-1:日本カーバイド製水系アクリルエマルジョン、ニカゾールFT-4683(固形分34%)
C-2:DIC製水系アクリルエマルジョン、ボンコート40-418EF(固形分55%)
【0044】
<界面活性剤>
D-1:p-ノニルフェノールのエチレンオキシド10モル付加体
D-2:ラウリルアルコールのエチレンオキシド6モル付加体
D-3:オレイルアルコールのエチレンオキシド14モル付加体
【0045】
[平均粒子径及びCV値の算出]
各コロイダルシリカ(A-1~A-5、B-1~B-4)をイオン交換水(IEW)で10倍に希釈し、動的光散乱式粒子径分布測定装置(HORIBA社製,nanoPartica SZ-100V2 Series)を用いて動的光散乱法により体積基準の粒子径分布を測定した。測定された粒子径分布に基づき、平均粒子径及びCV値を算出した。なお、CV値の算出には下記式1を利用した。
CV値(%)=(標準偏差)÷(平均粒子径)×100 ・・・(式1)
【0046】
≪コーティング剤組成物の作製≫
上記の原料を用いてコーティング剤組成物を作製した。
【0047】
<実施例1-1>
水6414部に対してバインダー樹脂(C-1:固形分34%)88部を混合して撹拌した後、無機粒子(A)(A-1:固形分50%)30部と、無機粒子(B)(B-1:固形分40%)213部を徐々に加えて30分以上攪拌混合し、無機粒子(A)及び(B)を完全に水に分散させた。さらに界面活性剤(D-1:固形分100%)5部を加えて30分以上攪拌混合し、純分濃度2%のコーティング剤組成物(X-1)を調製した。
【0048】
<実施例1-2~1-6、比較例1-1~1-4>
実施例1-1と同様にして、下記表1に示す組成のコーティング剤組成物(X-2)~(X-10)を調製した。
【0049】
【0050】
≪ベースフィルムの作製≫
続いて、コーティング剤組成物を塗布するベースフィルムを作製した。
【0051】
<作製例1>
エチレン・1-ブテン共重合体(エチレン単位量:95%、密度:0.920g/cm3、MFR2.1g/10分)を、直径75mmでリップ間隙3mmのダイを取り付けたインフレーション成形(樹脂押出温度:200℃、BUR=1.8)に供し、厚さ150μmのオレフィン樹脂フィルムを得た。次いで、このオレフィン重合体フィルムの表面にコロナ放電処理を施し、表面処理オレフィン樹脂フィルム(以下、「ベースフィルム(F-1)」という)を得た。コロナ放電処理面のぬれ張力を、JIS K 6768に準ずる方法により測定したところ、44mN/mであった。
【0052】
<作製例2>
エチレン・1-ブテン共重合体に代えて、エチレン・1-ヘキセン共重合体(エチレン単位量:96%、密度:0.930g/cm3、MFR(1.0g/10分)を用いた以外は、作製例1と同様の操作を行い、表面処理オレフィン樹脂フィルム(以下、「ベースフィルム(F-2)」という)を得た。コロナ放電処理面のぬれ張力は40mN/mであった。
【0053】
<作製例3>
エチレン・1-ブテン共重合体に代えて、エチレン・酢酸ビニル共重合体(エチレン単位量:93%、MFR(1.5g/10分)を用いた以外は、作製例1と同様の操作を行い、表面処理オレフィン樹脂フィルム(以下、「ベースフィルム(F-3)」という)を得た。コロナ放電処理面のぬれ張力は42mN/mであった。
【0054】
<作製例4>
エチレン・1-ブテン共重合体に代えて、ポリエチレン(密度:0.927g/cm3、MFR(4.0g/10分)を用いた以外は、作製例1と同様の操作を行い、表面処理オレフィン樹脂フィルム(以下、「ベースフィルム(F-4)」という)を得た。コロナ放電処理面のぬれ張力は44mN/mであった。
【0055】
<作製例5>
エチレン・1-ブテン共重合体に代えて、エチレン・プロピレン共重合体(エチレン単位量:4%、密度:0.90g/cm3、MFR(8.0g/10分)を用いた以外は、作製例1と同様の操作を行い、表面処理オレフィン樹脂フィルム(以下、「ベースフィルム(F-5)」という)を得た。コロナ放電処理面のぬれ張力は43mN/mであった。
【0056】
≪改質フィルムの作製及び評価≫
上記のコーティング剤組成物及びベースフィルムを用いて改質フィルムを作製し、その後、下記試験方法により改質フィルムを評価した。
【0057】
<実施例2-1>
コーティング剤組成物(X-1)を、ベースフィルム(F-1)のコロナ放電処理面に、絶乾塗布量が0.2g/m2となるように浸漬法により塗布し、温風乾燥機にて70℃で乾燥し、ベースフィルム(F-1)のコロナ放電処理面上にコーティング剤組成物(X-1)からなる被膜部を有する改質フィルム(M-1)を得た。次いで、改質フィルム(M-1)を用いて以下の(1)~(3)の試験を行った。その結果を下記表2に示す。
【0058】
<実施例2-2~2-6及び比較例2-1~2-4>
表2に示すコーティング剤組成物、ベースフィルム及び絶乾塗布量を用いたこと以外は実施例2-1と同様にして、改質フィルムM-2~M-10を得た。その後、各改質フィルムを用いて以下の(1)~(3)の試験を行った。その結果を表2に示す。
【0059】
(1)初期流滴性
水温60℃の恒温水槽の上方に、改質フィルムの被膜部が温水槽に向くように、且つ、水平に対して15度の傾斜をつけて、改質フィルムを配置した。被膜部に接触した水蒸気が水滴となって付着する状況を目視観察し、水滴の付着面積が10%未満となるまでに要した時間を測定し、以下の基準で初期流滴性を評価した。
◎:15分未満であった(初期流滴性に非常に優れる)。
○:15分以上30分未満であった(初期流滴性に優れる)。
×:30分以上であり、水滴の付着面積が10%以上であった(初期流滴性に劣る)。
【0060】
(2)流滴持続性
上記(1)と同じ要領で、改質フィルムを、7日間連続で配置した後の水滴の付着状態を目視観察し、以下の基準で流滴持続性を評価した。
◎:水滴の付着がなかった(流滴持続性に非常に優れる)。
○:水滴の付着面積が10%未満であった(流滴持続性に優れる)。
×:水滴の付着面積が10%以上であった(流滴持続性に劣る)。
【0061】
(3)耐湿潤擦傷性
大栄科学精機製作所社製学振型染色堅牢度試験機のアームの摩擦面に300gの荷重をかけた状態で実験直前に水を噴霧して湿潤状態とした改質フィルムに対し30往復摩擦させた。摩擦処理した改質フィルムを上記(1)と同様にして恒温水層の上方に配置して、1時間に渡って水蒸気を接触させた。
1時間経過した時点において、ベースフィルムからの被膜部の剥離の程度を観察し、以下の基準で耐湿潤擦傷性を評価した。
◎:ベースフィルムからの被膜部の剥離面積が10%未満であった(耐湿潤擦傷性に非常に優れる)。
○:ベースフィルムからの被膜部の剥離面積が10%以上50%未満であった(耐湿潤擦傷性は実用レベルである)。
×:ベースフィルムからの被膜部の剥離面積が50%以上であった(耐湿潤擦傷性に劣る)。
【0062】
【0063】
実施例2-1~2-6の改質フィルムは、初期流滴性、流滴持続性及び耐湿潤擦傷性がともに優れていた。一方、比較例2-1の改質フィルムは、用いたコーティング剤組成物が、平均粒子径及びCV値が小さい無機粒子(A)と、平均粒子径が大きい無機粒子(B)とを含んでいたため、初期流滴性及び耐湿潤擦傷性が劣っていた。比較例2-2の改質フィルムは、用いたコーティング剤組成物が、無機粒子(A)を含まず無機粒子(B)のみを含んでいたため、初期流滴性が劣っていた。比較例2-3の改質フィルムは、用いたコーティング剤組成物が、平均粒子径及びCV値が小さい無機粒子(A)を含んでいたため、初期流滴性が劣っていた。比較例2-4の改質フィルムは、用いたコーティング剤組成物が、平均粒子径は60~90nmの範囲内であるがCV値が小さい無機粒子(A)を含んでいたため、初期流滴性が劣っていた。