(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126700
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】フレキシブルフラットケーブル、及びフレキシブルフラットケーブルの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01B 7/08 20060101AFI20240912BHJP
H01B 13/00 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
H01B7/08
H01B13/00 525D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023035266
(22)【出願日】2023-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】323004813
【氏名又は名称】株式会社TOTOKU
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】弁理士法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】中山 順盟
(72)【発明者】
【氏名】依田 直人
(72)【発明者】
【氏名】土屋 茂昭
(72)【発明者】
【氏名】林 重雄
【テーマコード(参考)】
5G311
【Fターム(参考)】
5G311CA01
5G311CB01
5G311CB02
5G311CC01
5G311CD03
5G311CE01
(57)【要約】
【課題】使用周波数が8GHz以上の帯域においても差動伝送におけるクロストークを低減することができるとともに、伝送信号の減衰を抑えることができるフレキシブルフラットケーブルを提供することを目的とする。
【解決手段】フレキシブルフラットケーブル1Aは、並設した複数の導体2と、第1樹脂フィルム11に第1接着剤層21が形成され導体2を上下から挟んで接着する絶縁テープ3と、シールド層14に第2接着剤層21が形成され絶縁テープ3の外側に設けて接着するシールドテープ4を備え、導体2を上下から挟んで接着した第1接着剤層21の合体厚みである第1厚みt1と、絶縁テープ3の外側に設けて接着した第2接着剤層22それぞれの厚みである第2厚みt2との比率は、1.3≦t1/t2≦3.0である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
並設した複数の導体と、第1樹脂フィルムに第1接着剤層が形成され前記導体を上下から挟んで接着する絶縁テープと、シールド層に第2接着剤層が形成され前記絶縁テープの外側に設けて接着するシールドテープを備え、前記導体を上下から挟んで接着した前記第1接着剤層の合体厚みである第1厚みt1と、前記絶縁テープの外側に設けて接着した前記第2接着剤層それぞれの厚みである第2厚みt2との比率は、1.3≦t1/t2≦3.0であること
を特徴とするフレキシブルフラットケーブル。
【請求項2】
前記第1樹脂フィルムの比誘電率は2.0~3.3であり、前記第1接着剤層の比誘電率は1.5~2.5であり、且つ、前記第1樹脂フィルムの比誘電率は前記第1接着剤層の比誘電率よりも高いこと
を特徴とする請求項1に記載のフレキシブルフラットケーブル。
【請求項3】
前記第1接着剤層と前記第2接着剤層はいずれもオレフィン系樹脂からなり、前記第1厚みt1は80μm以上120μm以下であること
を特徴とする請求項2に記載のフレキシブルフラットケーブル。
【請求項4】
前記シールドテープは、短手方向に周回しており、上面または下面にて、終端が始端に重なっていること
を特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のフレキシブルフラットケーブル。
【請求項5】
並設した複数の導体と、第1樹脂フィルムに第1接着剤層が形成され前記導体を上下から挟んで接着する絶縁テープと、シールド層に第2接着剤層が形成され前記絶縁テープの外側に設けて接着するシールドテープを備えたフレキシブルフラットケーブルの製造方法であって、前記導体を上下から挟んで接着した前記第1接着剤層の合体厚みである第1厚みt1と、前記絶縁テープの外側に設けて接着した前記第2接着剤層それぞれの厚みである第2厚みt2との比率を、1.3≦t1/t2≦3.0にすること
を特徴とするフレキシブルフラットケーブルの製造方法。
【請求項6】
前記第1樹脂フィルムの比誘電率は2.0~3.3であり、前記第1接着剤層の比誘電率は1.5~2.5であり、且つ、前記第1樹脂フィルムの比誘電率を前記第1接着剤層の比誘電率よりも高くすること
を特徴とする請求項5に記載のフレキシブルフラットケーブルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高速伝送に対応したフレキシブルフラットケーブル、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
サーバ等のコンピュータ関連機器の内部配線やテレビ等の映像機器の内部配線に、フレキシブルフラットケーブルが用いられる。従来、導体-誘電体-外部シールドの順に積層して低電圧差動伝送(LVDS)に用いるフレキシブルフラットケーブルが提案されている(特許文献1:特開2013-140716号公報、特許文献2:特開2020-013696号公報、特許文献3:特開2013-080624号公報)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-140716号公報
【特許文献2】特開2020-013696号公報
【特許文献3】特開2013-080624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フレキシブルフラットケーブルは、導体-外部シールド間の誘電体における誘電率を小さくすることで高速伝送に対応することができる。一方、誘電体の誘電率を小さくすることで高周波帯域では差動伝送におけるクロストークが抑制できなくなるという問題がある。特許文献1では、平角導体の周辺に比誘電率が2.7~3.0程度の樹脂を設け、基材層との比誘電率の差により電気力線の屈折率を変えて界面で屈折させることで6GHzまでの周波数帯域におけるクロストークを抑制する方法が提案されている。しかし、使用周波数が8GHzを超える帯域では、クロストークは抑制できても伝送信号の減衰が大きくなってしまい、信号伝送が難しくなるという問題がある。また、特許文献2に記載のシールド層を片側にのみ配した構成は、シールド層が配されていない側の樹脂フィルムの厚みを大きくすることで8GHz以上の周波数帯域でもクロストークを抑制できるが、高速伝送を行う上で外部ノイズによる影響を受けないようにするためにシールド層を両面に配する構成では、このような方法を用いることができない。特許文献3では、接着層の誘電率を基材層の誘電率よりも小さくすることで、平角導体から出る電気力線を平角導体の近くに閉じ込めることができ、高周波伝送をした場合でもクロストークを小さくする方法が提案されている。しかし、使用周波数が8GHzを超える帯域では、伝送信号の減衰が大きくならないようにするために導体-外部シールド間の比誘電率を小さくする必要があり、各導体間のクロストークを抑制できないという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされ、使用周波数が8GHz以上の帯域においても差動伝送におけるクロストークを低減することができるとともに、伝送信号の減衰を抑えることができるフレキシブルフラットケーブルを提供することを目的とする。
【0006】
一実施形態として、以下に開示するような解決策により、前記課題を解決する。
【0007】
本発明に係るフレキシブルフラットケーブルは、並設した複数の導体と、第1樹脂フィルムに第1接着剤層が形成され前記導体を上下から挟んで接着する絶縁テープと、シールド層に第2接着剤層が形成され前記絶縁テープの外側に設けて接着するシールドテープを備え、前記導体を上下から挟んで接着した前記第1接着剤層の合体厚みである第1厚みt1と、前記絶縁テープの外側に設けて接着した前記第2接着剤層それぞれの厚みである第2厚みt2との比率は、1.3≦t1/t2≦3.0であることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、導体からの電気力線の反射角度が最適化されて、クロストークを低減することができるとともに、伝送信号の減衰を抑えることができる。
【0009】
一例として、前記第1樹脂フィルムの比誘電率は2.0~3.3であり、前記第1接着剤層の比誘電率は1.5~2.5であり、且つ、前記第1樹脂フィルムの比誘電率は前記第1接着剤層の比誘電率よりも高い。この構成によれば、導体からの電気力線が隣接導体に到達し難くなり、クロストークをさらに低減することができる。
【0010】
一例として、前記第1接着剤層と前記第2接着剤層はいずれもオレフィン系樹脂からなり、前記第1厚みt1は80μm以上120μm以下である。この構成によれば、伝送信号の減衰を抑えることができるとともに、フレキシビリティを確保することができる。一例として、前記第1樹脂フィルムはポリスチレン系樹脂からなる。一例として、前記シールドテープは、短手方向に周回しており、上面または下面にて、終端が始端に重なっている。この構成によれば、全周に亘って良好なシールド性能が得られる。
【0011】
本発明に係るフレキシブルフラットケーブルの製造方法は、並設した複数の導体と、第1樹脂フィルムに第1接着剤層が形成され前記導体を上下から挟んで接着する絶縁テープと、シールド層に第2接着剤層が形成され前記絶縁テープの外側に設けて接着するシールドテープを備えたフレキシブルフラットケーブルの製造方法であって、前記導体を上下から挟んで接着した前記第1接着剤層の合体厚みである第1厚みt1と、前記絶縁テープの外側に設けて接着した前記第2接着剤層それぞれの厚みである第2厚みt2との比率を、1.3≦t1/t2≦3.0にすることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、導体からの電気力線の反射角度が最適化されて、クロストークを低減することができるとともに、伝送信号の減衰を抑えることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、使用周波数が8GHz以上の帯域においても差動伝送におけるクロストークを低減することができるとともに、伝送信号の減衰を抑えることができるフレキシブルフラットケーブルが実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本実施形態に係るフレキシブルフラットケーブルを模式的に示す平面図である。
【
図3】
図3は、本実施形態に係るフレキシブルフラットケーブルの第1例であり、端末部の縦断面図である。
【
図4】
図4は、本実施形態に係るフレキシブルフラットケーブルの第2例であり、端末部の縦断面図である。
【
図5】
図5は、本実施形態に係るフレキシブルフラットケーブルの要部を模式的に示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳しく説明する。本実施形態に係るフレキシブルフラットケーブル1A、1Bは、サーバ等のコンピュータ関連機器の内部配線や、テレビ等の映像機器の内部配線に適用され、特に、使用周波数が8GHz以上の帯域に好適な構成である。フレキシブルフラットケーブル1A、1Bは、並設された複数の導体2と、第1樹脂フィルム11に第1接着剤層21が形成され導体2を上下から挟んで接着する絶縁テープ3と、シールド層14に第2接着剤層22が形成され絶縁テープ3の外側に設けて接着するシールドテープ4を備えた構成である。なお、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0016】
[第1例]
図1は、本実施形態に係る第1例のフレキシブルフラットケーブル1Aを模式的に示す平面図である。フレキシブルフラットケーブル1Aは、第1接着剤層21が設けられた第1樹脂フィルム11を有する下側の絶縁テープ3の上に、導体2が所定ピッチで配されており、各導体2の上に、第1接着剤層21が設けられた第1樹脂フィルム11を有する上側の絶縁テープ3が配されてラミネートされている。そして、ラミネートされた絶縁テープ3の外側に、シールド層14に第2接着剤層22が形成されたシールドテープ4の両端が一部重なって配されてラミネートされている。つまり、シールドテープ4は、短手方向に周回しており、上面または下面にて、終端4bが始端4aに重なっている。
図2は、
図1のII-II線断面図である。コネクタ接続端の補強が必要な用途に用いるときは、長手方向の両端側に補強テープ5が設けられる。なお、用途によっては補強テープ5を省くことも可能である。
【0017】
[第2例]
図4は、本実施形態に係る第2例のフレキシブルフラットケーブル1Bであり、端末部の縦断面図である。第2例の基本構成は第1例と同様である。コネクタ接続端のシールドが必要な用途に用いるときは、長手方向の両端側に金属テープ6が設けられる。
【0018】
図5は、フレキシブルフラットケーブル1A、1Bの要部を模式的に示す横断面図である。
図5に示すように、正の電位を有する導体(信号線)S2から出た電気力線は隣接する負の電位を有する導体(信号線)S1と隣接する導体(グランド線)Gに入る。フレキシブルフラットケーブル1A、1Bの外に向かう電気力線S2aは、第1接着剤層21、第1樹脂フィルム11、第2接着剤層22を透過し、シールド層14に到達する。第1接着剤層21と第1樹脂フィルム11の界面ではそれぞれの誘電率が異なっており、電気力線S2aが屈折して進行する。更に、第1樹脂フィルム11と第2接着剤層22の界面でもそれぞれ誘電率が異なっており、電気力線S2aが屈折して進行する。本実施形態は、第1接着剤層21と第2接着剤層のそれぞれの厚みをコントロールすることにより、電気力線S2b、S2cが導体(信号線)S3、S4に到達し難くしている。また、導体(信号線)S1からの電気力線も同様にコントロールし、導体(信号線)S3、S4に到達し難くしている。
【0019】
本実施形態は、第1樹脂フィルム11に第1接着剤層21が形成され各導体2を上下から挟んで接着する絶縁テープ3の外側に、シールド層14に第2接着剤層22が形成されたシールドテープ4が設けられている。シールドテープ4は、第2接着剤層22の外側にそれぞれ貼り付けられている場合があり、第2接着剤層22とシールド層14とが上下一体となって絶縁テープ3の外側に設けられている場合がある。そして、外部からの保護が必要な場合、シールドテープ4の外側に保護フィルム7が設けられる。
【0020】
導体2は、良導電性の金属導体により形成されている。良導電性の金属導体としては、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、銅アルミニウム合金等や、これらの表面にめっきが施されたものを好適に採用することができる。めっきとしては、はんだめっき、錫めっき、金めっき、銀めっき、ニッケルめっき、錫ニッケル合金めっき等を採用することができる。特に、銅や銅合金を用いることにより、良好な柔軟性が得られる。導体2は、一例として、所定ピッチで4~32芯数で配されている。導体2は、信号線以外にグランド線に使用される場合がある。なお、導体2の材質は上記構成に限定されない。また、導体2の芯数は上記構成に限定されない。
【0021】
導体2の断面形状は、矩形、平角状、円形、楕円形等が適用できる。各導体2の厚さ、直径および断面積は特定の数値に限定されるものではないが、一例として、直径0.1~0.35mmの丸線、またはこの丸線を圧延して厚さが0.03~0.1mm、かつ、幅が0.2~0.8mmにした平角線を好適に採用することができる。一例として、各導体2のピッチは0.25~1.25mmである。本実施形態は、導体2は、断面形状が矩形で平角状の軟銅線を採用している。これにより、良好な柔軟性に加えて、外部コネクタにおける電極との優れた接続性能が得られる。なお、導体2の表面は、熱硬化性ポリウレタン樹脂等の耐熱性の絶縁被膜が設けられていてもよい。絶縁被膜は、はんだ付けの際に良好に分解可能な材質が好ましい。導体2の表面に耐熱性の絶縁被膜を設けることで、各導体2の互いの絶縁性を確保できるので、狭ピッチで配線することができる。
【0022】
シールド層14は、良導電性の金属により形成されている。良導電性の金属としては、アルミニウム、アルミニウム合金、銅箔、銅合金、銅アルミニウム合金等や、これらの表面に錫めっき等が施されたものを好適に採用することができる。一例として、良導電性の金属の厚みは、10μm以上50μm以下である。また、シールド層14は、良導電性の金属と第2樹脂フィルム12とによって形成されている場合がある(不図示)。良導電性の金属と第2樹脂フィルム12とは、接着剤によって接着されている。この場合の接着剤は、熱可塑性ポリエステル系、熱可塑性ポリイミド系、エポキシ系等を好適に用いることができる。一例として、シールド層14の厚みは10μm以上50μm以下である。
【0023】
第1接着剤層21と第2接着剤層22とは、それぞれの比誘電率が1.5~2.5である。一例として、第1接着剤層21と第2接着剤層22とはいずれも、オレフィン系樹脂からなり、発泡性を有する熱可塑性の接着剤を採用している。第1接着剤層21と第2接着剤層22とは、絶縁性の接着剤に発泡剤を添加することにより構成される。発泡剤を添加することにより、絶縁性を有する接着剤を発泡させて低誘電率化させる。発泡剤としては、一般的な化学発泡剤又は物理発泡剤を採用することができる。
【0024】
本実施形態は、各導体2を上下から挟んで接着した第1接着剤層21の合体厚みである第1厚みt1と、絶縁テープ3の外側に設けて接着した第2接着剤層22それぞれの厚みである第2厚みt2との比率は、1.3≦t1/t2≦3.0の関係を満たす構成である。一例として、第1厚みt1は80μm以上120μm以下である。第2接着剤層22はインピーダンス整合を図っており、一例として、第2厚みt2は27μm以上75μm以下である。
【0025】
第1樹脂フィルム11は、比誘電率が2.0~3.3であり、第1樹脂フィルム11の比誘電率は、第1接着剤層21の比誘電率よりも高い構成である。一例として、第1樹脂フィルム11は、ポリスチレン系樹脂からなる。一例として、第1樹脂フィルム11の厚みは50μm以上100μm以下である。
【0026】
第2樹脂フィルム12は、ポリエステル系樹脂からなる。これにより、柔軟性を保ちつつ、必要な強度が得られる。第2樹脂フィルム12はポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム等のポリエステルフィルムを好適に用いることができる。一例として、第2樹脂フィルム12の厚みは5μm以上25μm以下である。第2樹脂フィルム12はシールド層14における良導電性の金属の内側と外側のいずれかに配されていても良い。但し、第2樹脂フィルム12を良導電性の金属の内側に配する場合、良導電性の金属の外側に保護フィルム7を設ける必要がある。
【0027】
図3に示すように、補強テープ5は、長手方向の両端の下側の絶縁テープ3における第1樹脂フィルム11に設けられている場合がある。この場合、補強テープ5は、フレキシブルフラットケーブル1Aを外部コネクタに接続する際の補強部材として作用する。補強テープ5は、樹脂層と接着剤層から構成されることが好ましい(不図示)。樹脂層としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムやポリイミド(PI)フィルムを好適に用いることができる。接着剤層としては、熱可塑性ポリエステル系、熱可塑性ポリイミド系、エポキシ系等の接着剤を好適に用いることができる。一例として、補強テープ5の厚みは50μm以上500μm以下である。
【0028】
図3に示すように、全体を保護するための保護フィルム7を設ける場合がある。保護フィルム7はシールド層14の外側の面を覆うように配置される。保護フィルム7は、全体を保護し、電気絶縁を行い、機械強度を補強して屈曲に耐え得るように作用する。ここで、端末部でシールド層14と外部コネクタとが接続する構成上、保護フィルム7は外部コネクタと接続する部分を除くシールド層14の外側の面を覆うように配置する。保護フィルム7の材質としては、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン等のポリオレフィンフィルム、ポリウレタン樹脂とエチレン酢酸ビニル共重合樹脂との混合樹脂フィルム等を採用することができる。保護フィルム7は、樹脂製のフィルム基材と接着剤層で形成された保護テープにする場合がある。一例として、保護フィルム7の厚みは、10μm以上100μm以下である。
【0029】
図4に示すように、金属テープ6は、長手方向の両端に設けられている場合がある。金属テープ6は、接地接続のための接地接続用導電部材として設けられているとともに、インピーダンス不整合を調整するためのインピーダンス整合用導電部材として設けられている。この場合、金属テープ6は、GND板を有しない外部コネクタに接続したときやGND板を有しない基板に接続したときにおいても、インピーダンスの不整合を抑制し反射を抑える作用をする。その結果、使用周波数が8GHzにおける高速信号の伝送に適したフレキシブルフラットケーブル1A、1Bにすることができる。金属テープ6は、金属層と樹脂テープとから構成されることが好ましい(不図示)。
【0030】
金属層としては、銅箔やアルミニウム箔のような良導電性の金属箔を好適に用いることができる。この金属箔には、耐食性やはんだ付け性のために、錫めっき等が施されている場合がある。一例として、金属箔の厚みは、10μm以上50μm以下である。樹脂テープとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂等を好適に用いることができる。一例として、樹脂テープの厚みは、5μm以上50μm以下である。金属層と樹脂テープとは接着剤層を介して貼り合わされている場合があり、樹脂テープ上に蒸着又はめっきしてなる金属層を設ける場合がある。一例として、金属テープ6は、シールドテープ4の外側に、導電性の高い接着剤層を介して貼り合わされている。金属テープ6は、シールド層14と電気接続されていることが好ましい。シールド層14と電気接続されることにより、金属テープ6は、端末部でのシールド作用を発揮し、S/N比をより向上させることができる。
【0031】
続いて、本実施形態に係るフレキシブルフラットケーブル1A、1Bの製造方法を、以下に説明する。
【0032】
先ず、第1樹脂フィルム11の両面にプライマー処理を行い、第1接着剤層21を形成した絶縁テープ3を一対準備し、プライマー処理された第1樹脂フィルム11の片面に絶縁テープ3における第1接着剤層21がそれぞれ内層になる向きで、上下から各導体2を絶縁テープ3で挟んで、熱ロールによって所定の加熱温度で加熱しながらラミネートを行い、切断機によって分断する。次に、良導電性の金属と第2樹脂フィルム12を有するシールド層14の内側に第2接着剤層22を形成したシールドテープ4を準備し、第2接着剤層22が内層になる向きで、シールドテープ4の両端が一部重なるように絶縁テープ3の周囲を覆い、熱ロールによって、所定の加熱温度で加熱しながらラミネートを行って一体構造体にする。一例として、前記熱ロールを所定間隔で複数配置し、必要に応じて複数の熱ロールに通過させる。一例として、前記加熱温度は、150℃~200℃である。なお、熱ロールに代えて、熱プレスを用いることもできる。また、シールドテープ4をラミネートした後に、切断機によって分断してもよい。その後、必要に応じてエージングし、外観検査および導通試験を行って、フレキシブルフラットケーブル1A、1Bにする。
【0033】
続いて、実施例1~3と比較例1~2について、以下に説明する。
【0034】
[実施例]
上述のフレキシブルフラットケーブル1Aを実施例1~3として試作した。試作条件は、次のとおりである。先ず、断面形状が矩形で平角状の軟銅線からなる導体2を複数本準備した。導体2は、グランド線Gと信号線Sから構成される。グランド線Gと信号線Sとを、GSSGSS・・・となるように配置する。隣り合う信号線Sと信号線Sとが一対となって一つのチャネルとなる。各チャネルの間にはグランド線Gが配設される。そして、ポリスチレン系樹脂からなる第1樹脂フィルム11にプライマー処理を行い、プライマー処理された第1樹脂フィルム11に、オレフィン系樹脂からなり、発泡性を有する第1接着剤層21が形成された絶縁テープ3を一対準備した。また、アルミニウム箔に、オレフィン系樹脂からなり、エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)を塗工してプライマー処理を行った第2樹脂フィルム12が配されたシールド層14を形成し、シールド層14のおける第2樹脂フィルム12側に、オレフィン系樹脂からなり、発泡性を有する第2接着剤層22が形成されたシールドテープ4を準備した。
【0035】
次に、下側の絶縁テープ3における第1接着剤層21に、各導体2をピッチ0.6mmで並設した。そして、絶縁テープ3における第1接着剤層21が内層になる向きで、上下から導体2を挟んで、樹脂層がポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、接着剤層が熱可塑性ポリエステル系接着剤からなる補強テープ5を下側の絶縁テープ3における第1樹脂フィルム11に貼り付け、熱ロールによって、所定の加熱温度で加熱しながらラミネートを行い、切断機により分断した。続いて、第2接着剤層22が内層になる向きで、シールドテープ4の両端が一部重なるように絶縁テープ3の周囲を覆い、熱ロールによって、所定の加熱温度で加熱しながらラミネートを行って、ポリオレフィンフィルムからなる保護フィルム7をシールドテープ4の外側に貼り付けて熱ロールし、一体構造にした。実施例1は、第1厚みt1が80μmであり、第2厚みt2が60μmである。実施例2は、第1厚みt1が100μmであり、第2厚みt2が50μmである。実施例3は、第1厚みt1が120μmであり、第2厚みt2が40μmである。
【0036】
[比較例]
上述の実施例と同じ構成部材を用いた構成であって、第1厚みt1と第2厚みt2のみを異ならせた条件にて、比較例1~2を試作した。比較例1は、第1厚みt1が60μmであり、第2厚みt2が70μmである。比較例2は、第1厚みt1が160μmであり、第2厚みt2が20μmである。
【0037】
各試料の電気特性の評価条件は次のとおりである。クロストークは、ネットワークアナライザ(Agilent Technology社製、型式:PNL-L Network Analyzer N5230)を用いて測定した。差動伝送におけるクロストークは、使用周波数が8GHzにおけるFEXTがマイナス26dB以下をOKと判定し、使用周波数が8GHzにおけるFEXTがマイナス26dB超をNGと判定した。減衰は、使用周波数が8GHzにおいてマイナス6dB以上をOKと判定し、使用周波数が8GHzにおいてマイナス6dB未満をNGと判定した。
【0038】
各試料の評価結果を次の表1に示す。
【0039】
【0040】
表1に示すように、実施例1~3はいずれもクロストークが抑制され判定はOKとなり、減衰も小さくなり判定はOKであった。他方、比較例1~2は、いずれもクロストークが大きくなってしまい判定はNGとなり、減衰も大きくなってしまい判定はNGであった。FEXTは、実施例1がマイナス41.8dB、実施例2がマイナス47.0dB、実施例3がマイナス42.6dBであった。この結果、実施例1~3は比較例1~2よりも15.1dB以上改善されていることが確認できた。
【0041】
また、減衰については、実施例1~3が比較例1~2よりも1.1dB以上改善されていることが確認できた。ここで、実施例1~3における減衰は、いずれも同様の値であった。また、実施例1~3におけるインピーダンスは、いずれも85~86Ωであった。使用周波数が16GHzについても、使用周波数が8GHzの試験結果が反映されることを確認した。
【0042】
上記の結果から、導体2を上下から挟んだ第1接着剤層21の合体厚みである第1厚みt1と、第2接着剤層22におけるそれぞれの厚みである第2厚みt2との比率が、1.3≦t1/t2≦3.0の関係を満たす構成にしたことで、使用周波数が8GHz以上の帯域においても、差動伝送におけるクロストークを低減し、伝送信号の減衰を抑えることができることが実証された。
【0043】
本発明は、以上説明した実施例に限定されることなく、本発明を逸脱しない範囲において種々変更が可能である。
【符号の説明】
【0044】
1A、1B フレキシブルフラットケーブル
2 導体
3 絶縁テープ
4 シールドテープ、4a 始端、4b 終端
5 補強テープ
6 金属テープ
7 保護フィルム
11 第1樹脂フィルム
12 第2樹脂フィルム
14 シールド層
21 第1接着剤層
22 第2接着剤層
t1 第1厚み
t2 第2厚み