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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126701
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】更生修理用ピグ
(51)【国際特許分類】
   F16L 55/26 20060101AFI20240912BHJP
   B29C 63/26 20060101ALI20240912BHJP
   F16L 101/16 20060101ALN20240912BHJP
【FI】
F16L55/26
B29C63/26
F16L101:16
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023035271
(22)【出願日】2023-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】522068452
【氏名又は名称】東邦ガスネットワーク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】船戸 祐斗
(72)【発明者】
【氏名】北野 哲司
(72)【発明者】
【氏名】古澤 彰太
【テーマコード(参考)】
4F211
【Fターム(参考)】
4F211AA42
4F211AG04
4F211AG08
4F211AH43
4F211AJ03
4F211AR02
4F211AR12
4F211AR17
4F211SA15
4F211SC03
4F211SD13
4F211SJ01
4F211SP10
(57)【要約】
【課題】本支管から分岐する分岐管の内径が均一でない場合でも、更生修理を確実に行うことが可能な更生修理用ピグを提供すること。
【解決手段】更生修理の対象となる管の内面にライニング膜Mを形成するための更生修理用ピグ5において、管の内径よりも小さい外径Dを備えた略円柱状体に形成されていること、軸方向の全長Lは、管の内径よりも大きい所定の長さであること、軸方向の両端に、軸方向の外方に膨出した球面5aを備えること。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
更生修理の対象となる管の内面にライニング膜を形成するための更生修理用ピグにおいて、
前記管の内径よりも小さい外径を備えた略円柱状体に形成されていること、
軸方向の全長は、前記管の内径よりも大きい所定の長さであること、
前記軸方向の両端に、前記軸方向の外方に膨出した湾曲面を備えること、
を特徴とする更生修理用ピグ。
【請求項2】
請求項1に記載の更生修理用ピグにおいて、
前記軸方向の両端の前記湾曲面に挟まれて、前記軸方向において径が均一の円柱状の胴部を備えること、
を特徴とする更生修理用ピグ。
【請求項3】
請求項1に記載の更生修理用ピグにおいて、
前記外径が、前記管の内径の、80%以上、87%以下であること、
を特徴とする更生修理用ピグ。
【請求項4】
請求項3に記載の更生修理用ピグにおいて、
硬さが15±5度の弾性体であること、
を特徴とする更生修理用ピグ。
【請求項5】
請求項3に記載の更生修理用ピグにおいて、
硬さが20±5度の弾性体であること、
を特徴とする更生修理用ピグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、更生修理の対象となる管の内面にライニング膜を形成するための更生修理用ピグに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ガス供給に用いられる既設配管に対して、保全目的から更生修理が行われている。更生修理する技術としては、例えば、特許文献1に開示されるような、既設配管を敷設状態のまま、かつ、非切削により更生修理可能なライニング工法が知られている。
【0003】
ライニング工法とは、既設配管内に液状のウレタン系の樹脂(ライニング剤)を導入し、既設配管の内面にライニング膜を形成することで、更生修理を行うものである。具体的には、図2図3および図5(b)を用いて説明する。図2および図3は、本支管から分岐する分岐管の更生修理の工程を説明する図である。図5(b)は、図2のX部分の部分拡大図であり、従来技術に係る更生修理用ピグを用いた状態を示している。
【0004】
ライニング工法は、道路Rの下に敷設されている本支管1より需要家の住宅に向けて分岐された分岐管2を更生修理の対象としている。分岐管2は、図2に示すように、供給管3とメータ立管4とからなっている。メータ立管4は、住宅のガスメータ(不図示)に接続されている。更生修理の際には、ガスメータを外し、メータ立管4の開口を地上開口部41とし、この地上開口部41から、分岐管2の内径よりも小さい外径を備えた球状の更生修理用ピグ50を分岐管2内部に導入し、さらに、分岐管2の内面をライニングするに必要量のライニング剤Aを分岐管2の内部に導入する。そしてさらに、地上開口部41から、樹脂搬送ピグ6、吸水剤7、遮水ピグ8を導入した後に、分岐管2の内部に水Wを注入し、水圧により、更生修理用ピグ50およびライニング剤Aを本支管1側の分岐位置まで圧送する。
【0005】
この圧送が完了すると、次に、図3に示すように、地上開口部41に吸引ポンプ16を接続し、分岐管2の管内の水W、遮水ピグ8、吸水剤7、樹脂搬送ピグ6を吸引排出する。この際、吸引ポンプ16の吸引力により、ライニング剤Aも地上開口部41側に引き戻されるようにして流動するため、分岐管2の内面にライニング剤Aが塗布されてライニング膜Mが形成される。そして、ライニング剤Aとともに地上開口部41側に引き戻される更生修理用ピグ50によって、分岐管2の内面に塗布されるライニング膜Mの厚さが均一なものとなる。最終的に、更生修理用ピグ50は、地上開口部41まで引き戻され、回収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8-174674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来技術には、以下のような問題があった。分岐管2は、地上開口部41から、本支管1側の分岐位置まで、内径が均一でなく、大口径部分と小口径部分がある場合がある。例えば、メータ立管4の呼び径が、供給管3の呼び径よりも小さく設定される場合がある。この場合は、メータ立管4が小口径部分、供給管3が大口径部分となる。その他、分岐管2の中途に継手が設けられるなどすれば、その継手部分が大口径部分となり、その他の部分が小口径部分になる。
【0008】
更生修理用ピグ50の径は、ライニング膜Mの膜厚が薄くとも約1.5mmに形成されるようなものを選定するところ、分岐管2の内径が均一でない場合、小口径部分の内径に合わせて更生修理用ピグ50の径を選定する。例えば、メータ立管4の呼び径が25A、すなわち内径が27.6mmであるとき、更生修理用ピグ50の径は24mmが選定され、メータ立管4の呼び径が32A、すなわち内径が35.7mmであるとき、更生修理用ピグ50の径は32mmが選定される。
【0009】
小口径部分の内径に合わせて更生修理用ピグ50の径を選定すると、当然に、更生修理用ピグ50と分岐管2の内面との内部隙間G12(図5(b)参照)は、小口径部分に比べて、大口径部分で大きくなる。そうすると、吸引ポンプ16により吸引する際に、大口径部分において、内部隙間G12を本支管1から流れてくるガスが吹き抜けてしまい、更生修理用ピグ50およびライニング剤Aを地上開口部41の側に引き戻せなくなるおそれがある。更生修理用ピグ50およびライニング剤Aを地上開口部41の側に引き戻せなくなると、更生修理用ピグ50の回収およびライニング膜Mの形成を行うことができなくなる。
【0010】
本発明は、上記問題点を解決するためのものであり、本支管から分岐する分岐管の内径が均一でない場合でも、更生修理を確実に行うことが可能な更生修理用ピグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の更生修理用ピグは、次のような構成を有している。
【0012】
(1)更生修理の対象となる管の内面にライニング膜を形成するための更生修理用ピグにおいて、前記管の内径よりも小さい外径を備えた略円柱状体に形成されていること、軸方向の全長は、前記管の内径よりも大きい所定の長さであること、前記軸方向の両端に、前記軸方向の外方に膨出した湾曲面を備えること、を特徴とする。
【0013】
(2)(1)に記載の更生修理用ピグにおいて、前記軸方向の両端の前記湾曲面に挟まれて、前記軸方向において径が均一の円柱状の胴部を備えること、が好ましい。
【0014】
更生修理用ピグは、更生修理の対象となる管の内径よりも小さい外径を備えた略円柱状体に形成され、軸方向の全長は、管の内径よりも大きい所定の長さを備えるため、更生修理用ピグと、更生修理の対象となる管の内面との隙間の大きさは、更生修理用ピグの軸方向の、管の軸方向に対する角度に応じて変動する。つまり、更生修理用ピグの軸方向と管の軸方向が平行である場合に隙間が最大となり、更生修理用ピグの軸方向が、管の軸方向に対して傾くほど隙間は縮小される。また、軸方向の両端に、軸方向の外方に膨出した湾曲面を備えることで、管内に導入されるライニング剤に乗り上げやすくされている。
【0015】
したがって、管内にライニング剤を圧送する際や、ライニング膜を形成するために吸引ポンプにより吸引を行う際、更生修理用ピグがライニング剤に乗り上げ、更生修理用ピグの軸方向が、管の軸方向に対して傾いた状態になる。更生修理用ピグが傾くことで、更生修理用ピグと管の内面との隙間が縮小されるため、ライニング膜を形成するために吸引ポンプにより吸引を行う際に当該隙間におけるガスの吹き抜けを防止することができる。よって、更生修理用ピグの回収およびライニング膜の形成を確実に行うことが可能である。
【0016】
なお、上記した所定の長さは、更生対象となる管に、管路が90度曲げられている箇所がある場合があるため、そうした箇所を通過可能なよう実験的に設定される。
【0017】
(3)(1)に記載の更生修理用ピグにおいて、前記外径が、前記管の内径の、80%以上、87%以下であること、が好ましい。
【0018】
例えば、更生修理用ピグの外径が、管の内径の80%よりも小さいと、ライニング膜を形成するために吸引ポンプにより吸引を行う際に、更生修理用ピグと管の内面との隙間において、ガスの吹き抜けが発生してしまい、ライニング膜の形成ができない。また、ライニング膜の膜厚は、1.5mm程度が望ましいところ、管の内径の87%よりも大きいと、ライニング膜の膜厚が1.5mmよりも薄くなってしまう。更生修理用ピグの外径を、管の内径の、80%以上、87%以下とすることで、ライニング膜の形成を確実に行うことができる。
【0019】
(4)(3)に記載の更生修理用ピグにおいて、硬さが15±5度の弾性体であること、が好ましい。
【0020】
(5)(3)に記載の更生修理用ピグにおいて、硬さが20±5度の弾性体であること、が好ましい。
【0021】
更生修理用ピグは、硬さが低いほど、ライニング膜を形成するために吸引ポンプにより吸引を行う際に周囲の圧力を受けて変形しやすい。つまり、変形により更生修理用ピグと管の内面との隙間が大きくなり、ライニング膜の膜厚が厚くなる。反対に、更生修理用ピグは、硬さが高いほど変形しにくく、ライニング膜の膜厚が薄くなる。本願発明者は、更生修理用ピグを、硬さが15±5度または20±5度の弾性体(例えばシリコン)とすることで、ライニング膜の膜厚を適切な値(約1.5mm)に形成可能であることを実験により確認した。なお、上記の硬さは、JIS K6253-3に開示される試験方法により測定した値である。
【発明の効果】
【0022】
本発明の更生修理用ピグは、上記構成を有することにより、本支管から分岐する分岐管の内径が均一でない場合でも、更生修理を確実に行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本支管から分岐する分岐管の更生修理の工程を説明する図である。
図2】本支管から分岐する分岐管の更生修理の工程を説明する図である。
図3】本支管から分岐する分岐管の更生修理の工程を説明する図である。
図4】本実施形態に係る更生修理用ピグについて説明する図である。
図5図2のX部分の部分拡大図であり、(a)は本実施形態に係る更生修理用ピグを用いた状態を示し、(b)は従来技術に係る更生修理用ピグを用いた状態を示している。
図6】更生修理用ピグの変形例を示す図である。
図7】更生修理用ピグの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の更生修理用ピグの実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0025】
(更生修理の工程について)
まず、更生修理の工程について、図1図3を用いて説明する。図1図3は、本支管1から分岐する分岐管2の更生修理の工程を説明する図である。具体的には、ライニング工法による更生修理の工程を示している。
【0026】
ライニング工法は、道路Rの下に敷設されている本支管1より需要家の住宅(不図示)に向けて分岐された分岐管2を更生修理の対象としている。なお、図面中の道路Rと住宅の敷地Pとの境界Bは官民境界であるところ、一般的に、分岐管2の境界Bの道路Rの側を供給管といい、住宅の敷地P側を灯外内管というが、ここでは特に区別することなく分岐管2というものとする。
【0027】
分岐管2は、本支管1から住宅の敷地Pに向けて延伸する供給管3と、供給管3の本支管1とは反対側の端部から垂直に地面に向かって延伸するメータ立管4と、を備えている。供給管3は、例えば、呼び径40Aまたは32Aの亜鉛めっき鋼管である。メータ立管4は、亜鉛めっき鋼管であり、供給管3に継手により接続されている。メータ立管4の呼び径は、一般的に供給管3の呼び径と同一とされることが多いが、供給管3の呼び径よりも小さいものが用いられる場合もある。具体的には、供給管3の呼び径が40Aの場合は32A以下とされ、供給管3の呼び径が32Aの場合は25A以下とされることがある。また、メータ立管4は、敷地Pの地面上に突出している端部が、住宅のガスメータ(不図示)に接続されている。
【0028】
以上のような構成の分岐管2に対し、更生修理は以下のようにして行う。
まず、メータ立管4からガスメータを取り外し、その取り外した開口を地上開口部41とし、地上開口部41から更生修理用ピグ5を分岐管2の管内に導入する。次に、ライニング剤Aを、地上開口部41から分岐管2の管内に注入する。このライニング剤Aの注入は、図1に示すように、地上開口部41に接続されたライニング剤注入装置11により行う。具体的には、ライニング剤注入装置11は、内部に必要量のライニング剤を貯蔵するとともに、注水機器12に接続されており、注水機器12の作動により得られる水圧によって、ライニング剤Aを分岐管2の管内に押し出していく。ライニング剤Aは、ウレタン系の液状樹脂であり、粘度20~60Pa・sのものを用いる。また、ライニング剤Aの、分岐管2に導入する量は、分岐管2の管長,管径,必要なライニング膜の膜厚等の関係条件に基づき、事前に必要量を計算しておく。
【0029】
その後、図2に示すように、地上開口部41には、ライニング剤注入装置11にかえて、ピグカセット13を接続する。そして、注水機器12の作動により得られた水圧によって、ピグカセット13から、樹脂搬送ピグ6、吸水剤7および遮水ピグ8を、分岐管2の管内に導入する。さらに、引き続き注水機器12を作動させることで、分岐管2の管内に水Wを 導入する。この水圧により、更生修理用ピグ5を先頭に、ライニング剤A、樹脂搬送ピグ6、吸水剤7および遮水ピグ8が、分岐管2の管内に圧送されていく。樹脂搬送ピグ6は、水Wによる水圧を受けることで、ライニング剤Aを圧送する機能を果たしており、吸水剤7および遮水ピグ8は、水Wが本支管1に流入することを防止するために用いられるものである。そして、この圧送は、更生修理用ピグ5およびライニング剤Aが、本支管1と分岐管2との分岐位置の近傍に到達するまで行われる。
【0030】
圧送が完了すると、図3に示すように、地上開口部41に、回収タンク15と、吸引ポンプ16とを、直列に接続する。そして、吸引ポンプ16が発生する負圧(約-100kPa)により、水W、遮水ピグ8、吸水剤7、樹脂搬送ピグ6を、分岐管2の管内から排出する。この際、吸引ポンプの吸引力により、ライニング剤Aも地上開口部41側に引き戻されるようにして流動するため、分岐管2の内面にライニング剤Aが塗布されてライニング膜Mが形成される。さらに、ライニング剤Aとともに地上開口部41側に引き戻される更生修理用ピグ5によって、分岐管2の内面に塗布されるライニング膜Mの厚さが均一なものになる。なお、膜厚は約1.5mmであることが望ましい。そして、ライニング膜Mとならずに余ったライニング剤Aおよび更生修理用ピグ5は、地上開口部41まで引き戻され、分岐管2の管内から排出される。
【0031】
分岐管2の管内から排出された更生修理用ピグ5、樹脂搬送ピグ6、遮水ピグ8は、分岐管2の管内から排出された水Wおよびライニング剤Aとともに、回収タンク15内に回収される。また、回収タンク15内に回収された水Wおよびライニング剤Aは、回収タンク15内において分離された上で回収タンク15内に貯蔵される。
【0032】
(更生修理用ピグについて)
以上のような更生修理に用いられる更生修理用ピグ5について説明する。図4は、本実施形態に係る更生修理用ピグ5について説明する図である。
【0033】
更生修理用ピグ5は、シリコンを材質として、図4に示すように、全体として略円柱形状に形成されている。軸方向(図4中の左右方向)の両端は、軸方向の外方に膨出した球面5a(湾曲面の一例)とされている。そして、一対の球面5aに挟まれた胴部5bは、径が均一の円柱状に形成されている。なお、球面5aの直径と胴部5bの直径は同一である。
【0034】
更生修理用ピグ5の、外径D、シリコンの硬さは、更生修理の対象となる分岐管2の管径に応じて選定される。より具体的には、分岐管2のように、管径の大きい供給管3と管径の小さいメータ立管4を備える場合、すなわち大口径部と小口径部を備える場合、小口径部の内径に応じて選定される。
【0035】
メータ立管4の内径の80%以上87%以下であることが望ましいことを、発明者は実験により確認した。具体的な実験内容は以下の通りである。なお、メータ立管4の呼び径が25A、すなわち内径が27.6mmとしての実験結果である。
【0036】
外径Dをメータ立管4の内径の80%よりも小さくし、例えば、外径Dを22mmとし、図1図3により説明した更生修理の工程を行ったところ、更生修理用ピグ5およびライニング剤Aを地上開口部41の側に引き戻すことができなかった。つまり、ライニング膜Mを形成することができなかった。これは、分岐管2の内面と更生修理用ピグ5との隙間が大きくなり過ぎ(特に、管径の大きい供給管3において隙間が大きくなる)、当該隙間を、本支管1から流れてくるガスが吹き抜けてしまったためと考えられる。なお、以下において、分岐管2(供給管3,メータ立管4)の内面と更生修理用ピグ5との隙間のことを内部隙間という。
【0037】
外径Dをメータ立管4の内径の87%よりも大きくし、例えば、外径Dを24mmとし、図1図3により説明した更生修理の工程を行ったところ、ライニング膜Mを形成することは可能であったが、メータ立管4におけるライニング膜Mの膜厚が0.9~1.0mmであった。これは、適切な膜厚と考えられる約1.5mmよりも薄い。メータ立管4における内部隙間が小さくなり過ぎたためと考えられる。
【0038】
外径Dをメータ立管4の内径の80%以上87%以下とし、例えば、外径Dを23mmとし、図1図3により説明した更生修理の工程を行ったところ、得られたライニング膜Mの膜厚が1.4~1.5mmであり、最も良好な膜厚が得られた。よって、本実施形態においては、外径Dは23mmに設定されている。
【0039】
また、外径Dは23mmの更生修理用ピグ5により、上記の良好な膜厚を得るためには、硬さが15±5度であることが最も望ましいことを、発明者は実験により確認した。具体的には以下の通りである。
【0040】
外径Dを23mmとし、硬さ15±5度、硬さ20±5度、硬さ30±5度の三種の更生修理用ピグにより、図1図3により説明した更生修理の工程を行ったところ、硬さ20±5度および硬さ30±5度の更生修理用ピグでは、ライニング膜Mを形成することは可能であったが、膜厚が、適切な膜厚と考えられる約1.5mmよりも薄くなってしまった。具体的には、硬さ20±5度のとき、膜厚が1.1~1.2mmであり、硬さ30±5度のとき、膜厚が1.0~1.1mmであった。そして、硬さが15±5度のとき、膜厚が約1.5mmであった。
【0041】
更生修理用ピグ5の硬さが高いほどライニング膜Mの膜厚が小さくなる結果が示されているが、その理由は以下のように考えられる。更生修理用ピグ5は、吸引ポンプ16に吸引される際、周囲から圧を受け、外径Dが小さくなる方向に変形するものと考えられている。このように変形すると、内部隙間が拡大するが、硬さが高ければ変形量が小さくなり、内部隙間の拡大量が小さくなる。内部隙間の拡大量が小さくなれば、その分だけライニング膜Mの膜厚が小さくなるのであるから、硬さが高いほど、ライニング膜Mの膜厚が小さくなるのである。
【0042】
また、更生修理用ピグ5の全長Lは、特に限定されないが、分岐管2の90度に曲げられた箇所を通過可能な程度の長さを実験的に求めることが望ましい。本実施形態においては、メータ立管4の内径の158%以上168%以下、具体的には、45±1.5mmに設定されている。
【0043】
更生修理用ピグ5の外径Dは、メータ立管4の呼び径が32A、すなわち内径が35.7mmであるときも同様に、メータ立管4の内径の80%以上87%以下であることが望ましく、本実施形態においては、30mmに設定されている。このとき、更生修理用ピグ5の硬さは15±5度または20±5度であることが望ましい。
【0044】
外径Dを30mm、硬さを20±5度とし、図1図3により説明した更生修理の工程を行ったところ、得られたライニング膜Mの膜厚が約1.5~1.6mmであり、良好な膜厚が得られた。なお、硬さを15±5度とした場合、膜厚は1.6~1.7mm程度で、良好な膜厚を得ることができる。
【0045】
また、更生修理用ピグ5の全長Lは、特に限定されないが、分岐管2の90度に曲げられた箇所を通過可能な程度の長さを実験的に求めることが望ましい。本実施形態においては、メータ立管4の内径の128%以上、136%以下、具体的には、47±1.5mmに設定されている。
【0046】
なお、以上の実験結果に示したライニング膜Mの膜厚は、全てメータ立管4における膜厚であるが、供給管3の管径がメータ立管4の管径と同一であれば、供給管3でも同様の膜厚を得ることができる。一方で、供給管3の管径がメータ立管4の管径よりも大きい場合には、供給管3に形成されるライニング膜Mの膜厚は、メータ立管4に形成されるライニング膜Mよりも厚くなる。つまり、1.5mmよりも厚くなる。これは、供給管3の管径がメータ立管4の管径よりも大きい場合には、供給管3における内部隙間が、メータ立管4における内部隙間よりも大きくなるためである。ライニング膜Mの膜厚が1.5mmを超える分には、分岐管2の保全の観点において何ら問題がない。更生修理用ピグ5の外径Dを、小口径部分の内径に応じて選定するのはこのためである。
【0047】
しかし、供給管3(分岐管2の大口径部分)において内部隙間が大きくなるため、従来用いられていた球形の更生修理用ピグ50では、吸引ポンプ16により吸引する際に、供給管3における内部隙間G12(図5(b)参照)を本支管1から流れてくるガスが吹き抜けてしまい、更生修理用ピグ50およびライニング剤Aを地上開口部41の側に引き戻せなくなるおそれがあった。更生修理用ピグ50およびライニング剤Aを地上開口部41の側に引き戻せなくなると、更生修理用ピグ50を回収およびライニング膜Mの形成を行うことができなくなる。
【0048】
一方、本実施形態に係る更生修理用ピグ5は、略円柱状体に形成され、軸方向の全長は、管の内径よりも大きいため、更生修理用ピグ5と、供給管3における内部隙間の大きさは、更生修理用ピグ5の軸方向の、供給管3の軸方向に対する角度に応じて変動する。つまり、更生修理用ピグの軸方向と供給管3の軸方向が平行である場合に内部隙間が最大となり、更生修理用ピグ5の軸方向が、供給管3の軸方向に対して傾くほど内部隙間は縮小される。また、更生修理用ピグ5は、軸方向の両端に、軸方向の外方に膨出した球面5aを備えることで、管内に導入されるライニング剤Aに乗り上げやすくされている。
【0049】
したがって、分岐管2内にライニング剤Aを圧送する際や、ライニング膜Mを形成するために吸引ポンプにより吸引を行う際、図5(a)に示すように、更生修理用ピグ5がライニング剤Aに乗り上げ、更生修理用ピグ5の軸方向が、供給管3の軸方向に対して傾いた状態になる。更生修理用ピグ5が傾くことで、供給管3における内部隙間G11が縮小されるため、ライニング膜Mを形成するために吸引ポンプ16により吸引を行う際に内部隙間G11におけるガスの吹き抜けを防止することができる。よって、更生修理用ピグ5の回収およびライニング膜Mの形成を確実に行うことが可能である。
【0050】
以上説明したように、本実施形態の更生修理用ピグ5によれば、
(1)更生修理の対象となる管(分岐管2)の内面にライニング膜Mを形成するための更生修理用ピグ5において、管(分岐管2)の内径よりも小さい外径Dを備えた略円柱状体に形成されていること、軸方向の全長Lは、管(分岐管2)の内径よりも大きい所定の長さであること、軸方向の両端に、軸方向の外方に膨出した湾曲面(球面5a)を備えること、を特徴とする。
【0051】
(2)(1)に記載の更生修理用ピグ5において、軸方向の両端の湾曲面(球面5a)に挟まれて、軸方向において径が均一の円柱状の胴部5bを備えること、が好ましい。
【0052】
更生修理用ピグ5は、更生修理の対象となる管(分岐管2)の内径よりも小さい外径Dを備えた略円柱状体に形成され、軸方向の全長Lは、管(分岐管2)の内径よりも大きい所定の長さを備えるため、更生修理用ピグ5と、更生修理の対象となる管(分岐管2)の内面との隙間(内部隙間G11)の大きさは、更生修理用ピグ5の軸方向の、管(分岐管2)の軸方向に対する角度に応じて変動する。つまり、更生修理用ピグ5の軸方向と管(分岐管2)の軸方向が平行である場合に隙間(内部隙間G11)が最大となり、更生修理用ピグ5の軸方向が、管(分岐管2)の軸方向に対して傾くほど隙間(内部隙間G11)は縮小される。また、軸方向の両端に、軸方向の外方に膨出した湾曲面(球面5a)を備えることで、管内に導入されるライニング剤Aに乗り上げやすくされている。
【0053】
したがって、管内にライニング剤Aを圧送する際や、ライニング膜Mを形成するために吸引ポンプ16により吸引を行う際、更生修理用ピグ5がライニング剤Aに乗り上げ、更生修理用ピグ5の軸方向が、管(分岐管2)の軸方向に対して傾いた状態になる(図5(a)参照)。更生修理用ピグ5が傾くことで、更生修理用ピグ5と管(分岐管2)の内面との隙間(内部隙間G11)が縮小されるため、ライニング膜Mを形成するために吸引ポンプ16により吸引を行う際に当該隙間(内部隙間G11)におけるガスの吹き抜けを防止することができる。よって、更生修理用ピグ5の回収およびライニング膜Mの形成を確実に行うことが可能である。
【0054】
(3)(1)に記載の更生修理用ピグ5において、外径Dが、管(分岐管2)の内径の、80%以上、87%以下であること、が好ましい。
【0055】
例えば、更生修理用ピグ5の外径Dが、管の内径の80%よりも小さいと、ライニング膜Mを形成するために吸引ポンプ16により吸引を行う際に、更生修理用ピグ5と管の内面(分岐管2)との隙間において、ガスの吹き抜けが発生してしまい、ライニング膜Mの形成ができない。また、ライニング膜Mの膜厚は、1.5mm程度が望ましいところ、管(分岐管2)の内径の87%よりも大きいと、ライニング膜Mの膜厚が1.5mmよりも薄くなってしまう。更生修理用ピグ5の外径を、管(分岐管2)の内径の、80%以上、87%以下とすることで、ライニング膜Mの形成を確実に行うことができる。
【0056】
(4)(3)に記載の更生修理用ピグ5において、硬さが15±5度の弾性体であること、が好ましい。
【0057】
(5)(3)に記載の更生修理用ピグ5において、硬さが20±5度の弾性体であること、が好ましい。
【0058】
更生修理用ピグ5は、硬さが低いほど、ライニング膜Mを形成するために吸引ポンプ16により吸引を行う際に、周囲の圧力を受けて変形しやすい。つまり、変形により更生修理用ピグ5と管(分岐管2)の内面との隙間(内部隙間G11)が大きくなり、ライニング膜Mの膜厚が厚くなる。反対に、更生修理用ピグ5は、硬さが高いほど、変形しにくく、ライニング膜Mの膜厚が薄くなる。本願発明者は、更生修理用ピグを、硬さが15±5度または20±5度の弾性体(例えばシリコン)とすることで、ライニング膜Mの膜厚を適切な値(約1.5mm)に形成可能であることを実験により確認した。なお、上記の硬さは、JIS K6253-3に開示される試験方法により測定した値である。
【0059】
なお、上記実施形態は単なる例示にすぎず、本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に、その要旨を逸脱しない範囲内で様々な改良、変形が可能である。例えば、本実施形態に係る更生修理用ピグ5の形状は、あくまでも一例であり、図6または図7に示すようなものとしても良い。
【0060】
図6に示す更生修理用ピグ20は、シリコンを材質として、全体として略円柱形状に形成されている。軸方向の両端は、更生修理用ピグ5と同様に軸方向の外方に膨出した球面20aとされている。そして、一対の球面20aに挟まれた胴部20bは、軸方向に対して垂直の方向に膨出した曲面とされている。したがって、更生修理用ピグ20の軸方向と平行に切断した断面は略楕円状となっている。更生修理用ピグ20の外径Dおよび全長Lは、更生修理用ピグ5と同様に設定されている。
【0061】
また、図7に示す更生修理用ピグ30は、シリコンを材質として、全体として略円柱形状に形成されている。軸方向の両端は、更生修理用ピグ5と同様に軸方向の外方に膨出した球面30aとされている。そして、一対の球面30aに挟まれた胴部30bは、軸方向に対して垂直の方向にくびれた凹曲面とされている。更生修理用ピグ30の外径Dおよび全長Lは、更生修理用ピグ5と同様に設定されている。
【0062】
以上のような更生修理用ピグ20,30によっても、分岐管2内にライニング剤Aを圧送する際や、ライニング膜Mを形成するために吸引ポンプにより吸引を行う際、更生修理用ピグ20,30がライニング剤Aに乗り上げ、更生修理用ピグ20,30の軸方向が、供給管3の軸方向に対して傾いた状態になる。更生修理用ピグ20,30が傾くことで、供給管3における内部隙間が縮小されるため、ライニング膜Mを形成するために吸引ポンプ16により吸引を行う際に内部隙間におけるガスの吹き抜けを防止することができる。よって、更生修理用ピグ20,30の回収およびライニング膜Mの形成を確実に行うことが可能である。
【0063】
また、更生修理用ピグの材質はシリコンに限定されず、例えばクロロプレンゴムなどであっても良い。さらにまた、更生修理用ピグ5の湾曲面を球面5aとて説明しているが、必ずしも球面である必要はない。
【符号の説明】
【0064】
1 本支管
2 分岐管(更生修理の対象となる管の一例)
5 更生修理用ピグ
5a 球面(湾曲面の一例)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7