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特開2024-126704自動計算装置及び自動計算プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126704
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】自動計算装置及び自動計算プログラム
(51)【国際特許分類】
   E03F 1/00 20060101AFI20240912BHJP
【FI】
E03F1/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023035276
(22)【出願日】2023-03-08
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-12-06
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和4年7月19日にウェブサイトにて発表 令和4年6月9日に苫小牧道路事務所インフラDX及びゼロカーボンマネジメント会議第5回にて発表 令和5年2月6日に販売
(71)【出願人】
【識別番号】599143416
【氏名又は名称】株式会社 三英技研
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 真
【テーマコード(参考)】
2D063
【Fターム(参考)】
2D063AA00
(57)【要約】
【課題】集水面積を正確にかつ短時間で把握可能にする。
【解決手段】自動計算する集水面積の自動計算装置1は、3次元モデルを取得する3次元モデル取得部10aと、取得された3次元モデルに基づいて、最高点及び最下点を計算する計算部10cと、計算部10cによって計算された最高点から最下点までの間の3次元モデルを所定ピッチで区分けして複数のエリアを生成するエリア生成部10dと、エリア生成部10dによって生成されたエリアの面積を計算し、計算によって得られた面積をエリアの集水面積として出力する出力部10eとを備えている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
現況の地形及び計画を表す3次元モデル上の所定のエリアの集水面積を自動計算する集水面積の自動計算装置であって、
前記3次元モデルを取得する3次元モデル取得部と、
前記3次元モデル取得部によって取得された前記3次元モデルに基づいて、最高点及び最下点を計算する計算部と、
前記計算部によって計算された前記最高点から前記最下点までの間の前記3次元モデルを所定ピッチで区分けして複数のエリアを生成するエリア生成部と、
前記エリア生成部によって生成された前記エリアの面積を計算し、計算によって得られた面積を当該エリアの集水面積として出力する出力部とを備えていることを特徴とする集水面積の自動計算装置。
【請求項2】
請求項1に記載の集水面積の自動計算装置において、
前記出力部は、前記集水面積を利用して流出量を計算して出力することを特徴とする集水面積の自動計算装置。
【請求項3】
請求項1に記載の集水面積の自動計算装置において、
前記計算部は、前記3次元モデルの縦断方向における最高点及び最下点と、前記3次元モデルの横断面方向における最高点及び最下点とを計算し、
前記エリア生成部は、前記3次元モデルの縦断方向の前記最高点と、前記3次元モデルの横断方向の前記最高点とのうち、最も高い前記最高点を特定するとともに、前記3次元モデルの縦断方向の前記最下点と、前記3次元モデルの横断方向の前記最下点とのうち、最も低い前記最下点を特定し、特定した前記最高点から特定した前記最下点までの間の前記3次元モデルを縦断方向に所定ピッチで区分けして複数のエリアを生成することを特徴とする集水面積の自動計算装置。
【請求項4】
請求項3に記載の集水面積の自動計算装置において、
前記エリア生成部は、縦断方向に区分けされた複数のエリアを横断方向に区分けして更に小さなエリアを生成することを特徴とする集水面積の自動計算装置。
【請求項5】
請求項4に記載の集水面積の自動計算装置において、
前記3次元モデル取得部は、道路モデルが含まれた3次元モデルを取得可能に構成され、
前記エリア生成部は、縦断方向に区分けされた複数のエリアに対して道路の幅員属性による区分けを行うことを特徴とする集水面積の自動計算装置。
【請求項6】
請求項4に記載の集水面積の自動計算装置において、
前記エリア生成部は、縦断方向に区分けされた複数のエリアを、横断方向の前記最高点から横断方向の前記最下点まで区分けすることを特徴とする集水面積の自動計算装置。
【請求項7】
請求項1に記載の集水面積の自動計算装置において、
前記エリア生成部によって生成された前記エリアと、前記出力部から出力された集水面積とを表示する表示部を備えていることを特徴とする集水面積の自動計算装置。
【請求項8】
請求項7に記載の集水面積の自動計算装置において、
前記出力部は、前記集水面積を利用して雨水流出量を計算して前記表示部に出力し、
前記表示部は、前記出力部から出力された雨水流出量を表示することを特徴とする集水面積の自動計算装置。
【請求項9】
請求項7に記載の集水面積の自動計算装置において、
前記出力部は、前記エリア毎に最高点及び最下点を計算し、前記エリア毎の最高点及び最下点に基づいて当該エリアの相対的に低い方を示すための高低情報を生成して出力し、
前記表示部は、前記出力部から出力された前記高低情報に基づいた矢印表示を前記3次元モデルと共に表示することを特徴とする集水面積の自動計算装置。
【請求項10】
請求項9に記載の集水面積の自動計算装置において、
前記表示部は、前記出力部から出力された高低情報に基づいて相対的に低い方を示す高低表示を前記3次元モデルと共に表示することを特徴とする集水面積の自動計算装置。
【請求項11】
現況の地形及び計画を表す3次元モデル上の所定のエリアの集水面積を自動計算する集水面積の自動計算プログラムであって、
前記3次元モデルを取得する3次元モデル取得工程と、
前記3次元モデル取得工程で取得した前記3次元モデルに基づいて、最高点及び最下点を計算する計算工程と、
前記計算工程で計算した前記最高点から前記最下点までの間の前記3次元モデルを所定ピッチで区分けして複数のエリアを生成するエリア生成工程と、
前記エリア生成工程で生成した前記エリアの面積を計算し、計算によって得られた面積を当該エリアの集水面積として出力する出力工程とをコンピュータに実行させることを特徴とする集水面積の自動計算プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば道路や宅盤、宅地造成、河川、駐車場、港湾施設などの設計に用いられる集水面積の自動計算装置及び集水面積の自動計算プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、現況の地形データに基づいて道路及びその周辺の計画設計を行うとともに、各種図面データを生成する道路計画設計支援システムが開示されている。特許文献1の道路計画設計支援システムでは、現況の地形及び計画を表す現況3次元データとして、等高線データを取得し、取得された等高線データに基づいて3次元メッシュデータを生成した後、作成された3次元メッシュデータに基づいて鳥瞰データを生成するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-125949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、既存の道路や宅盤、宅地造成、河川、駐車場、港湾施設などの2次元設計では縦断勾配、横断勾配などの勾配情報から、どこが高くどこが低いのかを求めるため非常に手間が掛かり、さらには縦横断勾配の双方が複雑に絡まりあった場合、勾配の方向を間違えてしまう事も多くあった。
【0005】
特に雨の多い日本では用排水の設計は非常に重要であり、集水面積を間違えないように設計することが強く望まれている。
【0006】
本開示は、かかる点に鑑みたものであり、その目的とするところは、集水面積を正確にかつ短時間で把握可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本開示の一態様では、現況の地形及び計画を表す3次元モデル上の所定のエリアの集水面積を自動計算する集水面積の自動計算装置を前提とすることができる。集水面積の自動計算装置は、前記3次元モデルを取得する3次元モデル取得部と、前記3次元モデル取得部によって取得された前記3次元モデルに基づいて、最高点及び最下点を計算する計算部と、前記計算部によって計算された前記最高点から前記最下点までの間の前記3次元モデルを所定ピッチで区分けして複数のエリアを生成するエリア生成部と、前記エリア生成部によって生成された前記エリアの面積を計算し、計算によって得られた面積を当該エリアの集水面積として出力する出力部とを備えている。
【0008】
この構成によれば、現況の地形及び計画を表す3次元モデルを3次元モデル取得部が取得すると、取得した3次元モデルには高さ情報が含まれているので、計算部が3次元モデルの高さ情報に基づいて当該3次元モデル上の最高点及び最下点を計算する。高さ情報には、等高線も含まれており、等高線に基づいて3次元モデル上の最高点及び最下点を計算してもよい。
【0009】
エリア生成部は、例えば3次元モデル上の最高点を起点とし、最下点までの範囲内で、3次元モデルを所定ピッチで区分けして複数のエリアを生成する。このとき、最下点を起点とし、最高点までの範囲内で、3次元モデルを所定ピッチで区分けしてもよい。
【0010】
これによって生成された複数のエリアの面積を出力部が計算する。計算によって得られた面積が当該エリアの集水面積として出力されるので、ユーザは、3次元モデルの入力、ピッチの指定等を行うだけで、エリアごとに正確な集水面積を把握することが可能になる。
【0011】
前記計算部は、前記3次元モデルの縦断方向における最高点及び最下点と、前記3次元モデルの横断面方向における最高点及び最下点とを計算することもできる。前記エリア生成部は、前記3次元モデルの縦断方向の前記最高点と、前記3次元モデルの横断方向の前記最高点とのうち、最も高い前記最高点を特定するとともに、前記3次元モデルの縦断方向の前記最下点と、前記3次元モデルの横断方向の前記最下点とのうち、最も低い前記最下点を特定し、特定した前記最高点から特定した前記最下点までの間の前記3次元モデルを縦断方向に所定ピッチで区分けして複数のエリアを生成することができる。
【0012】
前記エリア生成部は、縦断方向に区分けされた複数のエリアを横断方向に区分けして更に小さなエリアを生成することもできる。また、前記3次元モデル取得部は、道路モデルが含まれた3次元モデルを取得可能に構成されていてもよく、この場合、前記エリア生成部は、縦断方向に区分けされた複数のエリアに対して道路の幅員属性による区分けを行うことができる。
【0013】
前記エリア生成部は、縦断方向に区分けされた複数のエリアを、横断方向の前記最高点から横断方向の前記最下点まで区分けすることもできる。また、集水面積の自動計算装置は、前記エリア生成部によって生成された前記エリアと、前記出力部から出力された集水面積とを表示する表示部を備えていてもよい。これにより、集水面積をエリア毎に把握可能な形態で表示できる。
【0014】
前記出力部は、前記集水面積を利用して雨水流出量を計算して前記表示部に出力してもよい。前記表示部は、前記出力部から出力された雨水流出量を表示することもできる。これにより、エリア毎に集水面積と雨水流出量を把握できる。
【0015】
前記出力部は、前記エリア毎に最高点及び最下点を計算し、前記エリア毎の最高点及び最下点に基づいて当該エリアの相対的に低い方を示すための高低情報を生成して出力することもできる。この場合、前記表示部は、前記出力部から出力された前記高低情報に基づいた矢印表示を前記3次元モデルと共に表示することができる。これにより、ユーザである設計技術者が各エリアの勾配の方向を求めなくても、出力部が計算した最高点及び最下点に基づいて正確な高低表示を行うことができるので、設計技術者は、表示部を見ることで、正確な流水方向を簡単にかつ正確に取得することが可能になる。
【0016】
本開示の別の態様では、現況の地形及び計画を表す3次元モデル上の所定のエリアの集水面積を自動計算する集水面積の自動計算プログラムを前提とすることができる。この自動計算プログラムは、前記3次元モデルを取得する3次元モデル取得工程と、前記3次元モデル取得工程で取得した前記3次元モデルに基づいて、最高点及び最下点を計算する計算工程と、前記計算工程で計算した前記最高点から前記最下点までの間の前記3次元モデルを所定ピッチで区分けして複数のエリアを生成するエリア生成工程と、前記エリア生成工程で生成した前記エリアの面積を計算し、計算によって得られた面積を当該エリアの集水面積として出力する出力工程とをコンピュータに実行させることができる。
【0017】
開示のさらに別の態様では、現況の地形及び計画を表す3次元モデル上の所定のエリアの集水面積を自動計算する集水面積の自動計算方法を前提とすることもできる。自動計算方法は、前記3次元モデルを取得する3次元モデル取得工程と、前記3次元モデル取得工程で取得した前記3次元モデルに基づいて、最高点及び最下点を計算する計算工程と、前記計算工程で計算した前記最高点から前記最下点までの間の前記3次元モデルを所定ピッチで区分けして複数のエリアを生成するエリア生成工程と、前記エリア生成工程で生成した前記エリアの面積を計算し、計算によって得られた面積を当該エリアの集水面積として出力する出力工程とを備えている。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、3次元モデルに基づいて計算された最高点から最下点までの間を所定ピッチで区分けして複数のエリアを生成し、生成したエリアの面積を当該エリアの集水面積として出力することができるので、ユーザは集水面積を正確にかつ短時間で把握できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態に係る集水面積の自動計算装置の構成図である。
図2】集水面積の自動計算装置のブロック図である。
図3】集水面積の自動計算手順の一例を示すフローチャートである。
図4】3次元表示形態の例を示す図である。
図5】平面表示形態の例を示す図である。
図6】3次元ポリゴン表示形態の例を示す図である。
図7】3次元ポリゴン表示形態の拡大表示の例を示す図である。
図8】縦断方向に最高点及び最下点が存在する場合を説明する図である。
図9】横断方向に最高点及び最下点が存在する場合を説明する図である。
図10】縦断方向の区分けが行われた状態を示す図である。
図11】横断方向の区分けが行われた状態を示す図である。
図12】エリア番号、集水面積及び流出量の表示例を示す図である。
図13】流水方向の表示例を示す図である。
図14】設計情報が無い場合の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図15】等高線の表示例を示す図である。
図16】宅地、造成地、駐車場等の計画3次元モデルの一例を示す図である。
図17】計画3次元モデル上に等高線を重畳表示した場合を示す図である。
図18】計画3次元モデル上に稜線または谷線を重畳表示した場合を示す図である。
図19】区分けの例を説明する図である。
図20】計画3次元モデル上に集水面積及び流出量を表示した場合を示す図である。
図21】計画3次元モデル上に流水方向を表示した場合を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0021】
図1は、本発明の実施形態に係る集水面積の自動計算装置1の構成図であり、図2は、集水面積の自動計算装置1のブロック図である。集水面積の自動計算装置1は、例えばパーソナルコンピュータ等で構成されており、本体部10と、表示部11と、操作部12と、記憶装置13とを備えている。本体部10は、制御部10Aと通信モジュール10Bを有している。制御部10Aは、例えばCPU(中央演算処理装置)、ROM及びRAM(メモリ)等で構成されており、プログラムに従って動作する。メモリは、CPUが集水面積の自動計算プログラムを実行する際に当該集水面積の自動計算装置プログラムを展開するためのワークメモリや、データを一時的に記憶するためのバッファメモリである。また、通信モジュール10Bは、例えばインターネット等を介して外部の端末と通信する部分であり、データの送信、データの受信等が行えるように構成されている。
【0022】
図5に示すように、制御部10Aにより、後述する3次元モデル取得部10a、入力部10b、計算部10c、エリア生成部10d、出力部10e等が構成されている。3次元モデル取得部10a、入力部10b、計算部10c、エリア生成部10d及び出力部10eは、制御部10Aを構成しているハードウェアのみで構成されていてもよいし、ハードウェアとソフトウェアとの組み合わせで構成されていてもよい。例えば、CPUが集水面積の自動計算プログラムを実行することで、3次元モデル取得部10a、入力部10b、計算部10c、エリア生成部10d、出力部10eの各機能を制御部10Aが実現可能になる。
【0023】
表示部11は、例えば液晶ディスプレイ装置や有機ELディスプレイ装置等で構成されている。表示部11は、制御部10Aの出力部10eに接続されており、出力部10eによって制御され、各種設定画面、入力画面、設計画面、解析画面、出力画面等の表示が可能になっている。
【0024】
操作部12は、ユーザが集水面積の自動計算装置1を操作するための機器で構成されている。操作部12には、例えばキーボード12a及びマウス12bが含まれているが、これら以外にも表示部11に組み込まれたタッチ操作パネルや、各種ポインティングデバイス等が含まれていてもよい。操作部12は、制御部10Aに接続されており、ユーザの操作部12による操作が制御部10Aで検出可能になっている。
【0025】
記憶装置13は、各種データやプログラム等を記憶可能なハードディスクドライブやソリッドステートドライブ等で構成されている。記憶装置13は制御部10Aに接続されており、制御部10Aからの指示に従い、送られてきたデータの記憶、及び記憶されているデータの読み出しを実行する。記憶装置13は、本体部10に内蔵されていてもよいし、本体部10の外部に設けられていてもよい。また、記憶装置13は、外部のサーバや、いわゆるクラウド型のストレージシステムであってもよい。また、記憶装置13の一部のみ本体部10に内蔵し、他を外部に設けてもよい。
【0026】
記憶装置13には、後述する各工程をコンピュータに実行させる集水面積の自動計算プログラムが記憶されている。この集水面積の自動計算プログラムのユーザへの提供形態は特に限定されるものではなく、例えば図1に示すようにCD-ROMやDVD-ROMなどのような記録媒体Aに記録された状態でユーザに提供されてもよいし、インターネット等を介して外部サーバからダウンロード可能な形態でユーザに提供されてもよい。提供された流水方向表示プログラムを汎用のパーソナルコンピュータにインストールすることで、当該パーソナルコンピュータを集水面積の自動計算装置1として使用することが可能になる。
【0027】
尚、汎用のパーソナルコンピュータに集水面積の自動計算プログラムをインストールする際には記憶装置13にインストールすればよい。また、汎用のパーソナルコンピュータを、集水面積の自動計算プログラムがインストールされた外部サーバにアクセスさせることで、集水面積の自動計算装置1として使用することも可能であり、集水面積の自動計算プログラムのインストール場所は特に限定されるものではない。
【0028】
集水面積の自動計算装置1は、例えば道路や宅盤、宅地造成、河川、駐車場、港湾施設などの各種現況の地形及び計画を表す3次元モデル上の所定のエリアの集水面積を自動計算してユーザに提供するとともに、当該エリアにおける水の流れる方向や量を視覚的に確認可能にする装置である。集水面積の自動計算装置1は、例えば、雨水流出量(流出量Q)を求めるにあたり、路面、法面、平地の最高点、最下点を計算して3次元モデルをユーザの持っている設計情報を元に自動で区分けする。そして、区分けしたエリアごとに集水面積及び雨水流出量を表示可能にしてユーザに提示する。さらに区分けした各エリアに対して水の流れる方向を例えば矢印等で表示することができる。
【0029】
また、集水面積の自動計算プログラムは、コンピュータを以下のように動作させることにより、現況の地形及び計画を表す3次元モデル上の所定のエリアの集水面積を自動計算することが可能なプログラムである。集水面積の自動計算装置1を使用することで、現況の地形及び計画を表す3次元モデル上の所定のエリアの集水面積を自動計算する方法を実行することもできる。
【0030】
集水面積の自動計算装置1の各部の構成について、図1図2図3に示すフローチャートを参照しながら説明する。図2に示す3次元モデル取得部10aは、現況の地形及び計画を表す3次元モデルを取得する部分であり、この3次元モデルには道路モデルが含まれていてもよい。入力部10bは、ユーザによる設定値の入力等を受け付ける部分である。計算部10cは、3次元モデル取得部10aによって取得された3次元モデルに基づいて、3次元モデル上の最高点及び最下点を計算する部分である。エリア生成部10dは、計算部10cによって計算された最高点から最下点までの間の3次元モデルを所定ピッチで区分けして複数のエリアを生成する部分である。出力部10eは、エリア生成部10dによって生成されたエリアの面積を計算し、計算によって得られた面積を当該エリアの集水面積として出力する部分である。
【0031】
3次元モデル取得部10aで取得可能な3次元モデルは、任意の形式のデータとして、例えば記憶装置13、外部サーバ、CD-ROMやDVD-ROMなどのような記録媒体等(以下、これらをまとめて記憶装置13等という)に保存されている。集水面積の自動計算装置1のユーザは、操作部12を操作して所望の3次元モデルのデータを記憶装置13等から読み込む操作を行うことで、3次元モデル取得部10aが3次元モデルを取得する。記憶装置13等に複数の3次元モデルのデータが保存されている場合には、ユーザが所望の3次元モデルのデータを選択する操作を操作部12で行った後、読み込む操作を行えばよい。3次元モデルを取得する工程は、図3に示すフローチャートのステップSA1で実行される3次元モデル取得工程である。
【0032】
ステップSA1で取得された3次元モデルのデータは、集水面積の自動計算装置1の内部に一時的に保存される。図2に示す出力部10eは、一時的に保存されている3次元モデルのデータを読み込んで、図4に示す3次元表示形態、図5に示す平面表示形態、図6に示す3次元ポリゴン表示形態に変換して表示部11に表示させる。3次元表示形態で表示させるか、平面表示形態で表示させるか、それとも3次元ポリゴン表示形態で表示させるかについては、ユーザが操作部12を操作することで選択可能である。尚、図3図6において、符号101で示す部分は道路である。
【0033】
図2に示す出力部10eは、ユーザにより3次元表示形態が選択された場合には、表示部11を制御して図4に示す3次元表示形態で3次元モデルを表示させるので、ユーザは地形を立体的に把握できる。また、出力部10eは、ユーザにより平面表示形態が選択された場合には、表示部11を制御して図5に示す平面表示形態で3次元モデルを表示させるので、ユーザは地形を平面的に把握できる。また、出力部10eは、ユーザにより3次元ポリゴン表示形態が選択された場合には、表示部11を制御して図6に示す3次元ポリゴン表示形態で3次元モデルを表示させるので、ユーザは地形を3次元ポリゴンの集合体として把握できる。3次元モデルを表示部11に表示させる工程は3次元モデル表示工程である。
【0034】
3次元モデル表示工程では、表示部11に表示されている3次元モデルの一部を拡大表示させることもできる。例えば図7に示すように、3次元ポリゴン表示形態で表示されている3次元データを拡大表示させることで、細部を詳細に確認することができる。ユーザが操作部12を操作することで、拡大したい部分の選択、拡大率の選択が行えるようになっており、任意の部分を任意の拡大率で拡大できる。拡大後の縮小も可能である。また、3次元モデルを表示部11上でスクロールして表示させることも可能である。
【0035】
図7に示すように、道路101には道路中心線形101aが設定されている。この例では、道路101の両側には盛土102と、切土103とがある。図7における道路101よりも下の盛土102の間には、小段104がある。このように、盛土102、切土103及び小段104を3次元モデル上で把握することはできるが、各部の勾配の方向及び勾配の度合いについては2次元計画図面では無論のこと3次元モデル上であっても正確に把握するのが困難であった。特に、縦横断勾配の双方が複雑に絡まりあった地点の勾配は誤って把握してしまうおそれがあった。本発明は、以下の工程を経ることで、図7に示すような3次元モデル上であっても、流水方向をユーザに対して正確に把握させることができるものである。
【0036】
図3に示すフローチャートのステップSA2では、3次元モデル取得部10aが、ステップSA1で取得した3次元モデルに設計情報があるか否かを判定する。設計情報には、例えば地表面の各地点における高さ情報、道路中心線形(平面線形)情報、縦断勾配情報、横断勾配情報、道路幅員情報、すりつけ情報等が含まれている。ステップSA2でYESと判定されて3次元モデルに設計情報がある場合にはステップSA3に進み、一方、ステップSA2でNOと判定されて3次元モデルに設計情報がない場合には、後述する別のフローチャート(図14に示す)に進む。
【0037】
ステップSA3では、計算部10cが設計情報の中から、平面線形、縦断勾配及び横断勾配を取得する。これにより、3次元モデルの各地点の高さを取得できる。また、ステップSA4では、計算部10cが設計情報の中から、道路幅員情報及びすりつけ情報を取得する。これにより、道路に関する情報を取得できる。
【0038】
その後、ステップSA5では、計算部10cが、ステップSA3、SA4で取得した複数の情報に基づいて、3次元モデルの縦断方向における最高点及び最下点を計算する。縦断方向における最高点は、図8に示すように複数箇所あり、また、縦断方向における最下点は、最高点と対をなすように複数箇所ある。第1最高点と第1最下点が対をなしており、第2最高点と第2最下点が対をなしている。3次元モデルの縦断方向における最高点及び最下点を計算する際には、ステップSA3、SA4で取得した複数の情報から各地点の高さ情報を算出し、算出した高さ情報に基づいて最高点位置及び最下点位置(測点)を計算することができる。ステップSA5は、3次元モデル取得工程で取得した3次元モデルに基づいて、最高点及び最下点を計算する計算工程である。
【0039】
尚、最高点及び最下点を計算する際には、等高線を利用することもできる。計算部10cは、例えば、3次元モデルの各地点の高さ情報を取得し、同じ高さの地点同士を連結する線、即ち等高線を計算する。計算部10cは、入力部10bにより入力された等高線間隔で複数の等高線を計算する。各等高線には、高さ情報が付与されており、この高さ情報に基づいて計算部10cが縦断方向における最高点及び最下点を計算する。
【0040】
ステップSA6では、計算部10cが、ステップSA3、SA4で取得した複数の情報に基づいて、3次元モデルの横断方向における最高点及び最下点を計算する。図9のFIG.9Aでは、横断面に車道とセンターライン(「CL」で示す。以下同様。)と両路肩が存在している場合を示しており、最高点が右側の路肩の端に位置し、最下点が左側の路肩の端に位置している。FIG.9Bでは、横断面に車道とセンターラインと両路肩が存在している場合を示しており、最高点がセンターライン上に位置しており、第1最下点が左側の路肩の端に位置し、第2最下点が右側の路肩の端に位置している。FIG.9Bに示す例では、1つの最高点に対して2つの最下点が存在することになる。
【0041】
FIG.9Cでは、横断面に車道及び中分と、センターラインと両路肩が存在している場合を示しており、第1最高点が中分におけるセンターラインよりも左側に位置し、第1最高点と対になる第1最下点が左側の路肩の端に位置している。また、第2最下点が中分におけるセンターラインよりも右側に位置している。さらに、第2最高点が右側の路肩の車道寄りに位置し、第3最下点が右側の路肩の端に位置している。
【0042】
FIG.9Dでは、第1最高点が中分におけるセンターラインよりも左側に位置し、第1最高点と対になる第1最下点が左側の路肩の端に位置している。また、第2最高点が中分におけるセンターラインよりも右側に位置し、第2最高点と対になる第2最下点が右側の路肩の端に位置している。第1最高点と第2最高点とは同じ高さである。
【0043】
FIG.9Eでは、第1最高点が中分におけるセンターラインよりも左側に位置し、第1最高点と対になる第1最下点が左側の路肩の端に位置している。また、第2最高点が右側の路肩の端に位置し、第2最高点と対になる第2最下点が中分におけるセンターラインよりも右側に位置している。第2最高点は第1最高点よりも高く設定され、また、第1最高点と第2最下点とは同じ高さである。
【0044】
FIG.9Fでは、第1最高点が中分におけるセンターラインよりも左側に位置し、第1最高点と対になる第1最下点が左側の路肩の端に位置している。また、第2最高点が右側の路肩の端に位置し、第2最高点と対になる第2最下点が中分におけるセンターラインよりも右側に位置している。第2最高点は第1最高点よりも高く設定され、また、第2最下点は第1最高点よりも低く設定されている。
【0045】
3次元モデルの横断方向における最高点及び最下点を計算する際には、縦断方向の場合と同様に、ステップSA3、SA4で取得した複数の情報から各地点の高さ情報を算出し、算出した高さ情報に基づいて最高点位置及び最下点位置(測点)を計算することができる。尚、横断方向における最高点及び最下点を計算する際には、縦断方向の場合と同様に、等高線を利用することもできる。すなわち、各等高線には、高さ情報が付与されており、この高さ情報に基づいて計算部10cが横断方向における最高点及び最下点を計算する。
【0046】
ステップSA7では、エリア生成部10dが、3次元モデルの縦断方向の複数の最高点と、3次元モデルの横断方向の複数の最高点とのうち、最も高い最高点を特定する。また、エリア生成部10dが、3次元モデルの縦断方向の複数の最下点と、3次元モデルの横断方向の複数の最下点とのうち、最も低い最下点を特定する。エリア生成部10dは、特定した最高点から特定した最下点までの間の3次元モデルを縦断方向に所定ピッチで区分けして複数のエリアを生成する。
【0047】
具体的には、図10に示すように、エリア生成部10dは、特定した最高点110と、特定した最下点111を通って縦断方向に延びるとともに計画を表す計画線(または地形を表す地形線)112を取得する。図10の下側の図は上側の図の部分拡大図であり、下側の図に示すように、最高点110を起点として最下点111までの間を縦断方向に所定ピッチで区分けして複数のエリアを生成するとともに、各エリアに識別情報を付与する。この実施形態では、「j1」、「j2」、「j3」、・・・といった文字による識別情報(エリア番号という)を高い方から低い方へ順に各エリアに付与しており、この識別情報は、各エリアを特定する情報(エリア特定情報)と関連付けられて記憶装置13等に一時的に記憶される。エリア特定情報は、例えば3次元モデル上でエリアを特定可能な情報であればよく、例えば3次元座標等であってもよい。また、識別情報の種類は特に限定されるものではなく、文字のみで構成されていてもよいし、記号のみで構成されていてもよいし、文字と記号の組み合わせで構成されていてもよい。尚、最下点を起点とし、最高点までの範囲内で、3次元モデルを所定ピッチで区分けしてもよい。
【0048】
エリア生成部10dが縦断方向に区分けする際には、ユーザが入力したピッチ(所定ピッチ)で区分けする。すなわち、ユーザは、エリア生成部10dが区分けを行う前段階で、操作部12を操作してピッチを入力する。ピッチを入力する際には、例えば入力部10bが入力用ウインドウ(図示せず)を生成して表示部11に表示させる。ユーザは表示部11に表示された入力用ウインドウを見ながら、ピッチを数値(単位:m)で入力する。入力されたピッチは入力部10bによって受け付けられて記憶装置13に記憶されるとともに、エリア生成部10dに送られる。エリア生成部10dでは、入力部10bから送られたピッチで縦断方向に区分けを行う。ピッチは、例えば1m等、任意に設定することができる。
【0049】
ステップSA8では、ステップSA7で縦断方向に区分けされて生成された各エリアに対して、エリア生成部10dが横断方向の区分けを行い、さらに小さなエリアを生成する。ステップSA8で生成された各エリアには、識別情報が付与され、エリア特定情報と関連付けられて記憶装置13等に一時的に記憶される。
【0050】
エリア生成部10dが横断方向の区分けを行う際には、縦断方向に区分けされた複数のエリアに対して道路の幅員属性による区分けを行うことができる。幅員属性は、ステップSA4で取得することができ、例えば中分、車道、路肩等の情報を含んでいる。具体的には、図11に示すように左右方向(横断方向)を定義した場合、左右両側にそれぞれ盛土102、切土103が位置し、その間に左右の路肩120及び左右の車道121が位置している場合を想定する。路肩120の幅及び車道121の幅、センターラインの位置が幅員属性に含まれている。この場合、縦断方向の区分けによって生成された縦断方向の区分け線130がエリア生成部10dによって複数生成される。区分け線130は、道路中心線の法線であり、横断方向に延びている。ステップSA7、SA8は、計算工程で計算した最高点から最下点までの間の3次元モデルを所定ピッチで区分けして複数のエリアを生成するエリア生成工程である。
【0051】
エリア生成部10dが幅員属性に基づいて横断方向に区分けすることで、横断方向の区分け線131を複数生成する。図11に示す例では、横断方向の区分け線130が路肩120と車道121の境界、センターラインCL上にそれぞれ位置付けられている。尚、エリア生成部10dは、縦断方向に区分けされた複数のエリアを、横断方向の最高点から横断方向の最下点まで区分けすることにより、更に小さなエリアを生成してもよい。
【0052】
ステップSA9では、出力部10eが、ステップSA8によって区分けされたエリア特定情報と、エリア番号とを取得する。また、出力部10eは、エリア特定情報で特定されたエリアの面積を計算する。エリアの面積は、従来の3次元CADソフト等が有する面積算出機能を利用して計算できる。つまり、エリア生成部10dで生成された各エリアを雨水が流れる時の集水面積をエリア毎に自動で取得できる。計算によって得られた面積を当該エリアの集水面積として出力部10eが表示部11に出力する。これが、計算によって得られたエリアの面積を当該エリアの集水面積として出力する出力工程である。表示部11は、集水面積以外にも、エリア生成部10dによって生成されたエリアの形状と、雨水流出量も表示する。
【0053】
雨水流出量は、出力部10eが集水面積を利用して計算する。雨水流出量(Q)の計算式は周知であり、流出係数、流達時間(t)内の平均降雨強度(mm/時)、集水面積(ha)を利用して計算できる。流出係数は、工種別基礎流出係数の標準値を用いればよい。また、平均降雨強度は、地域別に設定されている降雨強度式を用いて算出できる。また、流達時間は、流入時間(分)と流下時間(分)とを合わせた時間とすることができる。流下時間は、流達距離(m)、平均流速(m/秒)を用いて算出できる。
【0054】
出力部10eは、エリア特定情報、エリア番号、集水面積及び流出量を取得した後、表示部11に表示可能な画像データを生成し、当該表示部11に出力する(ステップSA11)。表示部11は、図12に示すように、各エリア内にエリア番号と、当該エリア番号で特定されるエリアの集水面積及び流出量を表示する。一例を示すと、エリアは白線で区分け表示されており、エリア毎に付されているエリア番号は、「100j2」、「99j2」、「97j2」、「98j2」であり、例えばエリア番号「100j2」の集水面積は15.036m、流出量(Q)は0.00025m/sである。このように、エリア毎に集水面積と流出量を表示できるので、ユーザは集水面積と流出量を正確に把握できる。
【0055】
ステップSA9の後、ステップSA11に進むことなく、ステップSA10に進んでもよい。ステップSA9の後、ステップSA11とステップSA10のどちらに進むかは、ユーザが選択できる。ステップSA10に進むと、エリア毎の流水方向を計算する。具体的には、出力部10eは、ステップSA8で生成したエリア毎に最高点及び最下点を計算する。これは3次元モデルが有する高さ情報に基づいて計算できる。出力部10eは、エリア毎に最高点及び最下点を計算した後、エリア毎の最高点及び最下点に基づいて、当該エリアの相対的に低い方を示すための高低情報を生成する。高低情報としては、例えば相対的に高い方から低い方に向かう矢印等を一例として挙げることができるが、矢印に限られるものではない。
【0056】
出力部10eは、高低情報を取得した後、表示部11に表示可能な画像データを生成し、当該表示部11に出力する(ステップSA11)。表示部11は、図13に示すように、各エリア内に相対的に高い方から低い方に向かう矢印を表示させる。一例を示すと、エリアは白線で区分け表示されており、エリア内に1つの矢印が表示される。これにより、エリア毎に流水方向を表示することができる。
【0057】
ステップSA2でNOと判定された場合には、3次元モデルに設計情報が無いということであり、そのような3次元モデルには、例えば宅地、造成地、駐車場等が含まれる。ステップSA2でNOと判定されると、図14に示すフローチャートのステップSB1に進む。ステップSB1では、計算部10cが等高線を作成する。具体的には、まず、計算部10cは、3次元モデル取得部10aが取得した3次元モデルを読み込む。3次元モデルは、当該モデル内の各地点の高さ情報を含んでいるので、計算部10cは、各地点の高さ情報を取得し、同じ高さの地点同士を連結する線、即ち等高線を計算する。このとき、入力部10bにより等高線の作成間隔が入力されている場合には、計算部10cが、入力部10bにより入力された間隔で等高線を計算する。等高線は、所定間隔で計算されるので、複数本計算される。各等高線には、高さ情報が付与されている。表示部11は、等高線に付与されている高さ情報を等高線の高さとして、当該等高線と共に、表示部11の3次元モデル上に数値で表示させることができる。
【0058】
図15は、3次元ポリゴン表示形態で表示されている3次元モデル上に、計算部10cが計算した複数本の等高線125を重畳表示した例を示している。この図に示しているのは一例であり、実際の等高線の形状は複雑になることがあるとともに、勾配が急になれば等高線125の密度が高くなったり、勾配が緩ければ等高線125の密度が低くなったりする。等高線125の密度は、単位面積あたりの等高線125の本数で表すことができる。
【0059】
図16は、宅地、造成地、駐車場等の計画3次元モデルを示しており、図17は、図16の計画3次元モデル上に等高線を重畳表示している。
【0060】
ステップSB2では、計算部10cが、隣り合う等高線の高さを比較して最高点及び最下点を検出する。すなわち、計算部10cは、複数本の等高線125のうち、隣合う等高線125の高低関係を判別する部分であり、まず、隣合う2本の等高線125を任意に特定する。計算部10cは、特定した2本の等高線125にそれぞれ付与されている高さ情報に基づいて、2本の等高線125のうち、どちらが高いか、またはどちらが低いかを判別する。1つのペアの判別が終わると、別の隣り合う等高線125の高低関係を同様にして判別する。これを繰り返すことにより、図17に示す全ての等高線125の高低関係を判別できる。高低関係の判別結果は、記憶装置13に一時的に保存される。上述した判別方法は一例であり、他の方法を用いて隣合う等高線125の高低関係を判別してもよい。計算部10cは、全ての等高線125の高低関係を判別した後、最も高い等高線125上の点を最高点とし、最も低い等高線125上の点を最下点とする。図17では第1最下点と第2最下点が検出された例を示している。
【0061】
ステップSB3に進むと、エリア生成部10dが、各等高線の折れ点を検出し、折れ点を結ぶ線(稜線または谷線)を計算する(図18参照)。計算された稜線または谷線はエリアを区分けする際の分割線となる。
【0062】
ステップSB4では、エリア生成部10dが、ステップSB3で計算された稜線または谷線を分割線として、計画3次元モデルを複数のエリアに区分けする。エリア番号(エリア1、エリア2等)は、エリア特定情報と関連付けられて記憶装置13等に一時的に記憶される。区分けの際、ユーザが手入力して複数のエリアに区分けしてもよい。
【0063】
ステップSB5では、出力部10eが、各エリアの集水面積、高低差、流出量(Q)を取得する。各エリアの高低差は、等高線の情報に基づいて取得できる。出力部10eは、エリア特定情報、エリア番号、集水面積及び流出量を取得した後、表示部11に表示可能な画像データを生成し、当該表示部11に出力する(ステップSB7)。表示部11は、図20に示すように、各エリア内にエリア番号と、当該エリア番号で特定されるエリアの集水面積及び流出量を表示する。
【0064】
ステップSB5の後、ステップSB7に進むことなく、ステップSB6に進んでもよい。ステップSB5の後、ステップSB7とステップSB6のどちらに進むかは、ユーザが選択できる。ステップSB6に進むと、エリア毎の流水方向を計算する。具体的には、出力部10eは、ステップSB4で区分けしたエリア毎に最高点及び最下点を計算する。これは等高線の情報に基づいて計算できる。出力部10eは、エリア毎に最高点及び最下点を計算した後、エリア毎の最高点及び最下点に基づいて、当該エリアの相対的に低い方を示すための高低情報を生成する。高低情報としては、例えば相対的に高い方から低い方に向かう矢印を一例として挙げることができる。
【0065】
出力部10eは、高低情報を取得した後、表示部11に表示可能な画像データを生成し、当該表示部11に出力する(ステップSB7)。表示部11は、図21に示すように、各エリア内に相対的に高い方から低い方に向かう矢印を表示させる。
【0066】
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、本実施形態によれば、現況の地形及び計画を表す3次元モデルを3次元モデル取得部10aが取得すると、取得した3次元モデルには高さ情報が含まれているので、計算部10cが3次元モデルの高さ情報に基づいて当該3次元モデル上の最高点及び最下点を計算することができる。エリア生成部10dは、3次元モデル上の最高点を起点とし、最下点までの範囲内で、3次元モデルを所定ピッチで区分けして複数のエリアを生成する。
【0067】
これによって生成された複数のエリアの面積をエリアごとに出力部10eが計算する。計算によって得られた面積が当該エリアの集水面積として出力されるので、ユーザは、3次元モデルの入力、ピッチの指定等を行うだけで、エリアごとに集水面積及び流水量を正確にかつ短時間で把握できる。
【0068】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0069】
以上説明したように、本開示に係る集水面積の自動計算装置及び集水面積の自動計算プログラムは、例えば道路や宅盤、宅地造成、河川、駐車場、港湾施設などの各種設計に用いることができる。
【符号の説明】
【0070】
1 集水面積の自動計算装置
10a 3次元モデル取得部
10b 入力部
10c 計算部
10d エリア生成部
10e 出力部
11 表示部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
【手続補正書】
【提出日】2023-07-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
現況の地形及び計画を表す3次元モデル上の所定のエリアの集水面積を自動計算する集水面積の自動計算装置であって、
前記3次元モデルを取得する3次元モデル取得部と、
前記3次元モデル取得部によって取得された前記3次元モデルに基づいて、最高点及び最下点を計算する計算部と、
前記計算部によって計算された前記最高点から前記最下点までの間の前記3次元モデルを計画線に沿って所定ピッチで区分けして複数のエリアを生成するエリア生成部と、
前記エリア生成部によって生成された前記エリアの面積を計算し、計算によって得られた面積を当該エリアの集水面積として出力する出力部とを備え
前記出力部は、前記集水面積を利用して雨水流出量を計算して出力することを特徴とする集水面積の自動計算装置。
【請求項2】
請求項1に記載の集水面積の自動計算装置において、
前記エリア生成部によって生成された前記エリアと、前記出力部から出力された集水面積とを表示する表示部を備えていることを特徴とする集水面積の自動計算装置。
【請求項3】
請求項に記載の集水面積の自動計算装置において、
前記出力部は、前記集水面積を利用して雨水流出量を計算して前記表示部に出力し、
前記表示部は、前記出力部から出力された雨水流出量を表示することを特徴とする集水面積の自動計算装置。
【請求項4】
請求項に記載の集水面積の自動計算装置において、
前記出力部は、前記エリア毎に最高点及び最下点を計算し、前記エリア毎の最高点及び最下点に基づいて当該エリアの相対的に低い方を示すための高低情報を生成して出力し、
前記表示部は、前記出力部から出力された前記高低情報に基づいた矢印表示を前記3次元モデルと共に表示することを特徴とする集水面積の自動計算装置。
【請求項5】
請求項に記載の集水面積の自動計算装置において、
前記表示部は、前記出力部から出力された高低情報に基づいて相対的に低い方を示す高低表示を前記3次元モデルと共に表示することを特徴とする集水面積の自動計算装置。
【請求項6】
現況の地形及び計画を表す3次元モデル上の所定のエリアの集水面積を自動計算する集水面積の自動計算プログラムであって、
前記3次元モデルを取得する3次元モデル取得工程と、
前記3次元モデル取得工程で取得した前記3次元モデルに基づいて、最高点及び最下点を計算する計算工程と、
前記計算工程で計算した前記最高点から前記最下点までの間の前記3次元モデルを計画線に沿って所定ピッチで区分けして複数のエリアを生成するエリア生成工程と、
前記エリア生成工程で生成した前記エリアの面積を計算し、計算によって得られた面積を当該エリアの集水面積として出力する出力工程とをコンピュータに実行させ
前記出力工程では、前記集水面積を利用して流出量を計算して出力することを特徴とする集水面積の自動計算プログラム。
【手続補正書】
【提出日】2023-10-02
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
現況の地形及び計画を表す3次元モデル上の所定のエリアの雨水流出量を自動計算する動計算装置であって、
前記3次元モデルを取得する3次元モデル取得部と、
前記3次元モデル取得部によって取得された前記3次元モデルに基づいて、最高点及び最下点を計算する計算部と、
前記計算部によって計算された前記最高点から前記最下点までの間の前記3次元モデルを、前記最高点から前記最下点まで縦断方向に延びる車道の計画線に沿って縦断方向に所定ピッチで区分けするとともに前記車道の横断方向に所定の属性で区分けして複数のエリアを生成するエリア生成部と、
前記エリア生成部によって生成された前記エリアの面積を計算し、計算によって得られた面積を出力する出力部とを備え、
前記出力部は、前記計算によって得られた面積を利用して雨水流出量を計算して出力することを特徴とする動計算装置。
【請求項2】
請求項1に記載の動計算装置において、
前記エリア生成部によって生成された前記エリアと、前記出力部から出力された前記面積とを表示する表示部を備えていることを特徴とする動計算装置。
【請求項3】
請求項2に記載の動計算装置において、
前記出力部は、前記雨水流出量を前記表示部に出力し、
前記表示部は、前記出力部から出力された雨水流出量を表示することを特徴とする動計算装置。
【請求項4】
請求項2に記載の動計算装置において、
前記出力部は、前記エリア毎に最高点及び最下点を計算し、前記エリア毎の最高点及び最下点に基づいて当該エリアの相対的に低い方を示すための高低情報を生成して出力し、
前記表示部は、前記出力部から出力された前記高低情報に基づいた矢印表示を前記3次元モデルと共に表示することを特徴とする動計算装置。
【請求項5】
請求項4に記載の動計算装置において、
前記表示部は、前記出力部から出力された高低情報に基づいて相対的に低い方を示す高低表示を前記3次元モデルと共に表示することを特徴とする動計算装置。
【請求項6】
現況の地形及び計画を表す3次元モデル上の所定のエリアの雨水流出量を自動計算する動計算プログラムであって、
前記3次元モデルを取得する3次元モデル取得工程と、
前記3次元モデル取得工程で取得した前記3次元モデルに基づいて、最高点及び最下点を計算する計算工程と、
前記計算工程で計算した前記最高点から前記最下点までの間の前記3次元モデルを、前記最高点から前記最下点まで縦断方向に延びる車道の計画線に沿って縦断方向に所定ピッチで区分けするとともに前記車道の横断方向に所定の属性で区分けして複数のエリアを生成するエリア生成工程と、
前記エリア生成工程で生成した前記エリアの面積を計算し、計算によって得られた面積を出力する出力工程とをコンピュータに実行させ、
前記出力工程では、前記計算によって得られた面積を利用して雨水流出量を計算して出力することを特徴とする動計算プログラム。