(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126739
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】表面処理方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20240912BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20240912BHJP
B25J 13/08 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
B41J2/01 109
B05D3/00 D
B05D3/00 C
B25J13/08 A
B41J2/01 451
B41J2/01 401
B41J2/01 305
B41J2/01 303
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023035334
(22)【出願日】2023-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】中島 吉紀
(72)【発明者】
【氏名】松浦 佑一郎
(72)【発明者】
【氏名】小林 一
【テーマコード(参考)】
2C056
3C707
4D075
【Fターム(参考)】
2C056EA07
2C056EB04
2C056EB13
2C056EB36
2C056EC03
2C056EC07
2C056EC11
2C056EC12
2C056EC35
2C056FB09
2C056HA11
2C056HA13
2C056HA29
2C056HA38
2C056HA58
3C707AS13
3C707BS12
3C707KS03
3C707KS04
3C707KT03
3C707KT06
3C707LS15
3C707LV02
3C707LV14
3C707LV19
3C707NS08
4D075AA01
4D075AA37
4D075AA51
4D075AA78
4D075AA81
4D075AA85
4D075AC06
4D075AC09
4D075AC71
4D075AC86
4D075AC88
4D075AC91
4D075AC93
4D075DA23
4D075EA05
4D075EA35
(57)【要約】
【課題】ワークの所望位置に高精度に表面処理を行う。
【解決手段】立体的なワークを固定するための固定部とマーカーとを有するワークトレイと、ワーク移動機構と、表面処理機構と、3次元カメラと、を用いた表面処理方法は、固定部によって互いの位置関係が固定されたワークおよびマーカーを3次元カメラによって撮像することにより、第1座標系の第1形状データを取得する第1ステップと、第1形状データの示すマーカーの形状に基づいて第1形状データをワークトレイに対応付けられた第2座標系の第2形状データに変換する第2ステップと、ワーク移動機構がワークトレイの少なくとも一部を支持した状態で第2形状データに基づいてワーク移動機構を動作させる第3ステップと、第2形状データに基づいて表面処理機構を動作させる第4ステップと、をこの順に含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
立体的なワークを固定するための固定部とマーカーとを有するワークトレイと、前記ワークトレイの少なくとも一部を支持するワーク移動機構と、前記ワークの表面を処理する表面処理機構と、3次元的な形状データを取得可能な3次元カメラと、を用いた表面処理方法であって、
前記固定部によって前記ワークトレイおよび前記ワークの互いの位置関係が固定された状態で、前記ワークおよび前記マーカーを前記3次元カメラによって撮像することにより、前記3次元カメラによって規定される第1座標系における前記ワークおよび前記マーカーの形状を示す第1形状データを取得する第1ステップと、
前記第1形状データの示す前記マーカーの形状に基づいて、前記第1形状データを、前記ワークトレイに対応付けられた第2座標系における前記ワークおよび前記マーカーの形状を示す第2形状データに変換する第2ステップと、
前記ワーク移動機構が前記ワークトレイの少なくとも一部を支持した状態で、前記第2形状データに基づいて、前記ワーク移動機構を動作させることにより、前記ワークの位置を調整する第3ステップと、
前記第2形状データに基づいて、前記表面処理機構を動作させることにより、前記ワークに対する表面処理を実行する第4ステップと、をこの順に含む、
ことを特徴とする表面処理方法。
【請求項2】
前記第2形状データに基づいて、前記ワーク上の表面処理を実行すべき領域に関するデータである処理領域データを生成する第5ステップを前記第2ステップと前記第3ステップとの間に含み、
前記第3ステップにおける前記ワーク移動機構の動作と、前記第4ステップにおける前記表面処理機構の動作と、のそれぞれは、前記処理領域データに基づいて実行される、
ことを特徴とする請求項1に記載の表面処理方法。
【請求項3】
前記第4ステップにおける前記表面処理機構の動作を規定する経路データを前記第2形状データと前記処理領域データとの両方に基づいて生成する第6ステップを前記第5ステップと前記第3ステップとの間に含み、
前記第4ステップにおける前記表面処理機構の動作は、前記経路データに基づいて実行される、
ことを特徴とする請求項2に記載の表面処理方法。
【請求項4】
前記経路データおよび前記処理領域データのうちの一方または両方と、前記表面処理機構の動作において基準となる位置に関するデータである基準位置データと、に基づいて、前記第3ステップにおける前記ワーク移動機構の動作を規定する位置調整データを生成する第7ステップを前記第6ステップと前記第3ステップとの間に含み、
前記第3ステップにおける前記ワーク移動機構の動作は、前記位置調整データに基づいて実行される、
ことを特徴とする請求項3に記載の表面処理方法。
【請求項5】
前記ワークトレイは、
前記固定部が設けられた第1トレイ部と、
前記マーカーが設けられた第2トレイ部と、を含み、
前記第1トレイ部と前記第2トレイ部とは、互いに着脱可能に固定され、
前記第3ステップおよび前記第4ステップのそれぞれでは、前記第2トレイ部を用いずに前記第1トレイ部を用いる、
ことを特徴とする請求項1に記載の表面処理方法。
【請求項6】
前記表面処理機構は、
複数のノズルから液体を噴射するヘッドと、
前記ヘッドを移動するヘッド移動機構と、を備え、
前記第4ステップにおいて、前記ヘッドは、前記経路データに基づく前記ヘッド移動機構の動作によって、前記ワークの表面に対して所定の間隔を保って走査される、
ことを特徴とする請求項3に記載の表面処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、表面処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、立体的なワークの表面に印刷、研磨または塗装等の表面処理を行う表面処理方法が知られている。例えば、特許文献1に記載の技術は、多関節ロボットを用いて、インクジェット方式によりインクを吐出するヘッドを立体的なワークの表面に対して移動させながら印刷を行う。特許文献1では、ワークの3次元形状を示すCAD(computer-aided design)データに基づいて生成された経路データに基づいて、多関節ロボットがヘッドを移動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術では、ワークのCADデータが存在しない場合、経路データを生成することが難しい。また、ワークのCADデータが存在したとしても、ワークの製造誤差等により、実際のワークの形状がCADデータの示す形状と異なる場合があったり、ワークの設置時の位置および姿勢の誤差が生じる場合があったりする。これらの場合、特許文献1に記載の技術では、ワーク上の所望位置に正確に印刷することが難しいという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するために、本開示の表面処理方法の一態様は、立体的なワークを固定するための固定部とマーカーとを有するワークトレイと、前記ワークトレイの少なくとも一部を支持するワーク移動機構と、前記ワークの表面を処理する表面処理機構と、3次元的な形状データを取得可能な3次元カメラと、を用いた表面処理方法であって、前記固定部によって前記ワークトレイおよび前記ワークの互いの位置関係が固定された状態で、前記ワークおよび前記マーカーを前記3次元カメラによって撮像することにより、前記3次元カメラによって規定される第1座標系を用いて前記ワークおよび前記マーカーの形状を示す第1形状データを取得する第1ステップと、前記第1形状データの示す前記マーカーの形状に基づいて、前記第1形状データを、前記ワークトレイに対応付けられた第2座標系を用いて前記ワークおよび前記マーカーの形状を示す第2形状データに変換する第2ステップと、前記ワーク移動機構が前記ワークトレイの少なくとも一部を支持した状態で、前記第2形状データに基づいて、前記ワーク移動機構を動作させることにより、前記ワークの位置を調整する第3ステップと、前記第2形状データに基づいて、前記表面処理機構を動作させることにより、前記ワークに対する表面処理を実行する第4ステップと、をこの順に含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】実施形態に係る表面処理方法に用いるシステムの概略を示す斜視図である。
【
図2】実施形態に係る表面処理方法に用いるシステムの電気的な構成を示すブロック図である。
【
図4】ヘッドユニットの概略構成を示す斜視図である。
【
図6】ワーク移動機構に対して第1トレイ部を取り付けるための治具を説明するための図である。
【
図7】経路データおよび位置調整データの生成に用いるコンピューターを示す図である。
【
図8】実施形態に係る表面処理方法を示すフローチャートである。
【
図9】第1ステップにおける第1形状データの取得を説明するための図である。
【
図10】第2ステップにおける第2形状データの生成を説明するための図である。
【
図11】第5ステップにおける処理領域データの生成を説明するための図である。
【
図12】第6ステップにおける経路データの生成を説明するための図である。
【
図13】第6ステップにおける経路データの生成を説明するための図である。
【
図14】第7ステップにおける位置調整データの生成を説明するための図である。
【
図15】第3ステップにおけるワーク位置の調整と第4ステップにおける表面処理とを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、添付図面を参照しながら本開示に係る好適な実施形態を説明する。なお、図面において各部の寸法および縮尺は実際と適宜に異なり、理解を容易にするために模式的に示している部分もある。また、本開示の範囲は、以下の説明において特に本開示を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られない。
【0008】
以下の説明は、便宜上、互いに交差するX軸、Y軸およびZ軸を適宜に用いて行う。また、以下では、X軸に沿う一方向がX1方向であり、X1方向と反対の方向がX2方向である。同様に、Y軸に沿って互いに反対の方向がY1方向およびY2方向である。また、Z軸に沿って互いに反対の方向がZ1方向およびZ2方向である。
【0009】
ここで、X軸、Y軸およびZ軸は、後述のヘッド移動機構3およびワーク移動機構4を含む印刷装置1が設置される空間に設定されるワールド座標系の座標軸である。典型的には、Z軸が鉛直な軸であり、Z2方向が鉛直方向での下方向に相当する。ヘッド移動機構3およびワーク移動機構4のそれぞれの基部を基準とするベース座標系は、キャリブレーションにより当該ワールド座標系に対応付けられる。以下では、便宜上、ワールド座標系をロボット座標系として用いてヘッド移動機構3およびワーク移動機構4のそれぞれの動作を制御する場合が例示される。以下では、当該ロボット座標系を第3座標系CS3という場合がある。
【0010】
なお、Z軸は、鉛直な軸でなくともよい。また、X軸、Y軸およびZ軸は、典型的には互いに直交するが、これに限定されず、直交しない場合もある。例えば、X軸、Y軸およびZ軸が80°以上100°以下の範囲内の角度で互いに交差すればよい。
【0011】
1.実施形態
1-1.表面処理方法に用いるシステムの概略
図1は、実施形態に係る表面処理方法に用いるシステム100の概略を示す斜視図である。システム100は、立体的なワークWの表面にインクジェット方式により印刷を行う。ここで、システム100は、ワークWの3次元形状を計測する機能を有しており、この計測により取得される3次元的な形状データに基づいて、ワークWの設置姿勢を調整したり、ワークWへ印刷経路を設定したりする。なお、印刷は、表面処理の一例であり、以下では、表面処理として印刷を行う態様が例示される。
【0012】
図1に示す例では、ワークWは、長球状をなすラグビーボールである。なお、ワークWの形状または大きさ等の態様は、
図1に示す例に限定されず、任意である。
【0013】
図1に示すように、システム100は、ワークトレイ2と印刷装置1と3次元カメラ7とを有する。以下、まず、
図1に基づいてシステム100の各部の概略を順に説明する。
【0014】
ワークトレイ2は、ワークWを支持する台である。3次元カメラ7によるワークWの3次元形状の計測時には、3次元カメラ7の撮像可能範囲内において、ワークトレイ2が任意の位置および姿勢で載置される。一方、印刷装置1によるワークWへの印刷時には、ワークトレイ2の少なくとも一部が後述のワーク移動機構4に支持される。
【0015】
本実施形態では、ワークトレイ2が第1トレイ部21と第2トレイ部22とを有する。第1トレイ部21および第2トレイ部22は、互いに位置決めされた状態で着脱可能に固定される。ここで、第1トレイ部21には、ワークWを固定するための固定部FXが設けられる。3次元カメラ7によるワークWの3次元形状の計測時は、第1トレイ部21が第2トレイ部22に取り付けた状態で固定部FXによりワークWを支持する。一方、印刷装置1によるワークWへの印刷時には、第1トレイ部21が第2トレイ部22から取り外された状態でワーク移動機構4に支持されるとともに固定部FXによりワークWを支持する。第2トレイ部22には、マーカーMKが設けられる。マーカーMKは、3次元カメラ7によりワークWとともに撮像され、その撮像結果に基づいてワークトレイ2に対するワークWの位置および姿勢を把握するのに用いられる。ワークトレイ2の詳細については、後に
図5および
図6に基づいて説明する。
【0016】
印刷装置1は、ヘッド移動機構3とワーク移動機構4とヘッドユニット5とを有する。ここで、ヘッド移動機構3およびヘッドユニット5は、ワークWの表面を処理する表面処理機構10を構成する。本実施形態の表面処理機構10は、インクジェット方式によりワークWの表面に印刷を行う印刷機構である。
【0017】
ヘッド移動機構3は、第3座標系CS3で表される空間におけるヘッドユニット5の位置および姿勢を変化させるロボットである。
図1に示す例では、ヘッド移動機構3は、いわゆる6軸の垂直多関節ロボットであり、ヘッド移動機構3のアームの先端には、エンドエフェクターとしてヘッドユニット5が装着される。なお、ヘッド移動機構3の構成については、
図3に基づいて後述する。
【0018】
ヘッドユニット5は、「液体」の一例であるインクをワークWに向けて吐出するヘッド5aを有するアセンブリーである。本実施形態では、ヘッドユニット5は、ヘッド5aのほか、圧力調整弁5bおよび硬化用光源5cを有する。ヘッドユニット5の構成については、
図4に基づいて後述する。
【0019】
当該インクとしては、特に限定されないが、本実施形態では、紫外線硬化性インクが用いられる。なお、当該インクは、色材を含むインクに限定されず、例えば、配線等を形成するための金属粒子等の導電性粒子を分散質として含むインクでもよいし、クリアインクでもよいし、ワークWの表面処理のための処理液でもよい。
【0020】
以上のように、表面処理機構10は、後述の複数のノズルNからインクを噴射するヘッド5aと、ヘッド5aを移動するヘッド移動機構3と、を備える。
【0021】
ワーク移動機構4は、第3座標系CS3で表される空間におけるワークWの位置および姿勢を変化させるロボットである。
図1に示す例では、ワーク移動機構4は、6軸の垂直多関節ロボットであり、ワーク移動機構4のアームの先端には、エンドエフェクターとして、治具40がネジ止め等により固定された状態で装着される。治具40は、第1トレイ部21を所定の位置および姿勢に位置決めした状態で着脱可能に支持する構造体である。治具40の詳細については、後に
図6に基づいて説明する。
【0022】
なお、ワーク移動機構4は、装着されるエンドエフェクターが異なる以外は、ヘッド移動機構3と同様に構成される。ただし、ヘッド移動機構3およびワーク移動機構4は、互いに同一構成でも異なる構成でもよい。また、ヘッド移動機構3およびワーク移動機構4の関節数が互いに異なってもよい。
【0023】
3次元カメラ7は、対象となる立体物の3次元形状を計測する装置であり、ワークトレイ2に固定されたワークWをワークトレイ2と一括して撮像する。3次元カメラ7は、対象となる立体物の3次元的な形状データを取得可能であればよく、特に限定されないが、3次元センサーまたはビジョンセンサーとも称される各種センサーである。
【0024】
ここで、3次元カメラ7は、三角測量の原理に基づくパッシブセンサーまたはアクティブセンサー等のセンサーであってもよいし、同軸測量の原理に基づく焦点利用型または飛行時間法(TOF:Time Of Flight)等のセンサーであってもよい。三角測量の原理に基づくセンサーは、互いに位置の異なる2つのカメラで対象物を撮像し、当該2つのカメラの視差を用いて対象物表面の各部の深度を計算することにより、対象物の3次元形状を計測する。三角測量の原理に基づくパッシブセンサーの方式としては、例えば、2眼視、3眼視またはマルチベースラインステレオ法等が挙げられる。三角測量の原理に基づくアクティブセンサーの方式としては、例えば、スポット光投影法、スリット投影法、空間コード化法、ランダムドットステレオ法または位相シフト法等のアクティブステレオ法、また、モアレ法または照度差ステレオ法等が挙げられる。同軸測量の原理に基づくセンサーは、カメラから光を対象物に照射し、対象物からの反射光が戻るまでの時間に基づいて対象物表面の各部の深度を計算することにより、対象物の3次元形状を計測する。同軸測量の原理に基づく焦点利用型のセンサーの方式としては、例えば、Depth from FocusまたはDepth from Defocus等が挙げられる。同軸測量の原理に基づく飛行時間法のセンサーの方式としては、例えば、時間差計測または位相差計測等が挙げられる。
【0025】
このような3次元カメラ7は、図示しないが、例えば、撮像光学系および撮像素子を含む。当該撮像光学系は、少なくとも1つの撮像レンズを含む光学系であり、プリズム等の各種の光学素子を含んでもよいし、ズームレンズまたはフォーカスレンズ等を含んでもよい。当該撮像素子は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサーまたはCMOS(Complementary MOS)イメージセンサー等である。なお、3次元カメラ7は、撮像範囲に向けて光を出射する照明するLED(light emitting diode)等の発光素子を含む光源を有してもよい。また、3次元カメラ7自体が、画像処理機能を有している場合は、撮像の対象となる物体のCADデータをコンピューター13に対して出力することができる。
【0026】
ここで、3次元カメラ7には、3軸の撮像座標系が後述の第1座標系CS1として設定される。第1座標系CS1は、前述の第3座標系CS3とキャリブレーションにより対応付けされてもよい。そして、3次元カメラ7は、第1座標系CS1における対象の物体の3次元形状を示す形状データを生成する。
【0027】
図1に示す例では、3次元カメラ7が柱状の支持体7aに支持される。なお、支持体7aの位置、形状および大きさ等の態様は、
図1に示す例に限定されず任意である。また、支持体7aは、必要に応じて設けられ、省略されてもよい。また、3次元カメラ7の設置形態は、ワークWを支持した状態のワークトレイ2を撮像可能であればよく、支持体7aに支持される態様に限定されず、例えば、ヘッド移動機構3またはワーク移動機構4に支持されてもよいし、ヘッド移動機構3およびワーク移動機構4とは異なる多関節ロボットまたはコンベア等の移動機構に支持されてもよい。また、3次元カメラ7による撮像は、人手により行われてもよい。
【0028】
1-2.立体物印刷装置の電気的な構成
図2は、実施形態に係る表面処理方法に用いるシステム100の電気的な構成を示すブロック図である。
図2では、システム100の構成要素のうち、電気的な構成要素が示される。
【0029】
図2に示すように、システム100は、前述の構成要素のほか、コントローラー11と制御モジュール12とコンピューター13とを有する。以下、これらを順に説明する。
【0030】
なお、
図2に示す電気的な各構成要素は、適宜に分割されてもよいし、一部が他の構成要素に含まれてもよいし、他の構成要素と一体で構成されてもよい。例えば、コントローラー11または制御モジュール12の機能の一部または全部は、コンピューター13により実現されてもよいし、LAN(Local Area Network)またはインターネット等のネットワークを介してコントローラー11に接続されるPC(personal computer)等の他の外部装置により実現されてもよい。
【0031】
コントローラー11は、ヘッド移動機構3およびワーク移動機構4の駆動を制御するロボットコントローラーである。コントローラー11は、ヘッド移動機構3およびワーク移動機構4の駆動を制御する機能のほか、ヘッドユニット5でのインクの吐出動作をヘッド移動機構3の動作に同期させるための信号D3を生成する機能を有する。コントローラー11は、記憶回路11aと処理回路11bとを有する。
【0032】
記憶回路11aは、処理回路11bが実行する各種プログラムと、処理回路11bが処理する各種データと、を記憶する。なお、記憶回路11aの一部または全部は、処理回路11bに含まれてもよい。
【0033】
記憶回路11aには、経路データDrと位置調整データDpとが記憶される。
【0034】
経路データDrは、ヘッド移動機構3の動作の制御に用いられ、印刷動作の実行時にヘッド5aの移動すべき経路におけるヘッド5aの目標位置および目標姿勢を示す情報である。ここで、ヘッド5aの位置および姿勢は、ヘッド移動機構3の後述のツールセンターポイントTCPの位置および姿勢で定義される。したがって、経路データDrは、ツールセンターポイントTCPの目標位置を示す位置情報と、ツールセンターポイントTCPの目標姿勢を示す姿勢情報と、を含む。ツールセンターポイントTCPは、ヘッド5aに対する位置関係を固定した仮想的な点であり、ヘッド5aから離れた位置となる場合がある。本実施形態では、当該位置情報および当該姿勢情報が後述の第2座標系CS2において目標位置を示す複数の座標値とこれに対応する目標姿勢を示す複数のベクトルとで表される。経路データDrの生成については、後に詳述する。
【0035】
位置調整データDpは、ワーク移動機構4の動作の制御に用いられ、印刷動作の実行時におけるワークWの目標位置および目標姿勢を示す情報である。ここで、ワークWの位置および姿勢は、ワーク移動機構4のツールセンターポイントの位置および姿勢で定義される。したがって、位置調整データDpは、当該ツールセンターポイントの目標位置を示す位置情報と、当該ツールセンターポイントの目標姿勢を示す姿勢情報と、を含む。当該ツールセンターポイントは、ワークWに対する位置関係を固定した仮想的な点であり、ワークWから離れた位置となる場合がある。本実施形態では、当該位置情報および当該姿勢情報が第3座標系CS3において目標位置を示す複数の座標値とこれに対応する目標姿勢を示す複数のベクトルとで表される。位置調整データDpの生成については、後に詳述する。
【0036】
処理回路11bは、経路データDrに基づいてヘッド移動機構3のアーム駆動機構3aの動作を制御するとともに、信号D3を生成する。また、処理回路11bは、位置調整データDpに基づいてワーク移動機構4のアーム駆動機構4aの動作を制御する。
【0037】
アーム駆動機構3aは、ヘッド移動機構3の各関節を駆動するためのモーターと、ヘッド移動機構3の各関節の回転角度を検出するエンコーダーと、を有する。同様に、アーム駆動機構4aは、ワーク移動機構4の各関節を駆動するためのモーターと、ワーク移動機構4の各関節の回転角度を検出するエンコーダーと、を有する。
【0038】
処理回路11bは、経路データDrの示すヘッド5aの位置および姿勢をヘッド移動機構3の各関節の回転角度および回転速度等の動作量に変換する演算である逆運動学計算を行う。そして、処理回路11bは、当該各関節の実際の回転角度および回転速度等の動作量が前述の演算結果となるように、アーム駆動機構3aの各エンコーダーからの出力D1に基づいて、制御信号Sk1を出力する。制御信号Sk1は、アーム駆動機構3aのモーターの駆動を制御する。
【0039】
同様に、処理回路11bは、位置調整データDpの示すワークWの位置および姿勢をワーク移動機構4の各関節の回転角度および回転速度等の動作量に変換する演算である逆運動学計算を行う。そして、処理回路11bは、当該各関節の実際の回転角度および回転速度等の動作量が前述の演算結果となるように、アーム駆動機構4aの各エンコーダーからの出力D2に基づいて、制御信号Sk2を出力する。制御信号Sk2は、アーム駆動機構4aのモーターの駆動を制御する。
【0040】
さらに、処理回路11bは、アーム駆動機構3aの複数のエンコーダーのうちの少なくとも1つからの出力D1に基づいて、信号D3を生成する。例えば、処理回路11bは、当該複数のエンコーダーのうちの1つからの出力D1が所定値となるタイミングのパルスを含むトリガー信号を信号D3として生成する。
【0041】
制御モジュール12は、コントローラー11に通信可能に接続され、ヘッドユニット5を制御する回路モジュールである。制御モジュール12は、コントローラー11から出力される信号D3とコンピューター13からの印刷データとに基づいて、ヘッドユニット5でのインクの吐出動作を制御する。制御モジュール12は、タイミング信号生成回路12aと電源回路12bと制御回路12cと駆動信号生成回路12dとを有する。
【0042】
タイミング信号生成回路12aは、信号D3に基づいてタイミング信号PTSを生成する。タイミング信号生成回路12aは、例えば、信号D3の検出を契機としてタイミング信号PTSの生成を開始するタイマーで構成される。
【0043】
電源回路12bは、図示しない商用電源から電力の供給を受け、所定の各種電位を生成する。生成した各種電位は、制御モジュール12およびヘッドユニット5の各部に適宜に供給される。例えば、電源回路12bは、電源電位VHVとオフセット電位VBSとを生成する。オフセット電位VBSは、ヘッドユニット5に供給される。また、電源電位VHVは、駆動信号生成回路12dに供給される。
【0044】
制御回路12cは、タイミング信号PTSに基づいて、制御信号SIと波形指定信号dComとラッチ信号LATとクロック信号CLKとチェンジ信号CNGとを生成する。これらの信号は、タイミング信号PTSに同期する。これらの信号のうち、波形指定信号dComは、駆動信号生成回路12dに入力され、それ以外の信号は、ヘッドユニット5のスイッチ回路5dに入力される。
【0045】
制御信号SIは、ヘッドユニット5のヘッド5aが有する駆動素子の動作状態を指定するためのデジタルの信号であり、例えば、当該駆動素子に対応するノズルからインクを吐出するか否かを指定したり、当該ノズルから吐出されるインクの量を指定したりする。波形指定信号dComは、駆動信号Comの波形を規定するためのデジタル信号である。ラッチ信号LATおよびチェンジ信号CNGは、制御信号SIと併用され、当該駆動素子の駆動タイミングを規定することにより、当該ノズルからのインクの吐出タイミングを規定する。クロック信号CLKは、タイミング信号PTSに同期した基準となるクロック信号である。
【0046】
駆動信号生成回路12dは、ヘッドユニット5のヘッド5aの有する各駆動素子を駆動するための駆動信号Comを生成する回路である。ここで、駆動信号Comに含まれる波形のうち、スイッチ回路5dを介して、当該圧電素子311に実際に供給される波形の信号が駆動パルスPDである。
【0047】
コンピューター13は、3次元カメラ7、コントローラー11および制御モジュール12のそれぞれに通信可能に接続され、3次元カメラ7の動作を制御する機能と、コントローラー11に経路データDrおよび位置調整データDp等の情報を供給する機能と、制御モジュール12に印刷データImg等の情報を供給する機能と、を有する。コンピューター13の詳細については、後述の
図7に基づいて後述する。
【0048】
1-3.ヘッド移動機構の構成
図3は、ヘッド移動機構3の斜視図である。以下、
図3に基づいて、ヘッド移動機構3の構成を説明する。なお、ワーク移動機構4の構成については、装着されるエンドエフェクターが異なる以外は、ヘッド移動機構3と同様であるため、その説明を省略する。ただし、既述のように、ヘッド移動機構3およびワーク移動機構4の構成が互いに異なってもよい。
【0049】
図3に示すように、ヘッド移動機構3は、基部310と、アーム320と、を有する。
【0050】
基部310は、アーム320を支持する台である。
図3に示す例では、基部310は、図示しない床または台等の設置面に対してネジ止め等により固定される。
【0051】
アーム320は、基部310に取り付けられる基端と、当該基端に対して3次元的に位置および姿勢を変化させる先端と、を有する6軸のロボットアームである。具体的には、アーム320は、アーム321、322、323、324、325および326を有し、これらがこの順に基部310から連結される。アーム326は、アーム325に対して回動軸O6まわりに回動可能に関節J6を介して連結される。
【0052】
関節J1~J6のそれぞれは、基部310およびアーム321~326のうち隣り合う2つの部材の一方を他方に対してそれぞれ
図3中に一点鎖線で示した軸まわりに回動可能に連結する機構である。
図3では図示しないが、関節J1~J6のそれぞれには、当該隣り合う2つの部材の一方を他方に対して回動させる駆動機構が設けられる。当該駆動機構は、例えば、当該回動のための駆動力を発生させるモーターと、当該駆動力を減速して出力する減速機と、当該回動の角度等の動作量を検出するロータリーエンコーダー等のエンコーダーと、を有する。なお、関節J1~J6の当該駆動機構の集合体は、前述の
図2に示すアーム駆動機構3aに相当する。
【0053】
以上のアーム320の最も先端に位置するアーム、すなわち、アーム326には、エンドエフェクターとして、ヘッドユニット5が装着される。
【0054】
1-4.ヘッドユニットの構成
図4は、ヘッドユニット5の概略構成を示す斜視図である。以下の説明は、便宜上、互いに交差するa軸、b軸およびc軸を適宜に用いて行う。また、以下では、a軸に沿う一方向がa1方向であり、a1方向と反対の方向がa2方向である。同様に、b軸に沿って互いに反対の方向がb1方向およびb2方向である。また、c軸に沿って互いに反対の方向がc1方向およびc2方向である。
【0055】
ここで、a軸、b軸およびc軸は、ヘッドユニット5に設定されるツール座標系の座標軸であり、前述のヘッド移動機構3の動作により前述のX軸、Y軸およびZ軸との相対的な位置および姿勢の関係が変化する。
図4に示す例では、c軸が前述の回動軸O6に平行な軸である。なお、a軸、b軸およびc軸は、典型的には互いに直交する。なお、ツール座標系と前述のベース座標系とは、キャリブレーションにより対応付けされる。
【0056】
ツール座標系は、ツールセンターポイントTCPを基準として設定される。したがって、ヘッド5aの位置および姿勢は、ツールセンターポイントTCPを基準として規定される。本実施形態では、
図3に示すように、ノズル面Fの中心に設定される。なお、ツールセンターポイントTCPは、
図3に示す例に限定されず、例えば、ノズル面Fの中心から法線方向に所定距離で離れた位置であってもよい。
【0057】
ヘッドユニット5は、前述のように、ヘッド5aと圧力調整弁5bと硬化用光源5cとを有する。これらは、
図4中の二点鎖線で示される支持体5eに支持される。なお、圧力調整弁5bの設置位置は、アーム326に限定されず、例えば、他のアーム等でもよいし、基部310に対して固定の位置でもよい。
【0058】
ヘッド5aは、ノズル面Fと、ノズル面Fに開口する複数のノズルNと、を有する。
図4に示す例では、ノズル面Fの法線方向がc2方向であり、当該複数のノズルNは、a軸に沿う方向に互いに間隔をあけて並ぶ第1ノズル列Laと第2ノズル列Lbとに区分される。第1ノズル列Laおよび第2ノズル列Lbのそれぞれは、b軸に沿う方向に直線状に配列される複数のノズルNの集合である。なお、理想的な条件において、各ノズルNから吐出されるインク滴はc2方向に飛翔する。以下、この飛翔方向をヘッド5aの吐出方向という場合がある。
【0059】
図示しないが、ヘッド5aは、ノズルNごとに、駆動素子である圧電素子と、インクを収容するキャビティと、有する。ここで、当該圧電素子は、当該圧電素子に対応するキャビティの圧力を変化させることにより、当該キャビティに対応するノズルからインクを吐出させる。なお、ノズルからインクを吐出させるための駆動素子として、当該圧電素子に代えて、キャビティ内のインクを加熱するヒーターを用いてもよい。
【0060】
図4に示す例では、圧力調整弁5bは、ヘッド5aに対してc1方向に位置する。硬化用光源5cは、ヘッド5aに対してa2方向に位置する。圧力調整弁5bは、供給管6dを介して、図示しないインクタンクに接続される。圧力調整弁5bは、ヘッド5a内のインクの圧力に応じて開閉する弁機構である。この開閉により、ヘッド5aと当該インクタンクとの位置関係が変化しても、ヘッド5a内のインクの圧力が所定範囲内の負圧に維持される。
【0061】
硬化用光源5cは、ワークW上のインクを硬化または固化させるための光、熱、電子線または放射線等のエネルギーを出射する。本実施形態では、紫外線硬化性インクを用いているため、エネルギー出射部3cは、紫外線を出射するLED(Light Emitting Diode)で構成される。
【0062】
1-5.ワークトレイ
図5は、ワークトレイ2の斜視図である。以下の説明は、ワークトレイ2に対応付けられた第2座標系CS2の座標軸であるα軸、β軸およびγ軸を適宜に用いて行う。α軸、β軸およびγ軸は、互いに交差する。また、以下では、α軸に沿う一方向がα1方向であり、α1方向と反対の方向がα2方向である。同様に、β軸に沿って互いに反対の方向がβ1方向およびβ2方向である。また、γ軸に沿って互いに反対の方向がγ1方向およびγ2方向である。
【0063】
ここで、第2座標系CS2は、ワークトレイ2に設定されるトレイ座標系であるか、または、治具40に設定されるツール座標系である。また、第2座標系CS2と後述の第1座標系CS1とは、キャリブレーションにより対応付けされる。第2座標系CS2が当該ツール座標系である場合、前述のワーク移動機構4の動作によりα軸、β軸およびγ軸と前述のX軸、Y軸およびZ軸との相対的な位置および姿勢の関係が変化する。
図5に示す例では、γ軸がワーク移動機構4の最も先端に位置する後述の回動軸O6Wに平行な軸である。
【0064】
なお、α軸、β軸およびγ軸は、典型的には互いに直交するが、これに限定されず、例えば、80°以上100°以下の範囲内の角度で交差すればよい。
【0065】
図5に示すように、ワークトレイ2は、複数の固定部FXが設けられた第1トレイ部21と、マーカーMKが設けられた第2トレイ部22と、を含む。第1トレイ部21と第2トレイ部22とは、互いに着脱可能に固定される。以下、第1トレイ部21および第2トレイ部22を順に詳述する。
【0066】
第1トレイ部21は、ワークWとの位置関係が固定される部材である。第1トレイ部21は、実質的な剛体であり、例えば、金属で構成される。
図5に示す例では、第1トレイ部21がγ軸に沿う方向を板厚方向とする板状をなす部材である。第1トレイ部21のγ1方向を向く面には、複数の固定部FXが設けられる。
【0067】
各固定部FXは、ワークWを着脱可能に固定する機構である。
図5に示す例では、各固定部FXは、ワークWを負圧により吸着する機構である。なお、固定部FXの構成は、ワークWの形状、大きさまたは材質等に応じて適宜に決められ、
図5に示す例に限定されない。例えば、固定部FXの数は、3個以下または5個以上であってもよい。また、固定部FXは、負圧による吸着機構に限定されず、例えば、磁力による吸着機構であってもよいし、複数本の指または爪等を有する把持機構であってもよいし、ネジ留めであってもよい。
【0068】
また、
図5に示す例では、第1トレイ部21がγ軸に沿う方向にみてα軸に平行な1対の第1辺とβ軸に平行な1対の第2辺とを有する略四角形をなす。ここで、第1トレイ部21の互いに隣り合う第1辺と第2辺との間には、位置決め部21aが設けられる。各位置決め部21aは、α軸に直交する面とβ軸に直交する面とで構成される。
【0069】
なお、第1トレイ部21の形状は、第2トレイ部22に取り付けられたときに第2トレイ部22に対して所定の位置および姿勢で位置決め可能であるとともに、治具40に取り付けられたときに治具40に対して所定の位置および姿勢で位置決め可能であればよく、
図5に示す例に限定されない。
【0070】
第2トレイ部22は、第1トレイ部21を着脱可能に固定する部材である。第2トレイ部22は、実質的な剛体であり、例えば、金属で構成される。
図5に示す例では、第2トレイ部22がγ軸に沿う方向を板厚方向とする板状をなす部材である。第2トレイ部22のγ1方向を向く面には、位置決め部22aと複数のマーカーMKとが設けられる。位置決め部22aは、第1トレイ部21を収容し、位置決め部21aと接触することにより、第2トレイ部22に対して第1トレイ部21を所定の位置および姿勢で位置決めする凹部である。
図5に示す例では、位置決め部22aは、γ軸に沿う方向にみて第1トレイ部21と略同一形状をなす。ここで、必要に応じて、第2トレイ部22に対して第1トレイ部21がネジ留め等の適宜の手段により固定される。なお、位置決め部22aの形状は、第2トレイ部22に対して第1トレイ部21を所定の位置および姿勢で位置決めすることができればよく、
図5に示す例に限定されない。
【0071】
複数のマーカーMKは、3次元カメラ7によりワークトレイ2の他の部分と識別し得る状態で撮像可能な目印である。マーカーMKは、複数の第1マーカーMK1と、複数の第2マーカーMK2と、の総称である。
図5に示す例では、各第1マーカーMK1が円形のドットであり、例えば、黒色塗装等により形成される。各第2マーカーMK2はγ1方向に延びる略円柱状の凸部であり、第2マーカーの先端部は、先細りとなるようにテーパー状をなす。また、複数のマーカーMKは、γ軸に沿う方向にみて位置決め部22aの周囲に互いに間隔をあけて配置される。各マーカーMKの位置、大きさおよび形状は、既知である。ここで、第2座標系CS2がワークトレイ2に対応付けられていることから、各マーカーMKの位置、大きさおよび形状を第2座標系CS2の座標値で固定値として表すことが可能である。なお、第1マーカーMK1と第2マーカーMK2とのいずれか一方を省略することも可能である。
【0072】
図5に示す例では、複数のマーカーMKがγ軸に直交する同一のαβ平面上に位置する。なお、マーカーMKの数、位置、大きさおよび形状は、第2座標系CS2の固定値として表すことができ、かつ、3次元カメラ7による撮像結果からワークトレイ2の位置および姿勢を識別可能であればよく、
図5に示す例に限定されない。さらに、ワークトレイ2の少なくとも一部の形状が既知であり、かつ、当該形状によりワークトレイ2の位置および姿勢を識別可能であれば、当該一部自体がマーカーとして用いられてもよい。
【0073】
図6は、ワーク移動機構4に対して第1トレイ部21を取り付けるための治具40を説明するための図である。
図6に示すように、治具40は、ワーク移動機構4を構成する多関節ロボットの有する複数のアームのうちの最も先端のアームであるアーム426にネジ留め等により固定される。アーム426は、回動軸O6Wまわりに回転可能である。
【0074】
治具40は、第1トレイ部21を着脱可能に固定する部材である。治具40は、実質的な剛体であり、例えば、金属で構成される。
図6に示す例では、治具40が板部41と複数の突起42とを有する。板部41は、γ軸に沿う方向を板厚方向とする板状をなす。板部41のγ1方向を向く面上には、第1トレイ部21が載置される。複数の突起42は、板部41のγ1方向を向く面からγ1方向に突出する。複数の突起42は、前述の第1トレイ部21の複数の位置決め部21aに対応しており、各突起42は、板部41のγ1方向を向く面上に載置された第1トレイ部21の対応する位置決め部21aに接触する。これにより、板部31のγ1方向を向く面上に載置された第1トレイ部21のγ軸に直交する方向での移動が規制される。
【0075】
このように治具40に対して第1トレイ部21が所定の位置および姿勢で位置決めされる。ここで、必要に応じて、治具40に対して第1トレイ部21がネジ留め等の適宜の手段により固定される。なお、治具40の形状は、治具40に対して第1トレイ部21を所定の位置および姿勢で位置決めすることができればよく、
図6に示す例に限定されない。
【0076】
1-6.印刷経路データ
図7は、経路データDrおよび位置調整データDpの生成に用いるコンピューター13を示す図である。本実施形態では、前述の経路データDrおよび位置調整データDpがコンピューター13により生成される。
図7に示すように、コンピューター13は、表示装置13dと、入力装置13cと、記憶回路13aと、処理回路13bと、通信装置13eと、を有する。これらは、互いに通信可能に接続される。
【0077】
表示装置13dは、処理回路13bによる制御のもとで各種の画像を表示する。ここで、表示装置13dは、例えば、液晶表示パネルまたは有機EL(electro-luminescence)表示パネル等の各種の表示パネルを有する。ここで、表示装置13dには、必要に応じて、処理回路13bによる制御のもとで、経路データDrおよび位置調整データDpの生成の際にユーザーによる設定または確認のための必要な情報が適宜に表示される。なお、表示装置13dは、コンピューター13の外部に設けられてもよい。また、表示装置13dは、必要に応じて設ければよく、省略されてもよい。
【0078】
入力装置13cは、ユーザーからの操作を受け付ける機器である。例えば、入力装置13cは、タッチパッド、タッチパネルまたはマウス等のポインティングデバイスを有する。なお、入力装置13cは、タッチパネルを有する場合、表示装置13dを兼ねてもよい。また、入力装置13cは、コンピューター13の外部に設けられてもよい。また、入力装置13cは、必要に応じて設ければよく、省略されてもよい。
【0079】
通信装置13eは、処理回路13bによる制御のもとで、3次元カメラ7と無線または有線で通信する機器である。例えば、通信装置13eは、USB(Universal Serial Bus)またはLAN(Local Area Network)等のインターフェイスを有する。
【0080】
記憶回路13aは、処理回路13bが実行する各種プログラム、および処理回路13bが処理する各種データを記憶する装置である。記憶回路13aは、例えば、ハードディスクドライブまたは半導体メモリーを有する。なお、記憶回路13aの一部または全部は、コンピューター13の外部の記憶装置またはサーバー等に設けてもよい。
【0081】
記憶回路13aには、第1座標系データDaと第2座標系データDbと第3座標系データDcと変換パラメーターCPと基準位置データDp0とが記憶される。
【0082】
第1座標系データDaは、3次元カメラ7に設定される後述の第1座標系CS1で示されるデータまたはデータ群である。第1座標系データDaは、第1形状データDa1を含む。
【0083】
第1形状データDa1は、3次元カメラ7によって規定される第1座標系CS1におけるワークWおよびマーカーMKの形状を示すデータである。第1形状データDa1は、前述のワークトレイ2の固定部FXによってワークトレイ2およびワークWの互いの位置関係が固定された状態で、ワークWおよびワークトレイ2を3次元カメラ7によって撮像することにより生成される。第1形状データDa1のデータ形式は、特に限定されないが、例えば、ワークWの表面の形状を複数のポリゴンによって表すSTL(Standard Triangulated Language)形式である。第1形状データDa1の生成については、後に
図9に基づいて詳述する。
【0084】
第2座標系データDbは、ワークトレイ2に設定される第2座標系CS2で示されるデータまたはデータ群である。第2座標系データDbは、第2形状データDb1と処理領域データDb2と経路データDrとを含む。
【0085】
第2形状データDb1は、ワークトレイ2に対応付けられた第2座標系CS2におけるワークWおよびマーカーMKの形状を示すデータである。第2形状データDb1は、第1形状データDa1の示すマーカーMKの形状に基づいて、第1形状データDa1を後述の第1座標系CS1から第2座標系CS2へ座標変換することにより生成される。この座標変換には、変換パラメーターCPが用いられる。第2形状データDb1のデータ形式は、特に限定されないが、例えば、ワークWの表面の形状を複数のポリゴンによって表すSTL(Standard Triangulated Language)形式である。第2形状データDb1の生成については、後に
図10に基づいて説明する。
【0086】
ここで、変換パラメーターCPは、後述の第1座標系CS1の座標値を第2座標系CS2の座標値に変換するためのパラメーターである。変換パラメーターCPは、第1形状データDa1の示すマーカーMKの形状に基づいて、後述の第1座標系CS1の座標値と第2座標系CS2の座標値との対応関係を算出することにより生成される。
【0087】
処理領域データDb2は、ワークW上の表面処理を実行すべき領域に関するデータであり、当該領域を第2座標系の座標値で示す。処理領域データDb2は、第2形状データDb1に基づいて生成される。処理領域データDb2のデータ形式は、特に限定されないが、例えば、ワークWの表面の形状を複数のポリゴンによって表すSTL(Standard Triangulated Language)形式である。処理領域データDb2の生成については、後に
図11に基づいて詳述する。
【0088】
経路データDrは、前述のように印刷動作の実行時にヘッド5aの移動すべき経路におけるヘッド5aの目標となる位置および姿勢を示す情報であり、表面処理機構10の動作を規定する。ここで、経路データDrは、必要に応じて、第2座標系CS2から第3座標系CS3へ座標変換した後に表面処理機構10の動作制御に用いられる。経路データDrは、第2形状データDb1に基づいて生成される。経路データDrの生成については、後に
図12および
図13に基づいて詳述する。
【0089】
第3座標系データDcは、ヘッド移動機構3およびワーク移動機構4のロボット座標系として設定される第3座標系CS3で示されるデータまたはデータ群である。第3座標系データDcは、位置調整データDpを含む。
【0090】
位置調整データDpは、前述のように印刷動作の実行時におけるワークWの目標となる位置および姿勢を示す情報であり、ワーク移動機構4の動作を規定する。位置調整データDpは、経路データDrおよび処理領域データDb2のうちの一方または両方と基準位置データDp0とに基づいて生成される。位置調整データDpの生成については、後に
図14に基づいて詳述する。
【0091】
ここで、基準位置データDp0は、表面処理機構10またはヘッド移動機構3の動作において基準となる位置に関するデータであり、第2座標系CS2における基準位置と第3座標系CS3における基準位置との位置および姿勢の対応関係を示す。これらの基準位置は、ユーザーにより任意に設定可能である。
【0092】
処理回路13bは、コンピューター13の各部等を制御する機能、および各種データを処理する機能を有する装置である。処理回路13bは、例えば、CPU等のプロセッサーを有する。なお、処理回路13bは、単一のプロセッサーで構成されてもよいし、複数のプロセッサーで構成されてもよい。また、処理回路13bの機能の一部または全部を、DSP、ASIC、PLD、FPGA等のハードウェアで実現してもよい。
【0093】
処理回路13bは、記憶回路13aからプログラムを読み込んで実行することにより、各種機能を実現する。具体的には、処理回路13bは、3次元カメラ7の動作を制御する機能と、コントローラー11に経路データDrおよび位置調整データDp等の情報を供給する機能と、制御モジュール12に印刷データImg等の情報を供給する機能と、を実現する。ここで、処理回路13bは、3次元カメラ7の動作を制御することにより、3次元カメラ7から第1形状データDa1を取得する。また、処理回路13bは、第1形状データDa1に基づいて第2形状データDb1を生成したり、第2形状データDb1に基づいて経路データDrおよび位置調整データDpを生成したりする。
【0094】
1-6.表面処理方法
図8は、実施形態に係る表面処理方法を示すフローチャートである。当該表面処理方法は、前述のシステム100を用いて行われる。すなわち、当該表面処理方法は、立体的なワークWを固定するための固定部FXとマーカーMKとを有するワークトレイ2と、ワークトレイ2の少なくとも一部を支持するワーク移動機構4と、ワークWの表面を処理する表面処理機構10と、3次元的な形状データを取得可能な3次元カメラ7と、を用いる。
【0095】
図8に示すように、当該処理方法は、第1ステップST1と第2ステップST2と第5ステップST5と第6ステップST6と第7ステップST7と第3ステップST3と第4ステップST4とをこの順で含む。以下、これらのステップを時系列順に簡単に説明する。なお、これらのステップの詳細については、
図9から
図15に基づいて説明する。
【0096】
第1ステップST1は、固定部FXによってワークトレイ2およびワークWの互いの位置関係が固定された状態で、ワークWおよびマーカーMKを3次元カメラ7によって撮像する。この撮像は、処理回路13bによる制御のもとで行われる。これにより、処理回路13bが第1形状データDa1を取得する。取得された第1形状データDa1は、記憶回路13aに記憶される。
【0097】
第2ステップST2は、第1形状データDa1の示すマーカーMKの形状に基づいて、第1形状データDa1を第2形状データDb1に変換する。この変換は、処理回路13bにより行われる。これにより、処理回路13bが第2形状データDb1を生成する。生成された第2形状データDb1は、記憶回路13aに記憶される。
【0098】
第5ステップST5は、第2ステップST2と第3ステップST3との間で、第2形状データDb1に基づいて、処理領域データDb2を生成する。この生成は、処理回路13bにより行われる。生成された処理領域データDb2は、記憶回路13aに記憶される。
【0099】
第6ステップST6は、第3ステップST3と第5ステップST5との間で、第2形状データDb1と処理領域データDb2との両方に基づいて経路データDrを生成する。この生成は、処理回路13bにより行われる。生成された経路データDrは、記憶回路13aに記憶される。
【0100】
第7ステップST7は、第3ステップST3と第6ステップST6との間で、経路データDrおよび処理領域データDb2のうちの一方または両方と基準位置データDp0とに基づいて位置調整データDpを生成する。この生成は、処理回路13bにより行われる。生成された位置調整データDpは、記憶回路13aに記憶される。
【0101】
第3ステップST3は、ワーク移動機構4がワークトレイ2の一部である第1トレイ部21を支持した状態で、第2形状データDb1に基づいて生成された位置調整データDpに基づいて、ワーク移動機構4を動作させることにより、ワークWの位置を調整する。これにより、ワークトレイ2に対するワークWの位置および姿勢に応じて適切な位置および姿勢でワークWが配置される。
【0102】
第4ステップST4は、第2形状データDb1に基づいて生成された経路データDr基づいて、表面処理機構10を動作させることにより、ワークWに対する表面処理を実行する。
【0103】
以上の表面処理方法により、ワークWのCADデータが存在しなくても、ワークWの所望位置に高精度に印刷を行うことができる。以下、当該表面処理方法の各ステップを順次詳細に説明する。
【0104】
1-6a.第1ステップ
図9は、第1ステップST1における第1形状データDa1の取得を説明するための図である。第1ステップST1では、
図9に示すように、固定部FXによってワークトレイ2およびワークWの互いの位置関係が固定された状態で、ワークWおよびマーカーMKが3次元カメラ7によって撮像される。この撮像により得られる第1形状データDa1の示すワークWおよびマーカーMKの形状は、第1座標系CS1で示される。
【0105】
第1座標系CS1は、x軸、y軸およびz軸を座標軸とする3軸の座標系であり、3次元カメラ7に設定される。つまり、第1座標系CS1は、3次元カメラ7の設置位置および設置姿勢に応じて変化する。x軸、y軸およびz軸は、互いに交差する。また、以下では、x軸に沿う一方向がx1方向であり、x1方向と反対の方向がx2方向である。同様に、y軸に沿って互いに反対の方向がy1方向およびy2方向である。また、z軸に沿って互いに反対の方向がz1方向およびz2方向である。
【0106】
図9に示す例では、3次元カメラ7の撮像方向がz2方向である。ここで、x軸、y軸およびz軸は、典型的には互いに直交するが、これに限定されず、例えば、80°以上100°以下の範囲内の角度で交差すればよい。
【0107】
ここで、第1形状データDa1の示すワークWおよびマーカーMKの互いの位置および姿勢の関係は、3次元カメラ7による撮像時のワークWおよびマーカーMKの互いの位置および姿勢と同じである。これに対し、マーカーMKと第1座標系CS1の座標軸との位置および姿勢の関係は、任意であり、3次元カメラ7による撮像時のワークトレイ2の設置位置および設置姿勢に応じて変化する。なお、撮像の実行中において、3次元カメラ7に対する、ワークWおよびワークトレイ2の位置および姿勢を変化させてもよい。これにより、3次元カメラ7はワークWの広い範囲を撮像することができる。また、撮像の実行中における位置および姿勢の変化は、例えば、3次元カメラ7またはコンピューター13の処理回路13bが第1マーカーMK1を連続的に認識することで把握される。
【0108】
以上のように、第1ステップST1は、固定部FXによってワークトレイ2およびワークWの互いの位置関係が固定された状態で、ワークWおよびマーカーMKを3次元カメラ7によって撮像することにより、3次元カメラ7によって規定される第1座標系CS1におけるワークWおよびマーカーMKの形状を示す第1形状データDa1を取得する。このように、第1ステップST1において、ワークWおよびマーカーMKの形状を示す第1形状データDa1が取得されるので、ワークWのCADデータが不要である。ここで、第1ステップST1において、マーカーMKとワークWとの位置関係が固定された状態で3次元カメラ7の撮像が行われるので、第1形状データDa1の示すワークWおよびマーカーMKの互いの位置関係も固定される。
【0109】
1-6b.第2ステップ
図10は、第2ステップST2における第2形状データDb1の生成を説明するための図である。第2ステップST2では、第1形状データDa1の示すマーカーMKの形状に基づいて、第1形状データDa1が第1座標系CS1から第2座標系CS2に座標変換されることにより、第2形状データDb1が生成される。
【0110】
当該座標変換は、第1形状データDa1の示すマーカーMKの位置および姿勢と第2座標系CS2における既知のマーカーMKの位置および姿勢との対応関係に基づいて行われる。
【0111】
図10に示す例では、第2形状データDb1の示す複数の第2マーカーMK2の先細りとなった先端部が第2座標系CS2のγ軸に直交する同一のαβ平面上に位置し、かつ、
図10に示される2つの第2マーカーMK2の先端部が第2座標系CS2のα軸と平行になり、かつ、
図10に示されない2つの第2マーカーMK2の先端部が第2座標系CS2のβ軸と平行になるように、当該座標変換が行われる。また、第2座標系CS2の原点は、いずれか1つの第2マーカーMK2の先端部に一致させてもよい。
【0112】
当該座標変換に際しては、まず、当該座標変換のための変換パラメーターCPが第1形状データDa1の示すマーカーMKの形状に基づいて生成される。そして、変換パラメーターCPを用いて当該座標変換が行われる。変換パラメーターCPは、第1形状データDa1の示すマーカーMKの形状が第2座標系CS2における既知の形状となるように、すなわち、第1形状データDa1の示すマーカーMKの位置および姿勢が第2座標系CS2における既知の位置および姿勢となるように、第1座標系CS1と第2座標系CS2との対応付けを行うことにより求められる。
【0113】
以上のように、第2ステップST2は、第1形状データDa1の示すマーカーMKの形状に基づいて、第1形状データDa1を、ワークトレイ2に対応付けられた第2座標系CS2におけるワークWおよびマーカーMKの形状を示す第2形状データDb1に変換する。ここで、前述のように第1形状データDa1の示すワークWおよびマーカーMKの互いの位置関係が固定されていることから、第2ステップST2において、第1形状データDa1が、ワークトレイ2に対応付けられた第2座標系CS2を用いてワークWおよびマーカーMKの形状を示す第2形状データDb1に変換されることにより、ワークトレイ2に対するワークWの位置および姿勢を加味したワークWの形状を示すデータとして第2形状データDb1を取得することができる。
【0114】
1-6c.第5ステップ
図11は、第5ステップST5における処理領域データDb2の生成を説明するための図である。第5ステップST5では、
図11に示すように、第2形状データDb1の示すワークW上の表面処理を実行すべき領域RPが設定される。この設定により、処理領域データDb2が生成される。この設定は、例えば、処理回路13bよる制御のもとで表示装置13dに表示されるGUI(graphical user interface)用の画像を用いて領域RPの範囲をユーザーが指定することにより行われ、第2座標系CS2の座標値で設定される。
【0115】
以上のように、第5ステップST5は、第2形状データDb1に基づいて、ワークW上の表面処理を実行すべき領域RPに関するデータである処理領域データDb2を生成する。処理領域データDb2は、後述のように、第3ステップにおけるワーク移動機構4の動作制御と第4ステップST4における表面処理機構10の動作制御とのそれぞれに用いられる。すなわち、第3ステップST3におけるワーク移動機構4の動作と、第4ステップST4における表面処理機構10の動作と、のそれぞれは、処理領域データDb2に基づいて実行される。このため、第5ステップST5において、UI(User Interface)等を用いてユーザーにより、ワークW上の表面処理を実行すべき領域を指定することができる。
【0116】
1-6d.第6ステップ
図12および
図13は、第6ステップST6における経路データDrの生成を説明するための図である。第6ステップST6では、
図12に示すように、印刷動作の実行時にヘッド5aの移動すべき経路RUが設定される。この設定により、経路データDrが生成される。
【0117】
経路RUの設定は、例えば、
図13に示すように、領域RPの中心線LC上に複数の教示点Paおよび複数の補間点Pbを設定した後、これらの点のそれぞれに対する所定の位置および姿勢を決定することにより行われる。
【0118】
ここで、中心線LCは、印刷動作時のヘッド5aの移動方向に沿う。教示点Paは、ユーザーによる指定または予め設定された条件に基づいて、中心線LC上に所定間隔で設定される点である。補間点Pbは、必要に応じて、ユーザーによる指定または予め設定された条件に基づいて、教示点Paの数の不足を補うように、隣り合う2つの教示点Paの間に設定される点である。なお、補間点Pbは、省略されてもよい。
【0119】
また、当該所定の位置および姿勢の決定では、各教示点Paおよび各補間点Pbのそれぞれについて、第2形状データDb1の示すワークWの表面の法線方向Va、Vbに対してヘッド5aの吐出方向が平行となるようにヘッド5aの姿勢が第2座標系CS2の座標値で決定されるとともに、領域RPとヘッド5aとの間の距離が所定距離に保たれるようにヘッド5aの位置が第2座標系CS2の座標値で決定される。
【0120】
以上のように、第6ステップST6は、第4ステップST4における表面処理機構10の動作を規定する経路データDrを第2形状データDb1と処理領域データDb2との両方に基づいて生成する。経路データDrは、第4ステップST4における表面処理機構10の動作制御に用いられる。すなわち、第4ステップST4における表面処理機構10の動作は、経路データDrに基づいて実行される。このため、第4ステップST4において、第2形状データDb1および処理領域データDb2の両方に基づいて表面処理機構10を動作させることができる。
【0121】
1-6e.第7ステップ
図14は、第7ステップST7における位置調整データDpの生成を説明するための図である。第7ステップST7では、
図14に示すように、経路データDrの示す経路RUの第2座標系CS2における所定位置PSが、基準位置データDp0の示す第3座標系CS3における基準位置P0に位置するように設定される。この設定により、第3座標系CS3における位置調整データDpが生成される。
【0122】
図14に示す例では、印刷動作時におけるヘッド5aの移動方向が主にX1方向であり、基準位置P0は、ヘッド移動機構3によるヘッド5aの移動可能範囲のうち所望の印刷品位を実現し得る範囲のX2方向での端に近い位置である。また、所定位置PSは、経路RUの始点、すなわち、印刷動作時にヘッド5aによるインクの吐出開始位置である。なお、基準位置P0および所定位置PSは、
図14に示す例に限定されない。例えば、所定位置PSは、経路RUの途中位置であってもよい。また、基準位置P0は、所定位置PSに応じて決められる。
【0123】
1-6f.第3ステップおよび第4ステップ
図15は、第3ステップST3におけるワークWの位置の調整と第4ステップST4における表面処理とを説明するための図である。第3ステップST3では、
図15に示すように、ワーク移動機構4が、ワークトレイ2の一部である第1トレイ部21を支持した状態で、所定位置PSが基準位置データDp0の示す基準位置P0となるように、ワークWの位置を調整する。この調整は、コントローラー11による位置調整データDpに基づく制御のもとで行われる。
【0124】
このように、第3ステップST3におけるワーク移動機構4の動作は、位置調整データDpに基づいて実行される。ここで、位置調整データDpは、前述のように、第3ステップST3におけるワーク移動機構4の動作を規定しており、前述の第7ステップST7において、経路データDrおよび処理領域データDb2のうちの一方または両方と基準位置データDp0とに基づいて生成される。基準位置データDp0は、前述のように、表面処理機構10の動作において基準となる位置に関するデータである。したがって、第3ステップST3において、位置調整データDpを用いることにより、経路データDrおよび処理領域データDb2のうちの一方または両方と基準位置データDp0とに基づいてワーク移動機構を動作させることができる。
【0125】
以上のように、第3ステップST3は、ワーク移動機構4がワークトレイ2の少なくとも一部を支持した状態で、第2形状データDb1に基づいて、ワーク移動機構4を動作させることにより、ワークWの位置を調整する。ここで、前述のように、第2形状データDb1がワークトレイ2に対するワークWの位置および姿勢を加味したワークWの形状を示すことから、ワークトレイ2に対するワークWの位置および姿勢によらず、ワークWの表面の所望位置に高精度に表面処理が行われるように、第3ステップST3においてワークWの位置が高精度に調整される。換言すれば、ワークWの位置を調整する第3ステップST3が実行されることにより、固定部FXとワークWとの位置および姿勢を正確に定める必要がなくなり、誤差が許容される。これにより、固定部FXの構成を簡素化できるだけでなく、固定部FXにワークWを固定する作業において位置および姿勢の調整に要する時間が短くなり、生産性が向上する。
【0126】
第3ステップST3の後、前述のように第1トレイ部21を支持した状態を維持したまま、第4ステップST4では、表面処理機構10がヘッド5aを経路RUに沿って移動させながらヘッド5aからインクを吐出することにより、印刷が行われる。ここで、表面処理機構10によるヘッド5aの移動は、コントローラー11による経路データDr基づく制御のもとで行われる。
【0127】
ここで、前述のように、領域RPとヘッド5aとの間の距離が所定距離に保たれるように経路RUが設定されるので、第4ステップST4において、ヘッド5aは、経路データDrに基づくヘッド移動機構3の動作によって、ワークWの表面に対して所定の離間距離を保って走査される。このため、ワークWの表面に高精度にインクジェット方式で印刷を行うことができる。
【0128】
また、前述のように、第3ステップST3および第4ステップST4のそれぞれでは、第2トレイ部22を用いずに第1トレイ部21を用いる。このため、第3ステップST3および第4ステップST4において、ワーク移動機構4によりワークWとともに移動すべき構造体の軽量化および小型化を図ることにより、ワーク移動機構4への負担を低減することができる。この結果、ワークWの姿勢制御の精度が向上するので、表面処理の品位、すなわち本実施形態では印刷品位を向上させることができる。また、第3ステップST3および第4ステップST4において、ワークWの周囲に余分な構成をなくすことができ、この結果、ワーク移動機構4および表面処理機構10の動作自由度を増すことができる。
【0129】
以上のように、第4ステップST4は、第2形状データDb1に基づいて、表面処理機構10を動作させることにより、ワークWに対する表面処理を実行する。ここで、前述のように、第2形状データDb1がワークトレイ2に対するワークWの位置および姿勢を加味したワークWの形状を示すことから、ワークトレイ2に対するワークWの位置および姿勢によらず、ワークWの表面の所望位置に高精度に表面処理が行われるように、第4ステップST4においてワークWに対する表面処理が実行される。
【0130】
以上の表面処理方法では、第1ステップST1において、ワークWおよびマーカーMKの形状を示す第1形状データDa1が取得されるので、ワークWのCADデータが不要である。ここで、第1ステップST1において、マーカーMKとワークWとの位置関係が固定された状態で3次元カメラの撮像が行われるので、第1形状データDa1の示すワークWおよびマーカーMKの互いの位置関係も固定される。そのうえで、第2ステップST2において、第1形状データDa1が、ワークトレイ2に対応付けられた第2座標系CS2を用いてワークWおよびマーカーMKの形状を示す第2形状データDb1に変換されるので、ワークトレイ2に対するワークWの位置および姿勢を加味したワークWの形状を示すデータとして第2形状データDb1を取得することができる。したがって、ワークトレイ2に対するワークWの位置および姿勢によらず、ワークWの表面の所望位置に高精度に表面処理が行われるように、第3ステップST3においてワークWの位置が高精度に調整されるとともに、第4ステップST4においてワークWに対する表面処理が実行される。また、第4ステップST4におけるワークWに対する表面処理は、実際のワークWを3次元カメラによって撮像して得られる第1形状データDa1に基づくため、あらかじめ用意されたワークWのCADデータが存在しない場合であっても表面処理を実行できる。さらに、経路データDrは、実際のワークWを3次元カメラによって撮像して得られる第1形状データDa1に基づくため、ワークWの製造誤差等を加味した表面処理が可能となり、ワーク上の所望位置に正確に印刷することができる。
【0131】
また、前述のように、第3ステップST3におけるワーク移動機構4の動作と、第4ステップST4における表面処理機構10の動作と、のそれぞれは、第2ステップST2と第3ステップST3との間の第5ステップST5で生成される処理領域データDb2に基づいて実行される。このため、第5ステップST5において、UI等を用いてユーザーにより、ワークW上の表面処理を実行すべき領域を指定することができる。
【0132】
さらに、前述のように、第4ステップST4における表面処理機構10の動作は、第5ステップST5と第3ステップST3との間の第6ステップST6で生成される経路データDrに基づいて実行される。このため、第4ステップST4において、第2形状データDb1および処理領域データDb2の両方に基づいて表面処理機構10を動作させることができる。
【0133】
また、前述のように、第3ステップST3におけるワーク移動機構4の動作は、第6ステップST6と第3ステップST3との間の第7ステップST7で生成される位置調整データDpに基づいて実行される。このため、第3ステップST3において、経路データDrおよび処理領域データDb2のうちの一方または両方と基準位置データDp0とに基づいてワーク移動機構4を動作させることができる。
【0134】
さらに、前述のように、第3ステップST3および第4ステップST4において、第2トレイ部22を用いずに第1トレイ部21を用いることにより、ワーク移動機構4によりワークWとともに移動すべき構造体の軽量化および小型化を図ることができる。この結果、ワーク移動機構4への負担を低減することにより、ワークWの姿勢制御の精度が向上するので、印刷品位を向上させることができる。また、第3ステップST3および第4ステップST4において、ワークWの周囲に余分な構成をなくすことにより、ワーク移動機構4および表面処理機構10の動作自由度を増すこともできる。
【0135】
また、前述のように、第4ステップST4において、ヘッド5aは、経路データDrに基づくヘッド移動機構3の動作によって、ワークWの表面に対して所定の離間距離を保って走査されることにより、ワークWの表面に高精度にインクジェット方式で印刷を行うことができる。
【0136】
2.変形例
以上の例示における各形態は多様に変形され得る。前述の各形態に適用され得る具体的な変形の態様を以下に例示する。なお、以下の例示から任意に選択される2以上の態様は、互いに矛盾しない範囲で適宜に併合され得る。
【0137】
2-1.変形例1
前述の実施形態では、コンピューター13を用いて経路データDrおよび位置調整データDpが生成されるが、これに限定されず、例えば、経路データDrおよび位置調整データDpを生成する機能の一部または全部がコントローラー11に実装されてもよい。
【0138】
2-2.変形例2
前述の形態では、ワークトレイ2が第1トレイ部21と第2トレイ部22との分離可能な態様が例示されるが、この態様に限定されない。例えば、ワークトレイ2が一部材で構成されてもよい。この場合、ワークトレイ2のマーカーMKを含む全部がワーク移動機構4の治具40に取り付けられる。
【0139】
2-3.変形例3
前述の形態では、ヘッド移動機構3およびワーク移動機構4として6軸の垂直多軸ロボットを用いる構成が例示されるが、当該構成に限定されない。これらの移動機構は、ワークに対して液体吐出ヘッドの相対的な位置および姿勢を3次元的に変化させることが可能であればよい。したがって、これらの移動機構は、例えば、6軸以外の垂直多軸ロボットでもよいし、水平多軸ロボットでもよい。また、ロボットアームは、回動機構で構成される関節に加えて、伸縮機構等を有してもよい。ただし、印刷動作での印刷品質と非印刷動作での移動機構の動作の自由度とのバランスの観点から、移動機構は、6軸以上の多軸ロボットであることが好ましい。また、双腕ロボットを用いてもよく、この場合、一方の腕をヘッド移動機構3とし、他方の腕をワーク移動機構4として用いることができる。
【0140】
2-4.変形例4
前述の形態では、ヘッド移動機構3に対するヘッド5aの固定方法としてネジ止め等を用いる構成が例示されるが、当該構成に限定されない。例えば、ヘッド移動機構3のエンドエフェクターとして装着されるハンド等の把持機構によりヘッド5aを把持することにより、ヘッド移動機構3に対してヘッド5aを固定してもよい。
【0141】
2-5.変形例5
前述の形態では、1種類のインクを用いて印刷を行う構成が例示されるが、当該構成に限定されず、2種以上のインクを用いて印刷を行う構成にも本開示を適用することができる。
【0142】
2-6.変形例6
前述の形態では、表面処理の一例として印刷が例示されるが、本開示の表面処理方法での表面処理は、ワークとの相対位置を変化させながら行う各種表面処理に適用可能であり、印刷に限定されず、研磨または塗装、接着剤やグリスの塗布などでもよい。例えば、表面処理を研磨とする場合は、ヘッドユニット5に代えて、回転するバフやブラシが設けられた研磨用のユニットをエンドエフェクターとしてヘッド移動機構3に取り付ければよい。表面処理を塗装とする場合は、ヘッドユニット5に代えて、塗料を噴射するスプレーガンが設けられた塗装用のユニットをエンドエフェクターとしてヘッド移動機構3に取り付ければよい。表面処理を塗布とする場合は、ヘッドユニット5に代えて、接着剤やグリスを吐出するディスペンサーが設けられた塗装用のユニットをエンドエフェクターとしてヘッド移動機構3に取り付ければよい。また、ヘッド5aから液体を吐出する表面処理は、他にも、導電材料の溶液を吐出することによる配線基板の配線または電極の形成等であってもよい。また、表面処理は、ワークへの接着剤等の液体の塗布でもよい。
【0143】
3.本開示のまとめ
以下、本開示のまとめを付記する。
【0144】
(付記1)本開示の好適例である第1態様の表面処理方法は、立体的なワークを固定するための固定部とマーカーとを有するワークトレイと、前記ワークトレイの少なくとも一部を支持するワーク移動機構と、前記ワークの表面を処理する表面処理機構と、3次元的な形状データを取得可能な3次元カメラと、を用いた表面処理方法であって、前記固定部によって前記ワークトレイおよび前記ワークの互いの位置関係が固定された状態で、前記ワークおよび前記マーカーを前記3次元カメラによって撮像することにより、前記3次元カメラによって規定される第1座標系における前記ワークおよび前記マーカーの形状を示す第1形状データを取得する第1ステップと、前記第1形状データの示す前記マーカーの形状に基づいて、前記第1形状データを、前記ワークトレイに対応付けられた第2座標系における前記ワークおよび前記マーカーの形状を示す第2形状データに変換する第2ステップと、前記ワーク移動機構が前記ワークトレイの少なくとも一部を支持した状態で、前記第2形状データに基づいて、前記ワーク移動機構を動作させることにより、前記ワークの位置を調整する第3ステップと、前記第2形状データに基づいて、前記表面処理機構を動作させることにより、前記ワークに対する表面処理を実行する第4ステップと、をこの順に含む。
【0145】
以上の第1態様では、第1ステップにおいて、ワークおよびマーカーの形状を示す第1形状データが取得されるので、ワークのCADデータが不要である。ここで、第1ステップにおいて、マーカーとワークとの位置関係が固定された状態で3次元カメラの撮像が行われるので、第1形状データの示すワークおよびマーカーの互いの位置関係も固定される。そのうえで、第2ステップにおいて、第1形状データが、ワークトレイに対応付けられた第2座標系を用いてワークおよびマーカーの形状を示す第2形状データに変換されるので、ワークトレイに対するワークの位置および姿勢を加味したワークの形状を示すデータとして第2形状データを取得することができる。したがって、ワークトレイに対するワークの位置および姿勢によらず、ワークの表面の所望位置に高精度に表面処理が行われるように、第3ステップにおいてワークの位置が高精度に調整されるとともに、第4ステップにおいてワークに対する表面処理が実行される。
【0146】
(付記2)第1態様の好適例である第2態様において、前記第2形状データに基づいて、前記ワーク上の表面処理を実行すべき領域に関するデータである処理領域データを生成する第5ステップを前記第2ステップと前記第3ステップとの間に含み、前記第3ステップにおける前記ワーク移動機構の動作と、前記第4ステップにおける前記表面処理機構の動作と、のそれぞれは、前記処理領域データに基づいて実行される。以上の第2態様では、第5ステップにおいて、UI(User Interface)等を用いてユーザーにより、ワーク上の表面処理を実行すべき領域を指定することができる。
【0147】
(付記3)第2態様の好適例である第3態様において、前記第4ステップにおける前記表面処理機構の動作を規定する経路データを前記第2形状データと前記処理領域データとの両方に基づいて生成する第6ステップを前記第5ステップと前記第3ステップとの間に含み、前記第4ステップにおける前記表面処理機構の動作は、前記経路データに基づいて実行される。以上の第3態様では、第4ステップにおいて、第2形状データおよび処理領域データの両方に基づいて表面処理機構を動作させることができる。
【0148】
(付記4)第3態様の好適例である第4態様において、前記経路データおよび前記処理領域データのうちの一方または両方と、前記表面処理機構の動作において基準となる位置に関するデータである基準位置データと、に基づいて、前記第3ステップにおける前記ワーク移動機構の動作を規定する位置調整データを生成する第7ステップを前記第6ステップと前記第3ステップとの間に含み、前記第3ステップにおける前記ワーク移動機構の動作は、前記位置調整データに基づいて実行される。以上の第4態様では、第3ステップにおいて、経路データおよび処理領域データのうちの一方または両方と基準位置データとに基づいてワーク移動機構を動作させることができる。
【0149】
(付記5)第1態様から第4態様のいずれかの好適例である第5態様において、前記ワークトレイは、前記固定部が設けられた第1トレイ部と、前記マーカーが設けられた第2トレイ部と、を含み、前記第1トレイ部と前記第2トレイ部とは、互いに着脱可能に固定され、前記第3ステップおよび前記第4ステップのそれぞれでは、前記第2トレイ部を用いずに前記第1トレイ部を用いる。以上の第5態様では、第3ステップおよび第4ステップにおいて、ワーク移動機構によりワークとともに移動すべき構造体の軽量化および小型化を図ることにより、ワーク移動機構への負担を低減することができる。この結果、ワークの姿勢制御の精度が向上するので、表面処理の品位を向上させることができる。また、第3ステップおよび第4ステップにおいて、ワークの周囲に余分な構成をなくすことができ、この結果、ワーク移動機構および表面処理機構の動作自由度を増すことができる。
【0150】
(付記6)第3態様の好適例である第6態様において、前記表面処理機構は、複数のノズルから液体を噴射するヘッドと、前記ヘッドを移動するヘッド移動機構と、を備え、前記第4ステップにおいて、前記ヘッドは、前記経路データに基づく前記ヘッド移動機構の動作によって、前記ワークの表面に対して所定の離間距離を保って走査される。以上の第6態様では、ワークの表面に高精度にインクジェット方式で印刷を行うことができる。
【符号の説明】
【0151】
1…印刷装置、2…ワークトレイ、3…ヘッド移動機構、3a…アーム駆動機構、4…ワーク移動機構、4a…アーム駆動機構、5…ヘッドユニット、5a…ヘッド、5b…圧力調整弁、5c…硬化用光源、5d…スイッチ回路、5e…支持体、6d…供給管、7…3次元カメラ、7a…支持体、10…表面処理機構、11…コントローラー、11a…記憶回路、11b…処理回路、12…制御モジュール、12a…タイミング信号生成回路、12b…電源回路、12c…制御回路、12d…駆動信号生成回路、13…コンピューター、13a…記憶回路、13b…処理回路、13c…入力装置、13d…表示装置、13e…通信装置、21…第1トレイ部、21a…位置決め部、22…第2トレイ部、22a…位置決め部、31…板部、40…治具、41…板部、42…突起、100…システム、310…基部、320…アーム、321…アーム、322…アーム、323…アーム、324…アーム、325…アーム、326…アーム、426…アーム、CLK…クロック信号、CNG…チェンジ信号、CP…変換パラメーター、CS1…第1座標系、CS2…第2座標系、CS3…第3座標系、Com…駆動信号、D1…出力、D2…出力、D3…信号、Da…第1座標系データ、Da1…第1形状データ、Db…第2座標系データ、Db1…第2形状データ、Db2…処理領域データ、Dc…第3座標系データ、Dp…位置調整データ、Dp0…基準位置データ、Dr…経路データ、F…ノズル面、FX…固定部、Img…印刷データ、J1…関節、J2…関節、J3…関節、J4…関節、J5…関節、J6…関節、LAT…ラッチ信号、LC…中心線、La…第1ノズル列、Lb…第2ノズル列、MK…マーカー、MK1…第1マーカー、MK2…第2マーカー、N…ノズル、O6…回動軸、O6W…回動軸、P0…基準位置、PD…駆動パルス、PS…所定位置、PTS…タイミング信号、Pa…教示点、Pb…補間点、RP…領域、RU…経路、SI…制御信号、ST1…第1ステップ、ST2…第2ステップ、ST3…第3ステップ、ST4…第4ステップ、ST5…第5ステップ、ST6…第6ステップ、ST7…第7ステップ、Sk1…制御信号、Sk2…制御信号、TCP…ツールセンターポイント、VBS…オフセット電位、VHV…電源電位、W…ワーク、dCom…波形指定信号。